さてと…ようやく開戦となります。
ユージオとカーディナルの介入で少しだけ原作と変更があります。また、またしてもアリブレ要素が入ってきますので、アニメのみの方はお気をつけ下さい。
それではどうぞ!
「それじゃ…キリトのことを頼むね」
「「はい!!」」
新たに用意された礼服(カーディナルさんが僕用にと用意してくれた青薔薇を連想させるような色の服…今まで着ていた物よりも遥かに良い物でステイシアの窓を開いた時には仰天したけど…)に袖を通し、ベルクーリさんを参考に軽装の防具を装備し終えた僕は、軍陣に加わる前に、キリトのことをティーゼとロニエに任せるため、挨拶を兼ねて彼らの天幕へと来ていた。
フォンは、治癒術師の手伝いへと駆り出されたマーベルと一緒に、荷物運びの役を引き受けたらしい。ルーリッドを出る前も何か手伝うとは言っていたが…少し不安もあったが、どんな人手をも借りたいのが、今の人界軍の現状なので仕方ないのかもしれない。
(キリト…もしかしたら、これが最後かもしれないけど…行ってくるよ。君やフォンが守ったものを……みんなが守ろうとしているものを、僕も守りに…!)
今もこうしてここに居続けてくれている君たちの想いに応えるためにも…そう思い、僕は二人にキリトを預け、天幕を出ようと…
「ユージオ先輩…!……どうかご無事で…」
「ありがとう、ティーゼ……行ってくるよ」
出る寸前、ティーゼからそう言葉を掛けられ、僕はしっかりと頷き、今度こそその場を後にした。その言葉を…彼女との約束を今度は破らないためにも、この戦争に勝たなければならない。
(…その前に…)
もう一つ…僕にはやらねばならないことがあった。配置に着く所定の時間まではもう少し余裕があり、僕は…彼女の元へと駆け出した。
〈アリス View〉
(はぁぁ……私って、本当に嫌な女…)
戦闘に向けて最後の準備を終えた私は、一足早く雨緑の元へと来ていた…が、自分の器の小ささに酷く落ち込んでいた。あまりの落ち込みぶりに、雨緑が心配しているぐらいだ。
(…あんなに露骨にユージオ避けて…そんなに気になるのなら、聞けば良かったのに。ユージオなら隠さずに教えてくれるだろうに……なのに、あんな態度を取って…)
もうすぐ飛び立たなければならないとは分かっているが、気持ちが沈んでしまっていた。もちろんいざとなったら切り替えることはできるが、それでも雨緑に乗るまではもう少し罪悪感に晒されていたかった。
「アリス…!」
「えっ……ユージオ…?!」
作戦に集中したいからと人払いを頼んでいた筈なのに、丁度想っていた人の声が聞こえてきた、慌てて振り返ると彼が…ユージオがそこにいた。息を切らしているところを見ると、走ってきたのだろうか…そんなことはともかく…
「…何か用?もうすぐ戦いが始まるのに、ここにいては駄目でしょう…そもそも、エルドリエに頼んで、人を通さない様にしてもらっていた筈だけど…」
「…そのエルドリエさんが通してくれたんだけど…自分はこれから持ち場に行くから、後を頼むって」
(…エルドリエ…戦いが終わったら、覚えておきなさい…!)
ユージオを素通りさせたこともそうだが、アリスがエルドリエに命じたのは、手の空いている者に人払いをさせるように頼んだのであって、エルドリエ自身にそうしてくれと言ったわけではなかったのだ。
自分のことよりも私のことを優先したことについても併せて、エルドリエに対して怒りが湧き上がるも、今はユージオと話すことが先決だった。
「手短にお願い…作戦に集中したいの…(あぁ、もう…!なんでこんな言い方しかできないのよ、私…!?)」
なんとか言葉を和らげようとしたが、またしても冷たい言い方になってしまい、内心で悲鳴を上げる。頭では分かっていても、一昨日、ユージオの天幕から聞こえてきた女性の…ティーゼの泣き声が今も頭から離れずにいて、私の言動をそうさせてしまうのだ。
だけど、そんな私の言い方にも…今のユージオは動じていてなかった。
「分かってる…だから一言だけ言いに来たんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「無事に帰ってきて…そして、帰ってきたらちゃんと話をしよう」
「そんな…話すことなんて何に……っ~~~~!?!?」
話をしようと言われ、私は怖くなってそれを否定しようとしたが…その言葉が続くことはなかった。なぜなら…
私が彼を拒絶しようとするよりも早く、ユージオが私の頬にキスしたからだ。
突然の出来事に反応することもできず、まさかの行動に何が起こったのか理解するのに数秒を要した…頬に当たった、暖かく柔らかい感触が、彼のキスによって頬を奪われたのだと認識できた時には、邪な気持ちなど吹っ飛び、顔が発火しそうな程に熱くなるのを感じた。
「そ、そ、そういうことだから…!?僕、行くね!!」
「へぇ………ちょ、ユージオ…!?!?」
眼前のユージオも茹蛸になりそうな程に顔を赤くしており、それだけ告げると脱兎の如く走り去ってしまった。呆然としてしまっていた私が声を掛ける時には、もう既にと届かない距離にいた。
「うううううぅぅぅ…!?こんなことされたら…もう怒れないじゃない!?」
私だって、もう子供じゃない…こんな大胆なことをされてしまえば、ユージオがどんな思いでこんなことをしたのかくらい想像がつく。
多分だが、私が頑固になって話を聞いてくれないことを理解していたからこそ、こんな大胆なことを仕出かしたに違いない。でも…そのお陰で胸につっかえていたものが取れた。
「…貴方も無事で戻ってきて…ユージオ」
聞こえないと分かっていながら、彼が去っていた方向へと言葉を送る。そして、私も自身がやるべきことへと意識を集中させた。
「(ユージオが…叔父様たちが…皆が生き残れるかどうかは私に懸かっている。だから…)必ず成功させる…いきましょう、雨緑…!」
頬に未だ残る感触を確かめるように手で触れながら、私は決意を固め、雨緑に騎乗する。私の意志に従い、その翼を広げた雨緑が大空へと飛翔した。
〈アリス View End〉
(あれで良かったのかな…!)
所定の時間の少し前
配置に着いた僕は先程の出来事…アリスの頬をキスで奪ったことを思い出していた。戦う前に何をしているのかと、目撃者がいたら何か言われそうなことをやらかしたわけだが…あのままアリスに誤解されたままというのは、互いにとって良くないとも思ったし、何より…
(この戦いでもしかしたら、どちらかが……いや、僕が死ぬ確率の方が高いんだ。もし僕が死んだら…)
そんな恐怖もあったんだと思う…アリスが元に戻って、一緒にいた時間…記憶は本当に僅かなものだ。だから、少しでも多く、少しでも濃密な…彼女との思い出を刻みたかったのかもしれない。
その結果があのキスだった…気が付いた時には考えるよりも先に体が動いてしまっていた。唇を避けたのは、理性が残っていたからなのか、まだそんな勇気がなかったからなのか…分かっているのは、キスをした時の感覚がまだ脳裏に残っていることだ。
(そうだ…まだ僕はアリスに告げないといけないことが沢山ある。だから…今はこの戦いを生き抜いて、人界を守り抜く…みんなが帰れるように、アリスと一緒に元の生活へと戻れるように……彼女がアリス・ツーベルクとして帰って来れるように…!)
決意を固め、僕は腰に差している青薔薇の剣へと手をやる。
僕が配置されたのは第一中央部隊のすぐ後ろ…ファナティオさんと四旋剣が指揮を執る部隊の後方だった。ここからならもし前線…左翼のエルドリエさんの部隊、右翼のデュソルバートさんの部隊のどちらかに何かがあった時にも、素早く加勢に行くことが出来る。
それに、僕が動けば、それを見たカーディナルさんが何かがあったと判断し、後方に控える第二部隊に指示を出すことができる。
僕に課せられたのは遊撃…おそらく戦いが始まれば、休む暇どころか立ち止まっている時間など全くないだろう。少しでも迷いがあれば、それこそ命取りになるだろう。
(キリト、フォン…僕に力を貸してくれ…!)
そう友に願う程に僕は緊張していたと思う。だけど、時間は待ってくれるわけもなく、その瞬間が訪れた。
『人界軍よ!もう間もなく東の大門が破られるぞ!我らが破られれば、人界はダークテリトリーの手に落ち、全てが火に包まれ、滅びるじゃろう…!
だからこそ、我らが剣となり敵を撃ち、盾となり人界を守り切らねばならぬ!皆には、かなりの無理を強いることは承知しておる…じゃが、皆がそれぞれ守りたいものの為、その力をこの一戦で出し切ってほしい!!』
軍全体に届くよう、神聖術で拡張されたカーディナルさんの鼓舞が聞こえてきた。その悲痛で、しかし、真剣な声に皆の表情や気配が研ぎ澄まされていく。
『隣の戦友が倒れても、どんなに敵の数が膨大でも…お主らこそが世界を守る最後の要……どうか我ら公理教会に…人界の全てのために、力を貸してくれ!皆の命を…預からせてくれ!!!』
「「「「「………おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!」」」」」
カーディナルさんの最後の言葉に、一拍置いて兵士たちの鬨声が爆発した。そして、その声が引き金となったかのように、東の大門に亀裂が入った。
(…始まる…!)
門に亀裂が入ると同時に炎を思わせるかのような赤い神聖文字が浮かびあがったのが見えた…『FINAL LOAD TEST』…意味は分からないが、それが何を指しているのかはなんとなくだが理解できてしまった。
次の瞬間、東の大門は一筋の光と共に完全に崩れ落ちた。
そして…
『第一部隊抜剣!修道士隊、治癒術式の詠唱を開始!第二部隊も厳戒態勢に移行…戦闘用意!!』
カーディナルさんの号令と共に各部隊が戦闘態勢を取る。僕も青薔薇の剣を抜き、いつでも動けるように構えていると、前方から砂塵…ダークテリトリーの先陣部隊が押し寄せてくるのが見えた。
ゴブリン、ジャイアント族を中心とした部隊が攻め寄せる中、人界軍の第一部隊先頭から二つの光と炎が解き放たれた。
先制攻撃と言わんばかりの敵陣に降り注いでいく強大な技…
戦場のゴブリンたちに爆炎を撒き散らす火矢が、デュソルバートさんの『熾焔弓』の武装完全支配術、
その巨体で人界軍を押し潰そうとする勢いで迫ってくるジャイアント族の一列に光の風穴を空けたのは、中央を守るファナティオさんの『天穿剣』の武装完全支配術であることは、ここから見ていて明白だった。
エルドリエさんの『霜鱗鞭』は近・中距離で最も威力を発揮するので、敵を引き付けてから技を発動するつもりなのだろう…まだ大きく動いてはいなかったようだ。
戦局の出だしとしては、敵の勢威も少しは削れたのではないだろうか…しかし、敵も馬鹿ではない。デュソルバートさんの熾焔弓を警戒して、密集陣形から左右二手に分かれての接近戦を仕掛けようとしていた。
弓使いの弱点を突こうとしてくるデュソルバートさんが危ないと思い、動こうとしたが、ゴルゴロッソ先輩が兵たちを指揮して前方に出たことでなんとか食い止められているようだった。
ホッとし、他の戦局はどうなっているかと視線を移そうとした時だった。
(…っ…!?なんだ、今の感覚…!)
前方から異常な殺気を感じた…こっちの心まで鷲掴みにしてくる濃厚な気配に僕の体は動いてしまっていた…そして、その予感は当たっていた。
「っ…ファナティオさん…!?」
敵の殺気に呑み込まれたのか、突貫してくる一回り大きいジャイアント族の姿に、ファナティオさんが動けなくなってしまっていたのが見えた。この距離からじゃとてもじゃないが間に合わず、彼女の名を叫ぶが…
「ファナティオ様、お逃げください!?」
「ダキラ…!?」
四旋剣の一人の方がその身と剣を盾にジャイアント族の一撃からファナティオさんを庇った。だが、ジャイアント族の一撃は尋常ではない威力を持っていたらしく、盾にしていた騎士剣はあっけなく砕かれ、ダキラさんは腕で鎚を受け止めていた。だが、威力を殺し切れず、遂に腕からも大量の出血が噴き出し、その身に槌が振り落とされようと、
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
その寸前でようやく間合いに入れた僕は〈バーチカル〉でジャイアント族の巨大な槌を弾き飛ばした。その勢いに負け、ジャイアント族も後方へと大きく吹き飛んだ。ダキラさんも僕の姿を見て安堵したのか、そのまま倒れ込んだ。
「ファナティオさん!動けますか…!」
「ユージオ…すまない。急に体が動かせなくなって…!」
「ここは僕が受け持ちます!今のうちにダキラさんを後方に…早く治療してあげてください!」
「…頼む!しっかりしろ、ダキラ…!?」
「ううぅ……ファナ、ティオ…様……ご無事、で…よか…」
「いいから喋るな…!ジェイス、ジーレン!ダキラを早く治療術師の元へ!?」
後方から聞こえる声からして、ダキラさんもまだ息はあるようで少しホッとした。そして、意識を前方のジャイアント族へと切り替えるも、
「コロ…コロ、ス…!?コロ、コロコロ…!?コロスゥゥゥゥ!?」
「っ…!?何…!」
常軌を逸した言動をし続けるジャイアント族…それは完全に理性を失っているようにも見えたが、僕にはそれに見覚えがあった。だけど、そんなことに思考を割かしてくるわけもなく、奴は……僕を無視して、またしてもファナティオさんを殺そうと僕の上空を飛び越えようとした。
まだファナティオさんは動けない…!このまま奴を向かわせるわけにはいかないと思い、僕はその背中を追い掛けるように飛び上がりながら、秘奥義を放つ。
「アインクラッド流…バーチカル・アーク!」
僕のことなど気にも留めていないジャイアント族の無防備な背中に2連撃の秘奥義を叩き込む。その強固な肉体のせいで、致命傷までは負わせられなかったが、秘奥義の威力により地面へと奴を叩き落とすことには成功した
僕も着地と同時に奴とファナティオさんの間に入り、盾となれる位置についた。その時だった…僕に傷を負わされた奴が…初めて僕を視界に捉えた時だった。
「オマエモ…コロス……!コノオレニキズヲ……コロスゥゥゥゥゥ!?」
「…ぐっ…!?」
またしても…いや、今度はより強く心臓を握られたかのような感じがして、僕も体が動かなくなる奇妙な感覚に襲われた。まるで、奴の殺気に呑み込まれてしまったような感覚だった。
(っ…!?しっかりしろ、ユージオ!ここで僕が退いたら、後ろのファナティオさんが……それに…!?)
「コロ…コロス…コロォォォォォォォォォォスゥゥゥゥ!」
「…こんなところで死ねない…死んでたまるかぁぁぁ!?」
脳裏に蘇ったアリスとの約束…その一心で僕はその恐怖を跳ね飛ばした。動くようになった体を操り、僕は振り落とされてきた槌を青薔薇の剣で受け流す。
「コロシテェェヤルゥゥゥゥゥゥ……!?」
「ここから先には…絶対に行かせない!!」
僕の言葉など、今の奴には理解できないだろうと思いつつ、僕はその覚悟を露わにする如く、奴の猛攻を防いでいく。
(ユージオ…あの殺気に呑み込まれずに闘えているというのか…なのに、私は…!?)
奮戦するユージオの背中を見て、自身の不甲斐なさを呪うファナティオ。自分はここまで弱かったのか…やはり女などが戦場に立つべきだはないというのだろうか…
『強さっていうのは、何も剣を合わせて決まるだけのモンじゃねぇ』
「っ…!?」
負に沈む彼女の心を救うかの如く、その言葉がファナティオの脳裏に蘇った。
その言葉は…ファナティオが長年慕い続けてきた気持ちを…想い人であるベルクーリへと告げた時に言われた言葉だった。
自分にできないこと…どんなに気概のない者でも掬い上げ、心を鬼にしてまで鍛え上げようとするファナティオの意思の強さをベルクーリは騎士として認めていた。
女だからといった理由ではなく、対等な視線で彼女を評価していたのだ。
そんなファナティオの尽力があったからこそ、四旋剣は彼女を慕い仕え、今の整合騎士団が出来たのだ。自分の次に整合騎士となった彼女のことを…ずっと自分を支えてくれていたファナティオのことをベルクーリが気にしていなかった訳がなかった。
ユージオと闘った際にもファナティオの安否を真っ先に尋ねたのは、もしかすれば、弟子だからという理由だけではなかったのかもしれない。
『そんなお前に想われて嬉しくない筈がないだろう?好きだぜ、ファナティオ…俺はずっとお前が好きだった』
その言葉を受けた時、ファナティオは感謝した。自分が女であることを自身で盾にし、それを打ち砕いてくれたキリトたちに…自分が前へと進める勇気をくれたことを…
ベルクーリと結ばれ、前線に出ることに難色を示されたが、ファナティオはそれを拒否した。それはこれまで慕い続けてきたベルクーリへの気持ちを自ら否定するようなものであったからだ。
「(そうだ…!私はどこまでも閣下についていくと誓ったのだ…!私をここまで慕い、ついてきてくれた四旋剣…その身を犠牲にしてまでも私を守ってくれたダキラのためにも…!)私がここで動かずにいて、何になる…!!」
重なった想いが、ジャイアント族の負の心意によって浸食されていた、フォナティオのフラクトライトを解き放った。
自信を奮い立たせる決意の言葉と共に、ファナティオは天穿剣を空へと掲げた。
「ユージオ!!」
「っ…!」
ファナティオさんの声が聞こえ、攻防の最中に僕は彼女を見た。その姿から、彼女の考えを理解した僕は一旦距離を取り、奴の攻撃を誘った。
「ウガガァァァ……!シネェェェェェェェェ!?!?」
「……もらった…!」
僕の動きに釣られ、上空に飛び上がった奴の動きを予測していた僕は、一足早く奴に肉薄し、秘奥義を放った。アインクラッド流重3連撃秘奥義〈サベージ・フルクラム〉…三角形を連想させる斬撃が奴の槌と右手を斬り飛ばした。
そして、空中で体勢を崩した奴にファナティオさんが狙いを定めた。
「天の光に焼かれ、地の底に帰れ…悪鬼よ!!」
「二、ニンゲンゴト…!?」
その言葉と共に、天穿剣から放たれた空にも届きそうな光の刃が水平方向に振るわれた。最後の言葉を言い終えることもできず、ジャイアント族の体が真っ二つに切り裂かれた。そのあまりにも強大で、神々しさも感じる天穿剣の一撃は味方・敵問わず、その場にいる者全てを圧巻させる程の威力だった。
「ファナティオさん…!」
「ゴメンなさい、ユージオ…不甲斐ないところを見せたわね。ここはもう大丈夫だから、君は他の部隊のところの援護に行きなさい」
「…分かりまし…っ、あれは…!?」
「本隊からの緊急を知らせる信号…!?」
ファナティオさんの言葉に頷こうとした時、僕の視界に空へと打ち上げられた赤い光の玉が見えた。ファナティオさんの言葉通り、それは緊急事態…どこかの部隊が敵の突破を許したという合図だった。
「ファナティオさん、僕行きます!」
「ええ、気を付けて行きなさい!…第一部隊中央、前進!!敵を押し戻せぇぇ!!」
ファナティオさんの号令を背中に聞きながら、僕はすぐさま部隊の中央へと戻っていた。戦線を見るに、どうやら突破されたのは左翼のようだ。あのエルドリエさんがとは思ったが、今は戦線をどうにか立て直すことが優先だと思い、僕は乱戦になっている左翼の第二部隊へと突っ込んだ。
「ギャハハハハハ!コロセ、コロセ!」「絶対に死守しろ!?」
「ゴオオオォォォォォ!?」「うわぁぁぁ…!?」
戦況は…指揮などもう既にない、戦線崩壊の一歩手前だった。既に突破している敵も数多くいるようで、このままでは完全に突破されてしまうのは時間の問題だった。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
移動のすれ違い様にゴブリンたちを切り裂いていく。煙幕か何かが周囲に充満しているらしく、視界は酷かったが…幸か不幸か、敵の数が多いお陰もあって、斬っても斬っても敵だらけのこの状態で、誤って味方を斬るということは避けられていた。
「くそぉ…ここにいた筈の騎士はどうしたんだ…!?この先にはあるのは…!」
姿が見えない整合騎士に苛立ちを感じつつも、この先にあるものに思考が至り、冷や汗が流れる。
この先には二つの施設が点在している…キリトを任せているティーゼとロニエの補給部隊、そして、マーベルとその手伝いをしているフォンがいる治療所…もしそこが襲撃を受けたりなんかすれば…!
「っ…どけよぉ!?」
いつまでもここで戦っているわけにもいかない…そちらの防衛へと行かねばと思い、僕は迫り来るゴブリンたちを次々と切り捨てながら、奥へと進んでいく。すると、補給部隊と治療所を守護している筈の隊が襲撃を受けていた。
やはりもう既にかなりの数の敵の侵入を許してしまっていたようだ。まずはここをなんとかしないと先に進めない…そう思い、迫って来ていたゴブリン二匹を向かえ撃とうした時、
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
二つの影がゴブリンたちの背後から飛び出し、急所を的確に狙った一撃で、ゴブリンたちの息の根を止めた…その人物たちは、
「フィゼルさん!?リネルさん!?」
「「えっ…ユージオ!?どうしてここに…?」」
息ピッタリの反応で驚くのは、暗殺を得意とする整合騎士のフィゼルさんとリネルさんだった。僕がここまで下がってきていることに驚きつつも、更に迫って来ていたゴブリンたちを倒していく二人。
「左翼が突破されて、救援に来たんです!まさか、補給部隊や治療所のすぐ傍までとは思ってもみなかったですけど…!フィゼルさんたちはどうしてここに…!」
「さん付けはいいから…!私たちは左翼の騎士たちがどうにも頼りなさそうだったから、隊からこっそり抜けてきたのよ!?案の定だったけどね…!」
「ゼルと私だけでは食い止められないと思っていましたが、貴方が来てくれた良かったです!」
状況を交互に説明しながら、戦線を維持するべくゴブリンたちを斬り飛ばしていく僕たち。リネルさんの言葉通り、確かにこれを(暗殺を得意とする)彼女たちだけで相手にするというのはかなり酷な状況なのだろう。
「さっき第二部隊を駆け抜けてきましたが、整合騎士の姿は見えなかったです。もしかしたら、もうやられて…」
「そういうこと…レンリっちの腰抜け…!?」
「新米のエルドリエさんが経験不足という不安も的中した上に、頼りないと思っていたレンリさんまでが…抜け出してきて正解でしたね…」
「それって…どういうことですか…!?」
「説明している暇なんてないよ!?ここは私とリゼルでなんとかするから、あんたは治療所の方へと向かった敵の撃退に向かって…!」
「あの最高司祭代理のチビッ子さんが救援に向かったそうですが、かなりヤバそうな感じですので…私たちもこの戦局を立て直せたら、補給所の方に向かいますから。あっ、できたら、敵を倒しながら向かって下さいね?」
「…分かりました。頼みます!」
ここは引き受けたという彼女たちの言葉を聞き、僕は治療所の方へと急ぎ向かう。あちらのほうが敵の数が多いようで、僕に気付いたゴブリンたちが一斉に向かって来ていた。
「どけって言ってるだろう!時間がないんだ?!」
その方向と共に青薔薇の剣の力の一端を解放し、切り捨てていく。切り裂かれたゴブリンは一瞬の内に永久凍土に包まれ、動けなくなっていく。
焦る気持ちを糧に、僕は治療所へと向かう足を速めた。
開戦直前にユージオがやってくれました!?
書いてて、作者が顔赤くなるという感じでした…(クソ!!こういうのを、フォンとヒロインたちにもやらせたいのに!?)
そして、ファナティオにも焦点が当たった開戦直後のお話となりました。後々の展開を考えると、ここにユージオを来させるのがベストかと思ってのお話でした…なので、ダキラが死なずに済みました!
ですが、左翼を突破されてしまったことで、原作同様にキリトやティーゼたち、そして、フォンにまで危機が迫ります!
そういうことで、次回はユージオ生存のせいで更に闇落ちし掛かっているあの騎士と、彼女が覚醒を迎える半分オリジナル回となります!
(最近空気と化してる主人公たちの再登場とは言ってはいけません!?)
是非ご期待頂ければと思います!
それでは!
P.S. 今日、ユウキの誕生日なんですよね…去年の今頃に誕生日記念回を更新したのが、かなり昔のように感じます(笑)
もしかしたら、twitterで短編か何か上げるかもしれません。
もし見るのならどちらがいいですか?
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幻想剣各種ソードスキル
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呼び出した武器の記憶に宿る剣術