ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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かなりの詐欺タイトルになっております(苦笑)
襲撃に関するお話は次回がメインになり、今回は前半でカットしたオーシャン・タートル到着後のユウキたちのお話になります。

基本的には原作通りになりますが、ユウキがかなり重要なことを発言します…ある意味、フォンが抱える闇の一端でございます。

それではどうぞ!

P.S. 総合評価2000突破しました!ありがとうございます!!


第ⅩⅣ話 「オーシャン・タートル襲撃」

ユージオとアリスがルーリッド村を出立した頃…

 

現実世界…オーシャン・タートルは未曽有の危機に晒されていた。

 

「どうだい、比嘉君?」

「ちょっと待って下さい……よし!予備電源に繋げれました。これでサブコントロールの機器は全て使用可能になりました!」

 

オーシャン・タートルのサブコントロール・ルームには、菊岡、比嘉、神代、そして、明日奈と木綿季の姿があり、他の自衛隊隊員たちは襲撃者の侵攻に備えて、入り口近くに陣取っていた。

 

オーシャン・タートル襲撃から23分が経過した今、なんとかサブコントロール・ルームに退避できた一行…比嘉がシステムを予備電源へと接続したことで部屋に明かりが灯り、菊岡の口から安堵の息が漏れた。

 

(…どうしてこうなっちゃたんだろう…)

 

不安の余り、明日奈の腕を掴んでいた木綿季はこれまでに起きた出来事を思い出していた。そう…木綿季たちが菊岡からアリシゼーション計画のおおよその全容を聞かされ、襲撃が起こったことの出来事を…物語は昨日…7月5日まで巻き戻る。

 

 

 

「あれが…ソウルトランスレーター…」

「…なんか…メディキュボイドに似てるね」

 

ALOにて、リズベッドたちにアリシゼーション計画のことやキリトたちの状態を告げた後、明日奈と木綿季は面会を許され、ガラス版越しに和人と蓮の姿を目にすることができていた。

 

稼働しているソウルトランスレーター…STL4号機・5号機に接続されている二人を見て、明日奈と木綿季からそんな感想の言葉が漏れた。特に、2年近くメディキュボイドに繋がれていた木綿季の感想は重く聞こえた。

 

「STLがいくつか作られているとは聞いていたけど、まさかここまでの数があるとはね…」

「ここだけではありませんよ」

 

面会に同席した神代が4号機から7号機を見て感嘆としていると、割って入るように説明の声が聞こえてきた。木綿季たちが声のした方向を向くと、

 

「試作1号機と最近テストが終了した8号機が六本木の分室、2号機、3号機はここのロアシャフトに設置されています…って、この前にもここで音弥君に話したばっかりなんですけどね」

「…安岐さん!?どうして貴女がここに…?」

「アハハ、やっぱりそういうリアクションになるわよね…簡単なことよ。私が自衛隊所属のナースだから…と言えば、分かるわよね?」

「…あっ…!そういうことだったんですね…」

「アスナ…知ってる人?」

「うん…前にキリト君とフォン君がGGOにログインして、死銃っていうプレイヤーを追っていた話はユウキも知ってるよね?その時に、千代田区の病院で二人がダイブしている間に体を看ててくれた人が安岐さんなの」

「へぇ~…初めまして、紺野木綿季です」

「はい、初めまして。そっか…君が紺野さんか…音弥君が心配していたのは貴女のことだったのね」

「フォンが…?」

 

死銃事件のことはフォンから簡単に聞いていたため、安岐がどういう人物か明日奈から聞かされた木綿季は自己紹介と共に頭を下げる。しかし、安岐の口から意外な言葉が飛び出し、木綿季は驚いた。

 

「菊岡さんに、万が一のことがあったら、紺野さんに全てを伝えてくれ、って言ってたぐらいだからね。あの大人びてる音弥君が珍しく少し焦っていたから…」

「そう、ですか…フォンたちのこと、宜しくお願いします」

「私からも…宜しくお願いします」

「ええ、任せておいて」

 

安岐の返事にホッとした二人は再びSTLへと視線を向けた。

 

「…大丈夫ですよね…キリト君」

「…もちろんよ。キリト君のフラクトライトは治療用プログラムの中で今も元気に活動しているわ。それに、SAOをクリアへと導いた英雄に、そのもう一人の立役者が一緒に行っているのよ…きっと大丈夫よ」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

その言葉を聞いてもなお、一抹の不安が明日奈と木綿季の胸中を掠めていた。明日奈が和人から送られた指輪をした左手をガラス板に当てるのに対し、木綿季は蓮からもらったネックレスにしている指輪を強く握りしめていた。

 

その様子を察し、神代は明日奈へと声を掛けた。

 

「明日奈さん。それに木綿季さんも…少しいいかしら」

「「……えっ?」」

 

話がしたいと言われた二人は神代の部屋へと移動した。神代は今から話すことを躊躇っているようだったが、罪を告白するように口を開き始めた。

 

「私は…貴女たちに話しておかないといけないことがあるの。ううん、これは旧SAOプレイヤー全員に…特に木綿季さんには告白しないといけないことね…」

「僕に…?」

「ええ…私がSAO事件の時、茅場明彦と共に長野の山奥に潜伏していたの…明日奈さんはそのことをもう知っているわね?」

「…はい」

「…その時、私の胸にはマイクロ爆弾が埋め込まれていたの」

「「…!?」」

 

まさかの神代の告白に明日奈と木綿季も息を呑んだ…彼女が見せた胸元には、確かに何かを埋め込んだ後のような切開痕が残っていた。

 

「このせいで、私は2年の間、彼の恐ろしい計画に協力を強いられていた…と世間では言われているけど、本当の事実は違うの……私はその爆弾が爆発しないことをよく分かっていたの。あれは…私が事件後に罪に問われない様にとあの人が埋め込んでくれたまやかしの凶器…あの人が私にくれた、たった一つのプレゼントだったの」

 

神代は茅場との思い出を語り始めた。

 

東都工業大学…あのオーグマーの一件にて裏で糸を引いていた重村徹大の研究室…通称『重村ゼミ』にてかつて二人が一緒だったこと

 

大学生の身でありながらアーガス…SAOを開発・運営していた会社の開発部長を兼任していた茅場を引きこもりの研究馬鹿だと誤解した神代がよく外に連れ出していたこと

 

その流れで二人が恋人関係になり、不器用ながらも幸せな時間を過ごしていたこと

 

そして…茅場がSAO事件を引き起こし、自分が茅場の考えを何も理解できていなかったと思い知らされたことを…

 

「…それから私は彼が潜伏しているのではと思って、彼の山荘に行ったの…彼の共犯者になりたいからじゃない……私…茅場君を殺すつもりだった」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

「でも…私には殺せなかった。茅場君は…私がナイフを持っているのを知ってて、いつもみたいに言ったの…『困った人だな』って…またアインクラッドに戻っていったの。私が彼を止めないといけなかったのに…!だから、明日奈さんたちを2年も閉じ込めて、音弥君をSAOに巻き込んだ上に、木綿季さんまで危ない目に逢わせて…!?」

 

「私は…私もキリト君も凛子さんのことを恨んでなんてないですよ」

「っ…!?」

 

涙と後悔と共に懺悔する神代…その言葉を遮ったのは怒りなど全く籠っていない…明日奈の優しい言葉だった。

 

「それどころか、私は団長…茅場明彦のことを本当に恨んでいるのかさえも分からないんです。確かにあの事件で多くの人が亡くなったことは事実です。団長の犯罪は決して許されることではありません。

でも、物凄く我儘な言い草ですけど…多分、私はあの世界で、キリト君と暮らした短い日々を…これからも人生の最良の一時として思い出すでしょう」

「…ぁ…」

「団長に罪があるように、私にもキリト君にも…そして、凛子さん…貴女にも罪はある。でも、それは誰かに罰してもらえれば、償えるものじゃない…永遠に許しを請える日は来ないのかもしれません…だとしても、私たちは自分の罪と向き合い続けないといけないんです」

「僕も…アスナと同じ気持ちです」

「木綿季、さん…?」

「確かに最初はビックリしたけど…あの偶然がなかったら、僕はフォンと出会ってなかったし、もしかしたら好きにもなってなかったかもしれないから…フォンだって、全部が全部辛かったとか悲しかったとかばかりじゃなかったと思います。

SAOの時の話をしてくれるフォンって…どこか懐かしそうにしている感じなんです。多分、アスナやキリトと同じ考えだと思います…」

「…ありがとう…」

 

明日奈と木綿季の言葉を受けた神代は涙を零し、二人にそう返すのがやっとだった。

 

 

 

7月6日 早朝

 

「ユウキ…もう来てたんだ」

「うん…来てもしょうがないっては分かってたんだけど…」

「ううん…私も同じ考えだから分かるよ、その気持ち」

 

蓮たちが眠るSTLをガラス越しに見つめている木綿季。そこに遅れてやってきた明日奈が声を掛けていた。同室だった筈の木綿季が、眠りから覚めた時にはいないことに気付き、ここに来ているのではないかと思って明日奈は来たのだ。

 

「今、フォンとキリトはどうしているのかな…」

「きっと大丈夫よ…キリト君はちょっと心配だけど、フォン君はしっかりしてるし…二人なら上手くやっている筈よ」

 

本当は自分も心配で堪らない明日奈だったが、気弱になっている木綿季の前でそんな姿を見せられないと気丈に彼女をフォローする。

 

「…アスナ…昨日の凛子さんの話なんだけど…」

「…?うん。それがどうかしたの?」

「…その茅場って人は…本当に凛子さんのことが好きだったんだなって思ってさ」

「…!」

 

ポツリと漏らした木綿季の言葉に明日奈は驚いていた。

 

「僕の想像なんだけど…茅場さんがSAO事件を引き起こした時、凛子さんに何も告げなかったのは…巻き込みたくなかったからじゃなかったのかな」

「どうして…そう思うの?」

「昨日の話を聞いてね…フォンと茅場さんが似てるなと思ったんだ。フォンもさ、今回のこともそうだけど、極力一人でなんとかしようとするじゃない?

僕には少しは相談してくれても良かったのにとも思うんだけど…それって、危険なことだから、僕を巻き込みたくなかったからワザとそうしたんじゃないかって…皆を危ない目に逢わせたくないから、ギリギリまで一人で何とかしようとするじゃないかって…

なのに、僕がここに来るかもしれないからって、その場合のことも考慮しているし…フォン自身も心配かけたくないのと頼りにしたいっていうのが上手くバランスが取れてないっていうか…色々器用なのに、そういうところが不器用っていうかさ…」

「それが…団長に似てると思ったってこと?」

「…うん…」

 

木綿季の総評に明日奈も同感するところがあった…昔からフォンは自身のことを顧みないことが多かった。SAOでのヒースクリフ…茅場との一騎打ちの際の話も、デス・ガン事件に関することも、今回の一件だってそうだ。

 

自分という個人をほとんど大切にしていないと言えば分かりやすいのかもしれない…尤もフォンと茅場の決定的な違いは、その理由が『誰かのための自己犠牲』か『自身の夢・憧れのための自己投身』かという点である。

 

良く言えば、誰かのために自分を犠牲にできる善人…しかし、悪く言ってしまえば、自分のことなど後回しにして事態の解決を図ろうとする無鉄砲…木綿季の言葉から明日奈は、蓮のことをそう思ってしまった。

 

「だからかな…嬉しいと思う反面、悔しいとも思うんだ。こうしてここまで来れたのに…すぐ近くにいるのに、僕は見ていることしかできないのかなって」

「それは私も同じだよ、ユウキ…できるならアンダーワールドに今すぐにでも飛び込みたい…キリト君を助けたいって…」

 

想い人を眼前にして、思わず本音が出てしまう二人。ジッと見つめる先には起動していないSTLが二台置かれている…もしもあれが使えるなら…そう考えていた時、STLが置かれているフロアへと誰かが降りてくる気配を感じた二人。

神代か安岐のどちらかが来たのだろうかと思い、そちらへと視線を向けていると、

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「ねぇ、アスナ…あれって、人…じゃないよね?」

「う、うん……あれって……ロボットだよね?」

 

自分が見ている物が信じられないといった様子の木綿季だったが、明日奈は自分が見ている物も同じだと狼狽しながらも答えた。二人が驚くのも無理はない…降りてきたのは、人ではなく、顔に大きなレンズが搭載された人型ロボットだったのだから。

 

まさか現実世界でそんなものを見ることになるとは思ってなかった二人は驚くしかなかった。しかし、そんな二人のことなど気にすることなく、ロボットは二人の方へと歩み寄ってきた。

 

「ちょ…!?こっちに来てる…!?」

「ユ、ユウキ!?私の後ろに隠れないでよ?!」

「そんなこと言ったって?!」

 

さっきまでの姉としての姿はどこにいったのやら…背後に隠れた木綿季に押され、近づくロボットに慌てる明日奈。そして、明日奈の眼前にまで迫ったロボットが顔に搭載されたレンズで明日奈を捉えた。

 

「こら!止めるッス、イチエモン!」

「「ひ、比嘉さん…!」」

 

奥から聞こえてきた声にロボットの動きが止まった。聞き覚えのある声にロボット越しに目線を向けると、そこにはやれやれといった表情をした比嘉がいた。

 

「焦った…比嘉さん、これって…ロボットだよね?」

「えーっとッスね…まぁ、その認識で間違いではないッスかね。こいつは通称『イチエモン』…正式名称はエレクトロアクティブ・マッスルド・オペレーティブ・マシーン…略すと、E.M.O.N…それに一号機の1を合わせて、イチエモンってわけッス!」

「は、はぁ…」「へぇ~、イチエモンかぁ~…」

 

木綿季の問い掛けに、ロボット…イチエモンの名付け理由を自信満々に答える比嘉。何といえばいいのか困る明日奈に対し、木綿季はイチエモンの名前を気に入っているようであった。

 

「コホン…それで、このイチエモンと何をしているんですか?」

「いや~、実は…」

「比嘉君が私をプログラムのチューニングにつき合わせているのよ。もうゼミの先輩後輩でもないのに」

「「凛子さん…!」」

「おはよう、明日奈さん、木綿季さん。昨夜はよく眠れたかしら?」

 

比嘉の言葉を遮り、下に降りてきた神代の姿にようやく安堵の声を上げる明日奈と木綿季。そのまま話はイチエモンの話へと移ったのだが…

 

「やっぱりボトルネックはバランサーの処理速度ね…予算はあるんでしょう?もっと早い処理チップは使えないの?」

「廃熱系とバッテリー消費を考えると、頭はここらが限界なんッスよ。後はもうEAPアクチュエータのチューニングで追い込んでいくしか…」

「大体、そのポリマー筋肉が前時代的なのよ!CNT使いなさいよ。そうすれば、もっと軽くなるでしょう?」

 

「(アスナ…今の話、分かった?)」

「(ううん…全然。キリト君がいたら説明できたかもしれないけど…)」

 

イチエモンに関する技術論争に熱くなる科学者二人の会話に置いてけぼりにされてしまう明日奈と木綿季…かれこれもう10分程になる熱論はまだ終わりが見えず、降参とばかりに苦笑が二人から漏れた。そんな彼女たちの様子に、神代も自分が熱くなりすぎていたことに気付き、

 

「…あっ。ゴメンなさいね、二人とも。聞いててつまらなかったでしょう?」

「いえ…お二人が大変熱く語られていたので、それはそれで見ているのは面白かったですよ」

「でも、イチエモンって、何のために作られたんですか?ラースって、ロボットまで作ろうとしているみたいに思えるんだけど…」

「これは菊さんからの依頼で作られたもんッスよ、木綿季ちゃん」

「ホント…どこまで本気なのかは私にも分からないんだけどね…アンダーワールド育ちのフラクトライトをこっちに招待するのなら、彼らにも動かせる体が必要だろう…ですって」

「じゃあ…このロボットはAIを載せるための体ってことですか?」

「いえいえ、流石にこいつには載せないッスよ、明日奈さん。イチエモンの他に、AI搭載用の二号機があって、そっちはもっとスマートッス」

「二号機…もしかして、その名前って……ニエモン?」

「その通り!そっちも僕が任命したんッスよ!」

「そ、そうなんですね…」

 

答えが分かった木綿季の問い掛けをこれまた胸を張って肯定する比嘉。その様子に、答えをどこか予想できてしまっていた明日奈は苦笑していたが、ふと気になったことがあり尋ねた。

 

「さっき、AI搭載型はスマートになるって言ってましたけど、どうしてそっちの方がスマートになるんですか?」

「ああ…それは機械だけで人間の動きを再現しようとするとバランサー…沢山の機械やパーツが必要となってくるの。人間の場合だったら、脳が勝手にバランスを取ってくれるけど、機械の場合はそれを代替して再現しようとした結果、必然的にボディが大型化してしまうのよ」

「…なるほど。つまり、頭が人口フラクトライトになれば、オートバランサーは人間と同じ性能があるから…」

「その分の機械をつける必要がない…ってこと?」

「イエス!その通りッス!そうなれば、ほぼ完全な人型ボディを実現できる…といいなという妄想的な観測なんッスけどね…でも、開発部にあるニエモンはシルエットだけで見れば、かなり人っぽいッスよ?」

「そんなに自慢するのなら早く見せて……ねぇ、比嘉君。そのニエモンは自立歩行はできないのよね?」

「へっ…?それはもちろんッス…一応CPUは載せてますけど、肝心の制御プログラムが空っぽですから」

「そう…そうよね…」

 

途中で言葉を言い止めた神代はニエモンの状態について、いきなり比嘉に尋ねた。突発的な質問に驚きながらも答えた比嘉だったが、その答えを聞いた神代は自身の懸念だったかと思うも、どこかそうは思えない自分がいた。

 

『全く…本当に困った人だな』

 

(そうよね…彼がここにいるわけがないわよね……久々にフルダイブ技術に触れたせいか、あんな夢を見ちゃったのかしら…)

 

神代の脳裏に過ったのは、今朝目覚める前に突如舞い込んできた、今はいない筈の愛する人の言葉とシルエットだった…しかし、そんなことはありえないと考えた神代は頭を切り替え、木綿季たちへと話し掛けた。

 

「明日奈さん、木綿季さん。朝ご飯はもう食べたのかしら?」

「いえ、木綿季を探しに真っ直ぐにここに来たので」

「…そういえば、朝ご飯のこと忘れてた…」

「フフッ…じゃ、一緒に食堂に行きましょうか?比嘉君はイチエモンとここで一緒に食べるらしいから」

「エヘヘッ…!では、ごゆっくり~!」

 

神代の問い掛けに、明日奈が答える横でお腹をさする木綿季。その様子に笑みを零しながら、食堂に行くことを提案する神代。3人が行くのを見送りながら、比嘉はポケットから取り出したバー型の栄養調整食品を頬張るのだった。

 

 

 

食堂に着いた一行だったが、何かを考えている明日奈のことが気になり、木綿季は声を掛けることにした。

 

「どうしたの、アスナ?さっきから様子が変だよ?」

「…うん。さっき通路ですれ違った人なんだけど…」

「通路…もしかして、白衣を着た猫背の人のこと?」

 

明日奈の言葉に道中ですれ違った該当人物のことを思い出した木綿季。その人がどうしたのかと思っていると、明日奈は何かを思い出そうとしているようだった。

 

「どっかで見かけたことがある気がして…でも、それが思い出せないの」

「それって…昔のゲームとかで会ったことがあるってこと?」

「…ううん。多分現実世界だったと思う………ダメ。どうしても思い出せない」

「明日奈さん、もしかして知り合いがいたの?」

「いえ…向こうもこっちのことは覚えてなかったみたいですから、多分私の気のせいだったと思います」

 

暗にSAO時代の知り合いなのではと推測する木綿季だったが、そうではないと首を横に振るう明日奈。しかし、思い出すことができず、神代の問い掛けにも気のせいだったと答える。

 

そのうち、朝食が運ばれてきたのだが、何故か木綿季は手を出そうとしなかった。

 

「ユウキ、食べないの?」

「えっ…あっ、ゴメン、アスナ…ちょっと考えちゃってさ。この前までは、フォンと食べていたのにいつのまにかこんな大事になってさ。何か今の状況がまだ信じられなくて…あの日々がなんか嘘だったかのように思えちゃって…」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ポツリと零れた木綿季の言葉に、明日奈も何も言うことができなくなってしまった。

 

一緒に住むというかなり濃厚な日々を送っていたとはいえ、蓮と木綿季が付き合い出して、まだ半年も経っていないのだ。その間にはオーディナル・スケールの一件などの事件もあった。

 

天涯孤独だった木綿季にとって、家族であり、最愛の人である蓮が日常からいなくなってしまったことは想像できない程の苦痛に違いなかった。

 

「大丈夫…フォン君なら、ちゃんと帰ってきてくれるから」

「…うん…ありがとう、姉ちゃん…」

 

今の自分でもそうなのだ…木綿季からすれば、自分以上に彼女は我慢し、耐えているのだと明日奈は改めて思い、自然と自分の手は木綿季の頭を優しく撫でていた。ここに潜入するためだけに髪を短くした木綿季…その痛みが少しでも和らげばいいと思ってのことだった。

 

 

「二人とも…まるで姉妹みたいね?」

「えっ…そ、そうですか…?あっ!あっちに何か見える…」

「漁船……にしては大きいよね?もしかして、日本の軍艦だったりするのかな?」

 

「あれは日本の船ではありますが、軍艦ではありませんよ」

 

無言で互いのことを思いやるその姿に神代からそんな感想が出た。そう言われ、嬉しい反面、一目のあるとこだと思い出した明日奈は誤魔化しついでに、外に見える船の姿へと話題を移した。

明日奈の声に釣られ、何の船だろうと木綿季が考えていると、横から解説の声が割り込んできた。

 

「朝食中に失礼致しました。おはようございます、お三方」

「おはようございます」「おはよう、中西さん」

「おはようございます…それで、軍艦じゃないのなら、あの船は一体何なんですか?」

「海上自衛隊…略称では海自ですが、その所属の艦船は護衛艦と呼ぶんです。そして、このオーシャン・タートルに随走しているあの船は5千トン型汎用護衛艦DD119『あさひ』です」

「へぇ~…」

「2台あさひ型護衛艦のネームシップで2番艦は不知火と言うんですが…」

(…この人、フォンと似た系統の人かも…)

 

自分が尋ねたことを丁寧に答えてくれた中西だったが、堰を切ったかのように艦船の説明を始めてしまった彼に、明日奈・神代と共に木綿季も笑みが零れる。以前、武器の解説に熱が入り過ぎた蓮のことも思い出してしまい、もしかしたら話が合うかもしれないとも思った。

 

そんな時だった。同じく護衛艦を見ていた明日奈が何かに気付いた。

 

「…あれ?あの船離れていきますね…」

「あさひ型はこの2隻だけで……何ですって…?………失礼」

 

明日奈の指摘通り、随走していた筈の護衛艦が離れていく姿に気付き、ウンチクを語っていた中西の様子が変わった。先程までの穏やかな態度から一転したその姿に、木綿季たちも驚いていた。

 

「菊岡二佐、中西です…たった今、あさひが西の方向へと方向転換を致しまして…確か明後日1200までは随走予定のはずでは……はい、すぐに参ります…お話の途中で申し訳ありませんが、ここで失礼致します」

「どうしたんだろう…あの船が離れていくことに何かあったのかな?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

一礼し、その場を去っていた中西を見送りながら、木綿季は今もなお離れていく護衛艦へと視線を向け、そんな疑問を持っていた。素人である明日奈も上手く答えることができないでいたが、何故か嫌な予感が胸中を過っていた。

 

 

そして、その予感は的中することとなった。

 

 

同日14時7分…オーシャン・タートルに轟音が響き渡った。

 

そう…ラースの本拠地であるここが、アメリカの特殊部隊による襲撃を受けたのだ。

 




不安になっているユウキがいる分、アスナがしっかりしている感じを意識してみました。
久々にユウキが出ましたが、口調を覚えてるからどうか心配だったのですが、意外にスラスラと書けたので安心しました。

そして、ユウキの放った意味深な言葉…その意味が分かるのはかなり先のお話になります。

というわけで、次回は襲撃後のお話になります。
フォンたちの状態に関する考察や、映現世の剣が生まれてしまった理由の一端、そして……ユウキが使用するスーパーアカウントも遂に公表です!
是非ご期待頂ければと思います!(能力の説明もありますが、解説に関しては今後のネタバレに繋がりますので、終盤に差し掛かった辺りで書く予定です。)

また、終盤の展開に関わるアンケートを今回から行わさせて頂きます。物語の本筋は変わりませんが、あの方の戦い方に関するものになりますので、お気軽に投票頂ければ有り難いです。

それではまた!

ゲームさん、鼻眼鏡26号さん、Napierさん、冷奴73世さん
ご評価ありがとうございました!


以下の戦い方のうち、見てみたい・好みだというものはどれですか?

  • 様々な武器を換装し続ける暴れ無双
  • 武器射出無双(ゲー●・オブ・バビ●ン)
  • 過剰威力での殲滅無双
  • 精神かつ覇気的要素での威圧無双
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