ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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どこぞの探偵アニメだと、回答編みたいな副題がつくんだろうな…そんなことを書きながら思ったお話です(苦笑)

ということで、エピローグを交えた解説回です!

…一応、納得がいくエンディングになったと思うのですが、ちょっと自信がなくて、皆さんの反応がどうなるかと恐れていたり…

そ、それでは、どうぞ!


ユウキ編④ 「還るべき場所」

「「…ゴメン……えっ?」」

 

開口一番…互いに出た同じ言葉に、俺とユウキは目を丸くしていた。この展開は、激闘を終えてすぐに…とはいかなかった。

 

まぁ、そもそもの話…俺とユウキの今回の一件はすれ違いからの喧嘩別れに近いわけで。それ以前に、モンスターに変貌したダークエルフを倒し終わった直後、もの凄い疲労感に襲われて、俺たちは数分ほど地面に腰をつけてしまうほどにヘトヘトになっていたのだ。

 

死に戻りしてから全力疾走での疲弊もあったとは思うが、それとは別の…なんというか、勉強とかで頭を使い過ぎての疲労感に近い感じで、しっかり回復するまでしばし休息を取っていたわけだ。

 

…ところがだ。話す元気はあったものの、休息中、俺たちはずっとだんまりだったわけで。いつもなら、『ボスが強かったね』とか『あの時のプレイはこうした方が良かった』みたいな感想を交わすわけだが…互いに気まずくて何を言えば分からずじまいでいたわけで…

 

ようやく身体を動かせるぐらいには疲労感も抜けたので互いに立ち上がり、何かを言わなければと思って出た言葉が、お互いへの謝罪の言葉だったというわけだ。

 

「…ゴメンな、ユウキ。もっと言い方があっただろうし…確証がなかったとはいえ、ユウキの意見ももっと聞くべきだった」

 

「そんなことは…ううん。ボクも…フォンの言ってることも一理あるって分かってたのに…ちゃんと話を聞く前にあんな酷いことを言って…ゴメン」

 

「いや、それを言うなら、日記のことを一部伏せてた俺の方に非があるし…ユウキの心境を分かっていれば、もっと早くフォローの仕様もあったわけだし…」

 

「そこを持ち出すなら、ボクだって…もうちょっと素直に自分のことを……ちょっと待って。フォン、またボクに隠し事をしてたの?」

 

「あっ……いや、隠し事をしてたというか、あのダークエルフの狂気の文面を告げるのは、ちょっとユウキのメンタルに悪いかなって…」

 

「むぅぅぅ!やっぱり隠し事をしてたんじゃん!?」

 

「わ、悪かったって!?良かれと思ってしたことであってだな…!?」

 

「…プッ…アハハハ、もうおかしくなってきた。フォンはどこまでいっても、秘密主義が好きなんだから」

 

「なんか、人の名前を固有名詞扱いでのステータスで呼ばれるのが癪なんだが……まぁ、互いに悪かったってことでいいか?」

 

つい口を滑らせてしまい、さっきの戦闘の最中で言葉にしたことをユウキが思い出してしまい、詰問される…一転して責められたことで慌てて弁明すると、ユウキも冗談交じりにしょうがないという態度を示して、

 

「…しょうがないな。今回はボクも悪かったってことで、隠し事をしてたことは不問にしてあげる」

 

「…サンキュー。さてと、仲直りもできたところで……問題はあれだな」

 

お互いのすれ違いと誤解を解けたことで、俺たちは広場の奥…ダークエルフが位置していた壇上へと視線を向ける。

 

世界樹モドキに変貌したダークエルフがいたその場所には、ドロップとは別に、奪取された宝珠が鎮座していた。

 

さっきのこともあり、警戒しながら宝珠を手に取るも…何も起こる気配はなく、俺は宝珠を鑑定スキルで調べ直すも、初めて見た時となんら変わりはなかった。

 

「結局、この宝珠の正式名称って何だったんだろうな?」

 

「…あっ、その宝珠の名称…あのダークエルフが言ってたよ!」

 

「えっ、本当か、ユウキ!」

 

「うん。確か…『アルフの宝珠』が正式名称だって」

 

「アルフ、だって…?」

 

その名前を俺が知らないわけがなく、思わず確認するように尋ねるも、ユウキは間違いないと答えた。

 

アルフ…かつての旧ALOにて、世界樹の奥にて存在する光の民であり、真っ先に到達した妖精族を同じ光の民にする…それが旧ALOにて設定されたエンドコンテンツだった。

 

旧ALOは飛行機能に時間制限やら高度制限が課されており、光の民アルフになればその制約が撤廃される…しかし、アルフになれるのは真っ先に世界樹の奥へと辿り着いた種族一つだけという縛りから、種族間での争いが激しかったのだ。

 

…もっとも、それは全てあの黒幕が仕組んだまやかしであり、エンドコンテンツどころか、何度も話にあがるように世界樹のグランド・クエスト自体が真正面なやり方では攻略不可能という、クソゲー仕様だったわけだが…

 

(…いかんな。嫌な記憶がどうしても蘇るんだよな、世界樹関連の話って…)

 

微かに記憶が残っているせいもあって、あんまりいい気分にならないのだが…今は置いておこう。

 

俺が死に戻りしている間、ユウキはダークエルフから宝珠に関わる話を聞いていたらしく、元々ダークエルフであるスヴァルト族、そして、宝珠を占有していたリョース族とを試すためにアルフが授けたのが、このアルフの宝珠の出自だったらしい。

 

「…なるほどな。そう聞くと、かつての旧ALOとの設定とどこか既視感を覚えるな。そもそも、北欧神話では、エルフはリョースアールブ、そして、スヴァルトアールヴという名称だったらしいから……光の民アルフやアルブヘイブ・オンラインの名前はそこから持ってきたのかもしれないな」

 

「そして、今回のクエストはそれが逆流されるような形の流れになった…そういうこと、なのかな?」

 

「多分な…話を聞いてる感じだと、旧来の仕様をカーディナル・システムが今回のクエストを作るにあたって参考にしたのかもしれないな。まぁ、旧ALOと違って、二つの種族に課したのは、全く違う答えの問題だったみたいだが…」

 

「…どういうこと?」

 

理解できていなかった部分をユウキから聞けたことで、俺はなんとなくではあるが、今回のクエスト…というよりも、どうして二種族が対立するような試練をアルフが出したのか、その意図が分かったような気がした。

 

首を傾げるユウキに、推測交じりであることを告げてから、俺はその推理を話すことにした。

 

「ダークエルフが言っていた自分の娘だけは両親たちの力が両方使えたということ、リョース族は闇が、スヴァルト族は光の属性魔法が使えないこと、そして…宝珠のこの文面の内容を踏まえると…この宝珠の真の力を使うには、リョースとスヴァルトの両方が手を合わせることが必然…そういうことになるじゃないか?」

 

「……あっ…!」

 

話を聞いていると、そうとしか思えないのだ…おそらくダークエルフのその推理に行きついたのだろうが、そこで奥さんと娘を立て続けに失い、自分たちを冷遇したリョース族への憎悪が悲しみと重なり、狂気に走ってしまった…推測ばかりではあるが、あながち間違いではないだろう。

 

ちなみに、日記でもそうだったが、スヴァルト族の話が途中から全くでなくなっていた。奥さんの窮地の際にも出てこなかったところを見ると、もしかしたら既に絶滅しているのかもしれない…それがリョース族によるものなのか、自然的なものが原因かは分からないが…少なくとも、この近くにはいないのだろう。

 

その証拠にというか…正式名称を知ったためか、鑑定画面にも変化が生まれていた。

 

【アルフの宝珠 本来の加護のほとんどが失われしまい、力が褪せつつある宝珠。本来リョース族とスヴァルト族のそれぞれの絆によって加護を強めてきたが、それらが壊され、忘れ去られてしまった今、真の輝きを見る日はないのだろう】

 

「でも、なんでそんな試練を…そんなことをすれば、喧嘩になるのは目に見えているのに‥‥」

 

「だからこそなんだろうな…アルフからすれば、二つの種族を試したんだろうな。一つの宝珠に対して、貸借し合うか何か手を取り合うか…それとも、それらの所有を巡って争い合うか……その真意が、協力の大切さを教えるためか、もしくは、争わせるためにわざと火種を与えたのかは…判断できないけどな」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

できることなら前者の理由であってほしいが…少なくとも、須郷みたいな屑ではなく、架空のキャラが与えたものなので、多少の希望は持てるといったのがせめての救いか。

 

それでも、後者だったらと思うと気分が沈むのもあり、ユウキも何とも言えない表情になってしまっていた。一先ずは検分が完了したこともあって、保管するためにも俺は宝珠をストレージへとしまう。

 

「ねぇ、フォン…その宝珠は、結局どうするの?」

 

「…一度、リョース族の里へと戻ってみないか?そこで、彼らの意見を聞いてからどうしたいかを決めたいと思う…と言っても、もう答えは見えてるもんだから、それを確認するためにというのが本音で、リョース族にどうするかっていうのは決めてるんだけどな」

 

「…どうするの?」

 

「……宝珠を渡そうと思ってる」

 

「…!?」

 

俺の答えに、ユウキは目を丸くする…信じられないといった様子だが、そういうリアクションをされると分かっていた俺は、敢えて何も言わずに元来た道を戻り始めた。そして、しばし呆然としていたユウキも我に返り、慌てて後を追ってきたのだった。

 

 

 

「…これはまた…騒然としたお出迎えだな」

 

死に戻りしてきてから舞い戻ってきた時には夜明けの光が見えていたが、洞窟を出ると完全に夜が明け朝となっていた。

 

そのまま来た道を戻っている中、さっきの俺の真意を知るべく、ユウキが休まずに問いかけてくるのをのらりくらりと躱しながら、リョース族の里に戻ってきたわけだが…

 

俺たちを出迎えたのは、長槍の穂先をこちらへと突き付けるリョース族一同の手荒い歓迎だった。里の出入り口に集結している彼らは、近づいた俺たちに気付くと、一斉に槍を向けてきたわけで…そんなことをされて、思わずそんなことを呟いてしまったわけだ。

 

そんな集団を搔き分け、奥から姿を現わしたのは、クエストの最初に相対したあのジジイだった。

 

『貴様ら…!宝珠を守るどころか、宝珠を持ってどこに消えておったのか!?』

 

「(はぁ~…予想してたとはいえ、やっぱりそういう態度を取ってくるか?)…姿を見せなかったことに関しては謝罪する。こちらの落ち度で宝珠を奪われてな…取り返しに行っていたんだ…あんたらが忌み嫌うスヴァルト族からな」

 

『『『『『『『『…?!』』』』』』』』

 

開口一番に飛んできた濁声に内心悪態吐きながら、俺は謝罪と共に経緯を話すと、長老だけでなくリョース族一同に動揺が走っていた。

 

『そ、それで…我らの宝珠はどうなったのだ!?』

 

「もちろん、ちゃんと取り返したよ。この通りな」

 

面白いほどに動揺しまくっていたが、慌てた様子で宝珠の有無を尋ねる長老に、落ち着かせる意味もあって、ストレージからオブジェクト化したそれをあいつらに見せてやる。

 

『お、おおぉ!無事だったか…!フン、妖精がいらぬ心配をさせおってが…あんな毛皮らしい闇の一族にうば…ああああああああああぁぁぁぁ?!』

 

安堵し、いつもの言動に戻った長老の言葉が途切れ、絶叫する。なぜなら…

 

 

宝珠を持っていた右手を振りかぶり、地面に叩きつけようとした俺の姿を目にしたからだ。

 

もちろん未遂で終わらせるつもりだったので、腹にあたる高さにて左手で受け止めるような形で勢いを殺したが…別に本気で割ってやってもいいと頭の片隅で悪魔が囁いたような気もするが、それを理性と僅かの善意で抑え込んだ。

 

…正直に言うと、ユウキ以上に俺の方がキレていたと思う。

 

こいつらの種族観に甚だキレていたのに、横暴な態度は我慢できても、ここにきてまでその差別感を平気で持ち出してくるその言動に手が出てしまった。

 

「いい加減にしろよ?別に、こっちからすれば、こんなガラス玉の一つや二つ叩き割ったって何でもないぜ?むしろ、このまま眼前で叩き割ってやった方がいいとも思ってるぐらいだ…こんな人の人生を狂わせるような代物なんかな」

 

『…しょ、正気か、貴様…それは我らリョースの宝だぞ!?神が授けて下さった宝珠をなんという扱いをするのだ!』

 

「神、ね…まぁ、そう思うのもしょうがないんだろうけど…取引だ。俺の聞きたいことに正直に答えるのなら、これはあんたらに渡す。答えないっていうのなら…これはこの場で叩き壊す……どうする?」

 

『……………わ、分かった。要求に応えよう』

 

どっちが上かを分からせる…みたいな考えはなかったのだが、このまま舐められたままではどうせ正直に答えないだろうと思い、脅迫に近い威圧を込めた要望を出すと、長考したのちに苦々しい表情で長老は応える意志を示した。

 

そこから聞いたのは事実の確認だ。

 

リョース族とスヴァルト族の対立について、

ダークエルフが妻を救ってほしいと協力を求めた時にどうしたのか、

アルフが宝珠を授けた時、どうしてスヴァルト族と協力しようとしなかったのか、

 

前二つの質問の答えは、俺が予想した通りとあの日記に書かれたことそのものだった。むしろ、後者に関しては、それが当然だと…いや、裏切り者であるダークエルフの奥さんを見捨てたことなど、その存在すらも忌避したいといわんばかりの態度で答えていた。

 

横にいるユウキが怒りで体を震わせていたが、それを目線で制し、最後の質問をすると…帰ってきたのは予想通り…だが、一番望んでいない答えだった。

 

『協力だと…ふざけたことをぬかすな!あんな闇の一族など…我らと同じ種族だと扱われることすらおぞましいわ!?』

 

「…アルフに授けられたこのガラス玉を調べた時に、何か気付かなかったのか?それこそ、スヴァルト族と手を取り合うべきと思うようなことがあった筈だが…」

 

『馬鹿な…そんなことは天と地がひっくり返ってもありえん!?光の民様が、我らが光の種族であるリョースに…いや、我らのためだけにこの宝珠を授けてくださったのだ!?それが…あんな光の魔法も使えない屑共に、その宝珠が使いこなせるわけがない!?』

 

(…なるほどな。これで全てに納得がいった)

 

宝珠の鑑定画面が明らかになった際、疑問に思っていたことがあった。

 

どうして、宝珠を占有しているリョース族は明らかなに協力をしさしている文面があるにも関わらず、宝珠を自分たちのものだと主張して占有していたのか…

 

答えは簡単…というか、呆れたものだった。彼らは、アルフから授けられたものだと、調べることはせず、己の尖った感覚でしか物事を視れてなかったのだろう。だから、鑑定しようとも思わなかったのだろう。

 

『そうだ…我らこそが、光の民であるアルフ様の意志を継ぐ一族なのだ!それこそが絶対の摂理!!けがれた闇の思想を持つ、あの変異種どもなど…存在することこそが罪なのだ!?』

 

「っ…ふざけないで!?あなたたちが、ちゃんとあのダークエルフのお願いを聞いてあげていれば…あんなことは…!?」

 

「ユウキ…!」

 

我慢の限界だと、流石のユウキも堪えることができず、意気怏々と応える長老に今にも殴りかかりそうになるのを腕で制し、俺も怒りを堪えながら話を進める。

 

「…絶対の摂理ね…まるで自分たちが誰よりも優っているみたいな言い方だな」

 

『もちろん…あの闇の一族よりも、貴様たち妖精どもよりも…それが光の民の後継者たる我らだからな』

 

「クククッ……アハハハハ…!」

 

駄目だ…怒りで…そして、あまりにも滑稽すぎるその姿に、思わず笑いが零れる。もう無理だ…こいつらはそういう種族なんだと十二分に理解できてしまった。

 

予想はしていた…それでも、心のどっかでもしかしたらと期待していた自分がいたのだ。本来、こういうことに介入を…俺たちがどうこうすべきでも、裁きを与えるべきような立場でもないと思っていたが…こいつらだけはその考えを捻じ曲げてしまっていいと思ってしまった。

 

『…な、なにが可笑しい!?』

 

「うん…?ああ、悪い悪い…お前らがあまりにも哀れに見えてさ。後継者様を語る割には、闇の魔法が使えないのに、どうしてそんな強気でいられるのかと思ったら…もうおかしくなってしまってな。

闇の魔法ぐらい、俺の周りにいる魔法使いなら余裕で使えるというのに…それすらもできない癖に、万物気取りでいるお前らが哀れにしか見えないもんで…笑ってしまうのも無理ない話だろう?」

 

『っ~~~?!?!…話は終わりだぁ!その宝珠を早く返せ!?それさえあれば…いずれ、我らは完璧な存在になれるのだ!』

 

「…それはどうかな?光にしか目がいかず、闇から目を背けようとしているあんたらにそれが叶うとは思ないけどな」

 

『…な、なんだと…』

 

「…光が強いほど影も強くなる…当たり前だ。光があるから影も…闇も生まれる。光しか存在しない世界なんて、何もない世界と同じ…ただの独りぼっちだ。

人間だってそうだ…全部が全部受け入られることもないし、時には喧嘩だってする…けど、それが当たり前なんだよ。誰かとぶつかるから、自分が間違っていることに気付けるかもしれない…誰かのことを思えるから、間違っていてもまたやり直せる。

…そんなことも分からないあんたらが完璧な存在になるなんて……絶対にありえないって断言しておいてやるよ」

 

「…フォン」

 

分かってもらおうなんて一つもない…ただこっちの…俺とユウキが言いたいことを言わせてもらっただけだ。

 

案の定、痺れを切らした奴らは俺たちに槍を向けながら、ジワリと迫っていた。このまま一戦交えてもいいが、もうこんな奴らに時間を割くのももったいないでの、用が済んだ俺は宝珠を…

 

「…ほらよ」

 

『うう…うあわあああああああああああああああぁぁぁぁ!?』

 

軽い態度で、下投げの要領で空へと放り投げた。放物線を描き、地面に落下し始めた宝珠を見て、本日二度目となる絶叫をあげるジジイ。

 

流石にぶっ壊そうなんていう楽な終わり方は考えてなかったので、誰かがキャッチできるようにと彼らが密集している場所へと投げたから、そこまで驚く必要はないのだが…憂さ晴らしの一つとしては少し心がスカッとしたので、やった甲斐はあっただろう。

 

『き、き、貴様ぁ!?なんと大それたことを!?』

 

「たかがガラス玉を投げただけだろう?それよりも…それが、あんたたちが求めていたもので良かったんだよな?」

 

『…当たり前だ!これこそが、リョース族の宝珠だ!?』

 

「ちゃんと確認してくれよ…一度はスヴァルト族の手に落ちたんだぜ?もしかしたら、すり替えられた偽物かもしれないし…」

 

『ふざけるな!?どこからどう見ても、長年我らが守ってきた宝珠だ、これは!?貴様のような節穴と我らの目を一緒にするでない!?』

 

「…そうかい、それはよかった。それじゃ、依頼は完遂ということでいいな?俺たちは帰らせてもらう」

 

『さっさと消えろ、この屑共が!?二度と、この里に来るでない!』

 

「安心しな…頼まれたって来たりなんかはしないさ。行こう、ユウキ」

 

「う、うん…」

 

早く消えなければ、殺すといわんばかりのリョースたちの態度に、俺はユウキを連れてその場を後にした。辟易したのか、リョースたちが俺たちを追ってくる様子はなかった。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

(…まぁ、ユウキとしては納得できない結末だよな)

 

帰り道…里から森の入り口へと続く道を歩いていたが、俺とユウキに会話はまたしてもなかった。

 

酷く落ち込んだ態度のユウキを後ろ目で見ながら、その理由を察している俺は内心苦笑いしていた。

 

流石にこのままでいいわけもなく…さっきからずっと発動させていた索敵スキルに何も引っ掛かってこないのと、里から結構離れたこともあり、俺は一度足を止めることにした。

 

「…ユウキ、やっぱりさっきのことが引っ掛かっているのか?」

 

「……だって。あんな酷い人たちだって、フォンも目のあたりにしたでしょう?なのに、あんなあっさりと宝珠を返しちゃうなんて」

 

「まぁ、確かにそう見えるよな、あれは…本当は眼前で叩き壊してやるのもアリかと思っていたんだが…それじゃ、どうにも気が収まらなかったんでな」

 

「…えっ?」

 

納得がいっていないという態度から、俺の言葉に引っかかりを覚えたユウキ。どういうことかと目で訴えるのに、俺はストレージを開きながら応える。

 

「なぁ、ユウキ。俺がいつ本物をあいつらに返す…なんて言った?」

 

「えっ………えええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」

 

予想を大きく上回るいいリアクションがユウキから飛び出し、鼓膜を突き抜けそうな程の大絶叫が森に響き渡る。

 

まぁ、理由は簡単…ストレージからオブジェクト化したもの…俺の右手に、さっき返したはずの宝珠があったからだ。

 

「えええぇ!?だって、さっき…えっ!?えっ??!なんで、なんで!?返したんじゃなかったの!?」

 

自分が見ているものが信じられず、何度も俺と宝珠を見比べしながら驚きまくりのユウキ…ここまで驚くとは、ちょっとビックリしつつも苦笑するしかなく…俺はユウキが落ち着くのを待つことにした。

 

「ど、どうやったの!?というか、さっきの宝珠は何だったの!」

 

落ち着いたところで、ユウキから飛んできたのは当然の疑問の言葉だった。宝珠を片手に、肩を竦めながら、俺はカラクリを説明していく。

 

「さっきリョース族に放り投げたのは、シータが使っていた宝珠のレプリカだよ。ユウキが一人で奥に向かった後、残されていたのを回収してたんだ。で、見た目はほとんど同じ上に、あいつらは鑑定スキルを使うこともしない、自分たちの目でしか判断しない奴らだって分かったから、レプリカを渡したってこと。

そもそも、あいつらの種族に対する考え方が分かった時には、本物を返す気なんて完全になくなっていたしな」

 

「で、でもでも…!宝珠を返さないと困るって言ったのは、フォンだったじゃん!」

 

「それはリョース族にほとんど非がない場合の話だ。あんな屑…コホン…酷い連中だと分かったら、俺だって流石に返す気はなくなるさ」

 

「そ、それはそうだろうけど……あの宝珠が里の結解を担っているって言ってたし、偽物だってすぐにばれるんじゃ…」

 

「多分バレないよ。結解の力がなくなったとしても、宝珠の力が一時的になくなっただけで、いつかは復活するだろうって思うだろうし…それにバレたとしても、どうしようもないさ。あんだけ啖呵を切っておいて、自分たちの目が節穴だったなんて、死んでも認めない連中だろうしな」

 

「う、うううぅぅ…フォンが泥棒になっちゃった…!?」

 

「失敬な…騙し取ったんだから、せめて詐欺師というところだぞ。しかも、わざわざ二回も確認したのに、こっちの善意を全てスルーしたんだから、文句の言われるどころか、逆に感謝してほしいくらいだよ」

 

「やっぱり騙したんじゃん!うううぅ…確かに、あのままリョース族に渡るのもどうかなって思ってはいたけどさぁ~…」

 

全てが俺の手の内の出来事だった…そう知ったユウキは批難するも、悉く反論されてしまい、どこか疲れたように表情を崩していた。

 

そもそもの話…俺は一言も、リョースの前に出したレプリカを『本物』とも『宝珠』とも呼ばず、一貫して『ガラス玉』と呼んでいた。そこに加え、『それが、あんたたちが求めていたものか?』とも『もしかしたら、すり替えられた偽物かもしれない』とも、二度に渡って警告したにも関わらず、あのレプリカが『リョースの宝珠』だと向こうが認めてくれたのだ。

 

俺は向こうが求め認めたものをちゃんと返しただけ…泥棒ではなく、詐欺師だ。それに…

 

「卑怯な言い方かもしれないが、あいつら相手に詐欺をしても、別に犯罪じゃないだろう?残念ながら、ALOにはそういう法律はないしな」

 

「そ、それはそうかもしれないけどさ…でも、酷いよ!なんでボクには本当のことを教えてくれなかったの!?」

 

「いや、ユウキ。こういう隠し事できないだろう?絶対顔に出るし…」

 

「うっ…?!」

 

図星を突かれたユウキが呻き声を上げる…大変申し訳ないが、ユウキにそういう腹芸は不向きだと、それなりの付き合い上分かってしまっていた。だから、敢えて何も告げずにあの場に立ち会ってもらったわけだ。

 

…俺が宝珠のレプリカを叩き割ろうとした時に、いいリアクションをしてくれたことで、リョースたちを騙すのに一役買ってくれていたしな。

 

「むぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…!!」

 

「悪い、悪かったって!こればっかりはバレるわけにはいかなかったから、流石に話せなかったんだよ」

 

さっきよりも剥れた様子で顔を胸に押し付けながら、抗議のポコポコパンチが俺の身体に刺さってくるも、ユウキはいじけてしまっていた。

 

「ほら、ユウキ。いつまでもいじける場合じゃないぞ?行くべき場所があるからな」

 

「…行くべき、場所…?」

 

顔を埋めっぱなしのユウキが反応し、見上げるようにこちらを見てきたのに、俺は宝珠を視界に入れるようにして応える。

 

「この宝珠を還すべき場所にな」

 

 

 

「…これでいいかな?」

 

「いいじゃないか…そこまで目立つものにする必要もないしな」

 

シータとダークエルフが住処にしていた洞窟の入り口…そこで、二つの十字架と墓標を作っていたところに、森に花を採りに行っていたユウキが戻ってきた。

 

その手の中にあるのは白と緑の色が鮮やかな花だった。

 

「…へぇ、綺麗な花だな。初めて見た気がする」

 

「新種の花なのかもね…光から隠れるように、影に咲いててさ。なんか思うところがあってね」

 

「そうか…さてと、なら仕上げといくか」

 

ユウキから花をいくつか分けてもらい、それを片方の墓の方へと飾り付けていく。隣でユウキももう一つの墓へと飾りをつけていく。

 

骸も、骨も…何もない墓であっても、ただの勝手な自己満足だとしても、少なくとも、彼らの最期に立ち会ったものとしてできることを…二人の墓を作りたいとユウキに告げたところ、彼女は迷うことなく同意してくれた。

 

「…よし…あとは………いいよな、ユウキ?」

 

「…(コクッ)」

 

飾り付けを終えたところで、火属性初級魔法『ファイア・チップ』…小さな火花を起こすだけの最低威力の火魔法で、集めた枯れ木と葉の山を着火し、近くに置いていた宝珠を手に取る。

 

最後の確認をユウキにし、同意を得られたところで再度宝珠のステータスを確認する。そして、問題なく考えていることが実行できると確認を終えて……俺は抜刀した片手剣の柄頭で宝珠を叩き割った!

 

…手元から零れ落ちるように散る残骸が火の中へと消えていく。これが本当に正しいことかは分からない、余計なことかも…意味のないことかもしれないが…少なくとも、こうすべきだと思ったのが俺の…俺たちの答えだった。

 

「…手向けってわかけじゃないが…あんたらを狂わせたものはもうないよ。だから……安らかに眠ってくれ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

変貌したダークエルフに止めを刺した時…聞こえたような声を思い出してか、思わずそんな言葉が出ていた。火にくべられたことで残骸はすぐさまポリゴンへと変わる。だが、それを燃料に火は少しだけ強くなり…天へとその煙を昇らせる。

 

しゃがみこみ、ユウキと共に目を瞑り手を合わせる…何も考えず、ただ想いが届きますようにと…少しの間、俺たちはそうしていたのだが…

 

『『『…ありがとう』』』

 

そんな声が聞こえたと思った時、慌てた様子でユウキが声を出し…

 

「…フォ、フォン…あれ!?」

 

「うん…?…っ!」

 

呼ばれて、どうしたのかと目を開けると、肩を叩いて合図するユウキが目に入り、その見ている方へと視線を向けて…思わず口が開いた、もちろん驚きでだ。

 

煙の中に…いや、違う!光と闇を思わせるような白と黒の光を薄っすらと纏う彼らの姿があったからだ…リョースとスヴァルトと、そして、本来であればその絆の結晶として生を全うする筈だった彼女の幻影がそこにあったのだ。

 

…幽霊を信じるかと言われると、俺個人としてはいるかもしれないと思うよりも早く…これがシステムによるものなのかもしれないという現実的な思考が働くよりも先に…俺はさっきの言葉に応えるように静かに頷いた。

 

すると、彼らの姿は天に昇る煙と共に成仏するように消えていった。

 

「…最後は……ちゃんと家族に戻れたのかな…?」

 

「ああ…きっとそうに違いないさ」

 

きっとそうだと…確かめるように聞いてきたユウキに、その左手を優しく取り、はっきりと答えた。願望もきっと混じっていたが…悲劇の終わりとしては、これ以上ないほどのエンディングになった筈だと…どこか確信していた部分があった。

 

【Congratulation!!】

 

「うぉ!?」「うわぁ!?」

 

そう思っている最中、空気を全く読まないレベルでのシステム音声が響き渡り、俺たちの周りにクエスト完了を知らせる花火が散り出したのだ!

 

だが、その様子はおかしく、普段のクエスト完了よりもかなり派手で、迷宮区ボス攻略とまではいかないが、結構大げさなものだった。

 

「…って、クエスト完了?リョース族の依頼を結果的には達成できなかったものだから、失敗扱いになってるかと思ってたんだが…」

 

「そもそも…クエスト中だったことすら忘れてたよ」

 

「俺もこの通知を見るまでは忘れてたよ……うわぁ、えげつないアイテムの量とユルドだな。ストレージ共有化していても、この量とは…!」

 

そういえば、クエスト失敗の通知も来ていなかったと今思えば気付くも、俺もユウキも完全にクエスト中だったことを失念しており、顔を見合わせて苦笑いする。結果画面が眼前に表示され、莫大な報酬がストレージに搬入されていた…これは、帰ってからの整理が大変そうだ。

 

そして、結果画面を確認し終え、閉じた俺たちの前に別の通知が表示されていた。

 

【あなたはこの物語における正しき結末に辿り着きました!初回達成ボーナスが贈呈されます!】

 

初回達成ボーナス…始めて見る項目に目を丸くしていると、宝珠を燃やした火の山が突如として消え、燃えカスの中に何かが光るのが見えた。拾い上げると、それは緑をメインに白と黒の輝石が散りばめられた宝石が埋め込まれたネックレスだった。

 

「…ネックレス?すごく綺麗だね」

 

「あ、ああ…アルフの宝珠をそのままネックレスにした感じだな。どれどれ……げぇ?!」

 

「ど、どうしたの…!」

 

「…れ、伝説級武器だ…これ!?」

 

「えっ……ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ?!?!」

 

興味本位からネックレスの効果と名称を知ろうと鑑定スキルを使ったのだが…画面を見た俺は思わず変な声を出した。ユウキにもその画面を見せると、悲鳴を上げられた。

 

『混沌の忘れ形見:伝説級武器…最大HP10%を代償に効果を発動する。一度だけ、あらゆる攻撃を無効化する障壁を発動する。クールタイム10分。

二つの種族に悲劇と混乱をもたらした宝珠の力の一部が宿った装飾。混沌の中、希望となりえた可能性を持った者たちの想いが込められ、贄を糧に加護の守りを授けるとされている』

 

伝説級武器…キリトの持つ聖剣エクスキャリバー、リズの持つ雷鎚ミョルニル、そして、シグさんが偶然手にすることとなった呪われた聖刀シスクード…それらと違い、装飾品とはいえ、伝説級のアイテムを手に入れることとなり、俺とユウキも思わず顔を見合わせる。

 

「えっと…どうしよっか?」

 

「どうしようって…こうして手に入れちまったし…こんなヤバい性能の代物をそうそう手放すのは、色々とマズいことになりそうだしな」

 

処分をどうしようかとユウキが困った顔のまま尋ねてくるも…簡単に流通させるわけも、一般に公開できるような代物でもなく、俺も困っていた。

 

HP一割の代償が大きすぎるように見えるが、その効果があまりにも絶大すぎるのだ。一度だけ全ての攻撃を無効化する…制限時間もなければ、例外もない。つまりは、初撃を無効化してのカウンター無双が簡単に成立してしまう…いわゆるゲームバランス、特にデュエル関係の方面においてとんでもない事態を引き起こしかねないアイテムなのだ。

 

「…ユウキ、持っとくか?」

 

「いやいやいや!?流石にそんな物騒なもの持っとくのはちょっと…!それに…そういうのはフォンに持っておいてもらった方が、ボク的には安心かなって」

 

「そ、そうか…でも、俺も公けに使う訳にはいかないしな。あんまり伝説級武器を俺たちで占有するのもどうかと……そうだ、あれがあったな」

 

処分も使用もし辛い…どうすべきかと思っていると、俺は開発のあれを思い出した。あの装備は対モンスター戦が主流で、問題となる対人戦で使用する頻度はかなり低い…だから、それに流用できないかと思ったのだ。

 

一先ず、まずは装備を完成させて試行してみてからだと考え、俺はネックレスをストレージにしまう。

 

「うーん…!リアル時間だと、もうこんな時間か。結構長いことプレイしていたみたいだな…そろそろ帰るか、ユウキ。さっき家を飛び出してきたから、ビックリさせたカナデにも説明をしないといけないし」

 

「うん……ねぇ、フォン」

 

「んっ、どうした?」

 

これで全部終わったと思い、俺はそろそろホームへと戻ろうと提案したのだが、歩き出そうとして立ち止まったユウキに呼び止められ、振り返って足を止める。

 

「…本当にもう怒ってない…?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

どこか躊躇いがちに、そして、目を背けて告げられたその言葉に、俺はすぐには答えなかった。ユウキ的にはやっぱりまだ気にしていたようだ…まぁ、無理もない話かと思いつつも、俺は軽く息を吐いてから歩み寄って、

 

「…正直に言うと、怒ってる。もっとユウキの意見を聞くべきだったとか、言い回しがあったとか、解決の方法を探るべきだったとか…自分自身にな」

 

「…うわぁ……フォン?」

 

「『ぶつからないと伝わらないこともある』…そう言ったのは、ユウキだろう?」

 

「…あっ」

 

その頭を優しく撫で、かつてユウキがアスナに告げた…俺とアスナが親と向き合うと決意した時にくれたその言葉を敢えて告げる。

 

「喧嘩だろうが言い合いだろうが、なんでも結構だ。ユウキも俺も…完璧な人間なんていないんだ。互いの気になることを、許せないことをぶつけ合うことはきっと大事なことだと思う。それに…例え、今回みたいに意見が対立しようとも…そんなことで、俺とユウキの絆が壊れることなんて絶対にないって…俺は信じているからな」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「だって、俺は…ユウキの恋人だからな」

 

「っ~~!?そ、その言い方は卑怯…!」

 

「アハハ、悪い悪い。それじゃ…帰ろうぜ、俺たちの家に」

 

「…うん!」

 

甘えるように、左腕にしがみついてきた彼女の重みを感じながら、俺たちは帰路についた。色々あったクエストではあったが…溜め込んでいたことを話し合いながら、その溝を埋めるどころか、溝に山を作る勢いで俺たちはホームへと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…と、話を締めくくりたいところだったが、残念ながら、この話には後日談と言うか、オチがあるわけで…

 

「なぁ、フォン坊…おいらは情報屋であって、オカルトは扱ってないんだが…」

 

翌日…というか、朝が明けて、夜更かしした反動で昼過ぎに起きた俺とユウキは、今回の顛末を話すべく、アルゴさんと会って何があったのかを伝えたのだが…開口一番の感想でげんなり&半眼のダブルコンボでの感想を述べられてしまった。

 

「いや、言いたいことは凄い分かりますけど…本当にそんなことが起こったんですよ」

 

「うん、うん…!」

 

「むぅぅぅ…お互いの位置を見ずに把握し、しかも思考までもが手に取るように理解できた…いや、もう一回言うぞ…そんなことができるなんてオカルト話になってくるゾ」

 

最後に見たエルフの家族たちの霊…ではなく、俺とユウキに起こった現象についての言及であり、二度も同じ感想を言われてしまうと、俺とユウキも苦笑いするしかない。

 

「やっぱりアルゴさんの方にもそんなスキルとかシステムの情報は聞いたことないですか?」

 

「寝耳に水の話だヨ…そういう話に詳しいのは、フォン坊やキー坊の方だろう?確か…心意とかいう奴みたいじゃないのカ?」

 

「いや、確かにその可能性が一番近いかもしれませんが…でも、それはまずありえない…というか、不可能なんですよ」

 

俺が知る限り一番の情報屋であるアルゴさんに心当たりがないかと尋ねるも、両手を振りながらノーと答えるアルゴさんに逆に尋ねられるも、俺はそうではないことをよく分かっていた。

 

そもそも、アンダーワールドで発動していた心意には発動条件がある。

 

一つはシステムを超越するかの…それが当たり前だと言わんばかりのイメージを担う想像力と感情を発揮させられるか。

 

そして、もう一つが使用するVRマシンだ。少なくとも、ナーヴギアぐらい高出力のインターフェイスでなければできないようなのだ。

これはアンダーワールドから帰還後、キリトを交えて試したことがあり発覚したことだ。ALOでも心意が使えるのかどうか…そんな気持ちで始めたことだったのだが、多少の似た感覚での剣技は発動できたことは数度あったが、アンダーワールドで発現したような姿の変化などといった現象はちっとも起こることはなかった。

何が原因かと考えた際、キリトが立てた推測は「強力なイメージや感情が必須となる心意は、高出力のインターフェースを介さなければ、発現しても効果が希薄化するのでは?」というものだった。

言われてみれば、ヒースクリフとの最終決戦やアンダーワールドでの出来事を考えれば、キリトの推測は当たっているように思えた。逆に、安全対策の関係で出力を下げざるを得なかったアミュスフィアでは、心意を使えたとしてもその効果が出力に合わせてかなり低くなってしまうのだろう。

…まぁ、規格外な部分もあるため、容易に使えないという点で俺とキリトがホッとしたのもあったが…死銃事件で似たような感覚を味わったことがあったが、あれも心意の効果によるものだったかと思うと、ちょっと納得する部分があった。

 

ちなみにだが、アミュスフィアはナーヴギアと比べると出力が落ちると述べたが、それはゲームプレイ時の感覚にも大きく影響するわけで…SAOからALOへと移った時、俺たちSAO組はその感覚の格差に慣れるまで苦労し、メディキュボイドからアミュスフィアへと変えたユウキも苦労していたわけで…まさか、それをアンダーワールドから戻ってきた時に、もう一度味わうことになるとは思ってなかったわけだが…

 

…話を戻そう…つまり、アミュスフィアでプレイしているALOでは、俺とユウキが経験したシンクロのような状態は心意が原因では起こりづらいのだ。

 

そのことをアルゴさんに伝えると、ますます顔を顰めてしまってわけで…

 

「むー…そうなると、その心意の他に何かの要因が混じって、何か未知な現象が起こった…そういうことになってくるのカ…?」

 

「そういう、ことなんでしょうか…ただその原因が分からなくて…」

 

「もっと何か情報はないのカ?その時、二人にあった共通点とか…」

 

「共通点……あの時は必死で、何がなんだかって感じだったから…思い当たることって言ったら、同じことを考えてたことかな?」

 

「そういえばそうだな…俺もユウキもダークエルフのやり方や考え方が間違ってるって、それを止めないといけないっていう考えを同じにしてた感はあったな」

 

「おいおいおいおい…確かに共通点を挙げろと言ったが、逆に疑問点を増やしてどうすんダ、お前ら………あっ…」

 

「「…『あっ』?」」

 

ユウキの言葉に、確かにそうだったと思い、同じことを告げるも、ますますアルゴさんは眉を顰め…ようとしていたが、何かを思い当たったらしく、俺とユウキの視線が彼女に集まる。

 

言ってしまったものは呑み込めない…俺たちの視線に耐えつつも、言うまいかどうか迷っているアルゴさんだったが、観念したように口を開いた。

 

「推測だゾ?先月に行われたアップデートのことは知ってるナ?」

 

「来月10月に実装予定に備えての奴ですよね?」

 

「そうダ。そして、そのアップデートにあの天才科学者 七色・アルシャービンが関わっているのも知ってるナ?」

 

「うん、フォンたちから聞いたよ」

 

「まぁ、そこまでフォン坊たちも知ってるカ…でも、これは知らないだろう?そのアップデートに、その天才科学者の研究が関わっているかもしれないって話らしいんダ」

 

「すみません、それも知ってます」「ゴメン、それも知ってるよ」

 

「えっ…まさかだったナ。フォン坊たちも知ってたのカ?」

 

「どこぞの腹黒に語ってくれる公務員が知り合いにいるもので」

 

「…あー、菊岡の野郎か。じゃ、その研究っていうのが、人の脳や感情に関わるものだってことも知ってるのか?」

 

「…すみません、それは初耳でした。それが七色博士が行っている研究なんですか?」

 

既存の情報ばかりかと思ったが、聞いたことのない情報がアルゴさんから飛び出し、詳細を尋ねる。アルゴさんも、情報屋としての面目が保てたことにいつもの笑顔を浮かべ、それについて教えてくれた。

 

「あくまでアメリカでこれまでしてきた研究内容と、ALOを管理している『ユーミル』の関係者から聞いた情報を擦り合わせたものになるが…今回のアップデートで、それに関係した何かをやるんじゃないか…そういう噂があるらしいんダ。

なんせアップデートに関するデータに関しても、七色博士が直接関わり、徹頭徹尾指揮を取ったらしいからナ…なんでも集団心理に関わる何か、ってことまでは掴めたんだが…それ以上の情報は流石のオイラも掴めなかったヨ」

 

「集団心理……それじゃ、その七色博士がプログラミングしたアップデートのデータが今回の現象を誘引した可能性がある…そういうことですか?」

 

「可能性としてはそれが濃厚だろうナ」

 

直近の変化といえば、やはりそういうことになってくるのだろう。アルゴさんが教えてくれた情報に、納得しつつも、未知なる現象であることは変わらず、これはまた時間がある時にでも検証してみる必要があるだろう。

 

「それで…それはなんて呼ぶことにしたんダ?」

 

「えっと…そうですね。同一…シンクロ……いや、共鳴化って感じだから……レゾナンスっていうのは、どうでしょうか?」

 

「レゾナンス…共鳴か。二人に起こった現象からすると、ピッタリな名前ダナ」

 

「まぁ、検証する必要がありますから、当分は秘密でお願いします、キリトたちの方には俺から説明しておきますよ」

 

共鳴する意思…とりあえず今は『レゾナンス』とあの現象は定義することになった。そして、ユウキと共に幻想剣ソードスキルを使えたのは…あれはまたレゾナンスとは違ったような感じがした…それもまた検証しなければならないことなのだろう。

 

一先ずまた検証してから、この話は相談するとしよう。

 

「それにしても…まさかフォン坊たちがストーリークエストに遭遇するなんてナ」

 

レゾナンス関連の話を終え、最初に報告した今回のクエストの件について話すアルゴさんに、俺たちは少し疲れた様子で応える。

 

「あれから、シグがすぐにクエストをまた受注したんだが…クエストの内容が少し変化していたんダ。そのリョース族っていうエルフの里はかなり寂れ、下手すれば廃村寸前といったレベルになっていたんだとヨ。それに、フォン坊たちが見たっていうダークエルフ…スヴァルト族だったか…その影はちらっとも見なくなったって…」

 

「…ってことは、もう俺たちが経験したストーリーに派生することはなくなったってことなんですか?」

 

「だろうナ…まぁ、そうだろうナ。ストーリークエストの醍醐味は物語にプレイヤーが大きく関わり、その選択がクエストに大きく影響するところだからナ。特に、二人が手に入れたのが伝説級アイテムだっていうのなら、同じクエストの内容で行われることはないだろう」

 

「…ちょっと安心しました。あんな酷い話が繰り返されるのは…嫌でしたからね」

 

「フォン坊やユウキがそう思うなんてよっぽどだナ。まぁ、話を聞いた感じ、オレっちも同じ感想だけどナ…けど、まさか一発でトゥルーエンドに辿り着くって…逆に凄いゾ。こういうのって、フラグを確かめながら何回か繰り返すのが普通なんだけどナ」

 

「えっと…なんか思うがままに行動したら、そうなったというか…そういうクエストだって知らずにやってたから…アハハ…」

 

そのあとの話を聞いて、少しだけ安堵した。予想通り、リョース族は衰退の一歩を辿っているらしい…もっとも、俺が原因でそうなったこともあってそっちに関してスッキリしたという感覚はなく、どちらかといえばあんな悲劇が繰り返されることがなくなったということに安堵した感じだ。

 

まぁ、情報屋であるアルゴさんからすれば、かなりのネタになりそうなクエストを一発で完全にクリアし切ってみせた俺たちに感心するどころか、どこか呆れていたようだが…

 

「…本当に…お前らの相性って最高なんだナって、お姉さんは思えてくるヨ。アーちゃんたちもそうだけどナ…二人が喧嘩するところなんて、想像できないナ」

 

半眼と共にそんな評価を言われたわけだが、俺とユウキは顔を見合わせて、それに少しだけ反論することにした。

 

「それは違いますよ、アルゴさん。俺たちだって喧嘩ぐらいしますよ」

 

「でも、喧嘩して仲直りして終わりじゃなくって…その後にもっと仲良くなれるって信じてるから…そういう意味では確かに相性は最高だよね!」

 

肩を竦め…しかし、笑みを浮かべて答えた俺たちに、呆れたようにアルゴさんは次の言葉を投げ掛けてきた。

 

「…そういうところが、バカップルっていうところの認識はあるのカ、お前ら…」

 

…その問いかけに、俺とユウキは怯むことなく、笑みを零すのだった。

 

 




システム外スキル『レゾナンス』
 二人以上のプレイヤーを対象に発動する一時的な意識共有現象。発動条件として、①戦闘開始してから5分以上が経過、②対象となるプレイヤーたちが同じ意識・考えを強く持つこと(ある程度の心意が使えるプレイヤーが一人はいなければならない)、③そのプレイヤーアカウントのVRMMOプレイ総時間が100時間を超えていること、が挙げられる。
 仕組みとしては、出力の低いアミュスフィアでは単独での強力な心意による上書き現象が起こせないが、あるプログラムがALOに導入されたことで、カーディナル・システムが影響を受けたことで、共鳴したプレイヤーのアミュスフィアを並立稼働させることによって、強力な心意現象=意識の共有化を偶発させることになったのがカラクリである。
 下記の派生技へと条件を満たせば繋げることができる半面、デメリットも相応に大きく、レゾナンス状態の時にはダメージが共有化(片方が受けたダメージをもう片方も受けることになる)する上に受けるダメージが1.5倍、解除後、脳を一時的に活性化させている状態でもあるため、酷い倦怠感を感じるレベルに疲弊することになる。
 一方でラグなしでの連携や時間制限やバフによる解除もないため、一度発動すると他を寄せ付けないコンビネーションを発揮できるものでもあるため、そのタイミングが重要となる。
 発動時、心意と異なり、プレイヤーの目の軌道を描くように光の流れが奔出されるため、発動しているかどうかの見分けはしやすい。
 現状、フォンとユウキだけでなく、キリトたち全員が発動条件を満たしているため、状況によっては発動する可能性が存在している。また、二人だけとは限らず、複数名での発動も可能だが、条件からしてそれはかなりの困難を極める。

派生システム外スキル『レゾナンツ・アーツ』
 レゾナンス状態において、一定の条件を満たしたことで発動できる、まさしく必殺技に等しいスキル。各組合せによって発動条件が異なり、レゾナンスよりも厳しい条件であることが多いが、それを補うほどの絶大な力を行使できる。
 現状は検証中であり、名称の決定と本格的な台頭はもう少し先の話になる。命名の由来は『レゾナンツ』=複数のレゾナンス状態のプレイヤーが協力して、『アーツ』=放つモーション技、からになる。
 ●幻剣連撃(ファントム・セレクト)
 対象プレイヤー:フォン&ユウキ
 発動条件:レゾナンス状態で、3連撃以上で、同じ武器の同連撃数であるが違う種類のソードスキルを一寸のズレもなく全連撃ヒットさせること。その後、30秒間の間、発動可能となる。
 発動可能時間の間、どちらかが使用できるソードスキル・OSSを、威力を三倍にした状態で発動できる。この時、同タイミングで発動した場合、更に威力が二倍となる。また、このスキルで使用したソードスキル発動後は硬直が発生しない。また、どちらかが使えないソードスキルであっても、その時に限り使用することができる。
 但し、この効果は制限時間の終了、発動後、もしくは武器を交換するなどすると、即座に効力を失う。


…やりやがったよ、この腹黒主人公…(やらせた上に責任転嫁しておいてなんですが…)

真っ黒ですよ、オリ主…確実に騙し切った時に、頭の中で「計画通り…」って悪魔的な笑みを浮かべてましたよ、絶対!

…まぁ、作者的にはこういうエンディングにしないとちょっと気が済まなかったのもありまして…フォンにはちょっと悪いことに手を染めてもらうことになりました(黒笑)

長くなったユウキ編も終わりに…いや、最後の最後でとんでもないことがまた出てきたわけで…
そうです、新機能である『レゾナンス』、は実はあれに関連したシステム外スキルだったわけです。あっちが大多数の脳をクラウドで共有して大規模な演算処理システムを形成するのに対し、レゾナンスは身近なメンバーでアミュスフィアを通して短時間ながら意志を共有するものとなる感じです。
なので、前者ではできない脳内の共有化も、少人数での運用がメインとなるため可能となったわけでした。(これ考えるために、散々前者のシステムについて調べて考察
しまくりました)

便利過ぎるので、多分ここぞという場面以外には出さない感じですね…まぁ、フォンたちが単体でも十分強いのもあるのですが。

そういうことで、予想を遥かに大きく上回る形で長くなったユウキ編も無事終わり、次回はカナデ編となります!ある意味、ユウキ編とはまた違った意味で、大変頭を働かせることになったお話になりますので、是非ともご期待下さい!

それでは、また!

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