ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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さて、実はWoU編で二人をくっつけた時から、このお話はどっかで絶対に書きたいと思っていたものでした。

いつもの如く、フォンが企んでいた全貌が明らかとなるお話です!
まぁ、サプライズ誕生日回やらアスナ編やらでちょいちょい影は見せていたのですが…(笑)

それでは、ユジアリ編最終話をどうぞ!


ちなみにラストに関して、文句は受け付けませんので(真顔)


ユジアリ編③ 「最愛を君に誓う」

「…そういうわけで、二人には知られることなく祝ってやれないかと思ってさ」

 

事の発端はアリスとユージオからの相談だった…そして、思いついた計画を大まかではあるが、俺は自宅のログハウスにて集まってくれた一同に相談していた。

 

キリトを始めとしたいつもの面子に、今回の計画にどうしても外せない人たちが相談の輪の中にいて…

 

「僕の方は…ラースとしては特に問題はないよ。費用に関しても、こっちが受け持とう。負担は気にしないでくれたまえ」

 

菊岡さん…水妖精族アバターのクリスハイトが快く了承してくれた。海洋研究機構ラースを代表した彼と、そして、もう一人。

 

「私の方も賛成よ。むしろ、お礼を言わせてほしいくらいだわ。あの子たちには、仕事を抜きにしてもっと自然な態度でこっちの世界を知ってほしいと思っていたから」

 

もう一人の代表…凛子さんこと風妖精族アバターのリンコさんも前向きに賛同してくれた。ラースの協力が得られたなら、これほど心強いものはないだろう。

 

他の面々もユージオとアリスのためになら反対するわけもなく、喜んで協力すると言ってくれたところで、俺は各自にお願いしてもらいたいことを伝えていく。

 

「あとはこっちでの準備だな…リーファ、クライン。来賓の招待をお願いできるか。リーファはサクヤさんや彼女を通してアリシャさんに、クラインはユージーン将軍やSAO帰還者の知り合いなどに声を掛けてみてくれないか」

 

「任せて下さい!」「おうよ、俺に任せとけ!」

 

「カナデとシノン、ユイちゃんはアルゴさんたちと協力して、式場の確保を…できれば、NPCの神父とかも一緒の教会だと助かる…頼めるか?」

 

「うむ、任せておけい!」「了解よ」「分かりました!」

 

「アスナはケーキを始め、料理の準備を頼めるか?一応、出席者の数が確定してからになるが、それなりの量になるだろうから、こういうのが頼めるのはお前だけだ…任せていいか?」

 

「もちろん!最高のケーキを作ってみせるわ!」

 

「ユウキとエギルさんはアスナのサポートを。ユウキも料理スキルが結構上がってきたって言ってたから、多少の手伝いはできる筈だ。それと、スリーピングナイツの皆にも声を掛けてくれ」

 

「うん、分かった!」「了解だ」

 

「リズとシリカは式典を飾りつけるためのアイテムの確保を頼む。リズには装飾関係の作成を、シリカは花を中心としたアイテムを集めてもらえるか?」

 

「オッケー!」「分かりました!」

 

「それと、各自式典用の衣装も用意しておいてくれよ。多分持ってない面々の方が多いだろうし…二人の方は俺が用意するけど、流石に全員分のは無理があるからな。

今日が13日だから……決行は来週20日17時…少なくとも19日までには準備を整えたい。各自、かなりの強硬スケジュールになると思うが、ベストを尽くしてくれると嬉しい…頼む!」

 

メンバーにしてほしいこと・やってほしいことを告げたところで、快く応えてくれたのちに皆はすぐに動き出した。そして、

 

「…って、俺は何をしたらいいんだ?」

 

「そりゃもちろん…俺と一緒にやってもらいことがあるのさ、キリト。ある意味で、一番重要な役目をな」

 

唯一、何の役割も言われなかったことで残っていたキリトが眉を顰めるのに対し、俺は笑みと共にその役割を伝えると…もの凄い渋い顔をされた。まぁ、

 

「あいつらにとって、一番の贈り物をしたいだろう?」

 

という俺の誘い文句に、諦めたように賛同してくれたわけだが…

 

 

…そういうわけで、サプライズで逆に誕生日を祝われたり、ミトとデュエルしたり…色々なトラブルは重なったが、なんとか俺たちは9月20日を無事に迎えて…

 

「さてと…準備はいいか、母さん」

 

「もちろん、当然よ!」

 

ユージオとアリスを凛子さんへと託し、予約していたラース六本木分室の一画を借り、俺はこっそりと持参していたアミュスフィア二台をここでもログインできるように設定し終えた。

 

それを手渡された母さんと共に、PCチェアに体重を預けてアミュスフィアを頭部に装着する。

 

「フフッ…」

 

「…何だよ、変な笑い声を出して」

 

「いやね…まさかあんたとこんな感じで一緒にゲームをやるとは思ってもみなかったからね。ちょっと嬉しくなったのよ…」

 

「そりゃどうも…ともかく、早く行こうぜ。でないと、俺がアスナたちにマジで怒られる」

 

「はいはい…それじゃ…」

 

そんなことを言われて、恥ずかしくなった俺は照れ隠しを兼ねて話を元に戻した。それに釣られ、母さんもアミュスフィアをちゃんと被り…

 

「「…リンク・スタート!」」

 

そのいつもの常套文句によって、俺と母さんの意識はALOへと向かった。

 

 

 

「…えっと、キリト。ここは何?」

 

婚前旅行を急遽切り上げ、ラースへと帰ってきた僕たちだったけど…帰ってきた途端、凛子さんへとALOへとログインするように指示を受けた。

理由も聞けずじまいで、急かされる形でダイブした僕たちを待っていたのは、宿泊している宿屋の前にいたキリトだった。

 

そして、そんな彼に連れられて僕とアリスが訪れたのは…猫妖精族の領土の一画にある大きな教会だった。

 

どうしてこんな場所に連れて来たのかと、アリスも同じく思っているであろう疑問を僕が口にすると、キリトはかつてのように悪戯が成功したみたいな笑みを浮かべて、

 

「まぁ、見ての通りさ。そして、はっきりとしたその答えは、更にこれを見てもらえば分かるさ」

 

そう告げて、キリトは教会の横に隣接している大きなホールのような建物の扉を横にスライドするように開いて…

 

「飾り付け終わったぞ!あとは何が残ってる、フォン!」

 

「来賓を待たせてるから、そっちのフォローに回ってくれ、クライン!ミト、アスナに料理があとどれくらい掛かるか、確認してきてくれ!?リズ、セッティングは!」

 

「もうちょっと!シリカ、そこ持ってて!」

 

「は、はい!」

 

「フォン!お母さんが、メイクの時間もあるから、まだアリスたちが到着してないか確認してほしいって…!」

 

「えぇ!?さっきキリトが迎えに行ったから、もう来てても……って、キリト!?なんでこっちから入って来てんだ!?裏口から二人を通せって打ち合わせしてただろうがぁ!?さっさと閉めろ!」

 

「わ、悪い!?」

 

…見て思ったのは、「ここは戦場か?」という疑問だった。

 

さっきまで一緒だった筈のフォンが陣頭指揮を取り、慌てて何かの準備をしている最中ということは見て取れたが、次に疑問に思うのは一体何の準備をしているのかということになるわけで…

 

ユウキとの会話の最中、こっちに気付いた途端、怒鳴ったフォンに威圧されるように慌てて扉を閉じたキリト…そんな彼に僕とアリスの視線が集中する。

 

「あ、アハハハ…悪い。変なところを見せたな」

 

「えっと…もう一度聞くね、キリト。これは何なの?」

 

「…パーティだ」

 

「何の?」

 

「……フォンが企画したパーティだ」

 

「アリスが聞いたのはその内容だよ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

交互に尋ねた答えの行く末は黙秘だった。

 

それどころか、これまでも何度か見たことあるように、冷や汗を流しまくりの上に目線を合わせようとしないキリトに、どうしたものかとアリスと顔を見合わせていると、

 

「ここにいたのね、アリスちゃん。ユージオ君も」

 

「「えっ…?」」

 

そんな気まずい空気を中和するように背後から声を掛けられ、僕たちは振り返る。聞き覚えのある声だと思っていると、そこにいたのはこれまた見覚えのある風妖精族の女性が立っていて…

 

「…フォンの…お母さん…?」

 

「さっきぶりね。こっちだと、ミコっていう名前だからよろしくね。さてと、到着してすぐに申し訳ないけど、すぐに来てもらうわよ、アリスちゃん!」

 

「えっ、ちょ…どこにですか!?ち、力が強い…!」

 

「桐ヶ……キリト君も、少ししてからユージオ君を控室の方に連れていってちょうだい。フォン曰く、もうそっちの準備はできてるそうだから」

 

「は、はい…!分かりました!」

 

有無を言わさず、アリスを強引に連れていくフォンのお母さん…ミコさんは先を行きながら、そうキリトへと告げた。残された僕と彼との間に少し沈黙が漂い、

 

「と、とりあえず…ついてきてくれるか?説明は全部フォンがするから…」

 

「……分かったよ。でも、ちゃんと全部教えてもらうからね」

 

キリトから聞き出すのは不可能だと悟り、僕はおとなしく彼の案内に従って、その控室へと向かうのだった。

 

 

 

「で…一体何を企んでいるのさ?」

 

「企むとは…酷い言い草だな」

 

キリトに通された部屋は鏡や化粧台が備え付けられた少し大きめな個室だった。そのまま一人で待たされて10分ぐらいが経った頃、騒々しかった外野の音が静まったと思っていると、部屋に来客があった。

 

そう…この一件を企んであろう彼…悪友のフォンがやってきて、開口一番に放った僕の問い掛けに苦笑していた。

 

見ると、さっき指示出ししていた時と恰好が異なっていて、ネクタイに紺のスーツ…礼服に身を纏い、髪も少し纏めるように整えているかに思えた。

 

「まぁ、隠していたことは謝る。でも、正直に伝えても、多分遠慮されると思ったからな」

 

「…結局今から何をするんだい?」

 

「結婚式だ」

 

「…えっ…?」

 

あれだけ秘密裏にしていたことを、あっさりと答えられたこともあり、一瞬聞き間違いかと思って…いや、違う。聞いたことが本当かと思って、確かめるように問い直そうと…

 

「ゴメン、もう一回言ってくれる…?」

 

「結婚式だって」

 

「…誰の」

 

「お前とアリスの」

 

「そ、そっか………ってなるかぁぁぁ!?」

 

納得しかけたところで、思わずそんな声が出た。とりあえず、どういうことかと言葉よりも前に目で訴えかけると、フォンは肩を竦めて答えた。

 

「いや、この前の相談を受けて、強引に関係をどうこうするよりも、互いを意識させるイベントの方が遥かにいいと思ってな。何かしらのクエストをとも思ったが、結婚式の方がシンプルかなと…」

 

「で、でも…!あんなみんなに忙しそうに…なんていうか、申し訳ないって言うか…」

 

「まぁ、あれは俺が急遽予定を繰り上げて欲しいって無茶を言ったせいだけどな。こっちにダイブしてすぐに手伝いを求められたぐらいだったけど……それでも、俺はこの式だけは絶対にやりたいと思ったんだ」

 

「…フォン?」

 

笑みを浮かべながらも、その声色に真剣な色を含んだフォンの姿に、僕は息を呑む。それが…何かを悔やむようなものが混じっていたからだ。

 

「お前とアリスにはさ…苦労してきた分、ちゃんと幸せになってほしいんだよ。結婚ってさ、人によっては墓場だなんていう人もいるが、見方によっては墓場まで一緒になるという取り方もできるわけでさ…

あくまでも人生の通過点の一つ…夫婦のイベントの一つでしかないんだ。そこからちゃんと一緒にいられるかは二人次第…でも、お前とアリスなら大丈夫じゃないかって思うんだ。あの出来事を乗り越えたお前たちが…もう泣き虫ではなくなったお前とアリスなら、きっと大丈夫だってな。それに、いざとなったら俺たちがいるしな。

まぁ、結婚式をやろうと思ったのは、俺やキリトたちも結婚はシステム上してるけど、式は挙げなかったからな…俺たちがしなかったことを、是非とも二人に先にしてもらえたらって思って…そう皆に相談したら、全くの反対もなく賛成してくれたんだよ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「あと、今さら嫌だという意見は絶対に聞いてやらないからな。そのために、ALOの領主までをも巻き込んだんだからな。そして、その為の現実世界での…文字通りの婚前旅行だったわけだしな」

 

「君ってやつは……本当に敵には回したくないよ」

 

その本心と…わざと付け足したような冗談を聞いた僕は、それ以上文句を言うつもりがなくなってしまった。だが、次にフォンから出た言葉は意外なもので…

 

「ここまでがこの計画を立てた理由の説明な…で、ここからが友人として送る言葉だ」

 

「えっ…?」

 

「自分をもっと信じろ」

 

「っ…!?」

 

化粧台へと体重を預けるようにもたれかかったフォンの…こっちを見透かすような目とその言葉に、声が漏れる。

 

「ルーリッドを出て、修剣学院で過ごして、セントラル・カセドラルで幾多の激闘を繰り広げ、あの大戦を乗り越えて、お前は強くなった…けど、その根底にあるのは何も変わってないんだよ。

純粋な優しさ…氷の薔薇のように、見ていて儚く綺麗で…そして、砕けることがない優しさがお前にあるって…それがお前の一番の良いところだって俺は思ってる。

それをアドミニストレータに突け込まれたことがあるほどに、お前のその温かい優しさは…自分が辛いことを経験してきたこそできた強さだよ。それを人にしてはいけないって…アリスに向けてしまってはと不安になれるお前なら…きっと…」

 

…グッ…

 

「…大丈夫だって、自信を持て。今日みたいに…周りが見えなくなるぐらいに、アリスのために駆けつけられるお前なら、絶対に大丈夫だってな」

 

「…うん」

 

こっちへと歩み寄り、胸元へと優しく叩かれた右拳を受け…肩が軽くなったような気がして、僕は笑みを浮かべてその言葉に応えた。

 

「さてと…そろそろアリスの準備も終わるだろうから、こっちも準備するぞ?」

 

「…準備?」

 

「結婚式なんだ…花婿にはそれ相応の恰好をしないと締まらないだろう?」

 

そう言って、フォンがストレージから取り出したのは純白なスーツ…いや、それは…見たことがなくても、知っているもので…

 

「一応お前のサイズに合わせて多少のゆとりは持たせてるが、着てもらわないと最終調整ができないからな」

 

 

 

「彼が普段と変わりない…?」

 

ユージオとフォンがそんな話をする少し前…花嫁の控室にて、ドレスに着替え終わり、髪の毛をセットアップしてもらっていたアリスがふと零した不安に答えたのは、その髪を操るミコだった。

 

「ええ…何と言うか、今の関係に満足しているというのか…いえ、私も決して不満があるというわけではないのですが…」

 

「そうなの…それは確かにアリスちゃんも思うところがあるわよね」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「でもね、アリスちゃん…それはユージオ君も同じなんじゃないかしら?」

 

「…えっ?」

 

その言葉に、沈んでいたアリスの顔が浮上した…いきなり彼女が頭を動かしたにも関わらず、髪を操る手を止めずにミコはその先を話していく。

 

「ユージオ君もアリスちゃんのことが大事だからこそ、今の距離にちょっと甘えちゃってるじゃないのかしら。でも、それと同時に心の中でジレンマ…良くないとも思ってるじゃないかしら?」

 

「…そう、なんでしょうか?」

 

「だって、浅草でアリスちゃんがいなくなったって分かった時…彼、わき目も振らずにあなたを探しに行ったのよ?もしかしたら、自分も迷子になるかもしれないのに…そんなあなたのことを大事に想っている、あんな優しい子がその辺りのことを考えてないとは思えないわよ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…大事なのはそう思っているあなたたちがどうするかよ。恋人や夫婦なんて、究極的な言い方をすればあくまで敬称よ。法や歴史が作ってきた形…結局は当人たちがその道を作っていくことには変わりないんだから」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「そうやって迷って、考えて…彼に気持ちをぶつけてみたらいいじゃないの?彼なら…ユージオ君なら、きっと一緒に迷って考えて…その気持ちを受け止めれくれるわ。おばさん、こう見えて人を見る目だけは自信があるんだから、きっと大丈夫よ!

だから…そんな湿っぽい表情はもうやめましょう!折角、みんながあなたたちのためにこんな素敵なことを計画してくれたんだから!泣いていいのは、嬉しくてしょうがない時だけよ?」

 

「……はい!」

 

「いいお返事ね!はい、こっちも完了っと!」

 

ようやく明るい表情に戻ったアリスの答えに満足したミコも、計ったように髪の毛を纏め上げ…そして、

 

…コンコンコン!

 

こちらも計ったようにタイミングよく、扉をノックする音が響いた。

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ~~…なんとかなったぁぁぁ…!」

 

魂が抜けそうになるかと感じさせる溜息と疲労の声を上げるは、教会の右側…前から二番目の長椅子に腰を掛けているフォンだった。

 

朝から婚前旅行の計画と、急遽予定を繰り上げた披露宴兼結婚式のフォローを立て続けにした、今回の仕掛け人はようやく全ての役目を終えたことで肩の荷を下ろしていた。

 

「フォン、色々と動いてたもんね。ユージオの服とアリスのドレスの作成に、キリトと一緒にずっとあれの材料を探しに行ったり…」

 

「それ以外にも、他の面々の結果を確認したりなど…よく勉強の合間にやったものじゃのう。感心するわい」

 

「…でも、色々と省略したものもあったからな。婚前旅行の写真も含めてのデジタルアルバムショーとか、魔法を使った寸劇とか演出とか、友人代表の挨拶とかも…前倒ししたせいで時間調整のために削ったからな。

まぁ、あとは結婚の誓いして…披露宴でケーキ入刀と食事を楽しんでもらうだけ、だよな…(…の筈なのに…なんだ。何かとんでもないことを忘れているような…)」

 

両隣りに座っているユウキとカナデからも労いの声が肩に掛けられた手と共に出た。ここ最近の頑張りを間近で見ていただけに同情するのと同時に、削った演出のことを気にしている想い人の凝り性に溜息を吐いていた。

 

「でも、凄いよね。フォンのお母さん、ドレスにまで精通してるなんて…」

 

「だな…ユージオの方のタキシードはまだなんとかなったが、流石にウェディングドレスは未経験だったからな。母さんにアドバイスをもらって良かったよ。その分、妥協を許されなかったけど…」

 

「お主の凝り性はどうやら腹黒体質と一緒に母上から継がれたようじゃな」

 

「おい、カナデ…その言い方にはちょっと物申したい部分があるんだが」

 

声を潜めて、時間がくるのを待つ三人…その視線は、先にNPCの司祭が立つ前にいるユージオとその服であり、話題もタキシードやウェディングドレスへと移った。

 

そう…今回の新郎新婦の服装はフォンの手製ではあるのだが、ドレスに関してはファッションイラストレーターが本業の母ミコの助言を受けていたのだ…まぁ、その作成に至って音弥家としてのこだわり癖が出てしまい、制作期間が予想を超える結果になったという裏話があるのだが…

 

どこか興味深そうに笑うカナデの一言に、思わずフォンもジト目を向ける。そんな二人を諫めながら、ユウキは会場を見まわし、

 

「でも、これだけの人が来てくれるなんて…やっぱりいいなぁ…結婚式」

 

「おやおや…やっぱりユウキ君も憧れてるのかな?」

 

そんな感想を漏らしていると、前に座っていた水妖精族の男性が振り返り、逆に問い掛けていた。そんな命知らずの態度にフォンは溜め息を吐いて声を掛ける。

 

「クリスハイト…またユウキに睨まれますよ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「そうッスよ、菊さん…水を差されたって勢いで、睨まれてますよ!」

 

「…え~…そろそろおじさんのことを許してほしいんだが…」

 

親族代理(というよりも、フォンが一応気を遣っての配置にしたというのが最大の理由だが…)ということで、席の最前席から半身を振り返らせている男…クリスハイトと、比嘉の工匠妖精族アバター…ヒーガが自分に向けられていないとはいえ、軽く敵意が籠ったユウキの視線にビビっていた…まぁ、当の本人であるクリスハイトは軽く受け流していたが。

 

「まぁ、君に驚かされるのにも慣れてきたのはどうかと思うが…彼女の申し出には更に驚かされたね」

 

「…あの人にとって、アリスもユージオも…子供のようなものだからでしょう?だって…アンダーワールドとSTLは…茅場明彦が遺したものの一つなんですか」

 

「…ちなみに、僕がアリスと一緒にバージンロードを歩くっていう「ハハッ、くだらない冗談言ってると、はっ倒してからのHP全損させて式場からデス退場させますよ、菊岡?」…ゴメン、そんな雰囲気の君が言うと冗談に聞こえないんだけど…」

 

なんで平然とこの人はヘイトを買うような発言をするのか…そう思いつつも、例え冗談であっても、フォンは許すわけがないとばかりに、それなりの殺気を笑みと共に発してそう告げた。これには、流石のクリスハイトもヤバいと思ったらしく、大人しくなった。

 

…ちなみに、さっきのクリスハイトの冗談について横の二人…ユウキは当然として、カナデの方もちょっとキレていたのは余談だ。

まぁ、カナデにとってラースの面々には思うところがあるため、致し方ない部分はあるのだが…

 

そんなちょっとした話も出ながら一同が雑談をしていると、どうやらちょうどその時間になったらしく、NPC神父が顔を上げて…

 

…ゴーン!ゴーン!ゴーン!

 

大きな鐘の音が鳴り響き、多少の喧騒で賑わっていた構内が一斉に静まる。そして、神父の一言によって式の開始を告げる言葉の後に、入り口の扉が開かれ…

 

「「「「…おおぉ…」」」」

 

何人かの歓声が静かに響いた…それに関しては無理もないとフォンも思った。なぜなら…

 

開かれた扉の先にいたのは…純白にゴールドイエローのアクセントで構成されたウェディングドレスに身を包んだアリスが、リンコに連れられて立っていたのだから。

 

確かに美人の中でもかなり上のレベルの容姿ではあるが…ミコが施した化粧とドレスの効果もあって、フォンさえも思わず一瞬見惚れてしまった程に、花嫁姿のアリスは美しかった。

 

いつもなら、そんなフォンを咎める立場のユウキとカナデの二人さえも見惚れていることから、今のアリスがどれだけ綺麗なのかが分かるだろう。

 

そして、どうしてリンコがアリスと共にバージンロードを共に歩いているのかというと、実はこれはリンコから申し出られたことが理由だった。

 

式場を確保し(来賓として招いた猫妖精族領主のアリシャ・ルーが是非とも猫妖精族のホームでやってほしい、と式場を紹介してくれたのだ)、式をどういう流れにしようかと相談していた際、花嫁をリードする父親役はどうするのかという問題になったわけだ。

 

最初はフォンかキリトが友人として代わりにしようかという意見が上がっていたのだが、フォンがその件をラースの面々にも相談したところ、リンコが是非とも自分がやらせてほしいと願い出たのだ。

 

そして、現在…黒を基調とした和服によって身を包んだリンコに伴われ、薄白のベールを被ったアリスがゆっくりと歩き出した。

 

その動きにようやく現実へと意識を引っ張り戻された者から、祝いの拍手が起こり始めた。その祝福を受け止めるように、伏せているアリスは笑みを薄く浮かべ…ゆっくりと、ユージオが待つ壇上へと向かう。

 

「…綺麗」

 

「和服も案としてはあったんだけど、絶対にウェディングドレスにした方がいいって母さんに推されたからな…流石だよな」

 

ポツリと零れたユウキの感想に、フォンはドレス作成中のことが頭に思い浮かび、その説明と同時に、逆側の後ろ席にいる母親と…そして、休みが合ったことで参加している火妖精族アバターの父がいる方向を見ていた。

 

そんな中、ユージオの元へとアリスが辿り着き…リンコが離れてラースの二人がいる席へと向かうのと同時に、拍手が止んだ。

 

『新郎ユージオ…貴方は健やかなる時も、病める時も、豊かな時も、貧しき時も、新婦を愛し、慰め、命のある限り真心を尽くすことを誓いますか?』

 

「えっと……はい!命だけでなく、この魂を懸けて誓います!」

 

((((おおおぉぉぉ…!?))))

 

初めてのこと、かつ、予習していなかったことが良い意味で働いた…問い掛け以上の答えによって宣言したユージオの姿に、男性陣が心の中で感嘆の叫びを上げた!

 

…ちなみに、誓われた側のアリスは、顔を真っ赤にしていたが、嬉しさが勝って泣きそうになりつつも笑っていた。

 

『新婦アリス…貴方は健やかなる時も、病める時も、豊かな時も、貧しき時も、新郎を愛し、慰め、命のある限り真心を尽くすことを誓いますか?』

 

「…は、はい。私も…ユージオと同じく誓います」

 

「「「きゃあああああああああぁぁぁぁ…!!」」」

 

ユージオが言われているのを見ていたとはいえ、さっきの宣言のショックもあって、多少の恥ずかしさが出てしまったアリスだったが、それでもはっきりと誓ったことで、今度は何人かの女性陣が声に出して黄色い悲鳴を上げてしまった。

 

『では、指輪の交換を』

 

「「…えっ!?」」

 

だが、次にNPC神父からの言葉に、二人は揃ってその首を神父に向けて驚いた。段取りを聞いていなかったのもあって、そんなものを用意しているわけがなく…どうしたものかと二人が困っていると…

 

「アリス!」「ユージオ!」

 

「「…っ!」」

 

呼ばれて振り返った二人…すると、席から立ち上がったフォンとキリトが何かを投げ、とりあえず受け止めた二人がそれを確認すると…

 

「これ…!」「…指輪…!」

 

受け取ったのは小さな箱で…開くと、アリスの方にはコバルトブルーの氷と薔薇を連想させるような宝石の指輪が、ユージオの方には金木犀の花と剣を組み合わせたことで十字架を象ったトパーズ調の指輪が入っていて…

 

それが、幼馴染たちからの餞別なのだと理解したのは一瞬だった。

 

そう…フォンがキリトに共にやってもらったのは結婚指輪の材料集めだったのだ。

 

元となったのは、ユウキやカナデにも送った指輪と同材料の『神浄の霊結晶』だった。まだ数回分使える量が残っていたので、フォンはそれを使うことに躊躇はなかった。

 

そして、リングの方は新生アインクラッド第五層の深層から掻き集めた希少金属を合金・加工して作った代物で、これの材料集めにフォンとキリトが一徹して奔走したわけだ。遺品集めが有名な層だからこそ、以前にもやったことがあった二人が経験を活かしてそこで材料を集めたのだ。

 

手を振って、それを使ってくれと言わんばかりのフォンとキリトの反応に、ユージオとアリスは指輪を交換しようと…

 

「…アリス」

 

「ユージオ…?」

 

互いの薬指に交換し終えたところで、指輪に目を取られていたアリスが呼ばれて、顔を上げた。そこには、真剣に自分のことを見つめるユージオの顔がすぐ近くにあって…

 

「あの時、約束したように…例え一緒に地獄に堕ちることになっても、どれだけ苦難の道が待っていても…最後まで君の隣にいるから。君の人生と隣に僕はいるから……だから、もう一度宣言させてほしい…

 

…愛してるよ…この世の誰よりも、君のことが好きだ…アリス」

 

「っ~~~~~~!?ユー…んん!?」

 

更に顔を真っ赤にさせたアリスだが、その悲鳴も言葉も声にはならなかった。宣言と共に、ベールを取ったユージオによって、その唇が塞がれたからだ。

 

だが、最初は驚いていたアリスだったが、すぐさまそのキスを受け入れ…むしろ、もっとと言わんばかりにユージオの首元へと手を回し、彼の顔を更にちかづけようとした。

 

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!?!?」」」」」

「「「「「きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」」」」」

 

それと同時に、来賓全員のテンションが一気に爆発し、堂内は歓声でいっぱいになった。そんな中、一人苦笑いしている者がいて…

 

「時間が切羽詰まっていたとはいえ、やっぱり段取りぐらいは伝えておいた方がよかったか…?」

 

熱烈な告白&キスシーンを親友に見せつけられた、今回の一連の企画を立てたフォンは流れをぶっ壊されたことに苦笑しつつ、しかし、盛り上がりに水を差すことなく、拍手で新郎新婦を祝っていたのだった。

 

 

 

(…そうだよ…なんで、これを俺は失念していたんだ…!?)

 

ユージオの超胸熱の告白と、アリスとの情熱なキスシーンという脱線はあったが、その後は問題なく式は続いていった。

 

教会からホールの方へと会場を移し、アスナが用意してくれた料理がテーブルに並び、新郎新婦のケーキ入刀と簡単な乾杯の挨拶を俺がしたところで、立食式の結婚パーティが始まった。

 

そのままトラブルも起こらず、思うがままにパーティは続いていった。順番にユージオとアリスたちに声を掛けていって、人によっては先程のユージオの告白について未だに熱が冷めずに盛り上がっていたり、結婚願望を晒しながら血涙を流す大人もいたりなど、大変いい雰囲気のまま、時間が過ぎていった。

 

…だが、最後の最後で俺はとんでもないことを忘れていたことに、ようやく気付いたのだ。それは…ユイちゃんのさり気無い一言がきっかけだったわけで…

 

「ママ…結婚式と言えば、ブーケトスでラストを飾ると聞いたのですが、そのブーケを受け取った人が、次に結婚できるというのは本当なのですか?」

 

『…っ?!?!』

 

その言葉を皮切りに、式場の空気が一気に変わった。

 

特に、ユウキとアスナを始めとした嫁~ズの顔色が、決して祝いの場でしていいものではないものに変わっていた。

 

そして、それを見た俺とキリトの顔色が大変良くないものに変わったのは言わずもがなで…冒頭の台詞と共に俺は頭を抱えているわけだった!

 

「…おい、フォン。俺はこの式が始まって初めてお前のことを恨んでるぞ」

 

「悪い…完全にユージオたちのことしか頭になかって、この危険のことを失念してた。これ、誰が受け取っても、刀傷沙汰にしかならないよな?」

 

「…ワンチャン、ユウキかユイが受け取ればなんとかなるじゃ……ダメだ、ユイの場合だと、アスナに渡しそうだ…!?」

 

「…そ、そうだな(ユウキの場合もアウトなんだよ!?確実に、カナデが嫉妬するからな!)」

 

どうしたものかと思いつつも、男である俺たちはその結末を見守ることしかできず、どこか諦めたように語り合っていた。

 

カナデはそこまでノリノリで参加しようとはしていなかったが、もし自分の方に飛んできたらと、ブーケトスの準備をしているアリスとユージオの方を注視していた。

 

ちなみに、俺たちが直接取りに行くというタブーは犯せない…だって、空気を読めない云々の前に、確実に女性陣の怒りと殺意を買う結果しか見えないからだ。

 

つまり、誰がブーケを受け取ろうと、俺かキリトの精神が死ぬ可能性が大変高いという…とんでもない催しが眼前で起ころうとしていたのだ。

 

そして、その最悪のゲームの準備が完了してしまった。

 

NPCから花を受け取り、背を向けたアリス…飛んでくるブーケをキャッチしようと、女性陣が闘気と纏って前へと詰め寄る。

 

ユウキ、アスナ、リーファ、シノン、リズ、シリカ、サクヤさん、アリシャさん…8人の精鋭が、目を鋭くさせブーケを狙っていた。

 

もうどうにでもなれと諦めの境地のキリトと、その横で覚悟をある程度決め、せめて嫁~ズの誰かが受け止めてくれと心の底から願う俺が見守る中、アリスが声を上げた。

 

「それじゃあ……いきます!」

 

その一言と共に、後ろ向きにブーケがトスされ…その瞬間、その軌道を追うように女性陣の手が伸ばされた!

 

しかし、その獰猛さを嫌ったのか…誰の手か分からないが、ブーケが弾かれて更に宙を舞ったのだ。それを掴み取ろうとして、力んだ手によって何度か宙を舞い続けたブーケは…大きく軌道を変えたかと思うと…

 

「おっとと……おおぉ、ブーケゲットだぜ!」

 

無欲の勝利と言うべきなのだろうか…あれほど彼女が欲しいと言っていたその願いに応えるかのように、偶然にその落下地点にいた彼が咄嗟にキャッチして、喜びの声を上げていた。

 

それを手に入れたことに純粋にめでたいという喜びの感情で周りにそれを見せつけるように振り回す彼…クラインの姿がそこにあったが、俺とキリトはその先に起こる悲劇を想像し、思わず壁際にまで退避した。

 

…チャキン…

 

その予想が当たっているのを証明するように、嫌な金属音が複数その場に響いた。

 

それが剣を抜いた音だったのか、

矢を手にした音だったのか、

メイスを構えた音だったのか

 

…目にするのがあまりにも恐ろしく確認できなかったが、同時に宴会場の温度が二桁は下がったのは間違いなかったと思う。

 

『…クライ~ン(さ~ん)…』

 

「…えっ」

 

亡霊の声ってきっとこんな感じなんだろうと、現実逃避しながら俺はクラインに同情すると共に、最大の賛辞を心の中で送っていた。

ちなみに、キリトはいつの間にかユイちゃんを手元に招き寄せ、これから起こる惨劇を見せないように手で彼女の視線を隠していた。

 

新郎新婦のユージオとアリスも事態に気付いたようだが、祝われる側の彼らにできることなどあるわけがなく…

 

ユウキとアスナを筆頭に、各自愛用の武器を抜いた彼女たちの異変にクラインがようやく気付くも完全に手遅れだった。一歩後退ったクラインに、彼女たちが一歩詰め寄ったところで…

 

クラインが脱兎の如く逃げ出すのと、女性陣が駆け出したのは同時だった!?

 

『ソノブーケオイテケェェェェェェ!!!』

 

前言撤回しよう…亡霊ではなく、悪鬼の声だったと思う。決して女性が出していいものではないレベルのそれに、俺は…

 

「フォンさん…?なんで耳を塞ぐんですか?」

 

「ユイちゃんに聞かせるにはちょっと…いや、あまりにも早すぎるからかな…」

 

キリトに目を、そして、今度は俺に耳を塞がれたことに首を傾げるユイちゃんに、俺はそう答えることしかできなかった…こんなピュアな子に母やその友人たちのあんな姿を見せたり聞かせるわけにはいかないだろう。

 

「…女の執念とは怖いものじゃのう」

 

「本当にそれな…って、お前たちは行かなくよかったのか?」

 

会場の外へと逃げ、そして追いかけていった…クラインと女性陣が立てた埃が収まると、同じく少し離れた場所で退避していたカナデとミトがこっちへとやってきた。

 

ミトはそういう相手がいるのか分からないし、カナデもそういうタイプではないとは思っていたが、一応確認するように尋ねると、二人はそれぞれ肩を竦めた。

 

「別に私はそういう相手いないし…というか、アスナの圧に押されて参加するのが怖かったのよ。あれ、人を殺せる目をしてたわよ」

 

「攻略の鬼とか呼ばれてた副団長時代はあれに近い目をしてたぞ、あいつは…とにかく、アスナたちが冷静になったら頑張れ、キリト」

 

「…お前もな。ユウキの方が大変そうだし…ちょっとユージオたちの方に行ってくるよ」

 

「私も…ちょっと飲み物貰ってこようかな?」

 

ミトは予想通りの答えと、顔を青くしていた理由とを併せて返してきた…まぁ、SAO序盤のアスナと比べたら、確かにあれは怖いよな…

 

それを慰める(?)ことになりそうなキリトにエールを送ると、互いになと言わんばかりに返され、そのままユイちゃんを連れてユージオとアリスの方へと向かった。

 

それに合わせて、ミトも飲み物を取りにどこかへと行ってしまい、残されたのは俺とカナデだけになった。

 

「まぁ、最後以外は万事上手くいったのではないか?」

 

「…だな。はぁ~…明日から三連休だし、少しはゆっくりしたいもんだ」

 

「そうなると、明日とかは家で休むのはどうじゃ?」

 

「そうするかな…一日ゆったりするのもありか」

 

背伸びをして、そんなことをカナデと話していると、そろそろいい時間になっていることに気付いた。クラインたちもおそらく戻ってこないと思い、お開きにするべきだろう。

 

もう少ししたら、ここにいるみんなにそのことを告げるべきかと考えていると…

 

…ギュ…

 

「…カナデ?」

 

「別に結婚式なんぞ、お主は必ずしてくれるだろうと心配しておらぬが…ちゃんとわしやユウキも構ってくれぬと、クラインのようになるぞ?」

 

「…分かってるよ。明日は三人でゆっくりしようぜ」

 

服の端を掴まれ、動きが止まった視線の先には…ちょっとだけ顔を赤くしたカナデが目線を逸らしながら、そんな甘えを見せてくれたわけで…

 

ユウキを仲間外れにしないところが彼女らしいと思いつつ、全く笑えない冗談にちょっとだけ乾いた笑いを浮かべ、応えるように彼女の頭を撫でた。

 

…ともかく、明日の予定が決まったところで、俺はお開きにする旨を伝え、そして…ユージオとアリスにあることを伝えてから後片付けを始めた。

 

…ちなみに、クラインがどうなったかというと、一時間後に俺とキリトが救援に行くと、ギリギリではあるがまだ捕まらずに追いかけられており、逃亡先の迷宮区の中で、俺たちが仲裁に入ったことで命拾いしたのだった。

 

 

 

「…えっと…」「・・・・・・・・・・・・・」

 

結婚式を終えた夜…僕とアリスはとてもきまずい空気で隣り合って座っていた。互いの顔は真っ赤になっているのは間違いないだろう。

 

どうしてこうなったのかというと…

 

『この教会、新郎新婦が泊まれるようにもなってるから…雰囲気と場所はちゃんと設けてやったんだから、頑張れよ?』

 

結婚式の終わり際、とってもいい笑みをしてそう告げてきたフォンだったけど、今ではその笑顔に一発喰らわせてやりたい気分だった。

 

そういうわけで、僕とアリスは教会の奥に設置されていた…結構豪華なお部屋にいたわけで。服は備え付けの寝間着に着替えたものの、ベットに腰かけてから今の状態まで30分ほど経っていたんだけど…僕もアリスも何も言い出せずにいて。

 

「な、何か…飲み物でも取ってこようか…?」

 

あまりにも会話の糸口が思いつかず、ひとまず別のことをして考える時間を作るべく立ち上がろうと…

 

…グッ!

 

「うわぁ…!?」

 

掴まれるどころか、引っ張られるように背後に握力を感じ、そのまま僕はベッドに倒れ込んだ。そして、目を開けると…彼女の瞳と黄金の髪がその視界を埋め尽くしていた。

 

それが、彼女に唇を奪われたのだと理解するのにそう時間は掛からなかった。

 

「…アリス?」

 

「私だけを見て、ユージオ…」

 

「えっ…?」

 

「今日だけは…今日だからこそ…ううん、そうじゃない。今だからこそ、ちゃんとあなたに見て欲しいの。もう………待つのはいやよ」

 

「っ…!」

 

その言葉が…熱を孕み、潤んだ目を見て、僕はようやく悟った。

 

彼女も同じ気持ちで悩んで…そして、彼女を苦しめていたのだと…

 

「それとも…ユージオの心を動かせるほどの魅力が私には…ないかしら?」

 

「…そんなことは、絶対にないよ。でも、怖かったんだ…僕がアリスをどうにかしてしまうじゃないかって…一線を越えるのをどこかで恐れてたんだ」

 

「…ユージオならきっと大丈夫よ。あなたの傷に比べれば、きっと生易しいものだわ」

 

「なら、アリス…もう一度言わせてくれ。これからもずっと…僕の魂も身体も君と共にあるから、君の半分を…僕にくれないか?」

 

「…とっくにそのつもりよ。もう…返してなんてあげないんだから」

 

その言葉が引き金となったように、再び近づいてきたアリスの顔を迎えに行くようにしてその唇を重ね合う。

 

…そこから先の言葉は互いに不要だった…これまでの…いや、過去離れ離れった分を埋め合わせるように、僕らは求め合った。

 

 

 




最後の最後で締まらないのが、彼ららしいというか…

結婚式と聞いた時点で、ブーケトス=修羅場という連想ができていた読者の皆様は流石だと思います(黒笑)
まぁ、その犠牲はフォンでもキリトでもなく、まさかのクラインとなりましたが…ある意味で女性に求め追い掛けられるという願望が叶ったようで良かったんじゃないでしょうか(黒笑)

さてと、今回アリスが着たウェディングドレス…こちらはコード・レジスタで登場したものをイメージしてもらえればいいのですが、本作ではフォンと母による共同制作したものと設定させて頂きました(アスナ編④の冒頭で作っていたのが実はこれでした)
フォン以外のパーティ用の服装は10周年記念「エクスクロニクルin秋葉原UDX」のドレスコードを連想してもらえればと思います。フォンのもキリトのをちょっとカスタマイズ・カラーチェンジしたものなので。

で、ユージオとアリスへとそれぞれ言葉を送る立場として、フォンと母であるミコがその立ち位置となりました。ユージオに関してはまぁいいとして、やはり同じ女性であり、結婚している相手からでないとどうにも説得力がないのでは?…そういう考えから、フォンのお母さんに急遽参戦してもらうことになり、ドレスの共同制作からガイドとしてメインを張ってもらうことになりました。

そして、アリスを花婿のユージオの元へと連れていく役目を担った凛子博士…これは彼女でなければ務まらないと思っての選択でした(菊岡には悪いですが、またちょっと嫌な役を押し付けることに…)
本当はベルクーリが一番いいんでしょうけど、お話の都合上どうしても難しく断念した部分でした。

そういうわけで、長かったキャラエピ第一段も終わりを迎え……えっ、ラストのオチの続きはないのかって…?
………当分はないですね。書くとしても、多分ユウキのお話を二つ書いてからになるかと。まぁ、当面はそっちも…年明けに一個書くかもしれないレベルなので、今のところは皆様の想像で補って頂ければと思います。

気を取り直して…次回より、新章突入です!
ユウキとカナデも節々で少しずつ登場しますが、メインはSAO時代のフォンと、某トレジャーハンターの彼女となります!
WoU編で、フォンの過去と闇が垣間見えた今だからこそ…SAO時代のフォンを新たな視点で見ることができる、ホロウ・エリアの冒険がようやく明かされます!

是非とも、今年最後の日の更新にご期待下さい!



















???「おいおい…フォン坊の活躍ばっかりを期待するのは、ちょっと酷いんじゃないカ?」

…えっ、今の台詞って…?

キャラエピソード第2弾 どのキャラのお話が見たいでしょうか?

  • 某トレジャーハンターF
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  • シノン
  • シリカ
  • リズベット
  • ユイ
  • クライン
  • エギル
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