ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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タイトルから不気味ですが、まぁ、そういうことです…

そんなわけでようやくあいつがその狂手を人界軍へと伸ばします。
そして、事態はまさかの展開に…

それではどうぞ!


第ⅩⅩⅩⅢ話 「人形遣いは闇に嗤う」

「ユウキ!?アリスたちは…!」

「今、ユージオたちが追ってる!」

「飛竜に乗ってたのはベクタだったの!?」

「そこまでは分かんない!でも、レンリはあれがベクタだったんじゃないかって言ってた!ベルクーリたちも後を追ったってことはそうなのかもしれない!?」

 

乱戦の中、なんとかアスナと再合流できたボクは、アリスが攫われたことと、その追撃にユージオ達三人が出たことを手短に伝える。

 

「おらぁ…!ごちゃごちゃ話してる場合か!?ちょっとは戦場に集中しやがれ!」

「おっとと…ゴメン!」

 

話の方に意識を割きすぎていたらしく、背後から迫って来ていた赤鎧を拳闘士が代わりに吹き飛ばしてくれた。確かイスカーンと言ったっけ…彼にお礼を言って、ボクも戦場に意識を戻そうとするも、

 

「さっき、こっち側の飛竜が飛び去ったって言ってたな…そいつは多分皇帝で間違いないぜ」

「っ…!本当?」

「…ああ。高みの見物をしているつもりかと思ってたが…くそっ!?俺たちには、あんなクソッたれな命令をしておいて、自分の目的だけはしっかり果たしやがったのか!?」

 

どうやら彼なりにベクタに思うところがあったらしい…あの綱渡りも無理矢理やらされたのに近かったのかもしれない…怒りと苛立ちが籠り、赤鎧を吹き飛ばす力が一段と強まっていた。

 

「おい!光の巫女っていうのは、その連れ去られた騎士アリスのことなのか!?皇帝はどうしてそこまで…俺たち暗黒族を犠牲にしてまで、その光の巫女とやらに執着するんだ!?巫女が皇帝の手に落ちたら、一体何が起こんだよ!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「…もしそうなったら…この世界が滅びます」

「なぁ…!?」

 

拳を振るいながら、ボクたちへとそう尋ねてくるイスカーンの眼に様々な色が映っていた。疑念、後悔、怒り、困惑…皇帝の真の目的を知るべきだと、知らなければならないという彼の眼に、ボクは頷き、アスナが答えを告げた…もちろん、予想だにしていなかった答えに、彼は驚く。

 

「暗黒神ベクタが光の巫女アリスを手に入れて、果ての祭壇に到った時、この世界は人界、ダークテリトリー関係なく、無に還るんです」

「嘘だろう…だったら、俺たちは…死んでいった同胞たちは、何のために…」

「…ベクタはそれを伝えず、暗黒軍の皆を、駒として使ってたんだよ。目的も嘘…この戦争は…本当は起こらなくても良かったはずのものなんだよ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

アスナとボクの言葉にイスカーンは何も言えなくなっていた。

 

闘ってきた理由が…この戦争自体が全て仕組まれたものだと知れば、暗黒軍に所属する彼にとってみれば、ショックを受けるのは当然だろう。

 

「…だったら、話は早え…俺の拳を減り込ませるのは、あのクソ皇帝の顔面だな」

「「…えっ…?」」

「飛竜も永遠には飛べない…連続飛行は、半日が限界…」

「うわぁ…!?」

「シ、シェータさん!?いつの間に…!」

「…驚かせたのなら、謝る…」

「へぇ…そういうことなら、あんたらが気合で追っかけるしかねぇな」

 

一転、気合の入ったイスカーンの言葉に首を傾げていると、気配を感じさせることなく、近くに来ていたシェータさんに脅かされてしまった…この人、言葉だけでなく、動きも静かなのかな…

 

シェータさんの言葉に、イスカーンが拳を合わせてそう告げてくるが、どういうことかとボクとアスナは眉を顰めてしまう。

 

「追っかけるって…貴方はダークテリトリー側の人でしょ?どうして、そこまでこっちのことを…」

「もう皇帝には義理はねぇし、あっちが俺たち見限ったっていうのなら、こっちだって奴を見限るだけの話さ。

皇帝ベクタは、俺たち暗黒十侯の前で確かに言ったんだ。自分の望みは、光の巫女だけだってな…巫女を搔っ攫った時点で皇帝の目的は達せられたってことだろう?つまり、後は俺たちが何をしようが、どうしようと…例え、巫女を取り戻そうとしている人界軍に加勢しようが、こっちの自由…そうだろうが…!」

「「っ!?」」

 

そう告げたイスカーンの雰囲気に怒気が混じり始めた…その悔しさを込めるかの如く、彼は拳を力強く握っていた。

 

「俺は…俺たちは、皇帝に直接逆らえねぇ。どんなにクソッたれな命令をされても、それに従うことしかできねぇ…あんたらと再び闘えと言われたら、闘うしかなくなる…だから、俺たち拳闘士部隊は、ここであの赤鎧どもの侵攻を防ぐ!

あんたらと人界軍は皇帝を追っかけてくれ…そんで、皇帝を…あのくそったれ野郎を……野郎に教えてやってくれ!

 

俺たちは…てめぇの人形じゃねぇてな!!」

 

そう告げると、タイミング良く拳闘士部隊が赤鎧たちの包囲網を破ってくれたのに合わせ、イスカーンが力の限りの号令を掛ける。

 

「よぉーし、お前らぁ!!その突破口をなんともしても保持しろぉぉ!…ふぅ…あんたたちは、あの隙間から脱出しろ。流石の俺たちでも、そう長くは持たねぇ」

「…うん。ありがとう」

「私も、ここに残る…」

「分かりました、シェータさん…殿をお願いします」

 

拳闘士と共にここに残ると宣言したシェータに言葉を掛け、ボクは騎乗したアスナの後ろに乗った。空には、アリスを攫った飛竜と、それを追うユージオの飛竜…更にそれらを追うベルクーリらの飛竜の、四つの影が見えていた。

 

「しっかり捕まってて、ユウキ!」

「うん!」

 

目指すべき方向を確認し、アスナが手綱を握り、馬を走らせた。ボクたちに続くように人界軍も動いてくれ、アリス奪還のための追撃が始まった。

 

 

「…本当に残って良かったのかよ、女」

「名前、さっきも言った…三度目」

 

人界軍が去り、残された拳闘士部隊…アメリカプレイヤーたちが包囲する中、部隊の戦闘に立つイスカーンとシェータがそんな会話を交わしていた。

 

何度も名前を呼ばないイスカーンに、無表情のまま注意するシェータ…その反応にやれやれといった様子で、イスカーンは言い直した。

 

「あぁ……いいのか、シェータ?生きて戻れるかどうかなんて分かんねぇぞ?」

「貴方を斬るのは私…あんな奴等にはあげない」

「へっ、言ってろ…変わってんな、お前」

「…変…?」

「まぁな…だが、嫌いじゃねぇよ、そういうの」

「…そう」

 

言葉を交わし、笑みを浮かべるイスカーン…それに釣られるように、シェータも自然と笑みを零していた。

 

「よーし!てめぇら、気合入れろ!!」

「「「「ううおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!」」」」

「円陣を組め!全周囲を防御!寄ってくるアホどもを、片っ端からぶちのめしてやれぇぇぇ!!!」

「…斬る…!」

 

整合騎士と拳闘士…本来相容れない筈の戦士たちが、剣と拳を合わせ、悪意の塊に向けて反撃の狼煙を上げた。

 

 

 

「アスナ…後ろの飛竜、どんどんと速度が落ちてるよね…!」

「ええ…なのに、敵の飛竜は落ちる様子がない…もしかしたら、スーパーアカウントの能力を使っているのかもしれないわ」

「このままじゃ逃げられちゃう…早く追いつかないと…!?」

 

シェータさんとイスカーンたちに殿を託し、ダークテリトリーの地を駆けるボクたち。なんとか先を行く空の面々を追い掛けるも、その距離は思う様に詰められない。

 

障害物がない空と異なり、こちらは荒れ地を行くわけで、更には集団で動いていることもあり、出せる速度にも限界がある。人界軍のほとんどが着いてきてくれているが、最悪ボクたちだけでも先行することになるかもしれない。

 

そんなことを考えていると、先の道に大きく窪んだ地形が見えてきた。迂回している時間も惜しく、アスナは手綱を操り馬を窪地に飛び込ませる。それに続き、人界軍も従軍し、先を急ごうとした時…

 

「…っ!?アスナ、また空から!?」

「嘘…!ここで増援…!?」

 

空からまたしても赤き大量の光柱が降り注ぎ、その姿が赤鎧を形成した時、窪地にいたボクたちは周囲を取り込まれてしまった。

 

ボクの叫びに慌ててアスナが馬を止めるも、退路すらも塞がれ、地形的にも完全に包囲されてしまっていた。このままでは、数と勢いに押され一網打尽にされてしまう…すると、地上の状況に気付き、上空から飛竜でついてきていたレンリが、

 

「…くっ…!」

「いかん!レンリ殿は捨て身で突破口を開くつもりじゃ!」

「っ…だめ!?」

「くっ…アスナ、下がって…こうなったら、ボクが…!?」

 

レンリをここで死なせるわけにはいかない…リーナの言葉で彼の考えを知ったボクは、馬から飛び降り、ルナリスの限界突破能力を発動させようとする。

 

最悪、左腕一本を犠牲にすれば、突破口と大きな隙を作ることはできる筈…!一か八か最大寸前にまで能力を発動させようとした時だった。

 

「…えっ…?」

 

剣を振り上げた手が止まってしまった…ダークテリトリーの赤き地を浄化するかのように、天から輝かしい光が現れたからだ。突然の出来事にボクの口からそんな言葉が漏れ、その場にいた全ての人がその光に…いや、その光から降り立つ彼女に目を奪われていた。

 

「…アスナ…あれって…!」

「…うそ…」

 

見間違えるわけがない…ボクとアスナが驚いている中、彼女は左手に弓らしきものを出現させ、右手から生み出した光の矢を構え、それを撃ち出した。放たれた矢は途中で拡散したと思えば…

 

「「「「「?!?!!?!?!?!!?」」」」」

 

ボクたちの360度周囲にいた赤鎧たちに降り注ぎ、その大群全てを吹き飛ばした。まさかの一撃に対応できる者などおらず、爆煙が晴れて周囲を見渡すと、赤鎧たちは全滅してしまっていた。

 

戦局がこちらに傾いた…こっちに来てくれた彼女に駆け寄ろうと、ボクたちはその歩を進めようと、

 

「ところが残念…!まだまだパーティは終わらないんだな、これが!!」

 

「…えっ…何…」

 

突然聞こえた言葉にボクは振り返ってしまった…誰に向けた言葉なのか分からない…でも、はっきり聞こえた。酷く重く、冷たくて、嫌な感じがしたその声が…

 

「……!?っ…アスナ、ユウキ、構えて!?」

「「?!」」

 

空中から何かに気付いた彼女の声に、ボクとアスナはすぐさま警戒態勢を取る。その言葉を聞いた人界軍も何事か身構える。そして、

 

「うわあああああああぁぁぁぁぁ!?」

 

人界軍の後方…後ろから兵士らしき悲鳴の声が聞こえた。何かが起こったのだと察知し、ボクとアスナはすぐさま後方へと向かう。

 

 

 

「…これは…この異常なまでの広範囲攻撃は…ソルスの能力か…!?」

 

ユウキたちが異変に気付く少し前…人界軍の荷馬車にて、包囲していたアメリカプレイヤーたちを一掃した大規模攻撃が、スーパーアカウント02『太陽神ソルス』によるものだと気が付いたカーディナルは、その威力に驚きながらも、どこか納得していた。

 

天から降りてくるソルスらしきアバター…彼女もユウキたちの仲間か、もしくはラースの協力者か…どちらかと思考を巡らせている時、彼女はその気配を感じ取った。

 

「…っ!油断するでない!まだ何かがおる!?」

「「「!?」」」

 

突然の出来事が立て続けに起こったことで呆けていた兵士たちが、カーディナルの声で我に戻る。只事ではないと感じ、フォンとキリトの警護をしていたマーベルも荷馬車から飛び出た。

 

そして…それは突如姿を現した。

 

『『『『『・・・・・・・・・・・・・・・』』』』』

「うわあああああああぁぁぁぁぁ!?」

 

一人の兵士がそれを見て、悲鳴を上げた。

 

マーベルもその異形の存在に声を上げそうになったが、恐怖が勝ってしまい、声を出すことさえもできないでいた。

 

カーディナルはその姿を見て、思わず舌打ちをしそうになり、表情を歪めた。

 

その姿は影…いや、影と表現するには、あまりにも不気味で、確かではなかった。体を構成する物体は生命を感じさせず、一定の形すら保つことができず、歪に靡いていた。多少は人の形を保っているが、顔や体節は一切見受けらない。

 

自分たちが相対しているものが一体何なのか…これまで闘ってきた敵とは異なる、その異形の影は声を上げることなく、突如人界軍へと襲い掛かったのだ。

 

『『『『『『・・・・・・・・・・・・・』』』』』

「っ…怯むな!?迎撃だ!」

「…!よすのじゃ!?迂闊に攻撃するでない!」

 

総勢20を超える影たちが迫ってきたことで、後方に控えていた小隊長が迎撃の指示を出してしまった。その正体に見当をつけていたカーディナルが制止を掛けるも、時既に遅く兵士たちは影たちに向かってしまった。

 

「カーディナル!これって、一体!?」

「説明はあとじゃ!?まずは、兵士たちを影から引き離す!」

 

ユウキたちが前線から駆けつけるも、正体不明の敵に混乱していた。しかし、有無を言わす間もなく、カーディナルの言葉に従い戦闘に加わる。しかし、一手遅かった…

 

「よし、仕留め……ああぁ!?あああああ…!?」

「「「っ!?」」」

 

拮抗していた鍔競り合いを制し、影を一刀両断した兵士が歓喜の声を上げようとして、その言葉が悲鳴に変わった。

 

斬り裂かれた影の断面から、まるでコールタールのようなドロドロとした黒き血泥が溢れ出し、返り血として降りかかった兵士の体を融かし始めたのだ。その光景に、ユウキとアスナは絶句し、カーディナルは更に顔を歪める。

 

だが、斬り裂かれたのにも関わらず、影は動きを止めることなく、兵士を自らの方へと引き込もうとするように近づいていた…しかし、そうはさせないと一気に間合いを詰めたカーディナルが血泥に触れない様に気を付けながら、長杖で影を吹き飛ばした。

 

「影を倒そうとするでない!こやつらは死人形じゃ!?体を消滅させぬ限り動き、その血は呪いとなって、体を蝕む!全軍、剣での斬撃をするでない!?」

「「…!?」」

 

更に迫り来る影たちを長杖で吹き飛ばし続けながら、カーディナルは大声で敵の正体を伝える。血に触れるのが危険だと分かり、ユウキとアスナも兵士たちに迫っている影を、峰打ちで吹き飛ばしていく戦法に切り替えた。

 

高ステータスを持つ自分たちが受け持つべきだと悟り、退いていく兵士たちに代わり、前線を3人で抑えるユウキたち。血泥の呪いを受けた兵士をマーベルが神聖術で癒そうとするも、ほとんど効果がなかった。

 

「カーディナル様!?治癒術が…!」

「呪いは只の神聖術では効果がない!今は、応急手当として、血が触れた部分を水で洗い流すのじゃ!」

 

死人形の呪いを受けた兵士たちは10数人に及び、誰もが苦痛のあまり動くことができないでいた…マーベルの訴えに、攻撃の合間に応えるカーディナル。彼女の知る神聖術であれば解呪も可能だったが、現状戦線を維持するのでそちらに手を回すことができないでいた。

 

「カーディナル!?このままじゃ…っ!ジリ貧だよ…!」

「分かっておるが、物理的な攻撃は危険すぎる!?少なくとも、神聖術かソルスの一撃で攻撃でなら…じゃが、ソルスの広範囲残滅攻撃は連発できぬからな…!」

 

そうこうしているうちに、更なる死人形が出現し、その数は30を超えようとしていた。死人形自体のステータスはそこまで高くなく、動きも遅い方ではあったが、安易に攻撃できない状況に、ユウキが言葉を漏らす。

 

カーディナル自身もなんとか打開を図りたかったが、この数の死人形たちを吹き飛ばす神聖術を使うには神聖力が不足しており、上空にいる彼女が先程の技を連発できないことを理解していたため、リキャストが完了するまでは耐えるしかなかった。

 

「さっき死人形って言ってたけど、これって…」

「アスナ、お主の考えてる通りじゃ…!こやつらは影…いや、死んだヒューマンユニットの魂の欠片を、死術で無理矢理蘇生させたものじゃ!おそらく…ダークテリトリーの死霊人形師の仕業じゃ…!」

「死霊人形師…ってことは、どっかに術者本人がいるってこと…?」

「おそらく…じゃが、どうして今になって攻めてきたのじゃ…?開戦直後なら、もっと人形を増やし、それを人界軍に向かわせることができた筈じゃ…!」

 

カーディナルの言葉に、アスナとユウキは周囲を見渡し、死霊人形師本人の姿を探した。しかし、周りには人界軍と死人形たちしかおらず、カーディナルも今になって、死人形を差し向けてきた敵のタイミングを訝しんでいた。

 

「…後ろだ!?」

 

「ヒャヒャヒャ!もらった!!」

「っ…!?(しまっ……!?)」

 

「カーディナル?!」

 

叫び声ですぐさま背後を振り返るも…突如、空間の歪みから現れた男が、カーディナルへと短剣を振り降ろそうとしていたのだ。完全に背後を取られたカーディナルにその凶刃が迫ろうとした直前…咄嗟に反応したユウキがカーディナルを横飛びで抱きかかえ、その刃から彼女を救った。

 

「…なんだよ、これ…?」

「フォン先輩…!出て来ては駄目です!?危険です!」

 

カーディナルへと叫んだ声…荷馬車から外の状況を窺っていたフォンが、空間が歪みながら移動していることに唯一気付き、咄嗟に叫んだのだ。マーベルがフォンを庇う様に前に立つも、フォンは眼前の状況に言葉を失くしていた。

 

「…あ~あ…せっかく何にも知らない馬鹿が勝手にのた打ち回る様が見られると思ったのに…そこのガキのせいで楽しみがすぐに終わっちまったじゃねーか。しかも、妙に反応がいいガキまでいやがって…」

「…お主、ダークテリトリーの人間ではないな…!まさか…ベクタと同じ、リアルワールド人か!?」

「ちぃ……そこまで分かってんのかよぉ…本当に興冷めだわ。あー、つまんねぇ…死人形の特性まで把握しやがって…」

 

金髪に顔を左半分…左目を伝う独特の模様のタトゥーがある顔を晒した男は、持っていたダガーをブラブラさせながら、言葉通りつまらなそうにしていた。カーディナルがその正体を当てたことで、そのテンションを更に下げる。

 

「はぁぁ…やっぱり残った部隊が全滅するのを見ている方が面白かったな…このアバターじゃ碌に殺せないし…せっかく殺戮ショーが始まるかと思っていたら、天の女が吹き飛ばすし……本当につまんねぇよな…

 

 

だから、俺が盛り上げてやろうとしてんだよ…邪魔すんなよ、ガキ共…!?」

「「「っ!?」」」

 

ベクタと同じオーシャン・タートルを襲撃した部隊の人間…敵が何かしらの上位アカウントを使ってやってきたのだと理解したユウキとアスナ、そして、カーディナルが最大限の警戒を払っていた。

 

しかし、男はその警戒を嘲笑うかのように、鬱憤としていた態度がまるで演技だったかのように、狂気を孕んだ笑みを、苛立ちを含んだ言葉と共に浮かべ、指を鳴らした。

 

その瞬間、遠ざけていた死人形たちの体が一気に膨張し出したのだ!

 

まさかの出来事に反応するのが遅れてしまったユウキたち…人の体の3倍以上にまで膨らみ、今にも爆発しそうになっているそれが破裂すれば…ここにいる者のほとんどが呪いを受けることになるのは想像に難くなかった。

 

「…伏せて!!」

 

上空からの警告に、ユウキとアスナは死人形たちから距離を取って身を屈める。カーディナルも荷馬車の位置まで下がり、兵士たちに衝撃に備える様に指示を出す。そして、リキャストが完了したことで、空に浮かぶ女神から驚異の一射が放たれた!

 

破裂寸前になっていた死人形たちはその一撃に呑まれ、血泥を吐き出すこともなく、その姿が消滅させられた。爆煙が周囲一帯に広がり、ユウキたちの視界が塞がれてしまう。

 

「きゃあああぁぁ!?」

「今の声……マーベル!?」

 

視界が塞がれている今、その悲鳴で何かが起こったことを認識したユウキは、ルナリスの限界突破を右腕で発動し、3倍にまで強化した腕力による剣撃で煙を強引に晴らした。そして、マーベルの姿を求め、視線を荷馬車の方へと向けると…

 

「…このクソガキ…邪魔しやがって!?」

「ぐぅ…がはぁ…!」

「っ…フォン!?!」

 

煙を目くらましに、荷馬車にまで迫っていた死霊人形師が、フォンを地面へと叩き付けていた。その光景に、ユウキはフォンを男から引き離そうと駆け寄ろうとしたが、

 

「だ~か~らぁ~…邪魔すんなってっってんだろうがよぉ!?」

「うぅ…!(眩しい…!?視界が…!)」

 

ユウキが迫ってくることに、苛立ちを隠すことなく死霊人形師は懐から缶を取り出し、地面へと叩き付けた。缶から閃光が溢れ、ユウキの視界を再び奪う。目くらましから回復するも、前方にフォンと死霊人形師の姿はなく…

 

「ユウキ、後ろよ!?」

「っ…フォン…!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

盆地の後方…丘の上に死霊人形師は移動しており、空にいる彼女の声にユウキはその姿を捉える。フォンは死霊人形師に担がれており、さっきの一瞬で意識を失わされたようで、ユウキの声に反応する様子がなかった。

 

「そんなにこいつが大事だって言うのなら、追っかけて来いよ、ガキ…!キャヒャヒャヒャヒャ!!お前の大事な大事な人を殺して、その亡骸の前でお前もバラシてやるからよぉ…!」

「…っ!?」

 

ユウキの態度の変化を見落とさず、フォンを連れ去り、またしても姿を消した死霊人形師…その捨て台詞を聞き、ユウキはすぐさま追い掛けようとするも、

 

「ダメ、ユウキ!?これは罠よ!」

「分かってる…!けど、あいつは放っておけない…!ボクが行かなかったら、確実にフォンを殺すつもりだよ!?そんなこと…そんなこと絶対にさせない!!」

「…ユウキ!?」

 

敵が自分を誘い出そうとしている…アスナの指摘を理解しつつも、フォンを見捨てることなどできないユウキは強引に振り切り、死霊人形師の追跡に向かってしまった。

 

「アスナ!?さっきの敵は一体…ユウキが追いかけていったけど、連れ去られたのって…フォン、なの…?」

「……うん…こっちに来てくれたばかりで混乱してると思うんだけど…全部話すわ……

 

しののん…」

 

空から地上へと舞い降りた女神…急遽現れた敵へも援護してくれた戦友で恋敵で、仲間の姿に、ユウキを止めることが叶わなかったアスナは冷静になり、彼女と向き合った。

 

太陽神ソルス…ラース六本木分室のSTLを使い、アンダーワールドに降り立ったシノン…彼女の愛称を呼ぶアスナに対し、先程の敵がフォンを攫い、ユウキが追撃に出た姿を空から見ていたシノンは驚きを隠せず、一体何が起こったのか…アスナの話へと耳を傾けることにした。

 

 




ソルスシノン降臨!!…かと思いきや、思いっ切り出番を奪いましたオリ敵(笑)
シノンも活躍の場が少し増えましたが…それでも大番狂わせのお話でした!

そして、今度はまさかのオリ主が攫われるという展開…実は爆煙で視界が塞がれた時、オリ敵(能力的に特殊な視界が使えます)がマーベルを襲おうとして、咄嗟にフォンが庇った為に苛立っていたわけです(この辺りのお話は次回でももう少し触れます)。
そして、見せしめを兼ねたのと、邪魔しまくり代表のユウキの狼狽した姿を見て、人質として利用しようとしたわけです…実はフォン&ユウキが人界軍から離れるのは結構前から想定していたストーリーでもありました。(ちなみに、映現世の剣はもちろん置いていかれております…)
多分、ユウキ対オリ敵のお話はベクタ戦後…シノン対ガブリエルの後になるかと思いますので、もうしばしお待ち頂ければと思います。

さてさて…オリ敵の能力『死霊人形師』がその力を振るいましたので、少しだけ補足を兼ねての説明を…
 まず、主戦力である「死人形」に関して…これは文字通り、死んだ人間(人界・暗黒界問わず)の魂の欠片を媒体に無理矢理蘇生させた動く屍人形でございます。一つの魂=一体分が作成でき、載せる魂が多い程能力が強化されます。
 性能は最底辺の部類ですが、最も厄介な能力として『呪死血』という液体が体を巡っており、少しでも触れれば鎧どころか肉体までもを瞬時に融かし尽くし、高度な治癒術でしかとけない出血毒を付与します。そのため、血泥に触れない様に首を撥ねる、もしくは神聖術・特殊な攻撃で一気に吹き飛ばすといった方法で倒さないと、周囲にまで被害が及ぶ危険性があります。また、死霊人形師の任意のタイミングで自爆させることも可能です。
 そして、姿を消す光学迷彩に近い能力…こちらは魂の欠片を5つ消費することで発動する『呪術:死霊寂滅』という暗黒術でございます。即効性が高く、奇襲に最適ですが、完璧に姿を消せるわけではなく、存在する場所は空間が歪んだように見えるといった弱点があります(近場だと判別しづらく、少し離れた位置からだと認識しやすいといった特性があります)
 ちなみに、今回の話でカーディナルが少し触れておりますが、魂の欠片が回収できるのは、対象が死んでから一時間以内(UW時間軸基準)ですので、ダイブしたばかりのオリ敵(リッパー)が前話で漏らしていた言葉はこれを意味しておりました。
……言ってしまえば、魂を糧に様々な暗黒術を使う多術特化型の上位アカウントでございます。長期戦に強く、死が必ず付きまとう戦争においてはスーパーアカウントに匹敵する能力を持っております…もちろん、スーパーアカウントに認定されていないのには相応の理由があり、弱点もございます。その辺りは決着が着いた頃にまた解説できればと考えております。

さて…ユージオたちだけでなく、ユウキまでもが離脱してしまい、ますます混沌を極めていくWoU…次回はシノンとアスナの会話から、リーファに触れるお話になります…というか、あんまり原作とは変わらない部分です(なんかすいません)
その次のあたりでリズたちが参戦し、ユージオたちがベクタと対峙して、シノンが追い付いて…みたいな流れを予定しております…た、多分…!

それでは、また!

武器解説に関して、新調と古いものだとどちらがいいですか?

  • 物語の語り部を新調版
  • 今までと同じ旧式版
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