ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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キャラエピのトリを飾るユージオ&アリス…略称ユジアリ編の開幕です!

あっ、もうサブタイのまんまのお話ですので(決して、サブタイがうまいこと思いつかなかったとか、そんなオチではありませんので!?)

そういうわけで、VRMMO内でのお話が続いていたので、珍しく現実世界サイドでのお話になります。

それでは、どうぞ!

…ちなみに、誰得かは分かりませんが、あの人もメインとして出てきます。
あと、時間ができて前から気になってたリコリス・リコイルを一気見して、ドはまりした作者でした(全く関係ない報告)


ユジアリ編① 「都内婚前旅行」

「…そろそろか」

 

左手首の腕時計へと視線を落とし、俺はガードレールへと体重を預ける様にもたれかかっていた。

 

9月20日午前8時半過ぎ…ようやく残暑の名残りを感じなくなってきたこの頃、七分丈の黒い服と青のジーンズという恰好をした俺は、ある人物たちを待っていた。

 

待ち合わせは45分にしていたため、少し早く来すぎたのもあったが…まぁ、遅れると、この後のスケジュールに色々と支障をきたすため、それよりはいいだろう。

 

そんなことを考えていると、

 

「…お待たせ、フォン」

 

「ちょっと準備に手間取って…待ったかしら?」

 

「いや、そこまで待ってないし、俺が早く来ただけだから気にしないでくれ…それにしても、こっちからお願いしたこととはいえ、また凄いな…」

 

前に立っていたビル…海洋研究機構ラース六本木支部が入居している港区の一画にあるビルから出てきたのは三人…彼らを出迎えた俺は、挨拶をしてきてくれた二人のその恰好に、苦笑してしまう。

 

男の方は栗毛を黒毛へと染め…いや、ウィッグを変えたと表現する方が適切か?…四角いフレームの眼鏡を掛け、白い半袖に薄いブラウンのズボンという、どこにでもいそうな恰好をしていた。

 

一方で、女性の方は茶髪寄りの黒のロングヘアーで、深い青色のワンピースに白い鍔が広い帽子という、ちょっとしたお嬢様と間違われてもおかしくない清楚な恰好なわけで…

 

ちょっと見た目を変えただけで、自分が知っている彼らとは全く異なる印象を持ったこともあり、俺は衝撃を少し受けていた。

 

「音弥君がそんな反応をするってことは、上手くいったようね?」

 

「全然大丈夫だと思います。もしかして、凛子さんが…?」

 

「…比嘉君に任せたら、アフロを被らせようみたいなとんでもない案を出してきて、菊岡さんは二人に江戸時代みたいな恰好をさせようとするし…うちの男性陣のファッションセンスが壊滅的だったのは本当に頭を抱えたわ…一番の敵は無能な味方って言葉が何度も過ぎったわ」

 

(…うわぁ、ちょっと申し訳ないかも)

 

俺の反応からして問題ないと判断したもう一人の人物…神代凛子さんがやったと笑みを浮かべている一方で、滅茶苦茶疲れた様子をすぐに見せた凛子さんに、俺は心の中で謝罪した。俺から提案してお願いしたことで、いらん労働をさせたようだから…

 

「…まぁ、私のことは気にしないで。それじゃ、音弥君。二人のこと、お願いね」

 

「ええ、お任せ下さい。それじゃ、行くか」

 

「うん!」「ええ!」

 

疲れた様子から一転、手を振りながらそう二人を託されたことで、俺は彼ら…普段の恰好と全く異なるユージオとアリスを伴い、ビル街を歩いていく。

 

…さて、どうして二人がこんな格好をしているのか、そして、俺が二人を連れて今から何をしようとしているのか…それを説明するには、話を二週間前にまで遡らなければならない。

 

 

 

「…アリスとどうやって距離を詰めればいいか分からない?」

 

「う、うん…お恥ずかしいことに…」

 

9月6日のお昼頃…ある出来事を終えた後、俺はユージオから相談を持ち掛けられ、自宅のログハウスへと彼を招いていた。

 

席に着くや否や即座に本題を投げてきたユージオに、俺はなるほどな…という顔をしつつ、内心で頭を抱えていた。

 

(…お前もかぁぁぁ!?)

 

三日前にも同じような相談をされたこともあり、デジャビュを覚えざるを得ず、俺はその時のことを思い出していた。あの時も…ユージオと同じ深刻な表情をした彼女が前に座っていたのだ。

 

『その…ユージオとどういう風に距離を詰めたらいいか分からないのよ。何と言うか…私もユージオも子供じゃないし、そういう…ちょっと進んだ関係っていうのもありかなって…キスとかもそんなにできてないし…デートとかはALOとかで結構してるけど、宿の同じ部屋に泊まっているのに、手を出してこないってどういうことなのよ!?

私からアプローチするべきなの!?それとも、ユージオに全部任せるべきなの!?どうなのよ、フォン!?』

 

 

「…知るかぁぁぁ!?」

 

「うわぁ!ど、どうしたの、いきなり!?」

 

「…っ!わ、悪い…ちょっと色々あってな」

 

言ってる事までがほとんど同じというデジャビュに、俺は思わず彼女…アリスの相談を受けた時のように叫んでしまい、ユージオを驚かせてしまった。

 

流石のユージオも、パートナーの方からも俺にそんな相談がされているとは知らないでいるのだ。一応、口止めされているのもあって教えるわけにもいかないので、俺は咳ばらいをして話を戻す。

 

「まぁ、焦る必要はない…っていうのはありふれたアドバイスか。俺的には、お前たちはまだこっちの世界に来たばかりだし、生活に慣れてきてからでいいんじゃないかって思ってたんだが…そこまで考えるに至るまでの余裕が出てきたってところか」

 

「…お陰様でね。あっち…リアルワールドの方も、このALOでの生活も…馴染んできたって感じかな。フォンが強化してくれた武器や装備も凄く使いやすかったしね」

 

「それは何よりだ。まぁ、それをさっき俺とキリトで半壊させたわけだが…」

 

話が少し脱線したが、ユージオとアリスがそんなことを気にするようになったということは、それだけ二人に余裕が出てきたということなのだろう。

 

同じ立場のカナデは二人とは環境が違うというのもあるが、俺と付き合い出したという大きな出来事があったからな。余裕ができる前に、段階を10は超えてすっ飛ばしたようなものだから例外だとして…

 

ニュービーとしてALOを始めた二人だが、やはりアンダーワールドで培ってきた経験とその才能は見事に発揮されたわけで…早くも俺がオーダーメイドで武具を作成することになったわけだ。

カナデの方はもう少し掛かりそうだが、それも時間の問題だろう…で、もともとリズと相談していたのもあって、俺がアンダーワールド組の武具を受け持つことなったわけだ。

 

そして、初期の武具を、二人が持ってきた素材を元に改造強化をして…その試し斬りということで、俺とキリトが相手になったわけだが…まぁ、やってしまったわけだ。

 

「キリトはともかく…フォンの幻想剣スキルがあそこまで強力だとは思ってなかったよ」

 

「その…本当にゴメン。手加減している余裕がなくて、思わず全力でエンド・オブ・フォーチュンをぶっ放して…」

 

やらかしてたといっても、内容はありふれたものだ。

 

キリトとアリス、俺とユージオがそれぞれ半減決着モードで決闘をしたわけなのだが、俺とキリトがやらかしたのだ。

 

前置きとして語るなら、ユージオとアリスは俺たちが本気で闘う姿を見たことがほとんどなかったのがマズかった。

 

アンダーワールドだと、キリトが二刀流で闘っていたのはアドミニストレータやガブリエルの時だけ、俺も映現世の剣をほとんどメインにして闘っていて、幻想剣ソードスキルはそこまで使っていなかったわけで…

前者はほとんど見たメンバーがおらず、ユージオが辛うじてといったレベルであり、俺はそもそも闘い方が全く異なるのだ。

 

そんなわけで、二人からしてみれば、俺とキリトの本気がどういったものか気になったわけで…特に整合騎士時代、キリトを圧倒していたのもあって、ちょっと調子に乗ったアリスが挑発してしまったのだ。

 

「別にいいのよ?二刀流だろうと、またぶっとばしてあげるから」

 

その一言が…ヘビーゲーマーとしてのキリトの血を騒がせてしまい、挑発に簡単に乗ったキリトは大人気なく二刀流を解禁して…アリスをボコったわけだ。

 

いや、挑発したアリスも悪いとは思うのだが、アンダーワールドと違ってステータスが初期の相手に対して、大人気なく二刀流27連撃OSS〈ジ・イクリプス〉を繰り出したキリトは、本当に大人気ないと俺は呆れた顔でその結末を見届けたのだ。

 

で、流石にああはするまいと思っていた俺だったが、ユージオの方から是非とも幻想剣スキルを使ってほしいという嘆願があって、両手剣限定で、しかも、幻想剣ソードスキルを使えるのは一回だけという条件で闘ったわけだが…

 

…俺が想定していたよりも、ユージオの剣の腕が格段に上昇していて…本当は手加減して放とうとしていた幻想剣《両手剣》超重単発最上位ソードスキル〈エンド・オブ・フォーチュン〉を本気で決めワザとして放ってしまい…片手剣ごと直撃を受けたユージオはものの見事に吹き飛ばされたわけで…

 

せっかく卸したてたばかりの新武具はものの見事に半壊=修理必須となり、ボロボロとなった二人のジト目を受けた俺とキリトは、揃って頭を下げることになったのだ。

 

で、その謝罪も兼ねて、今、ユージオの相談に乗っているわけだ。

 

「まぁ、ぶっ壊したのは俺たちだし、修理費はこっち持ちでいいから…ともかく話を戻すぞ。アリスとの距離感だったよな?」

 

話が脱線し過ぎたのもあって、俺から軌道を修正して本題へと話を戻す。ユージオの方も真剣な表情になって、話をする体勢に戻った。

 

「とは言っても…俺からアドバイスすることなんて、なんといえばいいのか…俺やキリトたちと、お前らとじゃ色々と話が変わってくるからな」

 

「フォンとユウキはどういった感じで恋人として過ごしているんだい?」

 

「そうだな…そもそも、俺とユウキはあっちでも同棲しているからな。ある意味で、軽く結婚しているような感じだからな。というか、ユウキには我慢させていることも結構あるから…逆にキリトたちは周りの目を忘れていちゃつくから…逆に自然と付き合っているようなものだから、これといったアドバイスをし辛いだよな」

 

「つまりは…普段の君たちのようにしていればいい…そういうことかい?」

 

「まぁな…でも、お前は今の関係にジレンマを覚えているんだろう?さてと…どうしたもんかね」

 

こればっかりは当人同士の問題だからな…俺がどうこう言ってなんとかなるものではないのだ。しかし、親友が困っているのを放っておくのも忍びないわけで…

 

何かできることはないかと頭を悩ませ、椅子の前二脚を浮かせるようにして宙を見上げる。ユージオとアリス…二人の仲を進展させる方法を考えていると、

 

「…自信が…ないんだ」

 

「…ユージオ?」

 

ふとそう呟いたユージオの表情に影が差し、思考を引っ張り戻された俺は椅子を元の位置へと戻す。

 

「フォンは知ってるだろう…僕の家のこと…」

 

「…正確には覚えている、といった方が正しいんだろうけどな」

 

忘れるわけがない、忘れられるわけがなかった…だからこそ、俺とキリトとアリスは…安息日にはユージオを家から連れ出すようになったのだから。

 

開拓民であるユージオの家は…お世辞に言っても、あまりいい家ではなかった。そして、ユージオにも兄弟がいたが…その関係は酷かった。冷遇されていたと言えば、誰にもでも容易に理解できるだろう。

あの時…フラクトライトの記憶ロックをした状態で幼少期を過ごしていたテストダイブ時の記憶からして、それはユージオにとっても苦い記憶の一つなのだろう。

 

「…気にするな、って言うのは無理な話なんだろうな(確かに、心理的な話としてそういう負の感情を模倣してしまうみたいな事例は聞いたことはあるが…ユージオ的には避けられないことなんだろうな)」

 

一方で、アリスも似たような立場なんだよな…整合騎士としての記憶しか持っていなかった時には、そもそも家族のことを忘れていたわけだし…あとから聞いた話だと、ユージオと一緒にルーリッドに戻った時にも、色々とあったらしいからな。

 

そして、アリスもユージオの家庭のことを知っている…無意識の内に、そのことを気にして、互いに一歩を更に踏み出せなくなっているのかもしれないな。

 

(ようは二人の距離を詰めらせるような…意識させるようなことをさせればいいわけだよな。といっても、結婚はこいつらがALOを始めた途端にしちまったし……うん?結婚…)

 

そのワードが頭に浮かんだ時、俺はあることを思いついた…2,3日では難しいが、それ相応の時間と協力があれば、なんとかなるのではと即座に計算を立てる。

 

「…よし、ユージオ!俺にこの話を預けてくれないか?」

 

「えっ、それはいいけど…一体どうするつもりだい?」

 

「それはあとのお楽しみってな…まぁ、準備ができたら、お前とアリスにちゃんと教えるから、ちょっと時間をくれ」

 

あとはみんなに話を持ち掛けてからだと…とりあえずの構図を組み立て終え、俺はユージオへとそう告げる。そして、その日はお開きとなった。

 

 

 

…それで、俺は各方面へと相談と根回しをして、準備を始めたわけだ。まぁ、その間にカナデの一件やら、誕生日をサプライズで祝われたり、アスナとミトの一件とかが重なってバタバタしていたが…なんとか段取りがつき、今日この日を迎えることとなったわけだ。

 

「それにしても、フォン…じゃなかった。蓮からまさかこんな提案をされるとは思ってもなかったよ」

 

「こういう時でもないと、気軽にできないだろう?俺たちからしたら、ありふれた光景だが、お前たちからしたらまだまだ未開な世界だしな。なら、少なくとも観光名所のいくつかぐらいは行っておくべくじゃないかって思ってな」

 

「でも、驚いたわよね。昨夜に、凛子博士からサンエモンとシエモンを改造するって聞いた時にはどういうことかと思っていたけど、この為だったのね」

 

「まぁ、ある意味で有名人のお前らが都会の街に出るにはそうしてもらうしかなくてな。知り合いの俺が見て、一目じゃ判断つかないぐらいだから多分バレないだろう。ともかく…まずは俺からの祝いとして、婚前旅行を楽しんでくれよ」

 

ビル群を抜け、大通りへと出た俺たち…そんな最中、今回の計画を考えた俺にユージオとアリスからそれぞれの感想が飛んできていた。それに肩を竦めながら答え、俺はその言葉の中に出したワード…婚前旅行を少しばかり強調して言った。

 

そう、婚前旅行である!

 

今、思えば、こっち…現実世界に来てから、二人はなかなか自由な外出ができていなかった。二人はALOの方を先に慣れておきたいという考えだったが、逆に言えば、こっちのことを全く知らない二人からすれば、旅行の舞台としてはふさわしいと思ったのだ。

 

ということで、計画を考える最中、ラースの方々に相談を持ち掛けると、菊岡さんは「借りを返すいい機会だよ」といつもの胡散臭い笑みを浮かべ、比嘉さんは「またとんでもない話を持ってきたッスね」と苦笑いされ、凛子さんは「いいわね!二人にとっても、いい休暇になると思うわ」と一番賛同してくれた。

 

「でも、どうやって移動するんだい。地下鉄ってやつかい?」

 

「それも考えたんが…休日の地下鉄はかなり混雑してるからな。だから、足を頼んだんだ」

 

「…足?」

 

道路沿いに歩いていると、旅行プランを知らないユージオから移動手段について問われ、その方法を曖昧に答えたことで、アリスが首を傾げていると…

 

「…蓮!こっちよ」

 

「ああ。待たせて、ゴメン……母さん」

 

「「…えっ…えええぇぇ!?」」

 

停車中だった車の助手席の窓が開き、待っていてもらっていたその人がこっちへと手を振っていた。それに応えるように手を振り返し、いつもの呼び方をすると…うしろについてきた二人が見事に驚いた。

 

「その人たちが、カナデちゃんと同じアンダーワールドっていう世界の友達ね。初めまして、蓮の母親の音弥久美子です。運転席からでごめんなさいね」

 

「い、い、いえ!?こちらこそ、初めまして!ユージオと申します!フォン…じゃない、蓮には本当によくしてもらってます!」

 

「あ、アリス・ツーベルクです!今日は…お手数をお掛けしますが、宜しくお願いします!」

 

「あらあら…こちらこそお願いするわね。テレビでお顔は拝見したけど…そういう髪のカスタマイズもできるのね。二人とも顔いいし、ちょっとうちでモデルをやってもらうのも「母さん、思考が仕事モードになってるぞ」…あら、失敗」

 

(…あー、確かにフォンのお母さんっぽいや。時折、何かに没頭しかけるところとか、そっくりだ)

(…あー、確かにフォンのお母さんっぽいわね。時折、何かに没頭しかけるところとか、そっくりね)

 

そう…今日は都内のいくつかを巡るということで、電車よりも車の方がいいと思い、運転できる人にと相談を持ち掛けようとしたのだ。で、先日、ユウキとカナデとの同時に付き合っていることがバレてお説教を受けた際、同時に相談を母さんにしたのだ。

 

お説教から一転…相談の内容を聞いた母さんは好々爺の如く喜んで協力してくれることになったわけで、こうして今日運転手を引き受けてくれたのだ。

 

「あなた!実の母親を運転手替わりって…!?」

 

「し、しょうがないだろう…クラインにはちょっと頼めなかったし。母さんも丁度休みだから構わないってことだったから」

 

「そうよ~…私のことは全然気にしないでいいわよ」

 

「…うん、蓮のお母さんだね。こういうお節介焼きなところ」

 

「お褒めの言葉として受け取っておくよ、ユージオ」

 

もっとも、冷静になったアリスには詰められたが、母さんの言葉もあって、それ以上の言及はなかった。一方のユージオからは笑みと共にそんな評価が飛んできて、俺も満更でもない笑みを浮かべるのだった。

 

「…さてと、二人ともシートベルトは一応しておいてくれよ?それじゃ、母さん。早速最初の目的地に向かってくれ」

 

「りょーかい!」

 

挨拶も一通り終わったところで、ちょっと時間が迫っていたのもあり、俺たちは車に乗り込む。後部座席にアリス、助手席の後ろにはユージオが乗り、最後に助手席に乗った俺が二人にそう告げて、隣の母さんへと合図を送る。

 

年に似合わない反応をして…痛っ!

 

…左ひじの痛い一撃を喰らったところで、母さんは車を発進させ、目的地へと向かい始めたのだった。

 

 

 

「…大きいですね。たまに見かけることはありましたが、根元から見るとここまで大きく見えるのですね」

 

「昔は東京の観光名所といえば、この東京タワーだったのよ?ドラマでもこれをタイトルにしたものがあったもの」

 

「セントラル・カセドラルとどっちが大きいのかな…もっともあっちが真っ白だったのに対して、凄く派手な色合いだけど…」

 

「それは昼間障害標識っていう、一定の高さの建物に航空関係に影響を及ぼす建物は赤とインターナショナルオレンジに分類されてる黄赤、そして、白に塗り分けるように法律で定めれているからよ。

あと、今は観光名所としての顔が有名だけど、テレビやラジオの電波などを送信するアンテナとして機能しているのよ?高さ333メートルで、日本では今二番目に高い電波塔になるわね」

 

「「へぇ~…」」

 

「で、今から見に行くのがメインデッキといわれる150mのところと、250mのトップデッキだけどな」

 

「あら、おかえり、蓮。チケットは無事に受け取れた?」

 

チケット売り場に、先日予約してあったチケットを取りに行って、戻ってくると何やら盛り上がっていたので、三人の会話に混じった。どうやら母さんが二人に説明をしてくれていたようだ。

 

「東京タワー…前々からどういう建物かと思っていたのですが、別に偉い人がいるわけではないのですね?」

 

「大まかなことは母さんから聞いたか…まぁ、アドミニストレータのことを知ってれば、そう思うよな。俺も来るのは結構久々だけどな…小学校の頃に遠足で来たぐらいか」

 

「あんたは私たちに遠慮して、家族旅行とかもあんまり行きたがらなかったものね」

 

「へぇ~…ちょっと意外だね」

 

「……まぁ、俺も子供の頃はちょっと拗らせていたことがあったんだよ。ちなみに、ユージオ。多分、セントラル・カセドラルの方が大きいんじゃないか?」

 

アリスの問い掛けに苦笑しつつも俺はその気持ちが分かってしまう。馬鹿は高いところが好きという奴だろうか。

 

俺も久々に来たこともあってちょっと感慨深く見上げていると、とんでもないぶっこみが母さんから飛んできて、ユージオに意外な目を向けられた。過去の傷が軽く抉られた俺は、苦笑混じりにちょっと話を誤魔化した。

 

セントラル・カセドラルが100階建てで、一フロアの高さを5mとすると…おおよそ500mと推定していいだろうからな。

 

「ともかく、早速上ってみようぜ?」

 

チケットを三人に手渡し、俺たちは9時にオープンしたばかりで空いているタワーのエレベーターへと乗った。

 

 

「ユージオ、見て!街が見渡せるわ!」

 

「うん。あそこはこの前、凛子さんと一緒に行ったビルがある辺りだね…確か、品川だったっけ」

 

「ええ!ここからラースのビルも見えたりするのかしら!」

 

「ラースがある六本木は……あっちの西側の方だね。見に行こうか?」

 

 

「あそこまで盛り上がっているのを見ると、プランを考えた甲斐があったわね」

 

「そうだね。まぁ、ちょっとはしゃぎ過ぎて、この後が大丈夫かっていう心配もあるけどな」

 

150mのメインデッキを見学し、その後に当時の建設風景や建築前の土地などの資料が用意されたギャラリーを見て、今は250mのエリアへと俺たちは来ていた。

 

高度から東京の街並みを見降ろす二人…特に、アリスの方がテンションが上がりまくっているらしく、それに引っ張れるようにユージオがついていくような感じの二人を見て、母さんがこっそりと耳打ちしてきた。

 

「…東京の観光地って微妙に離れてんのが少なくないんだ…全部を回る時間はないし、夜はダメな上に、空いてるかどうかも考えるとな。まぁ、ラースの支部が六本木にあって、東京タワーが結構早い時間からやっていると分かって、まずはここに来たんだけど…正解だったみたいだな」

 

「あんなはしゃいでるしね…でも、本当にあれがロボットの身体なの?全然そうは思えないわね」

 

「そう感じるだろう?あれで多少の運動もできるらしいからな…まぁ、バッテリーの消費もその分激しくなるからあんまりしないようにって注意されてるみたいだけどな」

 

「…で、あっちの方はどうなの?」

 

「…あっちも9時から取り掛かるから、何の連絡もなければ問題ないと思うよ。そのために、俺がこっちにいるわけだし」

 

意味深な母さんの問い掛けに、俺はあっさりと答える。昨夜の時点で、俺が済ませないといけないことは全部終わらせてきたので、何も問題が起こらなければ大丈夫なはずだ。

 

「なら、いいけど。にしても、あんたがここまで世話を焼くなんて…アンダーワールドの幼馴染とは聞いたけど、ちょっと過保護なんじゃない?」

 

「…かもね」

 

今度は虎ノ門ヒルズ周辺を見て盛り上がっている二人を見て、そんな母さんの質問に俺は曖昧な態度で答え、そして、その続きを語った。

 

「あの二人にはさ…色々と背負わせているのもあるからさ。幼馴染というのもあるけど、大変なことをさせているっていう自覚があるからこそ、俺や和人…アリシゼーション計画に関わった俺たちは、二人には幸せになってほしいって思ってる部分があるんだよ。

…特に、ユージオとアリスは事情があって、一時期離れ離れになっていたことがあって…再会できたと思った次には、あの大戦があって…俺やユウキたちと違って、本来出来た筈のことができてないんだ。

それを少しでもできるように協力できればと思ってさ…まぁ、俺が記憶を封印していた時に、滅茶苦茶迷惑を掛けたから、それの恩返しっていうのもあるんだけどね」

 

今回の一連の計画を立てるに当たって、まず感じたのがそれだった。

 

ユージオとアリスの恋人としての期間はとても短い…しかも、戦時下でのプロポーズだったと聞いたので、尚更の出来事だっただろう。いくら両想いだったとはいえ、付き合い出したら、また話は変わるわけで…

 

ならば、こっちでその機会を設けてやればいいのではと思ったわけだ。ユージオもアリスも、どっちも変なところで奥手というか、ピュアというか…どっかの黒と紅白が似合うバカップルとその姿がダブって見えたのだ。

そんなこともあって、俺の相談を受けた凛子さんを始め、他の面々も俺の計画に賛同してくれたのだ。

 

「プッ…」

 

「母さん…?」

 

「あぁ、ゴメンゴメン…あんたは変わんないと思ってね。そういうところは良い意味で、あんたの長所よね…逆に、何でもやろうとして詰め込み過ぎるのは短所よね。昨日、今日のガイドのためにあらゆる情報を調べてたんでしょ?」

 

「それは母さんもだろう?さっきの解説…全く仕事に関連のないことを知ってるわけないよな。気合が入っているのはそっちもじゃないか」

 

「…バレた?あんたの親友とその彼女をガイドするんだから、多少は語れるようにしておかないとね…ウフフフ」

 

その一人である母さんもだが、俺の答えを聞いてどこか嬉しそうに笑っていた。どうやら、俺がちょっと無理をして準備をしたのはお見通しらしく、さっきの受け答えからして母さんも同じだと悟り、思わず互いに笑みが零れる。

 

俺はともかく、見た目は20代なのにもう40を過ぎてるのだから、無理はしないで…痛っ!?

 

…またしても、思っていることを読まれたらしく、今度は左脛を蹴られて思わず悲鳴を上げそうになって、なんとか呑み込んだ。そこまで考えていることが分かりやすいのだろうか「あんたは目に考えていることが出てるのよ」…三度読まれたことに、俺は心の中で白旗を挙げることしかできず、逃れるようにその場を離れた。

 

「ほらほら、二人とも。盛り上がるのはいいが、時間が限られてるんだから、そろそろ写真撮影するぞ~」

 

混雑回避のために、一フロアに滞在できる時間が限られている。このままずっとはしゃぎ回っていると、その時間を全部使い切ってしまいそうだったので、景色に目を取られっぱなしの二人へとそう声を掛け、俺は用意していたカメラを取り出す。

 

「それじゃあ…ここに二人して立ってくれ。ユージオ、もうちょっとアリスの横に…そうそう。それじゃ、撮るぞ…はい、チーズ!……オッケー。それじゃ、次はハートマークを手で作ってみようか?」

 

「「ちょ、フォン?!」」

 

ラース六本木支部がある方をバックに写真を撮ろうと…ちょっと照れて、少し離れた距離にいた二人をくっつけさせ、Ⅴサインをしている二人をカメラに収める。

 

そして、自然な流れでカップル写真を撮ろうとしたが、当然抗議の声が二人から上がってきたので、

 

「こらこら、ガイドの言うことはちゃんと聞かないといけないぞ?でないと、この婚前旅行はここで打ち切るぞ~」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

「…笑顔が硬いぞ、二人とも。記念の写真なんだから、ちゃんと笑ってくれよ」

 

「…あの強かさと腹黒さは誰に似たのかしらねぇ~」

 

反論など一つも聞かないと、ガイドの権限を容赦なく使い、二人を黙らせる。沈黙のまま、苦笑いを浮かべる二人は俺の指示通りに手でハートマークを作るしかなく…そんな様子を見ていた母さんがポツリとそう零していた。

 

…確実にあんただよ、と心の中で一応ツッコんでおいたが…

 

 

 

「「っ~~~~~~~~~~~~///!!」」

 

「いや~、いい写真が撮れてよかったなぁ」

 

その後も、何枚かポーズを指定して撮影していったのだが、途中から諦めた様子で指示に従っていたユージオとアリスが、車に乗って冷静になったことで恥ずかしさで顔を真っ赤にしていた。

 

そんな二人を見て見ないフリをして、俺はカメラからSDカードを一旦抜き、スマートフォンに装填する。そして、次なる目的地へと出発する前に、その場所を二人へと教えることにした。

 

「次の場所に行ったら着替えるからな。まぁ、二人とも見たことはあっても、着たことはないんじゃないか?」

 

「着替える…?礼服か何かにってこと?」

 

「いいや、日本の伝統的な服装…着物だよ。つまり、次の観光名所は浅草だ」

 

「「…浅草?」」

 

次なる目的地『浅草』…その名を二人が繰り返し呟くの同時に、母さんが車を発進させたのだった。

 

 




一体どこの作品に、ここまでオリ主の親族が出張ってくる作品があったことやら(苦笑)

まさかの運転手兼ガイドの蓮(フォン)の母親 音弥久美子さんが同行する形となりました(笑)みなさん、本名覚えてましたか?作者は完全に忘れてて、慌ててマザーズ・ロザリオ編を見返しました。

フォンの誕生日回でサプライズ登場したのは、実はこのキャラエピのためのお話でした。当初はクラインを運転手で考えていたのですが、ちょっと次のお話の都合上、クラインだと駄目になってしまったので…

そういうわけで、次回はユージオとアリスの和服デビュー回になる…のと同時に、トラブル回にもなるわけで…

その前に、年末年始の更新スケジュールについてお知らせです。
来週12/24(土)にユジアリ編②を、25(日)にユジアリ編③を投稿します。理由は、話の内容的に連投しないとネタバレしそうな展開だからです。なので、来週は土日二連続更新となりますので、お楽しみに!

そして、今年最後の更新は12/31(土)を予定しております。
もちろんお届けするのは…彼女がメインとなる新章前半『ホロウ・レトロスペクト』のプロローグを始めとしたお話となり、そちらを31日0時に、年明け1日(日)12時に続きの第1話を更新する予定です。

まずは、ユジアリ編をお楽しみ頂いた上で、新章の開幕にご期待頂ければと思います!

それでは、また!

キャラエピソード第2弾 どのキャラのお話が見たいでしょうか?

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