ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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久々の戦闘回です!

先に謝っておきます…アリスファンの皆様、またしても申し訳ございません!?
人格統合させた本当の理由がこのお話に繋がっており、ユージオ共に追い詰めた形になってしまったのです…
そして、中盤からオリジナル要素をぶっこんでおります!

それではどうぞ!




第ⅩⅡ話 「青薔薇は金木犀と並び咲く」

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

迫り来るゴブリンたちを金木犀の剣で薙ぎ払い続けるアリス。村人たちが避難するまで、一人で防衛線を維持する彼女だったが…その動きはどこかぎこちないものであった。

 

「はぁ…はぁ…くっ!」

 

息を切らし、汗を片手間で拭うアリスの表情には疲れが出ていた…肉体的な問題ではない。精神的な負担が今のアリスに大きくのしかかっていた。

 

以前のアリスであれば、この程度の戦闘など問題なくこなしていただろう。しかし、精神を統合した結果、元の人格をベースにした今のアリスにはこの戦闘…命を奪うという、人界において最大の禁忌とされるこの行いが彼女の心に大きな負担を掛けてしまっていたのだ。

 

騎士としての経験や記憶はあっても、アリス・ツーベルクとしての意識ではこれが初めての闘いであり、その齟齬が更に彼女に負担を掛けてしまっていた。

 

(負けられない…!ここで私がやられたら、村が…!?私一人でやらないと…!)

 

もう誰にも頼ることはできない…自分で退路は絶ったのだ。自分で最も助けを求めたい人の手を…思いを振り切ったのだ。アリスは悲鳴を上げかけている心を押し殺し、更に迫ってくるオークを数匹纏めて切り捨てる。

 

「ぐぎゃぎゃ!やれ!殺せ!?」

「もっとだ!もっと攻め立てろぉ!!」

「っ…まだこんなにいるのか…!」

 

後ろから更なる増援が現れ、アリスは剣を構える。今の自分の精神状態的に金木犀の剣の武装完全支配術を使うのは危険だと思い、剣技だけで持ち堪えてきたのだが、終わりが見えない闘いが剣を持つ腕の感覚を鈍らせてきていた。

 

「絶対にここから先には行かせない…!だって…!」

(…もう助けてとは言えないのだから…)

 

騎士の口調から素の口調に…心の声と共に無理矢理意識を戦況へと戻すアリス。だが、その時だった。

 

「凍華!!全てを吹き飛ばせ!」

「…えっ!?」

 

聞こえる筈のない声が上空から大きく響き、その瞬間…上空から氷と風の混合属性のブレスが戦場に放たれた。二度目の奇襲など予想していなかったゴブリンたちの体が再度空を舞った。

 

そして、ブレスを放った飛竜…凍華が超高速で空から飛来し、地面スレスレで飛び降りた影があった。慌てて飛び降りたせいで不時着してしまい、地面を転がるその人物の姿にアリスは思わず息を呑んだ。

 

「…どうして…どうして来たんですか……ユージオ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

土煙を払い、姿を完全に露わにしたユージオにアリスはそう呟くことしかできなかった。

 

 

「どうして来たって……闘うためにだよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

僕の回答にアリスは信じられないといった表情をしていた。凍華が小威力のブレスを放ち続け、敵を牽制してくれていていたので、お陰で少しだけアリスと話をする余裕が生まれた。

 

「闘う…何を言っているのですか!?私は言った筈です!貴方がここに来る必要はないと!?どうして、私の言うことを無視したのですか?!貴方はこれ以上闘わなくていい…!これは私の…世界を守るべき私たちの役目です!?だから…」

「…必要ないか…確かにそうかもしれないね」

 

彼女の言葉を嚙み締め、僕はそう呟く。けど、もう折れることはなかった…だって、僕がここに来たのは…

 

「でも、僕にはここに来る理由があるよ。君がここにいるから…僕はここに来たんだ」

「なぁ……いい加減にしてください!?私一人でなんとかできますから……もうこれ以上、貴方が傷つくことは…」

「…嫌だ!」

「っ…」

 

さっきも言われた言葉を、今度は否定した。彼女に何を言われようとも、どう思われても僕の意志が変わることはもうなかった。悲愴な顔をする彼女を見たくない筈なのに、今の僕がそうさせてしまっていることを重々理解しながら、僕は心のままに言葉を紡ぐ。

 

「僕はもう逃げたくない…!君を守りたいんだ!どんな傷を背負ったっていい!?行き先が地獄だっていい!?君を守れずに後悔するぐらいなら…死んだ方がマシだ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「だから…僕はここに来た。ちっぽけな理由かもしれないけど、僕はそのために闘いたい!そのために今まで闘ってきたんだ!それはこれからも変わらない!だから…」

 

言いたいことを思わず言ってしまい、ごちゃごちゃした言い分になってしまった…それでも、僕はここを引き下がるつもりはなかった。更に言葉を続けようとしたが、

 

「…っ!」

「なぁ…アリ…あっ!?」

 

いきなり腕を引っ張られ、僕は体勢を崩した。どういうことかとアリスに尋ねようとしたが、僕の視界に入ってきたのは、

 

「ガァァ…ゴフッ!」「ギャァァ…!?」

 

僕を背後から襲おうと迫っていたゴブリンたちが崩れ落ちる姿だった…それが、僕を助けるためにアリスが斬ったのだと一瞬で理解できた。

 

「…はぁ…昔ならこんなに頑固じゃなかったじゃない…折角覚悟を決めてたのに…もう誰の助けも借りないって…貴方たちを守らないといけないと思ってたのに」

「…アリス…?」

「ねぇ、ユージオ…そこまで言うのなら、ついてきてくれる?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

これが本当に最後…そう目と共に問い掛けてくるアリス。本当は巻き込みたくない、でも…そんな感情が彼女の声色からも感じ取れた。

 

「私の手がどれだけ血に染まろうとも…私が魔女だって非難されようとも……私が地獄よりも酷い場所へと墜ちようとも……それでも一緒に…最後まで隣にいてくれる?」

「…君を探しに向かった2年前からそのつもりだよ。君の隣にいるさ…この命が尽きるまで」

 

その言葉と共に、僕は青薔薇の剣を抜いた…そして、アリスの背後に再び現れたゴブリンとオークを一閃の如く切り裂いた…命を確かに奪った感覚を手で味わいながらも、ウンベールの腕を斬った時のような恐怖は感じなかった。

 

「……もう後戻りはできないわよ」

「その覚悟はとっくにしてきたよ」

「そう……なら、ユージオ。お願い…私に力を……一緒に闘って!」

「…うん!」

 

アリスの言葉に応えるように僕は彼女の隣に立った。

こうして、戦場に立つのは初めてだったけど、アリスと隣に立っているせいか、それともセントラル・カセドラルでの激戦の経験が余りにも濃すぎたのか…剣の握る力が緩むことはなかった。

 

凍華のブレスを掻い潜り、抜け出してきたゴブリンたちの群れが姿を現し、複数の殺気が僕らに向けられる。

 

「すぅ……剣士ユージオ!お前たちが誰であっても、僕が…僕たちがここにいる限り、お前たちの好きにはさせない!」

「行きますよ、ユージオ!」

 

アリスの掛け声に頷き、僕たちはゴブリンたちへと斬り掛かった。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

次々とゴブリンたちを斬り裂きながら、僕は僕自身に驚いていた…一対一の闘いは整合騎士たちとの闘いで経験済みで、剣の腕にも多少の自信は持っていた。それでも、本当に命を奪えるのかという不安が僕にはあった。

 

キリトやフォンみたいに…アドミニストレータを倒した時のような殺気を持った剣を振るえるのかと…けど、ゴブリンたちの命を奪いながら、僕は気付き、そして、思い出した。

 

僕が剣を振るう理由は相手を殺すためじゃない…誰かを守るために培ってきた剣であり、その最も守りたい背中が僕の後ろにあった。もしかしたら、都合のいい考え方なのかもしれない…僕がしていることも命を奪うことに変わりはない…それでも、それを分かっていながら僕は剣を振るい続けた。

 

「(頼む、青薔薇の剣…!僕に力を…今度こそアリスを…彼女の笑顔を守る力を、取り戻す力を…!)僕に貸してくれ…!エンハンス・アーマメント!!!」

 

渾身の叫びと共に僕は青薔薇の剣を地面へと突き刺す。今まで感じたことのない力と凍気が剣に集約され、一気に外部へと解き放たれる!

一瞬で戦場の全てを覆い尽くした永久凍土がアリス以外の全て…ゴブリンとオークを為す術もなく凍らせ、村を燃やす炎までも凍てつかせてしまった。

 

「アリス!」

「っ…!(ユージオ…!そうよね…貴方がここまでしてくれているのに…!私が戸惑っているわけにはいかないわよね!)吹き荒れろ、花たちよ!エンハンス・アーマメント!!!」

 

僕の言葉に応えるようにアリスも金木犀の剣の武装完全支配術を解き放つ。刀身が無数の花びらに代わり、凍てつき防御も回避すらできなくなってしまったゴブリンたちを砕き蹂躙していく。

 

「凍華!」「雨縁!」

 

そして、止めと言わんばかりに僕たちの命を受けた飛竜たちのブレスが放たれた。その過剰なまでの攻撃に敵の前線は完全に崩壊、中間にいた部隊もガタガタ…後方にいた群も動揺し、遂には逃げ出す者までも出てきた。

 

疎らに逃げ出す敵に闘いは終わりを迎えたかのように見えた…だけど、それは僕の楽観視だと思い知らされることになった。

 

「逃げるなぁ!?」

「「っ…!?」

 

逃げ出すゴブリンたちの体が逃げる方向から飛んできて、その咆哮の主の声に僕とアリスは再び身構えた。そして、その姿を確認した時、僕の体は硬直し、心臓が強く跳ねたような感覚に襲われた。

 

「敵前逃亡は死あるのみ!!たかがイウムの豚の数人に臆するなぁ?!このカルミ様の前で無様な姿を見せる者など、ダークテリトリーの戦士にあらず!最後まで闘えぇ!!」

「っ…ウガチ…!?いや、違う……」

「ユージオ、奴を知っているのですか?」

「ううん…けど、セルカを助けた時に闘った主将格のゴブリンに似ているんだ」

「なるほど…あの時の…」

 

2年前…セルカを助けに行った際に、キリトとフォンが倒したゴブリン…奴はウガチに酷似していたんだ。ウガチの体色が緑だったのに対し、奴の体色は灰色が混じった黒に近いものだったが、奴の放つ雰囲気はウガチそっくりだった。

 

奴の気配に、僕の背中に悪寒が走った。それと共にウガチに切られた腹に痛みが走ったような感覚に襲われる。

 

(あの時の僕は何もできなかった…ゴブリンたちを倒したのも、セルカを助け出したのも全部キリトたちだった…けど、二人はいない。でも…)

 

「ユージオ、気を付けてください…それなりの手練れです」

「うん…けど、負ける気は何故かしないんだ」

「奇遇ですね…私もです」

 

僕は一人じゃない…アリスが一緒にいてくれる。それに、いくら逃げているからといって、ああも命を無造作に奪うような奴に負けたくなんてなかった…その思いが恐怖に打ち勝っていた。

 

「うぉぉぉぉぉぉ!このイウムの豚共がぁ!?このカルミ様がお前たちをひき肉に変え、食らってやるわ!?」

「やれるものなら…!」「やってみなさい!」

 

周りにいるゴブリンたちを邪魔だと言わんばかりになぎ倒したカルミの言葉に、僕とアリスは答え、一気に駆け出した。奴の大柄な体格に合わせたような大きな曲刀が僕たち目掛け振り落とされるも、それを横っ飛びで躱す。

 

(くっ…さっきまでのゴブリンたちとは威力が桁違いだ!まともに受けようとしたら、腕が持っていかれる!?)

「ちょこざいな…!このカルミ様と剣を交えようとは…図々しいわ!!」

 

曲刀だけではなかった…ウガチは大剣だけを使っていたが、このゴブリンは剣を握っていない左手で拳を乱雑に振り降ろしてきた。剣と拳の乱舞に張られていた氷が次々と砕かれ、僕とアリスは回避に専念していた。

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

反撃しないのではない…僕たちは冷静に攻撃を見極めていた。確かに奴の剣はウガチよりも早い…手数も段違いだ。けど、僕はそれを冷静に見極めることができていた。僕にできるのだから、整合騎士の経験を持つアリスもできない筈がなかった。

 

『いいか、ユージオ。敵をよく見ろ、そして決して目を離すな。全力の攻撃を放つ時、敵の体…部位の筋肉は必ず張り詰め、力が漲る…それが攻撃の合図…それを観察し、見切り、決して見逃すな!』

 

(ゴルゴロッソ先輩、ありがとうございます…!あの傍付きとしての一年があったからこそ、今僕は闘えてます!そして…)

「…ユージオ!」

「っ…!」

 

脳裏に蘇ったゴルゴロッソ先輩の言葉に、僕は冷静にカルミの動きを見極めようとしていた…そして、アリスの一言で、彼女の考えを察した僕は攻戦に乗じた。曲刀と拳の貫間…ほんの少しだが、剣の一撃を振るうには十分な好機だった。

 

(対格差がどれだけ大きくても…人体の脆い部分は変わらない!それを狙う技術は嫌という程叩き込まれてきた!)

『圧倒的な不利な状況にだって勝機はあるさ…大切なのは諦めずに一瞬の勝機を狙うことだぜ。攻撃は最大の防御…っていう人もいるしな、アハハ…』

『剣筋に惑わされるな、ユージオ!敵だって、常に考えながら剣を振るっているんだ。どんな時でも思考と剣筋を切り離すな!?』

 

キリトとフォンに教わったのはただの剣術じゃない…!相手がどんな攻撃をしてきても対応できる応用力を、剣を振るうだけでなく自身の動きや目線をも交えた対人術を、そして、

 

「(剣に込める思いが重いほど、その力は鋭く、更に強くなる!)はぁぁぁ!!」

「はあぁぁ!」

 

嵐のような攻撃を掻い潜り、僕とアリスは奴の脛を交差するように切り裂いた。けど、

 

「っ…固い!?」

「やはり…秘奥義でなければ切り裂けない…!」

「ぐぅ…!この程度の傷など…うおおぉぉぉぉぉぉ!?」

 

青薔薇の剣と金木犀の剣を以てしても小さな傷を与えることしかできず、僕とアリスは言葉を漏らす…秘奥義であれな致命的な一撃を与えられるであろうが、急所ではない攻撃では硬直時に反撃の嵐を受けることになってしまう。

 

僕は間違いなく致命傷に、アリスといえども深手を負うことになるだろう。つまり、秘奥義を打ち込める隙を作らなければ、こちらに勝機はないとのことだ…僕たちに傷を与えられたことに怒りを増したカルミの攻撃が更に激しくなる。

 

「(…アリス)」

「っ……(コクッ!)ならば…これならどうだ!」

 

この状況を打開するには危険な賭けに出るしかない…青薔薇の剣を静かに構え、準備をしながら僕はアリスに目線で合図を送る。僕が何かを仕掛けようとしていることを察してくれたアリスは囮を買ってくれた。

 

そして、準備を整え終わり、僕は飛び出す。怒りを前面に押し出している奴の動きは更に凶暴に、けど隙も大きくなっていた。そこにこそ付け入る隙がある。

 

「そこだ!」

「っ…うっとおしいわ!?」

「きゃぁあ!?」

 

素早く動くアリスに翻弄されていたカルミだったが、僕の動きに気付いた奴は範囲型の秘奥義を使ってアリスを吹き飛ばした。剣で防御したアリスだったが、流石に衝撃までは殺し切れなかったようだ。

 

「これで最後だ、イウムがぁぁぁ!?」

「うおおおぉぉぉぉ!(ギリギリの瀬戸際…そこに勝機はある!)」

 

硬直が解けたカルミが更なる秘奥義を曲刀で放ってきた。それを青薔薇の剣でなんとか逸らす。技が地面に衝突した衝撃波が僕を襲うが、正面を取った僕は奴の頭目掛けて剣を突き出した。

 

「っ…そんな…!」

「グフフッ…!ガハハハハハ!!残念だったな!?」

(手を犠牲に剣を防いで…!?)

 

僕の剣を、奴は咄嗟に左手を顔の前に移したことで防いだのだ。もう少しで届きそうだった剣は奴の眉間までもう少しというところで止まってしまった。そして、反撃とばかりに奴は青薔薇の剣を握り、僕を地面へと投げ捨てた。

 

「ぐぅぅぅぅ!?」

「ギャハハハ!これでおわ……なん、だ…?」

 

背中に強烈な痛みが走る…そして、僕に止めを刺そうとした奴は…自身に起こった異変に気付いた。そして、奴の表情が歪み始める。

 

「お、俺の腕が…凍っていく…!」

「どうだい…最強の整合騎士すらも凍らせた永久凍土の威力は。いくら力が強くても、内側から凍らせられれば抵抗できないだろう…!」

 

そう…奴の左手…正確には青薔薇の剣を防いだところから奴の体がどんどんと氷出したのだ…本来は頭に突き刺して放つつもりだったのだが、防がれた際に咄嗟に切り替えて、武装完全支配術を発動させたんだ。

 

「こんな氷…腕を斬り落としてしまえば……!」

「ユージオ、避けて!?バースト・エレメント!!」

「…っ!?」「なぁ…がぁぁぁぁぁ!?」

 

アリスの言葉に僕はすぐさま横に転がり飛ぶ…その瞬間、金木犀の剣を媒介に炎と光は織り交じった一直線の光線が放たれ、奴の顔面右半分を抉った。青薔薇の氷に気を取られていた奴にはもうどうしようもなかった。

 

(2年前の…いいや、8年前の僕じゃここまでできなかった。キリトたちがあの時、連れ出してくれたから…!整合騎士たちとの闘いがあったから…!外の世界を知って学んで…これまでの全てが、今のこの時の力になってくれたんだ!

…全てが無駄じゃなかった…!例え、君たちが僕のことを忘れたりしても、僕は覚えてる。僕の英雄たちがここまで僕を導いてくれたんだ!だから…僕はもっと強くなりたい!)

 

痛みの走る体を無理矢理動かし、僕は青薔薇の剣を構えて走る。その脳裏に走るのはこれまでの闘い…そして、キリトとフォンとの思い出だった。

 

(僕は世界を守る英雄なんかになれないかもしれない…それでも、アリスと一緒に闘える力を…彼女を守れるような力を…胸を張って隣を歩けるようになるほど…強くなりたい!!)

 

僕の意志に呼応するかのように、剣が僕の全身を凍気で包む…だが、寒さは全く感じず、まるで剣の凍気を自在に操っているような感覚だった。

 

(青薔薇の剣よ……僕と一緒に強くなろう!!)

 

(あれは…鎧?ユージオの体を鎧のような何かが包んで…!)

 

青薔薇の剣が秘奥義の光を放ち、僕はカルミを射程距離に捉える。

 

一方で、アリスはユージオの姿を見て驚いていた。何かの見間違いか幻と思ったが、ユージオを包む凍気が鎧のような何かを象っている…ユージオ自身が氷華の騎士ように見えたのだ。

 

顔面の痛みに錯乱した奴は大振りの一撃を放つが、そんな一撃では僕を捉えることができるはずもなく、

 

「アインクラッド流……バーチカル・スクエア!!」

「ごぉああ!?がぁぁ……ぉぉぉぉぉおおおおぉおぉ!??!」

 

 

最初の3連撃で足を斬り飛ばし、完全に体制を崩し、降りてきた奴の頸に合わせて最後の一撃を放った。奴の断末魔と共に頸が斬り落とされ、暴力の嵐を放っていた奴の体は遂に動かなくなった。

 

指揮官がいなくなり、既に戦意を失っていたゴブリンたちは今度こそ逃走を始めたようだ。動かなくなったカルミの体を見ていた僕は、その光景に気付き、ようやく闘いが終わったのだと思った…そして、緊張の糸が切れてその場で倒れ込んでしまった。

 

「ユージオ…!大丈夫?」

「ゴ、ゴメン…終わったと思ったら、気が抜けて力が…もう大丈夫だから」

 

流石は整合騎士というべきか、僕が倒れ出してから動いた筈なのに、僕の体を抱きとめてくれたアリスに驚きつつも、もう大丈夫だと言って立ち上がる。

 

「アハハ…情けないな。本当は最後までしっかりと立っていたかったんだけど…そう上手くはいかないね」

「…馬鹿…!」

「ア、アリス…?」

 

誤魔化しも兼ねて、冗談を交えたつもりだったのだが、アリスは泣きながら僕に強く抱き着いてきた。鎧が当たって痛い…とは口が裂けても言える雰囲気ではなかった。彼女の口調がいつものものに戻っていることからもそう言うべきではないだろう。

 

「怖かった…貴方が地面に叩き付けられた時、助けないと分かっていたのに、貴方が死んじゃうじゃないかって…体が動かなくなって…」

「…うん」

「騎士なのに…私個人の感情で一杯になっちゃって……でも、貴方が来てくれた時、辛いと思った半面、嬉しくて……もう訳が分からなくなって…終いには、私と一緒に死んでくれるなんて言い出すし…!?」

「死ぬとは言ってないかな…最後まで一緒にいるって「うるさい!?」…ゴ、ゴメン…!」

 

余計なことを言ってしまって、胸に拳の一撃を喰らった…今の言葉の方が痛いかと思っていたが、やっぱり整合騎士の力での一撃はなかなかくるものがあるな…そんなことを思う程に今の僕には余裕があるのだろう。

 

「…アハハ…フフフッ…!」

「な、何笑ってるのよ!?」

 

未だに泣き続けるアリスを見て、僕は思わず笑みが零れてしまった。闘い終わったすぐ後だというのに、先程までの毅然としていた騎士としての姿から、元のアリスに戻ってしまったことがどうにも違和感が拭えなかったのだ。

 

ダークテリトリーの脅威は去り、戦火を凍らせた凍土をようやく顔を出した太陽が照らし始めていた…そんな中、アリスが落ち着いたところで、僕たちは村の皆に事情を説明するべく、南の森へと向かった。

 




今回対峙したゴブリンロード(という種別でいいのかな?)のカルミは、ウガチと同系統のゴブリンです。別にライバルとか親族だったとか、そういう設定はないです(笑)

さてと…ツルミ・ゴブリンロード(正式ネームド)との死闘…元々はアリリコのコミックで、ユージオがジャイアント族のジグジと闘うシーンがありましたので、それを参考に少し弱体化したアリスとの初共闘シーンを取らせて頂きました。

そして、最後にユージオに起こった現象……もちろん今後の布石でございます(苦笑)
更に感情が爆発したアリスとのイチャイチャ(?)で、ルーリッド村襲撃は幕を閉めることとなりました。

次回はその後のお話…色々更に詰め込む形になるかと思いますが、なんとか1話で収めて現実世界の方へと話を持っていけれればと考えております(終われなかったらゴメンなさい!?)

それでは、また。

さかな96969さん、
ご評価ありがとうございました。
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