まぁ、サブタイで多分バレてそうな気もしますが(苦笑)
それでは、どうぞ!
「ふんふ~ん…♪」
(…妙だな)
カナデと『超魔の試練』を乗り越えて二日…学校に向かう前なわけだが、どうにも奇妙なことに対して俺は眉を顰めていた。
というのも…朝食当番の木綿季の機嫌が物凄くいいのだ。いや、それが悪い事かと言われるとそうではないのだが…その理由が分からないので、疑問を覚えていたわけだ。
これが土日で、明日奈たちと買い物に行くとかであればまだ分かるのだが…今日は水曜日だし、そんな予定も聞いてはいない。
別に学食に特別メニューが並ぶわけもないし…聞いても、
「え~……秘密!」
とはぐらかされてしまったわけで…何かを知っていないかとカナデに尋ねるも、
『…さあのう。なんじゃろうな?』
と、知っているけど教えないとばかりな態度をスマホの画面越しにされてしまったわけで…というか…
(…なんか、オーグマーまでも隠されたみたいなんだが…木綿季の行動の意図が掴めなくて、なんというか気味が悪いな)
そうなのだ…今朝起きると、いつもベッドの傍で充電するために置いている俺のオーグマーが消えていたのだ。昨夜の時点ではあったのだが…隠せるとしたら、犯人は一人しかいないわけで。
(まぁ、とりあえずは保留にしておくか。無理に聞き出す必要性もないし…明日奈たちに聞いてみれば、案外すぐに分かるかもしれないし…)
機嫌が悪いならフォローとか俺が何かしたかを懸念すべきなんだろうが…いいのであれば、無理に追及することもないだろう。
むしろ、そのあたりの事情を知ってそうな面々に聞いた方が早いかもしれないし…そんなことを思いながら、俺はキッチンへと近寄る。
「もうすぐできるから~!」
「それじゃ、飲み物用意しておくな。えっと…オレンジで良かったか?」
「うん!」
ハムとほうれん草を具材にしたオムレツのいい匂いがしてきて、もうすぐ出来上がりだという木綿季の声に、皿と一緒に飲み物を用意していく。木綿季のオレンジジュースに、俺は珈琲にすることにした。
そんな感じで、今日は不思議なスタートを切ることになった。
「おはよう、音弥君」「おっす、音弥」
「おはよう、明日奈、里香」
バイクを駐車場に停め、玄関で木綿季と別れて自分の教室へとやってきた。既に来ていた隣の席の明日奈と里香に声を掛け、荷物を机に置いていると…
「…なんだよ、里香。俺の方をジッと見て」
「別に~…幸せ者を羨ましがっているだけよ~」
「羨ましい…?なんか変なものでも食べたのか?」
「えっ…?」「お、音弥君…?」
「…?いや、どうした、二人とも…?」
里香の言っていることが分からず、冗談で返したつもりだったのだが…何故か里香だけでなく、明日奈までもが驚いていた。そこまで変なことを言っただろうか…そう思いつつ尋ねるも、何故か二人はこそこそ話を始めてしまい…
「(ちょっと、明日奈!こいつ、マジで気付いてないの!?)」
「(み、みたいだね…てっきり、気付いていて、ワザと知らないフリをしてるのかなって思ってんだけど…)」
「(なんでいつもは鋭いのに、こういうことに限っては鈍いのよ!?まぁ、木綿季にとっては滅茶苦茶好都合なんだろうけどさ…!)」
「(アハハ…これはうまくいくかもね)」
「…おーい…なにをコソコソ話してるかは知らないが、そろそろいいか?」
チラチラとこちらを見ながら話し続ける二人に、流石の俺も眉を顰める。どうやら奇妙なのは木綿季だけでなく、彼女たちもらしい。というか、この様子からして、おそらく事情を知っていると見て、まず間違いないだろう。
「木綿季もそうだが、お前らまで今日は変だぞ?一体何があったんだ?」
「何があったというかねぇ…これからあると言うべきなのか」
「ちょっと、里香…それ以上は言うのは駄目だよ」
「…そうね。まぁ、安心しなさい。別に悪いことじゃないわよ」
「…?…?いや、そう言われてもな…」
「というか、私的にはあんたが気付いてない理由が理解できないぐらいなんだけど…」
「アハハ…それに関しては私も同意見かな?(これ…キリト君たちにも口止めしておいた方がいいわね…)」
「…?…?…?」
残念ながら、里香と明日奈も教えてくれる気はないらしい。俺が気付かないのがおかしいと言われたが…俺に関連するということなのだろうか?
何のことだろうと思いつつ、イマイチ思い当たることがなく…俺はモヤモヤしたものを抱えつつ、午前の授業を過ごすことになった。
「…和人、知っていることを話せ」
「昼食を奢るって誘いから、まさかの脅迫かよ!?」
昼休み…今日は弁当ではなく、学食でのランチだったわけだが、木綿季は明日奈たちと一緒に食事をする約束をしていたらしく、近くにはいない。
ということで、一限と二限の間にメールを送っておいた和人と共に俺は学食に来て、早々に尋問していたところだった。
特製ランチAセットのエビフライを齧った和人が、俺が昼食を奢った真意を悟り、ツッコんでいた!
「いや、別に無理にってわけじゃないんだが…どうにも俺だけが蚊帳の外に置かれてるのがちょっと気味が悪くてな」
「ふ~ん…お前がそう思うのって、なんか意外だな」
「明日奈も里香も事情を知ってるようだが教えてくれなくて…一応、珪子にもメールで聞いてみたんだが、『私の口からは裂けても話せません!?』っていう返事が返って来てな…こうなったら、遠慮なく問い詰められるお前しかいないと思ってな…」
「お前にとってそこまで信用してもらっていることを喜べばいいのか、口を割らせやすいと思っていることを怒ればいいのか、分かんねよ…」
そんなことを言いながら、セットのハンバーグへと箸をつける和人。俺もカツ丼のカツに卵を絡めながら、どうしたものかと思っていた。
「俺としては、本当に気付いてないことに驚きなんだが…」
「それは里香にも言われた…だが、心当たりがな。木綿季が機嫌がよくなるようなことが思い当たらないんだよ。何故だが、オーグマーも隠されちまっててさ」
「…あー…まぁ、それはそうだろうな。オーグマーがあると、確かに木綿季にとっては困るだろうな」
「えっ…?(オーグマーがあると困る…?どういうことだ…?)」
どうやら和人はオーグマーが隠された理由をすぐに理解したらしい。逆に俺は意味が分からないままに、頭を抱えてしまっていたが…
「…しょうがないな。なぁ、蓮…ちょっとだけヒントをやるよ」
「っ…!?マジか、助かる!それで、それで…どんなヒントだ!?」
「直接的なことは言えないが…そうだな。この前の日曜日、明日奈と木綿季が一緒に買い物に行っていたのは覚えてるよな?」
「…あの日か。確か…俺とお前が、ALOでユージオとアリスを思わずボコボコにした日か」
「ま、まぁ…そんなこともあったが…二人が不参加だった理由はその買い物が理由だ。そして、今日、木綿季の機嫌がいいのもそれに関連したことだ」
「…えっ?もしかして、それがヒントなのか?」
「悪いな、俺も明日奈から口止めされてるから…これ以上は言えないんだ。でも、これだけは断言できる…このまま知らないままでいる方が絶対にいいと俺は思うぞ」
「…むぅ…」
最後のおかずであるメンチカツを食べ終えたの同時に、言えることは全部言ったとばかりに和人はトレーを返しに席を立ってしまった。
少し冷めてしまったカツ丼と共に、唸る俺は置いてけぼりにされてしまった。
『今日は用事があるから、一人で帰るね!』
(いやいや…今朝の時点で言っておいてくれよ。参ったな…)
放課後…結局、謎は解けずじまいで、六限目を終えたわけだが。
そんな靄が晴れぬ中、スマホに木綿季からメールが届き、俺は絶句していた。もうちょっと早く言っておいてくれと思いつつ、どうしたものかと考える。
まっすぐ家に帰ってALOにダイブするのもありかもしれない…どうにも、今日一日考えていてばかりで、ちょっとモヤモヤが続いて何かで発散したい気分だった。新生アインクラッドの迷宮区にでも籠ってみようかと考えていると…
『フォンよ、ちょっとよいか?』
スマホのバイブ音に気付き、取り出すと液晶画面にはカナデが映っていた。どうやら彼女が俺に呼び掛けるためにスマホを揺らしたらしい。どうしたのかと思い、用件を尋ねると…
『もし時間があるのなら、図書館に行ってくれぬか?様々な本があると聞いて、借りられるのなら試してみたいと思ったのじゃ』
「図書館…?別にいいぜ、ちょうど時間もできたことだし……えっと、近くの図書館は、っと…」
『ここなどどうじゃ?そこまで遠くもなく、種類も豊富だとネットにあったぞ?』
「…そうだな。なら、行ってみるか」
木綿季と別行動になり、時間を持て余したこともあり、カナデの頼みに乗る形で図書館に行くことにした。スマホで行き先を調べようとするも、既にカナデが候補を見つけていたようで、スマホに情報が出された。
学校からバイクで30分程度…自宅までも同じぐらいだから、ちょうどいいぐらいだろう。
そういうわけで、カナデのナビゲートによって俺たちは図書館へと向かうことになった。
「…で、どんな本を借りたいんだ?」
バイクで図書館に辿り着き、受付で内容を聞くと、データでも本は借りられるとのことだったので、登録して俺のスマホに専用のアプリを入れたことで、これで図書館を利用できるようになった。
というわけで、発起人であるスマホに映るカナデに尋ねると、思巡した後に返ってきた答えは…
『お主のおすすめを教えて欲しいのじゃ』
「おすすめか…俺が読んだことがあるのでいいか?」
5階建てのこの図書館の天井を見つめる形で、過去に読んだことがある本を思い出していく。おすすめならば、面白いと思ったものを薦めるべきだろう。
「推理物とかは先の展開とか答えを知りたいと思って、ついつい読み進めちまうかもな。有名なシャーロック・ホームズシリーズとか…現代ものとかだと、探偵ガリレオシリーズとか万能鑑定士シリーズとかも面白かったな」
そこから、思い付く限りの本を挙げていった…現代の東京に転生した大妖怪夫婦の話、不可思議な事件に関わる風変りの女医のミステリー譚、単発だがある工業大学のハチャメチャ活劇、子供たちが様々な悪戯や考えで大人たちを翻弄するシリーズ…
『…どれも面白そうじゃな』
「だろう…?と言っても、読んだのは元の世界であって、こっちにも同じ本があるかどうかは保証できないけどな」
『ふむ…ならば、少し見てくるとしようかのう。さっきインストールされたアプリを通して、図書館のデータにアクセスできるようじゃからな』
「頼むから、セキュリティに引っ掛かるようなことはしないでくれよ?庇えるのにも限りがあるからな」
『分かっておるわい。それでは、またあとでのう」
大丈夫だとは思うが、一応の注意をして、それを聞き入れたカナデは画面から姿を消した。カナデが本を探している間、俺も少し図書館を見て回ることにした。
(…カナデもこっちの生活に大分慣れてきたよな。それと同時に、あいつのネット探索に関するスキルが上がっていくのがちょっと怖くなってきたんだよ。今度、ユイちゃんがどんな感じなのか、キリトとかに話を聞くべきだろうか)
そんな危機感を抱きつつ、小説が多く置かれている二階へと来た。
最近、こういう風に本を見て回ることがなくなっていたため、何か面白そうな本はないかと開拓してみたくなったのだ…VRMMOとか家事とか受験勉強に重きを置いている弊害だと思いつつ、休憩の合間とかで一、二冊ぐらい読むのもありかもしれない。
(そういえば、俺がいた世界とこっちじゃ年数のブランクもあるんだよな。その間に出たシリーズとかもあるのかも…ちょっと見てみるか)
そんな好奇心に駆られ、俺は本棚を巡っていくのだった。
『フォン、本が決まったぞ』
「おっ、そうか……って、もうこんな時間か」
スマホが揺れ、本に目を通していた俺はそれをポケットから取り出す。画面には本を抱えたカナデの姿が映し出されており、それと同時に時刻が目についた。19時前…どうやら、思った以上に長居してしまったらしい。
「…俺もこの本を借りようかと思ってさ」
『…ほう。どんな話なのじゃ?』
「映画を小説にしたものだよ。映画自体は結構前に公開されたものだけど、ちょっと気になってさ。世界の平穏か一人の少女か…どちらに少年が手を伸ばすのか、っていうみたいな話かな」
その映画の結末を俺は知ってる…少年がした選択は、人によって賛否両論はあるものだったと思うが…俺は間違ってはいないと感じた映画だった。小説だと、もっと細かい描写もあったりして、少年の心情や物語の根幹を知ることができるかと思ったのだ。
半分ぐらいを読んだが…残りをこのままにするのは勿体なく、残りは借りて読もうと思ったわけだ。
「これもデータで借りられるのか…えっと、手順は…」
『本の裏表紙の裏、そこに貼られてる管理表に記載された番号をアプリに打ち込めばいいようじゃぞ?』
「…これか。って、もう容量ギリギリまで入ってんだが…?」
『…そ、それでも抑えたのじゃぞ?』
どうやら本は10冊まで同時に借りられるらしいのだが…アプリには既に9冊まで本が入っていて…ジト目をスマホに向けると、逃れるように目線を逸らしたカナデの姿がそこにはあったわけで…
まぁ、俺はこの一冊だけを借りたいだけだったので、それ以上どうこう言うのは野暮だと思い諦めた。
本の番号をアプリに打ち込み、手続きを済ませに行く。あとは、受付でアプリを提示すれば、貸し出しは完了となるらしい。
こういうところは、やっぱり俺のいた世界と比べて便利だなと思う。やっぱり本を借りるとなると、実物を借りるというのが普通だったからな…
「…さて、それじゃ帰るか」
『…そうじゃのう』
手続きも完了し、閉館時間も迫っていたこともあって、図書館を出た俺は今度こそ家に帰ろうと思い、バイクの元へと向かった。
「…さてと、木綿季は先に帰ってきてるのか」
バイクを止め、エレベーターで自室の階層に来たが…結構遅くなってしまった。もう木綿季は帰って来てだろうかと思いつつ、ドアを開こうと…したが、鍵が閉まっていた。
どうやらまだ戻ってきてないらしく、しかし、もう遅い時間なので、そろそろ帰ってくるだろうと思いつつ、鍵を開ける。当然、電気も点いていない訳で…廊下の明かりを点けて、リビングに、
…パン!…
「…えっ?」
「蓮、お誕生日おめでとう!」
軽い破裂音がしたと思ったら、頭に何かが降りかかり…呆然としていると、彼女の声が聞こえたと思った後に、電気が点いたと思ったら…
「…たんじょう、び…?」
「…やっぱり気付いてなかったんだね、蓮。僕の言った通りだったでしょ、カナデ?」
『そうじゃのう…まぁ、気付かれないように色々としておったのもあるがのう』
突然のことに頭が追い付いていない俺を放置し、出迎えてくれた彼女はスマホを取り出し、もう一人の共犯者と何かを話しているようで…
「……そう、か…9月9日…俺の誕生日」
ようやく思考が追い付き、そして、思い出した…今日9月9日は俺の誕生日だ。ということは…
「もしかして、今朝から機嫌が良かったのって…俺の誕生日だったから、か?」
「そうだよ!今日の日のために色々と準備してきたんだから!はい、オーグマー」
『誕生日おめでとうなのじゃ、フォン…本当に大変じゃったぞ…今日一日、お主にどうやって日付を見せないようにするか。図書館が一番ヒヤヒヤしたわい…オーグマーを隠したのは得策じゃったな、ユウキ』
答えが分かり、今日あったことに色々と納得がいき始めて、彼女たち…木綿季とカナデのしてやったりという姿に、俺は肩の力が抜けるのを感じる。
やっぱりオーグマーは木綿季が隠し持っていたらしく、受け取って装着すると、誕生日を告げる通知と同時に、姿を現したカナデもお祝いの言葉をくれた。
「でも、いつから計画していたんだ。そんな前からじゃないだろう?」
「えっとね…ちょうど一週間前かな。僕の方からお義母さんに相談したんだ。蓮の誕生日をお祝いしたいって…ほら、僕の時にもサプライズで祝ってくれたでしょ?そのお返しで」
『それで、他の者にも協力してもらったわけじゃよ…まぁ、当の本人がまさか忘れておるとは思っておらぬかったがのう』
「あー…いや、忘れたというか…色々最近ありすぎたというかなぁ…」
「『あの子のことだから、人から言われるまで絶対に誕生日のことを忘れてるわよ!去年も、忘れてたもの…!』…って、お義母さんも言ってからね。ALOで相談したんだけど、是非とも祝ってあげてとも言われちゃったよ」
…どうやら、母さんは俺の行動を予想していたらしい。いや、もう何も反論できない状態だった。
せめて言い訳させてもらうと、カナデを受け入れることになったりとか、キリトと月夜の黒猫団の件とか…ここ最近が本当に濃厚過ぎて忙殺されてしまったのだ。まぁ、それでも、誕生日を忘れるのはヤバいな、うん…
そんなことを思っていると、スマホが振動した。画面を見ると、ちょうど話題にあがっていた母さんからの着信だった。
「…もしもし?」
『もしもーし。誕生日を忘れてた息子よ、元気かしら?』
「今、ちょうどサプライズを喰らってビックリしてるところだよ」
『それは良かったじゃない!どうやら、木綿季ちゃんの作戦は成功したみたいね』
「それはもう十分に…」
このタイミングの良さ…エスパーかと思いそうだが、おそらくそうではない。きっと母さんがさっきまでここにいたのだ。台所の方へと視線を向けると、物凄い豪華な料理が準備されていて…これを木綿季一人が作ったとは考えにくい。
…となると、手伝った人物がいるわけで…木綿季が先に帰ったのは、その人物を自宅に招き入れる必要があったからなのだろう。
「…休みを取ってまで手伝ったのなら、一緒にいればよかったんじゃないのか?」
『空気を読んだのよ!いつまでも子供扱いされるのも嫌でしょう?それに…今のあんたなら、木綿季ちゃんたちに祝ってもらう方が嬉しいでしょう?』
「…否定はしないけどさ…うん…木綿季、たち?」
『聞いたわよ……あんた、木綿季ちゃん以外とも同棲してるんですってね?』
「…!」
その言葉に、背筋に冷や汗が流れた…どうやら、ALOで相談しに行った時に、木綿季だけでなく、カナデもその場に同席していたらしい…つまりは、そこから母さんがカナデに面識を持ったというわけで…!?
最悪な可能性が頭に浮かび、顔が引き攣りスマホを持つ手が震える。もしかしてと思い、母さんの次の言葉を警戒していると…
『早く言いなさいよ!例のフラクトライトの子を預かることになったなんて…!』
「えっ……あ、ああ!?そ、そうなんだよ!いや、いきなりのことだったから、言うタイミングがなかってさ…アハハハハ…!」
『そうだったのね~…木綿季ちゃんから、カナデちゃんを紹介された時は、また可愛い子が知り合いに増えたのねと驚いたわよ~…フフフフフフフッ』
ど、どうやら…なんとか勘違いということで誤魔化せそうな…
『…と言って納得すると思うの、蓮?』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『母の勘がビビビって反応したのよ…どうやら、一度あんたの情操関係について、じっくりと…そして、しっかりと話をする必要があるみたいね…親の責任として…』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『明日、ALOの央都アルンで待ってるわ。お父さんには秘密にしておいてあげるから…正直に全部を話す準備をしときなさい』
「……はい」
「お義母さん、何だって?」
「……二人によろしくだって」
その有無を言わせない宣言と約束に、俺は首を縦に振りながら、イエスとしか答えられなかった。そのまま電話が切れた俺は天を見上げ…ひとまず現実へと意識を逃避させた。今は、純粋に二人が誕生日を祝ってくれることを祝おう、うん!?
「それじゃ、誕生日パーティを始めようか!」
明日のことは明日に…絶望するのは明日でいいだろう。そんな思いを後押ししてくれるように、木綿季が手を引っ張りながらそう宣言したのだった。
「それにしても…俺の好きなものばっかりだな」
「お義母さんに色々と教わりながら作ったんだ!やっぱり蓮のお義母さんっていうか、凄い手際が良かったよ!」
キッチンから持ってこられた料理は、鶏の照り焼き・黒酢酢豚・ロールキャベツ・葡萄ジャムを使ったパイ…それらが所狭しにテーブルの上に並んでいた。
木綿季と母さんの合作というのもあって、とても美味しいかったわけで…食事しながら、話は俺の年齢へと移り…
「20歳か…もうお酒が飲める歳なんだね、蓮は」
「それでも、一応は高校生だから飲まないけどな…というか、木綿季が間違って飲まないように多分買わないしな」
「…さ、流石に間違わないよ!?あんなことがあったわけだし…」
『お主ら、酒で何か失敗したことがあったのか?』
ALOで起こったあの騒動…俺と木綿季からすると、あんまり思い出したくない話ではあるわけで、気まずい笑みを浮かべる俺たちにカナデが首を傾げるのだった。
「あんまり実感がないんだよな…アンダーワールドで二年も過ごしたのもあって、とっくになってるような感じがしてたしな」
『…だが、あっちでも誕生日の祝いはしてなかったと思うが』
「あー…あの時は修剣学院に入ろうと必死だったし、衛兵として働きづめだったからな…それに、遊びで行ってたわけでもなかったからな」
「そういう意味だと、精神的な意味では年を結構取ってるってことなのかな」
「…うぅ。なんか、そうやって口にして言われると、ちょっと堪えるんだが…」
『お主はまだいいじゃろうが…わしなんか、さらっと三桁いっておるのじゃぞ?』
STLの仕様のせいもあるんだろうが…改めて指摘されると、精神的にグサッとくるものがあった…が、年齢の話ということで、ちょっと機嫌が悪くなったカナデの視線がまた別の意味で痛かった。
…この話題は色々と危険だ!別の話をしよう…
「抱負とかあるの?20歳になったってことで」
「抱負か…まぁ、まずは大学受験だな。受かったら、時間も自由に使えるようになるだろうし…」
『お主はいつも忙しそうじゃのう…そのうち、倒れてしまいそうで怖いのじゃが』
「一応、そうならないように気を付けてはいるよ。できる範囲で、やらないといけないことを優先しながらでやってるし…」
「『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」』
「あ、あれ…?どうした、二人とも…なんか信じられないような目で俺を見て…」
普通に答えたつもりだったのだが…それを聞いた二人が目を丸くして、何故か驚いていた。一体どうしたのかと思い、尋ねると…
「いや、蓮…蓮の無茶をしないって、全く信用ないからね」
『平気だと言いながら、熱を出しても平然と同じことをしてそうなイメージしかないのじゃ』
「…これまでの行いに対する俺への評価がよく分かるようで嬉しいよ」
その言葉が全てだった…呆れ4割・諦め2割・不信4割の声色による二人の評価に、俺は苦笑するしかなかった。
よく知ってくれてるようで、心配…というよりは、そうなる前に自分たちがなんとかするべきなんだろうという雰囲気が出ていた。
(…うん。日頃の行動って大事だよな…)
ワーカーホリックは音弥家の遺伝なのではないかと諦めていたのだが…もう少し頻度を考えようと思ったのは余談だ。
そんなわけで、盛り上がったパーティも終わりが見えてきたわけで…
「はい、蓮。プレゼント!」
チョコレートケーキを食べ終えたところで、木綿季から二つの小包が差し出された。誕生日プレゼントだということは分かるが、どうして二つ…そんなことを思っていると、
「僕と…カナデからだよ!」
『その…こういうのは初めてじゃから…お主が気に入るかどうかは分からぬが…木綿季と一緒に相談して決めたものじゃ』
…どうやら木綿季とカナデが二人で相談して、一人一個ずつ用意してくれたようだ。カナデは自信がなそうにしているが…一体何を選んでくれたのだろうと思い、俺は二つの小包を空けると…
「…ボールペンと…キーケースか?」
入っていたのはボールペンが収められたケースと、革製のキーケースだった。
「うん!アスナが教えてくれたお店で作ってもらったんだ。ちょっと時間が足りなくて、刻印してもらえたのが名前だけなんだけど…どうかな?」
ボールペンの方を選んだのは木綿季らしい。確かに、ローマ字で俺の名前が銀の色で刻まれいて、蒼のボディに更に濃い色の青い龍の模様が刻まれていた。しかも、軽く握った感じ、とても使いやすそうな感触で、デザインだけでなく機能性も高そうだった。
『お主はバイクも乗るじゃろう?鍵がかさばるじゃろうから、それを纏められるものなら普段から使うかと思ってのう』
ということは、キーケースの方がカナデのものらしい。ミニ手帳のような感じで、鍵が三本まで着けられる感じで、チケットやレシートといったものも収納できる黒を基調としたものだった。これは確かに有難い…自分からこういうのを買おうとは思ってなかったので、あって便利なものを貰えるのはとても嬉しかった。
「…二人とも…ありがとう。大事に使わせてもらうよ」
「…エヘヘ」『…そうか』
素直に礼を告げると、はにかみながらも二人は嬉しそうにしていた。ボールペンは普段から使っていくとして、まずはキーケースに家やバイクの鍵を着けるかと考えていると…
「じゃあ、プレゼントも渡し終わったところで…二次会に行こうか!」
「えっ…?に、二次会…?」
これで終わりかと思っていた俺に、木綿季からそんな提案が飛んできて、思わず聞き返してしまう。
「そうだよ!これから、ALOで二次会誕生日パーティーだよ」
『ユウキが事前に他のメンバーに話を通しておったのはこれも含めてなのじゃよ。今、向こうではわしらが来るのを待っておる最中だと思うぞ』
「…なるほど。本当に用意周到に準備してたわけか…」
ここまで来ると脱帽ものだと思いつつ、俺は立ち上がり、ALOにダイブするための準備を始める。
「洗い物は明日の朝やるとして…なら、寝る準備もしておかないとな。ほら、食器は俺が片づけとくから、木綿季は先に入浴と歯磨きを済ませておいで」
「うん、分かった!」
「…ああ。ちょっと待った、木綿季」
「えっ、な…んん?!」
片付けをしようとして…風呂場に向かおうとした木綿季を呼び止め、振り返った直後に、その唇を奪った。
「…今日のお礼な」
「…っ~~~!?う、うん……ボ、ボク…お風呂行ってくる~!?」
完全に不意打ちでやられたことに、顔を真っ赤にした木綿季は今度こそ風呂場へと急いで向かって行った。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「…カーディナル。心配するなって、ちゃんとそっちに行ったら、するからさ」
『なぁ…!?べ、別にわしは…!?』
「しない方がいいのか?」
『っ~~~!?…お、お主の好きにするがいいじゃろう!?』
完全に嫉妬の感情が出ていたカナデ…カーディナルにもちゃんとお返しをすると告げたのだが…恥ずかしさが限界を超えた彼女はオーグマーの画面から消え、先にALOへと向かってしまったようだ。
「…本当に…ありがとうな、二人とも」
こんな俺の誕生日を祝ってくれたことに…俺は改めて感謝を告げて、片づけをしていく。
俺の誕生日はまだまだ終わりそうにないが…きっと今日のことは忘れることはないのだろう…そう思いつつ、この後の二次会を楽しみにするのだった。
悲報…オリ主、自分の誕生日を忘れてた…
ある意味で、フォン編ともいえる誕生日編でした(苦笑)キャラ設定にも記載してましたので、案外気付いている人もいたのではないでしょうか?
時系列的には、
9月1日 キリト編①
2日 キリト編②③
4日 ユウキ編①②③
5日 ユウキ編④(エピローグ)
6日 ユージオ&アリス編①(過去回想)、カナデ編①(冒頭)
7日 カナデ編
9日 今回の話
みたいな流れになっていたわけです…いや、内容が濃い!?長編のWoU編終わったのに、キャラ編の内容というかスケジュールが濃すぎる!
なんやかんやで、フォンも20歳になったわけで…学生組の中では一番年齢が高かった上に、早くも大人の仲間入りという…(成人してるオリ主も結構珍しいのでは?)
…そして、早くも母親にハーレムがバレるという。フォンも(自分のこと以外には)目ざとい方ですが、母はそれ以上に機敏だったわけで…まぁ、その辺りの話はまた次回以降で触れるということで(黒笑)
そういうわけで、次回からようやくアスナ編へと突入します!ある意味で、皆さんが一番期待していたお話ではないでしょうか?満を持して、彼女(?)の登場となりますので、是非ともご期待頂ければと思います!
頂いております感想も、このあとちょっとずつ返させて頂ければと思いますので、もうしばしお待ち頂ければと思います。
それでは!
キャラエピソード第2弾 どのキャラのお話が見たいでしょうか?
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某トレジャーハンターF
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リーファ
-
シノン
-
シリカ
-
リズベット
-
ユイ
-
クライン
-
エギル