そして、書いている内にちょっと話の方向性が迷子になりました…(笑)
多分最近シリアス書きすぎて、いちゃつかせたくなったのかなと自分的に分析してます。
そして、またしてもフォンさんがナイスアシストをしております(苦笑)
お気に入り1000突破致しました!!
投稿し始めた時にはここまで多くの皆様に読んでもらえるとは思ってもみなかったので、ちょっと実感湧いてなかったりします…
これからも頑張っていきます!
それではどうぞ!
「……ゴメン、もう一回確認していいかな?」
「ユージオ…そう言うの、もう3回目よ?」
「いや、平然とした顔で言ってるけど、こいつの感覚の方が正しいからな、アリス」
お昼前
自身の容量を遥かに超える出来事の話に僕は頭を抱えてしまっていた。信じたいけど信じられない出来事が起こり、僕は当事者であるアリスへとそう問いかける。
一方のアリスは、少し機嫌を悪くしていた。尤も、何度も彼女に確認を取っているのでそうなっても仕方ないところがあるのだが、その仕草が昔の彼女…アリス・ツーベルクがしていた仕草であり、本当に彼女が帰ってきたのだと思い、夢ではないと分からせてくれているのだが…そんなアリスにフォンがツッコミを入れていたが、彼は尚更信じられないといった表情をしていた。
「えーっと…今のアリスが元々の性格で、昨日までのあのお堅い雰囲気だったアリスはシンセサイズ?…された騎士の性格で、今は二人の人格が統合されて、ユージオが知っているアリスに戻った、ってことでいいんだよな?」
「…そ、そうだね」
「はぁ~…確かに雰囲気とか話し方とか変わってるが、どうにも現実味ねーな。完全に二次元の話じゃねーか…まぁ、なんか納得しちまってる自分もいるけどな」
「しょうがないでしょう、それが事実なんだから。なんなら、ルーリッドにいた頃の記憶とか全部話しましょうか?ユージオならそれで判別つくでしょう?」
「そこまではしなくて大丈夫だよ!?…信じるよ、アリス」
「…ありがとう、ユージオ」
僕以上に疑惑の目を向けるフォンにアリスも喧嘩を買うかの勢いでそう言い出してしまい、慌てて僕は仲裁に入る。アリスもそこまで本気ではなかったらしく、すぐに矛を収めてくれたようで安心した。
「ふぅ…そういうことか」
「フォン…どこに行くんだい?」
「軽食の用意と紅茶でも淹れてくるわ。話がゴチャゴチャし過ぎて疲れたし、お前らも休憩した方がいいだろう…それに、」
「……?」
「二人っきりで話したいこともあるだろうから、お邪魔虫の俺はいない方がいいだろう?なぁ、アリス?」
「…えっ?」「ちょ!?フォン…!」
フォンの言葉の意味が分からず首を傾げる僕に対し、アリスが立ち上がって抗議の声を上げるも、フォンはすぐさまキッチンへと退散してしまった。
「もう…!本当にあれで記憶を失ってるの?!信じられないんだけど…!」
「まぁまぁ…フォンも心配してくれていた訳だし…多分、素直に良かったねと言えないだけじゃないかな?」
去って行ったフォンの後ろ姿を恨みがましく見つめるアリス。僕自身、あのフォンの態度が素直になれてない時のものだとこの半年間で何度も見てきたため、一応誤解のないように説明をしておいた。
ただ、二人っきりにされると、僕もアリスのことを意識してしまうので、できれば一緒にいてほしかったと思ったけど…
(でも…本当に帰ってきたんだ)
頬を膨らませている表情から、やれやれといった表情に変わったアリスを見て、僕はしみじみとそんなことを思っていた。
本人曰く、二つの人格が混ざり合った形らしく、正確には昔のアリスそのものの人格ではないらしい。
あくまでも、主な人格がアリス・ツーベルクでありけれども、整合騎士アリスとしての意思も感じているらしい…ただ本人も曖昧な形で感じ取っているらしいので、それを聞かされた僕も先程まで混乱していたわけだ…フォンが理解不能だという態度を取るのも致しかたなかったのかもしれない。
「ねぇ、ユージオ。今度はいくつか私から聞いてもいいかしら?」
「うん、いいよ。でも、一体何を聞きたいんだい?」
そんなことを思っていると、そう問いかけられて僕は今度は答える側になった。先程まで頭を使い続けていたため、丁度いいかと思っていたが、アリスはキッチンの方を気にしながら質問を投げ掛けてきた。
「あのね…フォンって本当に記憶喪失なの?」
「えっ…う、うん。少なくとも僕たちのことはそうだし、キリトのことまで忘れているんだよ?どう考えても、そうとしか考えられなくないかい?」
「うん…」
何故か歯切れの悪いアリスの返事に僕も眉を顰めてしまう。そして、言うまいかどうか迷っているアリスがその先を告げた。
「実は…私がもう一人の私と邂逅した時、フォンの映現世の剣があったのよ。それも、色を失っていない…騎士の私が見た、カセドラル最上階の時みたいに光っていたのよ」
「…!?それって、赤と青の二色の…!」
「…ええ、間違いないわ。それで気になって、さっき剣を見てきたんだけど、また色を失っていたの。もしかしたら、フォンの記憶に何か関係があるのかと思ったんだけど…」
アリスの告げた事実に、キッチンにいるであろうフォンの方へと僕の視線は向いてしまった。フォンの大剣がアリスに何かの影響を与えた…僕が見た光というのも、もしかすれば、映現世の剣が放ったものだったのだろう。
「本当に不思議な剣よね…キリトがあの剣はIDが不明だって言ってたけど、あれって本当なの?」
「うん…今は天命や優先度の数値までも読み取れなくなってるけど、その通りだよ」
「本当にそんな物が存在してるなんて…少なくとも、騎士の私の記憶にはそんなものを見たことは一度もなかったわね」
騎士の時の記憶を探っているようなアリスの姿に、なんともいえない感覚に襲われる僕。頭では分かっていても、こういう姿を見ると、本当に二人のアリスが一つになったのだと思わされてしまう…慣れるまでは仕方ないのかもしれない。
「ユージオはあの剣の出自を知らないのよね?」
「うん。フォン自身も話したことは……なかったかな。あっ、でも、武装完全支配術を解放してもらった際に、カーディナルさんがフォンに何か告げてたかな」
「そう……そういえば、最高司祭様と闘っていた時、フォンが変なことを言ってたわよね?確か、映現世の剣は全ての世界を読み取って映し出すって…」
「それは…信じられないけど、本当だと思う。カセドラルで闘っている時、様々な武器へとフォンは剣を変え続けていたけど、どれも違う世界の武器みたいな感じだったから」
デュソルバートさんとの闘った後の話を思い出し、僕は映現世の剣の能力…武装変換術に関しての考察を伝えた。あの時は、フォンも曖昧な意見を言っていたから、僕も半信半疑で話を聞いていたのだが、今の現状を考えるとそう考えた方が色々と納得がいってしまうことがあるのだ。
「オトヤ・レン…ねぇ、ユージオ。もしも、フォンとキリトが…別の世界から本当にやってきた人たちだって…貴方はそう思ってる?」
「…………うん。僕はそう思ってる」
不安げにそう尋ねるアリスに、僕は確信をもって答える。
「アドミニストレータに尋ねられた時にもそう言っていたし、二人の行動や考え方もそう考えた方が色々と腑に落ちることが多いし…そもそも、僕はアドミニストレータにシンセサイズされるまで、二人と過ごした記憶を忘れてしまっていたから」
「それもキリトたちが元の世界に戻ったからそうなってしまった…そう考えているのね?」
「うん。アリスは…ゴメン、辛い記憶もあるとは思うけど…二人と過ごした記憶は戻ってる?」
「…ええ。私はカセドラルにいる時…正確には、記憶を神石に封じられていた時に思い出したわ。覚えてる?2年前、貴方たちがセルカを追って果ての山脈に行った時のこと…」
「忘れるわけがないよ…あの時は、本当に死ぬかと……待って。もしかして、フォンが言っていたあの時にかい?」
当時のことを思い出し、斬られたお腹に痛みを感じたような気がして自然と手がそちらへと向かおうとして…フォンが言っていた『女性の声』っていうのは…
「あの時のことは私もよく分かってないの…気が付いたら、私は貴方たちの傍にいて、声を掛けていたの…私はカセドラルにいるって…」
どうやら間違いないようだった。そして、それをきっかけでアリスはフォンたちの記憶を取り戻したということか…思えば、あの時は僕も朧気ながら当時の記憶が少しだけ思い出していたため、僕もその時に全てを思い出していた可能性もあったということなのかもしれない。
「カーディナル様はこのことを知っているのかしら?」
「多分分かっていると思う。だからこそ、フォンたちの状態を知って、かなり驚いていたんだと思う」
「…あの手紙の内容からするとそうよね」
アリスの言葉に頷きながら、僕は先日送られてきた手紙のことを思い返していた。
フォンが記憶を失い、キリトが呆然自失となってしまった時、僕は凍華に報告を兼ねた手紙をカーディナルさんに届けてもらうように頼んだのだ。
数日後、返事の手紙が届いたが、その字は少し乱れていた。それが多忙なために急いで書いたのか、動揺した上で書いたためにそうなったのか…内容も多くは書かれておらず、カーディナルさんも理由に見当がつかないとあった。
「キリトたちは自分たちを外から来た人間だって言ってた。この世界を見ている人たちもいるって…その人たちがこの世界を作った、創造神様たちってことなのかな?」
「でも、もしキリトたちが言っていたことが全て事実だとしたら変じゃない?」
あの時は入ってくる情報が余りにも多く、そして衝撃的すぎたこともあって流してしまっていたが、こうしてアリスと落ち着いてみると、とんでもないことを聞かされてしまったのではないかと思っていると、アリスが疑問の言葉を出していた。
「もしもこの世界が誰かに見られているというのなら、どうしてキリトたちがああなったしまったというのに、誰も介入してこようとしないのかしら」
「…そう、だよね。ずっと見られているのなら、そもそもの話、アドミニストレータの暴挙だって見逃した筈がないわけだし…」
「それに、私たちの右目に仕込まれていた封印…キリトはあの封印をその人たちの内の誰かが仕込んだ物だと言っていたわ。私たちの行動を抑制するための心理障壁だって…」
「っ…そんな…!?」
アリスの右目が吹き飛んだ一件は簡単に聞いていたが、まさかそんな理由があったとは思ってもみなかったので、僕は衝撃を受けていた。そして、ティーゼたちを助けたことを思い出し、思わず右目を抑えてしまった。
あの出来事が…ティーゼたちがライオスたちに襲われかけているにも関わらず、助けようとしたことが逸脱した行為だと見なされたことに怒りが湧き上がってしまう。
そして、それは8年前…目の前にいるアリスが連れ去られようとしていたのを、ただ見ていた時にも感じた右目の違和感…それが正しいことだと認定されてしまったことに更に怒りが湧き上がる。
「ユージオ…大丈夫?」
「っ…!?」
心配そうな声色でそう尋ねられ、僕は意識を現実へと引き戻された。眼前には、僕のことを心配そうに見つめるアリスの表情があった。
「うん…ゴメン。色々と思い出したことがあって…もう大丈夫だから」
「…本当に?まだ辛そうな顔をしているけど…?」
「大丈夫だよ…ちょっとフォンの様子を見てくるね」
「ちょ…ユージオ…」
待ったを掛ける彼女の声を無理矢理振り切り、僕はキッチンへと移動する。これ以上、アリスと話していると、感情のままに話してしまいそうで怖かった…人格が混ざり合った今、彼女に負担や心配を掛けたくなかった。
「なに逃げてんだよ、お前」
「…聞こえていたのかい?」
こちらを振り返らず、キッチンの小窓から外の光景を眺めているフォンにそう問い掛けられ、先程の話が聞こえていたのかと思い、そう尋ねてしまった。
「聞いてねーよ。ただ、そんな雰囲気で来られたら、何かあったんだろうなってことくらいは分かるわ」
「そっか…別に逃げてるわけじゃないよ。まだ…アリスとの距離感が掴めてないだけだよ」
「あっそ…」
素っ気なくそう答えるフォンは一人紅茶を楽しんでいた…道理で全く帰ってくる気配がないと思っていたら、最初からそのつもりがなかったらしい。
「いいじゃねーか…アリスは一応元の人格に戻ったんだろう?お前にとっては良い結果になったわけだろうが…」
「そうなんだけど…」
フォンの言葉に僕はなんともいえない感情に襲われ、答えも歯切れが悪くなってしまった。だが、そんな僕のことなど気にすることもなく、フォンは言葉を放った。
「本当の人格に戻ったからこそ、昔の罪悪感でどう接していいか分からないってか?」
「…!?」
まるでこちらの心情などお見通しだとばかりに放ったその一言に、僕の体は硬直してしまう。
「お前とアリスの話は前に聞かされたけど、今さらそれをどうこう言ったってどうしようもないだろうが…昔のお前は子供で、どうこうできた問題じゃないだろうが」
「……でも、僕がアリスを見捨てたのは事実だ。君やキリトが彼女を連れ戻そうとしたのに、僕は……いたっ!」
思わず言葉に詰まった僕の脳天に手刀が落ちた。いきなりのことに思わず声が出てしまったが、手刀を繰り出した犯人…フォンは呆れた表情で僕の方へとようやく視線を向けていた。
「なら聞くが…お前はアリスのどこにいたいんだ?」
「…えっ…?」
「お前の話をずっと聞いてきたが、お前はアリスの助けになりたい、彼女の力になりたいって思ってたわけだ。じゃあ、その理由は何だ?命を懸けてまで彼女を取り戻そうとした理由は?…本当は気付いてる筈なのに、お前は理由をつけて逃げているだけだ…自分にはそんな資格はない、そんな権利もないってな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「…はぁ…これはアリスも苦労しそうだなぁ(ボソッ)」
「えっ…今、何て?」
最後の一言が聞き取れず、僕は聞き返すも、フォンは二度も言う気はないと再び視線を僕から外してしまった。そして、キッチンを離れ、二階へと向かおうとしていた。
「あいつの様子を見てくる。さっき言ったことをもう一度考えてみろ…それと、盗み聞きするならもっと上手くやれ、アリス」
「えっ!?」「っ…!?」
最後にまさかの発言が飛び出し、僕は更に驚く。まさかと思い、リビングへと繋がる方へと振り返ると、アリスがこちらのことを見ていたことにようやく気付いた。アリスもまさかバレているとは思ってみなかった様で動揺していた。そんな僕たちを置いて、フォンは颯爽と二階へと上がってしまった。
「あの…ゴメンなさい。やっぱりユージオのことが気になって、追いかけたら……聞こえちゃって」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
先程の会話を全て聞かれていたのかと思い、僕はアリスを直視できず顔を背ける。できることなら今すぐ逃げ出したいくらいである。
「ユージオ、あのね…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
呆れられてしまっただろうか…それとも、嫌われたかもしれない…そんな胸中で、僕はアリスの次なる言葉を待っていた。そして、放たれた言葉は、
「私は…ユージオがいてくれて本当に良かったって思ってる」
「…えっ?」
一瞬幻聴か、それとも僕の耳が勝手に都合のいいように言葉を翻訳してしまったのかと思い、変な声が喉から出てしまった。だけど、その言葉が聞き間違いでなかったと彼女の次の言葉が証明してくれた。
「ルーリッドに戻ってきた時、不安だったもう一人の私のことを励ましてくれたでしょ?それだけじゃない…お父様たちにも貴方は勇敢に申し立ててくれた。意識を失っている私の傍やキリトたちがああなってしまって涙を流してくれた…
私はユージオが優しい人間だって知っているわ。だから…せめて私の前では無理をしないで?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「それに!騎士の私の前じゃ、あんなに大泣きしてたのに、アリス・ツーベルクの前じゃ泣けないっていうのはちょっとどうかなと思うんだけど…?」
「あ、あれは……あの時は本当に一杯一杯で…!つい泣いてしまったというか…」
「ふ~ん…でも、子供の頃は泣いてることが多かったと思うけどな~?」
「こ、子供の頃の話はズルいよ?!そんなこと言ったら、アリスだって、キリトと一緒に禁忌目録スレスレのことばっかりして、僕やフォンを困らせていたじゃないか…」
「「…フフッ…アハハハハ」」
さっきまで深刻な話をしていた筈なのに、いつのまにか僕たちは互いに笑い合っていた。そうだ…僕と彼女はこんな他愛もない話で昔は一緒に笑っていたんだ。その笑顔を…
(僕はずっと見ていたいと思っていた。彼女がアリス・ツーベルクだろうと、整合騎士アリスだろうと、笑顔の彼女と一緒にいたいと思っていたんだ)
いつからだろう…彼女のことを、アリスのことを好きだと思い始めていたのは。
4人で過ごしていた時からだったかもしれない…キリトたちとルーリッドを飛び出して剣を振るう理由を探していた時かもしれないし、アリスを取り戻すと誓った時からかもしれない。
でも、今ははっきりと分かる…僕は彼女が好きだ。キリトたちとこっそり何かをしているのを見かけた時、アドミニストレータにその嫉妬心を利用されてしまう程に、僕はアリスを大事に思っていたんだ。
けど、キリトたちと比べて、何もない僕じゃ彼女の隣にいる資格なんてないって勝手に思い込んで、諦めて…だからこそ、
『私は…ユージオがいてくれて本当に良かったって思ってる』
その一言が何よりも僕の心に突き刺さったんだ。彼女に必要とされている…僕もアリスの傍にいていいんだと思えたんだ。
「ありがとう、アリス…」
「…うん。もう大丈夫そうね」
一応笑顔でそう言ったつもりだが、上手く笑えていたようでアリスの反応を見て、少しだけホッとした。今はこれでいい…まだ気持ちを伝えるには、もう少し時間が欲しかった。
「ねぇ、アリス…もう少しだけでいいんだ。もうちょっとだけ待っててくれないかな?」
「えっ…それってどういう…」
僕の気持ちに…勇気がもう少しだけ持てるまで…そう言おうとした時だった。
ガタン!
「「…へぇ…?」」
「あっ…ゴメン、なさい…!」
何かが落ちるような音が聞こえ、僕たちは音の発生源へと視線を向ける。そこには、バスケットを足元に落とし、顔を真っ赤にしているセルカの姿があった。だが、何故か物凄く動揺しており、
「その…!のぞき見とかするつもりじゃなくて、ノックしても誰も出ないから心配で様子見を見に来たら…!?ゴメンなさい!私、ユージオと姉様がそんな関係だったとは知らなかったから……お邪魔しましたー!?」
「「……ちょっと待った!?」」
おそらく雰囲気から完全に誤解(とも言い切れないかもしれないけど)したであろうセルカの反応に、数秒遅れて状況を理解した僕とアリスはその場から逃げ出したセルカを全速力で追うのだった。
「よ、良かった~…ただ話してただけだったのね。二人がそういった関係になったのかと思って慌てちゃった」
「ゴメンなさい、セルカ。ちょっと話し込んでいたから、来たことに気付かなかったのよ」
「ううん、私の方も急に尋ねてきたから…ユージオもゴメンね」
「気にしないでいいよ、セルカ」
家を飛び出したところでセルカを捕まえられ、なんとか誤解を解いた僕たち。僕たちが付き合っていないと聞き、ホッとした半面、どこか残念そうにしているセルカに疑問を抱いたが、今は触れないでおこうと思い、僕は話を進める。
「キリトたちの看病をするためっていっても、二人で生活していてもう半年…もしかしたらと思ったのもあったから…早とちりしてゴメン」
「…本当にもういいから。それで、今日はどうしたんだい?次に来るのは確か明後日だった筈だよね?」
触れないでおこうと思ったが、セルカから切り出してしまったため、僕は強引に話を引き戻した。さっき自分が言おうとしたことはなんとか頭から追い出し、本題をセルカへと尋ねたのだが、彼女の表情はどこか険しいものだった。
「何か頼み辛いことなの、セルカ?」
「…あのね…バルボッサの叔父さんが、二人にまた開墾地の木の始末を頼みたいって…私から話を通してほしいって」
アリスが優しく尋ねたことで、言いにくそうだったセルカがここに来た理由を話してくれた。そのことかと僕とアリスはセルカの態度に納得し、彼女に応える。
「ああ、前に頼まれた奴だよね」
「確か…ギガスシダーが倒れて、ソルスの恵みがルーリッドの土地全体に行き渡るようになったから、開墾の目途が立ったのよね?」
「うん。そのぐらいはお安い御用だよ。前はアリスが行ったから、今度は僕が行くよ。明日、開墾地の方に行けばいいのかい?」
「……二人はどうとも思わないの?」
僕たちの反応にセルカの表情が更に険しくなる。
「こんなの…余りにも勝手すぎるわ!あの人たち、バルボッサさんもリダックさんも、姉様たちが村に住むことを良しとしなかったくせに、困った時にだけ助けてもらおうだなんて、いくらなんでも……!」
セルカが憤る理由が僕たちを心配してとのことで、彼女が僕たちを心配してくれているのだと分かり、少し笑みが零れる。
「大丈夫だよ、セルカ。必要としてくれているってことは有難いことだし、こうして村の近くに住まわせてもらっているんだ」
「ええ。今は駄目でも、いつかは村に戻れるかもしれないでしょ?その時のためにも、できることがあるのならしておきたいのよ。それに、貴女がそう思ってくれるだけで私は十分に嬉しいから」
「…二人とも、本当に無理してない?」
「ああ」「ええ」
「…そう…でも、本当に嫌だと思ったら、断っていいから!私も、来年には見習い期間が終わって、少しだけお給金がもらえるようになるから…そしたら…!」
「ありがとう、セルカ…でも、本当に大丈夫よ。貴女がこうしていてくれる…それに、ユージオも力になってくれている…私はそれだけで充分だから」
アリスの言葉に、これ以上は自分が言ってもしょうがないと判断したセルカは不安そうに、だけど姉の言葉を信じたようだ。
ともかく、明日はバルボッサさんのところに手伝いに行くことになった。キリトはアリスが看てくれているらしいので、僕は明日に備えて青薔薇の剣を手入れしておこうと思い、寝る前に倉庫へと来ていた。
その時、ふと映現世の剣が視界に入った。
以前見た時のように剣は色を失っており、使える状態で変わらないままだった。
(もしかしたらと思ったけど、そう上手い話じゃないよね)
アリスの記憶が戻り、映現世の剣があの場にあったという話を聞いた時、僕はフォンの記憶が少しだけ戻ったのではないかと期待したのだが、残念ながらフォンは未だに記憶喪失のままだった。けど、僕は昼間に言われたフォンの言葉…いや、彼の態度を見て、あることを思った。
(フォン自身の根底は変わってない)
『…本当は気付いてるんじゃないか?お前が誰のためにその剣を振るっているのかってことをさ』
『本当は気付いてる筈なのに、お前は理由をつけて逃げてるだけだ』
記憶を失っていても、そう言ってくれるフォンの優しさは変わっていない…そんなことを思いがら、僕は青薔薇の剣の手入れを進めていった。
ようやくアニメの一話へとお話が戻ってまいりました。
そして、タイミングが悪いセルカ…(笑)
残念ながら(?)、ユージオとアリスがくっつくのはもう少し先のお話になります。
そして、次回もまたシリアスです…ユージオとアリスに現実を突きつけるあの人物が現れます…そうです、彼です!
それではまた!
rain/虹さん、Laupeさん、
ご評価ありがとうございました!