いえ、もう謝ることしかできません…はい。
とりあえず、作者も書きながら一番メンタル抉られたお話です…本当にゴメンなさい…としか言えない問題作になっております。
好きなキャラが痛めつけられるのが嫌だという方は、本当にお気を付けください。本話、容赦なしの暴力描写が入っておりますので…!
さてと、本話と次回は後書きが書けないため、こちらで色々と書き込んでいくことになるかと…
それでは、覚悟ができた方から、どうぞお進みください。
P.S. クルス・フェニックスさん
ご評価ありがとうございました!
「…また…!?」
これで7度目になるのか…数えるのも鬱陶しくなってきたせいか、気持ちに引っ張られて声にも嫌な色が混じった気がした。
ボクを待っていたとばかりに地面から出現した影…死人形6体だけど、襲い掛かってくるわけもなく、どこかへと引き寄せられていくように歩いていく。
それを放置するわけにもいかず、返り血を浴びない様に一撃離脱の速さで首を斬り飛ばす。頭を失った体は倒れ、破裂したように消失し、地面を呪血で汚染する。
(……誘いこまれてる…!どんどんアスナたちと離されてる…!?でも…)
『そんなにこいつが大事だって言うのなら、追っかけて来いよ、ガキ…!キャヒャヒャヒャヒャ!!お前の大事な大事な人を殺して、その亡骸の前でお前もバラシてやるからよぉ…!』
(あの男の狙いはボク…戦力の分断が狙いじゃないと、思うけど……早くあいつに追いつかないと…!?)
最初はどう追いかけるかと、追跡を開始してから気付いたんだけど、まるでボクを誘うかのように行く手に死人形が潜んでいた。
どの死人形もボクには襲い掛かってこず、変な方向に逃げ、そちらへと向かうと、また死人形が表れ…確実に敵の誘いなのだと、ボクでも理解できた。
でも、奴のあの言葉からして、ボクが奴を負い掛けなければ、間違いなくフォンを殺す…ボクとしては追う一択しかないわけで…アスナたちの方も気掛かりなため、どうしても焦りが生まれてしまう。
(早く…早くあいつを倒して、フォンを取り戻さないと…?!)
はやる気持ちをなんとか抑え、死人形が逃げようとした方向へと再び走り出す。向かう先が罠であろうとなんであろうと、今は追うしかないのだから…!
かなりの距離を移動し、これまでの事から、そろそろまた死人形が現れてもおかしくないと考えている時だった。
「…よく来たなぁ、ガキィ!」
「っ…!?」
見渡す限り何もない、赤い土地が広がる荒野にその声が聞こえ、ボクの足が止まる。
声の発生源を求め見渡すも、荒野には人の影すらも見つけられない。すると、右前方の空間が歪み、
「本当に追いかけてくるとはなぁ!そんなにこいつが大事だったのかぁ?」
「っ…フォン?!」
何もないところからいきなり現れたその男…その右手には、意識を失っているフォンが引き摺られるように連れられていた。その姿に、思わずフォンの名を呼ぶも、反応する様子が全くなかった。
「ヒャーヒャヒャヒャヒャ!フォン、だってよぉ!こんな小僧一人のために味方を置いて、追いかけてくるなんてよぉ!笑いだけじゃなく、お涙頂戴になっちまうよ!」
「…くっ…フォンを返して…!」
「はぁ…?返してと言われて返す…俺がそんな良い人に見えるのかよぉ?」
「だったら……力づくでも、取り返す!」
「フッフ…アヒャヒャヒャ、ヒャーヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!おいおいおい、そんな台詞を言うなんて、アメコミの中だけかと思ってたが、本当に言う奴がいるとはなぁ!正義のヒロイン気取りとは…いけねぇや、笑い死にそうだ!」
ボクの心情などとは裏腹に、奴は高笑いをしてまともに受け答えする気がないように見られた。話し合いが通じる相手ではないと思っていたけど、これ以上奴のペースに付き合うべきではないと思い、ボクはルナリスの力で一気に奴の懐へ…
「…出て来い、死人形」
嘲笑う姿から一転、冷たく呟いた奴の一言…それがトリガーとなり、ボクと奴を阻む様に再び死人形が地面から現れた!
斬り飛ばすこともできたが、今、攻撃すれば、呪いの血がフォンに飛び散ってしまう。回避すべきだと、ボクは急制動して後方へと飛んだ。
しかし、それを待っていたとばかりに男が指パッチンをした瞬間…何もない荒野を埋め尽くすかのように、地面から死人形たちがはみ出す様に出現してきた。
10、20…いや、見渡す視界全てに次々と死人形たちが現れてくる。しかも、さっきまで戦っていた戦士みたいなタイプだけでなく、杖や盾を持ったタイプまでもが混じり合ってボクを取り囲んでいた。
「アッヒャヒャヒャヒャ!本当にバッカァじゃねーの!?姿を見せた時点で、何かを仕掛けてるに決まってるだろうがぁ!」
「・・・・・・・・・・・・」
「まずは200といったところだが…ガキ一人には充分過ぎるだろう?それとも、今度は助けてください!とでも言ってみるか?!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
死人形たちの隙間から見える奴は、ボクが為す術なしだと思っているのだろう。馬鹿にするような笑い声が聞こえてくる。
「…何だよ…ちょっとは反応してみせ…」
「…っ!!」
その声の不快さに苛立ったのか、焦りが怒りへと変わったのか…その声を掻き消すかのようにボクは剣を振るった。
…ルナリスの能力で腕力を4倍にまで高めて…
「「「「「……………?!?!?!」」」」」
薙ぎ払うかのように振るったその一撃は、右から左にかけて位置していた死人形たちを…抵抗する間もなく消し飛ばした。呻き声以外に発していた覚えはなかったが、それとも反応することなく攻撃されたせいか…悲鳴の一つも聞かずに消し飛んだのだ。
「…はぁ…?」
「もう終わり…?それとも、さっきのはハッタリ?」
「っ…!て、てめぇ…?!」
残っているのは奴の前方にいる死人形30体ぐらい…突然のことに言葉を失っているようだが、敢えて挑発する。ボクの言葉に奴はキレたようだが、怒りを抑えるのはこっちだって限界だった。
「剣を向けるのなら…誰かへと敵意を向けるのなら…それ相応の覚悟を持ちなよ!?みんな、大事な物を掛けて闘ってるんだ!お前みたいに何の覚悟もない奴なんかに…お前見ない奴なんかには、絶対負けない!?」
「……本当に…どこまでイラつかせんだヨォォ!この小娘がぁぁぁ!!」
ボクの言動が癪に障ったのだろう…怒ったボクに合わせたように、奴もブチ切れた。ルナリスの能力を腕力だけでなく、全身へと強化を及ばせる。能力発動を表わす燐光が体から吹き出した。
それに対抗すべくか、出し惜しみはなしだと言わんばかりに奴も死人形を、先程とは比べ物にならない程の数を出現させてきた。
「…人形どもぉ!その女をいたぶれぇ!?汚せぇ!?その身体を斬り裂き、痛めつけ、助けを求め、苦痛が入り混じった悲鳴を上げさせ…このリッパー様の耳を潤わせろぉォォォ!!」
「…!だったら…全部倒して、お前からフォンを取り戻す!!」
そっちがその気だというのなら上等だ…ここには味方もいない。あまりにも大きすぎるルナリスの能力を使うには、この場は余りにも良すぎた。4倍にまで引き上げられた脚力で地面を蹴った瞬間、ボクの姿はその場から消えた。
移動と共に後方へと斬撃を放つ…そのオーバーキルダメージなど気にしない一撃は、再び現れた死人形を吹き飛ばした。そして、その勢いまでもを加速に利用し、ボクは死人形の群れへと紛れ込んだ。
「…っ!はああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
死人形には、鎧や魔法、バフ全てを貫通する呪いの血がある。それに触れれば、このルナリスの体でもダメージを可能性が高い。だから、死人形に接近戦は危険だ…でも、それは今のボク以外だったらの話だ。
…触れたらダメージを負うのなら、触れなければいい…
剣を振るうよりも速く移動すれば、返り血を浴びることはない…攻撃を受けなければ、呪いを受けることもない…そして、ここには味方を気にする必要性すらもない。
「(罠だって……上等だよ…!そんなもの…)…全部ぶっ飛ばす!!」
自慢じゃないけど…反射神経や反応速度には自信がある。超速で動きながら、ボクは死人形の首を捉え、次々と斬り裂いていく。常人ですら、今のボクの動きを目で追うことはおそらくできないだろう。
それは精密な動きができないであろう死人形も同じで…燐光が通り過ぎる中、死人形たちはその数を減らしていくことしかできないわけで…
「…なぁ……ぁあ…」
まるで曲芸のように首が跳ね飛ばされていったり、振るわれた剣戟によって宙を舞う大群のその姿は、圧倒的に有利だと思っていた奴…リッパーとか言ったあの男の心に幾ばくはダメージを与えられただろうか…
「……ふぅ…ふぅぅ……さっきので最後、かな…?」
「な、な…何だよ、お前…」
数えてはいなかったが…大体200ぐらいは斬っただろうか?吹き飛ばしたのが、一回につき大体100ぐらいだとすれば……さっきので600近くは殲滅させたことになるのかな。
流石に全く返り血を浴びずにとはいかなかったが、呪いの血がかかったのは纏っていた服にだけで、血を浴びてしまった部分が溶けてしまっていたが、ボク自身は無傷だった。
そして、あんな数の死人形を全滅させたにも関わらず、ダメージを受けていないボクを見て、リッパーも動揺せざるを得ないみたいだ。
「…言ったよね?あなたみたいな人には絶対負けないって…!いくら死人形を出そうとも無駄だよ…出したところで、さっきみたいに全滅させるだけだから」
「…ヒャハ……ヒャハハハ!?っ…!調子に乗ってんじゃねぇぞォォォォ!?!?」
頭に血が上っているのか…ボクの言葉など全く聞き入れる様子などないようで、奴は呪文を唱え、顔面の高さにまで持ち上げた左拳を握り占めた。
「木偶の坊で駄目なら、この巨体はどうだ!?どんなに素早かろうが、この合体形態なら、お前も手が「でやああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」…は…?」
30体くらいの死人形が現れたかと思えば、5体ずつにその体をくっつけ始めた。集まったその体は、先程奇襲を仕掛けてきたように膨れ上がり、それぞれ6体の巨体へと変わった。
ボクの身長の何倍にあたるかも分からないぐらい大きかったが、そんなことなど関係なかった…所詮は人形…プレイヤーみたいに動けるわけじゃない。
一瞬の内に跳躍し、巨大死人形たちの頭上を取ったボクは、能力限界突破で腕力を6倍にまで引き上げる。そして、ソードスキルを発動させ、宙で回転させながら放つ!
片手剣4連撃ソードスキル〈バーチカル・スクエア〉…女神の能力により、人外なる力が上乗せされた技は、剣圧にその力を加算させ、6体の巨大死人形たちに襲い掛かった。
その巨体ゆえ避けることなど出来る筈もなく、神器『ムードリィップ・ライト』から放たれた巨大な4つの斬撃が人形たちを塵へと変えた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「…っ…!(反動で腕が…でも、このぐらいならぁ…!?)」
今度こそ言葉を失ったリッパー…無理もないかな。ボクも同じ立場だったら、眼前でこんな圧倒的な力を見せつけられたら、絶望すると思う…それぐらい、月夜神ルナリスの力は異常すぎた。
二度目とはいえ、止められていた制限以上の力を行使した反動で、ボクの右腕から夥しい量の血が流れ、激痛が走っているものの無理矢理堪え、リッパーへと剣を向ける。
「もう打つ手なしだっていうのなら…これで終わりにするよ」
「……ふざけんじゃねぇぞ…なんなんだよ、お前はァァ!?」
「……これが最後…フォンを解放して……そうしたら、ボクもこれ以上攻撃したりはしない…それが嫌だっていうのなら…!」
できるなら…相手がどんなにひどい人なんだとしても、痛覚を直に味わうこの世界で、必要以上の攻撃はしたくない…甘いとは分かっているけど、それでもしなくていいのなら、それに越したことはない。
降伏しろと言うのも同然の通告を相手にするけど…現実を認められないとばかりに、大声を上げ続けていた。
ボクの言葉は届いて…いや、聞き入れることができないというその姿に、ボクも説得は無理だと諦め、痛みを無視して剣を構える。
(なら……終わらせる!!)
狙うは頭…一撃で仕留めると、剣を構える。そして、全力で踏み込み、奴の頭部目掛けて剣を突き刺そうと、
「…なーんてなぁ!?」
「…っ?!」
その言葉を認識するよりも、先にボクの目はそれを捉えてしまった。そして、すぐさま意識を剣へと集中させて…!
「…はぁ……はぁ…!」
「いや~、まさかまさか…あの寸前のタイミングで、剣の軌道をズラすとはねぇ…!」
「お前…!?」
僅かに…なんとかズラした剣先は奴の顔の横を通り過ぎていた…いや、正確には、奴の前に突き出されたフォンの顔を掠めた上で、逸らした形になっていった。
気持ち悪い歪な笑みを浮かべる奴は、褒めるような言葉を放つも、フォンを盾にしたことも、その姿そのものにも、心に嫌なものを生み出させていた。
「ちょっとは面白かったか?追い詰めてからの、人質使っての逆転劇!定番だけど、良い子ぶってるガキには、効果バツグンだっただろう!?」
「くっ…!」
「でも、正直言えば、この小僧の頭を貫いて、絶望するお前の顔を見れることを期待してたんだが…まぁ、これはこれで楽しみがあるってもんだしなぁ…ご褒美だ。いいもの、くれてやるぜ!」
「なに、を……っ…!?」
言ってること全てに苛立ち、思わず殺意が漏れてしまう…そんなボクの様子さえも、奴にとっては面白いものらしく、その歪な笑みが更に深くなっていた。
そして、褒美と称した奴の言葉に疑問を持とうとした瞬間…轟音が耳を襲った…
「えっ……がぁ……!?」
聞き慣れない…ううん。この世界に来る直前にも聞いたあの音だと気付いた時には、腹部が熱くなり、痛みが襲い掛かった。
「サプラ~イズ!!痛いだろう?!痛いよな!…銃で撃たれるなんて、初めての感覚だろう!」
「うぅぅ…な、なんで…!?」
愉悦に浸る奴の手には…この世界には存在しない筈の拳銃が握られていたんだ。銃口からは煙がまだ上がっており、そこから放たれた3発の弾丸が直撃したのだとようやく理解できたものの、どうして奴が銃を持っているのかが分からず、疑問の声が漏れた。
「いい、質問だなぁぁ!!」
「ぐぅぅぅ!?」
「エキサイティングな悲鳴を聞かせてくれたお礼に教えてやるよぉ!」
撃たれたことで、その場にしゃがみこんでいたボクの顎に、奴の蹴りがクリーンヒットし、体が空に浮かされ、そのまま地面に倒れ込むも、奴はペラペラと話を続ける。
「このアバター…死霊人形遣いは、死んだ奴の魂を素材に様々な能力を使うことができる…だが、その反面、能力値は最低値というスーパーアンバランスな役職なわけだ。
だから、俺はクリッターの奴に言ったのさ…俺のゲームアカウントを、このアバターと融合させろってなぁ!」
「…そ、そんな…こと…?!」
「もちろん簡単じゃなかったみたいだぜ?結局ステータスは改善できなかったからな…でも、一部の武器はこうして持ち込めたわけだ。だからよ…!」
パン!
「ぅぅぅううう!?あああああああぁぁぁぁ?!!」
「こうやって、簡単にお前の悲鳴を聞くことができるってわけだよぉ!?ヒャーハッハッハッハハハハハハ!?!?」
まさかのアカウントの融合…思ってもみなかった方法は、不完全ながら成功したらしい。これで説明は終わりだと、奴はボクの左足を撃ち抜いた。
更なる一撃に、今まで経験したことの痛みを我慢できる筈もなく、ついに悲鳴が口から漏れてしまう。そして、そんなボクの苦しむ姿を見て、奴は狂ったように喜んでいた。
「本当…本当にサイコーだよぉぉ!?その感情を表す悲鳴、その痛みに悶える反応、苦痛に歪む表情…俺の望むエキサイティングそのものだよぉぉぉ!!」
興奮を抑えきれないかの如く、拳銃を持った手で顔を押さえつける奴を思わず睨んでしまう。これ以上、奴の思う通りにさせてなるものかと、なんとか抵抗しようとするけど、
「おーう?!まだそんな目ができるのか…!いいねぇ、いいねぇ!!その目の光を失わせ、絶望させるのが面白れぇだよぉぉ!さぁ、もっと俺の欲を満たしてくれよぉ!?」
リッパーはまだまだ楽しませろと、ボクを挑発してくるだけだった。そこまで思う通りにいくものかと、体をなんとか起こさそうとした…その時、動こうとしていたボクの身体を使う手があり、
「…!しまっ…!?」
「死人形…自爆しろ」
両腕を掴むその手…いつの間にか出現していた死人形に両腕を拘束されていたんだ。掴まれた部分から呪いが侵食し、更なる激痛が走るも、それはまだ始まりに過ぎなかった…奴の口から冷酷な指示が繰り出され、死人形たちの身体が爆ぜた。
「…?!!?!?!ああぁぁぁ…っ~~~~~~~~~~!?!?!」
至近距離でまともに呪いの血を浴び、全身が爆発したかのような熱さと激痛に襲われた。既に、反動でダメージを受けていた右腕と、撃たれた腹部は更なる痛みに襲われ、あまりの痛みに声を出すこともできなかった。
「はぁ!?はぁ…!?」
「おいおい…まだ気を失うには早いだろうがぁ?!」
「かはぁ…!?」
意識が一瞬飛び掛かった…だけど、そんなことは許さないと、奴はボクのお腹に蹴りを入れてきた。その一撃で、失いそうだった意識が無理矢理戻される。
「お前には、俺が満足するまで付き合ってもらうからな…まずは…」
本番はここからだとばかりに、ボクの身体をいたぶろうと奴がサバイバルナイフを抜いたのが見えた…でも、ボクは抵抗したくても、痛みのあまり体を動かすことができず、それを見ていることしかできず、
…奴のナイフが、ボクの左腕へと深く突き刺さった…
「があああぁ!?ううううううううう、ああああああぁぁ?!」
「…あん?おい、これは…どうなってやがる…?」
突き刺した部分から、腕を斬り落とそうとしたのだろう…痛みが深く、範囲が広がっていく感覚に襲われ、出したくなくても悲鳴が口から漏れてしまう。
だが、そこで奴の口からも疑問の声が漏れた…そして、確かめる様に何度もボクの腕を斬り裂いていくも…ボクの左腕は一向に斬り落とされることはなかった。
「…はぁ?!なんなんだよ、お前のこの身体!?なんで、何回斬っても腕が落ちないんだよぉ!?」
もうやめてぇ…そう思っても、奴はボクの左腕を斬り落とそうと、ナイフを繰り出すも、血は大量に出続けるものの、腕が失われる気配は一向になかった。
何度も激痛に襲われ、意識が今にも飛びそうなボクの脳裏に、比嘉さんのあの言葉が蘇っていた。
『いいッスか、ユウキちゃん…ルナリスは現在のスーパーアカウントであるソルス、テラリア、ベクタの元となったアカウントッス。能力限界突破の固有能力の他に、その身体は喪われることのない、不死身の身体として設定されているッス。
もっとも、注意してほしいの…ルナリスには天命…HPの概念がないッス。テラリアみたいに、怪我が自動で回復しない、傷を負っても決して死にはしない半面、その傷を負ったまま闘うしかなくなる危険性があるッス…だから、いくらステータスが高いからって、無茶なことだけはしないで下さい』
ステイシアとルナリスの能力を教えてもらっていた時、比嘉さんがそう忠告していたのだ。あの時は、どういうことかと思っていたんだけど…今の状況を表しているのだとようやく理解できた。
月夜神ルナリスは…死という概念が存在しないのだ。魂が死んでも、その身体は存在し続ける…死ぬことを恐れない、女神なのだと…
「あぁーー!もう、何だよぉ!?この、クソガキがぁ!?」
「ぐぅぅう!?」
ボクの身体をバラバラにできないと分かり、苛立ちが再び募った奴は、ボクの身体を乱暴に持ち上げ、放り投げた。無残にもその場に転がったボクに、奴は怒りと怨恨の色を込めた目を向けていた。
「バラすことができないのなら…お前の悲鳴が枯れるまで、地獄の苦痛を味わせてやるよぉ!?死人形共ぉぉ!!」
感情のままに、奴は死人形たちを召喚した…最初のように、剣士から弓兵、魔法使い…様々なタイプが生まれ、地面に伏しているボクを取り囲んでいた。
「あのガキを殺せェェ!何度でも、何十回でも…殺しまくれェェ?!」
その掛け声と共に、死人形たちが動き出す…まず、弓兵が雨あられの如く、一斉に矢を放ってきた。それを躱すことなど、今のボクにできる筈もなく、いくつもの矢が全身に突き刺さる。
もう声を上げる気力もなく、なんとか逃げなければとふらりと立ち上がったところに、今度は横から剣が突き刺さった。口から血を吐いてしまい、剣を振るおうとするも、次々と斧や槍といった追撃を喰らい、されるがままに攻撃されてしまう。
そして、ダメ押しとばかりに様々な属性の魔法…神聖術がボクと死人形たちを同時に襲った。魔法に体を焼かれることはもちろん、ダメージを受けた死人形たちが破裂し、血の呪いをボクへと浴びせることで、更なる激痛を味あわせた。
「ぁ……ぅ……ぁっ…」
もう…何もできない…
身体の感覚など完全になくなってしまっていた…自分が剣を握っているのかどうかも、どうやって立っているのかも分からなくなっていた。
これ以上何も感じたくない…死にかけている身体に引っ張られるかのように、心が冷たくなっていく。
(みんな、ゴメン……もう、ボク……駄目、みたい…)
身体が死ぬことはなくても……心が限界を迎えそうになっていた。呪いのせいで、左目の視界は完全に失われ、右目も微かにしか景色を捉えられていなかった。
その視線がぐらりと揺れ、ボクは地面に倒れ込んだのだと思った。
『もう壊れたのかよ…でも、まだ死ねると思うなよ?もっと、もっと…もっ~っと…俺が満足するまで、壊して、砕いて、遊んでやるかよぉ?!』
(たす、けて……誰か………)
もう音すらも満足に聞こえない…助けを求めたくても声も出せない…助けてくれる人もいない…心が真っ黒に…絶望に染まろうとしていた。
「……フォ…ン…」
最後に…僅かに見えたその姿…フォンに手を伸ばそうとしたボクの身体は、新たに出現した死人形に呑み込まれ、その視界も閉ざされた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
…いやだ…
…まだ終われない…
…終わっちゃ駄目なんだ…
…だって…だって…!?みんながまだ闘ってるのに…!
…フォンも、助けが求められない状況で闘ってきたのに…!
…ボクは何のために、ここに来た…?
…こんなところで、終わっていいの…?
(フォンなら…フォンはどんな時だって立ち上がってきた筈なんだ!?誰よりも傷ついて、でも、いつも誰かの為に闘って…ボクのことも、絶望から引っ張りあげてくれたんだぁ!?
だから…だからぁ!!今度はボクが…ボクがフォンの手を掴む番なんだ!どんなに傷ついても、どれだけ時間が掛かっても……ボクが…ボクだけが、フォンを助けられるんだぁぁぁぁ!!!)
…折れていた気持ちに再び火が灯る…
(立て…立ってよ!?今だけでいいから…!ボクの身体なんか…魂なんかどうなってもいいからぁ!?ボクに…力を貸してよぉ!!)
何を犠牲にしても構わない…その一心で、感覚が失われた身体を動かそうとする。今こそ、女神の力を寄越せとばかりに、心が叫ぶ…その時、
【ほら…立って、ユウキ】
(っ…!?)
聞こえる筈のないあの声が耳に届いた…いつも隣にいて、いつも励ましてくれて、時には叱られた…もう聞くことはできない筈のあの優しい声が…!
【立つのよ!一人では無理でも、私たちなら…】
(…うん…!ボク一人じゃ無理だけど…お願い!?今だけでいい、ボクの身体を叩き起こして!今だけでいい、ボクの身体を支えて…!今だけでいいから!?ボクの身体を…無理矢理でもいいから引っ張り上げて……姉ちゃん!?)
倒れているボクの身体を優しく抱き上げてくれた、人の形をした淡い藍色の燐光にそう声を掛け、ボクは……!
「…あーあ…あっけない幕切れだったな」
死人形の大群に呑み込まれたユウキを見届け、リッパーは残念そうに、そして、つまらなそうにそう呟いた。
「まぁ、いいか。それなりに楽しめたからな。さてと…それじゃ、残ったこいつは…面倒だからさっさところ……っ?!」
意識を取り戻す様子がないフォンをどう始末しようかと考えていた時だった…ユウキを呑み込んでいた筈の死人形たちの動きに異変が起こり、リッパーの思考がそちらへと向けられた。
何が起こっているのか…リッパーが事態を呑み込む前に、その原因が姿を現した!
「……ううあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
死人形たちの身体が膨張したかと思えば、その身体が吹き荒れる二色の光によって弾き飛ばされたのだ。そして、そこには、紫と藍の燐光を全身から放ち続けるユウキの姿があった。
そして、咆哮と共に持てる限りの力で剣を構える彼女の傍らには…永遠に別れた、彼女の姉の幻影が共に剣を持っていた。
「っ…てめぇ、まだぁ?!」
復活したユウキに、怒りと喜びの真逆の感情が入り混じった声を上げるリッパー…だが、そう反応したことが、完全に裏目に出てしまった。その一瞬…その僅かな隙、フォンからユウキへと意識を傾けてしまったのだ。
「ぐぅぅぅぅぅ?!うううううぅぅ…!!」
能力限界突破を最大の9倍にまで…いや、心意によって、その上限以上…計測不明の領域にまで跳ね上がったステータスに合わせ、二色の燐光がその場を光で包むかの如く激しく輝く。
そして、ユウキが剣を構えたその動き…この世界では発動することで…いや、存在すらしない筈の奥義を発動させるためのモーションだった。そして、発動できない筈の技は、心意の力により、翼と共に彼女にその力を与えた。
「…はああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
神器に灯ったライトエフェクト…全てを込めた決死の一撃が咆哮と共に放たれた時、ユウキの姿がその場から消えた…いや、消えたと認識できた時には既に遅かった。
…その時には、既にユウキの一撃がリッパーの身体へと風穴を開けていたからだ。
「ごはぁぁぁぁぁぁ!?」
反応などできるわけがない、まさしく超神速の一撃をリッパーはまともに受けた。先程みたいに、フォンを身代わりにさえできていれば、また話は違っていた筈だが…復活したユウキに気を取られたために、それすらできずにいたのだ。
「ううううああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」
だが、その一撃ではユウキの技は終わらない。
1撃目で吹き飛ばされたリッパーの身体に追従し、それを追い越す速度で再びその身体を貫く。リッパーを常識を超えた一撃の痛みが襲い掛かるも、ユウキの動きは止まらない。
そのまま、3撃目、4撃目、5撃目と貫いていき、斬撃を放つたびにリッパーの身体を空へと打ち上げていく。
「ごほぉ!?ぬはぁああ!?があああああああぁぁぁ!?」
「ぬぅぅ…あああああああああぁぁぁ!!」
更に加速した6撃目から、7、8、9連撃と技を重ねていく。10連撃目の突きが、リッパーの左腕を斬り飛ばし、最後の一撃を繰り出そうとした時…
「うぅ…ゴフッ!?(もう…体が…!)」
上空に打ち上げられたリッパーの真上を取ったものの、限度を超えた反動と受けたダメージ、そして、技の加速に耐えられずにユウキの口から血が零れ、体が先に限界を迎えてしまった。
…放っていた技も解けかけ、持っていた剣をも落としそうになった…
【大丈夫よ…あなたは一人じゃないんだから…】
その剣を放させまいと、ユウキの手の上からもう一つの手が優しく握りしめた。その力をも貰い、最後の…自身が出せる最後の力を振り絞ったユウキと彼女の声が重なり、11連撃目と共に技名を叫んだ。
「【…マザーズ・ロザリオォォォォォォォォ!!!】」
天から地へと放たれた最後の一撃は、相手に悲鳴を上げさせる時間も与えず、地面にたむろっていた死人形を纏めて葬り去り、その地面を割った。
辺り一面を騒然とさせる轟音が鳴り響き、衝撃の大きさを物語るかのように地上を土埃が覆っていた。
「……フォ……ン…」
そんな中、弱弱しく歩く影が一つ…自身への反動など試みずに技を放ったことで、瀕死と化したユウキの姿があった。そして、彼女は、奇跡的に被害を受けずにいた最愛の人の元へと歩み寄った。
…だが、悪魔はまだ死んではいなかった…
「があああ?!あああぁぁ!?うああああ?!くそがぁ?!くそ、くそ、くそぉぉぉ?!ふざけた真似しやがって、このガキがあああァァァァ?!!?」
ユウキから受けた11連撃の傷が…みるみる塞がっていき、立ち上がれるようになったリッパーは激怒した。今まで楽しんでいた筈が、一転して痛みを受けたことに逆上した。
そして、その苛立ちの矛先を向けるのは、瀕死のユウキと気を失っているフォンに向けてであり…
「もういいよぉ!?死ねよぉ!!死んじまえよぉォォォォォ!?!」
二人を包囲するかのように、死人形の魔導士タイプを無尽蔵に出現させる。癇癪を起こしたその言動は、眼前にある気に入らないものを消したいがために行っている、ガキ同然の動きだった。
「フォ、ン……フォン……お願い…」
これで最後なんだと…もう終わりだと悟ったユウキは、ようやくその手を掴んだフォンに呼び掛ける。
この包囲を突破することはもうできない…フォンを守り切れない…でも、だからこそ、最後に…ユウキはなんとか動かせる左腕でフォンの手を握り、願った。
「フォン…お願い…もう、闘わなくていいから…ボクがフォンを守るから…支えるから…一緒にいるから…だから…だから?!起きてよ…戻って来てよ!フォン!?」
慟哭と共に、零れた涙が地面を濡らす…だが、彼女のそんな願いなど掻き消すかのように、リッパーの指示に従った死人形たちが神聖術を発動させ、ユウキに襲い掛かろうと…
「っ………ゆ、め…?」
ハッとして、意識が覚醒した…ぼんやりとした頭が徐々にハッキリとしてきて、夢を見ていたのかと思い、俺は目覚めた。
「(夢を見てたのか……?一体、何の夢を…)…あれ…なんで、俺…泣いてるんだ…?」
誰かに呼ばれた…夢の終わりがそうだったような気がするのだが、はっきりと思い出すことができず…俺は、自分の目から零れていた涙に気付き、何故か悲しくなったんだ。
…いつもと同じ日常、景色、生活…
…なのに、何か違和感を覚えてしまう…
…何かが欠けている…何かを忘れてしまっているような…
…この物語は、この世界は…俺がいるべき筈の場所だったのに…
次回 『現世と虚構の狭間で』
ミトを本作に登場させるとしたら、その後はどういう感じで登場してほしいでしょうか?
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半レギュラー化(物語にもがっつり絡む)
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スポット参戦(閑話に出てくるレベル)
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まさかのサブヒロインポジ