そんなに長くなることないかなと本話は思ってたら、余裕で1.6万字いってますからね…
ということで、カーディナルが初めてALOへと訪れるお話です。
アバター&キャラネーム公開…そして、新武器が登場します!なので、少しだけ戦闘描写も入ってまいります。
それでは、どうぞ!
「もうそろそろかな?」
「うーん…どうだろうな。一応簡単な説明はしたとはいえ、あいつにとっては初めてのことばかりだからな。まぁ、気長に待つとしようぜ」
そんなことを話しながら、俺とユウキは待ち人がやってくるのを待っていた。向こう…現実世界とは異なり、ライトパープルの長い髪を揺らしながら、まだかとまだかと落ち着きがない彼女を宥めているところだった。
俺たちがいるのはALOの央都アルン…キリトたちがお暇してから、カーディナルの方も大まかな感覚は掴めたとのことで戻ってきて、夕食を食べ終えてからダイブしてきたのだ。
以前のALO…レクトが運営をしていた頃の旧ALOでは、初プレイの際には各プレイヤーが選んだ種族の領地へと転移されるようになっていた。
しかし、新生アインクラッドが導入された頃から、種族間・領土戦よりもそちらの攻略がALOでは人気となり、初プレイ時の転移先が央都アルンが加えられたのだ。もちろん、引き続き所属種族の領土先も転移先には残っているが、中立地帯都市と化したアルンの方が種族がバラバラであっても合流しやすいとのことで、人気で言えば圧倒的にアルンの方が多かったりする。
ちなみに、ユウキたちスリーピング・ナイツがALOに来た時も、このアルンで全員集合を図ったお陰ですんなりと合流できたとのことだった。
「それにしても、いつ来ても凄い人だよね」
「もともと、この都市にはALO最大で、攻略不可能とされていたグランド・クエストが設定されていたからな。旧来の最終拠点でもあるところに、ニュービューの出立拠点という新たな役目が加わったら、人が増えるのは当然だろうな」
「懐かしいな…ここに来たときは、あのでっかい世界樹に目を奪われたもん!あそこに、旧ALOのグランド・クエストがあったんだよね?」
「そうそう…どこぞの下種がとんでもないものを仕込んでたんだよ。俺も朧気にしか覚えてないけど、あれはよほどの準備と手段をしないと絶対にクリアできないだろうな…というか、ここを出立拠点として生まれ変わらせたのも、そういう嫌な記憶を少しでも払拭したいという運営の考えもあるのかもな…」
「フォン、考えてることが黒いよ!?」
思わず言葉に出た嫌な推測に、流石のユウキも苦笑いしていた。しまったと思いつつ、あの下種…須郷がやったことを思い出してしまい、つい言葉に出てしまったのだ。
俺やアスナを始めとしたSAOプレイヤーたちの意識をALOに閉じ込め、結城家に取り込んでの政略結婚未遂、人の脳を介しての精神を操る人害を考慮しない研究に、それを隠蔽するための攻略不可能とされたグランド・クエストの設定…
俺が須郷の存在と所業を知ったのは全てが終わった後…リハビリの途中で見舞いに来てくれたキリトを通してだったわけだが、それでも、聞いた時には怒りが湧き上がってきた。もっとも、もう終わった話だし、キリトがしっかりと決着は着けたので今となっては嫌な思い出程度になっている。
「でも、種族か…なぁ。カーディナルは何を選ぶと思う?」
「…うーん……やっぱり水妖精族じゃないかな?魔法主体だとMPとかが多くなるものがいいだろうし…シウネーもヒーラー兼サブディーラーだったから、水妖精族を選んだって言ってたし」
「俺的には風妖精族もあるんじゃないかって。魔法関連のステータスは水妖精族の次に高いし、ある程度の格闘ステータスも取れるからな」
「それじゃ、どっちの予想が当たるか賭けない?外れた方は明日デザートを奢るルールで!」
「いいよ。というか、別に欲しいなら欲しいって言ってくれればいいのに」
「いやいや、こういうのはまた別なんだよ。当たったからこそ食べるデザートがまた美味しいんだから」
「そう言って、前にアスナとそれした時に滅茶苦茶悔しそうにしてなかったか?」
「……次は負けないって思えるから、それもまたアリなんだよ」
どっちが討伐対象のモンスター(その時は確かウルフ系だったか?)を多く倒せるかという勝負をした際、ものの見事にアスナに負けた時のことを持ち出すと、バツの悪そうな顔をしたユウキがそっぽを向いてしまった。
その姿に苦笑しつつも、俺は視線を数メートル先…アルンの中心地にもあたる転移石が設置されている場所へと向けていた。先程、俺たちもホームであるアインクラッド22層からそこを通してきたわけだが、まだ待ち人が現れる気配はなかった。
(種族か…俺は迷わず工匠妖精族一択だったけど、九つもあると、それは迷うよな)
アバターネームはともかく、一度選んだ後は変更することができない種族の選択は誰しもが慎重になる作業だ…どこぞの黒の剣士みたいに『装備が黒かった』という、一、二を争う事態だったことを考慮したとしても、浅はかな選択をする人の方が希少だろう。
ユウキでさえ、『接近戦ができる種族で、AGI・DEXの基礎値が高いもの』ということで闇妖精族を選んだのだから尚更だろう。
さっき話に出た水妖精族に風妖精族、それとクラインが選んだ火妖精族、シリカとシノンが選んだ猫妖精族が旧ALOでは人気種族だったが、ここ最近は新生アインクラッド攻略における求められるものが各種族の長所として注目され始めた。
更に、俺やユウキ、キリトという『種族ではなくプレイヤースキルも大事』ということを統一デュエルトーナメントの上位独占などの活躍で、嫌という程に風潮させたことで様々な種族が選ばれるようにもなった。
そういうことで、工匠妖精族や闇妖精族、影妖精族、土妖精族、音楽妖精族にも日が当てられるようになり、この央都アルンでは様々な種族が行き来をしているわけだ。
そんなことを思っていると、転移の光が前方に見え、そこから姿を現したのは…
「…よっ。どうやら無事にログインできたような……カーディナル」
「…もしや…フォンか?ということは、隣にいるのは…ユウキじゃな?」
向こう…アンダーワールドや現実世界で相対してきた姿とほとんど同じその容姿が、誰かを探しているように周りをキョロキョロしているその姿に、待っていた人物がやってきたのだと、傍に近寄り声を掛けた。
いきなり声を掛けられたことに驚きながらも、自身の名を知っていることと、リアルでの面影が残っているアバターから向こうも…カーディナルも俺のことを認識できたようだ。そして、隣に立っているユウキのことも分かったようでホッとしていた。
…その安堵した心情になぞってか、その頭部に位置していた二つの耳が少しだけ垂れたように見えたその姿は…
「…猫妖精族、か…これはまた意外な選択だな」
「…うん…でも……カワイイ!凄い似合ってるよ、カーディナル!」
「う、うむ…そうか。なら、良かったのじゃが…」
種族毎にパーソナルカラーといった差別が図られているのだが、頭部にある二つの獣耳を一目見れば、その種族だと理解することは簡単で…
カーディナルが選んだ種族が猫妖精族だったことに俺たちの予想が外れたことに驚いている俺に対し、ユウキはその姿に歓喜の笑みを浮かべていた。褒められたカーディナルも照れながらも、どこか嬉しそうにしていた。
初期装備らしく、紺色の軽装にアンダーウェアとロープ一枚という恰好がそれを物語っていた。オーバル型の小さな眼鏡も引き続きその目元にはあり、一層『猫耳がそのまま生えただけのカーディナル』という印象を受ける感じだ。もちろん、耳は妖精らしく長耳になっているが、まさか身長までもがそのまんまだとは…
「フォン。お主、今、何か失礼なことを考えておらぬかったか…?」
「(っ!?)…何のことだ?何にも思ってなんかないさ」
「…そうか…お主の目線に何か邪なものを感じたのでな」
(…エスパーかよ…!?)
内心を読まれたのかと一瞬ヒヤッとしたが、どうやら雰囲気を感じ取っただけだったらしい。それ以上、カーディナルが追及することはなかったが、俺は心の中で絶句すると同時に、カーディナルに対するNGワードが何かを悟ったのだった。
「…それと、こっちでのわしの名はカナデじゃ。できるなら、そっちで呼んでくれるかのう?」
「カナデ…良い響きだね。カーディナ……カナデが考えたの?」
「いや。考えたのは……(チラッ)」
「…もしかして…フォンが考えたの…?!」
「…アハハ…」
カーディナル…もとい、ALOでのアバターネームであるカナデの名を伝えた彼女の視線を辿り、名付け主が俺であると知ったユウキが驚きの目でこっちを見ていた。その反応は予想通りではあったが、俺は苦笑しつつも、どういう経緯でそうなったのかを思い出していた。
そもそもの話、「カーディナル」という名がザ・シードを媒体にしているVRMMOワールドにおいてはあまりにも不適切だったのが事の発端だ。まぁ、不適切というよりも、根幹たるシステム…「カーディナル・システム」を連想される危険性があったのだ。
もちろん、そのシステムのことを知る者など限られているわけだが、逆に言ってしまえば、その人物はVRMMOにかなり精通している人物というわけでもある。特にカーディナルは例外中の例外とはいえ、ユージオやアリスと同じフラクトライトという、別世界の人間とも言える存在なのだ。
カーディナル・システムを連想させる名から関わりを疑われることは、二人と違い、その存在を公表していないカーディナルの身を守るためにも、ALOを始めとしたVRMMOで活動する際に、アバターネームを別に設定することになったのだ。
そして、自身よりもそういうことに詳しそうということで、カーディナルから俺に名づけの依頼がされた…のが、昨日のラースでライトキューブを受け取る前で、事の発端だったわけだ。
『名前か…定番なのは本名の略称だよな。今回はカーディナルの真名さえ隠せれられればいいわけだし…けど、ALOでのもう一つの名前になるわけだし、あんまり適当に決めるわけにも……どうしたもんかね…』
家に戻ってきて、現実世界での受験勉強の合間…ユウキには先に寝てもらっている時、俺はノートにアバターネームの候補を考えて書こうとするも、しっくりくるものが来ず書きあぐねていた。
『シンプルに略するなら…カデナとか?でも、カデナって、確か………スペイン語で「鎖」か。なしなし…アンダーワールドに則ったものにするべきか?でも、俺もそこまであっちの世界に精通しているわけじゃないし…』
以前、どこか聞いた覚えがあり、オーグマーの辞書機能で検索すると、あまり良いイメージではない意味がヒットし、二重線を引いて候補から消す。真名から取るのが難しいのなら、カーディナルに関連した何かと考えるも、俺自身が知っている範囲でというのも限度があるわけで…
どうしたものかと空を切るペン先を持て余しながら考える俺…そんな中、ふと目が留まったのは先程二重線で上書きした『カデナ』の文字で…
『………アナグラム…文字を並び替えて……『カナデ』………悪くないんじゃないか?』
俺たちの世界だと『奏』という文字を連想させる響きに一種の達成感を覚え、ALOで入力するための綴り『Canade』を横に書いていく…読み的には『キャナデ』とも読めてしまうが、Cの字をKに変えることはなんとなく抵抗があり、そもそもこの名づけをカーディナルが気に入るかどうかも分からかったので、ひとまずこの名を提案してみようと思ったのだ。
「…カナデ…フォンが考えた名前か。いいな~、カナデ」
「そ、そこまで羨ましがるものでもないじゃろう…!」
(もっとも、まさか猫妖精族をカーディナルが選ぶとは思ってなかったけどな…)
偶然にも名前の綴りとよく似た種族を選択するとは予想していなかったこともあり、内心苦笑しながらも、俺はユウキと話すカーディナル…カナデの姿を見ていた。
「さてと…それじゃ、まずは基本操作からだな」
合流してすぐ、ひとまずカナデの装備をなんとかしたいわけなのだが、俺やキリトとは違い、ニュービューと同じ立場である彼女が所持金を多く持っているわけもなく…ならば、まずはモンスターを討伐して資金を得るべきだという話になるわけで…
とりあえず、ALOにおける基本操作を教えなければということで、俺たち三人は央都アルンから少しだけ離れた位置にある古森の近くに広がっている草原へと来ていた。
ここも旧ALOでは終盤のフィールドということで高レベル帯のモンスターがひしめく場所だったのだが、今では初心者の入門場所ということでもの凄いレベルダウンが図られたのだ。
そんな中、どこからカナデに教えるべきかと考えていると、意外なことが彼女から告げられた。
「大まか動きや闘い方に関しては別に省略して構わんぞ。体感的にはあっち…アンダーワールドとそう大差はないようじゃしな」
「そう、なのか…?それなら、魔法関連の方からレクチャーした方がいいか?初期のものなら、俺も教えられるし…」
「それも、ユイが攻略サイトなるもの…確かMMOトゥデェイといったか?…を案内の道すがら教えてくれたから大体は理解できた。後は実戦で試してみるだけじゃな」
「……だ、だ、だ…だったら…飛行の仕方とかも…もしかしてご理解されていらっしゃったりしますか?」
「いきなり話し方が怪しくなったぞ…流石にそれは分かっておらぬ。あっちでは風素系の神聖術を応用しての飛行じゃったからな…すまぬが、頼めるか?」
「…!そうか、よし!任せてくれ!!」
「うん、任せてよ!うん!!」
「う、うむ…宜しく頼むぞ…?」
『あれ…もしかして、俺たち案内役としていらない子?』という疑念を感じてしまう程、ものの見事に予習してきたかのようなカナデの反応に、焦りから変な口調になってしまった。
だからか、なんとか役に立てる要素が見つかり、思わず勢いよく応えてしまった。ユウキも同じことを感じていたようで、俺たちのその姿にカナデを戸惑わせつつも、早速ALOの一番の醍醐味でもある飛行のレクチャーへと移ることとなった。
「まずは翅を出してくれるか?背中を強く意識すれば具現化するから」
「うむ………っ!これか…なんというか、変な感覚じゃのう」
「まぁ、最初はそうだよね…でも、飛行に慣れていったら、そのうち全然気にならなくなるよ。それで飛び方はね…こうグッと翅に力を入れて、ビュビューンって空に駆けたいってイメージを「(ビシッ!)止めなさい…!」…いたぁ…むぅぅ…!」
獣の翼を模したかのような猫妖精族特有の四枚の黄翅がカナデの背中から具現化したことを確認し、まずは初期段階ということで飛び方を教えようとする。が、擬音交じりの感覚派流の教えがユウキから飛び出しかかったのを手刀を頭部に軽く繰り出すことで制止した。
ちょっとお怒りの表情を頬を膨らませながら表し、抗議のジト目を向けてくるも、流石に今のは責められるのは筋違いだ。
「なにするのさ、フォン…!飛び方を教えようとしてただけじゃん!?」
「あのな、ユウキ…その教え方で飛べるのはスリーピング・ナイツみたいなVR経験が豊富な人だけだ。もうちょっと頭で認識できるようなものした方がいいだろう?」
「…ちぇ…分かったよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「…ああ、悪い、カナデ。いきなり変なところを見せちゃったな」
「…!…いや…お主たちはいつもそんな感じなのか?」
「いつもというか…まぁ、こんな感じといえばそうだし、そうじゃないといえば……いや、大体そんな感じか?」
「なぁ…酷いよ、フォン!なんか、ボクがいっつもトンチンカンなことをしてるみたいじゃんか…!」
「い、いや…別にそういう意味で言った訳じゃ…!こういうやりとりを含めて、楽しくしてるよってことを言いたくてだな」
夫婦漫才といえばいいのか…いつの間にか置いてけぼりにしてしまっていたカナデが呆然とこっちを見ていたのに謝罪しつつ、その問いに首を傾げながら答える…ところが、またしても抗議の声がユウキから上がり、慌てて弁論するという流れになってしまい、
「…仲が良いのはいいことじゃろうが、そろそろ本題に戻ってほしいのじゃが」
と、ちょっと呆れが混じったカナデの一言に、俺とユウキも夫婦漫才…もとい、言い合いを止めて、飛行訓練へと意識を戻した。
理論をその頭で分かってもらうのが一番早いということで、まずは補助コントローラーありでの飛行をカナデに行ってもらった。
最初は自分の感覚で飛ぶという感覚に違和感を覚えていたが、慣れてきたところで大まかに自由自在に空を動き回れるようになったところで、俺は次の段階へと移ることにした。
「…その飛んでる感覚を覚えて…背中から翅が繋がってる感覚そのものを、自分の身体の一部と感じて…」
「う、うむ………この感覚を、覚える…」
左手に補助コントローラーは持ったままだが、空いている右手を俺が掴み、ゆっくりと先導するようにカナデを引っ張っていきながら、平行飛行をしていく。
補助コントローラー有りでの飛行は外部から翅を動かして操作するものに等しい…言うなれば、飛行する際にどう翅が動かせばいいのかを理解するのにも一役買えるのではと思い、今の訓練をしているのだ。
補助コントローラーで翅の動きを確かめながら、時には自身の意志だけで動かして飛行移動してみせようとするカナデ…だが、流石にいきなりそれをマスターするのは簡単なものではなく、四苦八苦しているようだった。
もちろん、落下することがないようにすぐ後ろにユウキが控えてくれているので万が一はない。もっとも、最初は女性同士の方が色々と気を遣わないだろうと、ユウキに先導役を頼み、俺がフォローに回ろうかと思っていたのだが、
『えっ?フォンが支えてあげた方がいいじゃない?咄嗟の時のフォローこそ、どんな体勢で受け止めることになるか分からないし、ボクがそっちに回るよ』
と、ユウキに言われたことにも納得する部分があり、今の配置になってから15分ほど飛行訓練をしていたのだ。
「…むぅ……ふぅ…」
「…カナデ。そろそろ一回休憩にしようぜ。あんまり連続してやって、集中力が途切れる方が危ないしな」
「そ、そうか………いや、もう少しだけやらせてくれんか?もう少しで…なんとなくの感覚が掴めそうなのじゃ」
集中し過ぎたせいか、少し顔が赤くなってきているカナデにそう提案するも、継続の意思を示した彼女にもう少しだけ付き合うことにした。
「分かった…但し、あと5分だけだ。それを過ぎたら、一回休憩だ」
「う、うむ………よし…!」
俺の目を見て、薄っすらと笑みを浮かべたかと思えば、気合を入れ直したように表情を引き締めたカナデは、飛行訓練を続けていく。
すると、言っていたように感覚を掴んできたのか、5分の間に次第に補助コントローラーなしで飛行できる回数が何度か出てきた。
(流石というか…これは随意飛行をマスターするのも時間の問題か?)
今日はとりあえず飛行の仕方と実践での経験をつめられればと思っていたのだが、集中力を発揮してきたカナデの姿に、そんなことを考えていた。
そんな予想が的中したのか、休憩を挟んで再び飛行訓練を開始して1時間ほどで、カナデは随意飛行をほぼほぼマスターできたようだ。
もっとも、流石に俺たちみたいなトップスピードでの飛行はできないが、多少の戦闘はできる程度にまで飛べるようになったのだから、十分だろう。ということで…
「…よし。今だ、カナデ!」
「うむ!」
大まか飛行訓練が(予想を遥かに上回る良い形で裏切られ)終わったところで、あまり初日から飛ばし過ぎてもしょうがないというのもあって、後は地上での実戦をすることにした。
今日はそれで終わりにしようということで、近くにあった古森の中を進んでいて、今は俺が振るった獲物によって、体勢を崩したコウモリ(の割には丸々すぎる体型なのだが)に、カナデの放った火属性下級魔法<ファイア・ボール>が直撃したところだ。
炎に焼かれならがポリゴンに変わるモンスターを見送り、俺は30匹目の討伐を終えたところで、突き出していた手…その掌から炎の玉を放った手を下ろしていたカナデへと振り返る。
「大体感覚は掴めてきたんじゃないか?」
「そう、じゃのう…あっちでも詠唱省略といった方法があったにせよ、術を発動させるのに神聖語を唱えねばならぬかったからな。一度呪文ややり方さえ覚えてしまえば、そう大差はない」
さっきのような形を繰り返してきたのもあって、カナデの表情にも余裕が生まれていた。初期ステータスなので、MP自体の総量が多くはないが、使える魔法も初級に限られているので連続しての戦闘ではない限り、自然回復で補うことができる。
…一方で、出番がないことにちょっとつまらなそうにしている人もいるわけで…
「…むぅぅ…ボクの出番がない」
「ハハッ…ゴメンな、ユウキ。ここら辺のレベルだと、ユウキのステータスだと一撃でやっつけちゃうから」
意外なところで失敗したのが、モンスターのレベルだ。俺はともかく、数々のVRMMOを渡り歩いてきたユウキのアバターだと、この辺りのモンスターを全て一撃で仕留めてしまうのだ。
パリィしようにも、この森で出てくるモンスターはさっきのコウモリを始め、ウルフ、狐、虫系統にスライムといった、体当たり主体の攻撃しかしてこないため、防御だけで返り討ちにしてしまうわけで…
「これを機会にユウキも別の武器に挑戦してみたりどうだ?アスナみたいに細剣とか」
「うーん、そうしようかな…でも、そっちに慣れた頃には片手剣の方が感覚鈍りそうだし…むむむむ…!」
(あー…余計に考えさせちゃったか…)
熟練度をカンストしていることも加わり、前衛をそろそろ代わろうと思い、そんな提案をしてみたのだが、流石に即断はできないようで悩みこんでしまったユウキを見ながら、やってしまったと心の中で呟く。
一体目を一瞬で倒してしまってから、俺が前衛をしっぱなしでいて、後ろの警戒をしてくれていたユウキに息抜きを兼ねての提案だったのだが…
そんな俺たちを見兼ねてか、それとも、ユウキが悩んでいる間にか、カナデは何かが気になっていたことがあったようで声を掛けてきた。
「アンダーワールドの時から思っておったが…お主は一体いくつの武器を扱えるのじゃ?」
「えっ?…どうしたんだよ、いきなり…」
「どうしたも…両手剣や大剣はまだ分かるわい、映現世の剣という例があるかのう。じゃが!お主はあの剣を次々と違う武器に変えていっては、迷うことな使いこなしておったではないか!?」
「…あー…」
「長槍、投球、鎌、弓、手甲、刀……しまいには、それじゃ!」
今までは非常時とか、直前まで(ALOにおける)初の実戦ということもあったが、慣れてきたことで普段の冷静さが戻ってきたのだろう…叫ぶように指摘してきたカナデの言葉に、俺は持っていた獲物へと視線を落とす。
…そう、まだ熟練度がカンストしていない、先日のアップデートにより追加された武器の一つである鞭を…
いや、どうして俺が鞭を装備しているかというと、まだ熟練度をカンストできていないこともあって、持っている武器の中でSTR値が低く、使い方によっては敵を拘束しやすいという面もあって、熟練度上げも兼ねて現在使用しているわけである。
アップデートで他にも、ボウガン、トンファー、脚具(これに関してはソードスキルが追加されてないため、微妙だが…)、そして、かつてSAOにも存在して大鎌がソードスキルと併せて新たなる武器カテゴリーに追加されたのだ。
ということで、もちろん弓や手甲の時と同じように『幻想剣』ソードスキルにも新たなものが増えたわけで…SAO時代にカンストしていた大鎌はともかく、武器が追加されたことでエクストラスキルまでも一部が解放され、最近はそれらの熟練度を上げていたりもしていたわけなんだが…
「おかしいじゃろ!?さっきまで大剣を持っていたから、こっちではそうかと思っていたが、武器を変えたと思えば難なく操って…!」
「…いや、言い訳させてもらうと、使い始めたばっかりではあるが、俺も多少の訓練はしたんだぞ……一週間ぐらいだけど」
「まぁ、カナデの言うことも分かるよ。最初は戸惑ってたのに、二度、三度戦闘を終えたら、あっという間にコツを掴んでるんだもん」
「ユウキまで…!?」
カナデの意見に、いつの間にか復活していたユウキまでもが同調していた。確かに熟練度が上がりやすいのは、ユニークスキル『幻想剣』の共通効果ではあるのだけど…まぁ、確かに異常ではあるか。
「えっとだな…そういえば、ユウキにこのことを話すのも初めてか。SAOの時とかは攻略に必死でそれどころじゃなかったしな。自分で言うのもあれだけど、もともと俺って結構器用な方でさ…子供の頃に色々やってたって話は、ユウキにもしただろう?」
「うん、あの話だよね…」
「その昔の話がどうかしたのか?」
そろそろ切り上げるか、少し小休止を挟もうかと思っていたこともあり、いいタイミングだったので、足を止めてそのことについて話していく。
過去の俺のことを話したことがあるユウキはちょっと気まずそうにしているのに対し、話自体が初耳のカナデがその先を促してきた。
「まぁ、その…悪癖というかな。一度やり始めたことは放り出せないわ、できるようにならないと気が済まないわ、できたらできたらでどこまでやれるかという無駄に高い挑戦心が形成されてしまって…」
ここまではユウキも知っている話…で、ここからは、ユウキもまだ知らなかった話だ。
「それでいきなりSAOに放り込まれたんだけど、俺ってキリトと一緒に行動することが多かったから、必然的に他のプレイヤーと関わることが少なくなってさ」
「…嫌われておったのか?」
「まぁ、そうとも言えるかな…そうするように振舞ったというのも大きいけど。けど、キリトと二人だと、ダメージディーラー…攻撃役に徹するあいつをフォローしようと思うと、俺も片手剣だと色々都合が悪くてさ。
それで、途中から曲刀も使い始めて…そこから両手剣主体の戦闘に落ち着いた…となってたら良かったんだけど…」
「もしかして…?」
「そう…両手剣スキルをカンストしてマスタリーしたことで、他の武器をも開拓したくなったんだよ。もっとも、その時は使える武器が増えれば増える程、戦闘にバリエーションを持たせられたり、武器それぞれの特徴を生かした闘い方ができると思って…
そしたら、いつの間にか存在しない筈の11番目のユニークスキルである『幻想剣』の所有者になって、その戦い方から『夢幻の戦鬼』なんていう二つ名をつけられちゃったってわけだ」
恐る恐る尋ねるユウキの懸念通り、またしても悪癖が出てしまったわけだ。言い訳するのなら、少しでもゲームクリアに近づけるための手段を増やしたいという想いから成るものだったと言いたいが…今もあの時とやってることは変わらないのだから、どうなんだという話なんだが…
「特にALOだと両手に武器を持ってもソードスキルは発動できたりするから、なおさらのめり込んだよな、うん…」
「普通なら器用貧乏になりそうなところじゃが、それが一定以上にできてしまうというのだから、お主も困ったものよのう」
「しかも、キリトとはまた違う二刀流で闘ったりもするし、こっちでも防具とか武器とかコロコロ持ち換えてるくらいだからね」
「なんと…!あっちで映現世の剣を使っている時だけがおかしいのかと思っておったが…元より大差なかったのか…」
「…あれ?気のせいか、ディスられてない、俺…?」
質問に答えた筈が、なぜかとんでもないものを見るような目をカナデから向けられ、ユウキにいたってはやれやれといった様子だったことにそんな言葉が口から出てしまった。
「…禁忌目録スレスレのことを平然とやっていたキリトに比べたら、お主は真面目な方かと思っておったが…前言を撤回する。お主は困ったものどころか、人を驚かせる天才じゃ」
「失礼な…って言いたいけど、最近は色々と心当たりがありすぎて、まっすぐ否定できないのが辛いよ」
「カナデ…多分、驚いているのも今だけだよ。そのうち慣れてくるから」
「…お主も結構苦労しておるのだな、ユウキ」
「いや、ユウキはユウキで音速以上の物体を難なく斬ったりしてただろうが」
「お主も大概ではないかぁ?!」
まるで他人事のように話すユウキに、俺はGGOでの一件…光剣で弾丸を余裕で斬り飛ばしていたことを持ち出す。それを聞いたカナデが180度態度を反転させながら驚くわけで…
「…はぁ…お主たちの話を聞いていると疲れるわ」
「ア、 アハハ……なんか、ゴメン」
「…さてと…あと何回か索敵をしたら、今日は終わりにしようと思ってたけど……その前に退屈で死にそうな人がいるからな」
「アハハ……ゴメン」
「ふぅ……そうだ。なら、ちょっと別の形での討伐訓練をしてみるか」
「「…?」」
ちょっと不安があったのと、カナデが女性ということもあって、ユウキに今日は付いてきてもらったのだが、これならもう少し上の狩場でやった方が良かったかと思いつつ、一つ趣向を変えてみるかと思い、左手でシステムウィンドウを呼び出す。
何をするのかと疑問の視線が二人から向けられるも、習得スキル一覧から目当てのバトルスキルを見つけ、選択する前に二人へと警告する。
「これからモンスターを一気に呼び寄せるから、覚悟しておいてくれよ?」
そのまま有無を答えさせずに俺はバトルスキルを選択して発動する…次の瞬間、システムになぞって動いた体が山折りになったかと思えば、次の瞬間、
『ウオオオオオオオオオオオオオオォォォォ!!!』
「「っ!?」」
普段ではまず出すことのない、獣の咆哮にも近い叫びが放たれ、すぐ傍にいた二人が体をビクリとさせていた…けど、驚いている暇などもうなく、
「…!フォン、何したの?!」
「言っただろう、モンスターを呼び集めるって。周囲にポップしているモンスターが俺たちを…正確には俺にタゲを強制的に取らせたんだよ」
「バ、バカァ!?鬼!?…うわぁ!?滅茶苦茶の数のモンスターが迫って来てるじゃん?!」
発動してすぐに索敵スキルを発動させる。すると、周囲に点在していたモンスターたちが一瞬動きを止めたかと思えば、もの凄い勢いで俺たちのもとへと迫って来ていた。
索敵スキルの使い方が分かっていないカナデも、罵倒交じりの泣き言を言うユウキの姿に危険を感じたようで顔が険しいものになる。
「ちまちま集めるぐらいなら、最後は集団戦をやった方が効率いいかなって…ユウキも退屈はしないで済むだろう?」
「『だろう?』じゃないよ!?もうちょっと詳しく説明とかしといてよ!」
「…だ、大丈夫なのか?どれぐらいのモンスターが迫ってきておるのじゃ?」
「えっとな……大まかにみて50は来てるな。それよりももう少し多いくらいか」
「なぁ…50以上じゃと?!」
索敵スキルに引っかかったモンスターを数え、把握できる大体の数をカナデに伝える。このスキルの効果が及ぶ範囲は限られており、更には発動した瞬間に範囲にポップしているモンスターにしか効き目がないため、これ以上増えることはないだろうが…
少なく見積もって50以上のモンスターが来ていると聞いたカナデは絶句していた。けど、そんな彼女に俺はこう告げる。
「安心しろって…一匹もお前に通したりはしないから」
「…えっ…?」
「ここから先には一匹も通さない…お前にモンスターの攻撃は触れさせないから。だから、お前は魔法を撃つことだけに集中しろ。前と背中は俺たちに任せとけ…そっちは頼んだぜ、ユウキ」
「…もう…本当に、フォンはしょうがないな。任せておいて!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺とユウキのそんな言動にカナデはポカンと口を開けてしまっていたが、何かツボにはまったのか、急に笑い出してしまった。
「ククッ…フフフッ!まったく…お主らはよく平然としておられるのう…!」
「まぁ、結構な修羅場を潜り抜けては来てるんだ。この程度、それらに比べたら大したもんじゃないさ」
「…ならば、その言葉を信じるぞ。わしは、わしのできることをやらせてもらうわ」
信頼が籠ったその言葉を受け取り、視線を戻すよりも先に気配を感じていたそれに注意を向ける。
俺の意識が逸れていると思っていたのか、それとも、バトルスキルによる挑発効果で飛び出してきたのか、ウルフ系統のモンスター『ワイルド・ウルフ』の姿が見えた瞬間、俺はソードスキルを発動させながら鞭を振るった。
『…!キャァイン…?!』
鞭単発拘束ソードスキル『キャドール』…淡い水色のライトエフェクトを宿した鞭が勢いよくウルフの足元へと纏わりつき、その動きを阻害する。
「そうらぁ!!」
そして、そのままSTR価に依存した力で強引に鞭を振るうことで、拘束されていたウルフの体が宙を舞い、そのまま発動させたソードスキルによって…今度は淡い赤色のライトエフェクトを宿した鞭が勢いよく振るわれるのと同時に、その解放された身体が放り出された。
鞭単発投撃ソードスキル『リスロウ』…投げ当てた相手の重量がダメージ補正に加わるソードスキルにより、次に飛び出してきていたボア系のモンスター…『ワイルド・ボア』とウルフがぶつかり、相打ちという形でダメージを互いに負い、それぞれがポリゴンに変わる。
しかし、息を吐かせる暇など与えまいと、今度はボア系やウルフ系、さらには『ブルー・スライム』までもが入り混じった、7体のモンスターが攻撃を仕掛けてきて、
「っ…はあああぁぁ!!」
先頭にいたスライムを筆頭に振るった鞭…翡翠のライトエフェクトを宿したそれがヒットした瞬間、まるで分裂したかのように見える程に高速で乱舞した鞭が、一瞬のうちに残りの6体のモンスターまでもほぼ同時にポリゴンへと変えてしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
幻想剣≪鞭≫8連撃ソードスキル<スネーク・アグリゲート>…一秒にも満たない風属性を宿した高速連撃が、オーバーキル待ったなしの過剰ダメージを与え、モンスターを一掃するも、モンスターたちの波は止まらない。
唖然とするカナデの視線を受けつつ、俺は振り返り、
「ボォーとしてるなら、全部俺が持っていくぞ…カナデ」
「っ…!わ、分かっておる!」
このままだと本当に俺が全部やってしまうことになる…それでは、意味がないのだと発破を掛ける形で声を掛け、カナデの意識を戦闘へと戻させた。
すると、タイミングよく第2波のモンスターの群れが出てきて、俺たち3人は迎撃行動に入っていった。
「あぁぁ~~~~…疲れたぁぁ~~…!」
「…同感じゃ……もう今日は一句も呪文を唱えたくはないわ…」
森を抜け、ようやく一息吐けるようになったところで、ドサっと地面に腰を下ろしながら、ユウキとカナデが疲労の籠った言葉を零していた。
あれから結局100体足らずぐらいのモンスターが襲ってきて、俺たちは片っ端から相手をすることになったのだ…まぁ、それが狙いではあったのだが、流石に予想よりも少し多かったわけで…
「お疲れ、二人とも。ユウキはともかく、カナデも30体ぐらいは倒したから、種族値も魔法の熟練度も上がったんじゃないのか?」
「…あんなやり方で上がっても微妙な気分じゃわ…あっちでも少し感じてはおったが、やっぱりお主は意地の悪い性格をしておるのではないか?」
「そういうつもりはないんだけど…何故かよく言われる」
ジト目と共にそんなことをカナデに言われてしまう。俺的にはそんなつもりはないのだが…時折そんなことを何度か言われてくれば、否定し辛くなってきたこの頃だ。
「というか、さっき使ったあれは何だったの?」
「あれはバトルスキル<ロオリーシャウト>っていう、挑発バトルスキルの<バトルシャウト>の上位互換だよ」
少し休めたことで普段の口調に戻ったユウキから、さっき俺がモンスターたちを呼び寄せたバトルスキルについて質問が飛んできた。
バトルスキル<ロオリーシャウト>…これは一定の範囲内(使用者のVIT価によって増減するが)のモンスターのヘイトを急速に集めるスキルだ。
基本的にはシャウト系のバトルスキルはヘイトをコントロールしたい時に使うものだが、時間が惜しい人にとっては、効率よくモンスターを移動することなく呼び寄せることができる経験値稼ぎに有難いスキルだったりもするのだ。
もっとも、範囲内のモンスターを残らず集めてしまうため、デスゲームと化したSAOでは大変リスキーなものだし、そもそも、他のプレイヤーの狩りを邪魔することになるというプレイヤーからのヘイトをも集めかねないという欠点もある。
さらには、モンスターを使ったプレイヤーキル…MPKのために、発動した直後に隠蔽スキルを使っての擦り付けまでもが横行したので、SAOではボス戦以外でこのスキルを使うこと自体が嫌煙されていたのだ。
なら、どうしてそんなスキルを取得していたのかというと、『ビーター』と揶揄され避けられていたキリトと行動を共にしていた俺たちは、人目を避けてレベリングする機会(これはユニークスキルを二人とも得てしまったから、それからは尚更増えたわけで)が多かったので、交互に使ってレベリングの為の狩りをするために習得したのだ。
この<ロオリーシャウト>のクールタイムも10分と長い為、ワンクールを終えては片方が発動し、クールタイムが終わった方がまた発動し…みたいに、二人なら効率よくレベリングに活かすことができたわけだ…それにキリトと二人なら、安全性も上がるという一石二鳥の方法だったわけだ。
まぁ、今回は熟練度上げの為でもあったが…集団戦において、魔法主体の戦闘の弱点…呪文を唱えないといけない手間や、その場に適した魔法が求められる点、そして、アンダーワールドと違い、誘導がシステムに全て頼り切りになる、心意による変動が利かせられないということを、カナデに体感してほしかったのだ。
「…何故じゃろうな。わしの中のお主に対する見方が、今日一日で色々と変わってしまったぞ、フォン」
「う~ん…慣れると、一緒にいて楽しいと思うんだけど…フォンの良い所で悪い所だよね、それ」
どこか呆れた顔をしたカナデに、全くフォローになっていないユウキの言葉が追撃で心に刺さる…なんか、その評価は受け入れられないのだが…
「ま、まぁ…初日の目標を大きく超えられる形で達成できたということで、今日はこのへんにしておこうか」
「…無理やり話を逸らした」
ボソッと呟かれたユウキの言葉をスルーし、今日はここまでにしようと提案する。後半はそこまで出番がなかったユウキに対し、初日で、随意飛行をほぼマスターし、更にはかなりの数の戦闘を経験したカナデの疲労は結構なものだろう。
ユウキも呆れ顔から一転して笑顔へと変わり、それに同意したところで、央都アルンに戻ろうとしたのだが、
「それなら、わしはここで別れるとしよう」
「えっ、いいのか?確かにアルンはすぐそこだけど…」
「戻るまでにもう少し飛行に慣れておきたいのじゃ。それに、宿屋ぐらい一人で見つけられるわい。心配のし過ぎじゃ」
カナデからそんなことを言い出され、確かにあまり干渉し過ぎるのも過保護に当たるかと思い、その意見に反対することなく俺は受け入れた。
「分かったよ。なら、俺たちはこのままホームに戻って、そのまま寝落ちログアウトするから。また、明日な」
「…うむ。それでは、わしは先に行くぞ。…そうじゃった……フォン、ユウキ」
「どうした?」「なに…?」
「…今日はありがとう。色々と楽しかったぞ」
飛び立とうとして、言い忘れていたことを伝えてきたカーディナルの頬は少しだけ赤く、そして、笑みをその口元に浮かべていた。照れながらも、それが本心であることを表情で物語っていた彼女は、翅を具現化させて飛び立ってしまった。
「…さてと、俺たちも帰ろうか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ユウキ…?どうかしたのか?」
「…!えっと…ゴメン、ちょっと考え事してた。うん、帰ろう、フォン。折角だから転移石じゃなくって、アインクラッドまで飛んで帰ろうよ」
「…そうだな。たまにはそうするか」
一瞬、声を掛けられたことに気付かなかったユウキに首を傾げるも、何事もなかったように振舞うその姿に、最後のあれがやっぱり意外と効いたのだろうか、疲れたのだろうか、と思った俺は、それ以上追及はしなかった。
先に空へと飛んで行った彼女を追いかけるように、翅を広げて空へと飛翔した。
武器&ソードスキル解説
・武器カテゴリー『鞭』
適正レンジは中距離。攻撃範囲は剣以上弓以下と、それなりにリーチに優れた武器だが、威力自体があまり高くない。ソードスキルを含めて攻撃属性は打・斬のみ。
他の武器に比べて独特の癖があり、牽制や拘束と補助兵装としての側面も持つ為、サブウェポンとして使われやすい。
一定のリーチから攻撃できる反面、ソードスキルの膠着の関係上、膠着が解けた後に振るっていた鞭を引き戻すことになるという隙を生みやすいという欠点がある。
幻想剣における固有能力は「攻撃力を半減する代わりに、一撃で2段ヒットする」という特性を強制発動。一見、意味がないように思えるが、デバフ・状態異常の発生率が二回恵まれるということで、『30%で発生する効果の判定が二回機会が訪れる』ということになる。但し、攻撃力が下がる分、タンク仕様の相手にはダメージが通りづらい、最悪の場合、無効化されるという弱点もある。
鞭「ラナウ・エルドール」
フォンが使用していた茨の蔓を模した鞭。何度か強化を重ねられたことで、まだ発展途上ではあるが、その性能は古代武器級に差し迫るものになっている。
VITに重点を置いた耐久性の高い武器で、付随効果として敵を拘束中に微量ではあるが継続ダメージを与える。
鞭単発拘束ソードスキル『キャドール』
淡い水色のライトエフェクトが特徴の鞭系初級ソードスキル。熟練度に関係なく、まず最初に習得するスキル。攻撃力はないが、敵を拘束することができる。成功率・拘束の維持時間に関してはステータスとスキルの熟練度によって増減する。
鞭単発投撃ソードスキル『リスロウ』
淡い赤色のライトエフェクトが特徴の鞭系初級ソードスキル。熟練度が50を超えたら取得できる、熟練度アップでは初めて覚えることになるソードスキル。単発攻撃としてもそのまま使用できるが、何かを掴んで投擲することで真価を発揮するソードスキル。ダメージ値に投擲したものの重量に比較した追加値を加算できる。
意外な使い方として、プレイヤーを投げ飛ばすという連携技にも使えるが、(投げる方も、投げられる側も)余程の上級者でなければかなり難しい。
幻想剣≪鞭≫8連撃ソードスキル<スネーク・アグリゲート>
翡翠色のライトエフェクトが特徴のソードスキル。
初撃がヒットした瞬間、残りの7連撃が蛇の如く自動で振るわれ、一秒にも見ない高速連撃で敵を圧倒する。但し、初撃がヒットしなければ、残りの7連撃も発動せずに硬直に襲われることになるため、発動には注意しなければならない。
幻想剣ソードスキルは、最上位系統以外はALOにおいては属性がつかない仕様になっているが、鞭系ソードスキルだけは単体属性にはなるが付与されており、このソードスキルには風属性の特性を持つ。
元となったのは『八岐大蛇』。「8」のスネークに、技名の「アグリゲート」は英語で集合体を意味する単語の一つ。
バトルスキル<ロオリーシャウト>
〈バトルシャウト〉の上位互換系スキル。説明は本文で語っていたようなもので、ようするに『取り扱い注意!』という、一歩間違ったら害悪レベルになりかねないスキル。
そういうわけで、カーディナル…もとい、カナデのALOデビューとなりました!
アバターはケットシー(猫妖精族)でした!どうしてこれにしたかというと、『いや、のじゃ口調に猫耳とか最強じゃね?』と思ったのが半分あったからです!誰が何と言おうとそこは譲れないかと!!(オイ!?)
…まぁ、確かにそんなよこしまな…コホン…ちょっとした願望もありましたが、実はもう半分はちゃんとした理由があります。その点についても触れていくのが本章のメインとなっていきます。
ちなみに、作者がアバターネームを考え付いた経緯は、実はフォンが思い付くにあたった流れそのまんまだったりします!当初は本当に縮めただけの『カデナ』とかにしようと思っていたのですが、響きが悪いなと思いつつ、試行錯誤していた結果、『カナデ』に落ち着いたわけです。
もちろん『カーディナル』の名前も大事なものなので、今後は場面によって使い分けていく形になります。
そして、鞭を含めて公開となりました新武器カテゴリーたち!
既存の武器でさえ、幻想剣ソードスキルをまだ全部公開してないのに、とんでもない暴挙に出てしまいました…と思われるかもしれませんが、
次章の、第3のヒロインがメインのお話でその辺りはしっかりと書いていきますので、ご安心下さい!(…やっと武器を考えるのから解放されたと思いきや、今度はソードスキルを考えるのに囚われることになるとは…(苦笑))
あと、余談ですが第一話のサブタイを本来のものにサイレント修正しました。
本章はサブタイを全て英語にする予定です…意味があるかといわれると、そこまでは…本章のタイトルに絡めてという部分だけですので、あまりお気になさらずに(笑)
次回はまさかのデート(?)回になります。
それでは、また!
シュウ0427さん、p.ハクロウ.aさん、圧倒的チョモランマさん、
ご評価ありがとうございました!
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