ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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抽象的なサブタイですが、そういうことです(苦笑)

序盤はフォン…蓮視点でのモノローグです。あんまり長々と書いていると、時間が足りないという作者の都合です。まぁ、いろ…『キングクリムゾン!』……とです。…?……っ!…時間が、消し飛んだ…!?

みたいな感じです(笑)

後半からは真面目なお話…ご指摘の多かった蓮(フォン)君、偽善者すぎる件に関しての戒め…というよりも、木綿季さん激おこ(?)回です。

そんな大真面目なお話…だった筈なんですけどね…?
まさかの方々も登場されます。

それではどうぞ!



第ⅬⅡ話 「それからと、これからと」

…それから起こった出来事を、知る限り語ろう…

 

知る限りという曖昧な表現なのは、俺も人伝に聞いた話だからだ。どうしてかというと…俺が意識を取り戻した時には、全てが終わってしまった後だったからだ。

 

俺が意識を取り戻したのは、7月7日の午後4時半を少し過ぎた頃だったらしい。意識が戻った直後、今にも泣き出しそうになっていた木綿季が大声を上げて涙を流し、俺に抱き着いてきたのと、不安そうに見ていた安岐さんと知らない女性(後程、その人が件の神代凛子さんであることを知った訳だが…)が安堵した姿をよく覚えている。

 

しかし、俺が目覚めるまでにとんでもないことがオーシャン・タートルで起こっていたのだと、後日に神代さん…もとい、凛子さんから聞かされることとなった(本人から、下の名前でいいと言われたので、そう呼ばさせてもらっている)。

 

STLの限界加速フェーズ…いわゆるFLA倍率が500万倍超えを開始して約10分後に、オーシャン・タートルを襲っていた特殊部隊(アメリカの組織ではないかという話だ)が撤退したのだという。

 

もちろん、作戦が失敗に終わった彼らがそうすんなりと撤退するわけもなく…とんでもない置き土産を置いていったらしい。

 

オーシャン・タートルの主動力(正確には主機と呼ぶらしい)である加圧水型原子炉を最大稼働し、爆弾で破壊しようとしたらしい。(地球汚染を考える気はないのかと、日本人的な観点からか、そう思ったのは余談だ)

 

それを阻止しようと、菊岡たちや自衛隊の方々が奮起したらしいが、殿を務めていた敵の妨害にあって、万事休すの状況に陥ったらしい…だが、そこに現れたのが…!

 

『凛子君………長い間、一人にして済まなかった』

 

『…明彦さん、なの…?』

 

そう…凛子さんの元恋人であり、SAOを作り出し、キリトが打ち倒したヒースクリフのアバターを操り、オーディナル・スケールの事件では間接的に俺たちに力を貸し、ザ・シードをキリトに託したことで、アンダーワールドとフラクトライトという新たな可能性を作り出した…様々な意味での元凶であり創造主でもある、あの茅場明彦が…オーシャン・タートルに現れたのだという。

 

ニエモン…という、フラクトライトたちが現実世界で活動するための身体(木綿季曰くロボットというものを現実にそのまま持ってきたもの、という漠然とした説明はされたが…)を使い、凛子さんたちラースの面々の窮地を救ったのだと。

 

『凛子君…私は君に出会えて幸せだった…君だけが、私を現実世界に繋ぎ続けてくれた。願わくば…これから先も、君に繋いでほしい…私の夢を…今はまだ隔てられている二つの世界を…』

 

愛の告白とも、意味深な言葉とも…どちらの意味をも混ぜ合わせたその言葉を残し…一度は損傷により機能停止に陥りつつも、凛子さんの激励を受けたことで再起し、見事爆弾の起爆装置を取り外してみせたのだという。

 

ALOでの一件も、オーディナル・スケールでの一件でも…そして、今度も…茅場に助けられたというのは何とも言えない感覚だった。奇妙な縁というべきか、奴との因縁…というよりも、絆という繋がりに思わず笑みが零れたのは余談だ。(まぁ、SAOの時に一回殺されかけた訳だから、素直に喜べないというのもあるわけだが…)

 

…ただ気になるのは、茅場が使っていたというニエモンというロボットが行方不明になっているということだった。残骸やオイルなどは残っていたのだが、本体が残っていなかったらしい…動ける筈がなかったのにだ…凛子さんも当初驚いたらしいが、俺はなんとなく納得してしまっていた。

 

…電子生命体らしきものになった奴だ…きっと、何かに使う為に持っていったのだろう…

 

それよりも驚いた…というよりも、大きかったのは俺の中で茅場に対する印象が変わったことだ。凛子さんの、茅場との思い出話(といっていいかは微妙なところだが…)を聞かされたのも大きかった。

 

『……それこそ神のみぞ知るところだろう…まぁ、うまくいけば、君の元の世界に行くことができるかもしれないな』

 

茅場本人と話して、一番記憶に残っているのはSAOクリア直後のあの言葉だった。まさか本当に電子生命体になってしまうとは…それを知った後では驚いたものだが…それでも、奴の過去を知れたのは色々な意味で良かったと思う。

 

それと、凛子さんに聞かれた『自分や茅場を恨んでいないか』という質問に対しても…

 

「俺は……純粋に感謝しているとは言えませんが…あの世界での出来事があったからこそ、今という可能性を見ていられるんです。

だから…SAOにいたことを、後悔し続けているわけでもありませんし、覚えていなければと思ってます……あっ。強いて言うなら、一回殺されかけたことは恨んでるかもしれませんけどね?」

 

と、嘘偽りのない気持ちを告げた…俺の答えに凛子さんは安堵していたようだ。尤も、最後に放ったブラックジョークには乾いた笑いを浮かべられてしまったが…「貴方、誠実そうにみえて腹黒いわね」とも言われてしまったのは失敗したと思う。

 

 

 

そして、キリトとアスナは…現在も意識が戻っていない。

 

爆弾の起爆装置を茅場が解除した後…限界加速フェーズ発生から約20分後に二人のログアウト処理が終わったそうだが…菊岡の予想通り、フラクトライトは非活性状態に近く、二人がいつ目覚めるのかは分からないとのことだった。

 

…あの時、アスナを引き留めるべきだったと後悔しつつも…もし俺があの時、代わりに残っていたとすれば…ユウキがどうなっていたかと思うと…アスナには礼を言うべきなのかもしれない…いや、そうならないようにと考えたのだろう。

 

そのことは、メールにて直葉ちゃんや詩乃、里香たちにはもう伝えた。みんな、俺たちが無事に戻ってきたことに安堵しつつ、キリトたちが意識不明であることには、やはり思うところがあったらしい。

 

…どうして、VRMMOではなく、メールなのかというのはまた後程語るとしよう…

 

 

 

それと…菊岡が死んだ。

 

正確には死んだことになっている、と言うのが正しいのだろう。

 

公式に発表されたのは、オーシャン・タートルのこの襲撃事件のこと、ラーススタッフが一人、自衛隊員が一人、そして、襲撃してきたアメリカの特殊部隊が一名…計三人の死者が出たことが併せてニュースで伝えられていた。

 

特に、襲撃部隊が本籍を置いていたアメリカはとんでもない国際的バッシングを他国から受けているらしい。尤も、オーシャン・タートル…それを本拠地とするラース自体が、研究を公けにしていなかったことで、日本にも非があるいう指摘もあったわけだが…

 

凛子さんらラースはすぐさまにフラクトライトに関する研究を公表、そして、秘匿していたことを謝罪するという対応を迅速に行ったことで責められるのはすぐに収まり、アメリカに対するバッシングが一段と強くなった。

 

更に言えば、アメリカは(誘導されたとはいえ)VRMMOプレイヤーによる不正アクセスを行ったことも発覚し、そのことでもバッシングの嵐を受けている訳だが…それは中国・韓国も同じ状況らしい。

 

…余談だが、不正コンバートした中国・韓国プレイヤーたちのほぼほとんどが、強制ログアウトをした後、胴体を真っ二つにされたような激痛に襲われ、病院に駆け込む者が大量発生したという珍事も起こり、医療施設が逼迫したというニュースも見かけた。

 

『妙なガキに切り裂かれたぁ!?』『VRゲームで殺された痛みが、現実の体にフィードバックされた!?』『死ぬほど痛く、恐怖でVRMMOにダイブできなくなった…?!』と、被害者は語っているらしい。

 

…情報が正しいかどうかも知らず、遊び気分で命を奪おうとしたわけだ。残念ながら、自業自得であり、罪悪感は少ししか感じない…少しばかり現実逃避はしたかったけど…

 

 

 

そして、なんとか現実世界に戻ってこれた俺と木綿季はというと…はい、解放します…というわけにはいかなかったわけで…まずどこぞの大病院にて精密検査をすべく、ほぼ強制的に連行された。

 

まぁ、当然である…というのも、

「全身氷漬けにされた」

「両腕を斬り飛ばされた」

「大爆発に巻き込まれ、左目を一時的に失明。更には全身熱傷、左腕を複雑骨折した上での大量失血」

「何度も致命傷に近い攻撃を受け続け、全身から血を垂れ流し続けた」

と、アンダーワールドで起こった出来事…主に受けた損傷をカウンセリングで素直に答えてしまった俺と木綿季は、どこかに問題がないかと最新設備においての健康診断を受けさせられたわけだ。

 

今までのVRMMOとは異なり、アンダーワールドは特殊過ぎたのだ。

 

ペインアブソーバーが適用されていない、現実世界と全く同じ感覚を味わうリアル面と、フラクトライトという脳に関与するSTLによるダイブという特異性…それほどまでの激痛を経験していた場合、幻痛(別名:ファントムペインとも呼ばれる症状で、説明しようと思うと長くなるので割愛する)の症状が起こっていないかを中心に検査された。

 

そして、二人とも心身共に問題なしというお墨付きを頂いたわけで、ようやく解放…と、残念ながらされないわけで…政府の、しかも、機密の中でも超級といっても差し支えないものに関わっていた一般人をそう易々と解放するわけにもいかないのだろう。

 

まぁ、機密情報の漏洩防止と個人の保護、それとほとぼりが冷めるまでの監視を兼ねてなのだろう…超高級ホテルにて缶詰めにされてしまったのだ。

 

しかも、外部との連絡は許可されたもの以外禁止…VRMMOはNG、電話やメールでようやくといった感じであり、外部への外出はほとんど認められない。まぁ、ほとんど軟禁に近い状態でもあるわけだが、用意された場所はとんでもないホテルのスイートルームだったもので…

 

部屋が5個もあり、備え付けの温泉やらルームサービスの幅広さ、巨大な液晶画面のテレビやらキングサイズ級の高級ベットやら…その設備の豪華さによって、自分が庶民だと実感させられてしまう程の部屋に放り込まれてわけだ…閉じ込められるのも一週間ぐらいだろうとのことだった。

 

 

 

そういうことが色々あった訳だが…一番の問題は木綿季だった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…木綿季」

 

軟禁…コホン…ホテルに缶詰めされてから、二日目の夜…件のベットに二人して寝ている俺たち…それは、普段と変わりないわけだが、問題なのは木綿季が俺の腕を掴んで放さないということだ。

 

病院での検査の時も、このホテルに来てからも…お風呂やお手洗いといった場面では流石に離れてくれるのだが…それ以外では、一秒たりとも離れまいという形で木綿季は俺の腕を掴んだまま放さないのだ。

 

原因は…まぁ、今回の俺の動きもそうだし、明日奈の意識が戻っていないことが大半を占めていた訳で…あれから、木綿季は笑うことがなくなってしまった。今でさえ、ほとんどギリギリといっても差し支えない状況なのだろう…このままではいけないとは分かっているが、どう言葉を掛けるべきかとずっと悩み続けたまま、今日に至る訳で…

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…(…参ったな…流石に今回ばかりは何と言えばいいか…)」

 

木綿季は自分のことを責めているのだろう。

 

明日奈がアンダーワールドに残ってしまったことを…目の前で最期の言葉を残したアスナの姿が…木綿季にとってはどうしても忘れることができないでいるのだろう。

 

その気持ちは……嫌という程に分かってしまう。

 

俺も…いや、キリトとあの世界に共にいたであろう俺だけが、現実世界に帰ってきてしまったことに思うところはある。あの時、俺が残ろうとしていたことを悟ったアスナは、それを阻止してあの世界に残った。

 

それと同時にこっちに戻ってきたからこそ、やらねばならないことを…二人に託されたことをしなければならないのだということもよく分かっている訳で…だからこそ、今の木綿季をなんとかしないといけないのだが…

 

(こんな木綿季は……初めて見たな)

 

ここまで沈んだ木綿季に…掛ける言葉が見つからない。それと同時に、もしも俺がアンダーワールドに残っていたらと考えたら……ゾッとした。そういう意味では、明日奈には感謝すべきなのだろう…いや、明日奈はこうなるかもしれないことを予期していたのかもしれない。

 

「…木綿季…あのさ……えっと…」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…(…駄目だ。何を言っても、ダメな気しかしない)」

 

ともかく、何かきっかけを作らなければと…!意を決して話し掛けたが…秒で心が折れた。そもそもの話、俺自体そこまで話し上手なわけではない…いつも一緒にいる時も、聞き手に回っていることが多かったのもあって、開いた口を再び閉じてしまい、心中では完全にお手上げ状態になっていた。

 

…けど、沈黙は意外な形で破られることとなった…

 

「…………蓮は…どこにも行かないよね…?」

 

「…えっ…?」

 

髪で隠れてその表情が伺えないが…酷く暗い声でそう聞こえたのは、間違いなく木綿季の声だった。そして、堰を切った様に口を開いた木綿季は、更に言葉を続ける。

 

「…もうどこにも行かないよね…?蓮は…蓮だけは、僕を置いていかないよね…?僕を一人にしないよね…?ずっと一緒にいてくれるよね…?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「明日奈も…姉ちゃんも…みんないなくなっちゃった……蓮は…突然消えたりしないよね?…この世界からいなくなったりなんか……しないよね…!?」

 

「…(…ああ、そうか…木綿季を苦しめていたのは…)」

 

木綿季の放ったその言葉に…ようやく掛けるべき言葉を見つかり、そして、あまりに不甲斐ない自分を殴りたくなった。どこまで俺は彼女を苦しめ、どれほど彼女が想っているかを無下にしてきたら、気が済むのだろうか。

 

「…木綿季……ゴメンな。そうだよな…ずっと不安だったよな。心配してくれてたんだよな…なのに、木綿季が優しいと知ってるから…どこか待っててくれるじゃないかって、それに甘えて…それで笑っていてほしいなんて言うのは……卑怯だったよな」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…必ず帰ってくるよ…」

 

「…っ?!」

 

「今回みたいことは、もうそうそうないと…いや、もうしないから。例えあったとしても……俺は必ず木綿季の元に帰ってくるから。どんなに時間が掛かっても、何をしたって帰ってくるから……木綿季の前から突然いなくなったりなんかしないから」

 

「……ほん、とうに…?だって、蓮は…」

 

「…元の世界に戻れるかもしれないとしても…それでも、俺はこっちに残るよ。木綿季が笑えなくなるくらいなら、俺はそうする。もちろん、あっちの世界に未練とか、気になることがないってわけじゃないよ。

でも…こんな俺を好きになってくれた君を…愛してくれた君を放ってどこかに行くことなんてことは…絶対にしない、したくないんだ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「だから…それだけは信じてほしい。そして、明日奈と和人のことも…あいつらは必ず帰ってくる。帰ってくるんだって信じてやってほしいんだ。そうでないと、あいつ等が帰ってくるって信じてる人たちがいないと、二人も帰りにくいだろうからさ…」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「奇跡ってさ…信じる者にしか起こらないって言うだろう?あれって、信じている者は動くからこそ、結果がついてくるものじゃないかって思うんだ。

俺たちがあいつ等を信じることを止めたら…きっと二人は帰って来れないじゃないかって思うんだ。絶対に大丈夫だ…っては言えないけど、あいつ等がそう簡単にくたばる奴らじゃないって俺は知ってる…信じてるんだ」

 

「……僕も…信じていいのかな…?」

 

「…もちろん。それどころか、二人が起きた時に怒る言葉とか考えていた方がいいじゃないか?和人の寝坊癖はいつものことだとしても、明日奈には心配かけさせた分、いつもとは立場逆転とばかりに怒れるチャンスじゃないか?」

 

「…それって…いつも僕が明日奈に心配かけっぱなしな様にも聞こえるんだけど…」

 

「事実だろう?明日奈も明日奈で滅茶苦茶心配性だし…あと、お節介でとんでもないことを木綿季に吹き込んだりするしな…」

 

「ちょ…!?僕がなんか変なことをしてるみたいに言うのやめてよ…!」

 

「…ったく…ようやくいつもの木綿季に戻ってきたな」

 

「…あっ………うん」

 

本当にようやくだった…やっといつもの様にコロコロと豊かに表情を変えていく木綿季の表情が戻ってきた。その姿に思わず笑みが零れ、優しく木綿季の右頬に手を添えて、言葉を掛ける。

 

「…あれは木綿季のせいじゃない…むしろ、俺のせいだ。俺が迷って、木綿季を傷つける選択をしようとしたから、明日奈が止めてくれたんだ。だから、木綿季が自分を責めることなんてない……それでも、自分を許せないって思うのなら、俺もそれを一緒に背負うよ。

だから……今すぐじゃなくていい。できるようになったら、いつものように笑ってくれ。前にも言ったけど…木綿季には笑顔が一番似合ってるから」

 

「…うん。蓮………ありがとう」

 

「…どういたしまして…って言いたいところだけど、そもそもの元凶が俺だからな。そう応えたら、完全にマッチポンプだし…逆に木綿季には謝っても謝り切れないぐらいだからな」

 

「…本当だよ。あっちでも言ったけど……当分許してなんてあげないからね?覚悟してよね」

 

「…ああ。もちろん覚悟は‥うん、してるよ」

 

「あっ、今言い淀んだでしょ!?ちょっと一瞬迷ったでしょ?!」

 

今、現在進行で色々と我慢しているものもあり、思わず答える際に僅かな間を生んでしまった。それを見逃してくれるわけもなく、木綿季の激しい追及が飛んでくる…けど、本調子とはいかなくても、少しは元気を取り戻してくれた彼女の姿に安堵の息が口から出た。

 

そんな彼女の…オーシャン・タートル潜入のために、伸ばしていたものを切ったことで、今年の初めに再会した時との様に短くなってしまった髪に触れる。

 

「…また、伸ばさないといけないな」

 

「そうだね…でも、蓮がくれた髪飾りは着けられるから、丁度良かったかも…」

 

誕生日にあげた髪飾り…あの時は髪型を変える目的も兼ねてというのもあったが…まぁ、ショートヘアの木綿季も可愛いし、絶対似合うだろう。

 

…それはともかく…そろそろもう一つの本題に入るべきだろう。

 

「……なぁ、木綿季。あの時、言ったこと覚えてる?」

 

「…うん。ちゃんと覚えてるよ」

 

…言わないといけない…木綿季とこれからも一緒に過ごしていくためにも、これから先を共に歩んでいく為にも…これだけは隠し通したままというわけにいかないのだから。

 

あの世界で…アンダーワルドにいた時、俺が見たものを、知った事実を、もう一人の自分を模倣してまで忘れようとした真実を……木綿季に告げなければならない。

 

「…あの時…アンダーワールドに行ってから…俺は…………っ…」

 

言わなければならないと…頭では分かっているのに、言葉が出てくれない。自分が息を吸えているのかも分からない感覚に襲われるかのように、口は言葉にならない音を立てている…心臓の鼓動が脳に響くかのように、空気が通っている筈の喉が渇いているようで…早く言葉に…それを言うべきだと焦る俺に…

 

「…大丈夫だよ、蓮…」

 

「…っ…?!」

 

「落ち着いて……ゆっくり息をして…蓮が話せるようになるまで…待つから。話してくれるまで…僕は待ち続けるから…」

 

「…はぁ……はぁ……はぁ……!」

 

その言葉が耳に届き…感覚を失っていた頭が少しばかり落ち着く…そこで、自分が息を切らしていることをようやく自覚した。ゆっくりでいいから…待ってくれると…木綿季のその言葉を聞き、俺は焦ることを止めた。

 

…そこから落ち着くまでどれくらいの時間を要したか分からない…

 

けど、俺は少しずつ話し始めることができた。

 

本来、封じられる筈だった現実世界の記憶を持ったまま、アンダーワールドにダイブしてしまったことを、

 

ユージオと再会して、ギガスシダーを伐り倒したことを、

 

剣術大会に3人で上位を独占し、衛兵での経験を得て修剣学院に入ったことを、

 

傍付き時代から上級修剣士に…主席になったこと…そして、ライオスたちの姦計に嵌められたマーベルたちを救うために禁忌目録を破ったことを…その時に、過剰な暴力を振るったことを、

 

セントラル・カセドラルに連行されて…カーディナルと協力体制を結び、整合騎士たちを倒しながら頂上を目指したことを、

 

その最中、シンセイサイズを受けたユージオと激闘を繰り広げた際に、無意識の内に初めて映現世の剣を力を最大限にまで引き出したことを、

 

そして…アドミニストレータに対峙し、狂気の悪魔といえるソード・ゴーレムと闘い…剣の力がオーバーフローしたことによる幻視で見た未来を変えるべく…カーディナルを救うべく、映現世の剣の記憶開放術を使い…ゴーレムを元へと還し……キリトと共にアドミニストレータを追い詰めたことを、

 

…その時に知った…今、自分がいるこの世界が、小説の世界から分岐した一つの世界であるという驚愕の真実を…そして、本来いるべきであった自分の立場を、人生ごと奪ってしまったという罪を…

 

…赦されることなどない、取り返しのつかないその事実に押し潰され、そんな自分はこの世界に…木綿季たちと共にいる資格などないのだと、逃げるように記憶を封じたことを、

 

STLで木綿季のフラクトライトと繋がった時、全てを拒絶するかのように受け入れるのを望まなかったことを…そして、自分で勝手に作り出した闇で心を殺すことで…自己満足なやり方で罪を清算しようとして…それが間違いであるということを指摘され、受け入れ、託されたものを背負うと決めたことを、

 

映現世の剣が…平行世界の記憶を辿り、再現する特異な力を持つことを、

 

 

…もうほとんどのことを話した、ぶちまけた、零した…

 

どう話したなんかほとんど覚えてなかった…言葉にしなければと、伝えなければならないということだけが頭を占め、いつもの話し方などできていなかったと思う。

 

思い出話から独白に変わり…子供にように泣きじゃくり、詰まりながらも言葉を続け、どれだけの時間が掛かりながらも、全てを話し続けた。

 

…それを、木綿季は遮ることも、止めることも、全てを聞き入れてくれていた…あの時、言ってくれたように受け止めようとしてくれていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…そっか……そういう、ことだったんだね…」

 

ようやく…時間が経つことなどお構いなしに続けていた独白が終わった…話し終えたことで、疲労感と不安が胸中に漂う俺は無言のまま…対する木綿季は短くそう言葉を漏らしただけだった。

 

時計の音だけが静かに響き、俺たちは言葉を交わすことはなかった。

 

話を聞いた木綿季がどう思ったのか…もしかしたら、という考えが頭を過ぎり、俺は木綿季の顔を見ることができずに…

 

…パチン!…

 

「…ぅっ…?!」

 

乾いた音が鳴り響くのと同時に、左頬に痛みが走る…それが、いつのまにか馬乗りになられ、俺に跨っている木綿季によってビンタされたのだと気付くのに、そう時間は掛からなかった。

 

「…本当に…本当に蓮は馬鹿だよ…!」

 

「…知ってる…っていうか、ようやく自覚したっていう方が正しいのかも…」

 

「自分を大切にしないのに…どこまでもお人好しで、人のことばっかりで…それで背負いまくって、我慢ばっかりし続けて…」

 

「…うん」

 

「馬鹿…馬鹿!蓮の馬鹿ぁ!?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「もう絶対に言わせないから!蓮がいない方がいいなんて…この世界にいちゃいけないなんて…もう絶対に言わせないからぁ!?次、そんなこと言ったり思ったりした…またビンタしてやるんだからぁ!?

だから…だから……僕の前だけでもいいから…泣いてもいいから、無理しなくていいから…お願いだから、全部を一人で背負うとしないでよ…僕が蓮を支えるから…一緒に背負うから…」

 

「……分かった…」

 

…ああ…本当に、俺という人間は馬鹿なんだと自覚する…

 

ここまで真剣に怒ってくれる人が、悲しんでくれる人が、本来背負わなくていいものを分かち合おうとしてくれる人がいることを…知ったふりをして、目を背けていたのだから…

 

前までの俺なら、本心を隠し、『できるだけそうするよ』と曖昧な返事をしていたに違いない…でも、今の俺はすんなりと本心から応えることができた。

 

…木綿季には、小説の『ソードアート・オンライン』での世界軸での彼女のことは敢えて伏せた。もちろん伝えづらいという理由も多少はあったが…

それよりも大きかったのは、今、俺を想ってくれている目の前の…この世界に生きる紺野木綿季という女性であり、些細なことだと踏ん切りをつけることができたからだ。

 

偽善者だろうと、俺は神様じゃない…映現世の剣だって万能じゃないし、助けられる人がいれば、そうでないことの方が圧倒的に多い。

 

だからこそ…目の前のことを、自分にできることの範囲を見誤って失敗を続けてきた俺は、それを恐れないことにした。だって…やり過ぎた時や間違えそうになった時には、俺にはそれを引き留めてくれる大事な人が…仲間ができたから。

 

「…本当に…ありがとう、木綿季…俺と一緒にいてくれて…こんな俺を選んでくれて…俺を引き戻してくれて…ありがとう」

 

「…ううん…蓮の力になれたのなら、お礼なんていらないよ…そうするのは、僕にとっての当たり前なんだから」

 

「…フフッ…そうか」

 

怒られているというのに…自然と笑みが零れた。

 

泣かせてしまっているというのに…それが嬉しいと感じてしまった。

 

そんなことをさせてしまっていると分かっているから…少なくとも、彼女の笑顔が絶えない様にしていくべきなのだと…俺は心に強く決めて、彼女の顔を近づけた。

 

「…ん…?!…っ……」

 

いきなりのキスに、一瞬息を呑んだ木綿季だが、そのまますぐに受け入れてくれた。ソフトなキスだったが…二年近くも離れていたせいもあって、久々に感じた木綿季のぬくもりを懐かしく感じる。

 

「…ふぅ……なんか眠くなくなっちゃったな…?」

 

「…そうだね。なんか、疲れてるのに寝たくないって感じだね」

 

「こうして木綿季と一緒に寝るのも久々だし…そのせいかもな」

 

「……ねぇ、蓮………僕はいいよ…?」

 

「っ…?!」

 

『何が?』…そう聞くことができず、思わず言葉が詰まる。

 

木綿季の言う言葉の意味はよく分かっていた…そして、木綿季自身もどういうつもりでそういうことを言っているのかは分かっているのだろう。

 

顔を真っ赤にして、少し呼吸が乱れる彼女のその姿が魅力的だと思いながらも…欲望の声が聞こえる脳をなんとか理性で制し、俺は馬乗りになっていた木綿季の身体をゆっくりと横に降ろす。

 

「…駄目だよ、木綿季」

 

「…ううぅ……蓮のヘタレ…!せっかく勇気出して言ったのに…」

 

「流石にこっちで手を出すのはな…それに、例えそうでなくても、木綿季のそんな姿を独り占めできないのは嫌だからな」

 

「…えっ…?」

 

「木綿季…気付いてないようだけど、この部屋…っていうか、全部の部屋に監視カメラがあるから」

 

なんとか堪えて、頬を膨らませ抗議する木綿季を宥めながら、俺は部屋の隅に設置されているカメラを指さしながら、その存在を彼女に教える。まさかの事実に、木綿季がその方向へと慌てて視線を向ける。

 

「う、嘘…!じゃ、さっきまでの光景…全部…?!」

 

「多分見られてただろうな…まぁ、あくまでも映像だけらしくて、音声とかは聞こえないらしいけどな」

 

「~~~~~!?!?」

 

ここに来た時にその説明はされた筈だが…そういえば、あの時の木綿季は碌に話を聞けるような状態ではなかったなと思い出した。そんな自分の行動が見られていたことに羞恥心に耐え切れなくなった木綿季が顔を枕に沈めている姿が可愛いなと思っていると、

 

「うううぅぅ…!バカ、バカ、バカ…!なんでもっと早く言ってくれないのさぁ!」

 

「ゴメン、俺もさっき思い出した」

 

真っ赤になった顔のまま、恥ずかしさを誤魔化す様に俺の胸元をポカポカと叩く木綿季に苦笑してしまう。さっきまでの雰囲気が台無しになったわけだが、理性を保とうとしていた俺には有難かった。

 

「まぁまぁ…どうせ当分の間、この部屋に缶詰めなわけだし…どれだけ遅く起きたって、誰にも文句は言われないんだ。木綿季が聞きたいことを話すし、聞いてほしいがあるならいくらでも聞くからさ…木綿季が眠くなるまで話そう?時間はいくらだってあるんだから」

 

「…うん。それじゃ……」

 

…それから、俺たちは夜明け近くまで話し続けた…

 

さっきの中では話し切れなかったことを、木綿季が見てきたことを、互いに離れていた時間の差は大きいが、それを少しでも埋められるように俺たちは色々なことを話し続けた。

 

…アンダーワールドにおける女性関係をしつこく聞かれたのは、きっとキリトのせいだろう。それにしても、どうしてカーディナルのことを中心に、木綿季は聞いてきたのだろうか?…それだけが理由がよく分からなかった。

 

 

 

…と、当分の間、ホテルに軟禁されるかと思っていた俺たちだったが、意外な形でそんな生活が終わりを告げることとなった。

 

「…えっ…蓮のお父さんが?」

 

「うーん…どうやら明日ここに来るらしい、母さんと一緒に」

 

三日目の夜…交代に入り、後だった風呂上がりの木綿季の髪をドライヤーで乾かしながら、そのことを告げる。

 

木綿季が風呂に入っている間に、俺たちの世話係(監視役ともいうが)の人が、来客があることを教えてくれたのだが、人との接触を制限されている筈の俺たちに両親が会うことが許されたということに、木綿季と同じく俺も首を傾げていた。

 

「…あー…そういえば、お父さんたちに何も言わずに来ちゃったんだよね」

 

「それは…不味いよな。今回の一件で滅茶苦茶心配掛けたし……謝らないとな」

 

「…でも、お父さんもお母さんも優しい人だから、きっと許してくれるんじゃないかな」

 

「…そうだといいんだけどな…」

 

木綿季の言葉に頷きながらも、明日会うのが気まずい…SAOやALOの事件から帰ってきた時にもかなり心配させた訳で…特に、今回は前とは状況も、程度も違うわけで…それ相応の覚悟はしとくべきかと、ため息が漏れてしまう。

 

そんな俺の姿に、木綿季も苦笑いを零していたのだが…

 

 

…ガァッ…!?

 

「ぐっ…?!」

 

…鈍い音がして、痛みに耐えきれず思わず声が漏れた…

 

そのまま地面に倒れ込む形になった俺…突然の出来事に、横に立っていた木綿季は言葉を失い、それとは反対の方向…入ってきたドアの近くにいる母さんは比較的冷静にその光景を見守っていた。

 

…会った直後、俺は父さんに殴られていた…

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…とう、さん…?」

 

いつもと同じ冷静な表情…だが、その姿はいつも通りではなかった。抱えていた感情が漏れ出しているかのように、体を震わせる父さんの姿がそこにはあった。

 

「…どうして殴られたか、分かるか?」

 

「それは……心配掛けたから…」

 

「それもある…だが、もっと大事なことだ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

いつもとは異なる、そんな父さんの目を真っ直ぐ見ることができず、俺は目を伏せながらそう答える。だが、父さんが…いや、母さんもそのことだけで怒っているわけではないようだ。

 

「…どうして、私たちに相談しなかった?」

 

「それは……迷惑を掛ける訳にはいかないって…」

 

「その結果がこれでもか?木綿季ちゃんを巻き込み、お前の知人がどれだけ心配し、下手をすれば自分自身がどうなるかも分からなかったそうじゃないか…!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「お、お父さん…!?蓮は…!」

 

「木綿季ちゃん…今はお父さんに任せておきましょう」

 

間髪入れず聞かれた問いに応えるも、反論のしようもない正論に俺は目を逸らすことしかできずにいた。我に返った木綿季が慌ててフォローしてくれようとするも、母さんが黙っているようにとそれを制止する。

 

「迷惑を掛けたくなかった?…そうではない筈だ。お前は、自分のせいで誰かが傷ついたり、負担を掛けるのを恐れているだけだろう?それは善意でもなければ、気遣いでもない……ただの傲慢だ…」

 

「…っ…」

 

「お前がしっかりしていることは分かっている。そして、小さい頃からそうならざるように一人にし過ぎてしまったことも…よく分かっている。だが…だからこそ、覚えておけ。お前は決して一人ではない」

 

「…ぁ……」

 

「世界の誰がどう言おうとも…お前は私たちの立派な息子だ。そして、私たちは、お前の味方だ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…全く…母さんに似て器用かと思えば、人付き合いに関して不器用すぎるところは私そっくり過ぎるのも…嬉しいようで困ったものだな」

 

言いたいことを…いや、思わず勢いで言ってしまった部分が多かったのだろう。零れていた怒気が消え、苦笑いしている父さんはそう言って、俺の頭を撫でるように手を置いた。

 

「…無事に帰ってきたようで良かった…よく頑張ったな」

 

「っ…!俺……ゴメン、父さん、母さん…また心配掛けるようなことを…」

 

「構わん…お前が…いや、お前と木綿季ちゃんが無事に戻ってきたことで、もう怒ってなどいない」

 

「そうよ。今までのことを考えたら、このぐらい迷惑を掛けられたなんてものには入らないわよ…あら、殴られたところが腫れてるわね…木綿季ちゃん。氷とタオルか何か包める布を持ってきてくれるかしら」

 

「…!は、はい…!」

 

泣きそうになるのをギリギリで堪え、言葉が零れる…けど、父さんと母さんは謝らなくていいとばかりに俺にそう言ってくれた。

 

「お父さん、どれぐらいの力で殴ったの?口出しするべきではないと思っていたけど、蓮が吹っ飛んだ時には流石にちょっと驚きましたよ?」

 

「むぅ……その…すまん、蓮。思わず勢いで、ついな…」

 

「ついって…あまりに自然にというか、綺麗に叩き込まれたもんだから、逆に慣れてるもんかと思ったよ」

 

「その認識は間違ってないわよ、蓮?お父さんったら、貴方と同じ年の頃は今からは考えられないくらいやんちゃで、正義感のままに暴れ「ミコ…その辺にしてくれ」…あらあら」

 

(父さん、子供の時に何してたんだよ…?そういえば、母さんと父さんは小学生の頃からの付き合いだって聞いたことがあったっけ…)

 

さっき殴られた時のことを母さんと俺に指摘された上、過去のやんちゃ話を暴露され掛かったことに、表情を変えずとも慌てた父さんが母さんの言葉を遮っていた。

 

こういう時、尻に敷かれてるとは思うが…そういう弱みを握られているからなのだろうか…幼馴染からの付き合いとは怖いものだと思いつつ、そうならないように気を付けようと俺は思ったのだった。

 

 

 

「……仮想世界に新たに生まれた人工知能…か」

 

その後…木綿季が作って持ってきてくれた氷嚢を片手に、オーシャン・タートル、そして、アンダーワールドにて起こった事件を簡単にではあるが、父さんたちに説明した。

 

一瞬どこまで話したものかと思ったが…そもそもの話、情報漏洩を防ぐ為にここにいるのに、それを(父さん曰く、世の中には知らない方がいいこともあるルートで)強引ながらここに来た二人に下手に取り繕う必要もないだろうと思い、打ち明けられる部分の範囲で話した。

 

話を聞き終え、そうぽつりと言葉を零した父さんが眉間に皺を寄せていた。対する母さんもいつもの飄々とした笑みを潜めて真剣な表情をしていた。

 

…まぁ、映現世の剣のこととか、フラクトライトへの負担による記憶喪失もどきとかは伏せたので、それを知ったらどうなることやらと思ったのは余談だが…

 

「まぁ、その…あとはニュースでやっている通りだよ。それもあって、政府の機密情報を知り過ぎたことで今こういう感じになってるわけで…」

 

「…そうか。大体の事情は分かった。それにしても、驚きだな」

 

「そうね…それに、その『A.L.I.C.E.』っていう子たちと友達とは…驚くことばかりね」

 

「だよね…それが当然のリアクションだと俺も思うよ」

 

「うん…僕たちはまだ生活の中にVRがあるからだけど、お父さんたちからすればそうだよね」

 

ただただ驚くことしかできないでいる二人に、俺と木綿季も苦笑いすることしかできない。というよりも、二人の反応の方が一般的なものだろう。

 

「ともかく…お前たちが無事に戻ってきたことが何よりだ。明日にはここを出られるようにもう話はつけてある。友達にも碌に連絡が取れていないんだろう?」

 

「あー…連絡手段が電話とかだけだったからね。というか、話はつけてあるって…父さん、一体どうやって…」

 

「弁護士会の方から圧を掛けた」

 

「…冗談、だよね?」

 

「……さて。そろそろ私たちは帰るとしようか、ミコ」

 

「そうね…フフフっ」

 

「嘘だろう!?冗談だって言ってくれよ、父さん?!」

 

(…何だろう…どことなく見たことがあるような光景だな~…)

 

明日には帰れると聞き、助かると思う反面…どうやってそんなことを聞くと、即座に帰ってきた答えにまさかと思い尋ね返すも…沈黙は肯定とばかりに帰ろうとする二人に、俺は現実を見たくないばかりに叫んでしまっていた。

 

…そして、隣にいる木綿季が、とても微笑ましい表情でそんなやりとりを見ていた…その視線が俺と父さんを比較しているようなものであったのも余談だ。

 

 

 

「…もういいや…って、忘れるところだった。ゴメン、父さん、母さん。もう一つ、話したいことがあるんだけど…」

 

「あらあら…もしかして、木綿季ちゃんと婚約でもするの?」

 

「母さん?!」「お母さん?!」

 

(知らない方が精神的に安心かというのもあって)追及することを諦めた俺はため息を零しながらも、告げなければならないことがもう一つあったことを思い出し、帰ろうとしていた二人を引き留めた。

 

だが、とんでもない爆弾を放り込んできた母さんに、俺と木綿季は揃って叫ぶ。しかも、この人の場合、半分以上本気でそう言ってきている筈だから、尚更質が悪い!?

 

「…コホン…えっと、まぁ、確かに将来の話ではあるんだけど…進路に関してなんだけど…」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

流石に息子の進路の話ということで、真剣な表情に戻った二人は再び席に着き、耳を傾けてくれた。

 

「前に聞いた時にはVR関係に携わりたいって言ってたわよね?」

 

「うん…だから、工学系か経済系に進学しようと思ってた。そのどっちにするか、迷ってたんだけど……決めたよ。俺は…法律の道に行こうと思う」

 

迷うことなく…まっすぐ二人へと視線を向けて、そう告げる。隣の木綿季は驚き、母さんは少しばかり口を開くも言葉を発することはなく…父さんは懸念するかの様に眉を顰めていた…まぁ、父さんがそんな顔をするのは予想通りだった。

 

「…別にそうしないといけないと思ってとか、そんな流動的な考えからじゃない。俺がそうしたいと思ったからだよ。俺……今回の件で実感したんだ。知識や才能があったって…人は間違うし、誰かを傷つけることだって必ずあるって。そんな時、力になれることがあればって…

 

この先…いや、近い未来に今の法律だけじゃない対応できないことが…アリスやユージオみたいな、心を持つ人工知能たちと共に歩み続ける世界ができるかもしれない。その時に、俺は二人の…その人たちの助けになれるものになりたいんだ。

 

友たちがこの世界を知って一緒に過ごせる世界を、友達が目指している夢を支えられるよような…少なくとも、俺の手が届く範囲でいいから力を貸せるように…そして、俺自身がそんな世界にできるように少しでも変えていけるような人になりたいから…

 

俺は改めて法学系に進学したいと思ったんだ」

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

思いの丈を全てぶちまけ終えると…誰もが口を閉ざしてしまい、沈黙が場に漂った。しかし、そう長く続くことはなく、口を最初に開いたのは父さんだった。

 

「……そうか。お前自身がそうなりたいと思ったのだな」

 

「…うん」

 

「ならば…私が反対する理由はない。お前が選んだ夢のためだというのならな…だが、それは決して簡単に叶うことではないし、茨の道を行くことにもなりかねないだろう…それだけは忘れない様にしておけよ?」

 

「一応は分かってるつもりだよ…伊達に父さんがどんだけ大変だったかを見てきたわけだしね」

 

「…う、うむ…」

 

「あらあら…これは息子に一本取られたわね」

 

経験者なりの忠告だったのだろう…父さんのその言葉に、理解している胸を伝えると同時に昔のことを加えて返したのだが、バツの悪そうな表情を浮かべられてしまった。

 

どことなく落ち込んでいる父さんを母さんが慰めてる中、流石に言い過ぎだよとばかりに木綿季に肘で横腹を突かれた。

 

なんというか、アンダーワールドでの経験…というよりも、見ないふりをしていた過去とか罪とか、そういうのを自覚して受け入れたせいなのか、その辺りの感情が漏れやすくなっているというか、隠すよりも自然と出るようになったぽいのだ。

 

…下手したら、本当に腹黒キャラとか言われそうだから、少しばかり自重すべきだと、凛子さんや父さんへの一件で俺は思った。

 

「まぁ、あなたの進路が決まったようで何よりだわ。そういえば、木綿季ちゃんはその辺りはもう決まっていたりするの?」

 

「えっと…一応ですけど……ただ、その道に進もうにも大学に行かないといけないわけで…でも、そんなお金が…」

 

「なに言ってるのよ?木綿季ちゃんは私たちの可愛い義娘なんだから。子供の学費の4人分や5人分、余裕で蓄えているんだから?」

 

「あ、あははは…お母さん、また冗談を…」

 

「…まぁ、そうだな」

 

「…ねぇ、蓮?!冗談だよね!二人の言ってることって冗談だよね?!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「蓮?!」

 

母さんと父さんのリアクションに、余裕な姿から乾いた笑みを浮かべ、俺に訂正を求める木綿季だが、目線を逸らした俺の姿に絶句するしかなかったようだ。

 

「木綿季ちゃんは遠慮し過ぎなのよ?そのくらい甘えてくれていいのよ…蓮はそのあたり、もう諦めているんだから」

 

「それ、息子の前で言うか?というか、木綿季の反応が普通だからな、母さん。いきなりそんなことを言われたらビックリするのが普通だろう」

 

「そうかしらね…それとも、まだ籍を入れてないから、変に遠慮してるのかしら…あなたたち、付き合って同棲してるんだから、もう結婚してもいいんじゃないの?」

 

「なぁ?!」「ひゃ?!」

 

木綿季の反応が当たり前だと抗議の声を母さんにあげるも、まさかの爆弾を投下される形で打ち返され、俺と木綿季から変な声が飛び出す。

 

「か、母さん?!何を…」

 

「冗談に決まってるわよ…でも、あと3年も待ってるなんて、あんたも木綿季ちゃんも大変よね…」

 

「3年って…僕15才だから、来年には結婚できますよ?」

 

「…あら?もしかして、木綿季ちゃん知らないの?」

 

「えっ…?」(あっ…!)

 

「4年前に法律が変わって、男女ともに18歳にならないと結婚できなくなったのよ?てっきり、お父さんか蓮が伝えているとばかり思っていたのだけど…」

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

混乱していたこともあり、口を挟む前に母さんがその事実を言った…言ってしまったのだ。母さんの放った一言に俺と木綿季、父さんの三人は沈黙してしまった。尤も、木綿季の沈黙と、俺と父さん二人の沈黙は全く意味が違うわけだが…

 

「…蓮。どういうこと?」

「…お父さん、どういうことかしら?」

 

「えっと…その……ゴメン。俺も、木綿季と明日奈の会話の後に知って…言おう言おうと思ってたんだけど…」

「いや…そのだな…あの時は、木綿季ちゃんの家のこととかもあってな…言い出すタイミングを見失ってな…」

 

笑っている筈なのに、とても冷たい声色をした木綿季と母さんの問いかけが同時に行われ、俺と父さんも揃って答えようとするも、最後の方は声が小さくなってしまう。

 

まさか、元居た世界とSAOの世界で年代がズレていて、そんな間にか民法が改正していたなんて思わないだろう!?しかも、こっちの世界に来てから慣れようとしていた時に、そこまで気が回るわけもないだろうし!

 

…と、言い訳をしたいところだが、そんな言い分で木綿季の怒りが収まるわけもないし、期待させていただけにその落ち込み具合も大きいわけで…

 

(と、父さん?!助けて!)

 

こうなったら、ベテラン弁護士に助力を求めるべきだと目線で訴えるも…

 

(諦めろ、蓮…手遅れだ)

 

(手遅れ?!…っていうか、諦めるのはや?!)

 

経験からか、こうなってはもう駄目だと言わんばかりの父さんに、俺は心の中でも絶句してしまう。

 

「蓮…後でちょっとオハナシしようか?」

「お父さん…帰ったら、ゆっくりオハナシしましょうか?」

 

「……あい」

「……うむ」

 

(ああ…これはちょっとでは済まないんだろうな)

 

木綿季と母さん…有無を言わせないその問いかけに、俺は頷くことしかできず、父さんは乾いた表情で返事するのがやっとだ。

 

…この後、数時間に渡って木綿季に尋問…お説教と言ってもいいだろう…正座したまま、彼女が満足するまで反省させられることになった。

 

 




蓮のご両親、まさかの再登場…そして、時事ネタを放り込むオチ…WoU編がずっとシリアス続きだったせいか、反動で笑えるエピソードを書いてしまいがちに…(苦笑)

モノローグで色々と情報詰め込んでますが、こういう形で書いたのはALOとかマザーズ・ロザリオ最終話以来だったのではないかと…どこぞの自衛官に関しての真実は次回のお話にて触れるということで…

さてと…ある意味では矯正回とも言える本話。ほとんどの真実を語った蓮に、木綿季の怒りとお叱りが爆発しました。無意識の内にどこかで木綿季に甘えてしまっていた蓮ですが、大分反省しておりますので許してあげてもらえればと…

意外に、頂いた感想にて『蓮(フォン)もUWに残るじゃないか?』というお声を沢山頂いたことに驚きました…いや、残すと色々と不都合があったわけで…ムーン・クレイドルもそうですけと、ヒロインたちの方にも支障が出るもので…

そして、そして…はっきりと定まった蓮の夢。
前半第4話で打っておいた布石がようやく回収できました…フラグ立てたのが一年以上前とかどんだけ時間掛かってることやら…

そんなわけで、次回もオリジナル…ユージオとアリスとの再会…そして、問題のあの人との対話回となります…穏便に済めばいいんですけどね(黒笑)

それでは!

一般学生Cさん、
ご評価ありがとうございました!


P.S. 本話で180話(設定除けば、178話ですが…)を迎えました。
…ああ…見えてきてしまいましたね…やっぱりやるべきですかね?記念って大事ですよね?…やってやろうじゃねぇぇかぁぁぁぁぁ!?
…そんなわけで新アンケート実地します!!ご協力の程宜しくお願いします!

…200…?

  • 学園IFストーリー
  • 戦乙女戦隊SAOジャー
  • こぼれ話集(短編集)
  • AmongUs
  • 懲りずに、おふらいんしりーず!
  • アイドルIFストーリー
  • クイズ!音弥蓮!(誰得だよ!?)
  • パーティゲーム風ストーリー
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