ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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外伝書き始めてから、ほぼ初めて挿入投稿使い出して四苦八苦するという(前話の投稿位置をミスったのはそれが理由でした)

さてと、外伝も本話から新規制作となります(つまりは、リメイク前は二話までしか書いてなかったという(苦笑))そんなわけで、新たなオリキャラが出ます!そして、意味深な会話も…

それでは、どうぞ!



第三話 「鼠と仕事」

…パリン!

 

「見事なもんだヨナ…」

 

一撃必殺…もしも言葉で表すというのならそれがふさわしいと…モンスターがポリゴンと変わるのを眺めながら、オイラはぼんやりと思っていた。

 

ただの居合術、しかし、それはソードスキルではなく、ただの個人技術であるにも関わらず、それと同等以上のスピードを持つ妙技を放ち終えたあいつは残身を取っていた。

 

「今ので百体目…これでこのモンスターのドロップ調査は完了だな?」

 

「…!そうダナ、お疲れさん」

 

パーティを組んでいるため、あいつ…シグが倒したモンスターのリザルト画面がオイラの方にも表示される。

 

『ソリタリティー・シャドウ』…赤茶色に染まった人影型のモンスターを討伐…というか、最前線の層であるこの57層の一角…ダンジョンである『記憶から消された屋敷』の散策にオイラたちは来ていた。

 

迷宮区の方は攻略組の面々が情報を集めてくれるが、こういった層のあらゆるところに点在するダンジョンは調査が行き渡らないことがある。しかし、いくつかのダンジョンには迷宮区ボス攻略に関する情報を持つNPCの依頼があったりする。

 

そういう情報のために攻略したり、そこに巣くいるモンスターの情報やドロップ率の調査をし、情報として売るのがオイラたち情報屋の商売の一つだったりする。

 

「レアものが4、普通のが67、下層でも確認できるのが167ってところカ…」

 

「俺の方はレアが1、初見のものが77、それ以外は180ってところだ」

 

「ふむふむ…これで、このダンジョンのモンスターのドロップ調査は完了ダナ」

 

さっきのモンスターが、このダンジョンで確認できる最後の種類だった。このダンジョンでポップするのは全部で5種類…それらのモンスターのドロップ率や攻撃モーションを探るべく、朝イチでボディガードを依頼したシグと共に来ていた、

 

ソロよりも二人以上のパーティの方が、人数が増えることによってドロップ率も物理的な意味で上がるため検証がしやすくなる。このゲーム…ソードアート・オンラインにLUCの要素は確認されていないのもあって、どうしても数字でその情報を明記する必要がある。

 

…といっても、確実なことは言えないため、情報屋として提供する際には実際の経験を基にした多少曖昧な表現にはなってしまうのだが。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…うん?何をしているんダ?」

 

そんなことを思いつつ、シグから得たドロップ情報も合わせて、各モンスターそれぞれのドロップ率を精査していると、黙ったままのシグが何かをしているのが見えた。

 

メニューを開いて操作するそれが何かと横から覗き込むと、一瞬怪訝そうな顔をされながらもシグは操作の手を止めずに口を開いた。

 

「…このダンジョンの死角となりそうな場所、奇襲を受けると危険な場所をマップにメモしているんだ」

 

「へぇ~…そこまでするのカ」

 

「まぁな。逆に最前線ではやらないのか?」

 

「やる奴もいるだろうが…お前のは細かいゾ?そこまでするのはちょっと…」

 

やりすぎだ、という言葉を呑み込んだオイラの言動に、シグは顔色を変えることなくマップデータに追記していく。

 

「後悔するよりもマシだろう、しなかった時にそうなるよりは…」

 

「それはそうだろうけど…」

 

「…終わったぞ、待たせて悪かったな。今日の依頼はこれで終わりだな?」

 

「えっ…ああ、そうダナ…」

 

「なら、さっさと街に戻るぞ。俺も色々と予定が詰まっているんでな」

 

「他のボディガードの仕事カ?」

 

「詮索はしない…契約を忘れたのか、アル姉?」

 

「ぐぅ……分かったヨ。オイラが悪かったから、その呼び方は止めてくれ」

 

冷たい目に比例した言動…いや、名前の呼び方にオイラは苦い顔をするしかない。依頼を受ける条件の一つである『プライベートに関する干渉はしない』を上げられては、こっちも強気には出られない。

 

なんとか主導権を握りたいと一時的なコンビを組んで早数日…未だにこのボディガードとして知られるシグのことを探れないでいた。

 

普遍を逸脱した抜刀術、非凡と言える戦闘技術…だが、その技術は攻めることに特化しているように見えて、本質は守ることに重きを置いている…それが、オイラから見たシグの印象だった。

 

相手を一撃で仕留めることで攻撃をさせる間を与えない、防御に挙動を集中させることで攻撃の手段を取らせない…シグの抜刀術はそれを可能とする速さを持っていた。

 

専門的なことはそこまで詳しくないが、刀の居合術はその速度が速ければ速いほどに、刀の面積が触れる時間が長くなるとか…つまりは速さに威力が比例するという認識を持っていればまず間違いはないだろう。

 

つまり、何が言いたいかというと…ここ数日コンビを組んで分かったこととして、シグは護衛対象に対しての配慮が完璧に近いものをしているといったことだった。

 

護衛との距離間、脅威への対処、周囲への警戒…どれを取っても、一流といって評価だろう。護衛をされる側であるオイラからすれば、全くすることがない程に優れたものだった。

 

(だからこそ分からない…どうして、お前みたいな奴がそんな目をしているんダ?)

 

最初は好奇心からの行動だったが、ここ数日一緒に行動をしていて、オイラの疑念は少し変わっていた。

 

何も分からないままではあるが、ボディガードとして先を行く背中を追いながら…さっきも見せた…どこか辛そうな目をしていたシグにそんな疑問を抱いていた。

 

それが、かつてのキー坊と重なって見えたのは…気のせいと思いたいのは、オイラの勝手な希望なのだろう。

 

 

 

(ようやく終わったか、全く。アルゴの依頼はいきなりのことが多すぎる…まぁ、依頼を受けてしまったからには、今さらそれを断るのもどうかと思うしな)

 

アルゴと別れ、シグは拠点の一つである第1層…ではなく、また別の拠点である第47層へと来ていた。

 

ボディガードの依頼を受けるのは第1層の『始まりの街』にある共有掲示板で受ける方式を取っているが、拠点に関しては複数の場所を用意していた。

 

早朝からというのもあって多少の疲労感は感じていたが、シグにとってはそこまで問題あるものではなかった。この程度で済んでいるのならまだ軽い方だったからだ。

 

首を鳴らしながら、シグは主街区の裏路地を歩いていく…今から向かうのは行きつけの店であり、拠点の一つ…そこに辿り着き、『OPEN』の看板を確認してから扉を開いた。

 

「いらっしゃいませ……君か、そろそろ来る頃だろうと思っていたよ」

 

「遅くなりました、いつもの奴を」

 

「はいよ」

 

扉を開いたことで、来客を知らせる鈴の音が鳴り、カウンターの向こうにいる人物が顔を上げてシグを出迎えた。

 

柔らかな笑みに穏やかな雰囲気を纏う初老の男性…丸眼鏡の奥に潜む灰色の目がシグを認識し、驚くことなく出迎えたその姿に、シグはカウンター席に腰掛けながら注文をした。

 

『羽休めの宿』…宿と銘打っているが、ここはクラシックな雰囲気と木漏れ日が差す老舗感が漂う喫茶店だった。カウンター席5つに、4人掛けのテーブル席が3つ…コーヒーを専門としたこの店は、拠点でありながらシグのお気に入りでもあった。

 

ちなみに、コーヒー以外のオススメはナポリタンだったりする。

 

そんな知る人ぞ知る隠れた名店であるこの店には、今いるのはシグとこの店のマスター…プレイヤーネーム『アジア』だけだった。

 

セットされたオールバックの白髪に、綺麗に整えられた白髭…接客業に相応しい見た目に蝶ネクタイに似合った給仕服…少し恰好が違えば完璧な仕事ができる執事長と言われてもおかしくないその容姿から、客からは『マスター』と呼ばれることが定番だった。

 

「はい、いつものオリジナルブレンド」

 

「どうも」

 

ここに来る度に頼んでいるのもあって、慣れた手つきで淹れたコーヒーをシグに差し出すマスター。それを受け取り、角砂糖を一つ入れてから口をつけるシグ。

 

「…ふぅ~、やっぱりマスターの入れる珈琲は旨いですね」

 

「ありがとう…それで、今日の依頼は面倒なものだったのかな?」

 

「そこまででは…と否定はできないですね。最前線である57層で仕事をしていましたから。そこまで疲れてるのが顔に出てます?」

 

「いやいや、表情には出てないさ。だが、君はブラックで飲むことが多いからね。砂糖を入れる時は大体やっかいなことがあった時かなと…」

 

「流石はマスター…脱帽ですよ。といっても、あの鼠の情報屋からの依頼ですよ」

 

「鼠…ああ、あのお嬢さんかい。君が先日までつき纏われていたという…」

 

苦笑を零すシグの答えに、話だけは聞いていたマスターは思い出したように反応を示す。ボディガードの契約前、アルゴにつき纏われていた時、この店を知られたくなかったシグは来店を控えていた。

 

一方で、常連でもあるシグが来なかったことを不思議がっていたマスターは、その経緯をボディガードの契約後に聞いて、笑いを堪え切れずに珍しくポーカーフェイスを崩したという話があるのだが…それはまた別の機会にするとしよう。

 

「だけど、偶然とはいえ、君が遭遇したのが同業者の中でも有名な『鼠のアルゴ』だったのは意外だったね」

 

「…それがこんな形で面倒なことになるとは想像もしてなかったですけどね」

 

「その割には、そこまで悪い気はしてないみたいだけど?」

 

「…まぁ、βテスト時代から、彼女の情報には俺も世話になってましたからね。そんな有名人を逆に助けることになったので、ちょっと複雑な感情を抱いているといったのが正直なところでしょうか」

 

コーヒーを飲みながら、そんな他愛もない話をしていくシグとマスター…それだけ見れば、店主と客の世間話にしか見えなかったが、本題はこれからだった。

 

「…で、依頼はどんなものですか?」

 

「………これだよ」

 

コーヒーを飲み終えたことで、話題を切り替えたシグの問い掛けに、マスターは穏やかだった雰囲気を変えずに…だが、少しばかり鋭くなった目をしてストレージから1枚の羊皮紙をオブジェクト化した。

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

羊皮紙の内容を読み込んでいくシグと、それを見守るマスター…沈黙が店内に漂う中、どちらも言葉を発することはなかった。

 

「……了解しました。すぐに情報を集めて動きます」

 

「……無理だけはしないように…と言っても、君は聞いてくれないか」

 

「そうですね…そうでなければ、こんなことはとっくに止めてますよ」

 

「…僕からすれば、本音の半分は止めてほしいというものだよ。だが、君のやることを止められないのが大人として情けないよ」

 

「…俺の意思でやっていることです。むしろ、マスターには共犯者になってもらっているだけ…ありがたいことですよ。それでは、行ってきます」

 

その言葉と共にお代をカウンターの上に置き、シグは席を立った。

 

その店を去ろうとする背中を見たマスターは、いつものポーカーフェイスを崩す…眉を顰めた理由は、少年が無理して笑っていたのが分かったからだ。

 

店を出る直前、シグは仮面を被り、黒のローブを纏う…目と鼻を隠すような銀色の仮面を被った少年はもう一つの仕事へと向かい出した。

 

 




あっ、基本的に外伝はシリアス7~8割でお届けしますので(真顔)

さらりと何かを思わせるような展開になってますが、その真相をお届けするのはもう少し先になるかと。
外伝のコンセプトはオリキャラとアルゴの話と、本編では書けなかったお話にも触れながらお届けしていくという二つの軸がありますので、もしかしたらあれも…みたいなエピソードに触れるかもしれませんので、お楽しみに(今のところ、ファントム・バレッド編の時系列(オリジナルエピソード含む)まではプロットを練ってます。マザロリは…どうしようかなといった段階です)

話が少しズレましたが、次回は回想を挟む形になります。
今回登場したオリキャラ含め、次回も更にオリキャラたちを登場させますので、解説に関しては次回に持ち越させて頂ければと…
そういうことで、次回はある意味でリベンジとも言える、はじまりの回想となります。

それでは、また。

キャラエピソード第2弾 どのキャラのお話が見たいでしょうか?

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