ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

21 / 264
蓮君によるちょっとした説明会になります

あと、菊岡さん初登場+キリトこと、和人との再会回になります

それでは、どうぞ!


後日談1 「戦友との再会」

それから一週間

両親と感動の再会、精密検査、警察の取り調べ、俺が寝ている間に世の中で何が起きていたのか……などなど、色々と慌ただしかったのだが、これだけははっきり言おう……

 

ほとんどが初めての出来事すぎて、もう俺の頭はパニック寸前だ。

 

 

まず、両親。

確かに俺の両親…………訂正しよう。俺が元いた世界とそっくりの両親と再会した時には、俺の心境は複雑だった。

知っているはずだが、俺にとっては初めまして、なのだから、どう接すればいいのか、距離感を掴めずに困っている。

 

ちなみにどうして俺が入院していたのかというと、

なんでも道路に飛び出した猫を助けるために自分も飛び出し、車にはねられる……ことはなかったのだが、

側道に強く頭を打ったらしく、意識が戻らない状態だったらしい。

 

そこで医療用VR機器……たしか《メディキュボイド》といったか……に接続して、検査しようとなった時に、SAOの回線に巻き込まれ、事故でSAOにログインしてしまった……らしい。

なんともベタな展開だと、自分でも笑うしかなかった。

 

精密検査は、筋肉の衰えの問題はあったが、特段異常はなく、リハビリすれば、元の生活に戻れるだろう、とのこと。

 

 

次、警察の取り調べ……そこで俺は茅場が死んだことを聞かされた。

なんでもSAOがクリアされた時に、大出力の脳スキャンを行って、死んだらしい……

あいつのことだから、なんやかんやで生きてそう気がするが……

 

あと、俺をALO、というゲームに閉じ込めていた主犯の……確か、須郷とかいったか……奴も捕まったらしい。

どうやら俺やアスナ以外にも、100人近いSAOプレイヤーをVR世界に閉じ込め、非人道的な実験を行っていたらしい。

最後は、発狂して、少年を病院で襲おうとして、返り討ちにあったらしい……なんとも哀れな最後だ。

 

 

最後は、この世界の常識だ。

この世界では、俺がいた世界よりも科学……主に

IT技術が進化しているらしい。まぁ、VRMMOなんてジャンルが確立しているくらいだ。ある意味、当たり前か……

まぁ、3Dディスプレイが実物化していると知ったときにはカルチャーショックを受けたが……

 

 

と……激動の一週間を過ぎたところで、俺の生活はようやく落ち着いた。

そんなことを思い出しながら、病室のベッドでゆっくりしているときだった。

 

コンコンコン

「……?はーい」

 

ノックが聞こえ、俺は外の人に入っていいことを伝えた。

 

「失礼するよ」

「……すみません、どちらさまでしょうか?」

「ああ、これは失礼……僕はこういう者です」

 

部屋に来た謎の訪問者から名刺を渡され、それを見る。〈総務省SAO事件対策本部:菊岡誠二郎〉と書かれていた。

 

「よろしく、音弥蓮君……いや、夢幻の戦鬼、フォン君と呼んだ方がいいのかな?」

「……すみません、気分が優れないんで、帰ってもらえますか?」

「す、すまない!……少し空気を和らげようと」

「…………あんた、人から信頼されにくいだろう」

「……アハハ」

 

図星かよ……俺の指摘に苦笑いしている菊岡さんを俺はジト目で見つめていた。

 

「オ、オホン……改めまして、菊岡って、言います」

「……どうも」

「フゥ……ファースト・インプレッションは失敗かな?申し訳ないんだが、SAOの世界で何があったのか、色々と話を聞かせてほしいんだ……一応、お医者様の許可はもらっているだけど……」

「……構いませんよ……ちょうど、暇でしたから」

「そうか……それじゃ「その代わり」」

 

菊岡さんの言葉を遮った。菊岡さんは思わず、面食らっていた。

 

「条件が一つあります……それを聞いてくれるなら、話しますよ」

「僕でできる範囲なら……なにかな?」

「ある人に、俺がここに入院してることを伝えてほしいんです」

「……それは、一体誰にだい?」

「黒の剣士……キリトにです」

 

 

 

ということで、更に三日後。

 

コンコン……

「……どうぞ」

「し、失礼します……」

 

控えがちな声の後に、姿を現したのは……もちろん……

 

「……よう、キリト」

「…………また会えたな……フォン……」

 

もう会うことはないと思っていた、戦友キリトだった。キリトも俺を見て、信じられないといった表情をしていた。

 

「そうだ。ちなみに俺の本名は音弥蓮だ……蓮と呼んでくれ」

「そ、そうだった……プレイヤーネームはマナー違反だったな。俺は桐ヶ谷和人。俺も和人と呼んでくれ」

「桐ヶ谷、和人……ああ、本名をもじったのか……」

「まぁな。安直だろう?」

「……そうでもないさ。アスナに比べれば、マシだろう?」

「アハハ……そうだな」

 

こんな他愛もない会話ができる……SAOをクリアした時やALOでキリトと別れた時には、こんなことができるとは思ってもみなかった。それはキリトも同じだったようだ。

 

「……それで……その、聞いてもいいのか?」

「うん……?何をだ?」

 

とりあえず近くにある椅子に腰かけたキリト……もとい和人は恐る恐る尋ねてきた。

(……ああ、そういうことか……)

 

「……茅場が言っていたことか?」

「……ああ」

「…………分かった…………少し長くなるが、いいか?」

「……もちろんだ」

 

そこから俺は話し始めた……茅場の言った意味、それが俺はこの世界の住人ではないことを指していたこと。和人たちの世界が俺たちの世界では、小説の世界の話だということ。和人と明日奈の関係を知っていたこと。SAOに関して、知っていることもあれば、知らなかったこともあったこと。幻想剣と自分が本来いないはずの10001人目のプレイヤーであったこと。ALOから生還した際、何故か現実の体もSAOに来てしまっていたこと……全てを話した。

 

「………………………………」

「…………これで全部かな」

 

俺の話は終わった。話を聞いていた和人は、最初は驚きまくっていたが、今は冷静に事実を受け止めているのか、さっきから黙ったままである。

……やっぱり軽蔑しただろうか?

 

「…………はぁ~~……なるほどな」

「……か、和人さん……?」

 

ため息をつき、空を見上げた和人に、思わず敬語交じりのしゃべり方になってしまった。

 

「蓮……ありがとな」

「……えっ……?」

 

和人から予想外の言葉が出てきた。

……ありがとう……?なんで……?

 

「な、なんで……?」

「えっ……いや、だって普通は別の世界にきて、帰れるかどうかも分からない状況だったんだし、それなのに俺やアス「そうじゃなくって!!!」蓮?」

「……俺はお前たちを騙してたんだぞ!それだけじゃない、俺は74層の軍の暴走だって知ってた!お前がクラディールに襲われるのもだ!全部知ってて、しょうがないって、見逃した……!お前にお礼を言われる資格なんて……ないんだよ……!!!」

「……………………………………」

 

俺は思いの丈を叫んだ。

……今日、会ったことだってそうだ……俺は間違いなく、和人に嫌われると思った……それを覚悟して、全てを告白した……なのに……こいつは!

 

「……はぁ……はぁ……!」

「…………俺はそうは思わない」

 

病み上がりなのに、思わず叫び、息を切らした俺に和人ははっきりと言った。

 

「お前は、黒猫団の事件で俺やサチを助けてくれた。それだけじゃない、ディアベルやシリカだってそうだ……お前がいなかったら、死んでたやつだって、本当はいたんじゃないのか?」

「……っ…………!」

「……むしろ、謝らないといけないのは俺の方だ」

「和人……?」

「……お前が異世界から来てるなんて知らずに、あんなに頼って。アスナと出会うまで、俺はSAOをクリアすることに、生き残ることを考えるだけでいっぱいだった。ゲームさえクリアすれば、現実世界に帰れるって……

だけど、お前は違ったんだよな……

茅場との決戦だって……本当は俺が戦って、負けてたんだろう?

……それを回避するためにお前が…………」

「………………………………」

「……その後の戦いだって、お前がいなかったら、お前が知ってるように絶対負けてた。だからだよ。俺はお前に感謝してる……恨んでなんかないさ……」

 

「っ……か、ずと…………」

「……まぁ、恨んでることがあるとしたら、二度と会えないくせに、お礼を言う前にとっとと消えたことか?あの後、アスナたちもかなり心配してたんだぞ?」

「…………そう、なのか?」

「……だからさ……気にするなって」

「………………………………分かったよ」

 

その言葉に、俺のどこかで救われたような気がした。

最悪、殴られる覚悟もしてたのだが、

(……本当……キリトには敵わないな)

そう思った。

 

「そうだ!そういえば、蓮がいた世界って、どんな感じだったんだ?」

「お前……それを聞くのか?」

 

さっきまで感動していたのに……デリカシーのない和人の言葉に俺は思わず苦笑いしてしまった。そこからは時間がくるまで、色々な話をした。

和人の妹の話、ALOというVRMMOの話、明日奈や俺を助けるまでに何があったのか、帰還者学校のこと……

時間が来たことで、エギルさんやクラインたちの連絡先を教えてもらい、その日は別れた。

後日、連絡先が分かる仲間たちに無事を知らせた。怒られたり、心配されたりしたが……

皆、俺が無事だったことを喜んでくれたのだった。

 




オリ主も決して、強い人間ではないということです


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。