ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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サブタイから分かるように、完全な平和回です(前回までの空気はどこにいったのやら…)

ユウキが色々と翻弄されまくってます…『恋せよ、乙女!』と言いますが、嫉妬のあまりに色々と思考が変な方向に振り切ってます(笑)

それではどうぞ!


第ⅩⅩⅦ話 「修羅場極まる?」

軍議が終わり、各自解散となった後、ボクとアスナはマーベルの下、寝るようの軽装と着替えるための天幕へと案内してもらっていた。

 

流石に鎧装備のまま休むのはキツかったので、そう提案してくれたカーディナルに感謝しつつ、ボクたちはそれぞれの天幕へと向かって行く。

 

「…それじゃ、フォン君は何も覚えてない感じなの?」

「うん…まるで別人みたいだった」

「でも、ユウキを見て反応を示してはいたわよね…?フラクトライトに関することだから、同じかどうかは分からないけど、記憶喪失の場合、ユウキと一緒にいたら記憶が戻るんじゃ…」

「でも、ボクよりもキリトやアスナの方が付き合いは長いわけでしょう?それなのに、ずっと一緒にいた筈のキリトに何の反応も示さなかったって話だよ…それを聞いて、そういうのとはなんか違うような気がしてさ……(それにあの言葉…『何も知らない』…あの言葉がどうしても引っ掛かってるんだよね)」

 

フォンとキリトの状態について、情報交換していくボクとアスナ…アスナもキリトに会えたらしいが、言葉を発することはできず、涙と共に僅かな反応しか示さなかったキリトの様子にショックを隠せなかったらしい。

 

アスナの方だって辛い筈なのに、ボクのことを気に掛けてくれてることを察し、なんとか笑みを作り答えていく…けど、ボクの脳裏にはあの時…森の中でフォンが放った一言が頭から離れずにいた。

 

そう言われて、初めて気付いたことがある…ボクはフォンのことをどこまで知っているのだろうと…

 

さっきもアスナに言ったが、ボクとフォンの付き合いはそこまで多い方じゃない…というか、皆と比べれば一番短いと言っても過言じゃない。

 

濃度で言えば、おそらく最高レベルだとは思うけど…それでも、フォンの全部を知っているかと聞かれると……正直自信がなかった。

 

前にお父さんとの不仲のことや元いた世界とこっちの世界がどう違うのかという話をしてくれることはあったが…その話であっても、フォンは自身のことについて多くは語ろうとすることはなかった。

 

SAO以降のことはキリトたちから聞いたことがあったけど、それ以前の話は、事情を把握しているキリトでさえも知らなかった。

 

(そういえば…お義父さんとお義母さんもそういう話はあんまりしてくれなかったな)

 

フォンだけでなく、フォンのご両親もボクのことを凄く可愛がってくれてはいるものの、フォンの過去については話すことはほとんどなかったなと思った。

 

(あの言葉は…僕の知らないフォンのことを指しているのかな…それとも、他に何かの意味があるのかな)

 

平行世界から来た…そう告げた時のフォンは、いつも見せている頼りがいのある大人びた姿などなく、安心と後悔…子供が本心を吐露できたことによる純粋な彼の真の姿にも見えた…あれ以上の何か…フォンにはまだ秘密があるということなのだろうか。

 

「・・キ…ユウキ!」

「っ!?あっ…ゴメン、アスナ、何?」

「キリト君がいる天幕、向こうらからここで別れようと言ったのに、心あらずといった姿だったから…本当に大丈夫?」

「あ~…ゴメン、ちょっと考え事してて…うん、大丈夫。それじゃ、アスナ、キリトを宜しくね」

「うん…ユウキは本当にいいの?やっぱり私と一緒に…」

「一人で大丈夫だよ。今のフォンの近くにいたら、フォンの負担になっちゃうかもしれないし…アスナだってキリトと二人っきりの方がいいでしょう?ボクは一人用の天幕で大丈夫だから」

「…そう…分かった。ただいつでも、私たちの天幕に来ていいからね?」

「うん、ありがとう、アスナ…おやすみ」

 

アスナが心配して声を掛けてくれていたことに気付くのが遅れ、考えていたことを振り払い、大丈夫だと告げる。まだ心配だというアスナもそれ以上は何も言わず、キリトがいる天幕へと向かって行った。

 

これ以上、ここで考えていても仕方ないと思ったボクも、人界軍の方々が用意してくれた天幕に向かおうと…

 

「あの…お待ちください、アスナさん!」

「…!……ロニエさん?」

 

アスナを呼び止める声が聞こえ、ボクの足は止まった。どうしたのかと思い、近くの天幕から顔を出すと、キリトの天幕に入ろうとしていたアスナに、寝間着姿のロニエが声を掛けていたところだった。

 

「え、えっと…差し出がましいかもしれませんが…!キリト先輩のお世話をお任せ頂いておりまして、もしアスナ様さえよければ、私も今夜一晩天幕にお邪魔させて頂けませんでしょうか!」

「…えっ!?」(えっ…えええぇぇぇ!?)

 

大人しそうな雰囲気から、思い切って告げたロニエの献願に、アスナからは驚きの声が漏れ、ボクも心の中で絶叫していた。

 

「ロ、ロニエさん…お気持ちは有難いんだけど、流石に疲れているところに申し訳ないし…無理をして、明日からの闘いに何か影響があったら…」

「だ、大丈夫です!それに…アスナさんから…その……キリト先輩の話を色々と聞きたいと思いまして…!?」

「キリト君の…?」

「はい…!私は…先輩と一緒にいた期間は2か月ぐらいと短い間だけでしたが…キリト先輩たちのお部屋を掃除したり、アインクラッド流剣術を中心に剣技を教えてもらいましたし、跳ね鹿亭の蜂蜜パイも何度かご馳走して頂きました…その…若輩者ですが、アスナさんが知っているキリト先輩のことを教えて頂く代わりに、私が知っている先輩のことをお伝えできればと思いまして…!?」

「そ、そうなんだ…ふ、ふーん…(キリト君…また女の子を引っ掛けて…!?)」

 

(っ…アスナから嫌な気配が…!?)

 

笑みを作っているが、アスナに恐怖を覚えたボクはその場で身震いした…あのアスナは、確実にキリトに対して何か起こっている時のアスナだ。一方のロニエは必死のあまり、アスナの豹変に気付いていたないようだ。

 

(というか、ちょっと待って…ロニエって確か、マーベルと同じ傍付きっていう役職で…マーベルはフォンの傍付き……も、もしかして…?)

 

ロニエがキリトに対する態度がどういうものか…現実世界で嫌という程の前例を見てきたボクからすれば、それは一目瞭然で…それに気付いた時、もう一つの可能性にも気付いてしまった。

 

まさか、マーベルもフォンのことを好きになっているのではないかと

 

(有り得る…だって、あのカーディナルさえも好意を抱かせているのに、もっと身近にいたであろう後輩がそう思ってないわけがない!いや、もしかしたら、もっと他にも落っことした人がいるんじゃ…!?)

 

考えたくはなかった…けど、カーディナルという前例がある以上、その可能性をボクは捨てきることができないでいた。

 

というか、ボク自身が油断していたのもあった気がする…フォンの周りの女性って、基本キリトに対して好意を向けていたから、そういうのが無さ過ぎたんだ。学校じゃ、フォンは結構人気だし、顔もイケメンの方に入るタイプだ。

 

優しいし、何かあったらいつも話を聞いてくれたり助けてくれたり、それでいて色々なことができる多芸さに、剣の腕も達人級…それをよく知っているボクからすれば、モテない理由が逆にないのだ!

 

フォンにその気がなくても、カーディナルみたいに落っことしている人が他にもいるのではないか…どこか頭痛を覚えたボクは、アスナとロニエの会話から耳を離すことができないでいた。すると、

 

「その情報交換…私も加えてもらえないだろうか?」

「貴女は…さっきの会議にいた…」

「ノーランガルス帝国騎士団所属、ソルティリーナ・セルルトと申します」

 

ロニエが出てきた方向とは真逆…姿を現したのは落ち着いた雰囲気を持った女性だった。さっきの会議にも、ユージオの先輩であるゴルゴロッサさんの近くにいた人だったと思い出した。

 

「申し訳ありません…戦いが終わるまでは詮索しまいと考えていたのですが、私もキリトとは浅からぬ縁があり、我慢し切れず参上した次第です」

「そ、その縁というのは…どんなものなのですか…ええっと、ソルティリーナさん」

「宜しければ、リーナとお呼びください、アスナさん。コホン…ノーランガルス帝国修剣学院にて、キリトは私の傍付き剣士として、一年間私の身の回りの世話をしてくれていました。また、私も些かな剣技を伝えることができたと思います…それと、学院を卒業する時には、私の故郷の花を送ってくれもしましたね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ソルティリーナ…堂々とキリトとの縁を語っていくリーナさんの姿に、ついにアスナが頭を抱えた。まぁ、アスナの気持ちは凄く分かる…というか、リーナさんの話を聞いて、ボクも頭を抱えていた!

 

(待って…ちょっと待って!?もしかして、フォンの先輩ももしかして女性!?ということは、カーディナル含めて3人も恋へと発展させている可能性も…!)

 

カーディナルがその心を告げた時は驚きとか、フォンの姿にショックを受けていたこともあってスルーしてたけど…浮気という可能性が頭に浮かんだ瞬間、ボクは思わず拳を握り占めていた。

 

一体何人の女性を侍らせているのか…以前にも浮気疑惑(といっても、クラインさんのせいによる誤解であったが…)が浮かび上がった時、ボクに言ってくれた言葉はどこにいったのやらと思い、胸の底から何かが込み上がってきていた。

 

「はぁぁ……そういうことなら、貴女もたっぷりと情報を持っていそうね、リーナさん。ロニエさんも…今夜一晩ご一緒しましょ?私も色々とキリト君のことを教えますから」

「はい!」「ええ」

 

(あー…アスナ、完全に諦めたね、あれ…というか、キリト、元に戻ったら大変なことになるんじゃ…それはフォンも一緒だけど…!)

 

諦め、受け入れたアスナの言葉に、ロニエとリーナさんも頷き、天幕へと入って行った。これはあとでとんでもないことになると思いつつ、ボク自身もフォンに問い質さないといけなと思っていた。

 

「いや~…女神様だけじゃなくって、先輩と後輩からもモテてるなんて…やるわね、キリトって子?」

「っ…うわぁ!?」

 

すぐ背後から聞こえてきた声に思わず振り返る。そこにいたのは、さっきの軍議の時、イーディスと呼ばれていた女性の整合騎士だった。

 

「あっ、ゴメン、ゴメン。脅かせるつもりじゃなかったんだ。たまたま夜廻りの交代に行こうとしてたら、偶然出くわしちゃって」

「こ、こっちこそ大きな声を出しちゃって、ゴメンなさい」

「…いいわよ、脅かせたのはこっちなんだから…確か、ユウキって言ったわよね?あたしはイーディス・シンセシス・テンよ」

「名前はさっき軍議で聞いてたよ…えっと…ボクに何か用だった?」

「ううん…ちょっと気になって声を掛けただけだから…」

 

イーディスはそう言って、ボクをジッと見ていた。その目は…その目をボクはよく知っていた。アスナや…姉ちゃんがよくしていた目にそっくりだったからだ。

 

「あっ…ゴメンね。貴女を見ていたら、何か懐かしい気分になっちゃって…」

「……妹さんか弟さんが…いたの?」

「…いたって聞いてる…でも、あたしはこの間までそれを知らずに…ううん…いることを忘れて過ごしてたの。その影をアリス…他の誰かに重ねて騎士として生きてきたの。だからかな…妹がいたと知ってからも、誰かにその姿を重ねっちゃってるのかもしれないわね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ボクの予想は当たっていたが、イーディスが語るその言葉はどこか重いものがあった…整合騎士には何か秘密があるだろうか…カーディナルが言っていたことはもしかすれば、それを指していたのかもしれない。

 

「さてと、暗い話はこれで終わり!貴女も自分の天幕に戻りなさい…しっかり寝ておかないと、明日からの闘いで全力を出せないかもしれないからね」

「うん…そろそろ向かうよ」

「ええ…そういえば、あのフォンっていう子のところには行かないの?」

「…その…色々あって…」

「そう…まぁ、記憶を失っているって聞いたら驚くわよね。自分が倒した相手のことも忘れてるって聞いた時には、あたしもビックリしたからね」

「…お姉さんは、フォンと闘ったことがあるの?」

 

話しの中、フォンと闘ったようなことが彼女の口から漏れ、思わず尋ねてしまった。その問いに苦笑しながら、イーディスは答えてくれた。

 

「ええ、セントラル・カセドラルで彼らが最高司祭様…アドミニストレータ様と言えば、貴女にも分かりやすいのかしら…その方を討とうとカセドラルを登ってきた彼とね…まぁ、あたしも頭に血が上ってて、本気で命を奪おうとしてたんだけど、技を強引に破られて負けたわけ……本当に驚いたわよ。鎧を貫通する斬撃に真っ向から挑んで、打ち破ってくるんだから」

「アハハ…なんというか、フォンらしいというか…こっちでも相変わらずだったんだね…」

「そっちの世界…りあるわーるどでもそんな感じだったの、彼?それは、貴女も苦労してそうね。まぁ、命を救われた側として言うのは何だけど、自分の命すらも顧みずに動くところとか…今、思えば少し危ない感じはしたわね」

「命を救われた…?」

「あたしの神器…闇斬剣って言うんだけど…その記憶開放術…奥義みたいな技を捨て身で使ったあたしを助けたのよ、彼…下手をすれば、自分自身が二度と治すことのできない傷を負うかもしれないって言うのによ?そうするのが当然と言うか、自分のことなんか後回しにしているっていうのは…ちょっと怖い感じもするなって思ってさ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

その闘いを直接見ていないボクからしても、その時のフォンは考えるよりも先に動いていたのだろうと思った。自分にできることがあるのに、しないという選択肢はおそらくなかった筈だ…そういった意味で、イーディスがフォンの姿に違和感を覚えているのもしょうがない話なのかもしれない。

 

「…おっと…おしゃべりしすぎたかもね。そろそろ行くわ…貴女もすぐに天幕に行きなさい。それじゃあね」

「あっ、はい…おやす……あの!」

「うん…?どうかした?」

 

そろそろ行かなければと話を切り上げたイーディスを見送ろとして、ボクは言い掛けた言葉を切り替え、彼女を呼び止めた。呼び止められた彼女は何事かとボクの方を見て、

 

「イーディスって…その……フォンのことが好きだったりするの?!」

「……?………プッ…ククッ…!アハハハハハハ!!な、なんでそうなるのよ…!?」

 

まさかの可能性を疑ってしまい、ボクはストレートにそう尋ねてしまった。一瞬、質問を理解するのにイーディスがフリーズし、ようやく意図を理解した彼女は大声で笑いだしてしまった。ツボに嵌ってしまったのか、膝を突いてしまった彼女に、ボクはただただ狼狽えることしかできずにいた。

 

 

 

『命を救ってくれたことには感謝してるし、アリスの古くからの友人ってことで気にしてるけど、それだけよ?惚れるとかそういうのじゃないわ……だから、安心しなさい』

 

(…あの感じだと、本当にイーディスはフォンが好きじゃない…って捉えていいのかな?別れる時、なんか優しい表情になっていたけど…)

 

イーディスと別れた後、天幕に向かいながら、別れる直前に彼女から告げられた言葉を思い出していた。その表情が…アスナや姉ちゃんが時折見せる表情によく似ていたと思ったのは余談だ。

 

…ともかく…フォンに対する疑念が一つ晴れたことにホッとしていた自分がいた…後、確認しないといけないのは…そんなことを考えていると…

 

「…あっ…」

「…!こ、こんばんは…女神様」

 

天幕の前に誰かが…いや、頭に思い浮かべていた人物が立っていたことに思わず声が漏れた。向こうもボクが来たことに気が付いたようで…一礼してから、彼女…マーベルは恐る恐る声を掛けてきた。

 

(…あれ、これってデジャビュ…?)

 

さっき見た光景が、まさかこうも早く目の前で再現されるとは思ってみなかったボクは苦笑いしつつ、どうしたものかと考えるのだった。

 

「…どうぞ…粗茶ですが…」

「ありがとう」

 

…とりあえず、立ち話するのもどうかと思い、ボクは天幕の中へとマーベルを通し、簡易椅子に腰かけた。何か飲み物をと思って周りを見渡すも、どこに物があるか分からずキョロキョロし続けていた。そんなボクの動きに気付いたマーベルが代わりに用意して、紅茶を淹れてくれた。

 

湯気が立つ紅茶を息で冷まし、少しだけ口に含む。それなりの良い茶葉が使われているのか、とても良い香りが漂っていた。紅茶は何度かフォンが淹れてくれたことがあったが、それよりも良いものだった。

 

「えっと…女神様」

「女神様はよしてよ…多分、そんなに年齢変わらないと思うから。ユウキって呼んでいいから」

「は、はい!…ユ、ユウキさん!その…お疲れのところに押しかけてしまって、すみませんでした!」

「ううん、大丈夫だよ。それに、ボクもマーベルとは話したいと思ってたから(…凄く真面目な子なんだな…)」

 

呼び方は変わったが、話し方が敬語から一切変化しない、堅い態度のマーベルに苦笑が零れてしまう。なんというか、優等生っぽい子なのだろう…アスナやフォンとはまた違った意味での真面目さが彼女から滲み出ていた。

 

「それで…マーベルはどうしてここに来たの?」

「あの…実はロニエが女神様…アスナさんのところに話を伺いに行くってことになりまして…ティーゼも凄い応援してて…良い機会だから、私もフォン先輩たちのお話をお伺いできればと思いまして…!」

 

どこか興奮しているマーベル…さっきまでのアスナたちのやりとりを見ていたボクとしては、もう知ってるよというツッコミと、そういう背景だったのかと納得が入り混じった感想を抱いていた。

 

「で、マーベルが聞きたいことって…」

「それはですね………」

(…な、何を聞くの…!やっぱりマーベルもフォンのことが…!?っていうことは、フォンの好きなものとか、現実世界ではどういったことをしているとか…そういうことを聞いてくるんじゃ!?)

 

なんとか平静を保ちながら、マーベルに尋ねるも…心臓の音が頭に直接響いているような感覚に襲われる。そんなボクのことな知る由もないマーベルが話そうとする口の動きをボクは見続けてていた…こんなときばかり、自分の反射神経の良さを恨めしく思った。そして、その口から出てきた言葉は…

 

「フォン先輩たちが使ってるアインクラッド流剣術に関してなんですけど…両手剣や片手剣以外にも武器に応じた秘奥義が存在するって聞いたんですけど、本当ですか!?」

「…へっ…あいんくらっど流剣術…?」

 

彼女の口から出てきたまさかの質問に、ボクは一瞬呆けてしまった…アインクラッドと言えば、新生ALOにもある、かつてSAOに存在していた鋼鉄の城のことだとは思うけど…混乱し切っているボクは目を点にしてしまい、すぐに答えることができずにいた。

 

「人界でも、連続技での秘奥義を使うのはフォン先輩とキリト先輩、そして、二人から剣を習ったユージオ先輩だけだったんです!特に、フォン先輩とキリト先輩は使う武器の種類が違って、それに合わせた秘奥義を使ってて…!

それに、先輩は時たま不思議な料理を作ってくれていて…リアルワールドじゃ、もっと色々な料理があるって、教えてくれて…!」

「ちょ、ちょっと待って!?…聞きたいことって、そういうこと?」

「…?そうですが……それがどうかしましたか?」

「……だって、マーベルもロニエみたいに…フォンのことが…その…」

「………っ!?ち、違いますよ!?確かにフォン先輩には良くしてもらいましたけど…!?」

「…よくしてもらった?」

「誤解です!?あくまでも、学院の先輩・後輩としてってことです!ティーゼたちにも言われましたけど、私が先輩に抱いているのはあくまでも尊敬の念であって、恋慕ではないですから!?」

「…そ、そうなんだ…(ホッ…)」

 

全力で否定するマーベルの姿に、上がってしまっていた眉を下げる…その内心でホッとしていた自分がいた。

 

「先輩にはご迷惑を…ううん…先輩は大切なことを教えてくれたんです。誰にだって、弱さはあるって…だから、誰かと手を取り合うことが大切なんだって、そして、そのためにそれと向き合おうとする意思が大切なんだって…」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「私は……自分が嫌いでした。物思いついた頃から、周りの視線を嫌という程に受けてました。その度に、父や母が庇ってくれていましたが…下級貴族とはいえ、騎士として恥ずかしいと思いました…そんな自分を変えたくて、私は修剣学校に入学しました。

でも、フォン先輩は違ったんです……頼ることを弱さだと思ってほしくないって言ってくれたんです…その背中を追い掛けたいって…私はそう思ってます」

「…そっか…(頼ることを……それって、フォンにも言えることだと思うんだけどね)」

 

マーベルが教えてくれたことに頷きながら、それはフォンもそうではないかと思ってしまった。もしかすれば、マーベルのことを自分と重ねていたのかもしれない…だからこそ、そんな言葉がフォンから出たのかもしれない。

 

「あと、あまりにも料理が上手だったり、キリト先輩たちに振り回されている姿が印象的で、主席以外に『修剣学院のオカン』とも呼ばれてました…主にキリト先輩が言いふらしてましたけど」

「こっちでもそんな呼び方をされてたんだ…」

 

どうやらこっちでも苦労人気質であることに変わりなかったらしい…すんなりと気疲れしているフォンの顔が想像できてしまったのが悲しい…そんなことを思っていると、

 

「ユウキ、少しよいか……先客がおったか」

「さ、最高司祭代理様!?どうして、ここに…!?」

 

天幕から声が聞こえ、その人物…カーディナルがやってきた。ボクに用があったらしく、いきなりの来訪に驚いていたが、まさかの人物がここにやってくるとは思ってもみなかったマーベルは更に驚いていた。

 

「そこまで気張らなくてよい。談笑の途中にすまんな…フォンのことで少し話をしに来ただけじゃから…」

「フォンのこと…?」

「うむ…ユージオたちが不在じゃったから、わしが代わりに来たのじゃ。変わりなく、もう休んだようじゃ…今は衛生兵の近くの天幕におる…起きた時、あやつを避けておるというのなら、その辺りを気を付ければ大丈夫じゃろう」

「…ゴメン…気を遣わせちゃって…」

「気にするでない…それでは、わしも天幕に戻るからのう」

 

どうやら、カーディナルには気付かれてしまっていたようだ…ボクがフォンを気遣って…いや、避けていることに気付いて、気を遣ってくれたようだ。そのまま、去ろうとしたカーディナルだったが、

 

「ちょっと待った!」

「ユ、ユウキ…!?」「ユウキさん?!」

 

去ろうとするカーディナルの手を掴み、その動きに待ったを掛けた。ボクの突然の行動に、カーディナルだけでなく、マーベルからも驚きの声が上がるが、ボクは逃してなるものかとカーディナルに詰め寄る。

 

「さっきは色々とありすぎて聞けなかったけど…聞かせてくれるよね?カーディナルはどうやってフォンと知り合ったの?一体どこで…フォンを好きになったの?(ボソッ)」

「っ…!?そ、そ、それは…!?その……!」

「…?(二人で何を話してるんだろう?)」

 

マーベルに聞こえない様に、カーディナルへと問い掛ける。まさかこの場で追及されるとは思ってもみなかったのだろう…カーディナルの顔が分かりやすい程に真っ赤になっていた。

 

「い、いくらおぬしにも、それを教えるのはちょっと…わしにだって、言えぬことの一つや二つが…!?」

「教えてくれたら、ボクも話すよ…リアルワールドでのフォンのことを…色々とね?」

「……………よいじゃろう。そこまで言うのなら、色々と教えてもらうぞ…たっぷりとな」

 

折れた…沈黙の間に、完璧に自分の欲に負けたカーディナルは去ろうとしていた足を返し、天幕に戻ってきた。

 

『いい、ユウキ…相手の欲しいものをちらつかせることが交渉だと大事なんだからね!』

 

いつぞや、アスナが教えてくれた交渉術(?)が役に立った…何故かフォンに怒られそうな気もするが、今だけはそんなことなど気にしていられなかった。

 

「(さてと…どうやって、カーディナルを堕としたのか…あとでお説教するためにも、しっかりと聞かせてもらうからね…フォン?)えっと…それじゃ、ボクから話すね……知ってる限りでの話になるけど、夢幻の戦鬼って呼ばれてたフォンの話をね」

 

マーベルが気になっていたアインクラッド流剣術…ソードスキルのことや、彼女よりも興味津々に耳を傾けているカーディナルに向けて、ボクは話し始めた。

 

鋼鉄の城で戦友たちと駆け抜け、妖精の国で激闘を繰り広げた、夢幻の戦鬼の話を…

 

その後、フォンたちがどういった二年を過ごしていたのかをボクはカーディナルとマーベルから聞かせてもらうのだった。

 

「えっ!?フォンの先輩って男性なの!」

 

傍付きとしてフォンが仕えていた先輩が男だったと聞き、完全に女性だと勘違いしていたボクはその事実に驚いたのは余談だ。

 




修羅場…とは程遠い平和なお話回でした(苦笑)

そして、ユウキに見事に釣られたカーディナル…右目の封印破ったせいか、とても感情的に書きやすくなりました(笑)まぁ、次回から当分シリアスなので、最後の温厚なエピソードでした。

次回はユージオに視線が戻ります…それが意味するのはもちろん…

そんなわけで次回に是非ご期待頂ければと思います。
それでは!

紅茶館さん、星雲 輪廻さん、陽兎さん、
ご評価ありがとうございました!

武器解説に関して、新調と古いものだとどちらがいいですか?

  • 物語の語り部を新調版
  • 今までと同じ旧式版
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