大変お待たせ致しました!本年最後の更新!
さぁ、反撃の狼煙を上げる時…アリシゼーションにおける夢幻の戦鬼、最後の闘いとなります!!
その勝敗と行く末はどうなるのか…その目で見届けて頂ければと思います!
それでは、どうぞ!
「…っ!(ぐっ…ここは、どこだ…?)」
意識がぼんやりしていたが、頭に酷い痛みを覚えた途端、徐々に意識がはっきりしてきた。重く、鈍い感じがする体を動かして周囲を見渡すと、先程までいたはずのダークテリトリーの土地にいるのだと理解できた。
(…そうだ。さっきまで俺はPoHと闘っていたんだ…!?奴はどこに…意識を失ってから、どれぐらい経った!?)
朧気になっていた記憶が蘇り、未だに痛みを覚える頭を無理やり働かせ、赤い霧がかかっている周囲に目を凝らそうとした時、
「さぁ!最後はてめぇだぁ!?」
「っ…!?」
さっきまで嫌という程聞いていた奴の声が突如として耳に飛び込み、声のした方向へとすぐさま視線を向ける。
そこには、ユウキを首を左手で掴み、友切包丁を振り下ろそうとしている光景が、いきなり表れたのだ。
突然のことではあったが、それでも、奴の凶行を止めなくてはと、すぐさま駆け出し、凶刃を振り下ろそうとする前に、天日剣で奴を斬ろうと…
『…クハハハ…!』
「なに…?!」
無駄だと言わんばかりに、笑い声を残したまま、斬撃を受けた奴の体は赤い霧となって霧散してしまったのだ。
まさかの出来事に俺も反応することができず…しかし、奴が消えたことで、拘束されていたユウキの身体も自由になったことで地面に堕とされたわけで…
「ユウキ、無事「…どうして?」…えっ…」
安否を尋ねようとした瞬間、彼女が零したその言葉に、俺の声が遮られた。
悲しく、低く…俺を責めるようにも聞こえる彼女のその言葉の意味が分からず、困惑する…だが、ユウキはその言葉の先を続けるように、堰を切ったように叫び始めた…!
「どうして助けてくれなかったの…?!アスナも、アリスも…みんなをなんで見捨てたのぉ!?」
「な、なにを……っ…!?」
思わず否定しようとした時…赤い霧が薄まり、俺はようやく周辺に転がるそれらに気付いた。
地面を塗り尽くす大量の液体…それが血で、そして、それらが地面を覆い尽くすほどに転がっている死体から流れ出ていることは明確で…
アスナにリズ、シリカ、クライン、エギルさん…カーディナルやアリス、ユージオに、マーベル、ティーゼ、ロニエ、リーナ先輩、ゴルゴロッソ先輩……俺の知る人だけでなく、見渡す限りの死体がその場を埋め尽くして…!?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「フォンなら…!力を持っているフォンなら、みんなを救えたはずでしょう!?みんなを助けないといけないはずでしょう?!あの場にいたくせに、なんでみんなを見殺しにしたの…?!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「…フォンは…フォンは、人殺しの偽善者だよ…!?」
「…っ…?!」
その言葉が…分かっていたも、放たれた言葉に思わず息を呑んでしまう。
そして、その一瞬を突かれ…奴は俺に迫り、
「……ぅぅう!?」
「…死んでよ……誰も助けれなかったのなら、死んでみんなに詫びてよ…!」
腹部に熱さと激痛が走り、呪詛が耳に聞こえてくる。
ポタ…ポタ…と、地面へと垂れるものと、ナイフを伝って奴の手を濡らす血が俺の腹部から流れ出ていく。
だが、俺の様子などお構いなしに、目の前の人物は刺したナイフを更に深く突き刺そうと力を込めていた。
「分かったでしょ?フォンはいたって意味がないんだよ…だから、消えてよ。早く死んでよ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
頭で分かっていても…その声と姿でそう言われてしまっては、流石に堪えるものがあった。殺意と憎しみと怒りを一切隠そうとしないその態度に…俺は持っていた天日剣を落としてしまった。
地面に突き刺さった天日剣を見て、奴は歪んだ笑みを浮かべた…が、
「…確かにそうかもな…」
「………?」
俺がぽつりと零した言葉に、奴は眉を顰めていた。
この地獄図は…もしかしたらあったかもしれない未来なのかもしれない。
いや、もしかすれば、こうなる未来へと辿り着くことすらなかったのかもしれない。
何かが一つでも違っていたら、こうなっていたのかと思うと…絶望しかないと考えてしまうのも無理のない話だったかもしれない。
そもそも…全てを救えるかもしれないなんて、そんなアニメや小説みたいな上手い話があるわけがない。
SAOでも、命を散らしていった者はいた…その中には、俺たち自身が手に掛けた者だっていた。
このアンダーワールドでの戦争だって…殺し、殺され…死ななくていい人たちの命だって必ずあった筈だ。
…でも…だからこそ…この光景がもしかしたらあったかもしれないと…様々な世界の可能性を見てきたからこそ…俺はこの未来へと足を進めるわけにはいかないのだ…!
「…!ぬうううぅぅぅ!!!」
「…なぁ…!?」
ナイフごと奴の腕を左手で掴み、空いた右拳を握り占める…!
「ああ、そうだよ…俺はそこまで強い人間じゃない。
できることには限りがあるし、助けられなかった人だってあの世界じゃ何人もいた…いや、元の世界にいた時から知らないうちに誰かを傷つけていたことだってあったさ。
でも…!間違ったから…その罪を自覚してるからこそ、俺はここで止まるわけにはいかない!独善だっていい!?偽善と呼ばれようと構わない!?
それこそが俺なんだ!?全員が受け入れるくれるわけがない…それでも、俺を想ってくれる人が、信じてくれる人たちがいる限り、もう俺は折れない!
折れない限り、俺は自分の生き方を貫く!俺が持てる力で…みんなと笑って、泣いて、時には怒ったりして…みんなと歩んでいく未来を選んでみせる!
お前が…お前がどれだけ破壊や殺戮を繰り広げようと…!お前が、何をどのように壊そうとしても…!この未来だけは実現させない!?壊さない!!…そして…!?」
必死に俺の拘束から逃れようとするも、奴を掴んだ俺の腕はビクともしない。そして、拳を握り占めた右腕を大きく振りかぶった俺の…喪失していた左目に、再び銀色の光が灯り、歯を喰いしばって、持てる力を込めた拳を解き放った!
「お前が…!お前が…!!」
【だから、お願い…フォンが一人で立てないのなら、ボクが支えるから…!受け止められないぐらい辛いことがあったら、一緒に受け止めるから…!フォンがしてくれたように、今度はボクがフォンを守るから…!】
「お前がぁ…!?俺の愛する人の姿をして、ふざけたことを言うなぁぁぁぁ!?!」
引き絞られた弓の如く、解放された腕は一切の躊躇いもなく、ユウキの…いや、ユウキの姿をした奴の顔面に減り込んだ!まともに喰らった奴は吹き飛び、地面にその身を転がした。
「…なぜだ…!?なぜ折れない!?お前の仲間は全員死んだ!お前は何も守れなかったとは考えもしないのか?!」
「…残念だったな…悪いが、絶望なんて嫌というほどもうしてきたんだよ。何も分かってないお前はそうやって、知った気になって、勝手に絶望を押し付けているだけだ!」
ユウキの姿をしたそいつは先程までの模倣を解き、本性を露わにした。
俺の知っているユウキが…他人を思いやれる彼女があんなことを言う訳がないと分かってはいたが、それでも…こいつは最もやってはいけないことをした。
俺を絶望させたのかだろう…心底俺を苦しめたのだろう…それでも…こいつは、俺の汚してはいけない…逆鱗に触れた!?
「言った筈だぞ…!お前の思う通りはさせるものかと!俺にその力はないとしても…!今、俺の手にはそれができるだけの可能性の欠片がある!」
再び天日剣を手に取った俺の闘気に反応し、映現世の翼衣が発現する…!そして、俺の想いと心意によって、武装変換術で呼び起こされた武器と翼衣が凄まじい力が放出されていく。
「お前に見せてやる!人と人が紡ぐ、絆の力をぉ!!」
武器から放たれる力が負の空間を侵食するかのように上書きしていく。赤き霧に覆われた空と血に濡れた大地が、青き空と白き大地へと変化していく。
「ぐうううぅぅ…!?ぬおおおおおおおおおぉぉ?!」
それは、奴も例外ではなく…模倣していたユウキの姿が崩れ…PoHとしての本来の姿を露わにしたものの、その姿自体ももう既に消えようとしていた。
「俺の…俺の心から出ていけぇ!リリース・リコレクション!!!」
式句と共に、真なる力を解き放ったその武器は、残っていた闇をPoHごと全て消し去り…俺の視界はその光に遮られて…!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「アハハハハハ!!これで終わりかぁ、夢幻の戦鬼ぃ!?結局はてめぇも、ただのガキだったわけだぁ!?どうだぁぁ!?これが俺の力!この力を持っている俺こそが、黒の剣士の隣にいるべき男なんだよぉぉぉ!!」
負の心意に呑まれ、その場に膝を突き、沈黙しているフォン。
その姿がお似合いだと…自分が望んでいた姿だと…喜びを狂気と共に隠そうとしないPoH。そして、フォンを行動不能にすべく、徐々にその距離を詰めようと歩みを進めていた。
「…ううぅぅ…!…フォ、ン…?!」
フォンが危ないと分かり、なんとかしなければともがくユウキ…だが、心意に呑まれまいと抵抗するのが精一杯の彼女は身体を動かすこともできず、手を伸ばすことしかできないでいた。
(フォン…!お願い、動いてよ!?フォンが…フォンが!?)
助けたいのに動いてくれない自分の身体に…視線の先にいる想い人の元へと駆けつけられない自分の不甲斐なさに、零れる涙を流すように目を閉じたユウキ…その時だった。
(大丈夫よ、ユウキ…)
「…えっ!?」
幻聴かと思えた…しかし、先程もリッパーに追い詰められた自分を鼓舞してくれた姉の声が再び聞こえたことに、ユウキは思わず伏せてしまっていた顔を上げ、目を開けてしまった。その視線の先には、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ほ~ら…心だけじゃなく、体の方も眠らせてやるよぉ!それで、お前の目の前で、お前が守ろうとしたもの全部を壊し尽くした上で、お前を殺してやるよぉぉ!だ~か~ら~…さっさと終わっちまえよぉぉぉぉ!!」
一切動く気配のないフォンに…あらんかぎりの呪詛をぶちまけ、友切包丁を振り下ろそうとしているPoHの姿だった。
そして、目を閉じる間もなく、ユウキの視線の先でその凶刃が振り下ろされて…!?
「えっ…?」「なぁ…?!」
ユウキとPoH…両者から驚きの声が漏れるも、その意味は全く異なるものであった。ユウキは自分が見ている光景が、想像したものと違っていたことに驚き、PoHは振り下ろした刃が肉を斬り裂いた感触を覚えたにも関わらず、それ以上刃を押し進めることができないことに驚いてしまったのだ。
「…悲しいことが…」
「…!?」
「どんなに悲しいことがあっても…どれだけ辛い現実が待っていても…人は生きてる限り、前に進んでいく…時には見たくないことだって、知りたくない事実だって、受け入れたくない現実だって沢山あるかもしれない…!
その事実を知って折れることもあるだろう…その現実から目を背けることだってあるかもしれない……人は一人じゃ生きられない…だから、手を取り合うんだ。だから、人と絆を紡ごうとするんだ…!」
負の心意に呑まれ、意識をなくした筈なのに…聞こえる筈のない声が聞こえ、PoHの表情が歪む。一方で、左腕に食い込んだ友切包丁の刃を、自身の心意でそれ以上食い込むことを防ぎ、そして、徐々に押し返していきながら、フォンは言葉を放った。
「俺もキリトも…そうやって闘ってきたんだ!それは決して弱さなんかじゃない!自分の弱さを見せる勇気…強い心があるからこそできるんだ!お前みたいに…人のことを道具としか思えない、そんな強さを持っていないお前にだけは……負けてたまるかぁぁぁ!?」
「ぬおぉぉぉ!?」
その言葉と共に、大きく振るわれた左腕によって、魔剣ごとPoHは後ろに下がることを余儀なくされた。そして、既に姿を変えていた天日剣だったもの…武装変換術で呼び出した武器を抜刀することなく、フォンは天へと掲げながら式句を叫ぶ!
「堕神を沈めし神刀よ!その霊力と心意を解き放ち、悪意を焼き払え!…リリース・リコレクション!!!」
自身の身体を包む負の心意に臆することなく、突き上げた武器…神霊刀にスパークらしき何が走ったと思った次の瞬間、それは顕現した!
『ウオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォンン!!』
フォンに纏わりついていた負の心意を焼き焦がし、その背後に顕現した獣は雄たけびを上げ、周囲の空間を揺らすかの如く音量を発する。
記憶開放術によって呼び起こされたその獣は…外見からして、明らかに普通の獣ではなかった。
全高は3メートルほどで、緑白の光をその剛毛に宿し、全身に時折霊力らしき流れがスパークするように流れ、光と見間違う程の鋭い眼光を宿した目に、六つの尻尾が風が吹いていないにも関わらずゆらりと規則正しく揺れていた。
『ウウウゥゥ!オオオオオォォォォォン!!』
召喚されてすぐ、周囲に漂う負の心意が気に入らないのか、唸った直後に獣…神狼が再び咆哮を放つ。すると…!
「…!な、なんだ……!?空が…あの黒雲はどこから出てきやがった!?」
突如として、ダークテリトリーの赤い空に黒雲が、フォンたちのいる一帯に出現し、いきなりの出来事にPoHもどういうことだと困惑していた。
しかし、そのことを説明してくれる者はおらず、神狼の六つの尻尾から霊力が空へと向かって放たれ、雲に直撃したそれらは、更に強力なものとなって地上に六つの雷となって墜ちた!
『『『『『『ウオオオォォォォン!!!』』』』』』
青・緑・赤・白・黒・藍…それぞれ色の異なる小さな神狼が、霊雷が墜ちた場所に生まれ、咆哮と共にすぐさま周囲に向かって駆け出した!
バラバラに、それぞれが思うがままに走り回る小神狼たちだが、彼らが通った場所は噛み砕かれたかのように負の心意が焼き焦がされていくのだ。
それに気付き、そうはさせるかとPoHは友切包丁を振り回し、負の心意を増加させようとするも…小神狼たちが心意を焼き焦がしていく量とスピードの方が圧倒的に早く…粗方、心意を消滅させるところで、次に小神狼たちは争っている者たちへと突っ込み…!
「っ…どうしたんだ、これ…?」
「……!俺…何をしてたんだ…?」
「あの狼たちが…助けてくれたのか…?」
「…おい!?空が……一体何が起こってるんだ…?!」
小神狼たちは戦士たちの身体を通り抜けるだけだったが…それと同時にその身と心を支配していた負の心意を消滅させたのだ!
負の心意の影響がなくなった者たちから正気に戻っていくものの、記憶があった直前まで見ていた空に、いつのまにか黒雲が現れていることに驚いていく者が増えていくばかりだった。
そして、ユウキたちを含め、全員を負の心意から解き放った小神狼たちは、ユウキ達一同を取り囲む様に一定間隔で円状に並んだかと思えば…!
『『『『『『オオオオオオオオォォォォォォォンンン!!!』』』』』』
雄たけびと共に六つの身体が光と変わり、ユウキたちを霊光のドームが包んだ。そのドームは小神狼たちの力と同じく、再度戦士たちを侵食しようと迫ってきていた負の心意が振れた瞬間、焼き尽くしていた!
「ユウキ、これって……フォンがやったの?」
「…多分…」
「でも、こんな力をどうやって……さっきから、持ってる武器が次々と姿を変えてますけど…フォンさんのあの武器って…?」
「ボクも詳しいことはそこまで…」
ようやくまともに話せるようになったリズとシリカからの疑問に、ユウキも曖昧に答えることしかできずにいた。
ドームの中にいる全員の視線が、負の心意が渦巻く中で、それを焼き尽くすことで無力化し、神狼を背中に連れて立ち尽くすフォンに集まっていた。
「あやつは…あの武器のことを世界を映す剣…映現世の剣と呼んでおった。あやつの思うがままに刃に世界を映すのだと…」
「映現世の剣……世界を映す剣……っ?!」
唯一、映現世の剣が真価を発揮した場面を目撃していたカーディナルが零した言葉に、ユウキたちは一瞬目線を移し、再び視線をフォンに戻した…その時、ユウキだけが思わず息を呑んだ!
『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』』
(人…?一体いつの間に…?)
フォンの後ろ…神狼のすぐ両脇に立っている二人の人物がいたのだ。目を放した一瞬の隙に突如として現れたその人物たちに、どういうことかとユウキは目を丸くしていた。だが、驚くのはまだ早かった。
(…っ!?他の皆には見えてないの…!ボクだけが見えてるの…?)
そう…その人物たちは、ユウキにしか見えていなかったのだ。ますますどういうことかと困惑するユウキだったが、いきなりその人物たちが振り返ったのだ。
『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』』
顔は見えない…しかし、自分たちとそう年の変わらない少年と少女だと分かった。少年の方は和装のような…侍らしき軽装で、どことなくキリトに似ているような感じがした。一方、女性の方は似たような和風の恰好だったが、翡翠の髪が特徴的な小柄な少女だった。
けど、表情が見えていないのにも関わらず、笑みを浮かべたその姿に…その様子を見ていたユウキはなんとなくだが理解してしまった。
(あれは…フォンが持ってる武器の記憶なんだ…!それで、あの人たちはあの武器の本来の持ち主たちで…!)
『そう…あの子は折れてないわ。貴女と同じ…迷いながらも、必死に答えを見つけようと闘っている。だから……彼を信じなさい。貴女が好きになった彼の力を…!』
世界を映し出す剣…もし本当にそうだというのなら、自分が見ているのは、あの武器から漏れ出した記憶の欠片なのだと…そして、フォンのことを信じろという姉の声に、ユウキはフォンの闘いを最後まで見届けることを覚悟を決めた。
「……来い!!」
『…!オオオオオオオオォォォン!!!!』
ようやく刀を鞘から抜き、刀身を頭上へと勢いよく掲げたフォンの言葉に、後ろで鎮座していた神狼が一番の咆哮を上げ、空へと跳躍した!高速で宙を掛け、黒雲の中へと潜り込んでしまった。
…だが、次の瞬間!轟音と共にフォンに特大の霊雷が降り注ぎ、その身が見えなくなる程の光が彼を包み込んだ!
『さぁ…君の守りたいもののために…!』
『さぁ、お主の守りたいもののために…!』
…声が聞こえた…
誰のものかは分からなかった…聞いたことのない声だったが、俺はその声の主のことを知っていた…いや、正確には武器を通して、彼らの世界の記憶を見て知っていた。
だからだろう…その声に自然と頷きながら、俺は纏っていた霊光を解き放つように…掲げていた刀を、光を解き放つ様に勢いよく振るった!
「っ…!!!」
「…!?ぐおおおぉぉ!?」
纏っていた霊雷光は瞬時に周囲に拡散するかのように散り、遅れた衝撃波が周囲一帯を大きく揺らした。その余波を受け、PoHが少しばかり後退りしたが、体勢を立て直した奴は、信じられないものを見るような視線を俺に向けていた。
霊装心刀『雷ノ焔』…その力を全て解き放ったことで、刀身には絶えず白緑青の霊光が宿っており、俺も不思議な感覚を味わっていた。言葉にするのならば…今まで感じ取れていなかったものを感じている…そんな感覚が俺の体を駆け巡っていた。
変化はそれだけではない…翼衣までもが、霊光のスパークが絶えず走り続ける専用装備『霊装心の翼衣』へと変化していた。まるで、儀式の際に着るような和装の…霊力でできた衣と表現すべきそれの力をもキチンと理解し、鞘を腰に差してから、俺はPoHの方へと視線を上げた。
「…てめぇ…今度はどんな手品を仕掛けやがった…?!」
「それを素直に答えてやるわけがないだろう…?それに、答えたところでどうしようもないことには変わりがないんじゃないか?」
全てを一気にひっくり返されたことに、怒りよりも驚きが勝ったらしい…目の前でおこったことが未だに受け入れられていない奴の言葉に、あっさりと応える。
そっちが心意でここにいる人たちを呑み込もうというのなら、それをできないようにしてやっただけだ。単純ではあるが、そう簡単にはできないだろう…この霊装心刀『雷ノ焔』のように、自身の心意を強化し、媒介とする力で半ば強引に無効化したようなものだからな。
「……本当に…どこまでも英雄気取りが好きなようだなぁ…!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「クックックッ…ヒーハハハハハハハハ!これはこれは…本当に傑作だぜぇ!分かってんだろう!?お前は、俺に勝てる手段を一つ失くしたんだぞぉ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「お前が呼び出す武器には、あったとしても一つや二つほどしか特殊能力がないんだろう!?さっきコロコロと武器を変えていたのが、その証拠だろうがぁ!
俺の力を封じたところで、その武器が持っている力はあっても残り一つ!しかも、その武器を変えたりすれば、俺の力が、お前が後ろで守ろうとしている奴らを襲うわけだぁ!
もう武器も変えられない、能力も限られてる…そんな状況で、俺に勝てると思ってるのかよぉぉ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「人を守ろうとした結果がこれだぁ!?目の前の現実に一杯で、お前には何も見えていないのさぁ!お前が死ねば、あの結界は解除される!守ろうとして、お前自身が窮地に追いやられているこの状況で、どこまで英雄面ができるもんか、楽しみだぜぇ!」
「……何も分かっていないのは、お前の方だろう…PoH」
「…はぁ…?」
もう勝った気になっていたのだろう…言葉を重ねる度にテンションを上げていきながら、歪な笑みを浮かべていたPoHだが…酷く冷静な俺の言葉に、その嗤いが凍り付く。
「俺は英雄気分になってるつもりもないし、そんなものを目指してるわけでもない。英雄になれる力だって持ってないし、そんな資格があるほど立派な人間でもない…だから、人としてできることを精一杯やってるだけだ!
お前を倒せるかだって…?できるできないじゃない…やらないといけないんだ!お前を倒すぐらいの力は…今、俺のこの手にはある!ユウキたちも守る!お前も倒す!どっちもやってみせるさ!」
「それが英雄気取りだって言ってんだよぉ!?てめぇのその姿が、俺をどこまでもイラつかせんだよぉ!だからこそ、てめぇの絶望する様を見てぇんだよぉ!?」
「それは悪かったな…俺は案外欲張りなんだよ。だから、俺は俺のしたいようにやる…お前の邪魔をするし、少なくとも、俺の目の前ではもうこれ以上誰も死なせたりしない」
「…本当に…本当にムカツク野郎だぜ、てめぇはぁ!?すぐに終わりにしてやりたいと思いながらも、ここまで真の地獄とやらを見せてやりたいと思った奴は他にはいなかったぜ…こんなあまりにもつまらない闘いの舞台は後にも先にもないだろうからなぁ!!」
殺気と憎悪が、濃厚な負の心意となって奴から放出される…それが、神霊刀から放たれる心意とぶつかり、互いに互いを打ち消し合っていた。
「さぁ…このくだらないゲームにケリをつけようじゃねぇか…!」
「ああ…今度こそ終わりにするぞ」
それぞれ言葉の種類は似ていても、それが意味するものは全く異なっていた。互いの闘気が解放され、俺とPoHはそれぞれの獲物を構え直す!
「っ…!」
先に仕掛けてきたのは、PoHの方だった。その動きを見て、少し遅れて俺は動き出した。そして、間合いに入った瞬間、振るった獲物がぶつかった金属音が響き渡り、神霊刀と魔剣が斬り結ぶ。
だが、巨大化しているのにも関わらず、短刀本来のポテンシャルである小回りを活かしたかのような連撃をPoHは仕掛けてくる。それを刀で逸らし、感覚に従って刃を躱していく。
(…この感じ……そういうことなのか…?)
迫りくる魔剣の刃を冷静に対処しながら、俺は神霊刀を通して…いや、この武器の記憶開放術を発動させていた時から感じていた不思議な感覚の正体を理解していた。
一方で、PoHは攻撃の手を緩めることなく、次々と連撃を繰り出しきていた。それらを巧みに躱していきながら、神霊刀を振るう。刃がぶつかる度に火花が散り、互いに一歩も譲らない攻防が続く。
だが…冷静に攻撃を捌き続けながら、反撃していく俺に対し…PoHの表情に焦りがどんどん生まれていた。
(どういうことだ…?!奴の攻撃がどんどんと鋭く…俺の攻撃が見切られてばっかりなのに、奴の繰り出す一撃が重くなっていく…!)
友切包丁の刃が水平に振るわれたのを、顔を掠めるかどうかのギリギリのところで躱した直後、神霊刀の刀身が奴の髪を掠めた。
直撃を喰らい掛けたことに、咄嗟に後ろへと飛ぶことで距離を取るPoH。その動きに、追撃を掛けるべく、脚に力を込めて飛び込み、奴の身体へと神霊刀を振り下ろしたとしたのだが…!
「っ…!」
敢えて一撃を受けた奴の身体が赤黒い霧に変わり、消えてしまったのだ…!
突然の出来事に一瞬驚くも、直後に上空に感じた殺気に…考えるよりも先に身体が動いていた!
「はあああぁぁぁぁぁぁ!」
「…何ぃ!?」
上空からソードスキルを発動させ、凶刃を振り下ろそうとしていたPoHの表情が驚愕の色に染まる…なぜなら、その動きを読んでいたかのように、俺も刀単発ソードスキル〈浮船〉による上半月斬りで相殺してみせたからだ!
そして、相殺しただけに終わらず、PoHの斬撃を完全に逸らし切ったことで、硬直が解けた瞬間に、体を回転させたことで遠心力を上乗せした空中回転蹴りを、無防備になっていたPoHの叩き込んだ。
「が、はぁあ…?!」
まともに蹴りを喰らったPoHの口から息が漏れ、苦痛の声が出た。そのまま、空中から軽く吹っ飛び、その身体が地面へと落ちた。
「どういうことだ…?てめぇの手段は封じた筈だぁ!?さっきの武器みたいな予測はもうできない筈だろう!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
すぐさま倒れていた身を起こし、声を荒げるPoH。だが、それすらも気を逸らせる行為なのだと…気付いていた俺は、迫っている殺気から逃れるように身体を伏せた!
「「なぁ…!?また…!」」
「…!おおおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!」
「「…?!」」
振り返ることなく、攻撃を躱されたことに奇襲してきた者たち…二人のPoHは驚くことしかできないでいた…もちろん、そんな隙を見逃してやるわけもなく、今度は刀単発範囲ソードスキル〈旋車〉で二人纏めて、神霊刀でその胴体を薙ぎ払う!
真っ二つに上半身と下半身が分かれた二人のPoHは…赤黒い霧へと還っていた。負の心意をまさかこんな形で応用してくるとは思ってもなかったが…それでも、今の俺にはとても脅威には感じないでいた。
「…どんなチートを今度は使った…なんなんだよ、その力はぁ?!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「…うぜぇ…うぜぇ、うぜぇ、うぜぇ!?俺をそんな目で見るなぁ?!全てを分かったような目で…俺を見下すなァァァァァァァ!?」
先程から全く口数が少なった俺の姿が癪に障ったのか、それとも、自分の動きが読まれているかのようなことに怒りを覚えたのか、もしくは、眼前で起こっている出来事を受け入れることができないでいるのか…おそらく全部なのだろう。
まだ勝負は終わっていないとばかりに、友切包丁を乱暴に振り回すPoH…その感情によって、更に10体のPoHの分身が心意から生まれ、俺を包囲する!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
だというのに…不安も恐怖も焦りも…何も全く感じなかった。確信は何もない…それでも、大丈夫だという直感が俺にはあった。
感覚拡張…俺の心意を媒介に、全ての心意を無効化する『零の心意』とは別の、神霊刀のもう一つの力。
人間の脳は本来10%しか使われていない…なんていう都市伝説みたいな話が広がったことがあった。現在では、その説は覆されているわけだが…では、直感という第六感みたいなものはどういう原理で成り立っているのだろうか…?
その一つの答えかもしれないのが、この武器の力の一つ…感覚拡張なのかもしれない。記憶を読み取った時、どういうことかと疑問を覚えたが…闘いを通してようやくその本質が理解できた。
視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚…人が持つ五感の受容部分を限界まで拡張することで、殺意や闘気といった感覚に敏感になるだけでなく、一つ一つの動作や言葉の声色から、直感的な先読みができるようになる…ということなのだろう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
自然と感じる気配が、直感と変わり、考えることなくどう身体を動かせばいいかを教えてくれるような感じで…頭がとてもクリアな感じだと言えばいいのだろうか。余計なことを考えずに刀を振るうことができるのだ。
「…!」
ノールックで後方から斬り掛かってきた一体の魔剣を刀で受け止め、そのまま流れるように攻撃を受け流し、前方から迫って来ていた二体の分身にぶつけることで足止めし、右から来ていた分身の魔剣を逸らして、返す刃で胴体を斬り裂く!
そのままバック宙で、ソードスキルで薙ぎ払いを仕掛けてきていた分身の頭上を取り、頭部に下半月斬りを喰らわせる!更に、斬撃の反動を回転に変え、着地を狙おうとしていた分身の一体を強化された刀単発ソードスキル〈絶空〉で吹き飛ばし、後ろにいた分身一体を巻き込み形で倒す。
そして、先程ぶつけ合わせたことで体勢を崩した分身たちに神霊刀を投げつけ、二体まとめて串刺しにして仕留める!残った一体が武器を手放した隙を狙ってくるが、鞘を上空へと投げることで視線を逸らした隙に、その足元をスライディングで擦り抜ける!
神霊刀を手元に回収し、背後から追撃を掛けてきた一体をカウンターで縦真っ二つにする。すると、丁度落ちてきた鞘をも手元に回収し、残った三体の分身たちへと視線を向ける。
こうもあっさりと7体の分身を倒されたことに、分身でありながらその表情に焦燥感が生まれていた。
「「「…ううぅ……うおおおおおおおぉぉぉ!!」」」
恐れを紛らわせるかのように、雄たけびを上げ、残った分身たちがその身体を並べて駆け出す!それぞれの魔剣の刀身にライトエフェクトが浮かび上がり…別々の短剣ソードスキルを発動させようとしていた。
「「「しゃああああああああぁぁぁぁぁぁ!?」」」
「…っ!?」
4連撃ソードスキル〈ファッド・エッジ〉、9連撃ソードスキル〈アクセル・レイド〉、最上位4連撃ソードスキル〈エターナルサイクロン〉…短剣の嵐が一気に迫ってくるが…それを腰を据える形で身構えて迎え撃つ。
ソードスキルにより、加速し、威力を倍増させたバラバラの凶刃が迫るが…直感に従い、刃たちの嵐の隙間…ほんの僅かしかないポイントで躱し、時には神霊刀で軌道を逸らすことで強引に逃げ道を作り、三つの斬撃を捌き切っていく!
「「「…そんな…馬鹿、ぐおおぉぉ!?!?」」」
「はあああああああああぁぁぁぁ!!!」
まさか、ソードスキルを織り交ぜた乱撃すらも…完全に無効化されるとは思ってもみなかったのだろう。だが、驚いている暇など与えてやるわけもなく…心意の力を引き出そうとすることで、右目に熱が灯るのを感じる!
幻想剣〈刀〉超高速範囲ソードスキル〈断界〉…発動時、刀身がオーラによって二倍にまで拡張される広範囲を攻撃できる一撃により、言葉が悲鳴へと変わった分身たちが斬り裂かれ、大量の霧に還ろうと…
「夢幻の戦鬼ィィィィィィィィィィィ!?」
「ぬぅぅ?!」
霧を掻き分けて、突っ込んできたPoHの一撃にすぐさま反応し、両手を添えた神霊刀で魔剣を受け止める!
分身たちよりも濃厚で重い殺気が眼前から放たれ、こいつは本体なのだと否が応でも理解させられてしまう。
「死ねぇ…死ねぇ!?死ねぇ!?死ねぇ!?…消えちまえェェェェェェェ!?」
「ぐうううぅぅ…!このぉ!?」
呪詛と共に殺気と憎悪が更に重くなる…その表情が人ではなく、怪物なのではないかと思わせる程に破顔していくPoH…どこまで俺のことを憎めばそうなるのか…力を込めて魔剣を押し返し、距離を取るも…奴の猛攻は止まらない!?
「なんで死なねぇんだよぉ!?なんで俺の邪魔ばかりをしやがるぅ!?てめぇに…てめぇごときゴミが、俺のやることを否定するんじゃねぇよぉぉ!?」
「っ…!何を…!?」
「てめぇらはいいよなぁ!そうやって、自分たちが正しいと思っていられるガキでよぉ!?地獄を知らず、奪われることということを味わったこともない人生を送ってきたてめぇらに…俺を倒す権利があると錯覚しているガキがぁ!?」
平行に駆けながら、神霊刀と魔剣が何度も交差する…その合間に、PoHは言葉を放ってくる。俺の…いや、俺たちの生き方や在り方を認めない、否定するばかりの言葉ばかりが飛んでくる。
「俺を否定しないと、てめぇらの立場が揺るぐんだろうがぁ!理由がなければ、闘えない…殺すこともできないてめぇらに…俺を否定する権利なんてねぇんだよぉ!」
「…否定、か…別にそんな権利があるとは思ってないさ!?けど…それは、お前も同じだろう!」
「何だと…!何を言ってやがる?!」
怒号と共に振り回された魔剣を屈むことで躱し、下から刀を振り上げる!重心を後ろに傾けることで回避したPoHの反撃を、刀で受け止める形で防ぎ、鍔競りになったところで言葉をぶつける。
「お前はそうやって、正しい正しくないと定義を持ち出して、人の感情を揺さぶる…自分が気に入らないことは悪だと吹き込み、つまらないと感じたことには結果を考えずに滅茶苦茶にし…お前自身の苦しみや困難を他人に押しつけ、背負わせ、自分と同じ地獄へと引き釣りこもうとする…ただの身勝手な子供だ!?」
「…なぁ!?ガキ、だと…?!」
「ああ、そうさ!お前は自分一人が地獄を見たかのようなつもりになって、人にそれを無理矢理押しつけてるだけだぁ!悪魔でも死神でもない!?ただの…ただの子供だよ!」
俺の言葉に更に怒りを募らせるPoH…だが、いくら魔剣を押し込む力を強めても、その刃が押し込まれることはなかった。むしろ、俺の心意に呼応した神霊刀が魔剣を押し返していた。
「俺たちが地獄を知らないだって?俺たちが正しいと思い込んでるだって?お前はそう言って、知った気になっているだけだ!自分が奪われてきたから…自分が受けてきた苦しみを他人に味わせることで、それから目を背けようとしているだけだ!」
「…ううぅぅ…!ふざ、けんなぁぁ!?何を分かった風なことをほざいてやがるぅ!?俺の何を、お前に理解できるっていうんだ!?」
「もちろん分からないさ!?けど、お前はそれを一度でも誰かに話そうとしたのか?!誰かに分かってもらおうとしたのかぁ!?」
「…?!」
「何も分かってないだと…?違う!お前は、分かってもらおうとすることさえしなかったんだ!お前は怖かったんだ…お前のその過去が否定されることを!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その言葉…その指摘に、初めてPoHが息を呑んだ。今まで全てに反論してきたPoHの口から反論が出てくることはなかった。
「お前にどんな過去があったなんて知らない。それを聞いて、同情できるかどうかも分かりはしない…だけど、お前は逃げた!
キリトを幾度も追い詰めようようとしたのは、お前の過去を知られることなく理解者を作りたかったからだろう!?SAOから何度も惨劇を繰り広げてきたのは、自分と同じ立場の人間を作り出したかったからだろう!?
だから、お前は何も分かってないんだ!?人が分かり合おうとすることがどれだけ難しいか!同じ人族でも、全く違う考えを持ってしまうことで仲違いしてしまう怖さを!?全てを知った気になっているだけで、それらから目を背けてる…卑怯な臆病者のお前に…それから逃げずに向き合ってる人たちを……俺の大事な人たちや守りたいものにもう手は出させない!?」
完全に鍔競りを制し、強引に振るった刀に押される形でPoHは後ろへと退くことを余儀なくされる。
間合いから少し離れた間合いに位置したところで、俺は神霊刀を腰に差していた鞘に納め、ソードスキルのモーションを取る。
「…これで決着をつけるぞ…PoH!」
「…っ!俺が臆病者だと……っ!?クソッたれがァァァ!?いいだろう?!お前の全てを否定して、このくだらないショーを終わりにしてやるよぉぉ?!」
臆病者呼ばわりされたことに、ここまでの鬱憤も重なって、PoHも今までで一番の殺気を負の心意に付加し解き放っていた!
白銀の燐光を伴う『零の心意』による白緑光の浄化と負の心意の侵食が斥力を生み出すまでに激しくぶつかり合う!空気を振るわせ、地面を抉っていく衝突は、俺たちの闘気を表しているかの如く、徐々に激しさを増していく。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
半身を引くように左足を一歩下げ、脱力しながら身を低くしていき、神霊刀へと手を添える俺。対して、PoHは迎え撃つかの如く、ソードスキルを発動させようとしている友切包丁を…心意による効果か、自身の身長を超える刀身に巨大化させていた!
互いの心意が激しくぶつかり合う中、俺とPoHは静かに対峙していた…周囲のことなど、耳にも入らず、目に捉えることもなく、互いのことしか意識していない状態がいつまでも続くかと思われた時だった。
「っ…!」「…!!ハーハハハッ!」
先に動いたのは俺の方だった!
心意によるイメージが形となり、銀色の光を宿る右目に別の熱…心意により金色に変わったことを認識したと共に、ソードスキルを発動させる!
幻想剣≪刀≫最上位単発ソードスキル〈俊過瞬刀〉…ユージオに繰り出した時のように、超高速の居合斬りから、心意により変化した瞬間移動による眼前抜刀術を、俺はゼロ距離にまで近づいたPoHに放とうと…!
「見えたぜェェェェェ!!」
「…!?」
直感か、それとも本能によるものなのか…俺が肉薄する直前に、PoHは後方へと飛んでいたのだ!?それにより、魔剣を振るう間合いができたことで、巨刃により更に強力になった短剣ソードスキルで、俺の刀を迎え撃ってきた。
「ぐううううううううううううううぅぅぅ!?」
「ぬはああああぁ!?うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」
幻想の燐光と魔剣の凶光が金属音とは違う衝撃音を響かせ、その余波であるエネルギーの奔流が俺たちを襲い、互いに傷を負っていく。しかし、俺もPoHも一歩も引くことなく刀と剣をぶつけ、相手を斬ろうとすることだけに意識を集中させていた。
「…!しゃああぁぁ!!」
…そして、その拮抗が崩れた…
体重移動を絶妙に行い、斬り結んでいる状態から体勢を動かし、魔剣で幻想剣ソードスキルを逸らしたのだ。咆哮と共にPoHは斬撃が掠めたことで髪が散るのも気にせず、俺の姿を目で追っていた。
ソードスキルを逸らされただけでなく、その勢いによって前方へと出過ぎてしまった俺…位置関係上、硬直で動けなくなるであろう俺の背後をPoHが取る形になるわけで…誰が見ても大技であったソードスキルを放った俺が襲われる硬直時間は、あまりにも致命的すぎる隙なわけで…PoHの口角が歪んだ嗤いで上がる。
「…取ったぜえェェェェェェェェェェェェェ!!!」
無防備になった俺の背中目掛けて、止めの一撃を放とうと魔剣で更なるソードスキルを発動させ、大声を上げるPoH。振り下ろそうとするため、魔剣を振り上げた…これで決まり。確実に止めを刺せると…PoH自身も、この闘いを見ていた誰もが、そう思っていた。
硬直で襲われている筈の俺が、別のライトエフェクトを神霊刀に宿しながら、動き出したのを見るまでは…!
「…な…に…?!」
勝利を確信していたPoHの笑みが完全に凍り付いた。
嗤っていた口は止まり、驚愕の色を宿した目が大きく見開かれた。だが、PoH自身が分かっていた筈だ…ソードスキルを発動させている今、もうその動きを止めることはできないのだと!
(…どういう、ことだぁ…!?)
訳が分からないと…その心境がPoHの表情にはっきりと表れていた。
PoHが知らないのも無理はない…そもそも、このアンダーワールドで迎えてきた闘いを除けば、SAOでも人前で使ったのはあの決戦…ヒースクリフとの一戦だけだったのだから。
…
霊装心の翼衣…この翼衣が持つ力はたった一つのシンプルな能力だ。
それは…武器の種類を問わず、あらゆるソードスキルを発動できること。
技術連撃により繰り出した二撃目のソードスキルは刀系統ではなく、淡い紫赤色のライトエフェクトを纏った最上位ソードスキル…曲刀で放つ筈のその軌道を刀で再現する!
「…!だああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「…なぁ…?!」
二つ目のソードスキルを発動させた瞬間、いきなり移動速度が上がった俺にPoHの口から驚きの言葉までもが飛び出た。懐に飛び込まれたことで、完全に間合いを狂わされたPoHのソードスキルが発動するよりも前に、俺は刀をソードスキルの軌道に合わせて振るった!
幻想剣≪曲刀≫最上位11連撃ソードスキル〈アフタージュ・フレーム〉…発動中、AGIのステータスを二倍にし、出血・防御ダウンのデバフを必中で付与する高速の乱撃…右斜め斬り上げから、右斜め袈裟斬り、軽く跳躍してからの空中三連撃から、肩を狙った二連突き、そして、横、縦、斜めの回転斬りを読むことができないように乱雑に組み合わせた最後の五連撃が、PoHの全身を斬り裂く!
「がぁ…?!」
「っ…!」
最後の回転斬りでPoHの横を通り過ぎる形で背後を取り、そのまま技術連撃で三つ目のソードスキルを…両手持ちに切り替えた刀で再現する!
悲鳴を漏らすPoHの背中に、その一撃をあらん限りの力を込めて振るう!
「うらああああああああああああぁぁ!!」
「ごはぁぁ?!」
ハンマーのように振り下ろした一撃は、鎚による打撃と勘違いする程の轟音を立て、刀を打ち付けた一撃でPoHの身体を地面へと叩き伏せた!
幻想剣≪両手斧≫最上位二連撃ソードスキル〈ランダウン・スロチャーム〉…初撃が大振りになってしまうため、どうしても隙を突かないと当てにくいのだが、STRの数値を3倍に加算してダメージを与えられる振り下ろしは、PoHを地面に陥没させる程の威力は発揮する!
そして、この幻想剣ソードスキルには、初撃を喰らった敵は確実にバウンドするという特殊効果がある…更に、二撃目は振り下ろすか打ち上げるかを選択することができるという特殊性がある。
「しゃああああああああああぁぁぁぁぁ!!」
打ち上げる方を選び、初撃で振り下ろしていた刀を返す反動をも加え、地面にうつ伏せで面する形で浮かび上がっていたPoHの腹部を霊神刀で打つ!
くの時に折り曲がった次の瞬間、空気を切り裂きながらPoHの身体が遥か上空へと打ち上げられた。それを視線に捉え、指を開いた左手で狙いを定めるように伸ばしながら、霊神刀を持つ右手を後ろに引きながら、上空へと刀身を向ける。
「…すぅぅぅ…っ!!」
技術連撃で繋げた、四つ目のソードスキルに引っ張られる形で上空へと飛び上がる!上昇した勢いのまま、新たな幻想剣ソードスキルの一連撃目がPoHの身体を貫き、頭上を取る形で追い越したところで、軌道に乗ることで強引に空中で方向転換を図る。
二撃目、三撃目、四撃目…五芒星を三次元空間で描く形でPoHの身体を貫いていく…幻想剣≪細剣≫最上位6連撃ソードスキル〈ゼクス・ペンタグラム〉の最後の一撃が決まった時、俺は初撃と放った時と同じ、奴の頭上を取る形で位置していた。
そして、五発目の…最後の、そして、これまで何度も放ってきたあのソードスキルを発動させようと、身体を回転させる形で体勢を整え、霊神刀を両手で握り占め、頭の後ろへと振りかぶる!
(イメージだ…!あの魔剣を打ち砕く……いや、あの負の心意を打ち払う心を!武器に宿る記憶を限界まで引き出すイメージを…刀に全部載せろ!!)
PoHを倒すのではなく、剣を、刀を振るうための本来の理由…誰かを傷つけることしかできない心意に負けられない、負けるわけにはいかないと…武器に宿る記憶にも力を借りたく、想いを込めながら武器を握り占める!
その想いに応えてくれたのか、霊神刀からスパークが走り、刀身から二つの霊光が飛び出す。
『ウオオオオオオオオオオオオオオオオォォォン!!』
『キュルルルルルルルルルルルルルルルゥゥゥゥ!!』
神狼と鳳凰…武器の記憶がオーバーフローしたかのように具現化したそれらが背後に浮かび、幻想剣ソードスキルのライトエフェクトに新たな光を与える。今まで感じたことのない…二つの力が合わさり生まれた技を放つべく、霊神刀を振り下ろそうとする。
「…幻想剣…『鳳桜ノ命雷』…」
…ぽつりと、思い付いた技名が口から漏れた…
幻想剣≪両手剣≫最上位超重単発ソードスキル〈エンド・オブ・フォーチュン〉に、霊装心刀『雷ノ焔』の記憶の力が重なり、未知なる…いや、新たな可能性の一つとして生まれた力を解き放つ。
技を放とうと、俺が刀を振り下ろそうとした瞬間、背中に顕現していた神狼と鳳凰が黒雲の中に登っていき…!?
「…!!」
…その一撃は全てを置き去りにした…
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ぬぅぅあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁ?!」
二体の霊獣が超巨大な霊雷となって俺に落ち、一体化した俺は光となってPoHへと技を放っていた。音すらも完全に追いつくことができないでいた光速の一撃は…まさしく本能で胸元へと構えた友切包丁へと直撃した。
俺の声と、奴の咆哮が重なり…ぶつかった武器と心意が空を引き裂くのではないかと錯覚するほどの轟音と光を放ち続ける…しかし、拮抗したのは一瞬だった。
…ミシッ…
「「…!?」」
受け止めることができたように見えた友切包丁に一筋の入った。そして、それは連鎖的に刀身へと伝わるかのように、どんどんと罅割れていき…!
「ぐううううぅぅ…!うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁ!?!?」
全てを…持てる力や想い、出し切れるもの全てをこの一撃に込めるかのように。声が枯れるかの如く、俺は叫ぶ!そして、
…ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォンン…!
友切包丁の凶刃が砕け散った瞬間、光速の一撃を阻むものがなくなったことで、光が地上へとこれまでで一番の…いや、誰もが聞いたことのない轟音を立て、地面へと落ちた!
空間は轟音によって割けるかと錯覚するほどの衝撃に襲われ、地上にいたユウキたちは大きな揺れに襲われ、すぐさま落下によって発生した土誇りに襲われそうになっていた。
咄嗟にカーディナルが無詠唱で空間防御での神聖術を発動させたことで、土煙の直撃を受けることは回避できたが…視界が完全に塞がれてしまい、闘いがどうなったのかをすぐに確認することができないでいた。
(…フォン…?!)
光が地面に落ちた瞬間、自分たちを守ってくれていた光の結界が解けてしまったこともあり、フォンに何かがあったのではないかとユウキは気が気でいられなかった。
そして、ようやく土煙が晴れ、光が落ちた地上付近が見えてきた…そこには、一人の人間が立っているようで…
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
力を完全に使い切ったことで、霊神刀から元の片手剣…赤き刀身である天日剣と、映現世の翼衣を身に纏っている人物…フォンが無言でそこに立っていた。
「…か、った…?」
フォン一人がそこに立っていることを他の面々も認識し、誰かがぽつりと零した。しかし、それが伝染するのは早く…
「やった……あの剣士が勝ったんだ?!」
「彼の……俺たちの勝利だァァ!」
「「「「うわああああああああああああぁぁぁ!!」」」」
あの悪魔が…PoHの姿が見えないこともあり、人界軍とコンバート軍から上がっていたポツリポツリの言葉が、勝鬨に変わる!
「勝った!勝ったのよ、フォンが!?」
「はい…!本当に勝ったんですね、フォンさん!」
「…また美味しいところを持っていかれちまったな。これじゃ、借りを返すのはいつになることやら」
「いいんじゃないか?あいつもキリトも…そういうのは気にしないだろう」
リズとシリカが抱きしめ、フォンの勝利を喜び合う隣で、やれやれといった様子で言葉を交わすクラインとエギルたち大人組。
「…ふぅ。本当にあやつは…見てるこっちがハラハラさせられるわ…」
「先輩…先輩はあんな力をお持ちだったんですね…」
「ユージオ先輩が整合騎士様に勝利してたのも信じられないのに…」
「キリト先輩が言ってた…フォン先輩には負けっぱなしだって言ってたのは…こういうことだったの、かな…?」
一時はどうなるかと心配していたカーディナルが安堵の息を吐くと共に、自然と笑みを零していた。そんな隣で、フォンの…いや、映現世の剣の真なる力を始めてその目で見たマーベル、ティーゼ、ロニエはただ驚くことしかできずにいた。
「…ぅぅうう…今の音は…?」
「…!シグ!?良かった…目が覚めたんダナ…!」
「…本当に…流石としか言いようがないな」
「…兄さん」
「…エイジとカレットが頑張ったから、彼が間に合ったのよ。そこは、二人も胸を張ってもいいところよ!」
意識を失っていたシグが目を覚ましたことに気付き、その身体に抱き着くアルゴ。そして、途中からフォンが闘う姿を見守っていたエイジとカレット…そんな二人を賞賛するように、ユナが言葉を掛けていた。
そんな中、フォンが勝ったのだと…それを理解し落ち着いたところで、心配で堪らなかったユウキが彼の傍に行こうと駆け寄った時…
「…ぐはああぁぁ!?うおおおおおぉぉ?!」
「…!?」「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あと数メートルといったところで、呻きから叫び声に変わったそれが、ユウキの耳に入りその足を止めた。ユウキだけでなく、その場で立ち尽くして…いや、驚くことなくその声の主がいるであろう方向を見ていたフォン。
「がああああああぁぁ!?ぐああぁ…?!」
倒れ伏せしていた身体をよじり、なんとか残った左腕を地面に立てることで体勢を起こす者…右腕は肩から先が吹き飛んでおり、直撃を喰らったであろう胴体は、腰から下が完全に消し飛んでおり、地面を大量の血で今も濡らし続けていた。
纏っている黒ポンチョは見る影をなくし、口元からも血を吐き続ける…先程まで振るっていた悪魔としての姿は消え、乱れ垂れ下がった髪が、血に濡れて顔に張り付いてるその様は、亡霊と言っても差し支えない形相を作り上げていた。
そんな…SAOの亡霊と言ってもいい姿となったPoHを見ていたフォンは…言葉を発することはなかった。それはこれ以上PoHと言葉を交わす必要などないというのと、何を言っても分かり合えるわけがない相手だからこそ、掛ける言葉など存在しないという複雑な思いからでもあった。
「…はぁ…はぁ…はぁぁ~………クククッ…クハハッ!ヒーハハハハハハハハ!?」
「「・・・・・・・・・・・・・・」」
何も言わず、顔を伏せていたPoHがいきなり嗤い出したことに、フォンは黙ってその姿を見つめ、ユウキは言葉を失くしてしまっていた。
本当に狂ってしまったのではと錯覚するその姿を…PoHの心理を理解できていたのは、皮肉にもPoHが最も嫌う男一人だけだった。
「…これで終わったと思うなぁ!?夢幻の戦鬼ィ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「確かにぃ!この勝負はお前の勝ちだぁ!?さぁ、さっさと止めを刺せよぉ!けどな…俺は何度だってお前たちの目の前に現れるぅ!?ここをログアウトしても、すぐに舞い戻り、再び殺戮のショーを始める!
お前を絶望させ、心の底から殺してほしいと懇願させてから殺し、閃光の首元を斬り裂き、キリトの愛をこの手に手に入れるまで…何度でも…何度だって…それを手に入れることができるまで…何度でも、何度でも、何度でもォォォ!お前たちの元に、俺は行ってやるよォォォォ!!」
…それはまさしく執念だった…
異常とも、歪とも、壊れているとも言ってよかっただろう…目の前のことが何も…現実が目に入っていない…望む未来にしか目がいっていないその姿に、ユウキだけでなく、その場にいた者全員が圧巻されていた。
…対峙するフォンを除いては…
「…だろうな」
「…あぁ…?」
酷く…いや、感情の籠っていない声で短くそう言葉を零したフォンに、PoHは思わず顔を顰めてしまった。
「お前にとって、ここで死ぬことに何も感じないだろうってことは分かってたことさ。だから…お前はログアウトさせない」
その言葉と共に、フォンは天日剣の姿を変えるべく、武装変換術を発動させる。片手剣から、人が扱うにはあまりにも大きすぎる…3メートルは刀身があるであろう長刀を呼び起こし、翼衣までもを変化させる。
「…己の罪の牢獄と向き合ってこい…リリース・リコレクション!!」
両手で振りかぶった長刀の記憶開放術を発動させ、冷たい声でそう告げたフォン。振りかざされた長刀が残っていたPoHの上半身を斬り裂こうと…!
「…っ…!?(…どこだ、ここは…!?)」
意識が覚醒し、PoHは自分がどこにいるか一瞬理解することができなかった。
(現実(リアル)に戻ってきたのか?…だが、さっきとは見える景色が違う)
初めてアンダーワールドから強制ログアウトした時は、オーシャン・タートルのメイン・コントロールルームの鉄でできた天井が視界に見えていた。
だが、今はどうだ…鉄製どころか、岩のようなでこぼこした天井が見え、光源も少ないようでうす暗いせいで、周囲からここがどこだか推測することも難しかった。
しかし…PoHは何故かこの光景に見覚えがあった。
(どこだ…どこかで見たことがあるよう、な…っ?!な、なんでこの表示が見えてやがるぅ!?)
思い出そうとした時、ふと動かした視界に見えたそれに…現実世界ではまず絶対に見ることがないであろうそのゲージにPoHの目が見開かれる。
…自身の視界の左上…視線をそこに映したことで出現した、危険域を知らせるであろう赤いバーと化しているHPと『PoH』のアバター名が表示されたステータスバーが…そこにはあった。
『おいおい…もっと良いリアクションを頼むぜ?こっちは、この世界でひとを殺すのは初めてなんだからよ…?』
(…っ…なぁ?!)
それが、とてもよく知っている声だとは最初は理解することができなかった…しかし、なんとか動かせる視界で捉えたその先…そこに立ち尽くす男の顔を見た時…PoHは何も言うことができなくなった。
『さてと…つまらないリアクションしかできなそうだから…さっさと殺すか。じゃあなぁぁ!』
自分を見下す視線が酷く冷めた…いや、あの時も同じ顔をしていたと、この場所とその時起こったことを全て思い出した時には全てが遅かった。
…頭を短刀で割られた激痛に襲われたPoHが最期に見たのは…初めてSAOでプレイヤーキルをした自分の…酷く歪んだ笑みを浮かべた顔だった。
(…はぁ…?!今の、は…ぐあああぁぁ?!)
またしても、意識が目覚めたPoH…だが、今度は突如として激痛に襲われ、思わず叫んでしまった。
何事かと視界を動かすと…今、自分は複数のゴブリンに虐殺されそうになっていた。他へと視線を向けると、開けられた宝箱と、その横で隠蔽スキルで気配を薄めているSAO時代の自分がまたいて…!
『…己の罪の牢獄と向き合ってこい…』
(…ま、まさか…?!これは…SAOでの俺の記憶を再現しているというのかぁぁ?!)
あの時の…意識を失う直前にフォンが放った一言が頭に蘇ったPoH…だが、そんなPoHの心の声など聞こえていないゴブリンの曲刀が、奴の頸を切り落とし…!
…そこから、PoHは何度も殺され続けた…
麻痺毒に晒され、自身に諭されたレッドプレイヤーたちに殺されたり、
暗殺されそうになっているのを、見ていることしかできずにそのままやられるのを、
目隠しをし、心理的にとことん追い詰めてから、助けるといっておいて鋼鉄の城から奈落の場外へと突き落とされたり…
自身が考案したり、実行したり、教唆した…ありとあらゆる死をPoHはその身を以って味あわされていた…結果が分かっていも、自分は殺されるプレイヤーと同化しているかの如く、何の抵抗をすることもできないでいた。
しかし、永遠に続くことはないと…PoHは高を括っていた。
SAOから始まったこの地獄は…おそらく自身の記憶を元に、フォンが何かしらのチートを使って見せている幻覚なのだと、PoHは考えていたのだ。
つまり…少なくともアンダーワールドまでの殺ししか再現されることはないと見ていたのだ。そのぐらいの地獄など耐えることなど簡単だと…フォンへと募らせている憎悪と、キリトに向けている愛憎に比べれば、大したことはないとPoHは耐え続けていた。
そして…SAOでの最後の殺しの体験を終えた時…PoHは本当の地獄を見ることとなった。
(…なぁ……ここは…!?この場所は…?!)
二度目と…いや、自身がやる立場も含めれば、三回目となれば、思い出すのもすぐことだった。そして、それと同時にあることをPoHに理解させることは容易だったわけで…
『おいおい…もっと良いリアクションを頼むぜ?こっちは、この世界でひとを殺すのは初めてなんだからよ…?』
(そ、そんな馬鹿なぁ……まさか、ずっと…終わりなんてねぇっていうのかぁぁぁぁぁ?!)
二度目の…今となっては遥か前に聞いた筈の台詞に、PoHは完全に理解してしまった。
…自分は、SAOにおける殺しの…自身が殺してきた相手の記憶をループして見させられ、味あわされているのだと…ようやく、地獄の本当に真意を理解してしまったのだ。
(……夢幻の…戦鬼ィィィィィィィィィ!??!!?)
自身をこの地獄へと…チートというべき方法で堕とし込んだフォンに、一番の憎しみを募らせた怨恨の叫びを心内で上げるも…直後、過去の自分にまたしても、その頭を割られたPoHは、次の殺しの記憶へと飛ばされた。
…万華瞳刀『呪千黄泉』…対象のフラクトライトの記憶を媒介に、永遠に等しい地獄を見せる神器の力だと、PoHは知ることは決してないだろう。
STLを使っていたことでフラクトライトへの直接攻撃を可能とされてしまったことと、この地獄から解放される条件が、『自身の行ってきたことを心の底から悔やみ、反省すること』という、PoHの生き方を否定し、プライドを最も傷つける…PoHが絶対に選ばないであろう方法であることも…併せて知ることは絶対にないだろう。
「…うぅっ…!?」
記憶開放術を放ち終え、持っていた刀が元の姿…天日剣へと戻ったと同時に、技の反動による跳ねっ返りが身体を襲い、とてつもない疲労感を感じた俺は立っていることができずに、そのまま倒れそうになった…のだが、
「フォン…?!」
「…ぉっと。ありがとう、ユウキ」
そんな俺の身体をユウキが背後から支えてくれたお陰で、地面に倒れずに済んだ。さっきまで結構離れた位置に居た筈なのだが、ユウキが使っているスーパーアカウントの能力で間に合わせたのだろうか。
まぁ、そんなことに思考を割けられるぐらい、今の俺は緊張感から解放された次第で、纏っていた闘気やら殺気やらをもう放つ必要がないのだと安堵していた。
「…終わったの…?」
「多分な…少なくとも、PoHは…こいつはログアウトも死ぬこともできない…と思う」
「思う…?どういうこと?」
「さっき呼び出した武器なんだけど…俺もイマイチその効果をどう受け取っていいかが分からなかったんだ
…でも、これだけははっきり分かる。こいつはもうここから抜け出ることはできないって…なんとなくだけど、それだけは確かだと思う」
普段ならそんな根拠なしで確信を持つことはないのだが…今回のことに関してだけは何故かそう言い切れる感じだったのだ。
秘石に閉じ込められたPoHを見ながら、そんなことを考えていた俺は深い息を吐いた。死人形使いにPoHと、連戦の上に映現世の剣の力を酷使し過ぎてしまった。
途中で過剰使用と強制短期回復を行ったせいもあり、精神的疲労感が物凄いのだ。ようやく落ち着くことができると思い、心のブレーキが急に掛ったこともあり、倒れそうになったのも無理ない話なわけで…
「…お疲れ、フォン」
「ああ……そうだ。みんなは?さっきの心意の影響は?」
「大丈夫。さっきの騒動で何人か怪我を負った人もいるけど、治癒魔法が使える人が看てくれてるみたいだよ?」
一時的にとはいえ、PoHの心意に呑まれて暴走した人たちが心配だったが…幸いなことに怪我人はいても、死人は出なかったようだ。そのことを聞き、思わず笑みがこぼれる
「…悪い、ユウキ。このまま肩を貸してくれる?流石にもうちょっと回復するまで、一人で歩くのもキツイぐらいでさ…」
「いいよ…行こう?きっと皆、フォンのこと心配してるよ!」
天日剣を背中の鞘に納め(大剣状態の鞘にも関わらず、動くがないように固定できたので、ちょっと便利だと思ったのは余談だ)、ユウキに肩を貸してもらいながら、皆のところへと向かっていく。
俺たちが向かってきたことで、無事に決着がついたのだと分かった皆が歓声を上げながら、出迎えようとしてくれていた。特に、戻って来てから話す時間がほとんどなかったリズたちは、無事に俺の記憶が戻っていることをようやく実感できたようで、安堵の笑みを浮かべていた。
聞かれることも、掛けられる言葉も沢山あるに違いないが…少なくとも、ここに…アンダーワールドに来てくれた皆に感謝しなければならないことも、また当然なわけで…ともかく、声を掛けなければと思っていた時だった。
『音弥君!?聞こえますか、音弥蓮君!?』
「っ…えっ?!」
突如聞こえてきた女性の声に驚き、慌てて周囲を見渡す。しかし、声の主は周りには見えず…それが現実世界からの呼びかけなのだと理解するまでに、そう時間は掛からなかった。
『良かった…私の名は神代凛子よ』
「…神代?!それって…」
「えっ…!凛子さん!?もしかして、フォンにだけ何か聞こえているの?」
その名前…メディキュボイドの資料で見て、ユウキから聞いただけでいた名前の人の声がいきなり聞こえてきたことに驚く、
ユウキの反応からして、どうやら俺にしか彼女の声は聞こえていないようだ。カーディナルの話だとコンソールからでないと現実世界との通信手段はなかった筈だが…向こう側で何かしらの方法を取ったのだろうか?
『自己紹介をしたいところだけど、時間がないの!?よく聞いて…!音弥君…いえ、フォン君、ユウキさんを連れて、あと7分以内に南にあるワールド・エンド・オールターに向かってちょうだい!』
「それって…菊岡がユージオたちを連れて行ってくれって言ってた場所のことですよね?」
『そうよ!あと6分48秒以内にアンダーワールドからログアウトしないと、強制加速が始まって、ログアウトできなくなってしまうの!?』
「…なぁ…!?」
…ログアウトできない…まさかの事実を告げられ、俺は思わず言葉にならない声を上げてしまう。隣に立つユウキも、俺の反応から只事ではないと悟っていた。
『ゴメンなさい…オーシャン・タートルを襲った部隊の奴らがFLAの加速フェーズを無理矢理発動させたの!あと6分30秒後には、最大加速…FLA倍率の限界値である500万倍超の超加速が始まってしまうの!?今、比嘉君たちがFLAを停止させようとしてくれてるけど、それでも完全に停止させてログアウトさせるまでに20分前後は掛かることになるって…!』
「……っ!」
現実世界で20分…しかし、FLA倍率がそこまで引き上げられたアンダーワールドでは、おそらく100年…いや、下手をすれば200年を超える時間を過ごすことになるわけだ。
そんな時間を生きることは…寿命面はなんとかなったとしても、記憶に密接しているフラクトライトの寿命が持つわけがないというのは…その分野に詳しくない俺でも、十二分に理解できるものであった。
『桐ヶ谷君には、菊岡さんからもう伝えてあるわ!オーシャン・タートルのSTLから接続している貴方たち4人だけは、コンソールを使わないと強制ログアウトさせることもできないとのことなの。
かなり無茶なことを言ってるつもりだけど…お願い。なんとか、あと6分以内に、ワールド・エンド・オールターからログアウトして!』
「……分かりました!すぐにそこに向かいます!」
…どうやら、かなりヤバい事態になっているらしい。オーシャン・タートルからの接続している俺たちだけというのなら、おそらくコンバートしているリズたちはなんとか強制ログアウトされるのだろう。
ともかく、感動の再会に浸っている余裕はないことだけは確かで…俺はすぐにユウキに事情をかいつまんで説明する。
「ユウキ…あと5分と少しでここから脱出しないといけなくなった。そうでないと、ほぼ永遠にアンダーワールドに閉じ込められることになる」
「えっ…!?それってどういう…!」
「ゴメン、今はそれで納得してほしい。移動するのはなんとかなるから…リズ!、みんな!
すまない!?俺たちはすぐに行かないといけなくなった!色々と聞きたいことはあると思うけど…向こうに戻ったら、ちゃんと説明するから!」
「えっ?……分かったわよ!向こうに戻ったら説明してもらうんだから…無事に帰ってきなさいよ!!」
「…!ああ!助かる!」
突然の宣言に、リズだけでなく、シリカたちも、アンダーワールドの人々も全員が驚いていた。しかし、事情が分からずとも、何かを察してくれたリズが代表して応えてくれ、約束させられたことに、笑みを零しつつも返事を返す。
「「「フォン先輩!?」」」
「…お前たち…」
すると、集団から駆け出す影が三つ…俺を先輩と呼ぶのは彼女たちしかいるわけもなく…息を切らして傍に来たマーベルたち元傍付きたちに声を掛けられる。
「…行ってしまうんですね」
「ああ…本当はいっぱい話したいこと、謝らないことがあるんだけど…ゴメンな」
「…いえ…フォン先輩……ユージオ先輩とアリス様をお願い致します!」
「キリト先輩とアスナさんにも…宜しくお伝えください!」
「……分かった。任せとけ…よし。行こう、ユウキ」
「…っ…!ちょっと待って、フォン!?」
マーベル、ティーゼ、ロニエからの言葉をしっかりと受け止め、すぐにワールド・エンド・オールターと呼ばれている場所を探すべく左目の能力を発動させながら、ユウキを呼ぶ。だが、呼び掛けに反して、ユウキはみんながいる方向へと走って行ってしまい…
「…カーディナル!」
「…!…ユウキ…」
ユウキはカーディナルの元へと向かっていたようだ。一体どうしたというのだろうか…?
「ねぇ…本当にフォンに何も言わないつもりなの!?」
「…言ったじゃろう?この気持ちを伝えることは、フォンやお主を苦しめることになると…だったら、わしの心に秘めておくだけでいいのじゃ」
「だけど…もう会えないかもしれないんだよ!?」
「ならば、尚更良い……わしがこんな感情を持てたことだけで、わしは満足しておる。それを教えてくれた…いや、全てを諦めておったわしを助けてくれた、あやつのことを想えるだけで…わしは十二分に満足なのじゃ」
「……でも…」
「…ユウキ…!」
「っ…!…フォン」
何を話しているのかは遠すぎて聞こえなかったが…階段らしきものを登っているアスナとユージオ、アリスの姿を見つけ、その階段の先にあるのがワールド・エンド・オールターではないかと思った俺は、これ以上は限界だとユウキを呼びに来た。
「…カーディナル。悪い、最後までバタバタしちまって…色々と世話になったな」
「何を言っておる…礼を言うのはこっちの方じゃ。おぬしたちがこの世界に来てくれたことで、わしは捨てておった選択肢を選ぶことができた…おぬしたちがいなければ、どうなっていたことか……ほれ。時間がないのじゃろう?早く行かんか…!」
「…ああ。ユウキ、行こう」
「う、うん……分かった」
天日剣を武装変換述で変化させ、脚に変化したそれを装備する。
次元跳脚『時駆得』…左目でアスナたちがいるであろう座標を確認し、その場所を武器へとイメージとして伝達させることで、武装完全支配術の準備を整え、一緒に移動するためにユウキを抱き抱えた。
「…それじゃ…またな、カーディナル」
カーディナルにそう告げてから、俺は無詠唱で武装完全支配術を発動させ、次元跳脚『時駆得』で地面を蹴った。その瞬間、効果により、瞬間移動した俺たちの身体は消えた。
「……さようなら…フォン」
俺たちが消えた後、カーディナルが…いつもの口調ではなく、隠してきた素顔の口調でそう返していたことを知らずに…
●武器解説
・霊装心刀『雷ノ焔』(れいそうしんとう∶いかづちのほむら)
刀のカテゴリーに属する武器。
見た目は普通の日本刀。その青白き刀身には不思議な波紋が映っており、起源は数百年前の時代のものになるが、刀身どころか全ての部分が経年劣化どころか、常に最高の状態が維持されている。能力発動時には、白緑の霊光が刀身に宿り、悪しき力を焼き払うことができるようになる。
ある村に残された伝承に記されている霊刀…その担い手として選ばれた少年が、闘いの中で絆を育んだ女性と、旧新の友たちと共に鎮めた堕神獣の正しき加護をも取り込んだ神霊刀を反映させた武器。
武装完全支配術では霊力の一部開放による対霊への特化能力を発揮するだけだが、この武器の真骨頂は記憶開放術にある。
真の使い手としてふさわしい者が記憶開放術を使うと、使用者の心意を媒介に正・負問わずあらゆる心意を無効化する『零の心意』、『感覚拡張』により人の五感を無意識で働いている部分の受容能力を最大限にまで拡大し、あらゆる事柄に対し直感という形で働きかける補助、そして、この状態の神霊刀は使用者の心が折れぬ限り破壊されることはなくなる、という対人戦超特化仕様へと切り替わる。但し、ふさわしくない者が使用すれば、記憶開放術は使えないばかりか、武装完全支配術の力さえも酷く不安定なものでしか引き出せないというデメリットがある。
モチーフ(読み込んだ世界の記憶)は、番外編でも少しだけ登場した、特殊な感性を持つ若き剣士『霧屋玲』と持ち主として選ばれた霊刀『雷の焔』…なので、オリジナル武器。
フォンの性格やスタイルは、この主人公とその仲間の一人を組み合わせたのをベースにしていたり…そういったメタ的な意味でも手に馴染んでいるように感じた訳で…
・万華瞳刀『呪千黄泉』(まんげどうとう∶じゅせんよもつ)
長刀のカテゴリーに属する武器。
3メートル近くある刀身を誇り、技を発動させていないにも関わらず、刀身が揺れめくように見えるオーラを放つ、霊刀の一種。
ある一族に伝わる瞳術…その中でも、禁術を使用した者を止める為に生み出された禁術の力を模倣した霊刀。
そのあまりにも巨大すぎる刀身と、精神を斬ることしかできない性質(斬ろうとしても、肉体を擦り抜ける)ため、取り回しが利かない・攻撃力が皆無と点から戦闘には全く向かない…が、その真の能力は常識を凌駕する。
武装完全支配術状態では、霊体・魔法・精神…といった非物質を斬ることができるようになるが、記憶開放術では、相手のフラクトライトの記憶を読み取り、『対象の最も目を背けるであろう記憶を半永久的に見せ続ける』という一種の精神制圧攻撃を使うことができる。この攻撃から抜け出る為には、その記憶から目を背けずに向き合うことが求められる為、人によってあっさりと抜け出すことができれば、永遠と記憶を彷徨い続けることにもなりかねない。
また、記憶開放術の反動もそれ相応に大きく、使用者のフラクトライト・肉体に多大な負担を掛けるのはもちろん、使用者の意図が介入しない為、相手がどのようや記憶を見るかを把握できない。また、人工フラクトライトが喰らった場合、ほとんどが耐えきれず崩壊する、STL以外のプレイヤーだと効果が及ばない、といった酷く使用が限定されてしまうことが多い。
モチーフ(読み込んだ世界の記憶)は、『NARUTO』より、『うちはイタチ』が使用した写輪眼系統瞳術『イザナミ』。武器の形状は、彼が使っていた『須佐能乎』が持っていた『十拳剣』。
ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムの要素も混じってますけど、出口がある分、こちらなのかなと…(黒笑)
・次元跳脚『時駆得』
脚装具のカテゴリーに属する武器。
膝下まである黒いメカニカルなブーツ。足首部分には羽と時計を模したパーツが装着されており、脚部分にも青色の幾多物の幾何学模様が刻まれている。
とある機械工学が異常な進化を遂げている世界にて、長距離三次元移動を目的に開発された機具。場所か座標さえ分かっていれば移動できるが、完全に使いこなすにはかなりの時間が掛かる上に、そもそもの適正にあった者ほとんどいないため、量産されることはなかったとか…
武装完全支配術は上述した、イメージした場所への瞬間移動能力。一回移動する度に地面を蹴る、両脚を叩き合わせるといった衝撃を必要とするため、短距離移動での攻撃・隠密からの奇襲には向かない。
一方、記憶開放術は周囲一定の範囲に『計測領域』と呼ばれるフィールドを一定時間発生させ、フィールド内に存在するもの(人・物を問わず)の配置を自在に入れ替えることができる。但し、術中は使用者はあまり動くができなくなるといった弱点が存在する。
モチーフ(読み込んだ世界の記憶)は、機械工学が発達した超近未来世界…といった形のオリジナル武器。
・霊装心の翼衣
霊装心刀『雷ノ焔』の専用装備。
儀式の際に着るような和装のような衣で、その見た目・雰囲気からして人外のものである霊力でできている。装備者の心意に同調する特性がある。
特殊能力として、装備している武器の種類を問わず、あらゆるソードスキルを発動できること。また、属性はそのソードスキルに依存する形になる。
・万華瞳の翼衣
万華瞳刀『呪千黄泉』の専用装備。
赤銅色の炎鎧を被ったかのような霊装を模したような翼衣。
特殊能力として、記憶開放術の反動を半減(それでも、使用後、フォンは立てなくなりそうな程の反動を負っていた)し、記憶解放術を喰らった対象を破壊不能オブジェクトである『無黒の秘封石』に閉じ込める効果を追加する。
…後書きというか、まぁ、解説というか…
色々とあるのですが、文末まで長くなるのは(できるだけ)避けたいので、駆け足で参ります!
まず、まさかのもう一度精神世界…みたいな、悪夢のような幻覚。
これは、更に深さを増したPoHの負の心意『覆潰(せんかい)の心意』による重度の心意汚染によるもので、そもそもの能力として広範囲における対象の負の感情(恐怖・怒りなど)を増幅させ、理性を失わせる、騒乱を望むPoHにピッタリな力を持っています(『煽動の心意』の上位互換と思って頂ければ。クラス的にはガブリエルの『虚無の心意』に匹敵します)
特に、STLを使っているフォンたちには特攻属性持ちで、それぞれのトラウマや忌避している記憶を再現するだけでなく、絶望させるために幻覚を見せることができます…が、一番の憎敵であるフォンを絶望させようとしたことが、PoHの一番のミスだったわけです。
(知らないのも無理ないですが)取り返しのつかない罪を自覚し、そして、その絶望すらも忘れずに背負い続けることを決めたフォンの心情を舐めていたことと、最も触れてはならない逆鱗に触れたことで、PoHは幻覚を破られたどころか、優位に立てる筈だった状況を完全に覆された形となったわけです。
以前、映現世の剣は後出しに強いというコメントをしたかと思いますが、それが今回、形となったわけです…やられる側からすれば、たまったものではないですが…(黒笑)
そして、まさかのこちらも再登場ランさん!…と、いきなり表れた謎の人物たち…!
声だけではありますが、ユウキのフラクトライトに刻まれている記憶が具現化した形で、前回もユウキを助け、今回は彼女を安堵させたわけです(原作やアニメだと、アスナの傍に現れたユウキのポジションですね)
そして、(フォン以外のあそこにいたメンバーの中で)ユウキにだけ見えた謎の人物たち…これは、映現世の剣関係、武装変換術で呼び出した霊装心刀『雷ノ焔』の記憶がオーバーフローした影響です。フォンとユウキのフラクトライトはSTLで繋がっている状態ですので、映現世の剣とリンクしているフォンの影響で、ユウキにも彼らが見えたわけです。
この記憶のオーバーフローは、フォンの感情も引き金の一つではありますが、もう一つの条件はフォンと呼び出した武器との親和性です。呼び出した武器にも、波長がよく似た武器が時折存在します。言ってしまえば、使いやすいという感じる程度で、格段に性能がアップするとかそういう利点は全くないです!(そもそも、SAOの経験からフォン自身がほとんどの武器を使い慣れているのもあって、あんまり関係ないのも大きいのですが…)
まぁ、あれです…最終決戦での過剰演出ってことで(原作でのユージオの心意をオマージュした感じです)
そして、PoHをログアウトさせないためにフォンが取った手…これは本当にえげつないと作者も感じてます。
プライドの高いPoHの心が折れることはないと分かっていながら、一番屈辱的なことを何度も繰り返させ、しかも、脱出方法が確実にPoHが取らないであろう方法に設定する…誰が言ったか、どこぞのありふれた職業の魔王式嫌がらせなんだか…これと比べて、死ぬまで何度も何度も色々な武器で殺されまくったリッパーが可愛く見えて……こないですね。
こういうところに、フォンの腹黒さというか、容赦のなさというか、黒い部分が垣間見えるというべきなのでしょうか?(まぁ、PoHの方は映現世の剣がフォンの深層心理を過剰に読み取りすぎたのも原因なので、一概に全部フォンのせいとも言い難いのですが)
原作より酷い目に逢っているわけですが…結局のところ、原作でもそのあとのことはぼかされてる感じなので、本作でもその辺りは皆様のご想像にお任せる形になるかと…
そして、語る上で外せないカーディナルとの関係…
ユウキに告げていたように、結局カーディナルは自身の想いをフォンに伝えることなく、別れることになってしまいました。そして、フォンたちが去った後で零した意味深な言葉の心意は……これは、次回と次々回で明らかになるあることを指しており、先に明言しておきますが、本作でのムーン・クレイドルには彼女は全く関与しません!ただこれで出番が終わりというわけでもございません…彼女とフォンたちがどうなるかはもうしばしお待ち頂ければと思います。
…そんなかんやで結局後書きが長くなってしまいましたが、次回は年明けの1/9更新予定です!
最終決戦後編…キリト対ガブリエルの闘いになります。もちろん、本作での要素も加味する予定ですので、第Ⅼ話(サブタイはネタバレになるため、今回はなしです!)にご期待下さい!
それでは!
ハルダイラさん、チルッティドラグーンさん、
ご評価ありがとうございました!
ミトを本作に登場させるとしたら、その後はどういう感じで登場してほしいでしょうか?
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半レギュラー化(物語にもがっつり絡む)
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スポット参戦(閑話に出てくるレベル)
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まさかのサブヒロインポジ