アインクラッド編~アリシゼーション編までを読破されていることを前提に話が進みますので、本話から読まれる方はお気を付けください!
それでは…どうぞ!
「…よし…!上手くいったッス!?」
ノートパソコンに映るフォンのフラクトライトが正常に…いや、以前以上に活発に動き出したことを確認できたことで、銃創の痛みを堪えながらも、ガッツポーズを取る比嘉。
ユウキのフラクトライトを接続しても、改善が見られなかった時はどうしたものかと心配していたが…フォンが再覚醒できたことで、今度はキリトの番だとSTLのプログラムを操作していく。
「よし…既に接続しているアスナさんたちに加えて、フォン君が使ってる5番STLをキリト君の4番に接続して……な、なんだ…?STLとは別の方向から接続…ライトキューブクラスターからの接続だって……それに、このフラクトライトは…?!」
フォンのフラクトライトの接続に連動したかのように、ライトキューブクラスターからもフラクトライトの接続が起こり、先程まで散々見ていた人物のものであることに、比嘉の目が見開かれるが…
「…いいや…もう驚きはしないッスね。だから…頼むッスよ…みんな…!」
『お願い、キリト君…!フォン君が…みんなが危ないの…!私の心も、命も…なんでもあげるから…!?だから、目を覚まして…キリト君!?』
『…お兄ちゃん…みんながお兄ちゃんの為に来てくれてるよ…だから…だから、一緒に帰ろう?』
『キリト…私を絶望から助けてくれた貴方を……今度は私が助けるから…だから、起きて…?』
既に接続されていたアスナ、リーファ、シノンのフラクトライトがキリトに注がれ、赤・緑・青とそれぞれの想いと共に燐光がキリトのフラクトライトを照らす。
『『…キリト…』』
そこに…二色の蒼…白蒼と銀蒼の色が加わり…
「…ここ、は…?」
気が付いた時…俺は自分がどこにいるのかが分からなかった。
ここにいる理由は、ここがどこなのか…何か今すぐにしなければならないことがあった筈なのに…大事なことを忘れてしまっている気がするのだが…そんなぼぉっとしている俺の頭を、現実に引き戻すかのように叫び声が耳に届いた。
『うわあああああああぁぁぁぁ!?』
「っ…?!」
その声に、我に返った俺は視線を上げた…視線の先には、複数の蔦のモンスターが集まっている光景があった。
そうだ…思い出した…ここは…これは…?!
『マズい…?!すぐに助けないと…!』
「…!駄目だ、フォン?!」
ここにいる理由を思い出した俺は、飛び出そうとしていたフォンの腕を掴み、制止した。俺の行動に、フォンは困惑しながらもどうしてかと尋ねてくる。
『何するんだ、キリト!?今ならまだ間に合う!?早くしないと、あのプレイヤーが!?』
「駄目だ!?実付きのリトルネペントが呼び寄せるネペントの数は尋常じゃないんだ!?いくらレベルマージンが多少あっても、あの数の暴力を防ぐのは危険すぎる!?」
『っ…それでも!助けられるのなら、助けない手はないだろう!?』
「…フォン?!」
俺の腕を振り払い、フォンはリトルネペントの軍団に襲われているプレイヤーの救援に向かってしまった。
…思い出した…アニールブレードを手に入れるために、ホルンカの村に着いた俺とフォンは、クエストに挑んでいた時…同じくクエストに挑んでいたβテスターらしきプレイヤーと協力して、花付きのリトルネペントがごく稀に落とす胚珠を手に入れようとしていた。
それで、俺とフォンがそれぞれ胚珠を手に入れた時、そのβテスターがわざと実付きのネペントを攻撃して、俺たちにMPK…モンスターPKを仕掛けようとしたんだ。
でも、そいつは隠蔽スキルの特性を十二分に理解していなくて…効果が及ばないネペントになぶり殺しにされそうになっていた。
それを…フォンは見捨てることができず、プレイヤーと共にネペントの集団と闘ったんだ…そして、その光景を俺は見ていることしかできなかった。
『これで……ラストォ!』
HPを削りながらも、互いの背中を庇い合いながら、がむしゃらに闘い続けた二人…集まっていたネペントたちを殲滅し、HPがレッドの半分を切ったフォンが、気合と共に最後の一体を倒した。
『…はぁ…はぁ…』
『な、なんで……僕は…あんたたちを…』
『…知るか。お前がどんな奴だろうが…目の前で死にそうになってる奴を見捨てるのは、目覚めが悪いと思っただけだよ』
…敵わない…
俺は…俺はフォンのその姿を見て、そう思ってしまったんだ。
βテスターの俺が、何も知らない筈のフォンを助けないといけない筈なのに…!俺は怖さの余り、助けるどころか、動くこともできなかった…!?
「…フォ、ン……俺…」
『…腹減ったな。さっさと報酬貰って、飯でも食いに行こうぜ。いい店を教えてくれよ…キリト』
俺のことを気遣って、言葉を遮ったフォン…そう言って、先を行く背中が…あまりにも大きく、そして、遠くに見えた。
『…キリト、ボスの腰にある武器…曲刀って、あんなに長かったか?』
『さ、せるかぁぁぁーーーーーーーーー!』
…第一層迷宮区のボス戦でもそうだった…
フォンは、自分のことなんて後回しで、迷うことなくディアベルを助けに入った。もし、フォンがいなかったら、ディアベルはボスにキルされていたに違いない。
『一人でβテスターへの憎しみを全部背負ったお前にだけは言われたくないよ』
俺がビーターの名を背負った時も、その汚名が自分に掛かることになろうとも、俺とコンビで居続けてくれた。
『伏せろっ!!!』
「フォン……!?」
『話は後だ!彼女は俺に任せて、今は目の前の敵に集中しろ!!』
サチたちがトラップに掛かった時、もしフォンが来てくれなかった、俺はサチまでも死なせていたかもしれない。
その背中が頼りに見えると同時に…俺はいつしかフォンに頼ることが当たり前になっていた…俺がどんな無茶をしようとも、背中を預けられる…もしくは、、必ず止めてくれる…アスナとは違う、相棒と言っても差し支えない存在になっていた。
『…お前の気持ちが分かる、そんな簡単なことは言わない…だが、今のお前の行動は自殺行為だ!そんなことをして…あいつらが喜ぶとでも思っているのか!?』
「…うるさい!?…そこをどけ、フォン!」
俺が自暴自棄になりかかっていた時…その後、一時的にコンビを解消していた間も、あいつは俺のことを気遣ってくれていた。
『…いや、俺のほうこそ。お前があんなに苦しんでいたなんて、知りもせずに…悪かった』
『…だけど、今回の話を聞いたときな…正直、嬉しかったんだ…初めて会った時のキリトに戻ったと思ってな。あの後、お前に何があったのかは知らないけど…俺は今のキリトの方がいいと思う』
…違う…お前がいてくれたから、お前がクリスマスボスの時に必死で俺を止めようとしてくれたから…俺にも必死になって止めてくれる友がいるんだって…そう思えたから、俺はなんとか戻ってこれたんだ。
『幻想剣…っていう、変なスキルをこの前、手に入れてさ…キリトなら、何か知らないか?』
56層のフィールドボスに、二人だけで挑むことになった時…フォンは自分もユニークスキルを手に入れてしまったかもしれないと…秘密を打ち明けてくれた。
…素直に嬉しかったんだ…
いつも頼っていた俺が、フォンに頼られたことでようやく背中を合わせることができたんじゃないかって…
『いや、俺はいいよ…お二人の邪魔をしちゃ悪そうだしな』
『あー、悪い…そういうのは二人っきりのときにやってくれるか…俺がいない時とか、な?』
『10秒稼ぐ!その間に!…ここでアスナたちを死なせてもいいのか!?』
『……気にするな…良い機会だったしな…それじゃあな』
いつもは気軽に茶化してくるその親しさと、いざという時には剣を共に合わせられる…そんな年上の友人が…SAOで俺の支えになっていた…だから、俺もフォンの力になりたいって思ったいた。
…けど…俺は何も分かってなかったんだ…あいつが想像もできない程の重荷を、どれだけ背負っていたのかってことを…
「……フォン、何かあったのか…?」
『えっ…?』
あの時…75層のボス戦の前…俺はフォンの様子がおかしいと思っていた。
けど、なんでもないっていうあいつの言葉を…いや、そう強がっていたあいつの苦しみを察してやれなかった。
『これが……俺の答えだよ…ヒースクリフ…いや、茅場晶彦…!』
『俺は決めたんだよ…俺がどうなろうが、必ずキリトたちを現実世界に返す…!それが…俺がここに来た意味じゃないかって…だから…アンタは俺が止める!!!』
『俺がやる…こいつとの決着は俺がやる』
死を恐れないフォンを…ヒースクリフに挑むその背中を見ていることしかできず、俺はやっぱりフォンには敵わないと思っていたその時…ヒースクリフが…いや、茅場が衝撃的なことを言い放った。
『驚いたよ…君が、自分が消えることを覚悟で私を倒そうとするとはね』
『っ…!?』
「…なぁ…どういう意味だ…!?」
『…彼は、本来このゲームに参加する人間ではなかったんだよ…事実、彼がどこからログインしているのか、このゲームマスターである私でさえ把握できていない。
まさしく、未知のプレイヤーだ。最悪、このゲームをクリアしてしまえば……彼は現実世界に戻れないだろう…』
フォンが…死ぬ…?
嘘だと…そんなことがあるわけない……そう信じたい俺は、フォンへと視線を向けるが…
『…悪いな、黙ってて……けど、これは俺の贖罪なんだ…命にかけても、こいつは…俺が殺す…!!!…決着をつけるぞ、茅場!』
…気まずそうに、そして、悲しい瞳でフォンがそう告げた…
どうして…なんで言ってくれなかったんだ…!?…フォンに対する怒りと後悔の感情が湧き上がる一方で、そんなことになっているとは知らずに、フォンに頼り続けていた自分が…とてつもなく嫌になった。
だが、俺の思いとは…フォンとヒースクリフの闘いは最終局面を迎え、神聖剣の絶対なる防御を破ったフォンが止めを刺したと思った瞬間…!
『…えっ…ガハァ…!?』
…フォンが、背後からヒースクリフに刺された…
その光景に…俺は、どんどんと減っていくHPに止まってくれと…無駄だと分かりつつも、願わずにはいられない状況で…フォンの最期の言葉を聞くことしかできないでいた。
『…キリト…悪い。後は…任せた、ぜ…!』
…パリン…
〈あああぁぁ……!?ああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!〉
砕け散ったフォンの身体を見て…心が引き裂かれたような痛みに襲われ、俺は言葉にならない叫びを上げていた…
俺は…あいつに何をした…?何をしてやれた…!?
あいつは…あいつだって、自分のことで精いっぱいだった筈なのに…俺なんかの為に、親身になってくれて…なのに、俺はあいつの苦しみを何も分かってやれてなかった?!
それなのに…それなのに……!?
『勝てよ…俺とお前の力であいつを、茅場を倒してくれよ!』
最期の最後まで…あいつは俺に力を貸してくれた…!俺はあいつに何もしてやれなかったのに…!?
「…フォン!?…フォンなのか!?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
だから…旧ALOでアスナの居場所を探していた時…世界樹のグランドクエストのボスと化していたフォンと再会した時…俺は安堵と共に嬉しかったんだ。けど…
「俺だ!キリトだ!フォン、分からないのか?!キリトだ!!!」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「止めろ!フォン、止めてくれ?!」
再会したフォンは、何の迷いもなく俺に剣を振るってきたんだ…その攻撃が…剣を振るう姿が、俺を責め立てているようで…俺は当然の報いを受けているのだと思ってしまった。
『言ったろ…?お前らと出会えて、俺は最高に楽しかったって…』
『…また会えるさ…こうやって、出会えたんだ…世界が違ってもいつかまた…どこかで…』
『…俺はお前たちを騙してたんだぞ…!それだけじゃない、俺は74層の軍の暴走だって知ってた!お前がクラディールに襲われるのもだ!…全部知ってて、しょうがないって見逃した…!お前にお礼を言われる資格なんて…ないんだよ…!!!』
須郷の手から、アスナとフォンを解放した後も…その言葉を聞いても、俺は心のどこかでフォンに対する罪悪感を抱いていた。
初めて友の弱さを見て…何も分かってやれてなかったのだと、再度思い知らされた…自分のことをどこまでも追い詰めるその姿が…俺があいつを追い詰めたんだと思った。
それでも、あいつは…何も変わらず、俺と一緒にいてくれた。
『どんな理由があっても、どんな状況だったとしても、俺が人を殺した事実は変わらない…それが正しいことであってもだ。だけど…それを忘れないって、言うのは後悔とか罪悪感じゃなくて…何を守れたのか、その責任を背負ったってことを忘れないため、じゃないかって思うんだ…』
『今のお前がそうだろ…?そうやって、思い出そうとしてことは…お前はその責任を背負ってるってことじゃないのか?…少なくとも、俺が知っているキリトは、大切な何かを守るために剣を振るったはずだ』
…違う…違うんだ…俺は、お前が思ってくれてる程、強くなんてない…何も守れていない…!お前を…俺はお前を死なせた…助けられなかった…!?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『どうして…殴らない?』
フォンがこの世界に来た本当の理由を知った時も…俺はあいつを殴れなかった…殴る資格がないと思った…!
「殴れないさ…殴れないよ……なんで、もっと早く言ってくれなかったんだ?」
『…えっ』
「俺たちは仲間だろう?友達だろう?!なんで、なんでこんな大事なことを俺に黙ってたんだよ!?そんな大事なことを背負ってたお前を……殴れるわけがないだろうが!?」
『っ?!』
怒りもしたけど…それはフォンがまたしても、自分の事を顧みずに俺と共にこの世界に来てくれたことに関してだった…その理由さえも隠し通し、今までアンダーワールドに一緒に居てくれたことへの感謝と共に湧き上がった自身に向け手への感情だった。
まただ…また俺は…フォンに何かを背負わせてしまっている…フォンにだって、自分のことや、ユウキのこと…他にも優先したいこと、やらなけれならないことがあった筈なのに…!
そして……俺は再びその光景を目にすることになった。
『お前が…お前如きが私の計画の全てを壊すなんて…私は認めない!お前が私を…この世界を…ありとあらゆるものを支配するなんて……認めるものかぁぁぁぁぁ!?』
『がぁぁぁ……ごほっ!?』
動けなくなったフォンをアドミニストレータが痛めつけていく…このままじゃフォンが危ないというのに、俺の体は言うことを聞いてくれない…ユージオやアリスは動けているというのに…!?
(動け…動けよ…このままじゃ、フォンが…!?)
『消えなさい…!イレギュラーな邪魔者がぁぁぁぁぁ!?』
その光景が…ヒースクリフに刺された光景とダブり、全く動くことができないまま…
『…ぐあぁ……ごふっ……ぁぁ…』
「あぁぁ…フォ、ン…?」
…アドミニストレータの剣が、フォンを斬り裂いた…
背中から倒れたフォンは……もう動かない。
俺の呼び掛けに、もう応えてくれない。
身体から流れ出た血が俺の膝元にまで浸潤し、光を失った目を…フォンの顔を見た俺は…その光景を見ていることができず、目を閉じた…!?
「ううああああぁぁぁ…?!ああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!」
俺は何度あいつを苦しめた!?何度あいつを助けられなかった?!
〈痛いだと……?お前が、アスナやフォンに与えた苦しみは…こんなもんじゃない!!!〉
何が『黒の剣士』だぁ!?何が『英雄』だぁ!?
大切な友の力にもなれない俺が…そう呼ばれていたのに、何もできなかった俺が…そんな名を背負っちゃいけなかったんだ…!?
〈これが終わりじゃない。終わらせる力はお前たちにはない。すぐにお前達も気付かされる〉
ALO事件も死銃事件も…アドミニストレータとの闘いも…何かが一つでも違っていたら、取り返しのつかないことになっていた…あいつがいなかったら…俺はもっと多くのものを失っていたかもしれない…!?
ディアベルが死ななかったのも、
サチを助けられたのも、
ヒースクリフとの決着で勝てたのも、
須郷の野望を阻止できたのも、
デス・ガンたちの企みを止めることもできたのも、
…フォンがいなかったら…俺だけじゃどうにもならなかったかもしれない…
もしフォンがいなかったら、
ユージオやアリスを…アドミニストレータに殺されていたかもしれない…
カーディナルを救うこともできなかった…
なのに…なのに…!?
『…キリト…悪い。後は…任せた、ぜ…!』
あの光景が…あのフォンの最期の言葉が何度も頭に蘇る…!?
アドミニストレータに、フォンが殺されそうになった時も…もし体が動いていなかったら…俺はまたあいつを殺したことになっていた…
〈もう嫌だ…もうこれ以上、何も見たくない?!何も聞きたくない?!思い出したくない…この先を知りたくない!?〉
俺は何度あいつを苦しめるんだ…何度あいつに支えてもらわないといけないんだ…あいつがいなかったら、俺は一体何を救えていたっていうんだ…?!
〈あああぁぁぁぁぁ?!俺があの時…あの時、本当は俺が死ぬべきだったんだぁ!?俺が背負うべきだったんだ…!それを、フォンに全部背負わせて…関係なかったあいつを巻き込んで…?!〉
いなくなるべきだったのは…俺であるべきだったのだ。
あいつがいてくれるなら…俺が代わりに死ぬべきだった筈なんだ…!
あいつがいたから、救えた命があったんだ…だから…もう俺は…!
(…この命をここで断つべきだ…)
その考えが、思いが、頭を過ぎり…俺は自分の胸を引き裂く…!
肉が割け、血が飛び散り、骨を砕き…俺は自分の心臓を握りつぶそうと、その手をぽっかりと空いた胸に突っ込もうとして…
『キリト君』『キリト』『お兄ちゃん』
「っ……!」
俺の名を呼ぶ声が聞こえて…手が止まった。顔を上げた先には…明日奈、詩乃、スグの姿があった。
誰もが、悲しそうな…いや、俺を心配してくれている表情をしていた。
三人が俺をどれだけ想ってくれているか分かる…伝わってくる…でも…
〈でも…俺にこの赦しを受け取る資格は…ないんだ……皆のその想いを…受け止めることはできないんだ…〉
「ゴメンよ、アスナ……ごめん、シノン……ごめんな、スグ………俺はもう立てない…もう闘えない……みんなの傍にいられないんだ…いちゃいけないんだ…ゴメン……」
謝罪の言葉しか出てこない…もう無理だと、限界だと…俺は止めていた手を動かし、心臓を握りつぶそうと…
ガシッ!!
「っ……えっ…?」
その手が二つの別の手で再び止められた…一体誰がと思った時、手の持ち主の声が聞こえてきた。
「「キリト…」」
「フォン…ユージオ…」
困った様に…でも、優しく笑う二人のその姿に、俺はそう言葉を漏らすことしかできなかった。
「どうして…止めるんだ…俺はもう…」
「止めるに決まってるだろう?俺はお前を死なせたくないからな」
「…俺は、弱い…誰も助けられていないんだ…みんなといる資格もない…!」
「そんなことはないよ、キリト…みんなが君を待ってる」
フォンとユージオのその優しさが…俺を苦しめる…!
その優しささえも…俺は受け取る権利はないというのに…なのに、フォンとユージオは、俺の腕を放そうとしない。
「もういいんだ……俺は…二人みたいに強くない…一人で立ち上がれない…!」
「…それは俺たちもだよ」
「えっ…?」
フォンの言葉が…自分も同じだと言うその言葉に、俺は言葉を失った。
「俺だって…お前が思ってる程に強くない…けど、お前がいつも隣に…背中を預けることができたから、闘ってこられたんだ。
SAOでも、ALOでも、GGOでも…このアンダーワールドでも…お前がいたから、俺も立ち上がれた…お前がいてくれたから、あそこまで闘えたんだ。
お前がいなきゃ……俺も立てなかった」
「僕だってそうだよ…キリト、君たちがあそこから…諦めることを当然としていたあの日々から連れ出してくれたから…僕は強くなれた。
君たちに追い付きたいと思っていたから、成長できた…その背中に追い付いて、隣に並び立ちたいと思っていたから…ここまで頑張ってこれたんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「今だってそうだ…お前が必ず帰ってきてくれると信じてるから…俺もアスナたちも闘っていられるんだ。お前のことが大事だから…みんなが来てくれたんだ」
「君を必要としてくれている人が沢山いるよ、キリト…この世界でも、別の世界でも…君のことを待っているよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「もし…この先一生別れることになっても…どんなに辛いことや悲しいことが沢山あっても…楽しかったことも嬉しかったことも…全部ひっくるめて、その想いや記憶は…俺たちのここに…心に残るだろう?」
「だから…僕たちは忘れちゃいけないんだよ。それを覚えている限り…僕たちの想いは永遠にここで繋がってるんだから」
「っ……!?」
「そうだよ、キリト君…私たちとキリト君はいつだって繋がってる」
「例え、どんなに遠く離れていても…例え、いつか別れがやってきても…」
「思い出と気持ちは永遠に繋がり続ける…そうでしょ?」
「み、んな…!……いいのかな…俺はもう一度歩き始めても…また、みんなの隣に立っていても……この先へと進み続けて……本当にいいのかな…?」
「…当然だ。一人で立てないのなら、俺たちが手を貸す。お前が折れそうな時は、俺たちが支える」
「君がいない世界を…みんなは望んでいないよ、キリト。だから…君のことを待っている沢山の人たちのためにも…どこまでも一緒に行こう…だから…」
「立ってくれ……俺の親友……俺の
「さぁ、立って…僕の親友……僕の
「…ああ…立つよ……立つさ。お前たちがそう言ってくれるなら……俺は…!」
フォン、ユージオ、アスナ、リーファ、シノン…みんなの手に捕まった俺の視界に光が差す。その光を受け止めた俺は…
「ぐぅぅぅぅぅぅ?!」
回復を後回しにしていたことで、反動の限界を迎え、視界が完全に霞んだフォン…防御が疎かになったその隙を狙われ、PoHの友切包丁の鮮烈な一撃を受け止め切れず、宙へと吹き飛ばされる。
ダメージの許容量を超えてしまい、全界召腕『ギアサモンガー』の効果が切れてしまったことで分身たちも消え、元に戻った月影剣をも手放してしまった。
さらに、分身たちがなんとか抑え込んでいた赤鎧たちが、今度こそアスナたちに襲い掛かろうとしているのが見えているが、地面に落下したフォンもすぐに動けことができず…
「…フォン!?」
「っ…?!」
それに気を取られたフォンが、ユウキの警告の言葉にすぐさま視線を戻すが…既にその凶手は迫っており…
「さぁぁ!その悲鳴を聞かせてもらおうかァァ!夢幻の戦鬼ィィィィ!?」
(やられる…!?)
上空から斬り掛かろうとしてPoHの姿を捉えつつも、まともに動かすことのできない状態で…その刃が迫ってくることを見ていることしかできず…フォンは思わず目を閉じた。
「ぬぅ…!?」「……えっ」
だが、フォンの予想に反し、驚きの声がPoHから漏れるのが聞こえた。どういうことかと、フォンが目を開いたその先には…
自身に振り降ろされそうになっていた友切包丁が…黄金のオーラによって防がれている光景だった。
そして、それはフォンだけではなかった…アスナたちにも迫っていた赤鎧たちだが、その一歩手前で展開された黄金のオーラに次々と吹き飛ばされるということが起こっていたのだ。
「…これは…心意…?でも、一体……っ!?」
こんな強力な心意を使える者がいただろうかと思わず考えたフォンだが…まさかと思い、その視線を後方にいるアスナたちの方へと向けた。
そして……その姿を目にし、目を見開いた。
「…っ……キリト、君…?」
いつの間にか立ち上がり…ゆっくりと、だが、しっかりと前へと進むその姿に、アスナは言葉を漏らしていた。
そして…それに応えるかのように…自身の負の心意で修復不可能にしていた、失っていた右腕を心意で上書きし直し、振るうことで堰き止めていたPoHと赤鎧たちを吹き飛ばした。
「(…今だ…!)来い、月影剣!!」
心意で敵が吹き飛ばされたことで、チャンスだと思ったフォンは吹き飛ばされていた月影剣を心意によって手元へと呼び寄せた!
全界召腕『ギアサモンガー』が解除されたことで反動がなくなり、黒暁の効果を回復へとすぐに回し、同時に月影剣で武装変換術を発動させる。
「…古の大樹よ!全ての生命を呑み込み、自身の糧にせよ!!リリース・リコレクション!!!」
武装変換術で呼び出した…古代樹を思わせるような重樹槍の記憶開放術を発動させたフォン。術の発動と共に、重樹槍が地面に沈み…次の瞬間!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
『『『『『『『『!?!?!?!?!?』』』』』』』
地面から大量の根が出現し、赤鎧たちを次々と巻き取っていく…そして、拘束した赤鎧たちを地面へと引き釣り込んでいく!
(倒すことができないのなら…!全部動けないようにしちまえば、無限に復活しようと関係ないだろう!?)
古稀樹槍『狭界』…全てを吸い、全ての生き物に恵みを分け与える古代樹の根が、赤鎧たちを一つ残らず地面へと引き釣り込み、その養分を半永久的に吸い続ける。
その恩恵と黒暁の効果も相まって、すぐに立ち上がれるようになるまで回復したフォンは…隣に並び立った彼へと声を掛けた。
「…ったく…こんな時にまで寝過ぎじゃないのか?」
「悪い、悪い…でも、ありがとな」
「礼を言うのはこっちだよ……キリト」
夢幻の戦鬼と黒の剣士…全てを終わらせられる二人が、その背中を合わせ、遂に立ち並んだ。
「…おかえり…キリト君」
「ただいま……アスナ」
帰ってきたキリトに…アスナは安堵の笑みと共にそう言葉を送った。
人が創り、始めてしまった戦いを…新しく生まれた命たちを守るべく…全てを終わらせるべくための闘いが幕を開けようとしていた!
武器解説
・全界召腕『ギアサモンガー』
手甲・魔法武具のカテゴリーに属する武器の一つ。
白・赤・黄・桃・青の五色のギア五枚と、金色の五枚のギア…計10枚のギアが組み合わさったガントレット。能力を発動させるためにギアを回すと、軽快な音楽が流れるが、それに見合わない強力な力を秘めている。
『全力ゼンカイ!』…その言葉と共に、あらゆる平行世界の力を悪用する組織と戦う、一人の人間と4人の別世界の住人たちが使う正義の力を集約させた武器。
武装完全支配術では、武装変換術で呼び出した武器を装備した使用者の分身を最大4体まで召喚することができる。分身の能力自体もオリジナルと変わらず、武装完全支配術・記憶開放術、更には翼衣の力まで使用することができる。
しかし、強力な力を持つ分、デメリットもそれ相応に大きく、分身一体に対して天命(HP)の最大値20%を消費するだけでなく、分身が受けるダメージや疲労、武器の反動は全てリアルタイムでオリジナルに還元されてしまう。そのため、ただただ分身を無造作にふやしてしまうと、オリジナルが動けなくなってしまうという弱点が存在する(但し、他の武器と併用することで多少は軽減させることは一応可能)。
フォンがS.O.状態になったことで呼び出せるようになった最上位武器の一つ
モチーフ(読み込んだ世界の記憶)は、スーパー戦隊そのものをテーマにしたスーパー戦隊『機界戦隊ゼンカイジャー』。
作者はゼンカイジャーにドはまりしております(そして、まさかテーマが被るとは思ってもみなかったです(苦笑))
・古稀樹槍『狭界』
槍のカテゴリーに属する武器の一つ。
腕を覆い隠すかのような、古代樹を思わせるかのような外観の重槍。槍でありながら、生きているような見た目で、破損したとしても時間が経てば修復されている。
10に分けられた小国たちの中央にそびえる強大な樹を模した武器。
武装完全支配術では、使用者をウルトラアーマー(スーパーアーマーに状態異常無効)状態にし、防御力を攻撃力に加えた強力な突撃を放つ大規模攻撃。そして、記憶開放術は、重槍を古代樹に見立て、地面に沈めた槍から大量の根を放出し、地面から敵を絡め捕り、地中に引き込む大技。その後、根でじわりと敵の天命などを吸い取っていき、使用者に還元する。また、この術は武器を他の物に変えようと、使用者がその場にいる限りは持続する。
モチーフ(読み込んだ世界の記憶)は、世界樹の恩恵と破壊をそれぞれ受け入れ、10の種族に分けられた国における運命に導かれし壮大な冒険譚…という設定のオリジナル武器。
遂にキリトも復活です!書いてて、アニメを見返し過ぎたせいで、何回も泣きそうになるという…(苦笑)
それでは、解説を…まずは前回のお話から。
映現世の剣の弱点…それは、使用者のフォンがあくまでも器用であり、マルチタスクに長けている人間でしかないということです。
武装変換術・記憶開放術と共に言えることなのですが、両者ともフォンの意志がメインとなって発動する術でございます。
前者はフォンがイメージしたもの・求めた能力を元に、世界を検索し、武器を反映させます。つまり、相手の能力に対処するという意味では優秀なのですが、後手に回りやすいという弱点もあるわけです。更には、呼び出してみるまでデメリットも分からないため、ものによってはフォンを窮地に陥らせてしまう可能性もあるわけです。
後者も、フォンが「対象」をどのように、「斬り方」をどういう風にするかを決めなければならないため、相手の状態・能力を把握できていない場合、スカぶり・無駄に終わる可能性があるわけです。(例えば、前話の最後の一撃も、「赤鎧を破壊する」ではなく、「PoHの心意を無効化する」とすれば、倒すこともできたわけです)。
これは、フォンの過去の話でも出た、『選択を間違えてはいけない』という意識が強く武器に反映されてしまっていたから生まれたある種の弊害でもあったわけです。
そして、まさかのPoHさん強化…!
フォンへの怒り・嫉妬・怨恨が『扇動の心意』を深化(負の心意関係は、その感情を深めるという意味でこちらの表記が合ってるか)させ、『操生の心意』という、友切包丁を媒介に、吸った命を空っぽの器に与えることで、与える命が尽きない限り、死なない兵隊を操ることができるという…まさかのチート能力でございます。
まぁ、弱点はフォンが言っていたように、「倒されなければ、能力が発動しないため、動けないようにしてしまえば無力化できる」わけなんですが…
それでは、本題…キリトが負った心の傷に関して…
それは、フォンという戦友の存在そのものでした。
SAOにて、その背中を預け、信頼して闘ってきた二人。
しかし、キリトはその目の前で、フォンが倒されてしまったのを目撃してしまっていたわけで…更には、フォン自身の秘密をも知ってしまったことで、その後悔は尚更深くなってしまっていたわけです。
それが、アドミニストレータ戦でまたしても再現されそうになり、蓄積したものが爆発した今回の一件でキリトのフラクトライトを傷付けてしまったわけでした。
それを明確にするために、フォンの出番を大きくさせていたわけです…フォンがキリトや他の面々の為にしてきたことが、逆にキリトを追い詰めてしまったという形を作り出したわけで…(一応、弁解しておきますけど、作者はキリトが嫌いではないですからね!?)
だからこそ、キリト復活のためにキーパーソンとなるのは、アスナ・リーファ・シノン・ユージオに加え…フォンも必要だったわけです。(なので、フォン復活を優先させたのは、シナリオ上の制約もあったというわけです(笑))
意外というか、薄々気づかれていた方も多かったのではないしょうか?(というよりも、フォンの理由の方が明らかに難易度高すぎ感もあったわけですが…(苦笑))
余談ですが、本作だとコペル君はリトルネペントにはやられてなかったです。その後はどうなったかは知りません(無責任!?)
ようやくフォン、そして、キリトに関するフラグ回収は大体完了しました!
そういうわけで、次回から一気に物語は最終決戦を迎えます!
まずはフォンの出番…キリトのおかげで窮地を脱し、ユウキたちを守るべく、最後の力を振り絞ります!(つまり、色々な武器が出て、作者がまた死に掛かるという訳でもあるのですが…(苦笑))
それでは、また!
P.S.
30分後に、ちょっとしたお知らせを活動報告にて上げますので、ご覧頂ければと思います。(twitterにもリンク貼りますので、そちらから飛んで頂ければ楽かと思います)
ミトを本作に登場させるとしたら、その後はどういう感じで登場してほしいでしょうか?
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半レギュラー化(物語にもがっつり絡む)
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スポット参戦(閑話に出てくるレベル)
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まさかのサブヒロインポジ