そのせいで、半分タイトル詐欺起きております…とりあえず、ラストに関して先に謝罪しておきます!申し訳ありませんでした!?
ともかく、どうぞ!
(まさか…ベルクーリさんがティーゼたちを試していたなんて…)
ロニエたちをキリトたちと会わせた後、聞き損ねていた、ティーゼたちが何故人界軍の補給部隊に所属しているのかを聞いた僕は一人天幕でその事実に驚いていた。
話してくれた三人はこれから食事の配給に行かなければならないとのことで、持ち場へと戻って行った。
三人が言うには、人界軍の戦力はかなり厳しいものらしい。
人界軍の結成にあたり、各修剣学院にも応援が求められたらしい。それは、僕たちがいた北セントリア修剣学院も例外ではなく、ベルクーリさんと、最高司祭代理という形でカーディナルさんが直接話をしに来たらしい。
その時、対応したアズリカ先生がゴルゴロッソ先輩やリーナ先輩、ウォロ先輩と並び、ティーゼたち三人の従軍を推薦したのだという。なんでも、僕たちがカセドラルに連れて行かれてから、必死に修練を積んでいた彼女たちの実力を見込んでとアズリカ先生はベルクーリさんたちに説明したようだが、僕たちが戦場に向かうであろうとアズリカ先生が予見していたようだと、ティーゼたちは話していた。
キリトたちもアズリカ先生は謎が多いと評していたが、それはある意味的を得ていたのかもしれない…ああいう人を先見の目があるというのだろうか?
ともかく…アズリカ先生の推薦の上、三人同時にベルクーリさんと立ち合ったのだという。ロニエが神聖術で援護し、ティーゼが囮となって秘奥義をぶつけたところで、本命のマーベルが神聖術と秘奥義を合わせた一撃を放つも、ベルクーリさんには一歩届かなかったらしい。
まぁ、ベルクーリさんは彼女たちの実力を認め、従軍を認めてくれたのだという…ちなみに、マーベルの戦術はどこで覚えたのかと尋ねると、案の定フォンが教えてくれたのだという。尤も、フォンが風系統の神聖術を得意とするのに対し、マーベルの得意なのは水系統の神聖術なのだが…またなんてことを後輩に教えているのかと僕が内心苦笑したのは余談だ。
それと…フレニーカも治癒術士の一員として参加していると話を聞かされた。もしかしたら、戦場で会うことになるかもしれないと聞かされ、僕が驚かない様にと教えてくれたそうだ。明日の早朝には追加の兵士を連れてゴルゴロッサ先輩たちもやってくるとのことだったので、軍議の前に挨拶ぐらいはできる時間があるかもしれない。
とりあえず、色々と飛び込んできた情報を整理し終えた僕はベットから体を起こした。そろそろカーディナルさんの元へと向かわなければ、時間が遅くなってしまう。ただでさえ、アリスに先に行ってもらっているのだ。僕も早く行かなければと思っていると…
(チャリン!)
「ユージオ、ちょっといいかしら?」
「アリス…?いいよ」
もう戻って来たのか、外からアリスの声が聞こえてきて、僕は大丈夫だと告げる。すると、中に入ってきたのは、
「久しぶりじゃな、ユージオ」
「カ、カーディナルさん!?」
アリスだけでなく、カーディナルさんまで姿を見せたことに、予想していなかった僕は叫びながら背筋を伸ばしてしまっていた。その姿に苦笑するカーディナルさん。
「そう畏まらなくていい。楽にするがよい…さてと、お主の手紙やアリスからも色々と話は聞かせてもらったが…わしの予想以上に大変だったようじゃのう」
「まぁ…そうですね。でも、全部が全部悪いことばかりではなかったと……多分思います」
「お、おう…」
自信を持ってそう言えない僕の姿に、流石のカーディナルさんも何とも言えない表情を浮かべていた。ともかく話題を変えるべきだと思い、僕はアリスと共にカーディナルさんがここに来た理由を尋ねた。
「でも、どうしてここに?今から向かおうと思っていたところだったんですが…」
「アリスから後輩たちと話をしていると聞いてのう。時間を見計らって、こちらから来たわけじゃ。それに、フォンたちの様子も見ておきたかったからのう…先程、フォンたちの元へと寄ってからこちらに来たわけじゃ」
ということは…カーディナルさんはあの二人にもう会ったということか。ならば、話は早い。僕はカーディナルさんに二人の状態について早速尋ねた。
「その…キリトとフォンは、カーディナルさんが看てどうだったんですか?」
「……うむ。少し長くなる…席に着いて話すとしよう」
カーディナルさんの言葉を聞き、片付けた簡易椅子を再び引っ張り出し、席についた僕たち。アリスがお茶を淹れてくれたところで、カーディナルさんが口を開いた。
「まずフォンとキリトの状態についてじゃが…分かる範囲で言えば、カセドラルで看た時と何も変わっていないということじゃ」
「っ…カーディナルさんであっても、二人の状態はどういうものか分からないということなんですか?」
「…すまぬ…わしに管理者権限があれば、もう少し何か分かったのかもしれんが…」
「い、いえ!?すみません、別にカーディナルさんを責めているわけじゃ…!」
「分かっておる…じゃが、わしが看れる範囲に限って言えば、どこも異常が見受けられない状態なのが現状じゃ」
僕の言葉にカーディナルさんの表情に影が差してしまったことに気付き、僕は慌てて訂正する。そんな僕の様子に、カーディナルさんも分かっていると態度で表してくれた。そんな僕たちを気遣って、アリスが話を進めてくれた。
「あの、カーディナル様…いくつかお伺いしたことがあります。キリトとフォンは…別の世界から来た人間なのですか?」
「………そうじゃ。お主たちにはそれについても説明しなければならぬな」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
ルーリッドにいた時にもアリスと話していたことだったが、あっさりと肯定したカーディナルさんの次の言葉を、僕とアリスも黙って聞き続けていた。
「お主らが思っているように、フォンたちは外の世界からやってきた者どもじゃ。じゃが、誤解しないでもらいたいのは、あやつらがこの世界に来たのは何か私欲があってなどいうわけではない…わしはあやつらの会話を聞く機会があったが、キリトは何も知らずこの世界へと来てしまい、それを助けるためにフォンも追ってこの世界へとやってきたようじゃ」
「なら、アドミニストレータと闘ったのも…」
「もちろんあやつら自身の世界の者と話をするためという目的もあったが、わしがアドミニストレータの暴挙を話したからじゃ…わしがこの世界を消すことを決意していることをも告げてな」
「「なぁ…!?」」
悲愴な表情で告げたカーディナルさんの言葉に、僕もアリスも息を呑んでしまった。世界を消す…今まで味方だと思っていた人の言葉だと思えず、僕もアリスも思わず怒気を漏らしてしまう。
「…安心せい…今はそんな馬鹿げたことは考えておらぬよ。あの二人がああまでして守り切った世界を…今はわしも守りたいと思っておる」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「不思議じゃの…この間まで、200年間ずっと生き続けておったわしは、この世界を元の形に…正しきものに治すには全てをやり直すしかないと思っておった。じゃが、フォンがこう言いおった…『最後までできることをやれ』と…
そう言ったフォンはキリトと力を合わせ、アドミニストレータを倒した…お主と変わらぬ権限しか持たないあやつらが命を賭して、道を切り拓いてくれた…だからこそ。わしはもう一人の最高司祭として諦めるわけにはいかないと…今は思ってる」
「………分かりました。今の話は、私の胸の内に秘めておきます」
「僕も…これまで助けてもらったのは確かですから…カーディナルさんの言葉を信じます」
「…ありがとう、二人とも」
「さてと…話を戻すぞ?さっきも言ったようにあやつらは外から来た人間じゃ。そして、この世界は外の人間からはアンダーワールドと呼ばれており、あやつらは体とは別にフラクトライト…魂をこちらの世界の体に移しておる状態じゃ…ここまでは良いな?」
「「…(コクッ)」」
「こちらの世界で何も異常が見受けられないということは、あやつらの世界で何かが起こったと考えるのが妥当じゃろう。あやつらが意識を失う前、あっちの世界の人間とを話している時に何かが起こった様にわしには見えたからのう」
「そういえば……そうでしたね」
説明を再開したカーディナルさんの言葉に、当時のことを思い出した僕もその通りだと思った。あの時は二人がいきなり倒れたことに驚いてそんなことを考える余裕などなかったが、言われてみればそうだなと思った。
「でも、どうして誰もキリトたちを助けに来ようとしないんですか?外の世界から来たのなら、彼らを心配する人たちもいるのではないのですか?」
「…それは…こっちの世界とあっちの世界では流れる時間が違うからかもしれぬ」
「「…!?」」
ルーリッドの時にも話に出たことをアリスが尋ねると、思ってもみなかった答えがカーディナルさんの口から飛び出し、僕たちに衝撃が走る。
「FLAというシステムで、あちらの世界からこの世界の時間の流れを加速させることができるのじゃ。もしそのシステムが働いているのだとしたら…」
「キリトたちがああなっていることにも気が付いていないかもしれない…ってことですか?」
「もしくは、気付いておっても、対応するのに時間が掛かっておるという状況かもしれぬ…(もちろん、最終負荷実験手前ということで、放置しておるという最悪の可能性もあるがのう…)」
時間の流れを操るという信じ難いことが事実だとすれば、まさかの可能性が頭に浮かんでしまう。それと同時にキリトたちはそのことを分かっていたのかという不安も心に浮かんでしまった…もし知っていたとしたら、彼らはそれすらも背負ってこの世界のために闘ってくれていたことになる。
「フォンたちはそのことを知っておったじゃろう。あちらの世界…リアルワールドと言えば、お主たちにも伝わりやすいか…そこから来た者は体は違えども、魂の寿命を消費してこちらの世界へとやってきておる…もちろん傷を負えば、リアルワールドと同じ痛みを伴う。特にあやつらは正式なアカウント…体で来たわけではない。もし天命を全損すれば、リアルワールドの体もどうなるか分からぬかったじゃろう」
「そんな…」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
僕の思っていることを肯定し、更なる追撃の言葉がカーディナルさんから告げられる…その言葉で、僕はキリトたちのことを何も知らなかったのだと…彼らが本当に命を懸けていたとは知らず…言葉を完全に失っていた。それは隣にいるアリスも同じらしく、告げられた事実に呆然としてしまっていた。
「すまん…驚くとは思っておったが、お主たちは知らなければ…いや、知るべきだと思ったのじゃ。あやつらがこの戦争の鍵を握っておる以上はな…」
「えっ…?」「どういう、ことですか…?」
その言葉を聞いた瞬間、僕とアリスの意識が引き戻された。意味が分からず、カーディナルさんへと疑問の目線をぶつけてしまうも、カーディナルさんはその真意を話してくれた。
「アリスからベルクーリの心意をキリトが弾き飛ばしたという話を聞いてのう。わしなりに考えてみたのじゃ…あやつらはああまでなりつつもどうしてこの世界に未だ留まっているのかとな。
それは…あやつら自身がまだこの世界でやらなければならないことがあると、心の奥底…魂で理解しているかれではないかと…ああなりつつもあやつらはその一心でこの世界に残っているのではないか…わしはそう思えてならないじゃ」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
そんなことが本当に有り得るのだろうか…でも、カーディナルさんの言葉をすんなりと信じられてしまった自分もいたのも事実だった。
あの時…ルーリッドにダークテリトリーが侵攻してきた時も、言葉を発することもできないのにキリトは戦場に行こうとした。
フォンも、記憶を失っているにも関わらず、(態度はもう少しなんとかならないかとは思うけど)僕やアリスの為に嫌な役になりながらも動いてくれた。
それこそ、本質は…彼らの魂はまだ死んでいないのだと思わせてくれることであり、カーディナルさんの言葉が間違っていないと思える証拠でもあった。
「キリトたちが鍵……でも、僕はもうキリトたちに闘ってほしくは…」
「…お主がそう思っておっても、それを決めるのはあやつらじゃ。じゃから、わしらはあやつらが元に戻るのを待つしかできぬ…それまであやつらを守ってやることしかできぬのじゃ」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
カーディナルさんの言葉の通りだ…僕がそう思っていても、彼らはきっと一緒に闘おうとしてくれるだろう…セントラル・カセドラルの…99階で剣を交えた時だって、彼らは追いかけて来てくれた。
なら、今の僕に…僕たちにできることは…彼らが戻ってくるまで、彼らを守り続けるだけだ。彼らが守ろうとしたこの世界を守るために…彼らの代わりにそれができるかどうか…自信はなくても、それが今できるのは僕たちだけなんだと…カーディナルさんの目はそう告げているように見えた。
「…それと、アリスに起こったことじゃが…」
「はい…確か、フォンの映現世の剣がその場にあったって…あの剣は一体何なんですか?」
「あの剣は…わしやアドミニストレータでさえ存在を知らなかった剣じゃ。フォンはその剣の正体について、あの時理解しておったようじゃがな」
「世界を映す剣…そうフォンは言ってたわね」
カーディナルさんもその正体については知らなかったらしい…ソード・ゴーレムと対峙していた時にフォンが言っていたことを思い出したのか、そう僕に確認してきたアリスに頷いて肯定した。
「別の世界っていうのは…フォンたちの世界…リアルワールドのことを指しているんでしょうか?」
「ふむ…それはあり得ぬと思う」
「「えっ…?」」
まさかの否定に僕とアリスの驚きの声が重なる。
「わしも多くを知っているわけではないが…まずリアルワールドには神器や神聖術といった概念は存在しないのじゃ。もしフォンが言っていたように、映現世の剣の能力が他世界の武器を呼び出すのだとしたら、リアルワールドから呼び出したとは考えにくいのじゃ…それこそ、この世界とは理が違う世界から呼び出した…そう言われた方が納得がいくくらいにのう…」
「それを…そんなことができるフォンって一体…?」
「分からぬ…もしかすれば、わしらが知らぬあやつだけの秘密があるのかもしれぬ…少なくとも、キリトはそうではない筈じゃ。あやつも映現世の剣については何も知らなかったようじゃしな」
彼らの話をしていた筈なのに、逆に謎が深まってしまった。知らないことだけじゃなく、分からないことばかりだ…驚愕するアリスの言葉通り、特にフォンに関してはそうだ。キリトはもしかしたら何かを知っていたのかもしれないけど…
「それにもう一つ気になることがある…フォンの記憶喪失に関してじゃ」
「まだ何かあるんですか…?」
これ以上一体何が彼らにあるというのか…お腹一杯と同時に、もう驚くことはないだろうとも思いつつ、カーディナルさんの言葉を待った。
「その前にユージオ…聞きたいことがあるのじゃが、先程フォンの傍付きであった、マーベル・ネフィリアムが来て、フォンと対面したであろう?」
「え、ええ…確かカーディナルさんが僕たちが来ているかもしれないって、彼女たちに伝えたんですよね?それがどうかしたのですか…?」
「その時のフォンの様子はどうじゃった?マーベルと接してみて、何か反応を示したか?」
「いえ…僕たちと同じように素っ気ない態度でした。マーベルが後輩だって聞いても、何の関心も示さないで…」
「…やはりか…」
僕の話を聞いたカーディナルさんが一人納得していた。置いてけぼりにされてしまった僕たちは、先程の話のどこに気になる点があったというのだろうか。
「アリスからも、ルーリッドでのフォンの様子を大まかに聞いたが…おかしいとは思わぬか?」
「おかしいことですか…?」
「そう言われてみても…料理が上手いとか口が悪いとか…記憶を失っている割には元気というか、あっさりと現状を受け入れて……あっ…」
「アリスは気付いたようじゃな」
僕一人だけが分かっていない状態のようだ。カーディナルさんの言いたいことが分かったアリスにどういうことかと目線で尋ねると、彼女は答えてくれた。
「そうよ…今思ったら変なのよ、ユージオ。だって、フォンはこの世界での記憶を失っているわけでしょう?なのに…失っている記憶の話を聞いても、それに一切の興味を持とうとしないのよ…!」
「…あっ…!」
アリスにそう言われてようやく気付いた…確かに変だ。あれだけ過去の話をしたのに、フォンは一回聞いただけで、それ以上深く聞こうとはしてこなかった。それだけじゃない…キリトのことも聞こうとしてこないし、映現世の剣に至っては見に行こうともしなかった…興味がないというよりも…まるでその話題に触れようとしているのを避けようとしている感じみたいに…
「だって…記憶を失っていた私がそうだったのよ?誰だって、自分に記憶が…他の人格があるんだって知ったら、それを知りたいと思う筈よ。なのに、フォンはそんなことなんてどうでもいいみたいに…」
「そういうことじゃ」
アリスの言った通りだとカーディナルさんが口を開き、僕たちの視線がカーディナルさんに集中する。
「あやつは自身の記憶に関することに触れない様にしておるのじゃ…まるで、その記憶に関わることから逃げるようにな…おそらくフォン自身も無意識に行っていることじゃろう。そうでなければ、もっと明確に拒絶する筈じゃからな」
「…(そうだ…そういえば、ルーリッドを出る前にも…)」
『記憶が戻った方がお前らだって、ちょっとは楽になるんだろう?』
あの言葉も…まるで僕たちのためにという風に聞こえていたけど、一言も自分の為にとは…記憶を取り戻したいとみたいな発言じゃなかった。
「それって…フォンは記憶を取り戻したくないと思っている…ということなんですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
アリスの問い掛けにカーディナルさんは何も答えなかった…いや、答えることができなかったという表現の方が正しかったのかもしれない。そうは思いたくなかったが、どうしてもその考えを否定できない自分もいたんだ。
『カーディナル…?誰だよ、お前…』
(結構グッとくるものがあるのう…分かってはおっても…これは辛いものじゃな)
ユージオ達と話を終え、一人天幕に戻るカーディナルは対面したフォンとの会話を思い出していた。記憶を失う前の優しいな雰囲気とは違う、こちらのことを拒絶するかの如く冷たい雰囲気の彼が放った一言は、カーディナルの心に刺さっていた。
(これも一つの罰なのかのう…目覚めてくれたことを喜ぶべきか、わしのことなど忘れたことを悲しむべきか……悲しむ?)
その感情にカーディナルの足が止まる。
(悲しむ…どうしてじゃ?本来なら、喜ぶべきところではないのか?あやつが記憶を失ったということは、あやつがしたことを…背負ったものを忘れたということなのに…どうしてそのことを喜べんのじゃ……前ならそう割り切れた筈なのに…
あやつにはっきりとわしのことなど覚えていないと言われた時も…)
「っ……涙…?」
この200年間、カーディナルが涙を流したことなどなかった。自分にはそんな感情などないと…たかがシステムのサブ・プロセスである自分にそんなものなど存在しないと思っていたカーディナルは、自身の目か零れ落ちている存在に驚いていた。
(…フォン…)
その涙が…彼女に芽生えたものが何かを理解するのは…もう少し先の話である。
(フォンが記憶を取り戻したくない、か…)
カーディナルさんから告げられた事実を思い返しながら、僕はベッドへと身を倒していた。一体何が、フォンをそう思わせる程に彼を縛り付けているのだろう。キリトもそうだけど、フォンは必要以上には自分のことを語ろうとはしなかった。
元に戻れば、問い質してやろうと思っていた僕だったが…僕が思って以上に…キリトやフォンが抱えているものが深いのではないかと感じてしまったのだ。それこそ…僕たちにはどうしようもない程に深いと…
(…色々ありすぎて疲れたな…今日はもう休もう)
思えば、エルドリエさんと試合をして、ティーゼたちと再会して、カーディナルさんの本音を聞いて、キリトたちの真実を知って…一日にしては余りにも濃すぎることが次々と起こり過ぎた。
重くなったように感じる頭を休めたく、僕は誘われるように意識を眠りへと手放そうと…
(チャリン!)
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そんな時に限って来訪を知らせる鈴の音が鳴り、僕は体をベットから嫌々起こす。夜のこんな時間に誰かと思いつつ、来訪者を出迎えると、
「あっ…すみません、ユージオ先輩。お休みでしたか?」
「ティーゼ…?どうしたんだい、こんな時間に…?」
「あのお話したいことがありまして…少しお時間よろしいですか?」
来訪者は…なんとティーゼだった。こんな時間に女の子と外で立ち話するのもどうかと思い、昼間の様に天幕の中へと彼女を招いた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
「それで、話っていうのは…?」
今日三度目となる簡易椅子の出番に、淹れた紅茶のカップをティーゼに手渡す。話を切り出すと、ティーゼは少し迷ってから話し始めてくれた。
「ユージオ先輩…騎士様と…アリス様とお付き合いされているんですか?」
「…!?」
覚悟を決め、そう問い掛けてきたティーゼ。まさかそんなことを聞かれるとは思っておらず、僕は思わずカップを落としそうになってしまった。
「な、なんで…!?そ、そんなことを…!」
「その…昼間お会いした時に、かなり親しく話されていたようだったので…なんというか、もしかしたと思って…」
「そう見えたってこと…?僕とアリスは……そんな関係じゃないよ」
一瞬どう答えようかと迷いながらも、僕は正直に事実を伝えた。僕がアリスのことを好きなのは事実でも…まだ僕とアリスはそういう関係じゃない。そうありたいとは思っているけど…少なくともこの戦争が終わるまでは、そうすべきじゃないと思っている。
彼女の決意を鈍らせたくなかったのもあるが、もしどちらかがこの戦争で何かがあったら…そう思うとその先に踏み出す勇気がどうしても持てずにいたからだ。
「……!そうなんですね…」
「…ティーゼ…?」
「ユージオ先輩…もう少し近くに行ってもいいですか?」
答えるよりも先にティーゼは僕の隣に椅子を持ってきていた。
「覚えていますか、あの時、私が先輩に言ったこと…」
「…もちろん覚えているよ」
忘れる訳がない…あの時だってそうだった。まだ学院にいた頃…フレニーカの件で、僕たちがライオスたちに抗議しに行った後の話…
『四帝国統一大会に上位に入って…アズリカ先生みたいに一代爵氏として叙任されたら…私を…!』
『…分かった。大会が終わったら、きっと君に会いに行くよ』
フレニーカの一件で怯えるティーゼとの交わした言葉を…僕は忘れたことはなかった。いや、忘れることができなかったと言うべきだろう。あの時は、彼女を傷つけるのが怖くて、今にも折れそうになっているティーゼを支えたくて、ああ言うことしかできなかった。
あの時と同じ距離感、同じ表情をしたティーゼ…彼女が何を言いたいのか、僕は分かっていた。
「ユージオ先輩…私、先輩たちがカセドラルに連行された時…先輩に本心を伝えるべきじゃないって…私にそんな資格なんてないんだって思ってました」
「…うん」
「…整合騎士様に勝てる程、先輩は強くなられてて…最高司祭代理からも信頼されていて…先輩が遠くに行っちゃったんじゃないって思って…でも、ようやく会えた先輩は何もか変わってませんでした…優しくて、暖かくて…思わず甘えたことを言ってしまう程に…先輩はあの時と同じでした」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ユージオ先輩……あの時言えなかったことを言わせてください。
私は…貴方が好きです」
頬に赤みが差し、涙を零すティーゼがそう告白した…分かっていた。彼女が僕のことを慕ってくれていたことを…それが傍付きとしての感情だけでなかったことを…僕は気付いていた。だから…僕はここで答えるべきだと思った。
「ティーゼ…ありがとう。その気持ちは嬉しいよ……でも、ゴメン」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
だからこそ…僕は彼女の好意を受け入れるわけにはいかなかった。あんな思わせぶりなことを言ったツケを…彼女に期待させてしまったからこそ、今の彼女の気持ちから逃げることなんてできなかった。
「僕も君のことは好きだよ…でも、ゴメン。僕には…隣にいたい人がいるんだ。昔、連れて行かれる手を掴むことすらできなかった人が…今度こそ命を懸けてでも守りたい人が…僕の大切な人なんだ。だから…君の気持ちには答えられない」
「…それが…アリス様なんですね…?」
「っ…!……うん」
どこか確信を持っていたようにそう尋ねるティーゼに、一瞬驚きながらも僕ははっきりと答えた。
「…なんとなくは分かっていたんです。ユージオ先輩がアリス様を見る目が…私がユージオ先輩に向けていた感情と似てるって……でも、この感情だけはどうしても抑えきれなくって…ご迷惑だと分かっていても、ユージオ先輩に想いを伝えたいと思って…!ゴメンなさい……先輩もキリト先輩たちの件もあって大変な筈なのに…!?」
「ううん…元はと言えば、僕があの時、はっきりと…勇気を持って、君に気持ちを伝えられなかったことが悪いんだ。ティーゼが謝る必要はないよ…君は悪くない」
「せ、んぱい…!うううぅぅ……!ああああああぁぁぁぁぁ…!」
「テ、ティーゼ…!?」
「すみません…!今だけでいいんです……このまま…少しだけ…!」
「…分かった。気が済むまで泣いてくれていいから」
「ううぅ……うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!」
胸元に飛び込んできたティーゼの甘えを、僕は優しく受け止めた。彼女を拒絶する権利なんて、今の僕にはなかった。今できることは、彼女の悲しみを受け止めることだけだった。彼女の告白の時にだって、アリスのことを考えてしまってい僕にとって、それぐらいでしか罪を償うことができなかった。
ティーゼファンの皆様、大変申し訳ありません!!
流れ的にはこの辺りで二人の関係をはっきりさせておく方がいいかと思ってのぶっこみ回でした……本当すいません。
…さてと…カーディナルの指摘で、またしてもフォンの恐ろしい事実が発覚致しましたが、実はルーリッドでも描写してはいました。ユージオへと放った言葉もそうですが、前半の修剣学院での出来事を覚えていらっしゃいますでしょうか?
初等錬士時代、フォンは料理に挑戦しようとして、初期は失敗していたという簡単なお話があったと思いますが…WoU編では、何故か記憶を失っていたフォンはルーリッドにて知らぬ食材・調味料で料理を平然と行っていたのです。
つまり、SAOに関するエピソード記憶自体だけが抜け落ちてしまっている状態なのです。そのため、無意識の内に武具が手に馴染むことにも違和感を覚えることになっていきます…まぁ、結局フォンが記憶を失くした理由は何一つ分かっていないことには違いないのですが…
そして、UWの真実の一端を知ることとなったユージオとアリス…全貌を知るのは、ユウキたちを待つことになります。そんなわけで、次回はようやく開戦直前…頼もしい先輩方との再会やあの人との真面目な会話が中心となってくるお話となりますので、ご期待頂ければと存じます。
それでは!
追記 最終局面での戦闘に関わるアンケートを新たに実地中です。奮ってご参加下さい!
もし見るのならどちらがいいですか?
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幻想剣各種ソードスキル
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呼び出した武器の記憶に宿る剣術