冒頭はユージオ視点から始まります。
最終決戦の前戦といったところでしょうか…サブタイでネタバレしておりますが(笑)。
それではどうぞ!
追記 アリブレのストーリーが更新されましたね…さて、本作はどうするべきか…多分方向性決まったら、またアンケート取ると思います(笑)
「アドミニストレータァァァァァァァァ!?」
その咆哮と共に僕は、眼前に対面していた悪魔…アドミニストレータへと短剣を突き刺した。本来であれば、アリスに使う筈だったが…これで全てを終わりにするのだと、僕はカーディナルさんから貰った短剣を全力で突き刺した…だけど…
「ぐぅぅ!?おおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」
「……!?」
短剣はアドミニストレータに刺さる直前、不思議な壁に阻まれてしまった。左腕も短剣へと重ねて、障壁を破ろうと短剣に力を込めるが、その障壁はびくともしない…そして、
「うわぁぁ!?」
障壁から発された衝撃波で僕は短剣ごとベッドから吹き飛ばされてしまった。地面を転がり、体に痛みが走る。
「正気に戻っていたなんて…まんまと騙されたわ」
「…っ…!」
ボロボロになっていた服を消滅させ、先程の女神のような母性などどこかに置き去りにし、本性を露わにしたアドミニストレータがそう言葉を発した。僕はなんとか立ち上がり、奴と対峙する。
「それにその短剣…図書室のチビッ子の仕業ね?フフッ、でも残念でした。今の私の肌にはあらゆる金属オブジェクトは傷をつけられないわ」
「そ、そんな…」
カーディナルさんの秘策が通用しない…アドミニストレータの語った事実に、僕は言葉を失ってしまう。あの短剣であれば、奴を倒せる…まさかの希望が打ち砕かれてしまったのだ。
「可哀そうな子…せっかく約束してあげたのに。私に全てを差し出せば、その分、私も愛してあげるって言ってあげたのに…貴方がずっと求め続けてきた永遠の愛、永遠の支配をもう少しで手に入れることができたのに」
「永遠の愛…?永遠の、支配…?」
「そうよ、ユージオ。私に全てを委ねれば、貴方を苦しめてきた渇きはたちまち癒される。貴方が抱え続けた不安や恐れは消えてなくなる」
アドミニストレータの言葉は…確かに僕の心を強く揺さぶるものだった。彼女の指摘は…確かに間違いじゃない。僕には、思い当たる節がいくつもあった。
「これが最後の機会よ、ユージオ。腰の剣でそこに転がっているおもちゃを叩き壊しなさい。そうすれば、私は大いなる愛をもって、貴方の罪を許しましょう」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
彼女の甘言に僕はちらりと床に落ちている短剣へと視線を向ける。そして、アドミニストレータの言葉を思い出し呟いた。
「愛は…支配し支配されること、か……」
「その通りよ。だから、貴方は「可哀そうな人だ」っ…!?」
奴の言葉を遮り、僕はアドミニストレータを可哀そうだと言った。そのことに奴は黙りこくるも、表情に変化はなかった。
「…私が可哀そうですって?」
「ええ。愛をそうとしか感じられない貴女は可哀そうだと言ったんだ。貴女は僕と同じだ…人から愛してほしくて、それを探し求め、飢えてはまた求め続けて…しかし、愛を与えられることはなかった。
当たり前だ…愛は支配されることじゃないからだ。見返りを求めたり、取引で手に入れるものでもない…花に水を注ぐようにただひたすら与え続けること…もしそれが自分に向けられなかったとしても、それこそが本当の愛だと僕は思う!」
「……残念ね」
僕の言葉を聞いたアドミニストレータはその言葉の通り、冷えた口調と共に殺気を放った。その殺気に僕は思わず身構える。
「公理教会に反逆した坊やを許し、魂を救ってあげようとしただけなのに…そんな風に言われるなんてね…!やっぱり殺して宝石に変えちゃうのはつまらないかしらね?」
「くっ…!?」
「…それとも、時間は掛かるけれど、あの娘みたいに強制シンセサイズしようかしら」
「あの娘…?」
「そうよ。貴方がご執心のサーティちゃん…あの娘も術式の詠唱を嫌がったから、自動化元老機関…まぁ、監視用の人形たちを使って、何日も掛けてプロテクトを強制解除したの」
「アリスを…!?」
アリスの話が出たことで僕は動機が激しくなるのを感じた。アドミニストレータの言葉の意味はよくは分からないが、それが今のアリス…シンセサイズの秘儀を施した際のことを言っているのだと悟った。
「私は眠っていたから見ていないのだけれど、とっても辛かったでしょうね。どう?…せめて、貴方も同じ経験をしてみるっていうのは?」
「っ…ああああぁぁぁぁぁ!?」
それが挑発だと分かっていながら、僕は青薔薇の剣を抜き、アドミニストレータへと切り掛かった。許せない…アリスを、人の心や記憶を勝手に弄る奴を許しておけない…その一心で僕は秘奥義を放った。
「っ?!」「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
奴の放った神聖術ごと、僕は〈ホリゾンタル〉でアドミニストレータを切り裂こうとした。神聖術は切り裂けたが、またしても奴の障壁が剣を止めてしまった。だが、僕は剣へと更に力を込める。
「(ここで…終わらせるんだ!僕が……僕がやらないと…!?)砕けろぉぉぉぉぉ!!!」
「…っ!?これは…!」
「貫け、青薔薇の剣!!うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ちぃ…吹き飛びなさい!!」
「っ……ぐぅぅぅぅ!?」
僕の咆哮と共に青薔薇の剣が障壁にヒビを入れ、遂に障壁が砕け散った。その勢いでアドミニストレータへと一太刀を浴びせようとするが、咄嗟に後方に飛んだ奴は無詠唱で風の神聖術を放った。それをまともに食らった僕は再び床を転がり、壁に叩きつけられる。
「まだ、だ…まだ僕はやれる…」
「…そう。その剣…そういうことね。まさか、金属以外でできている剣が、金木犀の剣以外にもあったとはね」
(…っ!?青薔薇の剣なら奴の障壁を破れる…!それなら…)
どうやらアドミニストレータにとって、青薔薇の剣の攻撃は障壁では防ぐことができないらしい。青薔薇の剣で障壁を砕いたところに、短剣を突き刺す…そうすれば、アドミニストレータを倒すことができる!
そう確信した僕は短剣を拾い、再びアドミニストレータに仕掛けようとした時だった。
「ひぃぃぃ!?お助けをぉぉ!?」
「「っ!?」」
その場に似合わない悲鳴が聞こえて、僕はそちらに意識を取られた。一体何事かと思っていると、その声は下の階層へと続く昇降盤の穴から聞こえてきて、
「お助け下さい、最高司祭猊下!?奴らが…!?」
「チュデルキン!?」
「き、貴様…!?最高司祭猊下、こやつは裏切りものですぞ!?反逆者たちを氷漬けにしたと言っておきながら、手加減していたのです!?そのお陰であたしは「ごちゃごちゃうるさい!後ろがつっかえてんだから、さっさと登りやがれ!」ひゃぁん!?」
穴から半身を出したまま喚き続けるチュデルキンだったが、その言葉を遮った声の後にいきなり穴へと飛び出してきた。そして、続いて姿を現したのは…
「よっと…」「ふぅ…」
「…あぁ…ああ…」
その姿に僕は思わず言葉にならない声が出てしまった。そして、今にも泣きそうな僕を見て、友は笑いながら言葉を発した。
「一人でよく頑張ったな、ユージオ」
「でも、何でもかんでも一人でやろうとするのは感心しないよな」
「…キリト…!フォン…!」
友の言葉に僕は遂に涙を堪え切れず、言葉と共に泣き出してしまった。
〈フォン View〉
「…キリト…!フォン…!」
涙と共に俺たちの名を呼ぶユージオに、完全に元の彼に戻ったことを確認した俺とキリトはどこかホッとしていた。
『…ゴメン、二人とも…』
(あの時の言葉からもしかしたらとは思っていたが、とにかく無事で良かった)
氷漬けにされる前に届いたユージオの言葉…ユージオが去った後、俺たちはすぐさま青薔薇の氷から解放された。いきなりのことだったが、おそらくユージオが、術がすぐに解けるようにしておいてくれたのだと悟った俺とキリトは互いに状況を確認しやった。
イーディスを倒し、騎士長ベルクーリからユージオのことを聞いた俺はここまでやってきたことを伝え、一方のキリトも、アリスに整合騎士の秘密を伝え、味方に引き入れることに成功したことを聞かされた。どうやらキリトたちも90階でベルクーリに会ったらしく、同じくユージオのことを聞いて駆け付けたらしい。
アリスが右目の封印を破った際の話を聞き、キリトの推測…右目の封印は禁忌目録ではなく、『A.L.I.C.E.』への覚醒を妨げるものではないかという話を聞いている途中で、上から降りてきたチュデルキンに見つかり、俺たちも100階へと駆け付けることになったというわけだ。
「ゴメン…キリト、フォン……アリス」
「「えっ…?」」
「僕は…アドミニストレータの誘惑に乗って、君たちを傷つけてしまった。せめて、自分の償いをしようと思ったのに…」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
まさかの友の懺悔に俺とキリトは顔を見合わせる。隣のアリスもユージオへと視線を向けているが、あまり気にしている様子はないようだった。あまりにも責任感が強く、優しすぎる友に俺たちは互いに言葉を掛ける。
「ったく…水臭いぞ、ユージオ。お前の考えていることくらい、あの時の謝罪の言葉ですぐに分かったさ」
「そうだな。それに…もし面倒かけたと思ってるなら、倍返しで恩を返してもらわないとな。まだ80階の恩も返してもらってないしな」
「…そっか。そうだったね…!」
キリトと俺の言葉に涙を拭きながらユージオは答える。そして、ユージオの視線はやはりアリスへと向き、
「…アリス…」
「……(コクッ)」
ユージオの言葉に黙って頷くことで答えるアリス。それは、色々な意味が含まれた頷きではあったが、ユージオも今はすべきことがあると分かっており、対面すべき者たちへと向き直った。
「彼女が最高司祭…アドミニストレータか?」
「そうです…6年前と何一つ変わっていない」
(自身の天命を凍結させ、美貌を保ち続けている…カーディナルが言っていた通りだな)
キリトとアリスの会話を聞きながら、俺はカーディナルの言っていたことを思い出していた。見る者の心を奪うような銀と薄紫色の髪と美貌は、確かに美しい女性だと思った。その女体を隠そうともしない彼女は、自身の美しさに絶対なる自身を持っているとも感じられた。
「ふーん…ベルクーリとファナティオはそろそろリセットする頃合いだったけど、アリスちゃんはまだ6年ぐらいしか使っていない筈よね?論理回路にエラーが起きている様子もないし、やっぱりそこにいるイレギュラーユニット共の仕業かしら?」
「…どうしたんだ?いきなりぶつくさ言い出したぞ」
「あ、ああ…まるであの様子は…」
アリスを観察しているようだ…その言葉がピッタリ当て嵌まるかのように呟きだしたアドミニストレータの言葉に俺とキリトは困惑する。アドミニストレータの言葉は誰かに言っているというよりも、自分に言い聞かせているかのように感じられたからだ。
そして、何かを思いついたのか、アドミニストレータはアリスへと問い掛け始めた。
「ねぇ、アリスちゃん…貴女、私に何か言いたいことがあるのよね?怒らないから、今言ってみなさいな」
「っ…そ、それは…!」
ベットの上で一歩を踏み出したアドミニストレータに対し、アリスは連動して思わず一歩下がろうとしていた。それ程に、アリスの中ではアドミニストレータに対し、恐怖心があったらしい。だが、彼女は下がろうとした足を堪え、失ってしまった右目に手を当てることで意を決して言葉を紡ぎ出した。
「最高司祭様…栄えある我ら整合騎士団は本日を以って壊滅致しました。私の隣に立つ僅か3名の反逆者たちの剣によってです。そして、貴女がこの塔と共に築きあげた果てしなき執着心と欺瞞ゆえにです!
我が究極の使命は剣なき民の穏やかな生活と安らかな眠りを守ることです!然るに、最高司祭様…貴女の行いは人界に暮らす人々の安寧を損なうものに他なりません」
「…へぇ~…」「だ、だまっらしゃい!?」
アリスのアドミニストレータを糾弾する言葉に激怒したチュデルキン。だが、言われた筈の当人、アドミニストレータは本当に怒ることもなく、何か感心した様子だったのが引っ掛かった。
「この半壊れの人形がぁ!?お前たち人形はせいぜいあたしの命令通りにしか動けない木偶人形で・・・・・・」
(…さっきのアドミニストレータの言葉…まるでアリスを試しているかのようだったな。一体何が奴の興味を惹いたんだ?)
喚き散らすチュデルキンの言葉をシャットアウトし、俺はアリスを観察し続けるアドミニストレータへと視線を向けていた。奴は何かを考えるようにぶつぶつと呟き続けていた。
「ふーん…やっぱり論理回路のエラーじゃなさそうね。それに敬神モジュールもまだ機能している…となると、あの者が施したコード871を自発的意思で解除したということかしら…突発的な感情ではなく…」
(あの者が施した…?アドミニストレータは右目の封印を仕掛けた奴を知っているのか…それにコード871って一体どういう意味なんだ…?)
キリトからアリスの右目が吹き飛んだ際のことを簡単に聞いていた俺は、再び聞いたコード871の意味が何なのだろうかと疑問に感じた。封印を破った代償で今はないアリスの右目へと視線が移るが、今はそれを吟味する時間はなさそうだった。一通り観察を終えたのか、アドミニストレータはベットから降りてきた。
「ふぅ…これ以上は解析してみないと分からないわね…チュデルキン」
「っ…!?」
アドミニストレータに冷たく名を呼ばれたチュデルキンに緊張が走った。その声の冷たさは、先程までの奴とは全く別人のように感じられる程だった。
「私は寛大だから、下がり切ったお前の評価を回復する機会をあげるわよ。あの4人をお前の術で無力化してみせなさい」
「は、はっ!…そ、その前に最高司祭猊下にお願いがあります!?」
「うん…?」
ベットを下へと移動させることで闘いの場を設けたアドミニストレータにチュデルキンが嘆願していた。流石のアドミニストレータも予想外だったのか、少し驚いているようだった。
「何かしら、チュデルキン?」
「この元老長チュデルキン…後生のお願いでございます!!」
「「「「…えっ!?(土下座…!?)」」」」
土下座してまでアドミニストレータに嘆願するチュデルキンの姿に、俺たち4人から揃って驚きの声が出てしまった。あのアリスまでもがドン引きしている程だ。
「猊下にお仕えしてもう長年になりますが、その長くお仕えの上で初めての不遜なお願いを申し上げ奉ります!小生、これより身命を賭して反逆者共を殲滅致します故、それを成し遂げた時には猊下の…猊下の…!猊下の尊き御身をこの手で触れ、口づけし、……一夜の夢を共にするお許しを頂けませんか!?何卒…何卒頂戴致したく…!!!」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「なぁ、アリス…」
「フォン…何も言わないでください」
チュデルキンの余りにもストレートすぎる願望に俺たちは思わず後退りしてしまそうになる程ドン引きしていた。
キリトとユージオは開いた口が塞がらず、俺は本当にこれからこいつと闘うのかとアリスに尋ねたが、彼女は現実から目を背けてしまっていた。あのアドミニストレータでさえ、驚いているのだから無理もない話ではあるのだが…
「フフッ…フフフフフッ!!いいわよ、チュデルキン」
「えっ!?」
「創生神ステイシアに誓うわ。役目を果たした時には、私の体の隅々まで一夜お前に与えましょう」
「おおぉ…おおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!小生は今!無常の歓喜に包まれております!!もはや…もはや小生は闘志万倍!生気横溢!はっきり言いますれば、無敵ですよぉぉぉぉ!!!」
眼と鼻から体液を垂れ流しながら、アドミニストレータの言葉に究極の喜びを体現するチュデルキン。そして、その使命を遂行しようと頭を支点に逆上がりの状態で神聖術の詠唱を始めた。
「システムコォォール!!ジェネレート・サーマル・エェレェェメントォォォォォ!!ヌハハハハハハ!?」
「っ…眼が!?」
両腕・両足指それぞれだけでなく、両目にも炎を灯らせたチュデルキン。だが、眼に灯った炎は、なんと奴の眼を焼き尽くしたのだ。まさかの行動に俺たちは息を呑み驚くが、奴の神聖術はまだ完成していなかった。
「ゲヘヘヘ…!お見せしましょう、我が最大最強の神聖術をぉ!!
出でよ……魔神!!反逆者共を焼き尽くせぇぇぇぇ!!!」
「「「「っ!?」」」」
チュデルキンの各部に灯っていた炎が集結し、巨大の火の玉から火の巨人…いや、奴の言葉を借りるなら火の魔神が出現した。その全身は火で構成されているようで、とてつもない温度の熱波が俺たちへと振り掛かってきていた。
「ちぃ…ふざけた見かけの癖に、まさかこんな術を使ってくるなんて…!?」
「ええ…あやつにこれ程の術が使えるとは、私も知りませんでした」
腕で顔を熱波から庇い、俺は炎の魔人を分析していた。どうやらアリスもあの魔人は初見らしく、驚きを隠せないでいるようだった。
「残念ですが、あの実態なき炎の巨人は、私の花たちでは破壊できない。防御に徹してもそう長くは持たないでしょう」
「つまり、その間に俺たちがチュデルキン本人を攻撃するしかないってことか?」
「その通りです、キリト。10秒…その時間はどうにかして防ぎます。貴方たち3人はその間にチュデルキンを討って下さい。但し、前進し過ぎてはいけない。最高司祭様に狙われてしまいますから…」
「10秒…」
「攻撃できるのはワンチャンスか…」
アリスの言葉にユージオと俺は思わず顔を見合わせる。一撃で仕留めるとなれば、武装完全支配術しかなかった。こうなったら、大剣の武装完全支配術を使うしかないと思い、俺は大剣を抜いた。
しかし、その前に炎の魔神が攻撃を仕掛けてきた。アリスは囮になるべく、素早く動き出し、魔人のヘイトを取った。そして。金木犀の剣の武装完全支配術を発動させる。
「廻れ、花たち!エンハンス・アーマメント!!!」
刀身を金木犀の花びらに変え、炎の魔人を包み込もうとするが、魔人は花たちを跳躍することで回避し、その反動でアリスを踏みつぶそうと仕掛けてきた。その動きに咄嗟に反応したアリスは自身の上空に花たちを集め、魔人を受け止める。
「ぐぅぅ!?うううぅぅ…今です!」
「分かった!まかせ…っ!?」
「「フォン!?」」
なんとか魔人を受け止めたアリスの言葉に応え、俺はチュデルキン目掛けて大剣を向け、武装完全支配術を発動させようとするが…視界がふらつき、思わずその場に膝を突いてしまった。俺の異変に二人も気づき、ユージオが駆け寄ってきた。
「フォン…まさか、さっき僕と闘った時の反動がまだ…!?」
「っ…だ、大丈夫だ。これくらいならなんとか…」
「フォン…俺がやる」
「っ…キリト…?」
なんとか立ち上がろうと大剣を杖にしようとした時、キリトの制止の言葉が聞こえた。静かに剣を抜き、俺の前に出たキリトは笑いながら言葉を発した。
「ここは俺に任せろ。だから…お前は休んでてくれ」
「……悪い、頼む…」
「任せとけ。すぅぅ…ユージオ、奴の眼を俺から逸らしてれ」
「分かった…システムコール…ディスチャージ!」
射抜くように黒剣を構え、集中力を高めるキリト。キリトの指示に従い、チュデルキンの視線を逸らすべく、ユージオはアドミニストレータ目掛けて、詠唱省略した神聖術を放った。
「げ、猊下!?お気を付けください!?」
「フフッ……ふぅ…!」
チュデルキンの心配など余所に、ユージオの放った氷の神聖術を息だけでアドミニストレータは消し去ってしまった。だが、チュデルキンの注意は完全にアドミニストレータへと向いていた。
(イメージしろ…!ユージオと闘ったフォンがしたみたいに…あの世界…SAOやALOで何度も放ってきたあの技を…!距離など関係なく貫く、一撃のイメージを!!)
「「っ!?」」
「はぁぁ…はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「…!あの姿は…!?」「こ、これは…!?」
気合と共に黒剣にライトエフェクトが発生していく中で、俺とユージオはキリトに起きた変化に驚きを隠せないでいた。闘気がキリトに逆巻く中、キリトの恰好が別のものへと変わったのだ。
ユージオは服装の変化に驚いているだけだったが、俺はその姿に目を疑った。キリトの姿…それはSAOで何度も目にしてきた『黒の剣士』そのものの恰好だったからだ。これも心意による力なのかと驚きながらも、俺はキリトの放つ一撃を見ていることしかできなかった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ぬん?何だ…!?」
「でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「なぁ…!?」「ほぉぉ…?ほあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
キリトの放った片手剣重単発ソードスキル〈ヴォーパルストライク〉は…俺が知っているものとは全く違う技として放たれた。まさしく全てを貫こうとする勢いで伸びた刀身はチュデルキンの胸元を貫いていた。
(嘘だろう……刀身があんなに伸びるなんて…)
抵抗する間もなくキリトの異常に伸びた黒剣の一撃を受けたチュデルキン。致命傷を負った体で最期に手を伸ばしたのは、やはりアドミニストレータだったが…
「がぁぁぁ…!?あ、あたしの…げい、か……!」
「はぁ…退屈なショーだったわね」
チュデルキンの刺し伸ばした手すら見ることなく、奴はそう吐き捨てたのだった。
流石にここまでキリトの出番を奪うと…そう思って、フォンがダウンした形になりました。次回からはしっかりと闘いに参加します…まぁ、4人の前にあの悪魔の人形が立ちはだかるのですが…
おそらくあと数話で前半は終わりを迎えることができるかと思います。
後半に関しては前半最終話でお知らせする予定ですので、今後にご期待頂ければと思います。
感想・ご意見もお待ちしておりますので、宜しくお願いします!
それでは!