色々と無茶な設定込みかもしれませんが、そこは目を瞑って頂ければと…(苦笑)
本当はラストをもう少し書き足す予定だったのですが、ちょっと時間的制約の都合で…
そんなわけで、最後が衝撃の終わり方になってしまったなと…まぁ、これはこれでありかと…
それでは、どうぞ!
…今さらの話ですが、某トレジャーハンターさんのイニシャルって、FじゃなくてPだったなとプロット考えている時に気付きました…大変恥ずかしい…!?
「キー坊はいるカ!?」
「うおっ…どうしたんだよ、アルゴ…」
アルゴさんから月夜の黒猫団のことを教えられた翌日…その本人が血相を変えて、俺のログハウスへと飛び込んできたのに、キリトと揃って驚いていた。
今日も他のメンバーは別行動中で、色々とすることがあってダイブするのが遅くなった俺は、同じく用事でダイブするのが出遅れたキリトと一緒にクエストにでも行くかと相談していたタイミングだったわけだ。
息を切らし、珍しく慌てた様子のアルゴさんにキリトが何事かと尋ねると、
「大変なんダ!?昨日話した月夜の黒猫団のメンバーが‥!?」
「「っ?!」」
昨日出た話がまさか今日も聞くことになるとは思ってなかったのもあるが、アルゴさんの反応からして只事ではないと察し、その先を話すことを促す。
「ともかく、まずはこれを見てくれ!」
そう言って、アルゴさんが自身のメニューを左手で開き、届いていたメッセージを可視化した。どうやら運営からの通達のようだが…
「ここには、あるダンジョンへの立ち入りを禁止するっていう緊急の通達が書かれてる。キー坊たちのところにも届いてるんじゃないカ?」
言われてみて、俺たちも自分たちのメッセージを確認する…ダイブできていなかった時に、どうやら届いていたらしい。
メッセージの内容的には『央都アルン南部に新しく誕生したダンジョンへの出入りを禁止する』と書かれているようだが…
「その出入りを禁止されたダンジョンに月夜の黒猫団の二人が取り残されたんダヨ!?」
「なぁ…どういうことだ、アルゴ!」
「キー坊が眠ってた間…7月半ばに行われたアップデートのことは覚えているカ?」
「それなら、俺が覚えてます…新武器の追加要素が行われたのと、確か…来月の大型アップデートに備えてのALO全体の更新がされた筈でしたよね?」
アルゴさんから振られた話題に、当時のことを思い出しながら俺がキリトに述べる。鞭や鎌を始めとした武器群の追加で隠れてしまっていたが、確か来月の大型アップデートの下準備を兼ねてのものだったと更新履歴に記載があった筈だ。
「そうダ…だが、そのアップデート以降、小規模のバグが発生していたことは知っているカ?」
「…いいえ、そんな話は……初耳です」
「だろうナ…頻繁に起きているのはALO本土がメインであって、新生アインクラッドの方では全然見受けられてないからナ…あのアップデート以降、数個単位で一日で消滅する小規模ダンジョンが出現し出したんダ」
「既存のダンジョンとは異なるのか?」
「ああ…一日で消え、そして、翌日には別の場所に全く違う形をしたダンジョンが生まれる…デイリーダンジョンといった感じで、央都アルンを中心にそんな異変が生まれていたんダ」
最近はカナデの一件や、受験勉強へも時間も割かれ、依然と比べるとALOへとダイブする時間が減っていたこともあり、毎日インしているとはいえ、やはりアルゴさんと比較すると、情報の収集は劣ってしまうのだと思いつつ、ALOに起こっていた異変に俺とキリトは思わず顔を見合わせてしまう。
「最初は全然気づかれなかったんダ…ニュービー以外、熟練のALOプレイヤーは高難度である新生アインクラッドの攻略に赴くことがほとんどだろう?だから、そのデイリーダンジョンもニュービーの為に運営が用意したものかと思われていたんだ…何度もキー坊たちから見れば、目を瞑ってでも攻略できるぐらいのものだからナ」
聞けば聞くほど全然脅威に感じないのだが…一体それが今回の話にどう繋がるのだろうか?そう思っていた俺の考えを見透かしたように、アルゴさんはダンジョンに隠されたその真実を語り出した。
「そう…そこまで聞けば、大したことないように聞こえるよナ?だが…そのダンジョンは攻略される度に、難易度が上がっていく仕組みになっていたんダ」
「「…!?」」
「最初は気づかれなかったダンジョンだが、攻略したプレイヤーから噂となり伝聞され…徐々に挑戦し続ける者が増えていったんダ…けど、八月の半ばから異常な傾向が出だした…簡単だと思われていたダンジョンに新生アインクラッドでしか出ないレベルのボスモンスターが出現し出したんダ」
「…そんな…新生アインクラッドのボスモンスターレベルって…!」
「もちろんニュービーが勝てるもんじゃない…ただでさえ、SAO自体と比較して強化されているんだから、当然の話ダ…そして、ボスモンスターだけでなく、トラップとして結晶無効化エリアが設定されていたり、魔法自体が発動できない魔法禁止エリアまでもが適用されたり…下手をすれば、新生アインクラッド以上の難易度を誇るダンジョンが出現する可能性も今や出てきたんダ!?」
「ちょっと待て、アルゴ…まさか二人が取り残されたダンジョンが…?」
「…そうダ…今回、立ち入り禁止とされたダンジョンがその一つなんダ…結晶無効化が全エリアに適用された最悪のダンジョンなんダ」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
アルゴさんが告げた事実に、俺たちは思わず絶句する…そんな危険なダンジョンをどうして運営が放置していたのか、そもそもの話として、奇妙な点に思い当たり、俺はアルゴさんに尋ねた。
「ですが、結晶アイテムが無効化されていようと、デスペナ覚悟で死に戻りすれば、ホームに戻ってくることができるんじゃ…!」
「一緒に潜っていたプレイヤーたちがそれを試したらしいが…ダンジョンボスのフロアの前で強制リスボーンされるようになっているらしいんダ…一人のプレイヤーが現実世界にログアウトして、運営のそのことを報告したことで事件が公になったんダ」
「『死に戻り』までできないなんて…だ、だったら…運営が適切に対応するまで待つしかないんじゃないですか。俺たちにできることは…」
「その運営がプレイヤーのアカウントごとダンジョンを消そうしているとしてもカ?」
「っ!…なんですって…?」
アルゴさんから出た衝撃の発言に、一瞬頭を殴られたような感覚に陥った。言われたことを理解しようとするも、驚きが優り上手く言葉が出ない。
「そもそもの話、今回オイラがどうしてここまで内情を知っているかっていう話にも繋がるんだが…この異常なダンジョンの活性化が表立ってきた時、オイラに新生ALOを運営している『ユーミル』を通して調査の依頼があったからダ…仕事柄、付き合いがあり、現役MMOプレイヤーのオレっちに話が回ってきたわけダ」
「…アルゴさん、貴女は一体何者なんですカ?」
「それは秘密ダ、フォン坊…大人の女性の秘密を探ろうとするのは感心しないゾ?」
さり気なくとんでもないことを暴露したアルゴさんに、思わず笑みが引き攣る…なんやかんや、SAOからの長い付き合いだが、アルゴさんがリアルの自身についてあまり語りたがらないこともあって、思わず思った疑問が零れたものの、悪戯めいた笑みと共に誤魔化された。
…まぁ、そんな事情を隠すことなく教えてくれるまでに信頼してくれていることに、今は満足すべきなのだろう。
「話が逸れたナ…だから、ある程度の運営の動きっていうのもオレっちのところには入ってくるんで、対処の内容についても知ってるわけダ」
「…プレイヤーのデータごとダンジョンを破壊するっていうのは…?」
「文字通りそのままの意味ダ…異常な更新を続けるダンジョンは、運営サイドからも止めることができない状態になってる。原因不明…ダンジョンへの立ち入りすらもできず、入口前に運営側の人間が立ち塞がる形で封鎖するのがやっとみたいダ。
で、その原因がALOのシステムにあると見ているらしいが…それを調査しようとなると、システムを停止させないといけない…つまり、ALOの運営を一時的にストップさせないといけなくわけダ。
それは運営としても避けたいわけだし、システムを停止させたところで原因が必ずしも究明できるとは分からない…であるならば、危険なデータごと削除した方が一番安全ではないか…そういう結論に運営側は至ったんだ…
まぁ、そのアップデートに関わったある人物がその案に猛反対の意見を出しているせいで、今すぐにそれが実行されるわけじゃないが…時間の問題だろうナ」
(…ALOの運営プログラムとして使われている、オリジナルのカーディナルシステム…それに何か異常が出ているってことなのか?)
運営側としても、これ以上問題が大きくなる前に対処したいのだろう…それが一部のプレイヤーを犠牲にするものであっても、大勢のプレイヤーを守るためになら、そういう決断をせざるを得ないのだろう。
一方で、カーディナルシステムに異常が起こっているという話に、嫌な予感を覚えずにいられない…エクスキャリバーの一件があったのだ。今回もそれに連なる話ではないかと疑いを禁じ得ないのが正直な感想だった。
「ともかく、閉じ込められているのは月夜の黒猫団の二人を含めて4人…ダンジョンデータの破壊に伴い、アカウントが消滅したプレイヤーにはそれ相応の補填をするつもりみたいだけどナ…」
「…それで全部丸く収まるのなら、アルゴさんが俺たちにその話をする必要はありませんよね?」
「…まぁ、ここからは当事者間の話だからナ…けど、それを良しとしない奴もいるだろう?」
ここまで内情を説明して…いや、それを教えに来てくれたこと自体がそういうことなのだと納得してしまった俺は、意味深なアルゴさんの目線が向く人物へと同じく目を向ける。
その目をしたあいつは…昨日、俺が危惧したような覚悟を宿した色をその瞳に宿らせていたように見えた。
「…アルゴ…最後に一つ聞きたい」
「うん?何ダ、キー坊…」
「…そのダンジョンのボスを倒せれれば、プレイヤーたちは解放されるのか?」
「おそらくナ…だが、簡単な話じゃないゾ?今回のダンジョンはボス部屋そのもの…入り口から少し進めばすぐさまボスたちがいるまっ広い空間へと続く穴がある、かなり単純な構造だ…プレイヤーたちはボスフロアに僅かにある安全地域兼リスボーン地点にいるらしいが、そこもいつ見つかるのかは時間の問題…下手をすれば、ループキルされかねない可能性もあるし、更にはボスを倒すまで付属のモンスターたちが湧きまくりという、鬼も裸足で逃げかねないレベルの難易度ダ…」
「…それだけ聞ければ充分だ。場所はアルンから南下したところだな…よし!」
聞きたいことは聞いたと言わんばかりに、キリトは覚悟を決め、その場所に向かおうと…
「待て、キリト!?」
「っ、フォン…!」
予想通り、飛び出そうとしたキリトを慌ててその左腕を掴むことで制止する。確実に一人で飛び出そうとしていたところまで予想通りすぎて、反応するのが遅れかかった!
「…放してくれ、フォン」
「そう言われて放してやるほど、俺も馬鹿じゃないんでな…お前をこのまま行かせるわけにはいかない」
「…放せよ」
さっきまでの雰囲気が鳴りを潜め、殺意と怒気が入り混じった声がキリトから漏れた。以前、似たようなものを感じた覚えがあり…それが、SAOのクリスマスイベントの時だったなと気づいた…ある意味では俺たちが初めて仲違いした時と同じなのは、なんという偶然なのだろうか。
「放さない…お前を一人で行かせるわけにはいかない!さっきの話を聞いただろう!お前一人で行ってどうにかなるレベルを遥かに超えてるだろう!?」
「じゃ、あいつらを見捨てろっていうのか!このまま黙って見てろっていうのか!」
「落ち着け!?ここはSAOじゃない!それに、俺だって見捨てるつもりなんてちっとも考えてなんていない!だけど、無策で突っ込んで攻略できる難易度じゃないのは火を見るよりも明らかだ!少なくとも、アスナたちが合流してから挑むべきだ!」
「それじゃ、遅いかもしれないだろう!!あいつらがいる場所だっていつまで安全か分からない、いつ運営側が行動を起こすか分からない、手遅れになってからじゃ遅いんだ!」
「それでお前が行って、同じことになったら意味がないだろう!?お前一人が欠ければ上手くいなくなる可能性もあれば、お前までもを助けようとすればリスクが上がることにもなるだろう!冷静になれ、キリト!?」
「俺は冷静だ!こんなヤバイ状況だっていうのに、そんな非情なことを言えるフォンの方が、おかしいんだ!?」
「なぁ…てめぇ、キリト…流石の俺もここまで言って分かんないのなら、手を出さないといけなくなるぞ…!」
徐々にヒートアップしていく口論に、俺はなんとか怒りを抑えようとしながらキリトを諭そうとするも、今の言葉だけは聞き捨てるわけにはいかなかった。
思わず怒りのままにキリトの胸倉を掴んでしまうも、キリトは全く臆することなく俺を睨みつけていた。
「こんだけ言っても分からないお前じゃないだろう!?状況をよく見ろ!俺たちで力を合わせて挑めば、なんとかなるかもしれない…自惚れかもしれないが、俺たちはそれなりの実力者だ!…だけど、今の俺やお前単体はどうだ?夜空の剣も映現世の剣もない…武器としてあるのは伝説級武器のエクスキャリバーと幻想剣ソードスキル…それだけで、本当に彼らを助けるためにボスを倒せると思うのか!?絶対と言い切れるのか!?
お前が絶対に彼らを助けたいのなら、尚更最速で万全の準備を整えてから行くべきだ!」
「それで…それで間に合わなかったら?!全てが水の泡になったらどうするんだよ!?あいつらは今も危険な目に晒され続けているんだ!誰かが動かないといけない状況で、誰も動かないんだったら、俺が真っ先に行かないといけないんだ!?それが俺の…………………っ!?」
「…!キリト、お前……があっ…!?」
怯むことなく、いつものキリトらしからぬ大声の反論…それが、キリトがどれだけ必死になっているかが分かる程だ…その最後に零した様に呟いた言葉を聞き取った直後、俺の腹部に強烈な痛みが走った!
「…お、まえ……!」
「…お前の力は借りない……俺は行く…」
油断していたところに、見事な右膝蹴りを腹部の急所である鳩尾に喰らい、全身の力が思う様に入らくなってしまう…それでも、なんとかキリトの肩を掴んで引き留めようとするも、その手すらも払われ、キリトは飛び出していってしまった。
「…大丈夫カ、フォン坊…?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
肺から空気が抜け切ったせいもあって、数秒ほど立ち直れずにいたが…動きの鈍い体のことなどお構いなしに、痛みを無視して俺は気力で立ち上がった。
なんでキリトを止めてくれなかったんだ、なんていう泣き言をぶつけたいアルゴさんが心配そうにこっちを見ているが…今はそれすらするのに時間が惜しいと思う程だ。
「…あのクソ馬鹿垂れが……」
つい出てしまった悪態のことは本人にぶつけてやろうと、俺は思考をフル回転させ、今すべきことを瞬間的に整理した。
「…アルゴさん。キリトを焚きつけた責任は取ってもらいますよ?」
左手でメニューを開き、メッセージを高速で作成しながらアルゴさんにある頼みごとをするのだった。
「はぁ……はぁ…!」
「……ケイタ、大丈夫…?」
片手剣を手に、荒い息を零す風妖精族の男性プレイヤー。その背後から、音楽妖精族の女性プレイヤーが心配そうに声を掛けていた。
このダンジョンに遭難してから、どれぐらいの時間が経ったのだろうか…体感的には半日を過ぎたぐらいに思えてならないほどなのだが、まだ3時間ほどしか経っていなかったりする。
しかし、その時間の間にボスを取り巻くモンスターは増殖を続けており、自分たちを閉じ込めているフロアの奥にいるボスが隠れそうになるほどの数がひしめき合っている程だ。
一様にデュラハンと言われるタイプのボスモンスターであるがゆえか、出現し続けているモンスターたちも騎士型のものだった…もっとも、トゥーハンドソードを持つものもいれば、バトルアックスやショートランスと装備している武器にバラつきはあるものの、それは些細な違いに過ぎなかった。
もう数を数えるのも止め、また安全地帯兼リスボーン地点に侵入してきた騎士モンスターを一体倒したところだが、完全に終わりの見えない闘いに、ケイタと呼ばれた風妖精族のプレイヤーは心が折れそうになっていた。
最初は他のプレイヤーに同行しての探索に来たはずが、あの異常なボスモンスターに一度キルされたところからが地獄の始まりだった。
リスボーン地点がダンジョンのボスがいるフロア…ボスが位置する場所の真反対の安全地帯であり、ボスを倒すまで脱出が不可能、そこに徐々に増殖出現していくモブモンスターの追い打ちという、まさかの高難度ダンジョンに遭遇したのだ。
結晶無効化エリアという最悪のトラップがおまけでついてくるという極悪設定に、運営の管理体制が正気かと疑いたくなるのも致し方ない話だった…流石に救済措置としてか、ここで何度死のうとも、デスペナを受けなくて済むようになっているようだが、今のこの状況としてはどうでもいい幸福だった。
(…せめてサチだけでも…!?)
異常なことがこのダンジョンで起こっている…そう判断し、同行していたプレイヤー二人がログアウトしてリアルから運営に報告しに行ったのだが…誰も救援に来てくれる気配がない。しかも、助けを呼びに行った火妖精族と水妖精族の彼らのアバターが再び動き出すこともない。
自分はどうなってもいいが、せめて彼女だけでもなんとか脱出させたい…だが、50は軽く超える騎士モンスターたちを倒し、ボスを撃破するなど…今の自分には到底できないことだと分かってしまっていた。
それどころか、増殖しているモンスターたちがどんどんとフロアを埋めていく、時折安全地帯に侵入して、自分たちに気付くものも出てくる次第だ…一体を倒すのがやっとなのに、このままでは一気に詰め寄られてしまうのも時間の問題だった。
そんなことを考えている内に、またしても斧を持った騎士モンスターが安全圏内に気付かず、フラフラと侵入してこようと…
…ザン…!
「「…!?」」
ケイタが武器を構え、サチはバフを掛けようと演奏の準備に入るも…そんな二人を庇うかのように、上空から黒い何かが落ちてきた…突如、眼前に舞い降りたそれが人だと認識するのに数秒掛かった二人…その間に、影は背中に背負っていた二つの剣を抜きながら飛び出していた!
右手には、新生アインクラッド第15層でボスドロップした黒剣を、左手にはALOに一つしかない伝説級の金色の聖剣を…それらを二刀流として構えた少年はソードスキルを放つ!
二刀流4連撃OSS〈カウントレス・スパイク〉…黄色の燐光を宿した二つの刃が、容易く鎧を斬り割き、モンスターをポリゴンへと変えてしまった…その背中を見た二人は、僅かな硬直に襲われている彼の正体を直感的に理解した。
過去に…怒りに駆られて辛辣な言葉を掛け決別し、後に新聞にてユニークスキル『二刀流』の情報が書かれていたのが、SAOで最後に見た彼の姿だった。
そして、自分たちも参戦したアンダーワールド大戦にて、予想だにしていなかった状況でその姿を見ることになった彼が、自分たちの前に…自分たちを助けに来たのだと知ったケイタの心中は複雑で、サチは懐かしさと共にそんな彼の名を口にしていた。
「…キリト…?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
プレイヤーネームを呼ばれた彼…キリトは答えることなく、硬直が解けた身体で少しだけ振り返り、目線を合わせることで応えるのだった。
(…サチ、ケイタ……間に合った…!)
自分を見て、驚いている二人…ケイタとサチらしき人物を見て、キリトは一先ず安堵していた。もう既に手遅れかもしれないと頭の隅に浮かんでいた絶望がなくなったが、今度は別の絶望がキリトの眼前に迫ってきていた。
(アルゴの情報通りか…数は少なく見積もって50…その奥に、大型の鎧を身に纏ったボスが1体…HPバーは3本、持ってる武器は両手剣のみ…一見シンプルだが、ああいうタイプは…)
毒々しい濃紫のプレートアーマーに、その色以上の禍々しい色を宿した巨大な剣を持つボスを観察しながら、キリトは嫌な予感を覚えていた。
それは直感ともいえるし、これまで培ってきたゲーマーとしての勘が警鐘を鳴らしているようにも感じた…何よりも、キリトには以前にも似た覚えがあった。
二刀流を初めて公の場で使ったアインクラッド74層の『ザ・グリームアイズ』戦のことがどうしても頭を過ぎるのだ…あの時とは味方と敵の数は全く違うが、ここが結晶無効化エリアであることがそれに拍車を掛けるように、当時と状況がダブって見えていた。
(…やるしかない…!?)
だが、キリトの頭の中は絶望に染まることはなく…そんなものなど見えていないとばかりに、覚悟ができていた。愛剣たちを握る手に力が籠り、キリトは群がるモンスターたちから一旦視界を閉ざすように目を瞑る…一拍、大きな深呼吸をし、
「…!はああああああああああああああああああああぁぁぁ!!!」
烈火のごとく、空気を震わせるかと錯覚する程の気合を吐き、安全地帯から飛び出した!安全地帯からキリトが飛び出したことで、彼を認識したモンスターたちも臨戦体勢になり、キリトを仕留めようと一気に動き出す!
想定していたよりも、取り巻きの騎士型モンスターたちの動きは鈍く、取り囲まれるよりも先に一点突破を図ろうと、キリトが先手を打つ!
真正面かつ一番近くにいたモンスターに、ライトエフェクトを宿した二剣を突き刺す…二刀流2連撃OSS<ダブルサーキュラー>…SAO時には、突撃からの時間差連続攻撃だったが、突撃力を強化したいというキリトの意向によって、ALOでのOSS化時に多少モーションを変更していたのだが…同時突きによる二重の衝撃はポリゴンと化す前にモンスターを吹き飛ばし、その余波で亡骸を叩きつけられた後続にもダメージを与える!
だが、息を吐く間もなくスキル硬直の隙を狙い、二体のモンスターが斧と剣をキリト目掛けて振り下ろそうとしていた。
その強襲を、硬直が解けた途端に動かした二剣で受け止め逸らす…その勢いをも生かし、回転斬りを繰り出したキリトは、ダメージでノックバックしたモンスターたちに横目を振らずに前へと突き進む!
同じ突進技ではあるが、今度は右手の剣のみライトエフェクトを発動させた…片手剣単発ソードスキル<レイジスパイク>で敵一体を吹き飛ばし、すぐさま左手へと意識を切り替える!
スキルコネクトにより、右手から左手へと意識を無理矢理切り替えることで硬直を無視してソードスキルを繋げるキリトは、エクスキャリバーで片手剣4連撃ソードスキル<ホリゾンタル・スクエア>を繰り出す!
ソードスキルの軌道に合わせて、強引に体が動かされるのに追従するように、敵陣に斬り込みながら、水平4連撃で騎士たちを屠っていく。だが、まだ連撃は終わらない!
また、右手へと意識を切り替え戻し、今度は片手剣2連撃ソードスキル<レイディアント・アーク>で眼前に迫ってきていたモンスターを突き刺し、二撃目で斬り上げた反動で宙へと浮かんでキリトは、4つ目のソードスキルとなる片手剣範囲攻撃<ライントニング・フォール>で剣を地面に突き刺し、周囲を雷属性で攻撃する。
痺れた騎士たちを一掃すべく、決めに掛かる…5つ目は右手による片手剣7連撃ソードスキル<デッドリー・シンズ>、6つ目は片手剣4連撃ソードスキル<バーチカル・スクエア>を繰り出し、一旦息継ぎするために、最後の7つ目となる技は片手剣単発ソードスキル<ホリゾンタル>を後ろに飛びのくようにしながら放った。
スキルコネクトの利点は、ソードスキルを硬直なしで打てるだけでなく、スキル硬直が最後に放ったソードスキルに則る形になるので、技の組み合わせ次第で隙を小さくできるというものもあった。
そのため、あれほどの連撃を放ったにも関わらず、単発技であるホリゾンタルの硬直時間は短く、一秒で硬直から解放されたキリトは、再びモンスターたちに肉薄し、今度だ二刀流でソードスキルを放った!
二振りの剣が黄緑のライトエフェクトを周囲に描く範囲攻撃…二刀流2連撃範囲OSS<エンド・リボルバー>…それにより、更に騎士型モンスターたちが屠られることになる。
この調子でなら、ボスにも辿り着ける…そうキリトは踏んでいた。
…だが、その猛攻を嘲笑うかのように絶望が顔を表す。
「っ…!?(モンスターの数が…減らない…!)」
事前情報で聞いてはいたが、それでもキリトが予想していた以上のスピードで、モンスターが出現し続けているのである。
この取り巻きの騎士型モンスターたちがポップし続けるのには訳があった…実は、このダンジョンフロアにおけるモンスターの数はボスを除き、50体と固定されているのだ…最大でも、最小でもなく50体ジャストでだ。
…つまり、倒される度に、フロアにいる数が50体になるよう、すぐさま次の騎士型モンスターがリポップする仕組みになっていたのだ。
そもそもの話、キリトの戦闘スタイル含め二刀流ソードスキル自体が、対多人数用にそこまで適正が適っていないのも大きな理由だった。圧倒的な手数と威力を持つ二刀流だが、それはあくまでも個を対象とした場合だ…振るう刃の矛先が分散してしまえば、その威力も減衰してしまう。
そこに加え、新たにリポップし続けるモンスターたちに対し、キリトには限界が存在する。体力や集中力然り、武器の耐久力から持ち込んできた回復ポーションに限りがあるのだから当然だ。
ボスに辿り着けず、数多に湧き続ける取り巻きに阻まれるキリトが思わず歯を噛みしめる…いつぞやタイムリミットが迫るかが分からない中、完全に足止めされてしまっている状態に焦りが大きくなる。
少しでも活路を見出そうと、強行を仕掛ける…しかし、焦るあまり、視界が狭まっているのが仇となり、
「…キリト!?」
「っ…!?」
焦ったサチの声が聞こえ、斧を受け止めながら顔だけを振り返らせ視線を向けると、5体のモンスターたちがサチたちのいる安全地点に踏み入ろうとしていた。
どうやらキリトからターゲティングを外した個体たちが、闘いの余波を避けようとして安全地点の方へと向かってしまったらしい。
「っ…くそ!?どけぇ!」
すぐに倒しに行かなければと動こうとするキリトだが、突出していたせいでキリトにヘイトを持ったモンスターたちが多すぎたせいで、取り囲まれてしまい身動きが取れなくなってしまっていた!
(…止めろ……止めてくれ!?)
サチとケイタに迫るモンスターたちを見て、キリトの脳裏にあの悪夢が重なるようによみがえる。また自分は手を伸ばせないのかと…ただ見ていることしかできないのかと…
「…止めろおおおおおぉぉぉぉぉぉ!?」
その悲鳴にも近い叫びがキリトから放たれた時だった…
「穿て、ランバルト・ノイン!!」
空から…いや、ダンジョンの入り口にあったこのフロアに繋がる穴から、落下してきた声に遅れ、9発の高速刺突斬弾が乱雑に騎士たちの鎧へと歪な穴を開け、それぞれをポリゴンへと変えた。
「…っ!?」
見た事も聞いたこともないソードスキル…いや、斬撃を飛ばすなんていう馬鹿げたソードスキルを使う人物のことを、キリトはたった一人だけ知っていた。
その想像が正解だと言わんばかりに、飛ぶ斬撃に遅れてサチとケイタの前に落ちてきたのは、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『蒼炎の烈火Ver2』と細剣『ノビロリティ・ロメン』を装備していたフォンだった。
「……(状況は最悪を通り越して、悪夢のレベルだな)」
先行してフロアに落下してきた俺は、落下途中にモンスターが二人のプレイヤーへと近づいているのが見え、咄嗟に幻想剣ソードスキルを放ったのだが…どうやら結構瀬戸際の段階だったらしい。
着地と同時に4秒のスキル硬直が解け、戦況を素早く確認する。アルゴさんからある程度を聞いて推測しながらここに来たのだが…それを遥かに超える光景には絶句するしかない。
まだアンダーワールド大戦でのアスナたちがPoHとコンバートプレイヤーたちに追い詰められていた状況に比べればマシだろうが…あの時は映現世の剣があったから、まだなんとかなったのだ。
…いや、ないものや過去のことを持ち出しても、今は意味を為さない。ともかく、取り囲まれつつあるあの馬鹿の救援が先だが…それは彼にお願いしている。
「あ、あの…」
「あん?」
「っ!……あ、あんた…キリトと一緒にいた人だよな…?」
「…その反応からして、やっぱり月夜の黒猫団のケイタとサチだな、あんたら。そうだ…俺はあの馬鹿の知り合いだ」
「ば、馬鹿……キリトが…?」
あの馬鹿のことが頭を過ぎったせいで怒りが再燃し、女性が呼びかけてきたことに粗暴な対応をしてしまった…ちょっとビビらせてしまったようだが、男性…ケイタらしきプレイヤーの言葉に応えると、サチと思われる音楽妖精族の少女が驚いていた。
「馬鹿だよ、馬鹿…あんたらが窮地だって知って、自分の身なんてお構いなしな上に、こっちの話を全然聞き入れないお人好し馬鹿だよ…で、俺はあの馬鹿に言ってやりたいことがあったのと、あんたらの救助にやってきた増援ってわけだ」
「だ、だったら…早くキリトのことも…!」
「問題ない…あの人が行ってくれてる」
「「えっ…‥‥っ?!」」
彼らに苛立ちをぶつけてもしょうがないので、怒気を抑えてモンスターたちに囲まれているキリトへと目を向ける。すると、囲んでいた筈のモンスターたちがポリゴンへと変わったのだ。
突然の出来事に後ろの二人から驚きの声が出ていたが、その原因を知っている俺は別の意味で驚いていた…あの人の居合、また速度が上がっていないか、と。
少し離れた場所に着地し、居合の構えを取ったまでは目で追えていたが、ソードスキルを発動した途端、一瞬で見失ったのだから。呆然とするキリトは、自身の傍らに現れた…おそらく、反射神経のいいキリトはその姿を捉えられていたのだろう…その人を見て、
「あ、あんたは……アルゴの…」
「やぁ、キリト君…こうやって直接話すのは久々かな?」
硬直に襲われながらも、モーションの一部である納刀独特の音を鳴らしている彼…『ネズミのボディガード』ことシグさんが、驚くキリトにこの場にふさわしくない爽やかな挨拶をしていた。
「ど、どうして…!?」
「フォン君に助けを求められてね…アルゴに頼まれて現場のすぐ近くに待機してはいたんだが…まさか運営のプレイヤーを押しのけて突撃する羽目になるとは想像していなかったけどね」
数体倒したところで、まだまだ群がるモンスターたちが迫ってきており、それらを刀で撃退しながらシグさんは、ここに来た経緯を説明していた。
…あの馬鹿が先行したせいで、封鎖を破られた運営側はダンジョンの入り口に障壁を作ってしまっていた…幸いにも破壊不能オブジェクトを用意する時間がなかったのか、一応破壊可能な木造による関所みたいなものだったので、俺が細剣最上位ソードスキル<フラッシング・ペネトレイター>で、シグさんが刀OSS<居合術『脱命』>で強襲して、無理矢理突破してきたわけだが…
さっき一緒に放ったのとは別の居合系のOSSを使用したのだろうが…あまりにも速すぎて、何のソードスキルか識別できなかった…ある意味、本当に敵には回したくない人の一人だ…奇襲でのあの居合は防げる自信がないからな。
…そして、俺が助けを求めたのはシグさんだけじゃない…
「…急に呼び出されたかと思えば、とんでもないことに巻き込んでくれたものだな」
「そう言う割には、メッセージを見て真っ先に飛び出したのはエイジじゃない?」
「兄さんは素直じゃないからな…まぁ、前半部分に関しては同意見だけど」
俺とシグさんが先行してしまったため、置いて行かれていた後続の彼らがようやく追いついたようだ。それぞれが状況を確認しながら、俺たちの眼前へと降り立ち、
「悪かったな…他のメンバーを待っている時間がなかったもんでな。でも…来てくれたことには感謝してる」
「…前の時と同じだ。返すべき恩を返しに来ただけだ」
「すいません、うちの兄がツンデレで」
「…カレット…!」
いきなりな上に滅茶苦茶な難題を頼んだにも関わらず、すぐに駆けつけてくれた彼ら…エイジ、カレット、そして、ユナの三人にお礼を言うも、エイジには素っ気ない返しをされてしまった…すぐさま、弟であるカレットにとんでもない形でのフォローをされて少し焦っていたが…
本当はアスナたちをも待ちたかったのだが…どうやら別のダンジョンに潜っているせいか、メッセージの既読が着かず、時間がないこともあって集まってくれたこの5人で増援としてやってきたのだ。
本当はユウキたちもいてほしかったが、ユウキはリアルの方でカナデと一緒に買い物に行くとのことで帰りが遅くなると聞いていたため、今回は応援としては期待できないのだ。
「まぁまぁ、エイジもカレットもその辺に…さて、それじゃ始めましょうか!」
エイジの肩に座っていたユナがそう言うと、小妖精の姿から等身大の音楽妖精族へと姿を変えた。
突如として現れたに近いユナにケイタとサチが「なんでユナがここに…!?」と良いリアクションをしてくれているが、説明はこの場を収めるまで待ってもらおう…まぁ、これが普通の反応なんだろうけど…
一呼吸置いて、歌を歌い出すユナ…システムの制約上、持ち歌ではなく音楽妖精族独自の音楽だが…その声量はやはり圧巻されるものだった。
音楽妖精族は他の種族とは異なる力を持つ…いわゆる音楽によるバフの付与だ。これは歌独自のシステムが流用され、魔法やアイテムでの解除ができない上に、他の効果と重複させることができるようになっている。
聞けばサポートとしてこれ以上ないもののように聞こえるが、もちろん制約も存在する。音楽を止めてしまうと、10秒ちょっとでバフが消失してしまう上に、バフの効力はプレイヤーの力量によって大きく増減してしまうのだ。
楽器を使うにしても、それ相応のレアリティの道具を使わないといけないということもあり、一定程度の熟練度合が求められる種族なわけだ。
だが、逆に言えば、そのプレイヤーの力量次第では最高の力を発揮できるわけでもあり…ユナの圧倒的な歌唱力により、俺たちに各ステータス50%UPのバフが掛けられた。
「エイジとカレットはユナと二人のガードをしながら、モンスターたちのタゲ取りを頼む!」
「…ああ!」「了解です!」
エイジとカレット兄弟二人に、一番の要となる後ろの守備を頼み、俺は点在するモンスターたちを突き斬り飛ばしながら、前線へと駆けていく。
「シグさん!あと5分でいいので、前線の維持をお願いします!その間に、話を着けますので!」
「5分!?君も無茶を言うね…!」
「そこをなんとか…」
「…4分だ。それ以上は、抑えられる自信がないよ」
「ありがとうございます!」
10を超える騎士たちを相手にしろと言われたシグさんから当然のクレームが飛んでくるも、頼み込んだことで1分マイナスで引き受けてもらえた…あとで、アルゴさんを経由してとんでもない要求をされないことを祈っておこう。
再び最前線にて騎士型モンスターたちへと意識を集中させたシグさんから視線を外し…俺は、いきなりの増援に驚いて呆然としていたあの馬鹿の元へとようやく近づくことができた。
「…!……フォン…その…ぐあぁ!?」
俺の接近に気付き、何と言うべきか言葉を迷わせていたあいつを遮り、俺はその頬に右拳を叩きこんだ!手加減なんてない、かなり力の籠った一撃にキリトもよろめき後退った。
「さっきあんなへなちょこキックを叩き込んでくれた礼だ…これでおあいこだからな」
「……怒ってるのか?」
「ああ、かなりな…」
さっきの暴挙に関して俺がキレているのだとこいつは思っているのだろうが…俺は敢えて訂正せずに怒気を発しながら答える。
「だが、俺が怒ってるのはお前が勝手に先走ったことなんかじゃない…もっと根本的な部分だ。お前、さっき俺になんて言った?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「『お前の力は借りない』…そう言ったよな。別にそれはいいさ…お前にだって意地があるだろうし、俺の手を借りたくない時だってあるだろう…けどな、もしも『お前の罪に俺たちを巻き込みたくない』っていう考えで言ったんだとしたら…俺はお前を許さない」
焦るキリトの気持ちが想像できないわけがない…むしろ、制止しようとした俺へ怒りをぶつけるのはある意味当然の結果だろう…だが、俺が許せないのはこいつ一人で全部を背負いこもうとするその姿勢そのものだった。
溢れる怒気が抑え切れず、思わずキリトの襟首を掴んでしまう…その理由が悲しさと失望が入り混じったものであるため、怒っている筈の俺が泣きそうになっていた。
「俺は昨日言っただろう…巻き込んでもらって構わないって…そうお前に告げた筈だろう!?なのに、なんだこれは!お前にとって、俺はそこまで巻き込めないほどに気を遣われる奴なのか!?お前が苦しんでいるのを見続けられて、平気でいられると思ってんのか!?
…アンダーワールドであの時、お前は俺に言ったよな?俺は仲間だって、友達だって…そう言うのなら…仲間だって、友達だって言うのなら、こんなときこそ巻き込めよ!頼れよ!?相棒なら……お前が守ろうとしているものに手を貸させてくれよ…!」
「…っ!?」
「巻き込んで、巻き込みまくって、迷惑を掛けて…それで最後に謝れ!それこそが仲間だろう!友達だろう!…相棒って奴だろうが!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「…だから…迷わずに助けを求めてくれよ…俺に…俺たちにできることなら、全力で力を貸す!できないことはできないってはっきり言ってやる!俺たちを信じて…頼ってくれよ…お前が辛そうにしているのを見ると…俺たちも嫌なんだよ」
最後の方は叫びに近かった気もする…裏切られたとも、失望したとも…似てるようでどこか違う感情が胸を占め、俺はキリトに訴えた…訴えざるを得なかった。
「……そう、だよな…俺が仲間だって言ったのにな。分かってはいたけど…いつもフォンには頼りにし過ぎてるところがあって…心のどこかでまだそれを後悔してたんだろうな…お前だけじゃなく、皆に対しても…」
ポツリと…さっきまでの焦燥感が薄れ、いつもの雰囲気に少しだけ戻ったキリトがそんな言葉を零した。泣きそうとも、嬉しそうとも、困ったようにも…色々と見て取れるその表情に、俺も釣られて苦笑してしまう。
「…頼む、フォン…いや、ここにいるみんな!俺に力を貸してくれ!」
「当たり前だ、この馬鹿野郎…!」
「一度受けた依頼は断らない性質だからね…任せてくれ」
「…当然だ。さっさと行ってこい」
「ここに来た時からそのつもりですから!」
「うんうん!みんなで力を合わせよー!!」
キリトの要請に、俺だけでなく、シグさん、エイジ、カレット、ユナも続けて応える!その反応に、色々と堪えていたものがあったのか、キリトは袖で両目を隠すように擦っていた。
「感動しているところ悪いが、泣く前にお前が知ってることを話してもらえるとすごい助かるんだが」
「…な、泣いてなんかない…!少なくとも、アスナの前以外では絶対に泣くもんか…」
「いきなり惚気るなよ…ったく」
「あのさ…なんか和んでいるところ申し訳ないんだが、もう5分経ってると思うんだけど?!」
ともかくまずはキリトが把握している情報を知ろうと質問するも、まさかの惚気込みでの返しが来たことに俺は呆れてしまう。
…まぁ、そんな柔らかい空気も、今も前線をなんとか維持しているシグさんの催促の声で、現実へと意識を戻されたのだが…
「シグさん、あと1分でいいのでお願いします!それで、キリト…」
「えっと…分かっていることだったな。ボスには一度も接触できてないから分からないが…取り巻きは倒したらすぐに別の個体がリスポーンしているみたいだ…それと、安全地点は一応不可視の領域みたいだが、モンスターが侵入するとサチたちを視認できるみたいだ」
「…なるほど…最悪、状況を立て直せるスペースはあるってことか…問題はボスの情報が何もなしってことか…まるであの時みたいだな」
「フォン、実は初見で見た時に俺もそう思った」
「でも…やるしかないってことか。これは最初から全力全開でいかないとダメみたいだな」
「ああ…だが、まずはあの取り巻きたちによって形成されている壁をなんとかしないと、ボスに近づけないぞ」
「それに関しては問題ない…強行突破する手段はもう考えてるから……準備はいいな、キリト?」
「…ああ!」
手短に方針を打ち立て、左手でメニューを操作した俺は武器を変更する。細剣を両手剣『エンプレス・ジェイル』に、左手には片手棍『フェイタル・アウト』を追加装備する。
左手の片手棍を後ろに広げるように大きく構え、ソードスキル発動の体勢に入りながら、俺は前方のシグさんに叫ぶ!
「シグさん、3秒後に後方に退避してください!」
「了解だ!」
ライトエフェクト発生を確認しつつ、右手の両手剣へも意識を集中させる…3秒後、告げた通りにすぐさま後方に退いたシグさんと入れ替わるように飛び出した俺は、片手棍の幻想剣ソードスキルを解放する!
「うおおおおおおおおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
解放と同時に片手棍に重なるように現れた虚像が動きに沿って、縦方向に振り下ろされる…幻想剣≪片手棍≫超重単発最上位ソードスキル〈アブスターディ・ターミネイター〉の重撃が、鎧を纏っている筈の騎士型モンスターたちを容易く潰し消した。
隙が大きい分、防具の性能を威力に一部還元するのに加え、防御を無視する一撃に取り巻き程度のモンスターが耐えられるわけもなく…眼前の10数体のモンスターがポリゴンに変わる。
そして、それで終わることなく意識を右手に切り替える…スキルコネクトによって、硬直なしで連続してソードスキルを繰り出す!
今後は無言で放った幻想剣≪両手剣≫超重単発最上位ソードスキル〈エンド・オブ・フォーチュン〉…三属性を含んだ巨刃の一撃は、後方の残りのモンスターたちを斬り飛ばした。
「…やっぱり反則だよな、幻想剣…俺のさっきまでの苦労は何だったんだよ」
「まぁまぁ…こういう非常時だからこそだよ。基本、本気以外でそう使うことはないし」
莫大な攻撃範囲を持つ二つの幻想剣最上位ソードスキルにより、壁が崩壊した戦線を見て、どこか呆れたキリトが通り過ぎならそんなことを零し、硬直が解けた俺もその背中を追いかけながら苦笑していた。
二刀流と違って、ユニークスキルとして継承されてしまっていた幻想剣は、SAOと比較してソードスキルの威力は多少落ちているものの、そもそも各武器それぞれに固有能力が付与されるのと、何よりも高速換装のスキルが使えるのは確かに反則級だろう。
というか、ソードスキル機能がALOで実装された時、少しズレてOSSの機能が実装されたのは本当に助かった…今、使ってる幻想剣ソードスキルは全部OSSで再現したものだと誤魔化すことができたからな(…といっても、ほとんど使っていなかったので、そこまで目立つこともなかったのだが…ユウキとのデュエルが一気に目立った感じだったりする)
まぁ、それが今となってはこういう異常事態に使えるこちらのアドバンテージとして機能するのだから、あって困ることはないという奴なのだろう。
そんな他愛もない話をしつつも、後方をシグさんに任せた手間、俺たちはできる限り前方に見えるボスをなんとかせねばならないわけだが…
改めてその姿を見ると、確かにキリトの言うように嫌な予感を感じずにはいられない…何かしらの特殊能力持ちだと見るべきか…三本のHPバーの上に表示されたネームドは『The Nothig Delete heavy Knight』…直訳で「全てを無に帰す重騎士」といったところか…!
リスボーンしたばかりの取り巻きたちを蹴散らしながら、俺とキリトはボスへと対峙する…本来のボス戦であれば、モーションやパターンを見きわめてから攻勢に出たいところだが、そんな時間的猶予はないため、すぐさま攻撃に移る…要は臨機応変に対応していくという、出たとこ勝負と言うわけだ。
すると、ボスも俺たちに気付いたようで、微動だにせず鎮座していた奴が動き出した…こちらを迎撃する気はある。目がない筈なのに、俺たちの接近を認識しているその挙動は…俺の予想を裏切るものだった。
「…思った以上に、鈍い…!?」
その言葉の通りだった…二世代前といえばいいのか、ロボット創成期と表現すればいいのか…上手い例えが思いつかないが、ともかく挙動が鈍いのだ。俺でさえそう思うほどの鈍さ…AGI値が低い分、他のステータスに偏りがいっているタイプのモンスターなのだろうか。
それが良いとも悪いとも判断できないところではあるが、頭上に剣を掲げるまでに4秒も掛かっている間に、俺とキリトはアイコンタクトにて攻め方を伝えた。こっちの考えを理解したキリトが、俺の背後につくように縦一列で並んで突っ込む!
SAO時代から何度もやってきたフォーメーションだ…それは、ダメージディーラーゆえに防御力が低いキリトをフォローすべく自分がパリィや盾役を担うことが多くなったことで自然と生まれたものでもあった…名前なんてない、しかし、あれだといえば、両者ですぐに認識できる陣形の一つだ。
ボスが振り被っていた大剣を振り下ろしてきたのだが…それもやはり鈍い。その剣戟を逸らすべく、半身を逸らし右手の両手剣で受け止め、軌道をズラす!受け止めた瞬間、パワーに押されかけ、僅かにHPも減ってしまうが、攻撃自体を逸らすことはできたわけで…
「…うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!」
その僅かな瞬間に、背中に隠すように構えていた片手棍の打撃面を足場に、ボスの頭上を取るように背後からキリトが俺を飛び越していく!
飛び出した勢いをも加え、二刀流5連撃OSS<カウントレス・スパイク>がボスの身体に刻まれていく。そして、それに続くように、俺は体を半回転させて左手の片手棍で再び〈アブスターディ・ターミネイター〉を発動させ、真正面からボスの身体にぶち込む!
…だが、ソードスキルを放った時、俺たちは奇妙な感覚を味わっていた…
「…っ!なに…!」
重撃により、2メートルほど後退ったボスだが…その身体は傷一つついていなかった。いや、正確に言えば、ダメージエフェクトの特徴的な赤いダメージ範囲が表示されていなかったのだ。それに比例するかのように、HPも全く減っていないのだ。
キリトの二刀流OSSだけならまだしも、幻想剣最上位ソードスキルを直撃してHPが減らないというのは明らかに異常だ…キリトも驚いていることから、おそらく同じことを思っている筈だろう。
「キリト、さっきの感覚って…」
「ああ、まるで壁を斬ったみたいな感覚だった…耐性持ちか、それとも物理無効か…」
「だが、どっちのソードスキルも属性付きだっただろう?それでも、ダメージが皆無っていうのは…!」
「特殊な条件かある一定の方法でないとダメージが通らない仕様…嫌な予感が当たったか…!」
普通に攻撃を仕掛けても、ボスにダメージを与えられない…その事実に、嫌な予感がここにきて当たったのだと思わず舌打ちしたくなる。
それを解明する時間も手数もこちらにはないのだ…幸い、ボス自体の動きがそこまで速くないのが救いか…取り巻きたちを撃退しつつ、のろりとこちらに距離を詰めつつあるボスへの打開策を考える。
「…フォン。こうなったら、とことんやるしかない!同時攻撃だ!併せて一定以上の連撃をも組み合わせよう!」
「分かった…!」
ともかく今は攻めていくべきだというキリトに意見に同意し、片手棍で取り巻きを吹っ飛ばした後に、メニューを開いて左手の武器を片手剣『クロス・サヴァイブ』へと変える。
それぞれ10を超える連撃を併せて放とうとするため、ボスの動きを誘導しながらタイミングを伺う。取り巻きたちが、ボスの攻撃に巻き込まれて消し飛んでいく中、大剣を薙ぎ払った直後に、俺たちは仕掛けた!
「っ…!スターバースト…」「っ…!マージニック・ステラ…」
二刀流16連撃OSS<スターバースト・ストリーム>、そして、幻想剣18連撃OSS<マージニック・ステラファントム>…二剣に宿る水色と、二つの武器に宿る蒼色のライトエフェクトをソードスキルによって解放しようと…
『GAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
「「っ?!」」
その直前、何かに反応したボスからその鎧からは考えられない咆哮…いや、嫌な音という方がより正確か…それが聞こえた瞬間、何かの波動がボスの周囲に放たれ、それに触れた俺たちは、
「なぁ…!?」「そんな…?!」
発動しようとしていたソードスキルがキャンセルされ、技を放とうとしていたキリトと俺は思わず声が出てしまっていた。ソードスキルがキャンセルされただけでなく、なんとスキル硬直にまで襲われたのだ…技を放とうとした直前の動作で止められてしまい、無防備と化した俺たちをボスが見逃してくれるわけもなく…!?
『・・・・・・・・・・・・・・』
先程までの鈍い動きが嘘のように、素早く振り上げた大剣には紫電を纏った濃紫のライトエフェクトが宿っていて…!
「っ…キリト!?」
硬直が解けた瞬間、すぐさま反応した俺はキリトを庇うように突き飛ばそうとしたのだが…!?
…ドオオオオオオオオオォォォォン…!
地面だけでなく、空間をも揺らしたかと錯覚するほどの地響きが轟音と共に鳴り響き、空へと投げ出された俺が目にしたのは…
…斬り裂かれたことで、片手剣を持つ左腕と左足が宙を舞う光景だった…
…フォンがいれば、勝てると思うのは大間違いです…(黒笑)
前話から本話中盤まで滅茶苦茶熱いこと語ってましたが、まさかの…
そうです、今回フォンの立場は完全に噛ませ犬です!…一応弁解しておきますが、アリシゼーションで滅茶苦茶キリトの出番を奪ったからとか、そういう私怨的な理由ではありませんから(苦笑)
このキャラエピの主人公はキリトですので、彼が中心となるお話でフォンを活躍させるのもどうかなと思っての展開でした…なので、わざと分かりにくくしてますが、最後に吹っ飛んでる左腕と足はフォンのものです。
次回が最終話となりますが…『終わるのか、これ?』とちょっと不安になってます…!その後のお話も書かないといけませんし、次章・次々章に繋がる部分も書かないといけませんし…とりあえず、本話と同程度以上に長くなりそうだなと恐怖しております(苦笑)
まぁ、それはさておき…まさかのオリキャラであるシグ、カレットだけでなく、OSからエイジとユナもゲスト参戦となりました!もともと、このキャラエピを考えていた際に、フェイタル・バレットの追加シナリオの話を聞いて、月夜の黒猫団が絡むのなら、彼らもある意味では外せないと思っての選出でした。
…ちなみに、ユウキとカーディナルは今回お休みです!(彼女らの活躍は、またそれぞれのキャラエピまでお待ち頂ければと…)
それでは、また!
キャラエピソード第2弾 どのキャラのお話が見たいでしょうか?
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某トレジャーハンターF
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リーファ
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シノン
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シリカ
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リズベット
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ユイ
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クライン
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エギル