…まぁ、その他のお話も色々ありますので、お楽しみに。
まずは前話のラストでユージオに起こった現象の解説からです。
そして、忘れた頃に彼女もやってきます!
ファンの方々、大変お待たせしました!!
それでは、どうぞ!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうかしたか、ユージオ?」
「…ベルクーリさん」
暗黒術士団を壊滅させ、遊撃軍の元へと戻った僕とアリスは…エルドリエさんの戦死をベルクーリさんたちに伝えた。
ベルクーリさんは無言のまま目を瞑り、レンリさんは信じられないといった表情をし、シェータさんは静かに聞き入れていた。
しかし、悲しみに暮れる時間など僕たちにはなく、敵もそれを許してなどくれないでいた。
光の巫女を宣言したアリスを追い、ダークテリトリーの軍勢が遊撃軍を追いかけて来ていたからだ。ダークテリトリーの地を南下していく遊撃軍を追う、敵勢の砂塵を視野に入れながらも、呆然と自分の手を見つめていた僕に、同じく敵の動きを見張っていたベルクーリさんが声を掛けてきた。
「考え事も結構だが、根を詰めすぎるなよ?戦場での迷いは命取りになることぐらい、お前さんもよく分かっているだろう……エルドリエのことはお前さんのせいじゃない。気にするなと気休めなことを言うつもりはないが、お前さんまでもが倒れたら、嬢ちゃんまでもが倒れちまうぞ?」
「…分かってます…ただ、少し気になることがあって…」
ベルクーリさんなりに気を遣ってくれていたようだ…少し丘上になっている岩の上にいる僕たち…そこから望遠の神聖術で敵の動向を観察しているベルクーリさんへと、少し笑みを浮かべながら応え、僕は気になっていたことを尋ねてみることにした。
ちなみに、アリスは遊撃軍を誘導するために雨緑と共に先陣を進んでおり、レンリさんは更に先行し、これより先に広がる雑木林の偵察へと赴いている…そういえば、シェータさんはどこに行ったんだろうか…?
「あの…神器の力を身に纏う術や力と言うのは…存在するのでしょうか?」
「…ほう?」
僕の質問に興味深そうな声を上げるベルクーリさん。視線を向けられながら、僕は腰に差している青薔薇の剣を抜いた。
「あの時…暗黒術士団の頭領と対峙した時、信じられない力が青薔薇の剣から流れ込んできたん感じがしたんです。無我夢中でどうやったのかよく覚えてはないんですけど…まるで青薔薇の剣と心身共に一体化したみたいな…剣の力をもっと引き出せるような…そんな不思議な感覚だったんです。
自分でも信じられない力を使えて…全てが終わって気が付けば、剣に似た鎧を纏っていて…あれはまるで…」
チュデルキンに止めを刺したキリトのように…同じ様に、僕の姿も変化したようだった。戦いの後、すぐに鎧は消えてしまったが、あの時の感覚はそう簡単に忘れられるものではなかった。
「なるほどな…まさかとは思うが…」
「何か心当たりがあるんですか?」
「まぁな。ユージオ…お前さんも、心意の太刀がどんなものか、嬢ちゃんから話は聞いてるだろう?」
「はい…一応は理解しているつもりです」
なんなら、整合騎士にされていた時に使えてしまっていたから、その神髄はよく分かっていた。ベルクーリさんの問い掛けに頷きながら、その先を聞き続ける。
「なら、話は早い。心意の太刀そのものを使いこなせる者は数少ない…まぁ、当たり前の話だ。意志だけで力を昇華させる心意の腕、心意の太刀を、実戦で使用するために極めようとすれば、どれだけ強靭な精神力が必要となるか…考えると途方もつかないだろう。
…だからこそ、心意の腕・太刀といった技は最上位の極意と言われている…そして、その高見…極みの頂点に達することで使えるという技がある」
「…心意の…頂点の極み…」
「伝承ではこう伝えられている…『心意の破界鎧』ってな」
「心意の…は、破界鎧……」
ベルクーリさんから放たれた言葉を思わず反芻してしまう…聞き慣れないのもそうだが、思っていた以上に物騒な言葉だったため、驚いてしまったのもあった。
「あー、勘違いするんじゃねーぞ?破界っていうのは、お前さんが思っているような言葉じゃない…『自身の限界を破りし者、世界の理をも超え、可能性の如くその力を昇華させていく…その進化、止まる所を知らず』っていう一文だけが伝承されていてな。
この一文だけじゃ意味不明すぎて、今まで誰もその極致に辿り着くことができなかったんだ。そもそも心意の力自体が未知なる部分が多いからな…」
「限界を破り、世界の理を超える……」
進化していく可能性…そんな言葉がピッタリとハマるような気がした。黒衣の剣士へと姿を変えたキリトも、時折未知なる秘奥義を使うフォンも…破界鎧と同じような力を使っていたのだと思えたが、その考えはベルクーリさんによって否定されることとなった。
「お前さんが使った力が…心意の破界鎧だというのなら、なんとなくではあるがその要因も察しがつくな。おそらく鍵となるのは、心意の力と右目の封印…そして、どれだけ神器と接してきたということだろうな」
「神器と…?」
「その力が発現した時、お前さんの体を青薔薇の剣を模した鎧が纏ったんだろう?おそらく、それらのどれかが欠けても使うことができないんだろうな…まぁ、右目の封印はともかく、心意と神器の力をここまで急激に使いこなせるようになったのは才能とばかりしか考えられないけどな…」
「才能って、そんなことは……あっ」
ベルクーリさんの評価を否定しようとして、ある可能性に思い当たり、思わず声が漏れた。というか、誰のせいかということにだが…そうだよ…僕の師匠たちはそういうことを平然とやってのけていた人物ばかりだった。
心意に関しては、アドミニストレータにシンセサイズされた影響もあって、力の感覚には覚えがあったが…僕がここまで心意の力を使えるように覚えができたのは、キリトのあの黒衣の姿が未だに脳裏にこびりついていたせいだ。
そして、青薔薇の剣の力を引き出す方法…そんなのは、フォンという規格外が嫌という程見せてくれていた。様々な武器を武装完全支配術まで容易に使いこなす彼の姿は…参考にするには充分過ぎるものだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「…あの小僧共はどこまで規格外だったんだ?」
思わず顔を手で覆う僕を見て、なんとなく僕の考えていることを察したベルクーリさんの顔が引き攣っていた。ともかく…心意の極致の扉を開いたということなのだろう。今まで時折感じてきた力も、その片鱗だったということなのだろうか?
『ユ…ジオ……我が師のことを…頼む…君に、なら……任せられる…』
(エルドリエさん……あの約束、必ず果たしますから…託された想いも背負います…だから、見てて下さい)
夜空を見上げ、想いを馳せる…力を解放できたきっかけを…僕は忘れることはできないだろう。きっと、キリトもフォンも近い何かを背負っていたに違いない…それを背負うって闘うことこそが…真の剣士に違いない。
「それにしてもだ…暗黒神ベクタとやらは、随分と嬢ちゃんにご執心のようだな。ある程度の数を引っ張れることは期待していたが、まさか全軍で追いかけてくるとはな」
「想定していた数に達しないよりは遥かにマシな筈です。それに…誰が相手であっても関係ありません…ベクタの狙いがアリスだというのなら、必ず守ります…絶対に…!」
「フッ…少しは言う様になったじゃねぇか」
敵の狙いが光の巫女で…それが本当にアリスなんだとしても、僕がやることは何も変わらない。剣を振るう理由などそれ以外には考えられず、迷いなどもう僕の中には残っていなかった。
そんな僕を見て、少し嬉しそうに笑うベルクーリさんは、次なる一手をどうするかと考えていた。
「それで、今後の方針だが…俺たち遊撃部隊でひたすら敵軍を引っ張り、数を削いでいく…という方針だったわけだが…」
「少なくとも、敵の暗黒術士団はさっきの攻撃で壊滅しました。残るはまだ姿が見えていない拳闘士部隊と暗黒騎士部隊の主戦力二つ…それに指揮官を目される暗黒神ベクタ。
それらの打破さえできれば、本陣と挟撃することで、残った敵が休戦交渉に応じる可能性が出てくるとアリスは言ってましたけど…」
「ああ…問題はその時に、敵軍の頭が誰になっているか、という点だな。シャスターの小僧がこの戦場にいればと思ったんだがな」
そう呟くベルクーリさんの口から出た人物…暗黒騎士団団長の名前が再び出てきたことに、僕はその人のことについて聞いてみることにした。
「確か、ベルクーリさんと互角の実力を持つ暗黒騎士ですよね?ベルクーリさんは、その人が戦場にいないって言うんですか?」
「…俺の感覚だが…見える軍隊に、この戦場において奴の気配が未だに一切感じられない。俺が知る限り、シャスターの性格上逃げ出したとは考えにくい…もしかすれば…」
「…そのもしかしてかもよ、騎士長閣下」
「「っ…!?」」
上空から聞こえてきた声に驚き、僕たちは空を見上げる。声の主…飛竜から飛び降りてきた彼女の姿に、僕は目を見開き、ベルクーリさんがやれやれといった表情を浮かべる。
「…イ、イーディスさん!?」
「やっほー。久しぶりね、ユージオ」
「遅かったじゃねぇか、イーディス。どこで道草を食っていたんだ?」
「ちょっと…!私がサボってたみたいに言うの、止めてよ…!」
その人…イーディス・シンセシス・テンは空から降ってきたことなど全くなかったかのように笑いながら、再会の挨拶をしてきた。僕が驚いている横で、ようやく援軍にホッとしつつも、苦笑いしているベルクーリさんの言葉に、イーディスさんは頬を膨らませながら抗議していた。
「なんとか開戦には間に合せようと大急ぎで戻ってたんだけど、奇襲を企てていた暗黒騎士団と飛竜に鉢合わせてね…闘ってたら、合流するのが遅くなったのよ。それで、本陣に残っていたファナティオに話を聞いて、こっちの援軍に来たってわけよ」
「そいつは助かる…それで、さっき言っていたもしかして、というのはどういうことだ?」
イーディスさんがこれまで何をしていたのかを話したところで、ベルクーリさんが話を本題へと戻した。それを聞かれた彼女は真剣な顔に戻り、そのことを話し始めた。
「暗黒騎士たちと闘った時、奴らが言っていたのよ…暗黒騎士団団長シャスターが、敵の皇帝なる人物に斬り掛かり返り討ちにされた、ってね…側近だったリピアも斬首されたって…」
「リピア…?」
「シャスターが最も信頼して女性の暗黒騎士よ。戦場では、いつも私と剣を交えていたわ。可愛い部分もあったから、敵じゃなかったらと何度も思ったことはあったわ…どうやら、その皇帝陛下の暗殺を狙って失敗したみたいな話だったわ…」
「…そうか…シャスターはもう……惜しい奴だったんだがな」
「それにしても…その暗黒騎士団団長が反逆して剣を向けただなんて…やっぱり敵も一枚岩ではないということなんでしょうか?」
「そうかもしれんな。お前さんたちが聞いたオーガの言葉が更に信憑性を増したわけだ…暗黒神ベクタが再臨したという話もな…」
「暗黒神ベクタ…?ちょっと待って、どういうこと…!?」
イーディスさんから告げられた事実に、僕とベルクーリさんは思考を深める。ベルクーリさんもシャスターという人物に思い入れがあることは聞いていたが、彼を惜しむように表情を歪めていた…そんな横で、暗黒神ベクタのことは初耳だった様であるイーディスさんは僕を問い詰めてきたので、聞かれたことを説明していく。
そんな真剣半分混乱半分の空気の中、風を裂く音が聞こえたと思えば、
「遅くなりました、騎士長閣下!報告を…イ、イーディス様?!どうしてここに…!?」
「ヤッホー、レンリ……しばらく見ないうちに少しは騎士らしくなったのかしら?」
「そ、その節はお世話になりました…コホン…騎士長閣下、偵察の結果を報告致します!南の待ち伏せ予定地点ですが、今のところ問題なく利用できます」
「よし、偵察ご苦労!部隊にその地点へ移動する準備をさせてくれ。先導している嬢ちゃんに合図を送れば、そっちに誘導してくれるだろう。
それと、お前さんの飛竜もそろそろ疲れている筈だ…たっぷり餌と水をやっておけよ?これからは長期戦になるだろうからな」
「はっ!」
上空から降りてきたレンリさんに遅れて飛竜が地面へと着地した。一瞬、同伴していなかったイーディスさんがいることに驚いていたが、偵察の結果を報告したレンリさんは、ベルクーリさんの指示に勢いよく返事し、持ち場へと戻っていった。
「…ふむ…」
「どうかしたの、騎士長?」
「…いやな…記憶を奪い、天命の自然減少を停止させることで整合騎士を作る…シンセサイズの秘儀なんてものはとても許されるものじゃないが、しかし…もうああゆう若者が騎士団に入ってこないのは残念というか、惜しいことだなと思ってな」
「でも…それはアドミニストレータがいた時の話ですよね?これからはそうしなくてもいいじゃないでしょうか…そんなことをしなくても、整合騎士になろうとする人たちはいると思いますよ?だって…人界を守護する役目を担うなんていう責務を、誇りと思う人は必ずいる筈です…」
「だといいんだがな…」
「きっと大丈夫ですよ…間違ったことを正して、あるべき姿を継承していけばいいんです。いや、そうしないといけないんだと思います…失った命は帰ってこない…大切なのは、託されたものを継いで、また他の誰かに受け継いでいくことでしょうから」
「…ユージオ…貴方、少し変わったわね…」
「あれから色々ありましたからね…」
嘆くベルクーリさんに思っていることを告げると、感心したような声がイーディスさんから漏れる。僕も思わず笑みが零れるが、そんな空気をまたしても割くように、敵に動きが起こった。
「っ…!何だ…あの砂塵の量は…?!」
「あれは拳闘士だな…やっかいな連中が先陣を切ってきやがったな」
褐色色の肌が特徴的な一族が起こす砂塵に驚いていると、ベルクーリさんが敵の正体に気付いたようで、苦々しい表情をしていた。
「そんなに手ごわい相手なんですか?」
「奴等は徒手空拳を主戦法とする強襲を得意とする部族だ…裸の拳での攻撃なら傷を受ける癖に、剣で斬られることは拒否しやがるんだ」
「拒否する…?どういうこと、ですか…?」
「拳闘士たちは鍛錬を重ねることで、刃物なんぞ襲るるに足りんと思い込むんだ…それが心意となって、言葉通り刃を弾く程に肉体を固くするんだ」
「げぇ…それって、闇斬剣でも斬れないってこと…?あたしとは相性最悪みたいなんだけど…」
「あくまでも心意を纏ったものだからな…防具を貫通して攻撃するお前さんの武器でも厳しいだろうな、イーディス…何にしても、迎え撃つ準備をする必要があるな」
斬撃を弾く心意の身体…さっき話に出たばかりのせいか、心意の破界鎧に少し似ていると思った。
イーディスさんの武器では相性が悪いらしく、ベルクーリさんはどう撃退するべきかと頭を悩ませているようだった。斬撃が効かないというのなら、青薔薇の剣の永久凍土は効果的ではないかと思い、僕が拳闘士部隊の相手をすると申し出ようとした時だった。
「…私が行きましょう…」
「えっ…!?」「うぉ…!」「きゃぁ…!?」
すぐ背後から凛とした声が聞こえ、僕たち3人は慌てて振り返り、声の主を確かめる。そこにいたのは、どこかへと姿を消していたシェータさんだった…というか、こんな近くにまで来ていたのに、声を掛けるまでその気配に気付くことができなかった。
…さらに、彼女の声を始めて聞いたことにも驚きを覚えていた…ベルクーリさんやイーディスさんまで驚いているんだから、彼女が話すこと自体、本当に珍しいことなのだろう。
「お、驚いた…シェータ。お願いだから、声や表情はともかく、気配までは殺さないでよ。心臓に悪いわ…」
「…イーディス殿までこちらに来られたのですね。それで騎士長閣下、いかがでしょうか?」
「………よし。ならば、奴らの撃退はお前に一任する、シェータ。思う存分に暴れてこい!」
「…はっ」
最低限度の受け答えをし、ベルクーリさんへと一礼したシェータさんは拳闘士迎撃のために、その進行方向へと立ち塞がるべく、地上へと向かって行った。
「…た、淡白な人ですね…シェータさんって」
「でも、あれで可愛いとこあるのよ?年齢のことを言われると、内心かなり響いているみたいだし…剣の腕も確かだからね」
「まぁな…剣だけの実力で言うのなら、整合騎士の中では飛び抜けているだろうな」
「そんな人がどうして凍結処分にされて……」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
その言葉を言った瞬間、二人の雰囲気が変わった…ベルクーリさんは表情をそこまで変えなかったが、イーディスさんは分かりやすい程に悲しい表情をしていた。
「あの娘は…自ら凍結処分されることを望んだのよ。あの娘自身は頭ではそうしたくないと思っていても、剣を持つとね……あんまり話さない様にしているのも、シェータ自身がそれを避けようとしているからなの…」
イーディスさんはシェータさんの事情を知っているのだろう…だからこそ、最低限度のことのみを僕へと教えてくれた…彼女の意図を察し、僕もそれ以上聞くことはせず、戦場へと向かって行ったシェータさんへと視線を向けた。
しばらくして、シェータさんと拳闘士部隊が会敵した…そして、敵の部隊長らしき人物の指示で、女性拳闘士がシェータさんに拳を振るおうとして…
「…えっ」
それは剣と呼ぶにはあまりにも薄すぎる刀身の剣…シェータさんが持つ神器は女性拳闘士の拳を一瞬受け止めたかと思えば…次の瞬間には拳闘士の右腕が縦半分に斬り裂かれていた。
いつ斬ったのか認識できずに驚きの声が漏れ、それは腕を斬り落とされた拳闘士や部隊長も同じだったらしく、戦場にいる者全員に動揺が走っていた…ただ一人、見当が外れた、そんな風に初めて表情を変えたシェータさんを除いて…
「今のは……武装完全支配術なんですか?」
「いいえ、違うわ…あれはシェータ自身の剣技よ。そして、その技量を更に高めさせているのがあの剣…黒百合の剣よ」
「最高司祭陛下がシェータに探し出させた花が元となっている…確か、過去に起きたダークテリトリーでの最大の内乱が起こった戦場後で唯一生き残った生命…一輪の黒百合の花が元だったか…その内乱で発生した神聖力の全てを吸収した、優先度が最も高い神器だと、最高司祭陛下はおっしゃていたそうだ」
思わず発した疑問をイーディスさんとベルクーリさんが答えてくれるのを聞きながら、僕はシェータさんの剣舞を見続けていた。次々と拳闘士たちを戦闘不能にしていくのだが…
「あそこまで凄まじい剣技を放っているというのに、殺気どころか敵意までもが全く感じられない…」
「シェータはそれを意識してやっているのよ…あの娘ほどの腕でないとできない芸当よ。殺さずに、戦闘不能にしようと止めるのはね」
「その理由を聞くのは野暮だぞ、ユージオ…俺もあいつのことは何十年と見続けてきたが、あの娘の考えていることの全部を知ることはできなかった…それを知っていたのは最高司祭陛下ただ一人だったからな。
……ここはシェータに任せて大丈夫だろう。俺たちは、そのうちに追い付いてくるであろう本隊への迎撃準備を整えないといけないからな」
「はい」「ええ」
この場はシェータさんに任せることになり、僕たちは遊撃部隊が向かったであろう南の灌木地帯へと向かうことになった。
「ここだ…ここで敵を待ち伏せ、まずは先方として向かってくるであろう拳闘士部隊を迎撃する。とりあえず、潜伏しているレンリたちと合流しないとな…」
灌木地帯へと到着した僕たち…ベルクーリさんから作戦の再確認をされ、不気味な雰囲気を纏う木々の中へと入っていく。その時、妙にざわめている気配を感じ、僕たちは何事かと身構えた。
「っ…!?誰だ…き、騎士長閣下!それにイーディス様まで…大変なことが起こりました!」
「どうした…!何が起こった!?」
「敵が我が軍の動きを予測していたらしく、補給部隊が待ち伏せでの奇襲を受けているとのことです!?アリス様とレンリ様は部隊の指揮で動くことができず、軍の動きに混乱が出始めております!」
「「「っ!?」」」
周囲を警戒していた兵が僕たちに気付き、安堵したのも束の間、すぐさま現状を説明してくれた。まさか、こちらの作戦がバレていたと思わず、ベルクーリさんまでもが驚いていた。
「やられたな…俺たちが南進することから、奇襲するであろうことを予測したということか…敵もかなりの切れ者らしいな」
「ベルクーリさん…補給部隊の方の援護に向かわさせてください!僕なら、敵が集団であっても、時間を稼ぐことはできると思います」
「…今はそうするべきか…物資がやられれば、こちらは思う様に動けなくなるな…よし。ユージオ、お前さんはすぐさま救援に迎え。
俺は嬢ちゃんたちと合流し、すぐさまそちらに潜伏させていた部隊を向かわさせる。イーディスは俺と共に来い…最悪、拳闘士部隊との挟み討ちにされることだけが避けたいからな」
「はい!」
ベルクーリさんの命を受け、僕は兵の人から補給部隊がいるであろう方角を教えてもらい、すぐさま駆け出した。視界が悪く、枯れた木々が乱立しているが、それでも出せる最大の速さで僕は森を駆けていく。その時、
「ロニエェェェェェ!?」「止めてェェ?!」
「っ…今のは…!」
親友の名を呼ぶティーゼとマーベルの悲鳴に近い声が、すぐ前方から聞こえ、僕は更に駆ける足を速めた。そして、木々を抜けた先に広がっていた光景は…
「これだよ…!これだからプレイヤーキルは止められなねぇ!!」
「はっ…うううぅぅぅ…!」
「っ…!止めろォォォォォォォォォ!?!?」
「なぁ…ぐぅうううぅぅぅ!?」
暗黒騎士がロニエに跨り、その首筋に剣を当てようしている光景だった。その行動に、僕の頭の沸点が急上昇し、すぐさま青薔薇の剣を抜きながら、秘奥義を放った。
心意の破界鎧を使った反動か、整合騎士にされていた時の微かに残る記憶が蘇っていた僕は、その技名を思い出していた…アインクラッド流単発秘奥義〈ヴォーパル・ストライク〉を暗黒騎士へと放った!
突如現れた僕の奇襲に暗黒騎士は持っていた二本の剣を咄嗟に重ねることで直撃を防ぐが、一本の剣が砕けて吹き飛ばされる。
「「「ユ、ユージオ先輩…!?」」」
「ロニエ、無事かい?ここは僕に任せて、すぐに後退を…!
「は、はい!」
僕の登場に傍付きトリオの驚きの声が重なる。ロニエを庇う様に敵との間に入り、指示を出す。ロニエが、ティーゼたちがいる後方へと下がったことを目で確認し、戦況を確認する。
補給部隊を包囲するように前方には多数の暗黒騎士たちが木々の合間から姿を見せていた。そして、ロニエを襲おうとしていた暗黒騎士も衝撃からもう回復して、立ち上っていたが…その姿がどこか変だった。
「クククッ…アハハハハハハハハ?!ソードスキル…!しかも、まさかヴォーパルストライクとは…面白れぇよ!!」
「…そーど…すきる…?」
何故か嬉しそうに高笑いする奴は。僕の放った秘奥義の名前を知っていた。そのことに驚きながらも、同時に疑問を覚えた。秘奥義のことを聞き慣れない言葉で言ったように感じられたのだ。
そーど…確か神聖語で剣を意味する『ソード』という言葉があった筈…奴もアインクラッド流剣術を知っているということなのか…?
「だが、気に入らねぇ!人の楽しみを良いところで邪魔しやがって!」
「っ…楽しみ、だと…!?」
「そうさ!!人の命を直接この手で奪う感触、命乞いする正者の悲鳴…命や絆をこの手で弄ぶこの愉悦感…!これだから、プレイヤーキルは…人殺しは止めらねぇんだよ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
暗黒騎士は歪な笑みを浮かべ語った…それが本心、それこそが自分の生き様なんだと…人の命を弄ぶ遊ぶことこそが至上の喜びだと言わんばかりのその態度に、沸騰しそうになっていた僕の頭が冷たくなっていくのを感じる。
「次はそれをお前で味わせてもらうぜ!雑魚ばっかりで退屈してたところだ…少しは骨のある奴と闘って…」
「…命は…そんなに軽い物じゃない…」
「…あぁ?」
「お前みたいな…一つの命も大事に思えない奴が奪っていいほど、命は軽くない!みんな、今を必死に闘って生きてるんだ!それを…楽しみや喜びなんて、狂った理由で奪わせたりなんかさせない!!」
「…ちぃ…はぁぁぁ…一端の正義感って奴はウンザリだぜ。そんな綺麗事を言うくらいなら、剣で……っ!?」
僕の怒りの言葉を聞いた暗黒騎士はやれやれといった表情をし、呆れていたが…その言葉が止まった。その原因は僕にあった。
「ユージオ先輩の姿が…」
「あれは…騎士様…?」
「凍気が…ユージオ先輩に集まってる…」
あの感覚はよく覚えていたから、できるだろうという感じはあった…自信はなかったが、僕は青薔薇の剣の力を引き出す。剣から一気に漏れ出した凍気が僕の体を包み、それを再び発現させる。
ロニエの言う通り、僕の姿は騎士によく似たものへと変わった…心意の破界鎧をまとった僕は、白くなった息を深呼吸で吐き出し、剣を暗黒騎士へと向ける。
「剣士ユージオ…お前たちの暴虐はここで僕が止める!」
「ハハッ……いいぜ!最高だぜ、お前…殺しがいがあるぜ!」
消沈していた感情が再起したのか、再び愉快そうに笑う奴はこちらへと向かってきて、それに応戦すべく、僕も青薔薇の剣を振るった。鈍い金属音が響き渡り、剣と剣がぶつかる。
「…くっ」「ハッハ!」
器用に力を受け流すことで、普通の剣でありながら、青薔薇の剣と互角に鍔競り合いを続ける相手に、その技量の高さが伺い知れた。そして、
「お前ら!こいつは俺が引き受ける!さっさと他の奴らをやっちまえ!」
「っ…!そうはさせない!?」
僕を足止めしようとする奴の思惑通りにさせるまいと、僕は高速で神聖術を詠唱する。空いている左手を地面へと向け、風素を発生させて放つ。
「システムコール、エアリアル・エレメント、バースト・アウト!!」
「なぁ…!?ぐおぉぉ!」
自分自身も巻き込む形で地面に風素が解き放たれ、膠着していた鍔競り合いを無理矢理解除する。神聖術で暗黒騎士は吹き飛ぶが…僕を襲う風だけは瞬間的に凍り付き、僕はその場に留まっていた。
そして、青薔薇の剣を地面へと突き付け、武装完全支配術を発動させる。
「咲き誇れ、青薔薇!エンハンス・アーマメント!!!」
地面を伝い、補給部隊に迫ろうとしていた騎士たちを青薔薇の蔦が襲い掛かり、永久凍土に閉じ込めていく。そして、術を発動中の僕を奴が見逃す筈もなく、
「もらったぜぇぇ!」
「っ…はああぁぁぁぁ!!」
背後を取った暗黒騎士がその刃を振るうも、すぐさま剣を地面から抜き、その一撃を防ぐ。防がれたことなどお構いなしに、奴は高速の剣戟を繰り出してくる。それを全て剣で逸らしていくが、
(…こいつ、やっぱり強い!?)
攻撃の合間に反撃を繰り出すのだが、奴の攻撃を捌き切れているのに、僕の攻撃も奴に当たらずにいた。実践慣れしている奴の動きに、気を抜けずに剣をぶつけあっていく。
「やるじゃねぁか…!本当に殺しがいがあるぜ、お前!その血を…悲鳴をさっさと聞かせやがれぇ!」
「誰が…!?」
「ハッハハハハッ!だったら…!」
ふざけたことを言ってくる奴に怒鳴り返しながら、大きく平行斬りを放つも、それを後方に飛ぶことで躱されてしまう。そして、奴は剣を構えたと思えば…
「こいつで……どうだぁ!」
「っ…(秘奥義…!なら…!?)」
剣に秘奥義の光が宿り、奴の動きに気付いた僕も青薔薇の剣を構える。
「はあああぁぁぁぁぁ!!」「おおおおおおおぉぉぉぉ!」
互いの方向と共に秘奥義がぶつかる…だが、
「残念だったなぁ!」
「なぁ…!」
僕が放った単発秘奥義〈ホリゾンタル〉に対し、奴の秘奥義は…一発では終わらなかった。そこで僕は思い出した…暗黒騎士は連続での秘奥義を使うのだと…ベルクーリさんから聞いていたことを、僕は完全に忘れていた。
僕の秘奥義を一撃目で相殺した奴の秘奥義はまだ終わっておらず、赤い光を宿した二撃目が僕を襲おうと…
「ぐぅぅ…ううううおおおおおおぉぉぉぉ!!!」
「なぁ…嘘だろう…!?」
相殺されたことで打ち上げられた剣を持つ右腕へと意識を集中させ、僕はそれを放つ…秘奥義連携で繰り出すアインクラッド流片手剣4連撃秘奥義〈バーチカル・スクエア〉を…!
奴にとっても、秘奥義を連続で発動させることは予想していなかったらしく、僕の剣と奴の剣が再度ぶつかる。秘奥義同時の激突に斥力により突風が吹く。
そして、二撃目、三撃目、四連撃と互いの連撃が相殺されたところで、奴の秘奥義は4連撃までだったらしく、僕は残っていた一撃を胸元へ叩き込む!斬撃を刻まれ、奴の身体が後方へと吹き飛ぶ…けど…
「ぐああぁぁ…痛ぇ!?いいぜ、この痛み…!SAOじゃこんなリアルな痛みは感じられなかったからな…最高だぜ、この世界!!」
「(咄嗟に体重を後ろにずらして、ダメージを減らされた…!それに、)えすえーおー…?まさか…お前も別の世界から…!?」
鎧を切り裂くことはできたが、致命傷には至らなかったらしく、痛みに苦しみながらも歓喜している暗黒騎士…そんな奴が放った言葉に、僕はまさかの可能性に思い当たり驚いている時だった。
その可能性などちっぽけなように感じる出来事が、上空で起こった。
「っ…空が…!?」「…何だ?」
太陽はまだ顔を出さないはずなのに、夜空を照らす光が上空に漂っていた。白と紫…言葉にするなら、正しく神々しい光というものが当て嵌まるそれがどんどんと量を増やしてき、僕と暗黒騎士、そして、その場にいる者全員の目を惹きつけていた。
その光の中に何かが…人の形をした何かがいた。光に包まれて、その容貌が見えないが、光を纏うその姿は…
「ステイシア…様…?」
ロニエの声だろうか…その言葉の通り、舞い降りてくる彼女は、まるで女神のように見え、畏怖すらも感じるほどだった。そんな彼女が左腕を一振りした…ただの一振り…たったそれだけのことなのに、信じられないことが起こった。
「っ…なんだ、あの光!?うわぁ、地面が揺れて……なぁ!?」
夜空に神光とは別に、次々と色を変えていく帯状の光が、まるで夜空を塗りつぶすかのように広がっていたのだ。そして、それに連動するかのように地面が揺れたかと思えば、永久凍土に閉じ込められていた敵の足元が割れ、敵は抵抗できずに割れた地面へと吸い込まれていくように落ちていったのだ。
「ユージオ!これは一体何が…!?」
遠くからその声が聞こえ、意識を現実へと戻された僕はアリスの姿を捉える。おそらく、ベルクーリさんからこっちの援護に来るように言われたのだろうが、彼女もこの現象が何かは検討がついていないようだ。
そして、上空の光の女神は残っていた暗黒騎士へも手を向ける…その瞬間、男の足元の地面までもが一瞬にして消え、奴は慌ててその場から飛びのく。
「ちぃ…ふざけたことをしやがって…!こうなったら、一人でも多く殺して…!?」
「「…!?」」
このままではやられるのも時間の問題と考えたのか、最後の悪足掻きとばかりに暗黒騎士は僕たちの方へと突貫を仕掛けてきた。それを迎撃しようと身構えようとしたのだが、
「危ない!?」
「「っ…!?」」
上空から声が聞こえたと思えば、僕たちの目の前に光が落ちてきた。薄い青紫の光を纏った…上空の女性とは別の、女神のような姿をしたその人は着地の余波などなかったかのように一気に加速し、暗黒騎士の懐へと飛び込んでいた。
「なぁ…速ぃ!?」
「でりゃぁあああああぁぁぁぁ!!!」
認識するよりも早く、懐に飛び込まれた暗黒騎士から驚きの声が漏れるも、既に剣を抜いていた女性は…秘奥義を発動させ、奴の体へと斬撃を浴びせていく。
紫色の光を宿す剣技が高速で奴の体を刻んでいく…その秘奥義を、僕は知っていた…フォンと闘った時にも使った秘奥義…アインクラッド流片手剣10連撃秘奥義〈ノヴァ・アセンション〉…
10連撃目をまともに食らった暗黒騎士は吹き飛び、先程作られた地面の亀裂に落ちていってしまった。
「マジかよ…!あの顔、あの髪、あの気配…!?あいつはぁぁぁ……!?」
奈落に落ちる直前、落ちない様にふんばろうとした奴は、上空の女神を見て、酷く驚いていた…だが、その言葉を言い切る前に落ちていってしまい、終わりまでその言葉を聞くことは叶わなかった。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「…あっと…ええっと、大丈夫だった?一応、衝撃とかこない様に着地したつもりだったんだけど…」
「は、はい…大丈夫です。その…助けていただき、ありがとうございました…?」
「そっか…間に合って良かったよ!」
奇跡とも言えるような、信じられないことが眼前で次々と起こり、呆然とする僕とアリス…そんな僕たちに、青紫の光を纏う女神…いや、女神様は声を掛けてきた。
纏っていた光が次第に消えていき、その容姿がようやく見えた…僕たちと変わらない…いや、下手をすれば、ティーゼたちと同い年のようにも思える幼い容姿をした彼女は、僕たちが大丈夫だったと分かり、明るい笑みを浮かべていた。
「貴女は…貴女たちは一体……」
「そっか…ゴメン、いきなり空から人が降ってきたら、そういう反応になるよね…」
思わず疑問を呈するが、苦笑いしながら謝罪する女神様は僕の疑問に答えてくれた。
「ボクはユウキ…こっちの世界だと、月夜神ルナリスの体を借りてる人間…って言えば分かるのかな?」
「月夜神…?」「ルナリス…」
「ボクたちは、大切な人たちのためにここに来たんだ…ねぇ、フォンっていう人がどこにいるか……知らない?」
「「…!?!?」」
女神様…いや、ユウキさんの口からまさかの名前が飛び出し、僕たちは言葉を無くした…それが意味することなど決まっていた。
彼女たちはフォンたちの知り合いで…フォンたちと同じリアルワールドから来た人間なんだということに他ならなかった。
『祝え!!
旧世界では姉妹神として人々に崇められ、今の現代に再臨した創世と審判の女神たち、ステイシアとルナリス…
もはやこれ以上の言葉は不要…!その神々しい降臨の一瞬をとくと味わうがいい!』
……ユウキとアスナだけが参戦すると思っていた方々も多いと思いますが、ようやくイーディスも参戦です!
ユージオが恐ろしい程精神的に成長してる中、まさかのPoHと刃を交えたところで、アスナが追い詰め、ユウキがトドメを刺した形になりました
ちなみにですが、この時のユウキは特殊能力なしの基礎ステータスだけで上位アカウントを使っていたPoHを(不意打ちとはいえ、)瞬殺しております…どんだけ月夜神ルナリスのステータスが化け物地味てるかが分かるかと思います(笑)
さてと…今回はユージオが開花させた新たな力『心意の破界鎧』について…
作中でも、ベルクーリが簡単に解説してくれましたが、ここでは更に踏み込んだ解説を行います!
まず、破界鎧はアンダーワールド人(以下UW人)のみが発現可能(理由に関しては後述)なまさしく心意と武装完全支配術を組み合わせた奥義です。
共通の能力として、神器の力を纏うため、鎧でありながら重さがない=加重による機動力・運動性の低下なしで防御力が上げられる、心意に対する一定耐性の獲得(強弱に関しては使用者の精神力に依存)が挙げられます。
記憶開放術が神器の元となったリソースの力を全開放するのに対し、その力さえも完全にコントロールし、心意によって身に纏う・力を更なら方向へと昇華させるのが心意の破界鎧の特徴です。
映現世の翼衣に根幹は似ていますが、あちらが様々な武器の記憶に合わせて変わり、その記憶の力を限界以上にまで引き上げる代わりに負担が大きいのに対し、破界鎧は一つの神器の力を極限以上かつ昇華させますが、相応の精神力は消費しつつも大きなリスクなしで発動可能という違いが存在します。
ちなみに、どうしてリアルワールド人だと発動不可と言いますと、フォンたちはアンダーワールドがザ・シードによるVRMMO世界の一つだということを認識しており、他の根幹となる世界が存在することが多いためです。例えば、フォンは自身がSAO世界の人間ではない=平行世界の住人としての認識から幻想剣や映現世の剣の力の引き出し、キリトは最も自身の記憶に残っている『黒の剣士』や『二刀流』といった別の形で心意の力を引き出してしまうからです。いうなれば、UWにおける心意の力の進化の方向性が『心意の破界鎧』でございます。
現状、ユージオ以外ですと、アリスもその扉を開く直前にまで至っており、右目の封印を破れればベルクーリも候補の次点に挙げられます。
そして、ユージオの破界鎧…『青薔薇の氷鎧』(あおばらのひょうがい)の特殊能力ですが、
・神聖力(暗黒力)を用いた攻撃を直撃する寸前に氷へと変化させることで、全て無効化
・青薔薇の剣の記憶開放術で放出させた神聖力を、青薔薇の剣へと集約させることで射程の拡張・威力の強化を自在に図れる(但し、使用した神聖力は再使用は不可。他の武器でなら再利用可能)
・青薔薇の剣以下の優先度の武器によるダメージを完全無効
…と、いう形の能力を備えております。ちなみに、この能力をユージオはなんとなくではありますが、理解しております。なので、前話で死詛虫を完全無効にしたのはこういうカラクリだったわけです。もっとも氷の鎧なので、強大な熱量攻撃には属性的に弱く、天穿剣や天日剣とは相性が悪かったりします。
デザインは、ユージオが32番目の整合騎士とされた時のものを、氷のようなクリアなものに、整合騎士の紋章が青薔薇に、鎧の模様も薔薇の蔦を思わせるものへと変わっており、肩や腰の部分も葉を感じさせるものになっております。
どうして騎士の姿なのかというと、ユージオ自身が心の奥底で想っていた『正しき力を振るう騎士』の姿がそのまま反映された形だからでございます。
大体の解説はこんなところになるかと思います。
そんなわけで、次回はユウキ視点でのお話…遂にフォンとの再開を迎える問題のお話になります…いけるところまで書くなら、カーディナルとの出会いまで書けれればとは考えてます。
それでは!
武器解説に関して、新調と古いものだとどちらがいいですか?
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物語の語り部を新調版
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今までと同じ旧式版