ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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前回、颯爽とフォンが登場したわけですが…物語はまさかの事態へと陥ります!?あれです…一番邪魔されたくない奴に、最も嫌な方法で邪魔をされたら…まぁ、そうなるよなと…そんな感じのお話です…!

ここにきて、映現世の剣の弱点…というよりも、相性の悪い敵が明確になるといいますか…まさかのどんでん返しが起こりますので、その結末はその目でご確認頂ければと思います。

そして、作者が危惧していた通りに長くなったわけで…
武器解説は次回更新に纏めて行いますので…

それでは、どうぞ!

バイローフーさん、
ご評価ありがとうございました!

P.S. さりげなく新アンケート実地中です。
来週更新の少し後に、ちょっとした予告も行う予定で、それに関わるアンケートでございます!
是非清き一票を頂ければと思います。



第ⅩⅬⅥ話 「深化する愛憎」

「…そうか。メディキュボイドの設計者の人が…」

 

「うん…!アスナが、フォンに見せてもらった資料のことを覚えてて。それで、倉橋先生にも協力してもらったんだ」

 

風素を操り、空気を切りながら空を飛んでいく最中、俺はお姫様だっこをしているユウキから把握できていなかった部分の話を聞いていた。

 

俺自身の痕跡を消している余裕はなかったため(バイクは菊岡の手配で家に戻してもらったのだが)、もしかしたら、ユウキやアスナたちが追ってくるかもしれないとは思っていたが、メディキュボイト関連でオーシャン・タートルに辿り着くとは想定外だった。

 

それと、アリシゼーション計画の全容をユウキたちも聞かされたのだという。やはり、カーディナルの言っていた通り、最終負荷実験のことを菊岡たちは俺たちに隠していたようだ…まぁ、そんなことを聞かされれば、俺はともかく、キリトは確実に反対していただろうし、納得はできないが、ある意味では適切な手段だったと思う。

 

…それが、アドミニストレータの計画を立てさせるきっかけになっていなければだが…今となってはそれをどうこう咎めるような場合ではない。

 

もう戦争は起こってしまい、それを利用して、アメリカ国らしき特殊部隊がユージオとアリスを狙っているのだ…今はそれを防ぎ、二人を無事に現実世界へと送り届けなければならない。

 

それと、もう一つ…俺がキリトと共にこの世界に来た本来の目的をも果たさなければならない…やることは多いし、時間もほとんど余裕がない。

 

「フォン…あとどれぐらい掛かりそうなの?」

 

「あともう少しだとは思う…着くと同時に、大技をブチかます。なんとか突破口を開くから、ユウキはアスナたちを誘導して、戦場から離脱してくれ」

 

「うん!…大丈夫かな、アスナたち…」

 

「状況は…最悪の一歩手前だった。拘束されてたから、間に合ってくれればいいんだが…」

 

俺の視線の左側…すぐ近くの距離に顔が近づいているユウキに見惚れる暇もなく、道中聞いていた話を頭の中で纏め終わったところで、もう間もなくアスナたちがいる場所へと到着しようとしていた。

 

首に手を回すことで、落ちないようしっかり捕まっているユウキに、俺も楽観視できない状況を伝える。先程見た光景から、いつ殲滅されてもおかしくない状況だった。

 

相手が敵だけだと言うのなら、映現世の剣の記憶開放術でどうにかできる…上空から奇襲を掛ければ、全滅させることも難しくはないだろう。失敗したとしても、少なくともアスナたちが離脱できる時間を稼ぐことはできる筈だ。

 

もう30秒も掛からない位置になり、俺は左目を閉じて能力を発動させる。先程と同じ、アスナたちが囲まれている光景が映り……待った…誰かが闘っているのが見えた…!

 

両者ともよく知っている顔だ…!片方は敵として闘い、その後には背中を預けた二人で…もう一人の姿に、俺は思わず絶句してしまった。しかも、そいつは二人に止めを刺そうと、包丁のような剣を振り上げていて…!?

 

「っ…!?ユウキ!マズイ状況だ!?さっきの打ち合わせは全部なし!突っ込むから、しっかり捕まってろ!!」

 

「うん!!」

 

神聖術を解除し、自由落下を始めた身体にしっかりとしがみついたユウキを左手で抱き抱え、俺は右手で抜いた映現世の剣を構え、武装完全支配術を発動させようとした。

 

(何でもいい…!あいつの攻撃を…いや、あの場にいる全員の気を逸らせる規格外の力を…貸してくれぇ!!)

 

武器の組み合わせを考えてる時間などほとんどない…思わず、今すぐに必要な力をイメージした時…その答えを示すかのように、映現世の剣から二つの武器のイメージが伝わった。それを信じ、俺は式句を叫ぶ!

 

「…エンハンス・アーマメント!!!」

 

 

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

 

 

「遅くなった、アスナ……あとは任せろ!」

 

「…フォン、君…?!」

 

武装完全支配術で敵全体が動揺した隙を狙い、アスナたちを拘束していた赤鎧たちを殲滅させ、負傷者たちを回復させ終わったところで、俺はフードを取り、アスナたちへと声を掛けた。

 

いきなりの俺の登場にアスナたちも驚いているようだが、残念ながら色々と説明している時間はない。倒れていた赤鎧たちが、次々と体勢を立て直していたからだ。

 

「ユナ!二人と一緒に退がっててくれ!ユウキ、二人に肩を貸してやってくれ!」

 

「わ、分かったわ!」

 

「うん…気を付けてね、フォン」

 

傷は癒したといえど、エイジらしき、血盟騎士団の制服を纏ったプレイヤーは両腕を失っているし、カレットらしきALOプレイヤーもすぐに戦線に復帰するというのは難しいだろう。

 

ユナとユウキに二人を任せ、俺は…少し離れていたところに倒れているあいつへと歩み寄た。

 

「……キリト…」

 

「…?…ぁ……ぁぁあ…!」

 

名を呼ばれ、視線を向けたあいつが…目を見開き、手を伸ばしたキリトが声を発した。涙を流し、何かを求めるようなあいつの手を取り、俺はジッとキリトを見る。

 

「……大丈夫だ。お前が帰ってくるまで、みんなは死なせない…お前の帰ってくる場所は…守ってみせるから……だから…」

 

「……ぁあぁ…」

 

「……ロニエ!キリトを頼む!」

 

「えっ……は、はい!?」

 

言いたいことも望むことも分からない…だけど、こいつが帰って来れる様に、今できることをするだけだと、俺は力強く応え、ロニエを呼ぶ。

 

突然の出来事が連続して起こって驚いていたのだろうが、俺の呼び掛けにすぐさま我に返ったロニエが、手伝いとしてティーゼと共にこちらへとやってきた。

 

「先輩…よくぞご無事で…!」

 

「ユージオ先輩はこのことは…!?」

 

「心配を掛けて悪かった…説明は後回しだ。二人とも、すぐに退がるんだ」

 

「わ、分かりました…!?」」

 

 

「…夢幻の戦鬼ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!?」

 

 

俺から離れまいとするジタバタするキリトを、ロニエとティーゼが連れて退がるのを見届けたところで、背後から怨念が籠った叫び声が聞こえ、俺はその人物へと振り返る。

 

「…やっぱり見間違いじゃなかったんだな」

 

SAOで…あの世界で見たその風貌に、俺は思わず呟いてしまった。こいつ自身と対峙するのは初めてだが、俺は見るのは二度目となる奴の素顔に、瓜二つだという感想を抱いてしまっていた。

 

もっとも…あの場所で対峙した奴は狂い、常に狂喜を表情に笑顔として張り付けていたが…本人である奴…PoH自身は、怒りと怨念、憎悪の全てを隠すことなく表情に表し、俺を睨んでいた。

 

「なんなんだよぉ…!あの世界でも、いっつもいっつも邪魔ばかりしやがって…黒の剣士の隣に立ち続けやがって…!今度こそ、俺とキリトだけの場所かと思ってところに……また邪魔をしやがってェェェェェェ!?

てめぇは…どこまで俺の邪魔をし続ければ、気が済みやがるぅぅ!?夢幻の戦鬼ィィィ?!?!」

 

「…知るか!キリトを…アスナたちをどこまで苦しめれば、お前は気が済むんだ!?」

 

俺を見て…いや、怨敵へと向けるかの様な言葉と叫びに、俺も思わず語気を強めて言い返してしまう。

 

まさか…こんなところで、こいつと対峙することになるとは思ってもみなかったのもあるが…ここにきてまで、キリトたちを手に掛けようとするとは…PoH自身から、あまりにも重すぎる負の心意が放出され続け、それが赤鎧たちを操っているように感じ取れた。

 

「せっかく俺がブラッキーの目を覚まさせやろうと精一杯努力していたところを…てめぇが邪魔をしたんだぜぇ?お前だって、黒の剣士がいつまでも寝たままにしておきたくなんかないだろうがぁ?」

 

「適当なことを…!?お前みたいな人間が、そんな殊勝なことを考えるわけがないだろう!本心は、キリトが苦しむのを見たいだけだろう!?」

 

「…あーあ…正義のヒーロー様は全てをお見通しってわけか…。当たり前だろう!仲間の危機を放っては置けない…それが、黒の剣士や夢幻の戦鬼という英雄の行動理念だろう!?

あの鋼鉄の牢獄にいた時から、お前たちはそうだったよな!?自分たちがどれだけ恨まれようと、どれだけ傷つこうと…そうするのが当然と言わんばかりに、正義の味方であり続けようとしただろう!?

だから、俺はその場面を与えてやろうとしてんだよぉ!黒の剣士が嫌でも目覚めて、剣を取らざるを得ない状況をなぁ!?」

 

「…そんなことで…本当にキリトが目覚めるとでも思ってるのか!?」

 

「さぁ…?何もしないよりはマシだろうがぁ!それに、人が勝手に死んでいくのも見られるだ…俺にとっては得にしかならないこの状況を、身のがす筈がねぇだろうがよぉ!!

現に…さっきのお前のあの一撃…本当なら、俺たちを全滅させることだってできた筈だろう?なのに…そんな雑魚共を助けるために、ワザと外しやがったな?

折角のチャンスを自ら棒に振るとは…正義のヒーロー様は辛いよなァァ!?」

 

「っ……!?」

 

話が通じる相手でないことは分かっていたつもりだが…それでも、この男は異常過ぎる。あまりにもキリトに執着しているというべきか…ここまでの狂気を至極当然という風に放つPoHの姿に冷や汗が出てしまう…!

 

そして、その洞察力に思わず舌打ちをしてしまいたくなった…この短時間で、こっちの心理をあっさりと掌握するとは…いや、その心理掌握力があったからこそ、SAO最大の殺人ギルド『笑う棺桶』は、攻略組が無視できなくなる程に猛威を振るったのだろう。

 

「だが、これは好都合と見るべきだな…!いないと思っていたお前が、再び黒の剣士の隣に立ち並んだこの状況をなぁ!?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「黒の剣士の最高のバディであり、英雄の一人である夢幻の戦鬼!そして、生涯のパートナーである閃光!その二人が血みどろで、苦しむ様と悲鳴を上げる姿を見れば、必ず目を覚ますだろう、キリトよぉぉぉぉぉ!!」

 

「…そんなこと…!お前の思う通りにさせるわけがないだろう…!?」

 

どうあっても、PoHはキリトを目覚めさせたいようだ。それに関してだけは俺も同意だが、そんなやり方をあいつが望んでいるわけがないことも分かっていた。だからこそ、こいつの狂気はここで止めなければならない!

 

「てめぇの意見は関係ねぇんだよぉ!?同志たちよぉ!あの男も、我々の敵だぁ!あいつの首も刈り取れェェ!?」

 

『『『・・・・・・・・・・・・・・・・』』』

 

「…どうした…?なぜ動かないィ!?」

 

そんな俺の言葉など聞く耳を持たないPoHが持っていた剣を掲げ、赤鎧たちに号令を掛ける…だが、身構えた俺に対し、赤鎧たちは動く気配が…いや、PoHの指示に従うかどうか迷っているように見えた。

 

突然の好機に驚くも、まさかの事態にPoH自身も何が起こっているのか、分かっていなかった。

 

『おい、メイシャン…あの紋章、見覚えがないか?』

 

『…うん。あれって、もしかして『笑う棺桶』の印じゃない?』

 

 

『『笑う棺桶』だって…?』

 

『確か…SAOで大量殺人をした連中のことだよな…?』

 

『じゃあ…あいつの正体は殺人鬼…?』

 

 

中国語か韓国語か…意味は分からないが、それらしい言語で話している赤鎧たちはPoHを見て、困惑しているようだ。

 

どういうことかと俺は赤鎧たちを観察していると、彼らの視線がPoHの右手に集まっているのに気付き、露わになっていた『笑う棺桶』のメンバーが持つタトゥーを見た。

 

もしかすれば、彼らはPoHの正体に気付いたのかもしれない…彼らに纏わりついていた負の心意が揺らいでいる様に感じ、これはチャンスだと思った。

 

…だが、奴は俺の想像を容易に超えてきた…

 

「ちぃ……モブ共が。余計なことに気付きやがって……何にも考えてない奴らが、俺の言葉を疑うんじゃねぇよ!?俺の言葉だけに従っていればいいんだよぉぉぉ!!」

 

「っ…!?止めろ!!」

 

体から感じ取れていた負の心意が…目に見えるようにまで濃くなり、そして、闇を深くしたその心意が、困惑していた赤鎧たちを一斉に包み込んだ!

 

余りにも重すぎる…そして、狂気を伝染させるその心意の侵食に、思わず叫ぶが…PoHがそれを止めるわけもなく…赤鎧たちのほとんどが意志を失ったかのように、だらりと一斉に下を向いたかと思った次の瞬間…!

 

『『『『『『『『殺す…コロス…!コロス、コロス、コロス!コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!!!!』』』』』』

 

「っ…?!」

 

その心意に侵食され切った赤鎧たちが、呪詛の如く呟き出し…そして、次々と武器を構え始めた。敵を殺す…そのことしか頭にないその様は…心意だけでなく、狂気が伝染した暴徒と化したのだと分かるには充分過ぎる程だった。

 

『な、んだ…この感じ…?!頭に…言葉が入り込んでくる、みたいだぁ…!』

 

『まさか…あいつが…何かをしているというの…?!』

 

『メイシャン、呑まれるなぁ?!みんなも止めるんだ!?あいつの言動は明らかにおかしい?!そんなことも分からないのか!』

 

『『『『『コロス…コロス…コロス…コロス…コロス…!』』』』』

 

『お願い!?私たちの話を聞いて?!みんな、あいつに騙されているかもしれないのよ!』

 

『『『『『コロス…コロス…コロス…コロス…コロス…!』』』』』

 

…その光景は、手遅れだということを俺に思い知らせるには充分過ぎた…

 

何人かはPoHの圧倒的な負の心意に耐えている者もいるようだが、その数は微々たるものだった。そして、自身の言葉だけを聞くようになった赤鎧たちを見たPoHは狂った笑みを浮かべ、俺に宣言してきた。

 

「さあぁぁ!殺人ショーの第二部の始まりだァァァァ!次なる主役は、正義の味方夢幻の戦鬼と、総勢二万を超える人を殺したくてたまらない人形たち!!さぁ、殺し合え!?奴らを…薄汚い日本人たちを、今度こそ根絶やしにしやがれえぇぇ!!」

 

狂喜のままに、心の底から楽しそうに叫ぶPoH…その言葉に従い、赤鎧たちが俺たちを殲滅しようと、その包囲を狭めてくるのに対し、俺は俯いていた。

 

「…くっ…フォン君!?」

 

「待って、アスナ!」

 

「でも…このままじゃ、フォン君が…!」

 

「大丈夫…大丈夫だよ。だって……今のフォンは全く諦めても、絶望すらしていないもん」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

加勢しようと飛び出そうとしたアスナをユウキが抑える…どこか自信の籠ったその言葉に、アスナも安堵の笑みを浮かべているユウキが見ている先…フォンへと視線を戻した。

 

そんなやり取りが行われているとは知らず、俺は静かに深呼吸をして、映現世の剣を分割し、その言葉を呟いた。

 

「…リリース・リコレクション…!」

 

…薙刀状に合体させた夫婦剣が振るわれた瞬間、地面が再び大きく揺れた…!

 

「「「「「「?!!?!??!」」」」」」

『『『『『『!?!?!?!?!?!?!?』』』』』

 

敵味方問わず、その振動に足を止められ、揺れる地面に動けなくなった…そして、眼前で起きた出来事に、言葉を失う。

 

「…これは…閃光がやった技……なんで、お前がそれを使える……!?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ようやく振動が収まったところで、PoHが呟いた…上手い事、何か勘違いしているようだが…別にそれをわざわざ訂正してやる気はなかった。

 

俺は記憶開放術で斬り裂いた…先程、ここに降り立つ前に裂いた境界線の谷を…!斬り裂かれたこと自体をなかったことにし、境界線となった底なしの谷をくっつけ、元に戻したのだ。

 

これは最終忠告でもあり、最後の賭けでもあった…先程、PoHが『笑う棺桶』のメンバーかもしれないと知り、赤鎧たちに対する心意の侵食が弱まった。つまり、その負の心意を覆すような圧倒的な何かがあれば、洗脳を解くことができるかもしれないと思ったのだ。

 

『聞け、赤鎧の戦士たちよ!!』

 

『『『『?!?!』』』』

 

こちらの意志を伝えようと、英語にて動揺している赤鎧たちへと言葉を投げ掛ける。高校レベルでも、共通語として使われることが多い英語なら意味は伝わる筈…そう思い、文章を考えながら、言葉を続ける。

 

『今、俺は地面を斬り裂いた!この剣は、この世界に存在するあらゆるものを斬り裂く剣だ!貴方たちがどういった考えでここに来たかは分からないが、そこにいる男の言葉は全てが出鱈目だ!?

少しでも、俺の言葉を信じてくれるのなら、どうか剣を納めてくれ?!こちらも、無駄な殺生はしたくない!頼む…!これは最終通告だ!もし足を止めないというのなら……お前たちを斬る!!』

 

『『『『『『『『………!?!?』』』』』』』

 

できることなら、それだけは避けたい…避ける方法があるのなら、それを選びたい。

 

ここに来る直前…奇襲を掛けることを考えていた時も、アスナたちを助けることを優先していたが…この方法だけは本当は取りたくない。

 

リズたちがここに来ている様に…ユウキの話からすれば、彼らもコンバートしてきたプレイヤーたちの可能性が高い。

 

もし、そんな人たちに映現世の剣の記憶開放術を使ったりしたら…どうなるかが想像がつかない!…命は奪わないとしても、何かしらのダメージは残ってしまうかもしれない…だから…!?

 

(頼む…!これで退いてくれ?!頼むから……!)

 

願う様に…できるだけその言葉が届いてほしいと思いながら、俺は赤鎧たちの動きを見張っていた…だが、現実は非常で…

 

『騙されるなぁ!?お前たちも散々味わってきた筈だ!日本だけが上手い汁を啜り、我らがどれだけの屈辱を受けてきたのかを!?許すな!憎めぇ!!そして、その剣で奴らを八つ裂きにし、殺し尽くせェェぇ!?』

 

『『『『『『『……うううううううううううぉォォォォォ!?』』』』』』』

 

その願いを掻き消すかのように、PoHの心意が再び赤鎧たちを包み込む!

 

どす黒く、悪魔の笑みを思わせるかのような負の心意が…赤鎧たちの心を奪うかのように纏わりついていくその様は…悪魔と契約しているかのように見ている者を思わせる光景だった。

 

そして、PoHの言葉に従い、赤鎧たちは再びその足を進み始めてしまった。

 

「…すぅぅ……はぁぁぁぁ…」

 

もしかしたらという可能性が無くなったことに…覚悟を決めるべく、俺は深く息を吸い、大きく吐いた。

 

ギュッと映現世の剣を握る力を強め、覚悟を決めた俺は、神聖術を発動させ、足元に風素を生み出し、低空へと飛び上がった。

 

そして、周囲から迫ってくる赤鎧たちを視界に捉え、二度目の記憶開放術を発動させる。負の心意が可視化されたことで、対象を絞りやすくなった…『負の心意に完全に侵食された赤鎧たち』だけを斬り裂くべく、俺は空中で一回転しながら薙刀を振るった。

 

「…っ?!うおおおおおおおおおおおおおぁぁぁぁ!!」

 

…一閃の斬撃…たったそれだけの動きで、幾千の赤鎧たちが崩れ落ちた。

 

「…はぁ…?」

 

一瞬…秒というあまりにも短すぎる時間で、ほとんどの赤鎧たちが動きを止めたと思えば、一斉に倒れたことに、PoHの口からそんな間抜けな声が出ていた。

 

「…っ…!?(やっぱ…この技だけは反動が尋常じゃない…!?)」

 

だが、俺自身も二度目となる記憶開放術を使ったことで、激しい頭痛を覚えていた。最初に使った時に比べれば、かなりマシなのだが…額や背中をかなりの量の汗が流し、疲弊感を覚えながらも、俺は呆然とするPoHへと視線を向ける。

 

「言っただろう?お前の思う通りになんかさせないってな…!」

 

「っ……てめぇぇぇぇぇ!?」

 

それを隠し、強がりを込めて笑みを浮かべ、そう言葉を投げ掛ける。再び苛立ち共に、叫ぶPoH…だが、これで奴の切り札は完全に封じられた筈だ。

 

「っ…!?っ…!?」

 

「復活させようとしても無駄だ…俺が今斬ったのは赤鎧たちそのものじゃない…プレイヤーたちとアバターとの接続自体を斬ったんだ。今、倒れている赤鎧たちは…ただの空っぽの器だ」

 

「…接続を…切った、だと……?何を言ってやがるぅ!?そんな、システムに干渉するようなことが、ゲーム内からできるわけが…!?」

 

「…残念だが、この剣ならそれができるんだよ。数の優勢がなくなった今…お前の勝ち目が無くなったのは…言わなくても分かるだろう…!」

 

『…あの言葉は本当だったのか…?』

 

『あのプレイヤーこそが…管理者なの?』

 

記憶開放術の対象外だったプレイヤーたちが、周囲に倒れている面々を見て驚いているようだ。

 

PoHもなんとか赤鎧たちを復活できないかと模索しているようだが…それは不可能だ…そうできないように斬り裂いたのだ。

 

映現世の剣の記憶開放術…俺の思うがままに、理さえも斬り裂くこの攻撃は…あらゆる世界の記憶を読み取った正と負の力を糧に、世界を塗り変えるといっていい力だ。

 

プレイヤーがいなくなったアバターなど…どんな蘇生方法でも蘇らせることはできないし、もう操ることだってできない…あいつの狂気に染まり、利用されることもない。

 

「終わりだ、PoH…お前の野望も、狂気も…これで全部終わりだ」

 

残る記憶開放術の回数はあと一回…これで止めを刺す。PoHまでも、この世界から離脱させることができれば、後はユージオたちを助けるだけだ。

 

そう思い、俺はPoHへと宣告した…だが、俺はやりすぎた…やり過ぎてしまったのだ。俺は…PoHという人間を理解できていなかった。

 

「……ざける……!ふざけるなぁ…ふざけんなぁ、ふざけんなぁ!?ふざけんなァァァァァァァァ!?」

 

「っ…?!」

 

「俺をそんな目で見るなぁ?!俺へそんな言葉を向けるなァァァ!?俺を…俺をぉ…!お前のような、黒の剣士に不釣り合いなガキが、俺を見下すんじゃねぇェェェェェェェ!?」

 

「…!?!?」

 

大気を震わせるかのような絶叫と共に、PoHの叫びがどんどんと大きくなっていく!その憎悪と怒りが、心意の色を赤黒く濃くなっていき、PoHの体へと纏わりついていく。

 

もう何もできない筈なのに…そんな現状を認めないとばかりに、PoHは剣を地面へと叩き付ける!そして、深化した負の心意を一気に解き放ったのだ!

 

もう動くはずのない赤鎧たちに纏わり…いや、その中身に入り込むかのように動き…なんと、赤鎧たちがPoHの元へと集まり始めたのだ。

 

『…っ…!あんたたち!?その辺りは危険だ!?こっちに来るんだぁ!?』

 

『『っ!?』』

 

無事だったプレイヤーたちの意識をも奪おうとしているのか、負のオーラが纏わりつこうとしていた。それが見えていた俺は、プレイヤーたちへと英語で呼び掛けた!

 

プレイヤーたちも危険を察知し、すぐさま走り出して、アスナたちに合流した…シウネーと話しているようで、何かしら面識があったようだ。

 

だが、その間にもPoHの元へは心意によって赤鎧たちが集められ…奴を取り囲むように、負の心意と赤鎧が固まっていた。

 

「俺の思うがままにできないだと!?そんなことがある筈がねぇだろう!?こいつらを使う権利が俺にはある!黒の剣士を目覚めさせるのは俺だぁ!俺であるべきなんだヨォォォォ?!!?」

 

「…ぐぅ?!」

 

殺気と共に放たれたPoHの心意に、思わず気圧された…とっさに顔を腕で庇ってしまい、動けなくなってしまった。そして、その言葉に従ったかのように…動かない筈の赤鎧たちが動き始めたのだ…!

 

「…そんな…!?」

 

「…いいぜ…!いいぜぇ、その顔をぉ!?その表情を、お前にさせたかったんだよぉぉ!?」

 

続々と…先程殲滅した死霊人形たちのように、そして、ゾンビを思わせるかのような動作で起き上がり始めた赤鎧たちに…俺は絶句してしまった。

 

そんな俺の反応を心から喜ぶかのように…PoHは歪んだ笑みで嗤い声を上げた。

 

「っ…だったら…!?もう一度斬るだけだ…!」

 

どんな方法かは分からないが…蘇ったのなら、もう一度動けなくするだけだ…!今度はPoHごと斬り裂こうと、薙刀を構えるが…さっきの二撃で、映現世の剣の攻撃範囲を見切ったのか、PoHが大群の影に紛れ、姿を消した!

 

(くっ…!?こうなったら…赤鎧たちだけでも…!)

 

何かをされる前に阻止しなければ…!そう思い、俺は最後の記憶開放術を発動させた!反動で一瞬視界がブレるも…歯を喰いしばり、薙刀を振るった…その瞬間に、俺の攻撃を予測していたPoHが一体の赤鎧を踏み台に宙へと逃れたのが見えた。

 

だが、全ての赤鎧たちには記憶開放術の一撃が、斬撃の平行線上に直撃し、胴体が真っ二つになり、またしても崩れ落ちようと…

 

「…なぁ…?!」

 

そうなると思っていた俺の予想とは逆に、赤鎧たちは倒れなかった。

 

いや、正確には一度は倒すことができた…しかし、真っ二つに分かれた胴体から赤黒いオーラが漏れ出し、それが形どり、斬り裂いた筈の鎧を再生したのだ!

 

「…フフフ…フハッハッハッハッハッハッハッハッ!?さっきまでの威勢はどうしたよぉ!?」

 

「っ…(やられた…!?)」

 

してやったりという嗤いを浮かべるPoH…俺の反応が思っていた通りらしく、嘲笑うかのように嗤っていた。そして、困惑する俺に種明かしをし始めた。

 

「ヒャーハッハッハッ!お前が追い詰めてくれたお陰で、俺にもこの世界の仕組みが理解できたんだよぉ!ここじゃ、流れた血や失われた命がエネルギーになるんだろう?だったら、それを操れる手段があったしたら、どうだ?」

 

「…そんな手段、神器での武装完全支配術でもない限り……っ!?そうか、その剣…!?」

 

「Exactly!!SAOでは魔剣と言われたこの『友切包丁』…モンスターを倒していく度にスペックダウンしていくが、プレイヤーをキルしていく度にスペックアップしていく代物だった。

つまり、奪った人の命を吸って、この魔剣は力を増していくわけだ!そして、今、この世界にはお前たちが殺したものを含め、大量の材料が漂っている!見ろよ!俺の意志に応え、『友切包丁』がその本来の性能がこの世界…アンダーワールドでも機能している!

それを依り代に、空っぽとなった器に力を注ぐ…そんなことができるかもしれないとやってみた結果がこれだぁ!?死を恐れず、何度でも蘇る兵隊…!お前のお陰で、俺は新しく、そして、もっとマシなオモチャを手に入れられたぜぇぇ!!」

 

「っ…?!?!」

 

追い詰めた筈が、いつの間にか追い詰められていた…数の差をどうにかできればと思いって矢先、まさかの不死身の軍団が出てくるとは思わず、汗と共に焦りが出てきた。

 

「さ~て~と…!さぁ、夢幻の戦鬼ぃ!お前には、ブラッキーを目覚めさせるための生贄になってもらおうかぁ!?俺と黒の剣士のために…踊ってくれよぉ!」

 

「くっ…!?」

 

力を失い、色を失った薙刀を手にしていた俺に、これからが本番だとばかりに魔剣…友切包丁を向けてきたPoHは静かに赤鎧…いや、不死の軍団に呟き命じた。

 

「…Go!!」

 

その一言に、軍団は無言のまま、突撃を開始した!

 

それを迎え撃つべく、映現世の剣を分割し、夫婦剣の状態にし、軍団の猛攻を受け止める。しかし、俺だけでなく、背後にいるユウキたちの元へも軍団は向かっており…!

 

(くそっ…!?俺だけじゃなく、他のみんなにも攻撃するつもりかぁ?!)

 

あの数に一気に攻められれば、ユウキたちがもたない!?

 

天日剣で周囲を焼き斬りながら、月影剣で武装変換術を発動させる。質を伴った数が必要だと…想定した武器を呼び出したことで、デメリットをも記憶と同時に理解するが…迷っている場合などではない!

 

左腕に装備したそれ…五色の五枚と、金色の五枚のギアたちが噛み合ったかのようなガントレットを操作する!

 

メカニカルなデザインとは裏腹に、軽快な音楽と共に回転が連動した歯車たちが何度も回っては光る。そして、それに合わせて現れたのは…!

 

「アスナ…来るよ?!」

 

「うん!…えっ…!?」

 

俺を擦り抜け、自分たちのところへと向かってきた軍団を迎撃しようとしたユウキとアスナだが…目の前に等身大の四つのギアが現れ、光と共にギアが人の形へと変わったのだ!

 

「…フォンが…いっぱい…?!」

 

ユウキの言葉通り…4人の俺が出現していた。しかし、全員が全く異なる恰好をしていたのだ。

 

蒼輝勇槍『天零』

縁勇弓『神繋』

絆虹装『クロスザナウム』

聖救手『神ノ道化師』

 

これまで呼び出してきた数々の武器を装備した俺がその場にいた…そして、ユウキたちを守るべく、迫ってくる軍団へと突撃した!

 

全界召腕『ギアサモンガー』…これまで呼び出し来た武器を、天命を代償に分身と共に呼び出す召喚機の武装完全支配術を発動させたわけだ。

 

分身たちは俺のステータスと変わらず、武器たちの能力も全てが使用可能…だが、その代償も測り知れないものなわけで…

 

「ぐぅぅ…!?(ヤベェ…最大数の4体を召喚して、天命もそうだが…体力までガッツリと持っていかれた…!?)」

 

全界召腕『ギアサモンガー』のデメリット…召喚一体につき、天命の最大値20%を代償にするのに併せ、体力までもを大きく消耗する…!

 

さらに、分身たちの疲弊やダメージは…全て本体である俺へとフィードバックしてしまうのだ。そこに、武装変換術の反動までもが重なる…二つまでであれば、映現世の剣の心意を理解できた今ならば、最低限の負担で済むが…それを超えた反動…分身を通して呼び出した四つの武器の分はもろに受けることになるわけで…!?

 

一気に力が抜け、胃から血が逆流して口を汚した…!すぐさま天日剣を『黒暁』に変換させ、『不知火の炎』で体力の回復を図るが…消耗の度合いが大きすぎて、回復能力が鈍く、体が思う様に動かすことができない…!

 

なんとか赤鎧たちを弾き飛ばすも、倒しても倒しても、赤鎧たちは再生していき、キリがなかった。倒すのではなく、こいつらを封じ込める武器を呼び出さなければ、この状況は打破できない!?

 

だが、そんな隙など与えまいと、迫る刃が…!

 

「っ…?!うあぁぁぁ!?」

 

「調子が悪そうじゃねーかぁ…夢幻の戦鬼!」

 

咄嗟に刀で構えて防ぐも、力を十分に込められていない防御に友切包丁の一撃が加えられ、俺は押し込まれる形でPoHと鍔競り合いに持ち込まれた。

 

なんとか武器を切り替え、赤鎧たちを抑えたいのだが…目の前の相手はそんなことを容易くさせてくれるような相手ではなく、焦燥感が更に募る。

 

「いいぜ、その態度、その表情!だが、盛り上がるのはここから…あいつが目覚めるのには、まだまだ足りない…そう思うだろう、お前も!?」

 

「ぐぅぅぅ……!」

 

「もっとだぁ…もっとその悲鳴を、黒の剣士に聞かせてやってくれよぉ!?ずっとお眠りしているあいつを、すぐにでも目覚めさせるぐらいの悲鳴をよぉぉ!」

 

「…うううぅぅぅ!?何故だ…どうして、お前は…キリトにそこまで執着する!?あいつがお前に何をしたっていうんだ!?」

 

視界が何重にもブレ、黒暁の回復とギアサモンガーの反動が拮抗し合っているせいで、吐き気を催すほどの不快感に襲われながらも、俺はPoHと刃をぶつけ合っていた。

 

そして、ここまでの狂気を解放してまでキリトにこだわるのかを知りたく、思わず口から疑問が出てしまった。それに、気分がいいのか、奴は答え始め…

 

「何をした…?そいつは見当違いだなぁ…俺はあいつを…黒の剣士キリトを愛してるんだよ?」

 

「なぁ……愛、だと…!?」

 

「そぉぉうさぁぁ!?アインクラッドの5層で初めて殺そうとして、あいつと直接出会ったわけだが…初めてだったよ。殺そうとして殺せなかったのはあいつが初めてだったのさぁ!

その時から決めたんだよぉ…あいつを殺すのは俺の役目だとなぁ!クソッたればかりの連中がたむろしていたあの世界において、あいつだけは俺が無条件に信じられる男だった…俺がどんなに苦しめても壊れず、どんなに誘いかけても汚れず、その姿はいつだって俺に希望と喜びを与えてくれた…!

だからぁ…俺がいないところで、あいつがあんな腑抜けた姿になっちまったことが許せねんだよぉ…!?俺は絶対にあいつを目覚めさせてみせる!?そのためなら、誰だろうと殺す!?何であろうと利用してやる!?それが何千、何万だろうと…俺の手駒にしてやるよぉぉぉ!?」

 

その言葉と共に、PoHの心意が更に闇へと深化していくのが見えた。それに合わせ、友切包丁の一撃も更に重くなる。

 

「いい加減なことを言うなぁ!?何が希望や喜びだ!?お前はただ、自分が満足したいがために、キリトを自分のものにしたいだけだろうが?!そんなのは愛でも何でもない…ただ狂った想いを相手に押しつけてるだけだろう!?」

 

「…お前ならそう言うと思ったぜぇ!そうやって、お前はあの世界でも邪魔をし続けてきたよなぁ!?俺があいつのことをどれだけ愛しているかも知らずに、その居場所に居続けたお前には、この気持ちは理解できないだろうなぁ!?」

 

さらに嫉妬までも加わったのか…受け止めていた魔剣の勢いが一気に増した!完全に押し負けた俺は膝を突き、受け止めるのがやっとの状態にまで追い詰められていた。

 

「イイ様だなぁ、夢幻の戦鬼!?安心しろよ…お前は前菜…閃光というメインディッシュをやる前の大切な生贄にしてやるからよぉ!」

 

「…ぐぬぅぅ…うううううぅぅぅ…!?」

 

「だが、黒の剣士を目覚めさせるために、両腕・両脚は斬り裂かせてもらおうか…!そして、お前たちの前で大量の人間が死ぬところを、特等席で見せてやるよぉ!そうすれば、黒の剣士も目覚めてくれるだろうからなぁぁぁぁ!?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「そして、人工フラクトライトを…暗黒界の化け物共も人間界の奴らも、片っ端からぶっ殺してやるよぉ!?あいつが…俺が信じた黒の剣士が目覚めてくれるまで、俺は止まるつもりはねぇからなぁ!

それで、目覚めたあいつの前でお前を殺し、閃光の前でキリトを殺すぅ!そこで俺はようやく手に入れることができる…お前が奪い、閃光が手にした、キリトの愛をなァァァ!?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「俺だけがあいつの愛を受け取る権利があるんだぁ!?お前でも、閃光でもない…あいつを理解している俺だけが「…ふざ…けるなぁ!?」…っ!?」

 

我慢の限界だった…キリトを理解している?キリトを愛している?…ふざけるな…その想いが力へと変わり、満身創痍だった体を動かした。

 

「あいつは…あいつは…!そんなことのために闘ってきたんじゃない!?どんなに傷ついても立ち上がったのは諦めたくないものがあったからだ!?どんな場合でも堕ちなかったのはあいつが一人じゃなかったからだ!?

お前みたいに、誰のことも本当に分かろうとしない…誰のことも本当の意味で信じることのできないお前が……キリトを語るなァァァ?!」

 

負の心意を押し返すように、不知火の炎が噴き出る…回復に使っている分までを回し、俺はPoHの友切包丁を押し返していく。頭痛がいっそう激しくなるが…そんなことを気にしている場合ではない!?

 

「…おい…いつまで寝てるつもりだ…!?」

 

「はぁ…?なにを言って「てめぇに言ってんじゃねぇんだよぉ?!」なぁ…?!」

 

余計な言葉を挟むなと、俺はPoHの言葉を怒鳴るように遮り、あいつに聞こえる様に心の底から叫ぶ!

 

ユウキの話から、俺はあることを推測していた。

 

俺やキリトはフラクトライトの一部を損傷していたらしい。

 

つまり、俺が再覚醒できたのは何かしらのきっかけがあった筈だ…俺があのような精神世界に引っ張られたということは、菊岡たちが何かしらのアクションを起こしたに違いない。

 

そして、俺が復活できたということは…ラースの面々は、おそらくキリトにも同じ方法を行っているはずで…

 

「さっきも言ったよなぁ!お前が帰ってくる場所は必ず守るって…お前が安心して帰って来れる様に………俺は立ったぞ!?俺にできたんだ…お前だって……俺が憧れたお前にだって、出来る筈だろう?!」

 

お前が帰ってくると…必ず立ち上がってくれと信じているから、こんな無茶をしてでも俺は闘うことができているのだ。

 

だから…だから……!

 

「立てよ……立ってくれよぉぉ!?……キリトォォォォ!!!」

 

その咆哮と共に、俺はPoHの友切包丁を弾き飛ばした!

 

 




『キリト君』
『キリト』
『お兄ちゃん』

…ゴメン…もう駄目なんだ…もう立てない…俺はもう…!

「「…キリト…」」

三人の女神の想いと、親友の言葉が…キリトの心へと光を与え…!?
 
次回 「              」

ミトを本作に登場させるとしたら、その後はどういう感じで登場してほしいでしょうか?

  • 半レギュラー化(物語にもがっつり絡む)
  • スポット参戦(閑話に出てくるレベル)
  • まさかのサブヒロインポジ
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