申し訳ありません
今回、オリ主とヒースクリフとの会話がメインとなるオリジナル回となります
それではどうぞ
第75層コロッセオ
「もう!なんで、こんな決闘を受けたのよ!?」
選手控室らしき場所で、アスナはキリトを問い詰めていた。
それを壁にもたれかかりながら、俺は聞き流していた。どうしてこうなったのか……まぁ、簡単な話、アスナの一時脱退をかけ、キリトとヒースクリフが一騎討ちをすることになったのだ……負ければ、血盟騎士団に入団という条件で……
もちろん俺にもお呼びの声がかかったのだが、前に勧誘は断っていたし、別に俺にメリットがある話ではなかったので辞退した。
というわけで、今日はキリトの応援に来たのだが、まだアスナはキリトが決闘することに納得していないらしい。
「キリト君も知ってるでしょ……団長は今まで一度もHPをイエローにまで減らしたことがない、生ける伝説だって……あれはもうゲームバランスを超えてるわ」
「知ってるよ……無敵の神聖剣ってやつだろう」
「……だったら!?」
「……まぁ、こっちも簡単に負けてやるつもりはないさ」
と、キリトはやる気に満ちた目で答えた。
「もう……!?フォン君も何か言ってくれない!」
「まぁ……同じユニークスキルの二刀流ならもしかしたらがあるかもしれないだろう?」
「そ、そんな、フォン君まで……!?」
まさかの俺の言葉にアスナはがくりと肩を落とした。
(悪いな……キリト、アスナ)
結果を知っていることをキリトとアスナに心の中で謝りながら、そう答えたのだった。
そして……
俺とアスナが闘技場入り口で見守る中、遂にキリトとヒースクリフの決闘が始まった。
初手はキリトの二刀流2連撃ソードスキル〈ダブルサーキュラー〉だったが、ヒースクリフはそれを盾でいなした。そのまま、距離を詰め、〈シールドバッシュ〉でキリトの体勢を崩す、が、流石の反応速度でヒースクリフの追撃をキリトは防ぎ切った。そこから、キリトの猛攻が始まった。二本の剣からなる高速斬撃で、ヒースクリフを追い立てた。そして、運命の瞬間が訪れた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ヒースクリフが体勢を崩した隙を突き、キリトが〈スターバースト・ストリーム〉を発動させた。その高速連撃に、遂にヒースクリフの盾は大きく弾かれ、致命的な隙が生まれた。そこにキリトの最期の一撃が決まろうとした時だった。
(っ…………やっぱり……!!)
ヒースクリフがありえないスピードで動き、キリトの一撃を防いだのである。流石のキリトも何が起こったのか、分からず驚いていた。そして……ソードスキルの硬直時間で動けないキリトを、ヒースクリフの一撃が襲った……決闘はヒースクリフの勝利に終わった。
「キ、キリト君……」
ショックで動けないキリトを見て、アスナは慌てて、キリトに駆け寄って行った。
だが、確信を持った俺はそのまま気付かれないようにその場を離れた。
「……待てよ」
「うん……フォン君か」
闘技場を後にしようとするヒースクリフに声を掛けると、ヒースクリフは少しほっとした表情を見せた。
「……さっきのあの動き……なんだよ、あれ」
「……………………」
だが、俺の言葉にその表情は険しいものになった。
「…………あれは神聖剣の能力だよ。あれを使うことになるとは正直思ってもみなかったよ……流石はキリト君だ」
「……ふーん……そう誤魔化すのか。俺はてっきり、システムのオーバーアシストかと思っていたけどな」
「……何が言いたい?」
俺の指摘に、ヒースクリフの警戒心もMAXになったようだ。奴の口調が変わった。
「ここで話してもいいが……あんたも二人きりで話した方がいいだろう?」
「……いいだろう……場所を変えようじゃないか?」
俺の提案にヒースクリフも頷き、俺たちは転移結晶で移動した。
そして、来たのは血盟騎士団団長室。
「それで……フォン君はなにが言いたいのかな?」
「……俺はあんたがGM……茅場晶彦じゃないかって、思ってる」
「……ほう。かなり大胆に言ってくるな……だが、いくらなんでも荒唐無稽な話じゃないか?」
「……根拠は他にもあるさ……例えば、絶対にHPがイエローまでいかない伝説……あれも神聖剣がGM専用スキルだと考えれば、納得いく。
それに、あんたは神聖剣をあっという間に使いこなしてる……俺やキリトだって、スキルが出たばかりはすぐには使いこなせなかったのにだ……それこそ、最初からどんなスキルなのか知っていれば、話は別だ」
「…………なるほどな。確かに言われてみればだな……だが、全ては憶測ではないのかな?」
「……ああ、そうだ。けどな、俺はさっきの決闘であんたが茅場晶彦だという事実が変わっていないということを確信したんだ」
「……?変わっていない?」
俺の妙な言い回しに、流石のヒースクリフも疑問を感じたようで、眉を顰めていた。
そこで俺は一度深呼吸をした。これから言う事は俺にとっても非常にリスクが高いことだ。しかし、逆にこれを言わなければ、奴の本性を暴くことは難しいだろう。
ならば……俺は覚悟を決め、ヒースクリフに向かって言葉を放った。
「俺は……あんたが探し求めている、鋼鉄の城が飛んでいる世界……そういった種類の世界から来た……そう言えば、少しは信じるか?」
「……………………なんだと……?!」
俺の告白に、流石のヒースクリフも驚きを隠せないでいた。
「……俺は……平行世界からきた人間だ」
……
…………
…………
………………
その場を沈黙が支配した。時間にすれば、おそらく数十秒だったはずだが、
俺には時間が止まったように永い時間に感じられた。そして、口を開いたのはヒースクリフだった。
「…………なるほどな……道理で君のパーソナルデータにおかしな点が見受けられるはずだな」
「っ……!?」
喋り方とともに声も変わった。それはこの世界に来て、間もない頃……あの広場で聞いた声だった。
「……そうだ。君の言う通り、私が茅場晶彦だ」
「…………」
「君は……最初から私のことを疑っていたのかな?」
「……ああ。俺の世界じゃ、あんたの正体は、本来キリトに暴かれてたけどな」
「ふむ。やはりキリト君か……今日のことで、もしかすればと思っていたが……いやはやこうも早く正体がバレるとは……これが「「ネットワークRPGの醍醐味とも言えるかな」」……っ!?」
「…………あんたが正体を暴かれた時に言ったセリフさ」
俺は奴が言いそうだと思った、小説のセリフそのままを被せて言ってやった。さすがの茅場も表情を崩していた。
「…………ふむ。どうやら、君の世界では私たちの世界がゲーム……いや、フィクションの作品として、有名なのかな?」
「流石は天才プログラマー……そんなあんたに聞きたいことがある」
「……答えられる範囲なら答えよう……何かな」
奴は立ち上がり、例のコーヒーもどきを入れていた。俺は再び深呼吸をし、息を整えてから言葉を紡ぎ出した。
「……俺をこの世界に連れてきたのはあんたなのか?」
「…………流石の私もそんな神がかったことはできないよ……それができれば、私自身がまずそうしているさ」
「……それもそうか」
まぁ、これはまずない線だと思っていた……一応確かめてみたのだ。
「私からも質問しよう……君はこの世界にどうやってログインした?」
「…………どういう意味だ?」
「……これを見たまえ」
奴は左手でウィンドウ……おそらくGM専用だろう……を開き、それを可視化させ、俺に見えるようにした。そこには、俺のパーソナルデータが表示されていた。
「『幻想剣』…………このユニークスキルも聞きたいことがいっぱいだが……最も聞きたいのは、このプレイヤーナンバーだ……10001」
「……それがどうしたんだ?」
「……君も知っているだろう?このアインクラッドにログインしたプレイヤーは合計10000人……プレイヤーナンバーは10000までしか存在しない。だが……君は本来存在しないNo10001……いないはずの10001人目のプレイヤ―なんだよ」
「…………っ……!?」
茅場から伝えられた事実に俺は言葉を失ってしまい、目の前が歪んだ。
「……なるほど。だから、『幻想剣』などという、私がプログラムしていないユニークスキルが生まれたのか」
「……プログラム、していない……?」
「そうだ。本来、ユニークスキルは『二刀流』『神聖剣』を含む10種類を私はデザインし、システムに組み込んだ…………だが、私は『幻想剣』なんてユニークスキルはデザインすらしていない。つまり、『幻想剣』は本来存在しないはずの……
11番目のユニークスキルだ」
「……は……?」
……それじゃ、俺がこの世界に来たから……あのダンジョンも、『幻想剣』も生まれたっていうのか……?それじゃ……
「…………俺はどうすれば、元の世界に帰れる……?」
「…………すまない」
…………大きく目の前が歪んだ。どうやらショックで腰が抜けたようだ。いつの間にか、地面へとへたりこんでいた。
「……君には申し訳ないが、もう一つ悪い推測がある」
「…………………………」
呆然する俺に茅場は冷静な声で話した。
「君のパーソナルデータ……普通のプレイヤーであれば、ログインしている場所……つまり、現在位置が分かるのだが……君に至っては、ログインしている場所はおろか、ナーブギアの稼働状況すら不明になっている…………つまり……」
一呼吸を置いてから、茅場は続けた。
「…………このゲームがクリアされた時……君は元の世界に戻れるのかどうか……はっきり言えば、元の世界に戻れずに……消滅する可能性が高い」
その一言は、俺の希望を打ち砕き、俺を絶望の淵に叩き込むには十分だった。
明かされたオリ主と幻想剣の秘密・・・
次回は一気に時系列が進みますので、ご注意ください。
最終話まで、オリ主設定の更新はしない予定です。