ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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えー・・・まず、ユイちゃんファンの皆さん、誠に申し訳ありません(土下座)

ユイちゃん登場シーン、完全カットになります。
もちろん、現在考えている企画でユイちゃんには、大いに大暴れ・・・もとい
出番を増やす予定ですので、ご容赦頂ければと思います。

ちなみに、冒頭のヒースクリフさんの台詞は、「勇者よ、世界の半分をやろう・・・手を組む気はないか」・・・みたいなテンションで言ってる節あります・・・魔王ですから


では、ごゆっくりお楽しみ下さい。


第12話 「最後のボス戦」

「…………………………………………」

75層迷宮区……俺は一人で潜っていた、ただ考えずに両手剣を振るい、ポップするモンスターをポリゴンへと変えていく。正直、もうどうでもいいでもよくなっていた。

茅場から衝撃的な真実が告げられたから、約2週間……俺は半分自暴自棄になりながら、迷宮区を潜っていた。

 

(第1層の時のアスナも、こんな気持ちだったのかもな……)

 

キリトたちから心配のメッセージが届いていたが……ろくに返信もせずに既読スルーしていた。今の俺には、それすらどうでもよくなっていた。

 

(そういえば……今日は11月6日……)

 

安全地帯で休息を取り、ふとカレンダーを見ていた時だった……その日付に俺はあることを思い出していた。

 

(明日は、スカル・リーパー戦か……)

明日が75層攻略戦……本来であれば、ソードアート・オンラインがクリアされる日である。だが、

(クリアすれば……俺は………………)

右手を見つめながら、俺はあの時、茅場に言われた言葉を思い出していた。

 

……

………

…………

「私に協力しないか……フォン君?」

「…………………………………………」

 

呆然とする俺に奴はそう問いかけてきた。

俺は言葉を発することができず、目を合わせることしかできなかった。

 

「私は本来95層で正体を現すはずだったのは、君も知っているだろう。

だが、こんな中途半端なところでゲームを終わらせるのは私の本意ではない…… そこでだ……」

 

奴は人の悪い笑みを浮かべながら、続けた。

 

「……私と手を組んでほしい。君が消えるだけだというのなら、その名をこの世界に刻み付けたいとは思わないか?」

「…………………………何が……言いたい……」

「消えるのではなく、人の記憶の中で生き続けないかと提案している……ゲームの攻略が伸びれば、君が生きられる時間も伸びる……悪い話ではないと思うがな……」

「………………………………………………………………」

「…………すぐに答えは求めない。だが良い答えが聞けることを期待しているよ」

その日はどうホームに帰ったのか……よく覚えていない……

 

そのまま答えが出ないまま……俺は迷宮区を放浪し続け、今に至る。

(…………どうすればいいんだよ…………!)

答えが出ないまま、時間だけが過ぎていった。

 

 

 

そして、運命の日がやってきた。

(結局……答えが出ないまま、来ちまった)

血盟騎士団本部……あと3時間後には75層ボス戦が始まる。

その前に、茅場にこちらの意思を示さなければならない。答えを出せないまま、団長室に向かっている時だった。

 

「今日のボス戦……参加しないでここで待っていてくれないか?」

 

会議室らしき部屋からキリトの声が聞こえてきた。どうやらアスナも一緒のようだ。ドアが少しだけ開いており、そこから声が漏れたようだ。

思わず俺は気配を消して、その会話をこっそりと聞き始めた。

 

「どうしてそんなこと言うの……?」

「転移結晶が使えない場所じゃ、何が起こるのか分からない…………

怖いんだ。君にもしものことがあったら「そんな危険な場所で一人で行って、私には安全な場所で待っていろっていうの?」……っ!」

 

アスナの言葉にキリトは言葉を詰まらせていた。そのままアスナはキリトに近づき、

 

「もしそんな場所でキリト君に何かあったら……私、自殺するよ!」

 

その言葉に俯いていたキリトは目を開いた。

 

「もう生きてる意味ないし、ただ待っていた自分が許せないもの」

「っ……ゴメン。俺、弱気になってる……!本心じゃ、二人で逃げたいと思ってるんだ……現実世界に戻れなくてもいいから……!あの森の家で、いつまでも一緒に暮らしたい……!」

「……うん……そうできたら、いいね……毎日一緒に……いつまでも」

 

でも……そう言って、アスナは続けた。自分たちの現実世界の体がどうなっているのか。ゲームをクリアするもしないも、キリトたちには時間がないことを……

泣き崩れるアスナをキリトは優しく抱きしめ、静かに呟いた。

 

「今は……戦う必要があるってことか……」

その言葉を聞いた俺は……気付かれないようにその場を後にした。

 

 

 

そして、団長室へとやってきた。ノックをすると、

「どうぞ」

という声が聞こえた。そして、扉を開けば、全ての元凶であるヒースクリフがいた。

 

「やぁ、待っていたよ…………それで、答えを聞かせてもらおうか?」

 

すぅ…………静かに呼吸を整え、俺はヒースクリフに言葉を放った。

 

「今日のボス戦直後……キリトはあんた目掛けて、ソードスキルをぶつける。

それさえ防げれば、あんたの正体はバレず、逆にキリトを孤立させることができる」

「…………それが君の答えということか」

「………………………………………………」

 

奴の問いかけに俺は黙ったまま、その目を見ていた。

 

「……いいだろう。君の言葉を信じよう。今日のボス戦はよろしく頼むよ」

 

そう言って、奴は俺に握手を求めてきたが……

 

「…………それじゃ、ボス戦でな」

 

俺はそれを無視したまま、団長室を後にしようとしたが、一つ言いたいことがあったので扉を開ける前に立ち止まった。

 

「良い機会だ……一つ聞いとくが、この世界のコーヒーみたいな緑色の飲み物も、アンタの考えなのか?」

「……だとしたら、どうしたのかな?」

「……コーヒーぐらいは元の色で良かっただろう……趣味が悪いと思ったよ」

「…………それは残念だ」

全く残念そうに聞こえない奴の言葉を後ろ背に俺はその場を今度こそ後にした。

 

 

 

75層コリニア 迷宮区前広場 

ボス攻略戦に参加するプレイヤーが集まっていた。そこには見知った顔もいた。

「お、おい!フォ、フォンじゃねぇか!?お前、無事だったのか」

「……クライン」

「ったく、お前さんは……キリトたちが心配していたんだぞ」

「エギルさんも……すみません、ちょっとゴタゴタしてまして」

「……まぁ、無事で何によりだな」

「まぁな。お前もボス戦に参加するだろう?生き残ろうぜ!」

「…………はい。また後で」

 

そう言って、クラインとエギルさんと別れた。すると、

 

「フォン!」

 

馴染み深い声に呼ばれ、振り返ると……キリトとアスナがいた。

 

「良かった…………無事だったんだね」

「お前……心配したんだぞ!メッセージも返信なかったし!」

「……悪い……ちょっと色々あってな」

「…………フォン、何かあったのか……?」

「えっ……?」

 

二人に心配されながら、なんでもないと返したのだが……キリトにそう聞かれ、思わず驚いてしまった。

 

「ど、どうしてだ……?」

「いや…………なんか雰囲気が変って、いうか……いつものフォンらしくないっていうか……」

「…………俺も緊張してんだよ。今回のボスはクォーターポイント……更には、結晶無効化エリアだって情報だしな」

「…………そう、なのか?」

「……それじゃ、互いに生き残ろうぜ、キリト」

 

これ以上、詮索される前に俺はキリトたちと別れた。

そして、集団から外れ、ウィンドウを開いてから、ある操作をした。

(これでよし……あとは……)

さっき大急ぎで準備したものを確認し、俺は覚悟を決めるため、大きく深呼吸をした。

(さぁ……ここからが俺の正念場だ)

気合を入れた俺はヒースクリフが演説を聞いているプレイヤーの中に混じった。

 

「……以上だ。諸君の検討を祈る」

 

……よく言ったもんだ、と俺は心の中で茅場にそう言っていた。そして、ヒースクリフが開いた、回路結晶の入り口に入り、俺たちはボス部屋の前へと転移した。

 

「……行くぞ」

 

ボス部屋の扉を開き、俺たちは一気に部屋へと流れ込み、散開した。事前情報通り、扉が閉まり、逃げ場が無くなった。ボスはフロアにはおらず、俺たちは警戒を強める。

(……確か、スカル・リーパーは……)

記憶を呼び覚ましながら、俺は上を向いた。そこには……

 

「上だ!……端まで逃げろ!」

 

天井に張り付いた75層ボス:スカル・リーパーがいた。

そして、こちらを認識したのか、奴は動きを止め、こちらに落下してきた。

俺の警告で、全員がエリア端まで退避したことで被害はなかったようだ……

しかし、

 

『GYAAAAAAAAAAAA!!!』

 

ボスはそのまま移動を開始し、俺たちに襲い掛かかった。

その時、ボスの初動に驚き、動けなかったプレイヤーが鎌の餌食になった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ……!?」

……パリン……!

「「「「「「「「「「っ!?!?!?」」」」」」」」」」

 

たったの一撃でプレイヤーがポリゴンに変えられてしまったことに、攻略組全体に衝撃と動揺が走った。だが、ボスにとってはそんなことは関係なく、奴は次なる獲物を手にかけようと、鎌を再び振るった。

 

「さ、せるかよぉぉぉぉぉ!!!」

 

ギリギリでプレイヤーと鎌の間に割って入り、鎌を両手剣で受け止める。

だが、その威力に押し負け、俺のHPが少しずつ減っていく。

 

「フォン!」「フォン君!」

 

すぐにキリトとアスナが援護に入ってくれ、なんとか鎌を弾き飛ばした。

 

「一人でダメでも……!」

「三人なら、なんとかなる!」

「……そうだな。ヒースクリフ!アンタも来い!4人で鎌を受け止めるぞ!」

「うむ!」

「タンクは固まって、攻撃を受けろ!奴の鎌には一番警戒しろ!直撃すれば、一撃でやられるぞ!ほかは側面から足を攻撃して、ダウンを狙ってくれ!!!」

 

ヒースクリフにも援護を要請し、攻略組全体に指示を出した。ポーションを飲み、俺はキリトたちと共に再び、奴に正面から向き合った。

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

ボスの鎌をキリトとアスナの二人がソードスキルで受け止める。

 

「「スイッチ!!!」」

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

キリトたちが鎌を弾いたところで、頭部分の下に潜り込んだ俺がソードスキルをぶち込んだ。幻想剣《両手剣》8連撃ソードスキル〈クァンタム・カウント〉……両手剣ソードスキルの中でも珍しい手数の多い攻撃であり、上段からの振り落とし4連撃からの切り上げの4連撃が奴の頭を揺らした。

また、このスキルには防御・スピードを下げるデバフが必中で付与するため、奴のスピードが大きく下がったのが目に見えた。スキル硬直に襲われた俺を奴は鎌で襲おうとしたが、今度はヒースクリフが間に入った。

そして、今度はキリトとアスナのソードスキルが奴に決まった。

 

『G,GYAGYAGYAYGAAAAAAAAAAAA!?!?!?』

 

その攻撃に奴は大きくたじろぎ、その隙に他のプレイヤーが側面からソードスキルを叩き込んだ。その攻撃でようやくHPバーが1本減った。

そのまま死闘は続いた。俺、キリト、アスナ、ヒースクリフを筆頭に、タンクたちが攻撃を防ぎ、隙があれば、側面から他のプレイヤーたちが攻撃する……これを繰り返していき、やっと残りHPが1本になった時だった。

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!』

 

ボスの体が赤く光ったと思えば、奴のスピードが上がったのだ。クァンタム・カウントのデバフも解除されてしまったようだ。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「た、助け……?!」

 

その動きに対応できず、5人のプレイヤーが奴に切り裂かれてしまった。

 

「くそぉぉ!……こうなったら!」

 

俺は《高速換装》を使い、装備を変える。ブラウンをメインカラーとした、丈までコートがある防具『デュアロ・デイナソー』と片手棍『フェイタル・アウト』を装備する。

 

「ヒースクリフ!」

「……なんだ!」

「カバー頼むぞ!キリト、アスナ……一瞬でいい、鎌を止めてくれ!」

「分かった!」「分かったわ!」

 

俺はキリトたちを信じ、棍棒を構え、力を溜めながら、ソードスキルの発動準備にかかった。そのまま、バトルスキル《バトルシャウト》を発動させる。

 

『GYAYAYAAAAAAAAAAAA!!!!!』

 

スキルにより、ヘイトが高まった俺にスカル・リーパーが一気に迫り、鎌を振るってくるが……

 

「させるかぁ!?」「させない!」

 

キリトとアスナが鎌を受け止めてくれる。そして、

 

「そのまま支えてろよ!これで……どうだ!!!」

 

そのまま、最大限チャージした力を……ソードスキルを解き放った。

 

バキン……!?

『GYAGYAGYA?!?!?!?!』

 

奴の自慢の鎌が見事に砕けた。

俺が放ったのは幻想剣《片手棍》重単発ソードスキル〈ネギルインパクト〉……このスキルはチャージした時間につき、威力が倍増する能力がある。

それとこのスキルには『武器破壊促進』の効果がある。キリトが使う『武器破壊』のように、このソードスキルを使って、武器のウィークポイントを狙えば、ボスモンスターの武器でも破壊することができるのだ。最大限までチャージしたスキルで、相手の武器が疲弊していれば、ほぼ高確率で破壊することできるのだ。奴の大きな鎌が逆に仇となったのだ。だが……

 

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

硬直で動けなくなった俺を見逃すわけもなく、奴は残った鎌で俺に襲い掛かった。しかし……

 

「ふんっ!」

 

そこにヒースクリフが割り込んだ。流石、GM。いい仕事をしてくれる。

そのまま、硬直が解けた俺は再びネギルインパクトのチャージに入った。

 

「キリト、アスナ!鎌の根元を狙え!!!」

「ああ!」「うん!」

 

俺の指示に、キリトは二刀流ソードスキル〈ダブル・サーキュラー〉、アスナは細剣重撃ソードスキル〈アヴォーヴ〉で鎌にダメージを与えた。

 

「これで……もう一本!!!」

 

先程に比べれば、チャージ時間は短いが、俺はもう一度ネギルインパクトを放った。先ほどの二人の攻撃と、俺の一撃が重なり、遂に奴の武器が両方とも失われる。

 

『GYAYAYAYAYAYAYAYAYAYA?!?!?!?!?!?!?!』

 

「ま、だだぁぁ!」

 

動揺した奴に追い打ちすべく、俺はすぐさま《高速換装》で装備を変えた。

今度は和風……まさしく侍の姿『柴・真剣烈火』と刀『真猛丸』を纏い、ソードスキルを発動させた。

 

キン……!

バリン!バリン!バリン!

『GYAYAYAYAYAYAYA?!?!』

 

一瞬で奴の背後まで移動した時には攻撃は終わっており、奴の片方の足の何本かが消滅していた。幻想剣《刀》ソードスキル〈霧霞〉。攻撃時間が一秒にも満たないこのソードスキルは他のソードスキルとはスピードが一線を画す。また、スピードが増せば、増すほど威力が上がるのが特徴である。その一撃に、奴は大きく体勢を崩した。

 

「「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」

 

その隙に、全プレイヤーが全力の攻撃を叩き込んだ。キリトの二刀流16連撃ソードスキル〈スターバースト・ストリーム〉、アスナの細剣最上位ソードスキル〈フラッシングペネトレイター〉、ヒースクリフの神聖剣ソードスキル『ゴスペル・スクエア』、そして、俺の幻想剣《刀》最上位ソードスキル〈俊過瞬刀〉

……それにより、残っていた奴のHPもついにゼロになり……

 

『GYAA…………!?』

パリン……!!!!!

 

奴の体は大量のポリゴンに変わり、大きく『Congratulations』の文字が表示された。

その文字にほとんどのプレイヤーがへたりこんだ。

 

「……何人死んだ……?」

「…………7人だ……」

「…………嘘だろう……まだ25層も残ってんだぞ…………!?」

 

絶望の表情のクラインの言葉は、前線メンバーの心情そのものだった。プレイヤー達が呆然とする空気の中……やはり奴だけは悠然と周りを見渡していた。

すると、奴……ヒースクリフと目が合った。そして、奴は微笑み、俺も微笑み返した。

その時だった、キリトがヒースクリフ目掛けて、片手剣単発ソードスキル〈レイジスパイク〉を繰り出した……だが、

 

キィン……!

「なぁ……!?」

 

俺の教えた通りに、奇襲を警戒していたヒースクリフはその一撃を剣で受け止めていた。その表情には笑みが浮かんでいたが…………

 

ガァン!!!

「…………どういうつもりかな……フォン君」

「これが……俺の答えだよ、ヒースクリフ……いや、茅場晶彦……!」

 

俺は後ろからヒースクリフに後ろから切りかかり、その正体を露見させた。

ここからが……俺の本当の闘いだ……




オリ主、大暴れ回Ⅱでございました。

そして、誘いを断った異界の勇者対魔王の闘いが次回のメインとなります。

また、次回の後書きでちょっとした発表も考えております。
多くの方に、この作品が読んでもらえているようで、作者も嬉しい限りです。

次回、アインクラッド編最終回・・・12時更新を予定しております。

ご感想・ご批判等、お待ちしております。

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