ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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物騒なサブタイですが、まぁ、そういうことです…(笑)

ようやくユウキが使用しているスーパーアカウント『月夜神ルナリス』のお披露目でございます…まぁ、それだけでは終わらないのですが…

それではどうぞ!




第ⅩⅩⅨ話 「胎動する悪意」

「ふわぁぁぁ……」

 

軽食であるハムとチーズ(らしきもの…こっちだと何と言うんだろう?)を挟んだ少し硬さが残るパンを食べながら、ボクは一人で大きな欠伸をしていた。

 

昨夜はカーディナルやマーベルと、アンダーワールドでフォンが何をしていたのかを聞き、現実世界や他のVR世界でのフォンのことを話していると、かなり遅くまで話し込んでしまった。

 

マーベルは朝早くに補給部隊の方で仕事があるとのことだったので、もう起きてそちらに行ってしまったのだろう。ついでに、フォンの方も様子を見てくれてるとのことだったので、申し訳ないがお願いすることにした。

カーディナルの姿も見えないことから、同じくタイミングで天幕を後にしたのかもしれない。

 

そして、一番遅くに起きたであろうボクは軽く寝不足になっていた。本当なら、しっかりと睡眠を取っておくべきなんだろうけど…流石にフォンのこととなると、気になってしまったのだから致し方ない。

 

(…でも、カーディナル…全然話を聞いてこなかったな)

 

マーベルは色々と話を…キリトたちのことも含めて聞いてきたのに対し、カーディナルは、ボクが話したことだけを聞いて満足していたようだった。逆に、マーベルが知らない学院以前の話をしてくれたのは有難かったけど…(…その方法が盗聴に近いものだと聞いた時には、マーベルと共に言葉を失ったけど…)

 

『わしとあやつでは生きる世界が違う…わしがこの気持ちを告げたところで、あやつに…フォンやお主に迷惑を掛けることになるだけじゃ』

 

(…なんでだろう……ホッとしていい筈なのに、嫌な感じが拭えないのは…)

 

昨日のカーディナルの言葉が脳裏をよぎり、心に何かがのしかかるような感覚に襲われる…こういう時、フォンがいてくれればと思ってしまい、その考えを払う様に頭を振る。

 

(ダメダメ!しっかりしないと…!?アスナだって、キリトのことで大変なのに…ボクまで負担を掛けちゃいけない…しっかりしろ、ユウキ!)

 

ともかく、早くご飯を食べ終えてしまおう…そんなことを考えていると、

 

ボオオオオオオォォォォォンンン!!!

 

「っ…!?なに、今の音……」

 

周囲に響き渡ったほら貝のような轟音が聞こえてきた。

 

 

 

「アスナ!」

「…ユウキ…さっきの音、聞こえた?」

「うん…あの音、何だったの?」

「警戒を知らせる合図だって、リーナさんが言ってたわ。それで、ベルクーリさんたち、整合騎士たちが様子を見に行ったって…!」

 

すぐに軽装から鎧に着替え、剣を持ったボクは天幕を飛び出し、何が起こったのかを知ろうとしていた。その途中、走るアスナを見かけ、それに追いついた。

 

ボクに気付いたアスナが少し驚きながらも、何があったのかを説明してくれた。警戒ということは、ダークテリトリーの方で動きがあったということだろうか…そうこうしている内にベルクーリたちの姿が見え、

 

「ベルクーリさん!」

「おう…アスナにユウキの嬢ちゃん、来たか…さっき物見から連絡があってな。俺たちもさっき来たばかりだが…どうやら敵側のリアルワールド人のやりかたは相当なものらしい」

「信じられないわ…あんなことを命じたなんて…敵の指揮官は正気なのかしら」

 

遠くを見ていたベルクーリがボクたちに気付き、状況を語る。隣に控えるイーディスも眉を顰めていたことから、あまり良くないことが起こったのだろう。ベルクーリが顔で向こうを見ろと示し、ボクたちはそちらへと視線を向ける。

 

アスナがステイシアの能力で作り出した大きな谷…落ちれば、命の保証はないと思えるほどに底なしに見える谷に、何かが動く影があった。

 

「…あれは何…?」

「おっと…アスナたちは遠見の…というか、神聖術自体を知らないんだったな。俺が唱える神聖語を復唱してみろ」

 

影の正体が見えず、ボクたちが目を細めていると、忘れていたとばかりにベルクーリさんが神聖術(ALOでいう魔法みたいなものらしい)を教えてくれた。教わった神聖語というものを唱えると、親指と人差し指に水晶らしきものが出現した。

 

「「遅くなりました…!?」」

「ユージオと嬢ちゃんも来たか…遅いぞ、何やってた。まぁ、若い二人にそれを問うのは野暮か…」

「何もしてません!?」「何もしてませんから!?」

「二人でいたことは否定しないんだな…ほら、お前さんたちもあれを見てみろ」

 

後方から息を切らして走ってきたユージオとアリスがやってきた…が、ベルクーリの冗談に顔を赤くしながら反論していた。そんな反論など無視したベルクーリの言葉に従い、二人もボクたちに並んで、遠見の神聖術を発動させる。

 

「あれって…綱渡り…?」

 

その光景を見て、ベルクーリたちが顔を顰めていた理由がようやく分かった。谷に数本のロープが渡され、それをダークテリトリーの人たちが慎重に渡り続けていたのだ。もちろん命綱など着けていない…一歩間違えば、確実に終わりだ。

 

確かに、イーディスの言う通り、正気を疑う作戦だった。

 

「ベクタは…アスナたちの敵はどんな神経をしていれば、あんなことを指示できるんだ…!」

「…それほど、敵は手段を奴だってことだろう…あの大量の死詛虫を仕掛けてきた時だって、味方の命を容易く生贄にしたぐらいだからな。だが、これはこっちにとっては好機だ」

 

そう告げたベルクーリに全員の視線が集中する。

 

「異界人のアスナたちはともかく…これは戦争だ。このままダークテリトリー軍に情を懸けて、黙って見ていているわけにはいかん…この機を狙わないわけにはいかない…分かっているな、ユージオ」

「…はい。割り切らないといけないことだって……分かってます」

「…よし…なら、仕掛けるぞ。この作戦の肝は…お前さんに掛かってる、レンリ」

「……はい!」

 

ベルクーリから作戦を告げられていく中、強襲を掛けるメンバーをどうするかという話になった時だった。

 

「待って…それ、ボク一人にやらせてもらえない」

 

ボクが申し出たことに、アスナだけでなく、ベルクーリを始め整合騎士たちが驚くのだった。

 

 

 

(…ベルクーリはああ言ってたけど、できるなら誰かが死ぬことなんて、少ない方がいいに決まってる)

 

抜刀した剣…ルナリス専用の神器『ムードリィップ・ライト』の手触りを確かめるように握り直す…どんな理由だろうと、誰だって戦争を…人を殺したくなんてない筈だ。だから、ボクは強襲…というよりも、囮になることを買って出た。

 

ルナリスの能力ならそれができる筈…敵を混乱させることが目的だけならできる筈なんだ。

 

「ユウキさん、準備はいいですか?」

「うん。ボクの方は大丈夫だよ」

「…でも、本当に馬は必要ないんですか?」

「今のボクには走る方が早いし…それに騎乗戦ってあんまり自信ないから…」

 

レンリの問い掛けに頷き答える…馬術の経験は他のVRMMOでも何度かあるが、こうも現実世界と変わりないアンダーワールドではちょっと自信がないし、ルナリスの性能ならない方が早い。

 

「すぅぅぅぅ……行くよ!」

「はい!…って…はや……」

 

レンリに合図、ボクはルナリスの能力を発動させる。青紫の光が全身を纏い、特に能力を集中させた足の光が一段と強く光った。そして、一気に駆け出した…驚くレンリの声が途切れたと思い、背後を振り返ると…結構遠くにレンリの姿があった。

 

(うわぁ…脚力を3倍にしただけなのに、この出力って…ルナリスのステータスもそうだけど、この『限界突破』っていう能力もどれだけ規格外なの…!?)

 

『いいかい、ユウキちゃん…ルナリスの固有能力はステータスの上限を無視した強化ができる『能力限界突破』ッス。この能力を使えば、他のスーパーアカウントでさえも圧倒する力を出せるッス…けど、そのフィードバックはかなり酷いッス…イイっすか、使ったとしても、4倍まで…5倍以上は使っちゃ駄目ッスからね!?』

 

ダイブする直前、スーパーアカウントの説明をしてくれた比嘉さんの言葉を思い出した。この能力を使うのは初めてだけど、比嘉さんの忠告が正しいことがよく分かった…これはテストなしで使うには、あまりにも危険すぎる。

 

「っ…見えた…」

 

慌てて追い掛け始めたレンリの姿を後ろ目で捉えながら、ボクは更に地を駆ける。そして、ダークテリトリーの人たちが見え、剣を下に構える。

 

(……ゴメン…!)

 

向こうもボクに気付いたけど、急接近してきたボクが何かを判別できないでいるようで、完全に困惑状態だった。内心でボクは今からすることにそう思いながらも、剣を地面に擦る様に振り切った…ルナリスの能力で4倍にまで高めたステータスによってだ。

 

轟音…いや、音すらも置き去りにしかねない超高速の斬撃が地面を伝った。次の瞬間…綱を渡り切っていたダークテリトリーの人たちの体が宙を舞っていた。

 

できるだけ人がいない場所を狙ったつもりだ…できるだけ誰も死なない様にしたつもりだ…でも、それでも…今の一撃で確実にいくつかの命を奪った。

 

こうも簡単に命を奪ってしまったことに心に影が差す…それでも、この歩みを今、止める訳にはいかない。

 

倒れ、呻きを上げる中、抵抗の姿勢を見せる人たちがボクに向かってくる。囮としては十分だろう…後はレンリと併せて、縄を落としていく。いざとなったら、アスナたちが駆けつけてくれるが…できるなら、これ以上、アスナに心労を重ねて欲しくない。

 

「(できることなら…無力化に留めたいけど…)やるしかない…」

 

武器の破壊、意識を奪う…無力化する方法はあるけど、この戦いはゲームじゃない…本当の殺し合いだ。だから、それで終わりにできないのなら、文字通り命を奪うしかない。

あっちにだって死ねない理由があるように、ボクにだって…フォンたちを守るという目的があるのだから、やられるわけにいかない。

 

「ユウキさん、行きます!」

「…!」

 

追い付いたであろうレンリの声が聞こえた。そして、レンリは馬上から自身の神器である『雙翼刃』を振りかぶり…

 

「止めろォォォォォォォォォォ?!」

「っ!?」

 

その動きに谷の向こうから叫び声が聞こえるが…レンリは迷うことなく雙翼刃を放った。その刃は寸分狂うことなく、一つの縄を斬り落とした。

 

「の、残りの縄を死守しろ!?」「敵は二人だ!後方の奴を先に狙え!」

 

「……そうはさせない!」

 

レンリの行動を止めようと、向こうは動いてくるが、ボクは神速でふところに飛び込み、最前列にいた人たちの武器を叩き壊し、柄頭で急所を狙って意識を刈り取る。このまま制圧できたらいいけど、

 

(そうはいかないよね…)

 

覚悟を決め、ボクはレンリの壁となるべく、剣を構え、更に敵陣へと突っ込んでいった。

 

 

「…圧倒的だな。制御が難しいと言っていたが、確かに…あの馬鹿力じゃ味方が近くにいたら、簡単に巻き込んじまうな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

少し離れた位置…いつでも動けるように待機していた人界軍。そんな中、遠見の神聖術でユウキの動きを見ていたベルクーリがそんな感想を漏らしていた。しかし、アスナだけはどこか後悔したように、顔色が悪くなっていた。

 

「アスナ…大丈夫かい?辛いなら…」

「ううん、大丈夫よ、ユージオ…違うの、そうじゃないのよ」

「…アスナ…?」

 

ユージオの心配をそうではないと否定するアスナに、アリスはどういうことかという視線を向ける。

 

「…できるなら、ユウキにあんなことをさせたくなかったんだ。本当なら、私がやるべきだって…」

「いいや、それをすべきは僕たちの方だよ。だから、君がそこまで思うことは…」

「私は…人の命を奪ったことがあるの」

「「っ!?」」

 

アスナの告げた事実にユージオとアリスの言動が止まる。

 

「奪いたくて奪ったわけじゃないわ…でも、守るためとはいえ、私は人を殺した。キリト君も、私を守るために…フォン君も仲間を守るために剣を振るったわ…でも、ユウキは違う。ユウキは……」

「…そうじゃないよ、アスナ」

「…えっ」

 

ユージオから放たれた突然の言葉にアスナは一瞬言葉を失う。

 

「ユウキはきっと…アスナにそんなことを言ってほしくないと思うよ。自分にできることがあるから、彼女は自ら志願したんだよ。命を無駄に失わせたくないから、あんな強大な一撃を放ったんだと思うよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「逆に凄いと思うよ…彼女は心が強い、しっかりと覚悟を持っている人だよ」

「あ、ありがとう…ユージオ」

「どういたしまて」

「…ユージオ…貴方、よくそんなことが分かったわね」

「まぁ、キリトたちを見てたらというか、一緒に付き合っていたら、そういう考えも分かるようになったというか…アハハハ…」

(…キリトたちに影響を受けすぎじゃないかしら…良い事なのか、悪い事なのか…)

 

ユージオの感受性や観察眼に驚く半面、何故か頭痛を覚えたアリスだった。

 

(…なるほどな。ユージオがあいつ等から剣技を習ったと言っていたが…いくら優れた剣技を持っているからと…二人掛かりだったといえ、猊下を追い詰めたのは、あいつらが既に実践経験を持っていたからだったのか。

それもちょっとのものじゃねぇな…ユウキの嬢ちゃんの動きからして、相当なもの…下手をすれば、場数は俺と同等かそれ以上か…)

 

一方、ユージオの成長ぶりから、彼の師匠であり、アドミニストレータを討ったキリトとフォンの実力に疑問を抱いていたベルクーリは納得していた。

 

 

 

「はぁ…所詮はAIか。それにしても、いくらこちらが亜人ばかりだとはいえ、人界側のユニットの方が性能は優秀というのはどうなのか…いや、状況対応力だけを見れば、その差は歴然という評価をすべきか」

 

そして、それを見ているのはアスナたちだけではなかった。

 

『お前たちは峡谷に張った綱を伝って向こう岸に渡れ。被害が出ても構わぬ…綱渡りを強行するのだ』

 

拳闘士部隊の長であるイスカーンと暗黒部隊の副隊長(ヴァサゴが離脱したため、代理で長を務めている)に、そんな無慈悲な命令を出した暗黒神ベクタも、その光景を退屈そうに眺めながら、そんな考察をしていた。

 

ベクタの目的はアリスただ一人…それ以外がどうなろうが、何をしようが、彼にとっては食指の一つも動かないでいた。

 

(やはり暗黒軍は捨て駒だな…それに、これはこちらにとってもチャンスだ。上手くやれよ…クリッター)

 

暗黒軍にすらもう見切りをつけたガブリエルは頭の中で、新たなる策を巡らせていた。そう…アンダーワルドにダイブする前から、ベクタ…ガブリエルはもう既にアンダーワールドにとって最悪の一手を打っていたのだ。

 

 

「さてと…アンダーワールドと現実世界の時間の同期、これで完了っと」

「さっきから何やってんだよ、クリッター…ずっとパソコン弄りながら、ニヤニヤしやがって…」

 

現実世界…オーシャンタートル メインコントロールルーム

 

アメリカの特殊襲撃部隊に占領されたここにて、眼鏡をかけた金髪の男…クリッターは笑みを浮かべていた。

 

この男…ガブリエルの部下にして、かなりの実力を持ったハッカーであった。ガブリエルより指示を受け、FLAの倍率を通常状態である一倍に戻すことに成功したのだ。

 

そんな彼の様子を、暇つぶし目的で見ていた薄紫の男が、クリッターの座っていた椅子の背もたれにのしかかりながら、何をしたのかを尋ねていた。

 

「アンダーワールドの時間をリアルタイムの状態に戻してやったのさ」

「はぁ…?そんなことして、何になるんだよ」

「殺戮馬鹿のお前に説明するのも面倒くさいが…これでこのオーシャン・タートルに存在するSTL以外でも、アンダーワールドにログインできるようになったんだよ」

「…………そいつはスゲェことじゃねぇか?!」

 

クリッターの説明を数秒要して男は理解し、凶暴な笑みを浮かべる。

 

「それだけじゃない…これをアメリカの各VR情報サイトにリークするのさ…暗黒騎士のアバターデータ付きでな」

「ほう…なんでまた、そんな面倒なことを…」

「やっぱりお前は馬鹿だな…対人ゲームなのに、レーディング・倫理コードなし、その上でリアルな人殺しができるVRMMOに無料で参加できる…そんな話を聞いて、参加しないアメリカ人のゲーマーはいねぇよ。いたとしたら、そいつはゲーマー失格だ…銃を持っていいのに、各マルチメディアじゃ規制ばかりされて、鬱憤が溜まってる連中は多いだろう。

最下位の能力しかない暗黒騎士アバターでも、その数が万を超えれば…それは立派な武器になるだろう」

「……いいねぇ…最高にいいねぇ、それ!!数の暴力で押し潰すとか、マジ最高じゃねぇか、オイ!?」

 

そう…クリッターはアメリカのVRMMOプレイヤーをアンダーワールドにダイブさせ、人界軍・暗黒軍共に大蹂躙を引き起こさせようとしていたのだ。

 

全く躊躇のない、その悪魔の手法に、薄紫紙の男は三つものピアスをつけた舌が見えるよう、大きな笑い声を上げていたが…その途中であることに気付いた。

 

「…おい、クリッター…それって、ここからでもアンダーワールドにアクセスできるようになったってことだよな!」

「あん…?そりゃ、まぁ、そうだが…」

「だったらよ…俺もアンダーワールドに行かせろや…!」

「…はぁ!?」

 

正気かという目で男を見るクリッター…クリッターの考え通り…残念ながら、この男は狂っていた…危険な程に、凶悪な男でもあった。

 

「アメリカのド底辺野郎だけがこんな楽しいことを独占させていいわけがないだろうがぁ!?この俺こそが参加するべきだろうが!そして、そこら辺をどうにかするのが、お前の仕事だろうが!?」

「む、無茶苦茶だ…そんなことを言って……いや、どうにかなるかもしれないぞ」

 

まさかの要求に辟易としかけたクリッターだったが、その頭脳がフル回転し、悪魔の一手を更に加速させる。

 

「ここだからこそできることがあるぞ…但し、隊長たちと同じリスクを背負うことになるが…いいか?」

「上等…自分の命を賭けのコインに使うぐらいのスリルがある方が丁度いいに決まってるだろう!」

「…はぁ…流石はリッパー…渾名通りだな、お前」

 

『首切り(リッパー』…自身に着けられた『四つ目(フォーアイズ』と同じ渾名で男を呼んだクリッターはやれやれといった様子で自分が持ってきた荷物からある物を取り出した。

 

「あん?アミュスフィアなんて取り出してどうすんだよ…」

「このコンソールを使って、ダイブすんだよ…普通のダイブと違って、ちょっと弄れば、上位アカウントでダイブできるだろうしな…まぁ、万が一STLが仕えない様に持ってきてたやつが役に立ってよかったぜ」

 

そう言って、クリッターは準備を始める。その間に男は暇つぶしにその上位アカウントについて尋ねていた。

 

「そのアカウントって…確かヴァサゴの奴が使わなかった、最後の上位アカウントだろう?」

「ああ…確か『死霊人形師』っていうアカウントだったな…能力は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「…マジで最高じゃねぁか、オイ」

 

能力の詳細を聞かされ、その歪な笑みがリッパーから上がる…そして、接続が終わり、リッパーはアミュスフィアを装着し、椅子に寝もたれ掛かる。

 

「ヒャヒャヒャヒャヒャ!!それじゃ、行ってくるぜ!リンク…スタァァートォ!!」

 

リッパーと呼ばれた男…特殊部隊所属アサルド・ルサキエ…殺しを快楽とする災厄がアンダーワールドに降り立とうとしていた。

 

 

 

「はぁ…はぁ…!レンリ、まだいける?」

「なんとか…綱もほとんど落としましたから、そろそろ退いた方がいいかもしれません」

「そうだね…」

 

少し息を乱しながらも、ボクはまた一人、拳闘士の意識を刈り取った。ほとんどの敵を戦闘不能までに留めながら無力化したけど、レンリの助言通りそろそろ撤退する時かもしれない。

 

これだけ無力化し、縄を落としてしまえば、敵もそうそう同じことを繰り返すことはないだろう。もう一度地面を抉る様な一撃を目くらましにして、撤退しようと考えていた時だった。

 

「…っ…!?」

 

妙な感覚に襲われた…時間が引き延ばされるような、言葉にし難い感覚。今まで経験したことのない感覚に驚いていると、何かの光が天から注いできた。

 

「あれは…あの光は一体…」

 

背後のレンリが驚いていたが、ボクの方も驚いていた。天から光柱が次々と降り注ぎ、大きな柱と化した瞬間、そこには大量の鎧を着た人たちが出現していた。

 

10や20じゃない…千をも超えてそうなぐらい、数えきれない程の人たちは…剣や斧といった各々の武器を抜いたと思った瞬間、

 

「「「「「ううううおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!?」」」」」

「「「「「っ!?」」」」」

 

咆哮を上げたと思えば、ボクたちと暗黒軍それぞれに一気に進行してきたんだ!

 

 




そんなわけでこちらもようやく公開です、オリ敵の名前と使用アカウント!
前にちょっことだけ出てました、ガチでやべぇ奴です…そして、上級アカウント『死霊人形師』…名前からしてヤバさ全開ですが、その恐るべき能力の全貌はもうしばしお待ち頂ければと思います。

そして、大暴れでした、ルナリス…!
それに併せて、ユウキやアスナの心情を描写した本話でもありました…やっぱりユウキが進んで命を奪うというのはどこか違うなと思っての、できるだけ不殺に留める戦法を今回は取った次第でございます…そういった意味でも、ルナリスを『平定の女神』という設定にしたわけでもございます。

そして、次回は現実世界…シノン、リーファ…そして、リズベットたちのお話になります…クラインが男を見せますし、あのオリキャラも暴れますし、あの懐かしのキャラたちまでもが登場します…長くなりそうだった、多分前後編に分割になるかもしれませんが、ご期待頂ければと思います。

それでは、また!

武器解説に関して、新調と古いものだとどちらがいいですか?

  • 物語の語り部を新調版
  • 今までと同じ旧式版
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