激戦のアンケートを僅差で勝ち取った第一位のあのエピソードをお届けします!
…軽い気持ちで書き始めたら、設定盛り過ぎて大変なことになりましたが(苦笑)
軽く注意事項です!?
・本編に設定則った形ですが、パラレルワールド扱いなので、年齢とか弄ってる部分があります。
・一部のキャラは名前だけの登場になれば、都合上出せれなかったキャラもいますし、ちょっとキャラ崩壊している方もいるので、そういうのが苦手な方はご注意下さい。
・本編以上に平和な世界なので、まさかの設定が飛び出したりもします。
それでは、覚悟の決まった方からどうぞ!
…コツ、コツ…
「江戸時代に段階を経て発展していった文学は、明治時代でも様々な著者によって作品が生み出されたんだ…皆が一度は耳にしたことがあるであろう樋口一葉や夏目漱石もそうだが、いまでいうペンネームと認識されてる著者名の生まれの由来が面白い二葉亭四迷、模試でも作品と作者の組み合わせの正誤を問われる問題でみられる『金色夜叉』で知られる尾崎紅葉も明治だ。
こういった問題は時代と組み合わせて出題される傾向も強いから、しっかりと分別できるように覚えておかないと、後で苦労することになるからな…先生的には」
黒板に白いチョークで刻んでいくのは、要点を纏めた授業の内容…書いていく男は、慣れた手つきと口調で授業を進めていく。
蒼を基調に薄白のストライプとの組み合わせがその魅力をさらに引き立ており、スラっとした灰色のスラックスと眼鏡とのコンビネーションは、カメラがあれば俳優か何かと勘違いしそうなほどのイケメンだった。
進学校ということもあり、大半の生徒は授業の内容をノートに纏める為に集中して聞いていた。まぁ、しかし…そんな生徒の中にはそうではない生徒もいるわけで…
「…はぁ~…やっぱりカッコいいよね、音弥先生」
「うん…27才には見えない大人の香りを持ってるもんね」
「しかも、先生たちからの評判も高いから…優良物件だよね?」
「あれで彼女いないんでしょ?ワンチャンないかなぁ…!」
「あったらあったらで大問題でしょ…」
「いや、先生と生徒の禁断の恋……むしろ燃えるシチュでしょ?!」
「あんたの好みは知らないわよ!?」
「…こら、そこの二人。先生のことを話題にしてくれるのは有難いが、できれば俺の聞こえていないところでやってくれないか」
「「…っ!ゴ、ゴメンなさい」」
ヒソヒソ話が、盛り上がりとツッコミによって次第と声が大きくなっていたらしく、流石の男も注意せざるを得ず、苦笑いしつつやんわりと棘を指した。
女子生徒二人も流石にマズいと思ったらしく、すぐさま立ち上がり頭を下げ、それを見た周囲も思わず吹き出す感じになってしまっていた。
「…ふむ。そうだな…今日の進めたいところまでは話したし、終礼が鳴るまであと5分もないから、授業はここまでにしておこう。代わりと言ってはなんだけど、さっき出た作家の逸話について教えておこうか。例えば…」
右腕に着けている腕時計に目を落とし、何とも言えない空気になったこともあり、授業を早めに切り上げた男は、不定期ではあるがお約束になっている雑談を始めることにした。
『授業の進め方から生徒への質疑応答の対応なども素晴らしいのだが、余計な雑談をしてしまうのが玉にキズ(生徒からの人気も高いので悪くはないのが…)』…そんな評価をこの学校でされているのが、日本史・現代社会・論理科目を担当する教師 音弥蓮という人物像だった。
「…先生」
「…?おう、朝田か。どうした?」
先程の授業を終え、自身が当てがわられた教員室へと戻ろうとする中、自分を追ってきた生徒に呼び止められる音弥。
誰かと振り返ると、見知った人物である朝田詩乃だと気付き、呼び止められた用件を尋ねる。
「ユウキから伝言…今日も資料室にお昼食べに行くって」
「それはいいが…なんでお前が?」
「ユウキと直葉のクラス、次の授業が体育だから…で、先生は時折スマホのメッセージを見ないことがあるでしょ?だから、代わりに伝えてくれって」
「あー…了解した。朝田も来るのか?」
「そのつもりよ。この前、貸してもらった小説も返そうと思ってたから」
「もう読み終わったのか…一昨日貸したばかりだろう?」
「先生が勧めてくれる作品は当たりが多いから…つい読み過ぎちゃうのよ」
要件を理解したところで、以前貸していた小説へと話が移る二人。詩乃がバイトをしていることを知っていることもあり、貸していた小説が結構な量のものでもあったので、音弥は驚いていた。
「まぁ、貸している側が言うのもなんだが…寝不足とかにならないようにな?朝田は成績も結構良い方なんだが、それが原因で落とされたりしたら流石に申し訳ないからな」
「もちろん、そこのバランスは気を付けてるわよ…大丈夫だから、安心して」
「ならよし…ほら、そろそろ教室に戻った方がいいじゃないか?」
「そうね…って、そう言う先生はやけにのんびりしてるのね」
「俺は二限、授業が入ってないんでな…まぁ、文化祭における部活の申請書とか処理しないといけない書類が待ってるんだけどな。それじゃ、またあとでな」
適当なところで会話を終えた音弥と詩乃はそのまま分かれ、音弥は一時間近くある次の空き時間をどう使おうかと考えながら、廊下を歩きだした。
…残念ながら、その時間は別の要件で潰されることになるわけだが…
「…音弥先生。呼び出された理由が分かっておるか?」
「…とりあえず、文化祭のことに関して…ってわけじゃないみたいですね」
最上階である4階の視聴覚室に隣接した教師用の資料室兼教員用休憩室にて文化祭用の資料を仕上げていた音弥だったが、出来上がったのと同時に教員用PHSで呼び出され、苦笑いしていた。
『学園長室』…一際豪華な雰囲気が少しだけ漂う扉をくぐった先にいたその人にジト目を向けられ、そう尋ねられたのだが…今、自分が持っている書類が原因ではないのだろうと分かっていた為に苦笑していたのだ。
「…お主にかなりの負担を掛けることは分かっておる。しかしのう…」
「なんとかなりませんか…流石に反発を招くことになるかと思うんですが…」
「分かっておる…じゃが、その教師たちまでもがお主に推薦しておるのだから、こちらも強く言えなくてのう」
「マジですか…完全に、俺に色々と押し付けた感じじゃないですか」
完全に参ったといわんばかりの反応をする彼女に、音弥も何とも言えなくなってしまう。まだ半年近く猶予があるからいいが…経験の浅い自分が担うのはどうかというのが音弥の本音だった。
「…頼む!?来年のサマースクールの代表講師になってくれぬかぁ!?」
「…分かりました、いいですよ」
「お主もまだ着任して数年じゃし、いくら教師・生徒両方からの人気が高いとはいえ、こんな役をいきなり任せるのは……今何と言った?」
「お引き受けしますとお答えしたんですよ…奏学園長」
勢いに任せて説得しようと慌てていた学園長の思考が話に追い付けていなかった。あっさりと承諾した音弥の返答に確かめるように確認する学園長に、その名を呼びながら再度答える音弥。
掛けていた眼鏡がズレ落ち、それを正しながら咳ばらいをした奏は少しばかり落ち着きを取り戻していた。昔から変わらない癖に懐かしさを覚えつつ、音弥は話を進めることにした。
「今年の反響ぶりを聞く限り、来年は更に大掛かりな規模でやる予定なんでしょう?教師側も説明だけでなく、体験授業の教鞭を取る人も必要でしょうし…準備に時間が掛けられるタイミングですからね…調整は十二分に可能でしょう」
「そ、そうじゃな……すまぬのう、困った時にはお主に頼ってしまって」
「気にしないで下さい、奏学園長…やっぱり出資者や保護者会から色々と言われたんですか?」
「後者はそうでもないが、前者の方がのう…茅場の叔父上があれじゃからな」
「また研究に没頭してリモート会議をすっ飛ばしたんですか?凛子さんや須郷さんたちは?」
「…それが…新しいVR技術の開発が佳境を迎えていたタイミングだったらしく、叔父だけでなく、凛子たちまでもが経営会議のことを忘れておったのじゃ」
「……(Oh…)」
「『学園創立者が10周年に向けた会議に参加しないとはどういうことだ!?』…と、出資者たちはカンカンでのう……怒りを納めるのに大変じゃったわ……あぁぁぁぁ…」
その時のことを思い出したのか…頭を抱えたまま、机に突っ伏した学園長…奏の姿に、大変だなと思いつつも、何と言葉を掛けるべきかと音弥は迷っていた。
「…それは、その……ご愁傷さまです」
「うぇぇ……やっぱりお義姉ちゃんの忠告を聞いておけばよかったぁ…」
「(あっ、口調が完全にプライベートモードになってる…大分参ってるな、これ)…カナデ姉さん、紅茶でも淹れようか?」
「…お願い…」
普段の話し方に切り替え、そう提案した音弥は部屋に設置されていた設備を使って、紅茶を淹れていく。
「アド姉さん…今、イギリスだっけ?」
「そうそう…グラビアの撮影についでに舞台を見に行くと、今朝メールがきてたわ」
「あの人はあの人で自由人っぽいのにちゃんと仕事してるもんな…今年でアラフォーとは思えないぐらいの美貌と仕事っぷりと行動力だけど…」
「わたしも休みがほしいぃぃ…出会いもぉぉ…!茅場の叔父さん、学園の経営、全部私に丸投げしてくるだもん?!」
「まぁ、茅場さんは結構放任主義っていうか…場所の提供だけはして、後は任せたっていう方針だもんね」
奏の苦労が分かるせいか、同情しながら淹れた紅茶を奏へと差し出す音弥。
…ここで簡単な解説をしておこう…
音弥蓮が勤めるこのSAO学園…Satisfaction Achievement Origin…の頭文字を取った名を冠する学校…最新技術をこれでもかと取り入れた先進的かつ進学校的な要素を含む実験要素の強いのが、この学園の特徴だ。
進学校であり最新技術での授業が受けられるという理由や、もしくは所属する学部によって授業の単位を自己決定できる自由性、そして、創立者がVRMMO研究で有名な茅場明彦などを始めとした天才科学者が集う『科学研究機構ラース』が担う話題度など…それなりに入学志望者の倍率も高い人気学校なのだ。
そして、今、音弥の前で完全に学園長としてのキャラが崩壊している彼女…茅場奏(通称 カナデ姉)は昔から音弥と家族ぐるみの付き合いがあり、音弥が小さい頃によく面倒を看てくれていたのだ。
彼女自身は茅場明彦の養子の一人であり、年の近い義姉に人気グラビアモデルの茅場・アドミニ・玲子(通称 アド姉)がいるわけだ。ちなみに、御年3……ゴホン!?…の割には大変身長が低い事を指摘した場合、社会的に抹殺されることを覚悟した方がいいらしい。
…まぁ、そういうことで…昔からの付き合いということもあって、教員免許を取得した後に、奏からSAO学園に来ないかとスカウトを受けた音弥は、今こうして教鞭を振るっているわけである…もっとも、それがどんだけ凄いことかを、採用倍率の数字という形で後に知って絶叫したのは余談だが…
「音弥ぁ…お姉ちゃんと結婚してぇ~…」
「いや、それは……知ってるでしょうが」
「知ってても、諦めきれないもん!?」
「いい年した女性が何言ってんの!?」
二か月に一回来る幼児退行に、慣れた様子で突っ込む音弥…どれだけ過酷な業務をしているのか、その反動で察するも音弥は音弥で応えられないこともあるわけで…
「なら、法律を変えてお姉ちゃんも音弥のお嫁さんになれるようにしたらいいの!?」
「あんた、酔ってんのか?!どんだけ追い詰められてたんだよ!マジで落ち着いてくれ、カナデ姉!?」
まさかの発言までも飛び出し、素のツッコミが飛び出す!彼女の背景を考えれば、数年後に実現できてしまいそうだから、余計に困っていた。
とりあえずサマーキャンパスのことも解決したのだから、ぶっ壊れた姉の頭のネジをなんとかしなければと宥めに掛かる音弥だが…
…コンコンコン
「はい、どうぞ」
「失礼します、学園長。来月の学園祭に関して……ああ、音弥先生。いらっしゃったんですね。すみません、お話の途中でしたか?」
「いや、丁度話が終わったところじゃ…それでどうしたのじゃ?」
(…えぇ~…どんだけ変わり身早ぇんだよ。いや、それぐらいでないとやってられないのか…)
ノックがした途端、先程までの錯乱ぶりが嘘かの様に元に戻った奏の変わり身に、内心苦笑いしつつも、ツッコまざるを得なかった音弥だった。
(…なんやかんやで、もう昼か…これは向こうの方が早く着いてるか?)
学園長室を後にし、4階の教員室へと戻ろうとする最中、腕時計が12時5分を表示していることから音弥は詩乃たちが先に来ているかと考えていた。2限目の終わりが12時…出る前に教員室の鍵は掛けてきたため、待たせてしまっては申し訳ないと思い、足を速める。
階段を登り終え、教員室へと繋がる廊下の角を曲がると、
「先生、遅い」
「悪い、悪い…ちょっと学園長に呼び出されてな…待たせたな、朝田、桐ヶ谷」
予想通り、施錠されている教員室の扉の前に女子生徒が二人待ちぼうけを食らっていた。向こうも音弥が来たことに気付き、詩乃が抗議の声をあげるも、音弥も事情があって遅くなったのだと告げながら、教員室の鍵を開け始めた。
「アハハ…別にあたしたち以外いませんから、普段の呼び方でいいですよね、音弥先生」
「まぁ、一応な…友達の妹とはいえ、人の耳があるかもしれないところで、普段の呼び方はちょっとな…ユウキはどうした?」
「体育の当番の片付けでちょっと遅れて…あっ、来ましたよ」
音弥とは教師としての付き合いがそれなりに経った今でも、その呼び方に違和感を覚えるもう一人の女子生徒…桐ヶ谷直葉が肩を竦めるも、音弥も立場の問題があって、部活以外ではそう気軽に呼べないことを弁明していた。
そして、ここに来るはずのもう一人の生徒がいないことに音弥が言及すると、直葉の説明の途中でやってきて…
「ゴメン、遅くなって!?って、まだ入ってなかったの?」
「先生も遅刻したのよ」
「仕事をしてたんだって…ほら、開いたぞ」
「「「おじゃましまーす」」」
最後の一人…紺野木綿季が姿を現し、扉の前で立ち往生していた三人に驚いていた。理由を詩乃が笑いながら告げるも、繰り返すように弁明する音弥が鍵を開け、彼に続く形で三人は部屋へと入って行った。
「…それにしても…いっつも思うんですけど、音弥先生とユウキさんのお弁当って手作りって凄いですよね」
「いきなりどうした、直葉…」
弁当を大まかに食べ終わり、備え付けのコーヒーメーカーで飲み物を作っていく音弥の背に、直葉からそんな言葉を掛けられる。突然のことに、二つのコーヒーに砂糖とミルクを入れていた音弥が眉を顰める。
「ほら、直葉とユウキはこっち、詩乃はブラックな…で、手作りがどうしたって?」
「いえ、音弥先生って結構忙しそうじゃないですか…ボードゲーム部の方もそこまで顔を出される頻度多くないですし…朝とか時間ない時、どうしてるのかなって」
「別に朝に全部作ってるわけじゃない…手抜きの時には冷凍食品を多めにしたりとか、本当に時間がない時は食堂に行ってるしな…教師の特権で、授業のない合間に利用できたりするし」
「それ、いっつもコンビニで済ましてるお兄ちゃんに聞かせてやりたいんですけど…」
「…ああ。直葉のお兄さんって、先生と友達だったわね」
「ええ…中学の頃にはあたしも音弥先生とは知り合ってたんですけど…お兄ちゃんたちと一緒に遊んでいることの方が多かったんで…」
「まぁ、和人はゲーム馬鹿だったからな…それに反して、直葉は剣道一筋と結構真逆な生活を過ごしてたもんな」
「…へぇ~…でも、蓮も剣道はしてたんでしょ?」
「……まぁ、小学校の頃にちょっとだけな」
「ちょっとって言いますけど…あたし、高校の頃の先生にも全然勝てなかった上に、今でも剣道部の指導の助っ人に来てもらった時に試合してもらっても、勝てないことが多いんですが…」
「…流石に俺もそんなにすんなりと、というか、わざと負けてやるわけにもいかないからな」
「やっぱり先生って本当に多忙よね…なんか教師としての仕事の量を逸脱してるような気がするんだけど…」
「だよな…まぁ、この学園自体まだまだ大きくなりつつあるところだからな、どうしても人材の補充とか成長が追い付てないってところが今、一番頭の痛いところだからな。その余波で、俺に来年のサマーキャンパスの担当の話が回ってきたしな」
「ええぇぇ!?それって…結構凄いことじゃないですか!?」
「サマーキャンパス…?」
「大学のオープンキャンパスみたいに、夏休みに将来入学を検討している中学生を招いて、体験授業や説明会を開くやつよ…ユウキも去年参加したんじゃないの?」
「えっと…ボクはお姉ちゃんに話を聞いただけだったから…それまで結構遠くに住んでたのもあったから」
「へぇ~…なるほどね、それで二人の話に繋がるわけね」
「…コホン。まぁ、俺の話は置いておいて、来月の文化祭についてだが…さっきボードゲーム部の活動申請書を出しておいてから。特段の問題が起きない限り、ほぼ通ると思っていいだろう」
話の流れが嫌な方向になるのを感じ、詩乃の指摘を強引に無視し、音弥は話を先程仕上げて提出した文化祭のものへとすり替えた。
「ありがとうございます!一応、対戦型のを詩乃さんとあたし、10分単位で終わらせられるボードゲームをユウキさんと圭子ちゃんたちがやる形で、勝者には文化祭の模擬店で使える商品券を贈呈…っていう結構強気な設定でしたけど、大丈夫でしたか?」
「まぁ、一応は大丈夫だろう…今回から外部の人たちも時間限定ではあるが招くことになってるからな…アナログゲームの需要もあるだろうし、様々な活動を見てもらうって意味でも悪くはないだろう…もちろんボロ負けしてもらうと大変困るから、詩乃と直葉には頑張って勝ってもらわないといけないけどな」
「…任せておきなさい」「責任重大ですね…頑張ります」
「ユウキは圭子たちのフォローを頼む…あいつら中等部はやっぱり不慣れなところはあるし、今年入ったばかりの一年目4人は特に不安も大きいだろうか…俺もできるだけ観にはいく予定だが、常駐はしてやれないから」
「うん、任せておいて!」
「…まぁ、その辺りの細かい話はまた来週の火曜の部活の時に中等部も交えてするとしようか…って、もうこんな時間か…お前らもそれ飲んだら早く戻れよ」
先んじて伝達事項を伝えたところで、壁に掛かっている時計を見ると、12時45分を少し過ぎたところだった。予鈴が13時になり、その五分後に3限目が始まることを考えると、あまりのんびりしている時間はないだろう。
「あっ~!?次の授業、移動だったの忘れてました!すみません、音弥先生、お先に失礼します!」
「お、おう…教えておいて、正解だったな」
「…そうだ。先生、これ借りてた小説…忘れないうちに」
飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった直葉はなんとか堪え、そのまま持ち直し、一気にコーヒーを飲み干して慌てて弁当を片付けて、風のように去って行ってしまった。
遅刻しないことと、慌て過ぎて怪我をしないことを祈る音弥に、詩乃はここに来たもう一つの目的を思い出し、持ってきていた小説を差し出した。
「おっ、そうだったな…じゃ、これ、次とその次の巻な」
「えっ…二つ持ってきてたの?」
「ああ。最近毎日読んでは返してくれたからな…これは長期シリーズで、あと20巻は最新巻まであるから、纏めて貸した方が朝田も楽かなと思ってな」
「ありがとう…すぐに読んで返すから」
「午前中も言ったが、無理のない範囲でいいからな」
「うん…それじゃ、私も行くから…お二人でごゆっくり」
代わりに借りた二つの小説を大事に抱え、サンドウィッチが入っていたランチボックスを片手に、詩乃も教員室へと後にした…最後に置き土産の爆弾を置いていったわけだが…
「なぁ……朝田の奴め」
「アハハ…詩乃っぽいよね」
「だな…って、ユウキもそろそろ行かないとマズいんじゃないか?」
「うん…あっ、蓮。その…今日も行っていいかな?」
「そりゃ来るのはいいが…ちょっと遅くなるぞ?」
「えっ……お仕事?」
二人にしか分からない会話だが、難なくしていくそのやりとりにかなりの付き合いのだと察せられる内容だが、音弥の発言に驚いた木綿季が首を傾げる。
「先約があるんだよ。前々から今日飲まないかって誘われてな…まぁ、そこまで飲むつもりもないし、軽く食事を済ませるぐらいだけど、終わるのが何時になるのか分からないからな…だから、無理してくる必要もないぞ?」
「……助っ人の部活が終わるまでに考えとく」
「(あー…これは来るパターンだな)…って、また運動部の助っ人か…この前がサッカーだったか。今度は何なんだ?」
「バスケット!どうしても、人手が足りないって頼まれちゃって」
「まぁ、ユウキがいいのなら特には言わないが…あんまり無理をしないようにな」
「……それ、さっき詩乃にも言ってた時にも思ったけど、蓮が言うと全く説得力ないよ?」
「…痛いところを突くなよ」
人にいう前に、自分のことを省みるべきではなと指摘された音弥は、木綿季の発言にたじろぐのだった。
そこから受け持っている授業を4限は3年生の倫理、5限は1年の日本史を担当し、放課後も教員たちとのミーティングをして、定時を少し過ぎたあたりであがれた音弥は電車を乗り継ぎ、ある場所へと向かっていた。
「…待たせたか?」
「いや、そうでもないぞ。適当につまみを頼んだが、良かったか?」
「ああ…奥さん、ジンジャーエールを追加で」
18時過ぎ…帰宅ラッシュの最中ということもあり、空席が目立たない程に賑わう『Dicey Cafe』へとやってきた音弥は、待ち合わせ人が先に着席しているのに気付き、声を掛けた。
向こうもそこまでは待っていたなかったらしく、軽く応えて席に着いた親友の方へとめざしを一本小皿に移して目の前へと置いた。
カウンター越しに接客中の店員…というよりも、知人の妻にそう告げるフォンは、お手拭きで手を拭きながら店内を見渡した。
「はい、ジンジャーエールお待たせ」
「ありがとうございます…忙しそうですね。エギルさんはキッチンですか?」
「そうそう…有難いことだけど、こうも忙しいとバイトを雇うべきかなって主人と話してところなのよ…それじゃ、ゆっくりしていってね、音弥君、桐ケ谷君」
店主の姿が見えなかったので、飲み物を持ってきてくれた奥さんへと尋ねると、店の奥に次々とオーダーをこなすエギルの姿が見えた。エギルの方も音弥に気付いたらしく、軽く手を振って、すぐに調理へと戻っていた。
「…めざし以外のものは何を頼んだんだ?」
「えっとな…鶏肉と赤唐辛子の山椒風唐揚げ、カシューナッツの唐辛子炒め、ラー油風味の冷ややっこに枝豆だな」
「あいもかわらず辛いものばっかりだな…」
「そう言うなよ…家だとどうしてもすぐには作れないしさ」
「子供が出来たら、当分の間は我慢しないといけないだろうしな…そういえば、遼太郎さんは?」
「急な地方出張が入って今日はパスだってさ」
あまり邪魔をしてはいけないと、エギルには軽く会釈する程度にして、親友…桐ケ谷和人が頼んだつまみのラインナップを尋ねるフォン。
5品中過半数が辛いものだと知り、呆れた目を向けると苦笑いする和人が先に呑んでいたカシスオレンジを更に一口飲む。そのうちに、枝豆と唐揚げが届いたところで近況の報告を互いにしあう。
「で…新作ゲームの開発はどうなんだ?茅場さんたちがⅤRMMO開発の山場に差し掛かってるって聞いたけど」
「あー、それな…試作型がもう少しで完成しそうって感じで、実用化できそうなはあと数年は掛かりそうだぞ?茅場室長の無茶張りに須郷主任や比嘉さんが苦心して、凛子さんがフォローするっていう地獄になってるからな」
「茅場さん、そういうの妥協しないもんな…でも、自分が創立した学校の大事な会議をほっぽり散らかすのはダメだろう…マジでカナデ姉さんが心壊れそうな程に苦労してんだから」
「それに関しては、会長の重村さんからも厳重注意が入ったらしい。まぁ、無理もないよな…現役JK歌手である娘さんが通ってる学校なんだから、尚更か」
「ああ、3年の悠那さんか…そういえば、そうだったな」
アツアツの唐揚げを一口サイズにフォークとナイフで切り分け、少し冷ましてから口に放り込む。山椒と赤唐辛子それぞれのスパイスが効いた鶏肉が口の中で旨味として広がり、それを押し流すようにジンジャーエールを飲む。
「まぁ、VRMMOのソフトの開発はその試作品の待ってだな…テストもそれがなきゃ始まらないし…今はMMOの4周年記念に向けての準備だな」
「…『インカーネイト・ワールド』か。サービス開始して4年か…始まったばかりの時には色々とあったが、今となってはなんかあっという間だったな」
「その台詞、ユージオも同じこと言ってたぞ?」
「…マジかよ。しょうがないだろう…あんなことがあったら、誰だってそう感じるのは仕方ないだろうが」
「まぁな…今となっては伝説のプレイヤーだって呼ばれてる『夢幻の戦鬼』が活躍していた時期でもあったしな」
「…昔の話だって」
懐かしい名が出て、思わず苦笑する音弥…その目には懐かしい色が映っており、当時のことを思い出してか、思わず溜息が零れてしまった。
「あのアカウントは封印したんだ…今はちょっとだけ腕の立つ一般プレイヤーの『フォン』だよ。で、ユイちゃんはどうな感じなんだ?」
「ユイも元気にやってるよ。4周年記念に新曲を披露しようと張り切ってるところだし…その上で、ユナとのコラボレーションも検討してるみたいだ」
「…それ、重村会長がGOサイン出したら、逆に誰にも止められなくなるんじゃないか?」
かつて音弥と和人…いや、MMO『インカーネイト・ワールド』にて最強角のプレイヤー候補と呼ばれた二人のアバターによって、窮地を救われたAI ユイのことに話を振ると、和人は何とも言えない表情になる。
まぁ、それはそうだ…同じくMMOアイドルとして知られるユナ…歌手の重村悠那のもう一つの顔がそれなのだから、会長権限が発動したらと思った音弥が同情するのは無理のない話だった。
「まぁ、俺たちの方はそんな感じだ…で、そっちはどうだ?スグの様子とか…」
「直葉ちゃんも元気にやってるよ…剣道部とボードゲーム部を両立させてるし、成績自体も上の方だしな…というか、お前の方から直接聞けばいいじゃないか」
「いや…実家を離れてから接する機会が減ったからな…いきなり電話するのもどうかと思うし…」
「ヘタレのシスコンめ…直葉ちゃんが彼氏を連れてきたらどうするつもりだ、お前…」
「…とりあえず、スグが受け入れた男だってなんとか理解するかな」
(って言う割には顔が笑ってねぇよ、和人)
教師から見た妹の評価が気になる和人の心配に思わず苦言を呈する音弥…これは彼氏ができたと聞いたら、大変なことになると思い、
(直葉ちゃんに彼氏がいることは黙っておくか…)
とりあえず火種を無暗に放り込む趣味は音弥にはなかったので、話題を別のことに逸らすことにした。
「彼氏と言えば…結城さんとはどんな感じなんだよ?この前、デートにも行ったんだろう?」
「ま、まぁな…なんとか上手くエスコートできたとは思う。ありがとな、色々とアドバイスくれて」
「気にすんなって…それにしても、お前があんな美人と付き合うことになるとはねぇ…」
「その評価の仕方は酷くないか、蓮」
「いやいやいや…中学・高校・大学と、俺とユージオ以外、友達がいなかったお前がそれを言うのか?」
「ぐぅぅぅ!?」
胸元を撃たれたかのような反応をする和人に、音弥は更に溜息を零す。枝豆を二個同時に頬張り、その先を話していく。
「お前の会社の『ARGUS』と結城さんところの『レクト』との連携を図る政略見合いが、まさかの結果になるなんて…誰も予想してなかっただろうな」
「…しょ、しょうがないだろう!?まさか、『インカーネイト・ワールド』内で結婚してた相手プレイヤーのアスナが、見合い相手の明日奈と同一人物だなんて…誰が想像できたよぉ!?」
「その結末を聞いた時には……もう腹を抱えたわ!大学の時のアリスとユージオが再会した時よりも面白かったし…」
「俺もあれを上回るような出来事を、まさか自分がするとは思ってなかったよ」
見合いの場において、二人っきりの時間になった際、趣味の話が互いにゲームであり、同じMMOをしていると更に盛り上がったところで、今度一緒にプレイしようと互いのアバターネームを語ったところで正体を理解した…それが桐ケ谷和人と結城明日奈のオフでの初めての出会いだったらしい。
これを聞いた音弥は珍しく大爆笑し、隣で聞いていた親友のユージオも苦笑せざるを得なかったのだ。大学時代に、自身が経験した運命の出来事をあっさりと上回ってきた親友に複雑な感情を抱いていたわけで…
「まぁ、いいじゃないか…知らな間柄より、よく見知った相手との方がさ」
「そ、そうだけどさ……確かに明日奈は美人だし、料理も上手だし、もう色々と気を遣ってくれるけどさ」
「いや、そんだけ惚気られるな充分だろう」
駄目なところを言うどころか、魅力しか語らない和人の姿に、酔っているのでは疑う音弥…見るとカシスオレンジが空になっていた。
「そろそろお開きにしようぜ…俺も帰らないといけなし」
「えぇ~…もうちょっとだけ一緒にいようぜ?」
「俺も家に人を待たせてるからな…って、今日飲みに行くって返信した時にちょっとだけって言っただろうが」
「一人は寂しいんだよぉぉ…明日奈とはまだ同棲できないし、ユージオはアリスと一緒にいることが多い上に、どうしても休みが被らないし…!俺にはお前しかいないんだぁぁ!」
「酔ってるな、完全に酔ってるだろう、お前?!どんだけ徹夜で仕事してたんだ!?」
「…二徹…」
「今すぐ帰って寝ろ!?」
普段はここまで酒に弱くない筈の友の姿に異変を感じ、事態を聞いた音弥は会計を済ませて、店を出た。流石にこのまま一人で帰すのはマズいと思い、タクシーで送っていくことにした…もちろん、会計からタクシー代まで後日ガッツリと請求するつもりであった…プログラマーの和人の方が年収は遥かに上なので、問題はないだろうという魂胆が音弥の中にはあった。
「…やっぱり来てたか」
オートロックの扉をくぐる…前に郵便ポストを確認すると、何も入ってない状態だったことから察した音弥。事前に予告染みたものを受けていたとしても、自分の立場を考えると思うところはあるもので…思わず溜息を吐きながらも、今度こそオートロックの扉をくぐり、自室へと向かう。
9階建てのうち、4階にある部屋へと階段を登っていく…普段の運動不足を少しでも改善しようと思っての行動だが、結構くるものがあるなと思っていると4階に着いた。そのまま、自室の402の扉に手を掛けると、当然鍵が掛かってない玄関がすんなりと開き…
「お帰り、蓮!」
「…ただいま、木綿季」
ドアの開く音を聞きつけて、リビングから姿を現わした女性…教え子であり、通い妻の木綿季が出迎えてくれたことに、音弥は苦笑しつつも応えるのだった。
「それで…和人と飲んできたの?」
「飲んでというか、愚痴の語り合いだよ。俺が酒に強くないのは知ってるだろう?」
「愚痴か…やっぱり大人になると大変?」
「まぁな…教師もプログラマーも色々とあるんだよ。だからといって、学生時代が大変じゃなかったってわけでもないしな…」
「勉強やテストから解放されるだけじゃないんだ…」
脱いだスーツをクローゼットにしまってシャワーを浴びた後、リビングのテーブルにゆったりとしていた音弥は、キッチンで作業をしている木綿季からさっきの出来事を聞かれていた。
呼び方以外は学校で話しているのと同じ話し方だが、その内容はよりプレイベートに迫ったものになっていた。音弥の方も、どこか脱力して話しているところから、気が抜けている姿が見て取れた。
「…で、今日は何を作ってくれたんだ?」
「飲みに行くって聞いてたから、気分的に絞めのラーメンみたいなものがいいかなって思って…ほうとうにしたんだけど、食べれる?」
「一人前ぐらいなら…軽くつまみをつまんだぐらいだから、いけるよ」
「そっか……じゃあ、もうちょっと待っててね」
鼻腔をくすぐる煮込みの良い匂いに夕飯が何かを尋ねると、視線を手元からズラスことなく木綿季の答えが返ってくる。ラーメンよりはうどんの方が確かに食べれそうだと思い、言われた通りに音弥が待っていると、
「はい、お待ちどうさま!」
「…いただきます」
数分して、木綿季が器に盛られたほうとうをデーブルに持ってきた。それを受け取り、箸を持ったまま手を合わせた音弥は、箸をつけていく。味噌をベースとした出汁に白いうどんと、煮込まれた野菜たちが姿を現わしていく。そこからうどんをつまみだし、少し冷ましてから口に含む。
「…美味しい?」
「ああ…上手いよ。本当に料理が上手になったよな、木綿季」
「エヘヘ…ありがとう」
感想を求められ、スマートに告げる音弥…木綿季の方も、音弥は言葉で多くは語らず、態度で示すことがほとんどだと知っていたため、それで納得し満足していた。
「…って、ずっとこっちを見てるが、木綿季は食べないのか?」
「ボクは先に食べちゃったから。蓮が美味しく食べてるのを堪能させてもらおうかなって」
「まぁ、見るだけならいいけど…減るものでもないし」
ジッとみられているのが恥ずかしくなって話を振ったのだが、わざとそうしているのだと言われて、閉口してしまう音弥。それが照れていると分かる木綿季も更に笑みを零すわけで…音弥の食べるスピードが上がったのは言うまでもないだろう。
「…ごちそうさま」
「お粗末様でした…器、洗っちゃうね?」
「流石にそこまでしてもらうのは悪いって…木綿季はゆっくりしてていいぞ?」
「それじゃ、二人でやろうよ!そっちの方が早いし!」
「早いか…?まぁ、いいけど…」
食べ終わって、後片づけをしようとなったが、手伝うつもりから一歩も引く気がない木綿季に、音弥が折れる形で一緒にやることになった。
「…それにしても、早くも半年か…」
「えっ、なにが…?」
「いや、木綿季と再会して、こんな感じで一緒に過ごす時間が増えたのが。10年前は、あんなにおとなしくて、大泣きしてた木綿季が、こんな美少女に成長するなんて…時間が経つのは早いなって思ってな…その分、年を取ったなと悲観してたところ」
「えぇ…蓮だって、まだまだ若いじゃん」
「10代と20代の若いには大きな差があるんだよ…こっちは結婚を意識し出す年齢でもあるしな」
「…その心配はしなくていいじゃん!ボクが蓮のお嫁さんになるんだもん!」
「へいへい…二年後までその決心が変わらなかったらな」
「むぅぅ…!?音弥お兄ちゃんのイジワル!」
(音弥お兄ちゃん、か……本当に昔に比べて成長したよな)
音弥としては9割冗談1割本気のつもりでの返答だったのだが、木綿季にとっては癪に障る話題だったらしく、不機嫌になって頬を膨らませていた。そんな中、懐かしいフレーズが零れたことに内心苦笑する音弥。
「…ねぇ、今日泊っていっていい?」
「というか、聞く前から泊るつもりだっただろう?」
「えっ!?…ソ、ソンナコトハナイヨー…」
「…はぁ…教師の立場としては教え子を泊まらせるのはどうかだが、こんな遅くに帰すのも色々とマズいし…今からカーシェアを探すのも厳しそうだし……いいぞ」
「わーい!先生、大好きー!」
「…どこで覚えたんだ、その台詞…ほら、さっさと洗い物終わらせるぞ?」
最初から木綿季泊まる気でいたことを察した音弥がジト目を向けると、逃げるように目線wの逸らす木綿季…明日から土日で、そこまで予定もなかったので…というか、大体何もない時は泊まりに来ているため、諦め慣れた音弥が承諾したところで木綿季は喜んでいた。
そのまま洗い物を終え、互いにプレイしているゲーム(音弥は自室のPCで、木綿季はスマホで)『インカーネイト・ワールド』で遊び、先に疲れて寝落ちした木綿季をベッドに運んだ音弥は、ヘッドフォンをして再びPCの前へと座った。
これから仕事を…というわけではない。
音弥蓮という人間はできる限り仕事を家には持ち込まないタイプだ。まぁ、防犯の関係上したくないというのもあるが、プレイベートと仕事はきっちりと仕分けしたいとい考えが本人あったからだ。
しかし、これから再びゲームをするというわけでもなかった…なのに、ヘッドフォンをしたのは、寝ている木綿季を起こしたくないという配慮と、できれば誰にも聞かれたくないための対策でもあったわけだ。
そして、通話アプリをデスクトップアイコンから立ち上げ、登録しているある人物を呼び出す。画面が待機状態へと変わり、自分がログインしたことが相手へと通知された。約束していた時間よりも少し早かったため、待つことになるかもと思っていた音弥だったが、それは杞憂だと言わんばかりに画面がすぐに変わり、
『久しぶりね、音弥…元気にしてたかしら?』
「ひさしぶりって…先月のお盆にこっちに帰ってきてただろうが」
『感覚の話よ!あんたみたいに、ほぼ毎日ユウキと会っているのとはまた違うんだから』
「へいへい、それはこっちが悪かったですよ…藍子さん」
挨拶にツッコんだら、あれよこれよと返されたので、それ以上藪蛇を突っつくのは止め、会話相手…木綿季の実姉である紺野藍子に冷めた視線を向けていた。
「こっちが深夜の1時前ってことは…そっちは確か昼間になるんだっけ?仕事の方は昼休みな感じか?」
『まぁね…悪いわね、こっちの時間に合わせてもらう感じになって』
「今更だろう…まぁ、いつも木綿季が藍子さんと話せないって悔しがってはいるけどな」
『あの子、夜にそこまで強くないものね…今日も寝ちゃった?』
「ああ、さっきまで一緒にゲームしてたんだけどな」
『そう……あんたにはいつも悪いわね』
「本当に今更だな……木綿季を焚きつけた張本人が何悪びれた顔してるんだよ」
『いや~…それを持ち出されると何とも言えないというか…』
画面越しとはいえ、アメリカにいるであろう本人、一切の遠慮のないジト目を向ける音弥。それを受け、思わず身じろぐ藍子は苦笑いするしかなかった。
…どうして、音弥がそんなことを言ったのか…というか、木綿季が音弥の元に通い妻のようなことをするようになったのか…元凶は藍子だった。
音弥が教師になり、色々あって(語るとまた長い話になるので別の機会に)SAO学園に就任することが決まった際、それを人伝手で知った藍子が木綿季にそのことを知らせたのだ。
『同じ高校に通えば、蓮に会える』…そう聞いた木綿季は受験に向けて猛勉強をし始めたわけで…結構倍率の高いSAO学園に見事入学できたのだ…が、そこで予期せぬトラブルが発生し、
『ゴメン、音弥…ユウキのこと、面倒看てあげてくれないかな?』
久々の知り合いからの連絡に、最初は難色を示した音弥…なんと、広告代理店に勤めていた藍子が昇進と同時にアメリカへの長期出張が決まってしまったのだ。
どうにも断るのも難しかった…わけではなかったらしいが、木綿季ももう高校生で、本人も自立してもいいという考えを持っていたとのことで、ならば、知り合いの音弥に助力を求めれれば大丈夫なのではと藍子の頭の中で方程式が成り立ったらしく、話を持ち掛けてきたのが事の発端だった。
音弥の方も難色を示しながらも、別に同居してくれという話でもなければ、保護者が必要となった話の際に代理人として立ち会ってくれれば、という程度の話だと聞いていたため、それくらいならと思って引き受けた…引き受けてしまったのだ。
「…あの時、あんな浅はかな判断をした俺を、今すぐにぶん殴ってやりたい」
『まぁまぁ…しょうがないでしょ。まさか、私もユウキがあそこまであんたを想い続けているとは思わなかったし…』
「そもそも、あんたがちゃんとユウキにあの話をしてくれていれば、もっとまともな再会になっていたんだと思うんですが?」
『…それに関しては本当に申し訳ない…』
完全に責める音弥の言葉に、流石の藍子も本当に悪いと思っているらしく、少しばかり真剣な表情で謝罪していた。
そんな音弥の脳裏に蘇るのは、10年ぶりに再会した木綿季との記憶だった。
『…久しぶり、音弥お兄ちゃん!約束通り、ボクをお兄ちゃんのお嫁さんにして下さい!!』
…想定していた挨拶に続いて飛び出した爆弾発言に、満面の笑みを浮かべる木綿季と対峙していた音弥は、脳を殴られたかのような感覚に襲われていた。
『10年越しに再会しての挨拶がそれってどうなのだ?』『お、お嫁さんにって…話が飛躍し過ぎていないかって?』『教師と生徒…まさかの禁断関係!?』『そもそも俺に彼女がいないこと前提の話になってないか?!』…などなど、疑問が次々と頭の中に溢れてくる音弥だったが、驚きすぎて一周した頭は冷静に、かつ、冷徹な答えを弾き出した。
『いや、申し訳ないが…今年から法律が変わって、18歳になるまで結婚はできないぞ?』
『…えっ?』
無自覚に、残酷に、そして、平然と告げられたその事実に、今度は木綿季の笑みが凍る番だった。
「その後は地獄だったよ…『音弥お兄ちゃんの…お嫁さんになれないぃぃぃぃ!?』って玄関前で号泣されてさ…あの地獄絵図を誰かに見られていたら、社会的には終わってたと思うよ」
『それはあんたがあんな約束をしたからでしょうが…元を正せば、自業自得じゃない』
「それは……仕方ないだろう。まさか10年も覚えられているなんて思ってなかったし…あの時はそうでもしないと木綿季が泣き止んでくれなさそうだったし…」
マンションの廊下にて現役JKが男性教諭の前で号泣…通報されたりすれば、色々とマズいことにしかならない構図が出来上がってしまったのだから、音弥が頭を抱えるのも無理はない状況だったわけだ。
それで、ひとまず自室内に木綿季を迎え入れ、ある約束をしたのだ。
『木綿季が高校を卒業するまでに気持ちが変わらないようだったら、改めて結婚の話をしよう。それまで、音弥の方も彼女を作ったりはしないと』という制約を。
妥協点と木綿季もその条件で納得してくれたわけだが…来れる日は音弥のマンションに通っているもので、通い妻状態と化しているわけだ。いつも通わせるのはどうかと思い、時折泊めさせているわけで…音弥からすると、いつ学校側にバレるかとヒヤヒヤしていたりする。
『酷な条件をつけたわよね…まぁ、ユウキからすればそこまで大したものじゃないんでしょうけど…』
「…俺から提案しておいてなんだが、結構酷い約束だと思うんだけどな。『結婚する』じゃなくって、『結婚の話をしよう』ってはぐらかしてるわけだし…」
『まぁ、他の野郎ならどうかと思うけど…あんたの人柄はよく知ってるから、その条件も納得したようなものよ……どうせ、ユウキを縛るのを恐れて、あんたが日和ったんでしょ?』
「…まぁ、な…」
『…安心しなさいよ。ユウキはこの10年間、あんたのことを一度足りとも忘れたことなんてなかったんだから…ユウキの気持ちは揺るぎないわよ』
「……それは嫌という程に理解してるよ」
『あら、そうだったかしら…まぁ、余計な心配はしなくていいじゃない?むしろ、教え子JKと禁断の恋っていう、今しかできない欲望に身を任せるのも…』
「黙ってろ、アラサー…あと二年もすれば、妹に先に結婚されるんだから、ちょっと焦った方がいいじゃなか?」
『うううぅぅ…!?あ、あんた…私が一番気にしてることを容赦なく…!』
藍子に指摘されなくとも…その気持ちは理解できているつもるの音弥。そんな音弥を茶化す様に冗談を言う藍子だったが、流石にイラっとしたらしく容赦のない毒舌の反撃を受けて胸元を抑えていた。
『あ、あんた…義姉になるかもしれない女性によくそんな遠慮のない言葉を吐けるわね…』
「悪いな、欲望を唆してくるような恥ずかしい知り合いを身内にはしたくないと思ってな」
『あいも変わらず純真ね…やっぱり手は出して「もう眠いから切るぞ」…ちょ、待(ブツン!)』
百害あって一利なし…木綿季に関する定期連絡会だった筈が脱線しまくった結果、音弥の怒りを買う形で、通信は強引に切られた。
最後の方はちょっと声を出し過ぎたかと心配したが…寝ている木綿季の方を見ると、どうやら睡眠の邪魔はせずに済んだようで、音弥は少し安堵していた。
PCの電源を落とし、木綿季が寝ているベッドの傍へと歩み寄る。そこには穏やかな寝息をててて眠る姿があり…ベットセットには首飾りが置かれているのが目に入り…
(10年か…どんだけ待たせていたことか…)
その首飾りの先にある指輪を見て、音弥は当時のことを思い出していた。
音弥と紺野家の関係は実はそこまで深くない。
木綿季と藍子の親は言われる転勤族というやつで、音弥が17歳の時に隣に引っ越してきた時に接点を持った。音弥の二つ上である藍子は当時19歳で、大学に通っていることもあって独り暮らしをしていた。
対する木綿季は藍子と年の離れていることもあって、両親と様々な土地を行き来することの方が当たり前だった。仕事柄、家を空けることも珍しくなかったので、もしよかったら仲良くしてほしいと、引っ越しの挨拶の際に紺野家からは言われたぐらいだった。
当時の音弥は、和人やユージオに誘われてMMOに手を出していた時でもあり、手の空いている時にでもいいのなら程度でそのお願いを考えていた。
そもそも、その挨拶の際に両親の背後に隠れるように自分を見ていた小さな女の子の姿に、自分を怖がっているのではと思い、ちょっと謙遜してしまったほどだった。
『蓮…あんたゲームするぐらいの暇があるのなら、ちょっと隣の紺野さんの家に桃持って行ってくれない?』
ある休日、母親からそんな頼みをされ、とりあえず隣の紺野家に向かったわけだ。もちろん、両親はおらず、家には木綿季しかいないわけで…
『これ、貰い物なんだが、うちだけじゃ食べきれないから。おそわけってことで…お父さんたちが帰ってきたら、一緒に食べて』
『あっ……ぁりがとう、ございます…』
(…やっぱり怖がってるよな)
一回りも年が違う男に恐怖感を覚えてるよなと感じた音弥は、早めに退散しようとした。このままここにいては互いにきまずいと思っての行動だったのだが、
『…ぁっ…』
『…?』
名残惜しそうにする声が少女から漏れ、思わず立ち去ろうとした音弥の動きが止まった。そんな少女の言動に、どうするべきかと迷う音弥…対する少女も無理に引き止めてしまったのではとオロオロしているわけで…
『(…ふぅ)…えっと、ユウキちゃんだっけ?』
『…!(コクっ…)』
少女に聞こえないように心の中で溜息を吐く…自身のお節介さに呆れながらも、こっちから一歩を詰めるべく、木綿季と同じ目線の高さにまでしゃがんで声を掛ける。木綿季の方も驚きつつも応えていった。
『改めまして、音弥蓮って言います。もしユウキちゃんさえよかったら、俺と友達になりませんか?』
『お、ともだち…?』
『そうそう…お兄ちゃんの時間の空いてる時に遊んでくれませんか?』
『……いいの?』
『ユウキちゃんが嫌でないのなら』
『…ぼ、ボクも…遊んで、ほしい……音弥さんに』
『そっか…それと呼び方はもっとフランク…じゃ分かり辛いか…呼びやすいものでいいよ?』
『…なら、音弥お兄ちゃん…!』
『お、お兄ちゃんは……いや、それでいいよ、うん!音弥お兄ちゃんだ…!?(危ねぇ、泣かせるところだったかも…!)』
ちょっとずつ心を開いてもらえているところで、まさかのお兄ちゃん呼びにちょっと待ったが、目を潤ませて不安そうになった木綿季の表情に、受け入れざるを得なかったわけで…
…こうして、音弥と木綿季の交流が始まったのだ。
音弥自身、帰宅部ということもあり時間の融通を利かせられたため、結構木綿季と過ごす時間は多くなった。
学校の登下校を一緒にしたり、音弥の友達の和人やユージオを紹介して一緒にゲームをしたり(ゲームに関しては一種の才能が木綿季にはあったらしく、嵌らせてしまったかと危惧したこともあったが…)、偶に様子を見に帰ってくる藍子とも交流したり…
…しかし、やはり終わりは訪れるわけで…
『ヤダァァァァ!音弥お兄ちゃんと離れたくない!?』
半年後、紺野家の転勤がまたしても決まり、別れることになったわけだが…大泣きして音弥に抱き着いたまま離れようとしない木綿季に、音弥が…というよりも、木綿季の両親は本当に困っていた。
今まで見せたこともない娘の我儘に、ここまで懐いた音弥がよくしてくれたのだと感謝する一方で、なんと説得すべきかと困り果てていたのだ。
対する音弥もどうすべきかと困惑しっぱなしであり…当の音弥家の財布を握る母はというと「よかったら、木綿季ちゃん、音弥家に住む?」というとんでもない提案をして、父と紺野家から大反対をされていた。
母の暴挙に大混乱と化した大人たちを見て、頼れないと判断した音弥は自分がどうにかしないといけないと思い、木綿季を自室へと連れて行った(正確には抱き着かせたままというべきだろうが…)
『…ユウキ、ご両親を困らせたら駄目だろう?』
『だって…音弥お兄ちゃんと離れたくない!?離れたら、二度と会えなくなっちゃうもん!?』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
今までの色々なところを巡ってきた経験がここで仇となったか、それとも、ここまで木綿季を意固地にさせる程に自分を気に入ってもらえたと喜ぶべきところなのか…
とりあえず、どうして木綿季がここまで抵抗しているのか、その理由が『自分と会えなくなるのが嫌だ』ということに収束しているのだと理解した音弥は、どうするべきかと思案する。要は、もう一度会えると証明…というか、約束できるように木綿季が分かってくれればいいのだと思い、
『…あっ、そうだ…』
『……?』
その案を思いつき、自身の記憶を頼りにそれを探し始める音弥…何をしているのかと疑問符を浮かべる木綿季は兄に等しい人物の行動をジッと見つめていた。すると、すぐに探していたものを見つけた音弥は木綿季へと振り返り、
『木綿季、約束をしよっか』
『やく、そく…?』
『そう…互いにもっと大きくなったら、また一緒に遊ぼうって約束。その時のために、お互いの大事なものを預けておいて、その時に帰しに来ようって。俺からはこれ…』
『…きれいな、石…?』
『守り刀っていうんだ、それ…父さんが俺の誕生日の時に送ってくれたものなんだけど…大事なものだからこそ木綿季に預ける。これを俺だと思って持ってて、また逢う日まで大事に持っていてほしい』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
濃淡の度合いが部分によって異なる蒼石に木綿季の目は見惚れていた。これを俺の代わりに、という手法はちょっとくさいかと思ったが、それでも木綿季の不安を軽減できるならと音弥は割り切って提案した…これが駄目なら、もうどうしようもなくないかと内心焦っていると、
『………………………ヤダ…』
『…えっ…』
『…そんな約束じゃヤダ!?』
『ええええぇぇ?!』
たっぷりと考え込む木綿季を見ていけたかと思ったのもつかの間、まさかの拒絶の意志を示され、思わず音弥も叫んでしまう。どうして、何が駄目だったのかと驚いていると、
『遊ぶだけじゃヤダ!?もっと…別のことも約束してほしい…!』
『べ、別のこと…そっか。なら、ユウキは何を約束したいんだ?』
それだけでは足りなかったのか…作戦自体が駄目になったわけではないことにホッとしつつ、とりあえず木綿季の要望を聞いていこうと思い、尋ねた…尋ねてしまったのだ。
『……つ、次会った時に……ボクをお嫁さんにしてくれるのなら…いいよ?』
『…(What?)』
顔を真っ赤にしてそう告げてきた木綿季の言葉が、音弥の脳に耳を通して届く、しかし、彼はその言語の理解を放棄しようとしていた。聞き間違いしたかなと現実逃避をしかかっていたが、残念ながら木綿季の態度は本気だと分かってしまうもので…
『えっとだな…それは流石に…』
『してくれないっていうのなら、ここで死ぬまで泣き続けるから…』
『何のゲームから影響されたんだ!というか、和人だな、そんな変な台詞を教えたのは?!』
『お、お兄ちゃんが結婚してくれるっていうのなら…ボクも離れ離れになっても大丈夫かなって…』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
17歳にして、早くも人生の岐路に立たされるという事態に、流石の音弥も閉口せざるを得ない。子供の言うことだとは分かりつつも、それを否定するなんていう無慈悲なことができるわけもなく…じゃ、『お嫁さんにする』なんてことを安易にしていいわけがないという誠実な思いもあるわけで…
音弥が迷っている中、その返答を待っている木綿季は黙っていた。そもそも、どうして木綿季がこんなことを言い出したのかというと…原因は音弥にあった。
まぁ、一言で言えば、音弥はモテるのだ。
一緒に遊んでくれるだけでなく、両親とは違う形で接してくれた(木綿季から見れば)大人の男性である音弥に、木綿季は憧れと恋慕が入り混じった感情を抱いていた。
しかし、登下校など一緒にする最中、結構な頻度で同じ高校の女子生徒に声を掛けられる音弥の姿を見たことがあったのだ。木綿季と一緒だからと断ることがほとんどだったのだが、それを見ていた木綿季からすれば面白くないわけで、
『ボクのお兄ちゃんを取らないで』『お兄ちゃんとの時間を奪われたくない』という、嫉妬の感情が生まれていたのだ。それが憧れのお兄ちゃんに対してのものと、恋焦がれる異性に向けたもの、と二つの異なる感情から成るものだとしても、乙女心としては譲れないところだったわけで。
『…それとも、音弥お兄ちゃんはボクのことが嫌いなの?』
『…むぐぅ…?!』
そこに天然で落とし文句を放つ木綿季に音弥は更に追い詰められる。これを素でやってみせるのだから、恐ろしい子だと言わざるを得なかった。
『…分かった。だが、少なくともユウキが結婚できるようになったらだ!それでいいのだったら…約束する』
『…!うん、約束!破ったら、千本の剣を飲ますから』
『うわぁ、あのゲームの台詞をそこで持ってくるのか…絶対に変な影響与えるから、させたくないって言ってたのに…和人めぇ…!』
悪友がやらかしたことに悪態を吐きつつ、諦めた音弥は約束を飲み込んだ…こうなったら、年月が経つ内に、木綿季が大人になることで恥ずかしくなり約束を取り消すことに期待しようと思っていると、
『それじゃ、これ…音弥お兄ちゃんが持ってて』
『…うん?あっ、これ…』
木綿季が胸元にかけていたペンダントから何かを外し、手渡してきた。うな垂れていた音弥は一瞬何かと思うも、それが大変見覚えのあるものだったため、すぐに理解した。
それは装飾が豪華な紫色の宝石を模したおもちゃの指輪だった。
たまたま買い物に行ったショッピングモールのゲームセンター…そこにあったミニUFOキャッチャーの一角にあった商品なのだが、それを見た木綿季は思わず見とれてしまったのだ。
それに気づいた音弥が取ってあげようかと声を掛け、挑戦した…のだが、指輪は専用のケースに入っているせいで思った以上に重く、更には音弥蓮にはUFOキャッチャーの経験はほとんどなかったわけで…
10、20と失敗する中、流石の木綿季ももういいと言うも、女の子の前でカッコつけたいのと、ここまでくれば取ってやりたいという男の意地が重なり…一緒に来ていた和人・ユージオのアドバイスもあって…5,800円、その月の残りお小遣い300円という多大な犠牲を払ってゲットした品物が、その指輪だったわけだ。
あの時は、徒労の分ぐらいには大事にしてくれればと思っていたものだったのだが…大事な約束の為に差し出すものだと思う程に大切なものだと思ってくれたらしい…これが婚約指輪代わりだとは思いたくないと音弥が感じたのは余談だが…
『…なら、これは俺が大事に預かっておく…』
『約束だよ、お兄ちゃん…約束だから…!?』
そう言って、互いの大事なものを交換し合って、音弥たちは会うための約束を交わしたのだ。約束したことで不安も消えたのか、木綿季もそれ以上我満を言わなくなり、音弥と紺野家は別れることとなった。
…あと少し遅ければ、母親が紺野家の説得に成功しそうになっていたことを思えば、ギリギリセーフだったと言わざる得ない状況だったらしいが…
「…まさか覚えているとはな…」
過去の回想から意識を現実へと戻し、再び木綿季の首飾りへと視線を落とす音弥。そこには、再会してすぐに交換し直した思い出の指輪が紐に通されていた。
音弥の方も再会するまで、大事に指輪を持っていたのだ。もっとも、完全に恋焦がれるまでになっているとは、期待を裏切られる結果になったわけだが…
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
実は音弥自身、ちょっと気にしていたところはあったのだ。
音弥蓮は(二度目だが)結構モテる…高校自体や大学時代には告白をされたことも多々あるくらいだ。しかし、どの相手とも恋仲になったことはなかった。
美人な相手もいれば、自分と波長の合いそうな相手もいたはいた…しかし、それでも脳裏のどこかに木綿季の姿が映り、その気になれなかったのだ。
『音弥お兄ちゃん…大好きだから~!!』
分かれる直前で、零れそうになっていた大涙を堪え、必死で叫ぶ木綿季の言葉を聞いた時、音弥は何かを掴まれたような感覚に襲われていた。
…それが恋だと自覚したのは大分後の話で、ちょうど教師になって実家から引っ越しをしようと、荷物を整理している中で指輪を見つけた時だったわけだが…
「むにゃ…お兄ちゃん、大好き…」
「夢の中にも俺がいるのかよ…愛されてると思うべきなのか…」
零れた寝言に苦笑しつつ、木綿季の想いに、ちょっと顔が赤くなる音弥。
別にいますぐ結婚してもいいとは…実は音弥自身も思っていることではあるのだが、まず法律がそれを許してくれないし、今度は自身の立場がそれを許してくれないわけで…
『卒業してから結婚』というのは、音弥の感情云々よりもどうしても無視できない成約によるものだったわけだ。しかし、それを理由に更に待たせるのは木綿季が可愛そうだということで、『卒業するまでに気持ちが変わらなかったら』という建前の条件にしたわけだ。
…これで木綿季が他の人に気持ちが移ったら、死ぬ自信が音弥にはあるほどだ。
「…それに、他にも色々となんとかしないといけないこともあるしな」
木綿季が卒業するまであと二年と半年足らず…それまでに、自身に好意を持っている奏とどう向き合うのか、結婚するのに何の準備をしていくべきか…本業と共にやることは多かったするが…それでも、幸せの為になら、それくらいの苦労をするのも悪くはないと思いつつ、
「また明日な、木綿季」
そう声を掛け、額にキスをして音弥も床に敷いた布団で眠りに就いた。明日も、その先も…色々なことが待っているだろうと期待と不安を胸に抱いて。
【これはあったかもしれない可能性の一つ…夢とも、虚構とも、幻とも取れる世界の一つ…しかし、絶対にありえないとも否定できない世界でもあります…またそのページが開かれる日にお会いしましょう】
~設定という名の解説~
音弥 蓮
ご存じ、本作主人公…の並行同位体。この世界では2022年において27歳の社会科目教師になっている。
あいもかわらず女誑しだが…本世界では和人(キリト)のハーレム関係の幅が小さくなっていることもあって、より酷い形になっている。
高校生の頃にユウキと結婚の約束(正確には嫁にしてと強引に結ばされたに近いが)し、幼少期に面倒を看てくれていた奏(カーディナル)の心を落として後に自爆に近い告白をされる、その他二名ともフラグを立てているなど…過去にやらかしたことが刃となって今襲い掛かっているが、完全に自業自得である。
和人や幸路(ユージオ)とは小学校からの幼馴染でゲーム仲間。本編同様、ある事件がきっかけで剣道を止めているが、和人たちのお陰でトラウマを抱えずに済んだという裏話がある。
生徒・教師ともに評価が高いが、できる人である故、色々な仕事を頼まれては引き受けてしまうため、オーバーワークになりがち。
現役MMOプレイヤーだが、ある事情から元々使用していたアカウントを封印している…当時は『夢幻の戦鬼』と、『黒の剣士』・『氷零の薔薇騎士』と併せて伝説のプレイヤーと呼ばれていたらしい。
紺野 木綿季
本作メインヒロイン…の並行(以下略。現役女子高生で、本編と違って一つ年が上がっているが、それでも法律の壁には逆らえなかった。
小さい頃、(本話では語り切れないほどのエピソードを経て)よくしてくれていた音弥に恋し、結婚の約束を強引に取り付けた程に慕っていた。音弥的には憧憬が混じったもので、大きくなるにつれて薄れるのではと思っていたが、逆に音弥以上に魅力に感じる男性と出会わなかったのが逆に作用して(幸いにもとも捉えられるか?)、高校入学直前に自宅に突撃するほどに想いを募らせることになった(そして、結果はおっさしの通りである)
学年が一つ上の詩乃・直葉と同じで、音弥が顧問を務めるボードゲーム部(週火・木が活動日)に所属しつつ、その運動センスを買われて部活の助っ人に出ることも多い。
将来の夢は音弥のお嫁さん…だが、他の女性へのフラグが発覚した際には、鬼の形相でお説教することが増えた。昔の名残で、時折音弥のことを『音弥お兄ちゃん』と呼んでしまうことがある。
ちなみに、本世界では家族が存命している。
桐ケ谷 和人
原作主人公…の並行同位体の並行同位体(…言っててよく分かんなくなってきた)。結構凄腕のプログラマーであり、現役のMMOプレイヤー。音弥とは小学校からの悪友であり親友。本編と違って、直葉との年齢差が大きくなっている。
(後述するが)『ARGUS』に勤めており、CEO兼最高開発責任者の茅場から一目置かれるほどのプログラムの知識や発想を持っている。今は4周年を迎える大人気MMO『インカーネイト・ワールド』の主軸スタッフの一翼を担っている。
明日奈とはお見合いの場で初めて出会うも、趣味の話から上記のMMOで結婚しているプレイヤー同士だとお互いに知って、交際を改めて(?)始めることとなった。
が、(原典と大きく異なった)ユイからも異性として慕われているため、そのことが発覚した際、とんでもない修羅場になることは予期されている。(そして、そのことは誰もまだ知らない)
普段は一般アカウントでMMOをプレイしているが、ゲーム存続に関わるある重大事件の際に、事態の収拾を図るために使用したスーパーアカウントとシステムのほとんどを把握しているこそのプレイニングを見せたことで、三大伝説プレイヤーの一人『黒の剣士』として呼ばれることになった(しかし、そのせいで本気を出すとプレイニングから自身が黒の剣士だと正体が露見する可能性ができてしまい、一般アカウントでは本気を出せなくなってしまった)
蛇足だが、直葉に彼氏がいると分かると、発狂する可能性が存在している。
結城 明日奈
名前だけ登場。和人とお見合いをし、色々あった末、順調に交際中。
原作同様、家が厳しかったこともあり、高校時代からの友人に勧められたことで始めたゲームをきっかけに、息抜きも兼ねてゲームを楽しむようになった。大学卒業後、『レクト』で経理をしていたが、家庭内の空気もあって少し憂鬱になっていた時、MMO『インカーネイト・ワールド』を初め、そこで出会ったあるプレイヤーと意気投合…それが『キリト』こと和人だったのを後に知ることになった。
瑠璃 幸路(るり ゆきじ)
本世界におけるユージオの並行同位体。音弥や和人、アリスからは下の名前を捩って『ユージオ』と呼ばれている。
あだ名だけの登場だが、音弥・和人の幼馴染。今は和人と一緒に『ARGUS』にプログラマーとして勤めている。
赤ん坊の頃からずっと一緒だった幼馴染のアリスと一番仲が良かったが、小学校二年の時に彼女の家の都合で海外に引っ越すことになり、別れることになった。(この時、落ち込んでいた彼を見兼ねて、声を掛けてきた音弥や和人によくしてもらったことで友達となった裏話がある)
だが、大学一年の時に帰国子女として帰ってきたアリスとまさかの再会をし、更に住むところを探していたこともあって、彼女からの提案でルームシェアをすることになった。その流れで色々とあって、大学時代から彼女と交際を始めることとなった。
MMO『インカーネイト・ワールド』での過去一番のハッキング事件において、友たちの作戦に助力すべく、スーパーアカウントを使って当時の三大ギルドのプレイヤーたちを幹部含めて圧倒したことから、『氷零の薔薇騎士』として恐れられるようになった過去がある。
山吹 有栖
本世界におけるアリスの並行同位体。年齢は音弥や和人、ユージオと同い年。
ユージオとは生まれから育ちまでほとんどを共にした幼馴染。実はユージオの優しさに仄かな恋心を抱いていたが、低学年の頃に家の都合でアメリカに引っ越すことになり、しばらくの間、離れ離れになってしまった。
しかし、日本の大学に合格したことで帰国…さらに住む場所を探していた時に、偶然にもユージオと再会したことで、ルームシェアを提案して一緒に住むことに。ユージオの項でも解説したように、紆余曲折あって交際を始めることになった。
社会人となった今は、植物を育てる研究職に就いている。
茅場 奏
本世界におけるカーディナルの並行同位体。音弥が勤めるSAO学園の学園長兼理事長。もうすぐ30も半ばの年齢…らしい。
茅場の性だが養子であり、義姉と一緒に引き取られた経緯がある(これは茅場と彼女たちがそれぞれ縁戚にあたり、同じ事故で親を失った二人に思うところがあったため)。
高校から大学時代に音弥の面倒を看てくれていた人であり、当時から身長がかなり低いことを気にしていたのもあって卑下になりかかっていたが、「自分の知らないことをいっぱい知ってる姉ちゃんは、身体が小さくても俺の自慢の姉ちゃんだ」という音弥の言葉に感化され、多少はコンプレックスを乗り越えることができ、その名残で音弥に恋心を抱くようになった(まぁ、当時は子供に恋するとは馬鹿げてると思っていたが)。
社会人経験を経て、叔父の茅場からSAO学園の運営を任され、その際にスカウト候補から音弥の名を見つけ、再会することになった…が、ユウキがSAO学園に入学した直後、二人がしているのを目撃し付き合っているのではと(ある意味で正解であり間違いではあるが)思い、学園長室での尋問の末、事実を誤解したこともあって自身の好意を曝け出すという自爆をやらかし、まさかの三角関係を作り出すことになってしまった。
普段は学園長と呼ばれそれ相応の態度で接しているが、見知った音弥の前だと素顔を晒し、「カナデ姉」と呼ばれている。
本話で一番キャラが崩壊している方と言っても過言ではないだろう。
茅場 亜斗(かやば あっと)
本世界におけるアドミニストレータの並行同位体。もう40を迎える筈なのだが、そうは全然見えない美貌とスタイルを誇る。
現役のグラビアアイドルであり、同時に写真家。仕事柄国内外の至る所を飛び回っており、一定の場所に住むがない放浪家気質なところがある。
経緯は義妹の奏の項を参照してもらいたいが、本編と異なり二人の関係はかなり良好であり、面倒な役を引き受けたと指摘しつつも、本当に義妹が困った際には協力を惜しまないなど奏のことは大切に想っている。
グラビア写真は発売されるとすぐに売り切れるほどのレベルで、遼太郎(クライン)も定期購読してるほど。男性を虜にしてしまうその美しさから『魔性のグラビアアイドル』と世間からは呼ばれている。しかし、本人は普通の結婚を望んでいたりするのだが、なかなか自身の外見以外を見てくれる人に出会えず苦労しているらしい。
音弥には『アド姉』と呼ばせているが、それでも慕われてはいる。ちなみに、音弥のことは内面も見てくれるいい男だと認識しているが、「流石に年が離れすぎている」と恋愛の対象からは外している。
桐ケ谷 直葉
SAO学園高等部2年。和人の義妹。兄とは年が(原作と比較しても)離れているが、仲は良好。兄と違って、デジタルゲームよりもアナログゲームを好む傾向があり、1年の頃、部活を立ち上げたばかりの詩乃に誘われて、ボードゲーム部に入部した。
ボードゲーム部と剣道部(週月・水・金・土が活動日)を兼部しており、その腕前はかなりのもの。だが、ブランクが大分ある筈の音弥には負け越しており、現在の目標の一つに『打倒音弥』が入っている。
一方で、兄の親友ということで小さい頃から音弥とは知り合いであり、学園で久しぶりに会った時には大変驚いたらしい。
実は同じ剣道部に所属しているある男子生徒と付き合っている…が、兄に知られるのは恥ずかしいという思いから、相談に乗ってもらっていた音弥には秘密にしておいてくれと頼んでいる。
朝田 詩乃
SAO学園高等部2年。進学校であるSAO学園に奨学金で通い続けている優等生。音弥が初めて担任を持ったクラスの時、一年でそのクラスに所属しており、ある経緯で音弥からボードゲームの楽しさを教えられ、部活を立ち上げることになる。
原作と異なり、銃撃事件に巻き込まれていないため、母親も元気である。今は親元を離れて一人暮らし中。また、小学校からの銃マニアの友達がいるため、そこら辺の知識も深かったりする(まぁ、原作と違って狂ってないものの、彼の好意には詩乃本人はまだ気づいてないため、とても仲のいい友人という認識で止まっているのだが)そのためか、直葉との関係で和人の存在は知っているが、関わりは全くない状態になっている。
察しの良さはあいかわらずで、音弥とユウキの関係も薄々勘づいている。
綾野 珪子
SAO学園中等部2年。ボードゲーム部には去年入った。中等部と高等部の校舎は敷地が隣接しているが、ユウキたちと違って流石にお昼を一緒にする機会はそこまで多くない。
ドジっ子気質だが、カード運が強く、ここぞという場ではとんでもない曇天返しを見せる一面もある…そして、一番怖いのがそれを狙って勝負を仕掛けてくる時でもあり、その時の姿を「黒珪子」と部長の詩乃は内心呼んでいる。
詩乃同様、和人との関わりはほとんどない。
その他ボードゲーム部員
実はここにロニエやティーゼ、更にはオリキャラのマーベルに該当するキャラが入る予定でした。流石にリアルネームを考える気力がなく、紹介程度になってしまいましたが…(苦笑)
アンドリュー・ギルバート・ミルズ
『Dicey Cafe』の店主。本世界では、音弥たちが大学生の頃からの行きつけの店のマスターという立ち位置。奥さんの口調が全然分からない…!?
坪井 遼太郎
和人の社会人になってからの知り合い。仕事の流れで、対応することとなった和人が自身もプレイしているMMO『インカーネイト・ワールド』の開発スタッフだと知り、意気投合。和人を通して音弥やユージオとも知人となった。
『インカーネイト・ワールド』でもギルド『風林火山』を立ち上げており、(本人は彼らの正体を知らないが)過去に伝説を生んだ三人のプレイヤーの活躍をその目で見た人物の一人だったりする。
ユイ
MMO『インカーネイト・ワールド』でいくつもの偶然が重なった結果、生まれた意思を持つAI。当初はゲームにランダムでエンカウントするNPCと思われていたが、そんなプログラムを組んだ覚えがなかった和人とユージオが正体を探ったことで、生まれた原因が判明。
しかし、『意思あるAI』という(本世界軸上では)あまりにも希少なその存在に気付いたアメリカの某組織が狙い、『インカーネイト・ワールド』を含む大規模ハッキング攻撃を実地…それに直前に気付いた和人が、上司の茅場、そして、親友の音弥とユージオの手を借り、その目論見を阻止するために動いたことで、煽動された日本人プレイヤーをユージオが、バグを利用したスタンピードを音弥がそれぞれ鎮圧し、ユイ本体を強襲してきたある天使の名を持つ男も、ブチギレた和人が操るキリトによって返り討ちに遭い、情報戦までもあの稀代の天才と言われる茅場と須郷たちチームの前に手も足も出せないどころか、逆にハッキングされかえされ組織が活動できないまでにあらゆる情報を世間にぶちまけられる…俗に『第一次日米電子戦』とネットで揶揄されるまでに呼ばれた事件の末、今は『インカーネイト・ワールド』のオリジナルガイドキャラクター兼アイドルとして『ARGUS』の看板キャラとなっている。
自身を救ってくれた音弥やユージオ、茅場たちには恩義を感じているも、特に和人に関しては世界を超えた感情を抱いており、日中一緒にいたいという思いから自身のデータをスマホに移すプログラムを独力で開発するなど、和人顔負けの技術を身に着けてしまうほどである(一方で、電子戦において、そのうち茅場を超すのではと音弥からは危惧されているわけだが)
茅場 明彦
こちらでもVR研究者ではあるが、本編ほどにまでは開発は進んでいない模様。あちらと比べて、多少は人間らしさを持っているらしく、縁戚の奏たちを引き取る、パートナーである凛子との時間を持つ、後輩の須郷の実力を把握している、など色々な変化が見受けられる。
鋼鉄の城に行きたいという夢は捨てていないが、全てを投げうってでもという自らのことを鑑みないという部分がなくなったのが大きいのだろう。
茅場 凛子
旧姓:神代。茅場とは学生時代に籍を入れたものの、凛子も研究者気質なところがあるため、結婚して30年経っても子供はいない(それもあって、奏たちを引き取ったのもあった)。まぁ、凛子としては茅場と一緒にいられるだけ十分なところもあったのかと(学生時代に無理矢理籍を入れたのも、そうでもしないと茅場がどっかに一人で行ってしまいそうだという不安があったため)
苦労人であり茅場たちにとっての最後のストッパーでもあるが、いかんせん研究者気質が幸いして止める所を見失うことがたまにあるのがキズ。
須郷 伸之
茅場の後輩。学生時代は自分の遥か先を行く茅場のことを妬んでいたが、ある研究を一緒にした時の言動を受け、その妬みの大半を失くすことができたため、まともで優秀な研究者に成長した。
本編ではけっしてありえなかった『綺麗な須郷』…こういう可能性もあったかもしれないと思ってのキャラ変。
紺野 藍子
ユウキの姉。年齢は14歳も離れているが、姉妹仲は滅茶苦茶いい。本世界におけるユウキの背中を押したある意味では元凶。
義弟(予定)の音弥とは月に一度定期連絡を取っており、アメリカにいながら妹のことを心配している。あと、義弟弄りをするのが最近の日課になっているらしい…が、弄り過ぎて相手も容赦なく年齢ネタで反撃してくるようになったため、ユウキが卒業するまでには結婚相手を見つけるぐらいはしないとマズいかと焦っている。
重村 悠那
SAO学園高等部3年。株式会社『ARGUS』会長の一人娘。(『ARGUS』がMMO運営を中心とした大会社で、茅場たちはそこに所属しつつ、子会社である『科学研究機構ラース』でVR研究をしている。で、『科学研究機構ラース』は学園の出資元でもあるため、重村が口を挟むことが多々ある)
今、若手で一番注目されているシンガーソングライター『ユナ』として活動しており、MMO『エタニティ・ワールド』のプレイヤーでもある。そのため、自身のライブにユイを呼べないかと検討中。
ちなみに、同じ学園にマネージャーがいて、何度か父親に紹介しようとしているのだが、本人が「まだ早い」と言って会ってくれないのが最近の不満らしい。
…恐ろしく長くなった…
あれですね、設定を盛り過ぎるとこんなに長くなるんですね。大分端折って端折って、これって…これだけで普通に話が展開していけるから困ります(笑)
学園ものでありながら、禁断(?)の教師と生徒のラブコメになるという…いや、なんかそういうのって憧れません?
本当は全員学生にしようかもと思ったのですが、大人になったキリトたちもちょっと書いてみたいなと思い、フォンやキリトたち一部のメンバーは成人にした形となりました。
多分、続きは書かないですね…書くと、完全に他の作品も亀更新と化しますので(苦笑)…本音を言うと、ユウキが音弥に惚れた幼少期のエピソードとか、伝説のプレイヤーと化した事件の部分とか、本編では実現しないキリト×ユイのエピソードもこの世界軸だと実現できるのですが…そこは皆さんの想像にお任せしたいと思います。
まずは番外編第1弾をお届けしました!第2弾はお昼12時に投稿予定ですので、そちらもお楽しみに!
それでは!
…200…?
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