ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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さぁ、あの悪魔の人形の登場です!
果たして、フォンたちに勝機はあるのか…大体の皆様は予想されていると思いますが、それではどうぞ!


第42話 「絶望の災禍鎧」

「巨人が…消えた…」

「キリト、君は…」

「はぁ…はぁ…」

 

キリトの放った一撃…心意版ヴォーパル・ストライクはチュデルキンの胸を貫き、奴を戦闘不能に追い込んだ。胸から大量の血が流れ、ビクともしないところを見ると、絶命しているようだった。

 

チュデルキンが倒れたことでアリスを押しつぶそうとしていた炎の魔神も消え、ユージオと俺も驚異の一撃を放ったキリトを見て呆然としていた。肩で息をするキリトはSAO時代の恰好をしていたが、集中力が切れて心意が解けたことで元の黒の礼服へと姿が戻っていた。

 

心意の違った使い方に驚きつつも、俺は現状へと目を向ける。部下がやられたというのに、アドミニストレータは悲しむことも、悔しがることもせず、ただ傍観し続けていた。

 

「まぁ、いいわ。所詮チュデルキンじゃこの程度でしょうね。最期に良いデータを引き出してくれたことだけは評価してあげられるかしらね…邪魔よ」

「「「…っ!?」」」「っ…!なんてことを…!」

 

チュデルキンの死体を、完全にゴミ同然に部屋の隅へと放り投げるアドミニストレータ。その行為にアリスから憤りの言葉が出るが、奴はそんなことなど全くお構いなしに俺たちに問いかけてきた。

 

「イレギュラーの坊やたち…詳細プロパティが参照できないのは非正規の婚姻から発生した未登録ユニットだからかなと思っていたのだけれど…貴方たち、違うわね?本当はあっちの世界から来た、向こう側の人間…そうなんでしょ?」

「そうだ…あんたの言う通り、俺たちはこの世界の本来の住人じゃない」

「っ…!フォン…キリト…?」

 

アドミニストレータの言葉に同意する俺の姿にユージオが酷く驚いていた。もっと早く話すべきだったのかもしれないと後悔しつつも、キリトと俺は奴の言葉に答え続ける。

 

「とはいっても、俺たちに与えられた権限レベルはこの世界に住む人たちと全く同等だ」

「スーパーアカウントも使ってなければ、特別な力を持っているわけでもない…あんたが持ってる権限には全く届かないレベルさ…最高司祭アドミニストレータ…いや、真の名前であるクィネラとでも呼んだ方がいいか?」

「アハハハ!図書室のチビッ子から色々な話を吹き込まれた様ね。それで?坊やたちは一体何をしに私の世界に転げ落ちてきたのかしら?」

「別にあんたに用があってこの世界に来たわけじゃないさ。ただ、俺もキリトも黙って世界が滅びるのを見ていることができないタイプでね」

「クィネラさん…貴女はそう遠くない未来に、貴女の世界を滅ぼす」

 

完全に上から目線でそう問いかけてくるアドミニストレータに俺とキリトは切り返す。俺たちの言葉にアドミニストレータは全く動じてなどいなかった。

 

「私が世界を滅ぼす?この私が?」

「そうだ。なぜなら、貴女の過ちはダークテリトリーからの総侵攻に対抗するために、整合騎士団を作り上げたこと、それ自体だからだ」

「それは民から戦う力を奪い、意識を低落させ、今の歪んだ体制を生み出してしまった原因だ。統率者と名乗っている筈の貴女がそんなことをしていいわけがない」

「…ふ~ん…如何にもあのチビッ子が言いそうなことね…不憫だわ。そこまでして追い落としたいあの子も、うかうかとそれに乗せられた坊やたちも…」

「お言葉ですが、最高司祭様。来たるべき闇の軍団の総侵攻に現在の整合騎士団では拮抗し切れないとお考えだったのは、騎士長ベルクーリ閣下も副長ファナティオ殿もご同様でした…そして、この私も…」

 

キリトから話を聞いたアリスがアドミニストレータへと疑問をぶつけていく。その疑念をアドミニストレータは黙って聞き続けていた。

 

「最高司祭様には、騎士団無き後も無辜の民人を守る手立てはおありだったのですか? お聞きしたいのはそれだけではありません。貴女は我らを親から…妻や夫、兄弟姉妹たちからも無理矢理引き離し、記憶を封じておきながら、ありもしない神界から召喚したなどという記憶を植え付けた…!どうして!?我らの忠誠と敬愛すらも信じてくださらなかったのですか!?何故我らの魂に、貴女への服従を強制するという穢れた術式を施されたのですか?!」

 

その訴えと共に左目から涙を流すアリス…その言葉は魂から出た悲鳴にも近いものだった。だが、無情にもアドミニストレータは呆れた声で答えを返してきた。

 

「心外だわ…とっても信頼していたのよ?貴女たちにプレゼントした敬神モジュールこそ、私の愛の証だわ」

「愛の証だと…?ふざけるな!そんなの、人をいいように操って駒にしてるだけじゃないか!?」

「そうよ…それがどうかしたのかしら?」

「なぁ…!」

 

俺の言葉にアドミニストレータはそれが当然だとでも言わんばかりの態度で返してきた。その返答に俺も思わず言葉を失ってしまう。

 

「私がこれを騎士たちに授けたのは、彼らがいつまでも綺麗なお人形でいられるように…くだらない悩みや苦しみに煩わせれずに済むようにって…」

「っ…そんなの…ただ単に人の感情をあんたが勝手に奪ってるだけじゃないか…!」

「叔父様が…騎士長ベルクーリ閣下が整合騎士として生きてきた300年という長き日々の間に、少しでも悩んだり苦しんだりしなかったと…誰よりも深い忠誠を貴女に捧げた人がその心中に抱え続けてきた痛みを知らないと…最高司祭様は本当にそうおっしゃるのですか…!?」

「………知ってたわよ、もちろんね…!」

「「「「っ!?」」」」

 

アリスの叫びなど吐き捨てるかのように言い切るアドミニストレータ。だが、その言葉はまだ終わらない。

 

「ベルクーリがその手のくだらない話にウジウジ悩むのは初めてじゃないのよ。実はね…100年ぐらい前にもあの子は同じようなことを言い出したの。だからね…

 

私が直してあげたのよ…ウフフ、アハハハハ!!」

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

「あの子だけじゃないわ…100年以上経っている騎士は皆そう…辛いことは何もかも忘れさせてあげたのよ。安心して、アリスちゃん。今、貴女にそんな悲しい顔をさせている記憶も消してあげるわ…何も考える必要のないお人形にちゃんと直してあげるわ」

「「「っ…!?」」」

 

狂ってる…アドミニストレータの歪んだ支配欲と愛を、言葉で目の当たりにした俺とキリト、ユージオは怒りの余り、剣を握る力を強めた。そして、今にも斬り掛かろうとした時、沈黙していたアリスが静かに口を開いた。

 

「確かに…私は今、胸を引き裂かれる程の悲しみと苦しみを感じています。けれど、私はこの痛みを、初めて感じる気持ちを消し去りたいとは思いません。なぜなら…この痛みこそが私が人形の騎士ではなく、一人の人間であることを教えてくれるからです!」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

「最高司祭様!私は貴女の愛を望まない!!貴女に直してもらう必要はありません!」

「残念だけど、貴女がどう思うかなんて関係ないの。私が再シンセサイズすれば、今の貴女の感情なんて何もかも消えちゃうだから」

「…本当にそうかな?」

 

アリスの言葉など全く聞く耳持たないアドミニストレータの表情が初めて固まった。俺の放った疑問に奴の視線がこちらに向く。

 

「何が言いたいのかしら、坊や?」

「あんたはさっきこう言ったよな?感情を消すって…なら、どうして再シンセサイズされたベルクーリはまた悩んでいるんだ?答えは簡単さ…過去に起こったことを全て消すことなんてできないからだ。あんたが自分に何をしようが、あんたの過去全てが変わるわけじゃない…そうだろ、クィネラ?」

「…ねぇ、昔の話は止めて言った筈だけど…?」

「俺が止めたところであんたが過去にしてきた事実は消えないぜ?あんたがいくら自分を変えようが、過去を否定しようが何も変わらない。あんたはただ記憶を弄って、過去にあったことをなかったことにしようと悪あがきしてるだけだ」

「貴女もまた一人の人間として生まれてきた筈だ。その事実は決して消去できない…そうだろう?」

「だったら、どうだって言うの?向こう側から来た坊やたち」

「貴女も人間である以上、完璧な存在じゃないってことさ。人は過ちを犯す生き物だ。そして、貴女の過ちはもう修正不可能なところまで来てしまっている。整合騎士団が半壊した以上、もし今すぐにでもダークテリトリーの総侵攻が始まったら人界は滅ぶぞ?」

「騎士たちを壊してきたのは坊やたちでしょう?私に責任を転換しないでくれるかしら?」

「確かにそうかもな。でも、自分だけ生き延びられたら、その後に最初からやり直せばいいとでも思ってるのなら、あんたの考えは甘すぎる…そんなことができるわけがない」

 

キリトの言葉にうすら笑いを浮かべる奴に、俺は奴の考えが甘いことを指摘する。それは、オーシャン・タートルで聞いたあのムカツク腹黒男の言葉そのものだった。

 

「向こう側の人間…この世界を傍観し続ける者たちには絶対的な権限があるからだ。奴らはこう言っていたぞ…『この世界の人間の命は向こうと比べたら軽い物』だと…そんな奴らが人界が滅んだこの世界を見た時、こう思うだろうな…『今回は失敗だった』『またやり直せばいい』ってな。そして、一つのコマンドが実行されれば、何もかもが消去されるだろうな…山も、川も、街も…そして、あんたを含んだこの世界に住む全ての人間が、その意思に関係なく消滅させられるんだ」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

「俺たちはそんな馬鹿げたことを止めるためにここを登ってきたんだ。あんたが作り上げてしまったこの歪な世界の理をぶっ壊して、向こうの世界に奴らにそんなことをさせないためにここまで来たんだ」

 

俺が告げた事実に、そんなことを知る由もなかったユージオとアリスは絶句していた。そして、俺の放った言葉にアドミニストレータは動揺することなく反論してきた。

 

「それなら、貴方たち向こう側の人間はどうなのかしら?自分たちの世界が、より上位の存在に創造された可能性を意識し、世界がリセットされないように上位者の気に入る方向にのみ進むように努力しているの?」

「「っ…!」」

「ほら、ご覧なさい。答えられないでしょう…そんなはずがあるわけがないのよ。戯れに命と世界を創造して…いらなくなったら、消し去ろうとする連中なんですもんね。そんな世界からやってきた坊やたちに、私の選択をどうこう権利があって…?

私は御免だわ…創造神を気どる連中に阿って、存在する許しを請うなんて…惨めな真似はね!私の存在証明はただ支配することのみにある!その欲求だけが私を動かし、私を生かす!この足は踏みしだくためにあるのであって、決して膝を屈するためではない!!」

「ふざけるな!何が支配だ!そうやって人界が蹂躙された後、民なき空っぽの国の玉座に座ったまま滅ぶのをただ待つだけだというのか!?」

「アハハハ!私はこのアンダーワールドをリセットさせるつもりはもちろん、最終負荷実験すら受け入れるつもりはないのよ。そのための術式は完成しているのよ。喜びなさい…誰よりも最初に貴方たちに味わせてあげるから…」

「術式…?一体何をするつもりだ…」

 

やけに自信たっぷりなアドミニストレータの言動に俺もキリトも嫌な予感を覚えていた。これまで培ってきた経験が頭の中で警鐘を鳴らしているような感覚…今までも何度か感じてきた感覚が頭を痺れさせていた。

 

「正直に言うとね、整合騎士団はただの繋ぎだったのよ。これが完成したからには、もう人形の記憶や性格を操作する必要はない…私が真に求める武力には記憶や感情はおろか、考える力すらもいらない。ただひたすらに目の前の敵も屠り続ける存在であればいい。つまり、人間である必要はないの……さぁ、目覚めなさい!私の忠実なるしもべ!魂なき殺戮者よ!!」

 

その言葉と共にアドミニストレータは虚無から出現させた紫色の宝石を頭上へと掲げ、式句を唱えた。

 

「リリース・リコレクション!!!」

 

「こ、これは…!?」

「まさか…!」

 

部屋の周辺に掛けられていた数々の武器が上空に集結し、光と共にその姿を変えた。その黄金の巨体からはいくつもの鋭利な凶刃が見え、明らかに危険だと俺の直感が危険を告げていた。

 

このまま完成させるわけにはいかない!…奴が持っている宝石が核だと思った俺は後先考えずに大剣の武装完全支配術を発動させる。

 

「エンハンス・アーマメント!!」

 

蒼輝勇槍『天零』と仮天混合剣『ルシファー』…魔神と堕天使の力が混ざり合った拳のエネルギーをアドミニストレータへと放つ。だが、

 

 

「…なぁ!?防がれた…!」

 

まるでアドミニストレータを守るかのように素早く振り降ろされた巨大な鎌の一撃により、大剣の一撃が防がれてしまった。少しの間、拳と斧は拮抗していたが、その間に奴が持っていた宝石は金の巨体へと収納されてしまい、完全武装支配術も斧により切り裂かれてしまった。

 

そして、宝石を収納した巨体が更に動き始める…全身から搭載している凶刃を展開し、その巨体を地面へと降り立たせた。

「っ…なんだ、この化け物は…!?」

「あ、ありえません…そんなことが…!?」

 

対峙する巨体…気配からして化け物と呼んでもいいそれに驚く中、アリスだけが信じられない物を見ているかのように驚愕していた。

 

「同時に複数の…30の神器を使った大掛かりな記憶開放術を使うなど、術の理に反しています…!」

「「「っ…!?」」」

「フフッ、アハハハ!!これこそ私の求めた力、永遠に戦い続ける純粋なる攻撃力…名前は…そうね、ソード・ゴーレムともしておきましょうか?」

「剣の…自動人形…!?」

「しかも30の神器が融合してるってことは…武器…いや、全身全てが神器と同等かそれ以上の化け物じゃないか…!?」

「そうよ。ソード・ゴーレムの剣一本一本が神器級の優先度を持っている…貴方たちはこのソード・ゴーレムに勝てるかしら?私が貴重な記憶領域をギリギリまで費やして完成させた最強の兵器に…」

「「「「…!!」」」」

「さぁ…闘いなさい、ゴーレム…お前の敵を滅ぼすために!」

 

アドミニストレータの言葉と共にソード・ゴーレムは動き出した。その巨体からは信じられない素早さに一瞬で距離を詰められ、ユージオが反応しきれずに対応が遅れてしまった。

 

「っ…!?(しまっ…!)」

「させない!?」

 

青薔薇の剣を抜いた時には、もう既にユージオへと凶刃がふり降ろされようとしていた。だが、咄嗟に間に入ったアリスがその刃を金木犀の剣で受け止めた。それを見た俺とキリトは

その隙に横から攻撃を仕掛けようとするが、

 

「ぐぅぅ…!しま、がはぁ……ううぅぅ!?ごぼぉ…!」

「「っ!?」」

 

剣を弾かれてしまい、体勢を整えようとしたアリス…だが、そんな隙など与えることなく、無慈悲なゴーレムの刃が彼女を貫いた。整合騎士の鎧を容易く貫き、口から血を流して、アリスはその場に倒れてしまった。

 

「ぐぅ……ああああああぁぁぁぁぁ!!」

「止せ、キリト!?」

 

アリスがやられたことに、頭に血が上ってしまったキリトがソードスキルを発動させて、ソード・ゴーレムへと切り掛かるが、

 

「うぉ…!?ごはぁぁぁ!?」

「キリト!?くそ、こうなったら…エンハンス…っ!?」

 

いとも簡単にソードスキルを無効化し、キリトの腹を貫いたゴーレムは、キリトをそのまま壁へと叩き付けた。アリスに続き、キリトまで一撃で戦闘不能に追い込まれ、俺は反動を覚悟で連続での武装完全支配術を発動させようとするが…その瞬間にゴーレムの目が俺の姿を捉えていた。そして、

 

「っ…!?ぐぅ……ああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

目が合ったと思った瞬間、俺は激痛を感じた。まるで俺の動きを読んでいるかの如く、ゴーレムは俺の両腕を斬り飛ばしたのだ。両腕と大剣が壁へと叩きつけられ、俺自身もその勢いで床に転がり飛ばされた。

 

(う、嘘、だろう……こんなにあっさりと…3人も戦闘不能にされるなんて…)

 

アリス、キリト、そして俺…もう既に闘うことができない俺たちに対し、ゴーレムは傷一つ負うことなく、たかが数十秒で戦局を決めてしまったのだ。そして、残るユージオへとその凶刃を向けようと、距離を詰めていく。

 

「(ユー、ジオ…!)」「(に、げろ…はや、くぅ…!?)」

 

声を出すこともほとんどできず、俺たちはユージオへと言葉を発するが、恐怖に呑まれたユージオは完全に体が硬直し切っていた。このままでは…そう諦めそうになった時だった。

 

『短剣を使うのよ、ユージオ!』

「「「っ!?」」」

 

その聞き覚えのある声に俺とキリトは驚き、硬直していたユージオも我に返った。

 

『床の昇降盤に刺しなさい!時間は私が稼ぐから!!急いで!』

「(シャー、ロット…!?)」

 

俺の髪から突如現れたシャーロット…いつ俺の頭に潜伏していたのかは定かではないが…その言葉と共に飛び出したシャーロットは巨大な蜘蛛へと姿を変え、ソード・ゴーレムへと飛び掛かった。

 

その巨体を生かし、タックルをゴーレムに食らわすが、ゴーレムは全く怯むことなく、反撃でシャーロットの足を切り落とした。そして、再びタックルしてきたシャーロットを体の刃を使って退け、無慈悲な一撃をシャーロットへと…

 

「っ…(止めろォォォ!?)」

 

俺の声にならない叫びなど無視し、ゴーレムはシャーロットへと振り降ろした。その一撃により、シャーロットは地面へと伏してしまい、完全に動けなくなってしまっていた。目の前で、これまで助けてきてくれたシャーロットがやられ…俺は関節から先がない腕を思わず伸ばした…もう既に瀕死のシャーロットを見て、、俺の胸の中で何かが壊れたような気がした。

 

その時だった…視界の端に不思議な光が入ってきた。その発生源へと視線を向けると、

 

(ユージオ…!?昇降盤に短剣を…まさか!?)

『良かった…間に合った』

「シャー、ロット…!」

 

ユージオが昇降盤へとカーディナルの短剣を突き刺し、そこから以前見たカーディナルのバックドアが出現していた。それを見たシャーロットから安堵の声が聞こえてきた。

 

『…最後に、一緒に闘えて、うれし……っ』

「ああぁ…あああぁ!?」

 

そのまま事切れてしまったシャーロットに、俺は無駄だと分かっていながらも腕を伸ばした…もう何もできないと分かっていても、それでも伸ばさざるを得なかった。そして、

 

「バースト・エレメント!!」

「「「っ!?」」」

 

シャーロットの命を懸けた行為により、修験したバックドア…その少し開かれた隙間から聞こえてきた声と共に今まで見たことのない威力の雷がソード・ゴーレムに放たれ、その巨体を壁へと吹き飛ばした。

 

「…ふーん…ようやくお出ましね」

「っ…!」

 

アドミニストレータのどこか確信じみた言葉を耳にしながら、俺はバックドアが開かれていくのを目にしていた。そして、そこから現れたのは…

 

「がぁ…(カーディナル…!?)」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

大図書室の司書で、アドミニストレータの分身…カーディナルが姿を現した。そのことに俺が驚いている間に、状況を瞬時に把握したカーディナルはすぐに動き出した。まずは地面に倒れているアリスへと近づき、杖を振ることで彼女を瞬く間に治療し終えてしまった。

 

そして、続くキリトをも治療し、最後に俺の方へと来て、両腕を元に戻してくれた。腕がくっついたことで痛みもなくなり、違和感がないことを確かめてから、宙に浮かんでいた大剣を掴んだ。

 

「すまない、カーディナル…助かったよ」

「礼には及ばんよ…まさか、奴があんな化け物を用意しているとは思ってもみなかったがのう」

「フォン、この方は一体…?」

「この人はカーディナル…200年前にアドミニストレータに反逆し、追放されたもう一人の最高司祭、とでも言えばいいのかな?安心しろ、この人は俺たちの味方だ。俺たちが危なかったところを助けてくれて、ここに来るまでにも何度も力を貸してくれたんだ。少なくとも、あいつよりこの世界のことを愛し、心を痛めてる方だよ」

「…ええ。それは、私の傷を治してくれたことからも…そして、その術の力からも感じた温かさからも分かります」

 

俺の説明に、カーディナルのことを納得してくれたアリス。どうにか上手く説明できたで安心していると、カーディナルはシャーロットの方へと飛んで行った。俺も思わずその後を追った。

 

「…この頑固者…!」

「済まない…俺たちを助けるためにシャーロットは…」

「お主が謝ることではない…せっかく任を解き、労い…お前の好きな本棚の片隅で望むように生きよと言ったじゃろうに…」

「最期に…俺たちと闘えて良かったって…その、シャーロットもフラクトライトを持っていたのか?」

「いや…お主たちの世界の言葉を借りるのなら、シャーロットはNPCと同じ存在じゃ」

「…そんな…でも、あの言葉は…あの話し方はまるで…!?」

「この子はもう200年も生きておった。その間、ずっとわしと語らい、多くの人間たちを見守ってきたのじゃ。お主に張り付いてからも早2年…それ程の時が経てば、例えフラクトライトを持たなくても…例えその本質が入力と出力データの蓄積だとしても、そこに真実の心が宿ることもあるのじゃ…」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

その言葉の意味を俺とキリトは良く知っていた…キリトとアスナの娘であるユイちゃん、そして今、眼前でシャーロットの死を悲しみ、アドミニストレータへと怒りを向けるカーディナルがそのことを証明していたからだ。

 

「そう…時として、愛すらも持つこともな…貴様には永遠に理解できないことであろうがな!!アドミニストレータ…虚ろなる者よ!」

 

最高司祭ともう一人の最高司祭…彼女らが目線の火花を散らしていた

だが、俺は何故か嫌な予感が拭い切れずにいた…ソード・ゴーレムをカーディナルに倒され、戦力的には圧倒的に不利な状況な筈なのに…

 

「フフフッ…アハハハハハハ!!」

 

まるでカーディナルがここにやってきたことを待っていたかのように、高笑いし続けるアドミニストレータ…その余裕がどこから来るのか分からず、嫌な感じが俺の胸中に渦巻いていた。

 

 




というわけで、強制敗北イベントでした。

そして、次回……遂に運命の分岐点となります。
その結末は…今までにない超絶長いお話となっておりますのでご期待頂ければと思います。

前半終了まで残り3話……
最終章中編『剣が映し出す世界』
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