ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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一部除いてのシリアスなお話です…この辺り、作者記憶が曖昧だったので、アニメ見直しながら書いてたのですが、思った以上に長い&登場キャラ多すぎ!?

そんな訳で、ユウキ視点での情報交換もとい軍議をご覧頂ければと思います…今までユージオ視点だったので、別視点から書くと違和感が凄い(苦笑)

それではどうぞ!


第ⅩⅩⅥ話 「取り合う手」

「まず初めに皆さんにお伝えしておきます…私たちはこの世界の外側…別の世界からやってきたんです」

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

人界軍…ユージオたち主要メンバーが天幕に集結したことで始まった軍議の始め…そう話を切り出したアスナが告げた事実に、ほとんどのメンバーが驚いていた。

 

驚いていなかったのは、管理者としての知識を持つカーディナル、フォンたちの事情を知っているらしいユージオとアリス、そして、冷静に話に耳を傾けていたベルクーリだけだった。

 

「私はアスナ、隣の彼女はユウキっていいます。私たちはそれぞれステイシア、ルナリスという女神と呼ばれている体を使って、この世界に来たんです」

「…ルナリス…ソルス神、テラリア神なら聞いたことがあるが、そんな女神の名は聞いたことがないぞ」

「お主が知らぬのも無理はない、ベルクーリ。月夜神ルナリスは人界・ダークテリトリー共に伝承が一切残っていない秘匿された女神なのじゃ…わしやアドミニストレータさえもその存在を知らなかったからのう…」

「秘匿された女神…心意の破界鎧の発現だけでも驚いたが、まだ驚くことがあるとは思ってもみなかったな」

「叔父様…話の腰を折らないで下さい」

 

水を飲みながら、どこか楽しそうに笑うベルクーリだったが、アリスが注意したことで笑みを引っ込め、アスナが話の続きを話し続けた。

 

「私が住むリアルワールド…そこと皆さんが住むこのアンダーワールドとは地続きで繋がっているわけではなく、全く別の世界なんです」

「さっき体を借りていると言ってましたが、では、貴女たちの本当の身体も、今はそのリアルワールドという場所にあるという認識でいいですか?」

「ええ、ユージオ。その通りよ…そして、そのリアルワールドの私たちがいる場所では、ある二つの勢力がアンダーワールドの支配権を掛けて争っているところなんです。私たちはその一方の勢力…ラースの使者としてこの世界に降り立ったんです」

「では…貴女様はこの世界…人界もダークテリトリーも支配するために来たということなんですか…?」

「いいえ、その逆です…私たちの目的はアンダーワールドを守ること、そして、私たちと敵対している勢力の目的こそ、アンダーワールドにいるある二人の人間を回収し、然る後に世界全てを破壊することなんです」

「…世界の…破壊…?」

 

マーベル(軍議の前に、ユージオに大まかな人間関係を教えてもらったが、彼女はフォンの傍付き剣士という後輩だったらしい)の疑念を否定し、ボクたちがこの世界に来た理由、そして、襲ってきた謎の部隊の目的を、人界軍の人たちへと伝える。

 

ごっつい体格のゴルゴロッソという人(ユージオの先輩さん…学院でユージオが傍付きとしてお世話になっていたらしい)の言葉を皮切りに動揺が一斉に広がっていく。

 

「ふむ…てっきりお主たちがここに来たのは、フォンとキリトの救援に来たのとばかりかと思っておうたが…なるほどのう。この戦争を仕掛けた創造主ラースがお主たちを送り、別の勢力がこの世界を破壊しようとしておるとは…皮肉な話じゃのう」

「まぁ、外の世界の状況というのはどうでもいいな…俺たちだって、この間まで人界の外にあるダークテリトリーが、何万もの大軍勢が侵攻の時を手ぐすね引いて待っていた、なんて事実を真剣に考えてきた者なんかほとんどいなかったくらいだ。

重要なのは…アスナの嬢ちゃん、この世界を破壊しようとしているその敵対勢力が欲しがっている人間たちというのは誰のことなんだ?もし最高司祭という方を求めているのなら、一人はもうこの世を去っちまっているんだが…」

「それは……………アリス…そして、ユージオ…貴方たちよ」

「わ、私…!?」「僕も…ですか!?」

 

ようやくボクたちが来た訳を知ったカーディナルは、どこか冷えた目をしてそんなことを呟いていた…ボクたちではなく、ラース自体に何か思うところがあったのだろうか…それに対し、ベルクーリは動揺する他の人たちに聞こえるように言い、アスナに質問を投げ掛けていた。

 

問い掛けられたアスナとボクの視線が…名前を告げられたアリスとユージオへと向いてしまう。まさか、自分たちの名前が告げられるとは思ってもみなかった二人は驚きのあまり、立ち上がっていた。

 

「なるほどな…だが、アリスの嬢ちゃんはまだ分かるが、ユージオは男だぞ?光の巫女というのはちょっと違う気がするがな…」

「光の巫女…?」

「敵の将がそう言っていたんです…敵の狙いは光の巫女を捕まえることだって。だから、てっきり一人の人物のことを指しているとばかりに思っていたのに…」

 

アリスだけでなく、ユージオまでもが対象だと知り、ベルクーリが怪訝そうな顔をする。光の巫女という聞き慣れない言葉に首を傾げるアスナに、その名前を知った経緯をユージオが説明するも、まだ驚きが治まっていないようだった。

 

「…ねぇ、アスナ。今、気が付いたんだけど…」

「どうしたの、ユウキ…?」

「ここに来る直前に比嘉さんが言ってたよね…もう一人の『A.L.I.C.E.』が確認されたのは襲撃される直前だって。それで、襲ってきた人たちがいる部屋のシステムはロックしたって…」

「そっか…敵は人工フラクトライトを『A.L.I.C.E.』へと育てるアリシゼーション計画のことは知っていても、それが何人いるのかを把握していない可能性が高いってことか…」

「うん…アリスが『A.L.I.C.E.』へと覚醒したのが少し前の話だって、菊岡さんは言ってたよね?今回、それを知った人たちがアリスしか覚醒していないと思っていたのなら…ユージオのことを知らず、光の巫女ただ一人を目的としていることにも合点がいかないかな?」

 

アスナもどういうことかと混乱していたが、来る直前に聞いた会話を思い出したボクはその可能性をアスナへと伝えた。アスナも敵がユージオまでもが覚醒していることを知らない可能性が高いと思ったようで同意してくれた。

 

「つまり…ユージオとアリス…この二人がお主たちの世界…リアルワールドに渡れば、敵対勢力とやらは…」

「ええ、敵もこの世界への干渉を止める筈です。もうあまり時間は残っていません…アンダーワールドの消滅を防ぐにはこれしかないんです」

「ちょ、ちょっと待って下さい!?私にここから…この戦場から逃げ出せと言うのですか!?」

「…そうです…私たちと共にリアルワールドへと来てほしいんです」

「っ…ふざけるなぁ!?」

 

アスナの意見を確かめるように再度尋ねたアリスだったけど、到底納得できないといった態度と共に怒りを露わにした。

 

「貴女は…この世界とそこに生きる人々を見捨てて、リアルワールドとやら逃げろというのですか!そんなこと…私は断じて認められません!私は人界を守護する整合騎士の一人です!そんな私が逃げるなど…!」

「この世界を守ることが使命だというのなら、なおのことだわ。もし敵が…暗黒界ではなく、リアルワールドから来る強奪者たちだとすれば、この世界に住む人々も、大地も、空も…何もかもが消滅させられてしまうのよ!」

「だからって…!仮にアスナが言う様に、その勢力の狙いが僕たちだったとして、僕たちがリアルワールドに逃げて、その勢力が手を出さなくなったとしても…この戦争が止まるというのかい!

ダークテリトリーの中には、人界を蹂躙することを本目的にしている奴等だっていたんだ!この戦争で死んでいった人たちだって沢山いる!?それを無視して、僕たちだけが安全な場所にいるなんて…そんなの、僕もアリスも望むわけがない!」

「でも…その略奪者たちがいつここを襲ってくるのかも分からないのよ!?そうなってからじゃ、何かもが手遅れになるかもしれない…!」

 

「そこまでだ!…両者の言いたいことは分かるが、感情的になりすぎだ。ユージオ、嬢ちゃん…アスナの嬢ちゃんだって、おそらくそのことを分かっている上で提案しているんだ。言い方はあれだったかもしれないが、少しばかり落ち着け」

「アスナも…ちょっと話を急ぎすぎだと思うよ…!ボクたちはさっき会ったばかりなのに、いきなりこの世界から逃げろなんて言われたら、聞いてもらえないよ…」

「…すみません、叔父様…短絡的な言動をしてしまいした」

「ゴメン、アスナ…僕もちょっと冷静さを欠いてた…」

「ううん…私の方こそ…ゴメンなさい。話を急ぎ過ぎたわ」

 

このままでは収拾がつかなくなると思い、アリスとユージオをベルクーリが、アスナの方をボクが諫める。互いに熱くなり過ぎていたことに気付き、謝罪していく中で、ベルクーリが言葉を発した。

 

「それとだが…アスナの嬢ちゃんには悪いが、その略奪者の勢力についてだが…残念ながらそれはもう古い情報だぜ?どうやら、お前さんらの敵という奴等はこの世界の方にも来ているみたいだぜ」

「「えっ…」」

「これで合点がいったってもんだ…光の巫女…そして、それを求める暗黒神ベクタの再臨…お前さんらが言うことが事実なら、ダークテリトリーを指揮している総大将ベクタ神は…間違いなくお前さんらと同じ、リアルワールドから来た人間なんだろうな…ステイシア、ルナリスと同じように、ベクタの身体を借りてな」

「「…っ!?」」

 

ベルクーリが告げた事実にボクとアスナは思わず顔を見合わせてしまう。確か、比嘉さんが言っていたのは、アンダーワールドへの介入を阻止するためにプログラムをロックしたって…でも、襲撃者たちもこの世界に来ている…どういうことかと、ボクたちが困惑している時、ユージオが何かを思い出したようで、

 

「…そういえば…さっき闘ってた暗黒騎士の一人が変なことを言ってました。秘奥義のことをそーどすきるって呼んでいたり、ユウキも言っていたえすえーおーって言葉も使っていて…それらって、アスナたちの世界の言葉じゃないかい?」

「SAO…!?それにソードスキルの名称まで知ってるなんて……(襲撃者の中には、SAO生還者が混じっているってこと…!?)」

「待って…ベクタだけじゃなく、他にも何かしらのアカウントを使って、敵が来ているってことなの…!」

「…多分…比嘉さんがロックしたシステムは人界に関するもので、ダークテリトリー側のシステムはロックされてなかったのよ。そして、襲撃部隊は二台のSTLを使って、私たちみたいにここに来たんだわ…」

 

まさかの事実にアスナが驚く横で、ユージオが告げた事実にボクはまさかの可能性を考えていた。もしも、他にも敵がいるのだとすれば、ユージオとアリスをボクたちだけで守り切れるかどうか…

 

ただでさえ、二人にこのままアンダーワールドから逃げようなんていう考えがないことは先程のやりとりで明白だし、フォンを元に戻す方法だって目途が立っていないのだ。思っていた以上に、アンダーワールドを取り巻く状況は悪い方向へと傾いていたみたいだ。

 

「あの…話の腰を折るようで申し訳ないんだけど、ちょっといい?」

 

驚愕の事実に殺伐とした空気を変えようとしたのか、それとも自然と疑問に思ったことを尋ねようとしたのか…黒いリボンで灰色の髪をポニーテールに纏めている女性の騎士が挙手して発言した。

 

「どうした、イーディス?」

「さっきから話に出てくる光の巫女というのは具体的に何なの?私、さっきこっちの戦場に来たばかりだから、イマイチ事情が呑み込めてないのもあるんだけど…その…りあるわーるどの強奪者たちは…アリスと、ユージオもかしら…二人を手に入れたがっていて、光の巫女と呼んでいる…っていう認識でいいの?

でも、どうして二人がそんな奴らに狙われないといけないのよ…!」

「…右目の封印を破ったから…そうではありませんか、騎士長閣下、最高司祭代理殿」

「シェータ殿、知っていたのですか!?」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

ベルクーリからイーディスと呼ばれた騎士が疑問を口にし、憤っていたが、その回答を答えたのは隣に座っていた女性の騎士だった。彼女が放った言葉にアリスとユージオが驚く中、ベルクーリとカーディナルは沈黙で肯定の意を示していた。

 

「時折…あることを考えると、右目が痛くなる…世界で一番固い物…破壊不能なセントラル・カセドラルを……丸ごと斬り倒したら、楽しいだろうな…って」

「「「「………(えっ…?)」」」」」

 

(セントラル・カセドラルって…菊岡さんがアリシゼーション計画のことを説明していた時に出てきた…あのでっかい白い建物のことだよね…?あれを斬り倒すって…どういうこと!?)

(本当に考えたことがあったのか!?あのベルクーリさんだけじゃなく、カーディナルさんまで唖然としてるじゃないか…!)

 

まさかの発言に、その場にいた全員の思考が止まったような気がした。現実世界のモニターで見た白い建物のことを思い出し、笑みが引き攣るのを感じるボク。心なしか、ユージオの笑みも引き攣っているように見えた。

 

「…コホン…シェータの発言はひとまず置いておくとしてじゃ…この場にいる者の中には、他にも覚えがある者もおろう…例えば、禁忌目録を破ろうとしたり、理から外れたことをしようとした場合、赤き光と共に右目に痛みが走ったことがな…」

「そのまま不敬な思考を続ければ、痛みはますます激しくなり、遂には思考を放棄せざるを得なくなっちまう…それでも、思考を保ち続けた場合…」

「右目の赤き光が視界一杯にまで広がり、右目そのもの跡形もなく吹き飛ばす…いまのわしのようにな」

「「「「「……!?!?」」」」

 

ベルクーリの言葉を引き取るように、眼帯をしている右目を指しながら、カーディナルがその結果を述べたところで、先程とは違う驚きが場に伝染した。無理もないと思う…自分たちの右目にそんなものが仕掛けられていたなんて聞けば、当然の反応だよね…

 

「では…アリス殿やユージオ…それに、カーディナル様はその右目の呪縛を破った…そういうことなのですか?」

「ええ、そうです、レンリ殿…私はユージオたちと共にチュデルキンやアドミニストレータへと剣を向けました…その決意を得るために、一時的に右目を失っていました」

「僕も…ティーゼたちを助けるために禁忌目録を破る必要があって、その時に右目が吹き飛びました」

「わしは少し形は違うが、二人と似たようなものじゃ…尤も、先程の出来事じゃから、リアルワールドの人間共はそのことに気付いておるかどうかは怪しいところじゃがな」

「しかし…今でもそのことについて気になっていることがあります…ユージオとも以前に話したのですが、右目の封印の意図についてです」

「キリトが、右目の封印は僕たちの行動を抑制するものかもしれないって…アリスに告げていたらしいんです。僕はてっきりアドミニストレータが仕掛けたものかとばかり思って……」

 

それぞれが右目が吹き飛んだ時のことを語っていく中、アリスと共に右目の封印について話そうとしていたユージオの言葉が止まった。どうしたのかと全員の視線がユージオに向かい、そして…

 

「…こーど871…」

「「コード871…?」」

 

ぼそりと呟いた彼の一言を思わず反芻してしまうボクとアスナ…しかし、何かを思い出したユージオは関を切ったかのように話し始めた。

 

「そうだよ…コード871だ!アリス、覚えているかい?カセドラルの頂上でアドミニストレータと闘った時、君の様子を見て言っていた言葉を…!?」

「…思い出したわ!?確かに言っていたわ…コード871って!右目の封印はあの男が施したものだって…!」

「…なるほどのう…あの男か…今の話が全て合っているとすれば、全てに合点がいくのう。その右目の封印を表わすコード871というのが、リアルワールドで設定されたものだというのなら、わしが把握できなかったのも納得じゃ…カーディナルシステムが生み出したものでないのなら、わしには知る由もないからのう」

 

リアルワールドの事情を多少把握できている三人の言葉は、周囲の人たちにはどういうことだとイマイチ伝わっていなかったが、ボクとアスナは衝撃を受ける他なかった…それが意味するのは…

 

「でも…それって変だよね、アスナ…そのコード871っていう封印は、菊岡さんたちの目的とは全く違うものなんじゃ…」

「うん…違うどころか、全くの真逆…アリシゼーション計画そのものを邪魔するものでしかないもの…それをラースの人間が設定しただなんて…」

 

菊岡さんたちの話は難しい部分もあったが、言ってしまえば、自分で考えることができるAIを作り上げることがラースの目的だったはず…しかし、それを阻止しようするかのような封印を同じラースの人の誰かがやったのだとしたら…

 

「ラースの中に…この計画を良く思ってない人がいる、ってことだよね…?」

「それどころか、アリシゼーション計画そのものを妨害しようとしているのかもしれないわ…もしそうだとしたら、襲撃者たちがオーシャン・タートルをあんなに手際よく襲えたのにも納得がいくわ…封印を仕掛けた人が襲撃者たちと内通していたのよ」

「そうだったら、早く現実世界の人たちにそのことを伝えないと…!」

「…そうしたいけど…ここは普通のVRワールドじゃないから、自分たちでログアウトすることができない…伝えたくても、システムコンソールか何かがないと…」

「システムコンソールならあるぞ」

 

ラースの中に裏切り者がいる…もしかすれば、フォンやキリトもこの事実に気付いていたのかもしれない…何とかして現実世界の菊岡さんたちにこのことを伝えたいが、アスナの言葉にそれができないと思い出し、打つ手なしかと思っていると…

 

「システムコンソールならある…わしらが今おるダークテリトリーにな」

「…カーディナル」

「セントラル・カセドラルに設置されておったコンソールは、その襲撃者たちのせいじゃろうが…何かしらの介入を受けたせいで使用できなくなってしまった…じゃが、三つあるコンソールの一つ…ワールドエンドオールター…世界の果ての祭壇と呼ばれる場所にシステムコンソールが置かれておる。そこなら、コンソールがもしかすれば使えるかもしれん…」

「そういえば、菊岡さんがキリト君たちにもそこに行けって言ってたわね…そこでなら、アリスさんたちを現実世界に送れるって…なんとかなるかもしれない…」

 

どこか不機嫌そうに語るカーディナルの言葉を受け、そこに行くことができれば、ユージオたちを現実世界へと連れて行ける、裏切り者のことも菊岡さんたちに伝えられる。問題があるとすれば…

 

(ユージオたちは今のアンダーワールドを放って、現実世界へと渡る気なんて更々ない…ってことだよね)

 

さっきの様子からして、ユージオとアリスが素直についてきてくれるとは到底思えない…カーディナルに助けを求めたくとも、システムコンソールの話をしてからどこか不機嫌になってしまっていて、望みは薄いと思った。こうなったら…

 

「ねぇ、ユウキ…もしかして、同じことを考えてない?」

「えっ…もしかして、アスナも?」

「うん…きっとキリト君ならこうするって思って…」

「そっか…多分フォンも同じことをするんだろうなって、ボクも考えてたところ」

 

力強い笑みを浮かべるアスナに、ボクも笑みを作りそう返す…だったら、やることなど決まったも同然だ。

 

「アリスさん、ユージオ君…一応確認しておきますが…今すぐにこの世界から離れるつもりはない…とお二人は考えているんですよね?」

「…うん」「…もちろんです」

「…分かりました…暗黒神ベクタがリアルワールドから来た侵略者なのだとしたら、私たちとアリスさんたちだけがアンダーワールドからいなくなっても、人界に危険が迫るかもしれない…貴女たちはダークテリトリーの侵攻を阻止したい…そうですよね?」

「…少なくとも、今の戦況のまま離れるなんてことは…僕もアリスもできない」

「ユージオの言う通り…できるならば、和平でも何でも、この戦いが終息しない限り、そちらの世界のことなど…考えることはできません」

「…うん。だから、もう一つの提案なんだけど…ボクたちも一緒に闘わせてくれないかな?」

「「っ…!?」」

「ボクとアスナがベクタと闘う…同じスーパーアカウント…じゃなかった…神様の身体なら互角に闘えると思うから!」

 

ユージオたちの意思を確認し、現状を再確認したアスナの言葉に続き、ボクはユージオたちだけでなく、人界軍の皆へと向けてそう提案した。ユージオたちだけでなく、ベルクーリたちも驚いていた。

 

「そいつは頼もしい話だが…いいのか?お前さんたちの目的とやらは…」

「分かってます…でも、キリト君たちならきっとこうしたと思うんです。彼らがあんな状態になってまで守ろうとしたこの世界を…私もユウキも傍観したまま見捨てるなんてこと…したくないんです」

「…じゃが、アスナよ。ステイシアの地形操作能力は何度も使えるものではないじゃろう?」

「ええ…大規模な地形操作は使えても、あと1、2回がやっとだと思います」

「ユウキの嬢ちゃんはそういったとんでも能力はないのか?」

「ボクのは制御が難しいというか…集団戦で下手に使えば、味方ごと吹き飛ばすというか…個人戦の方が向いてる能力で…」

「ふーむ…まぁ、ベクタにも何かしらの能力があるのだとしたら、二人にはそっちの対処を任せるのが得策か…どう思う、カーディナル殿?」

「…ベクタの能力はアリスやユージオだけでなく、この世界に生きる者全てにおいて天敵に近いものじゃ…ユウキたちに闘ってもらう方がわしも良いとは思う…じゃが、その前に聞いておきたいことがある」

 

特に反対意見はないといったベルクーリと違い、未だに機嫌の悪そうなカーディナルは腰を上げ、ボクとアスナへと視線を向けて口を開いた。

 

「お主たちは光の巫女…右目の封印を破りし者こそが、このアンダーワールドが作られた本当の目的であることを知っておるな?」

「…うん」「…はい」

「ならば…創造神たるラースが何をして…いや、何もしてこなかったことも知っておるわけじゃな?お主たちはそれを知りつつ、アリスたちに何を望むつもりじゃ?リアルワールドへと連れて行き、何をさせるつもりなのか…それを聞かねば、わしはお主たちを完全に信用することはできぬ」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

その小さな体からは想像できないような威圧を放つカーディナル…まるで、ラースの目的などお見通しだといったようなその姿に、ボクもアスナも容易に答えていい質問ではないと理解してしまった。

 

緊迫に満ちた沈黙の空気を破ったのは、アスナが先だった。

 

「…ゴメンなさい…私の口からそれを告げることは…今はできないわ」

「…その理由は、お主たちもラースと目的が同じじゃからか?」

「いいえ…ラースの目的はどうあれ、私は…アリスさんやユージオ君にリアルワールドをその目で見た上で、判断してほしいと思っているからです」

「私たちに…?」「僕たちに…?」

 

試すかのように問い掛けてくるカーディナルに怯むことなく、アスナはそう言葉を返す。自分たちへと話を向けられ驚くユージオたちへと視線を向け、アスナがその先を話し始めた。

 

「向こう側…リアルワールドは決して神様が住んでいるような理想郷の世界ではありません。貴女が知っているように、世界を容易に創ったり壊したりする人も沢山います…それどころか、この世界に比べれば、ずっと醜く、汚れている部分が目立つと思います…でも、そんな部分だけじゃないんです!」

「きっと…この世界を守りたいって人や、アンダーワールドに住んでいる人たちとも仲良くなりたいって人も沢山いると思うんだ!それを全部ひっくるめた上で、ユージオとアリスに考えて欲しいんだ…そうしてもらうために、ボクたちはここに来たんだ」

「「…っ…」」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

アスナとボクの言葉は、ユージオとアリスに確かに届いたようだ…悩む二人は、どうするかという視線を彼女…話を聞き終え、左目を閉じたまま黙考しているカーディナルへと向けていた。

 

誰しもがカーディナルが何かを言うのを待っていた…この時間がいつまで続くのかと思っている時、カーディナルがようやく目を開いた。

 

「…『まだ何も終わっていない』、か…」

「「えっ…?」」

「以前、フォンがわしに言ってくれた言葉じゃよ…あの言葉を受け、わしは目を覚まさせられたのじゃ…わしは憎かった…真の神たるラースが…いや、リアルワールドに住む人は、この世界ことなど知らず、この世界に住む者どものことなど知る由もなく…その結果、アンダーワールドに住人は幸せになることなどできぬと……じゃが、全てが終わり、絶望しておったわしに、フォンがそう言ってくれたのじゃ」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

「わしはまだ何も初めてもおらぬ…やらねばならぬことも多い…そして…フォンとキリトが教えてくれたのじゃ…その身を削ってでも、この世界のために闘ってくれる者がそっちの世界にもいることをのう」

「…それじゃあ…!」

「最高司祭代理カーディナルの名の元に請願しよう…ユウキ、アスナよ。お主たちの力をわしらに貸してくれぬか……頼む」

「…もちろん」「…喜んで力を貸すよ!」

 

深々と頭を下げるカーディナルに、アスナとボクもはっきりとそう答える。そして、頭を上げたカーディナルに握手を求めた。いきなりのことに驚いていたカーディナルだったが、すぐに応じてくれて、ボクたちは順番に握手を交わしていく。

 

「話が落ち着いたようで何よりだぜ…一段落したところで、申し訳ないんだが…いくつか聞きたいことがあるんだが…」

「何でしょうか、ベルクーリさん」

「その右目の封印…こーどと言ったか?…それは、右目をふっとばす以外には解除する方法はないのかい?」

「…多分難しいと思います」

「右目の封印は、おそらくじゃが、わしらが生まれた時より仕込まれておる。外部からの介入では、アンダーワールド内部からの解除はまず不可能じゃろう」

「なるほどな…まぁ、解除できるなら、カーディナル殿がそんな姿になっているわけもないか…そうなると、リアルワールド人のお前さんたちには、その右目の封印はないってことになるのか?」

「そうだと思うよ…菊岡…あっちの世界の人が言うには、アンダーワールドに住む人たちは強く法や規則を守ろうとする傾向があるって言ってたから…そこがリアルワールドとこの世界に住む人との違い…なのかなと思うんだけど…」

「…それを破りし者が光の巫女…ベクタの身体を使っている略奪者が、ダークテリトリーの連中にそう言って唆したというわけか…もし、そうだとしたら…」

「お主の思っておるとおりじゃ、ベルクーリ…今やユージオもアリスも…リアルワールド人と変わらぬ思考を持っておるということじゃ」

 

今まで黙っていた分を巻き返す様に自身の疑問をぶつけてきたベルクーリの問い掛けに、カーディナルを交え、アスナと僕は答えていく。すると、ベルクーリの視線がカーディナルへと注がれたと思えば、

 

「それは…あんたにも言えることじゃないのか、カーディナル殿?」

「…わしもじゃと…?」

 

ユージオやアリスだけでなく、カーディナルもそうだと、どこか確信じみた態度で告げたベルクーリの言葉に、彼女は驚きを隠せないでいた。

 

「なんと言うかな…右目の封印を破ったこともそうだが、あんたの纏う雰囲気が以前とはどこか違うように感じられてな。前は行動全てに焦燥感が付いていたが、今はそれがない…さっきアスナの嬢ちゃんたちに協力を求めた時は、そんなに素直だったかと驚いちまったくらいだぜ」

「…人は変わっていくものじゃろう?良くも悪くも…それが人であろうと、騎士であろうと、プログラムであろうと変わらぬ道理じゃ。それにわしは決めたのじゃ…何があろうと、人界を守り抜くとな…」

「…勝つではなく、守り抜く、か…フッ、そうだな」

 

驚きながらも、笑みを浮かべてカーディナルはその言葉を述べる。ベルクーリもどこか嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 

「人界軍よ!これより、我らはリアルワールドから来たアスナ、ユウキの力を借り、ダークテリトリーの本隊を迎え撃つ!!」

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

「敵は我らの数を遥かに上回っておる…その背後には暗黒神ベクタも控えておる。しかし、ベクタもアスナたちと同じ人間…決して神ではない!!我らと同じ人であり、一つの希有な力を持つだけじゃ!」

「決して勝てないわけじゃねぇ!だが、厳しい戦いになることは決まってる…その頭と心にもう一度思い出せ!自分たちが何を守りたいのか、何のために闘っているのか…!ここにいる全員……いや、人界軍が総力を出し切らねぇと全てが水の泡になっちまう…!

嬢ちゃんたちが俺たちを救ってくれたように、今度はこの世界に生きる俺たちが、その底力を見せつけてやる番だ!!」

「…ここにいる者、皆の命を…力をわしらに貸してくれ!」

「「「「「…おおう!!」」」」」

 

カーディナルとベルクーリの演説が軍議の場に響き渡る。一瞬の沈黙の後、高揚した勝鬨が一気に爆発した。

 

「そうですよ!アスナさんたちが神じゃないと言うのなら…同じ人間の僕たちにだって、同等の力を出せるってことですよね!そういうことなら、僕たちにもできるはずですよ!」

「…うん…それに、私も…あの拳闘士とは闘いたいと思っていた」

「そこまで言われたら、こっちだって応えないとなるよね…それに…アリスを狙ってるっていうのなら、そんな奴を許しておけないしね」

 

レンリ、シェータ、イーディスと呼ばれていた騎士たちがそれぞれの気持ちを語っていき、その言葉に応えるようにガタイがしっかりした男の人が立ち上がった。

 

「騎士殿の仰る通り…我らの持てる全てを出し切りましょうぞ!!」

「「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

ゴルゴロッソに賛同し、更に皆の声が強くなっていく。

 

(これが…フォンたちが守ろうとした世界……今度はボクが…ボク達が守るよ、フォン…だから…)

 

その光景を見ながら、ボクは思わず拳を握り占めてしまった。

 

…君が帰ってくるまで守り続けるから…

 

決意と共に、そんな願いが頭に思い浮かんでいた。

 

 

 




最近書きたいことを書いてると、長くなってお話が進まないという妙なサイクルに嵌ってます(苦笑)

ということで、次回はちょっとした修羅場(?)的なお話です。
アスナは然り、ユウキもカーディナルやオリキャラのマーベルと情報交換をします…色々掘り下げるお話なので、ちょっとオリジナル回になるかと思います。

ちなみにユージオとアリスはお休みです…次々回が二人のメイン回となりますので…

それでは、また。

P.S. twitterで短編アップしますので、そちらもご覧頂ければ幸いです!

武器解説に関して、新調と古いものだとどちらがいいですか?

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