多分、平和回最後ですね…次回からシリアス一辺倒なので。
それでは、どうぞ!
「それでは、僭越ながら俺が乾杯の音頭を取らせてもらう。
遂に我らミスフィターズもギルドホームを構えることができた。みんなの頑張りには本当にかん「長ぇーよ。よし、かんぱーい!」「「「乾杯!!」」」…お、お前ら!?ちくしょー、いいところで…かんぱーい?!」
「あはは…乾杯です」
日が沈み、時間も夜に差し掛かろうとする中、二階建ての建物の下部分…普段は珈琲の香りが漂う老舗感ある喫茶店スペース…今は『閉店中』の札が掲げられたそこにて、6人は集っていた。
サブリーダー…いや、この世界に不在であるギルドリーダーの代理を務めるリョナスが、乾杯前に語ろうとするも、その内容から長くなることを嫌ったガデムとそれに乗った3人の音頭によってシャットアウトされた。
まさかのアジアにまで裏切られたことに、ショックを隠せずヤケクソ気味に乾杯をするリョナスと、その一連の動作に苦笑が隠せない少年も遅れて木製のジョッキを掲げた。
「それにしても、攻略ももうすぐ50層か…気が付けばもう半分かよぉ…」
「ようやく半分…ここからが正念場とも捉えられるがな」
「攻略組の活躍あって…というのもありますが、やっぱり血盟騎士団の活躍は凄いみたいですね」
「それだけじゃないよ。ソロではあるが、黒い装備をメインとしたプレイヤーもボス戦においていつも貢献しているという話もある。シグ君とも年が近いじゃないか?」
「話は僕もチラホラ程度には聞いてますけど…どっちかというと、双璧をなす夢幻の戦鬼っていうプレイヤーの方が有名かと…」
ちょうど一昨日に購入したギルドホームが位置する47層の迷宮区ボス討伐が完了したのもあり、ここ最近の攻略組の破竹の勢いを話題に、彼らは酒宴を開催していた。
ガデム、サマスが47層踏破にそれぞれの感想を述べる中、ロッドがトップギルドのことを持ち出したのに対し、アジアと少年はあるプレイヤーたちのことを持ち出し反応を示した。
その内容は、アジアはその人間性と掌握術から情報収集担当として、少年は年が近いプレイヤーたちの活躍譚にどこか恐れ多いといったものだった。
「だが、シグ君だって滅茶苦茶強いだろう?現に真っ向から打ち合えば、やり合えるのはアジアさんくらいだし」
「そんな…僕なんて全然ですよ。距離を詰められたら、流石にヤバいですって…」
「だが、奇襲など含めたなんでもありの闘いだと、シグ君の方に軍配が上がるだろうね。私の身のこなしも身に着けた今、居合術と合わさって私でも対応できないことがあるしね」
そんな謙虚な反応を示す少年に、リョナスが遠慮するなと言わんばかりに右肩をぶつけ、それに続き少年を褒めるアジア…顔に赤みが少し指しているが、基本的にSAOではアルコールによる酔いはないため、完全な場酔いによって少しテンションが上がっている次第だった。
「そうだぁ!そうだぁ!シグ坊の居合術は最強だからな!」
「はいはい、ガデムさん。ちょっと落ち着きましょうね…シグ君、おかわりいるかい?」
「いただきます」
悪酔いし出したガデムを諫めつつ、グラスが空になった少年におかわりとしてぶどうジュースを注いでいくロッド…流石はミスフィターズの縁の下の力持ち、見事な気配り上手だ。
その傍らで静かに3本目の赤ワインの封を切るサマスの姿があった…こちらはこちらで、ギルド最強の酒豪が独自かつ高速のペースで酒を楽しんでいた。まだ他の面子はジョッキ一杯分を空にした程度なのにだ…まぁ、少年は未成年なので先程ロッドに注いで貰ったジュースであり、逆に酒最弱のガデムはジョッキ一杯であの様になっているのだが。
「でも…本当にようやくって感じだよな」
「リョナスさん…?」
「……いや、3層に到達してミスフィターズを結成してから47層分登ってきたわけだが…ここまで誰も欠けずに来れてよかったなと思ってさ」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
突然ポツリと呟いたリョナスの言葉に代表してロッドが首を傾げながら問い掛けると、どこかホッとした様子でリョナスはその理由を口にしていた。
その言葉に、さっきまで大騒ぎをしていた面々も静かになる…リョナスが口にした真意に嫌という程同意したからだ。
ギルド『ミスフィターズ』…ギルド作成が可能となる第3層に到達した彼らが、真っ先に行ったのがそれだった。
今や攻略ギルドトップとして名高い『血盟騎士団』、それに続き攻略組の多くを保有する『Divine Dragons Alliance(通称:聖龍連合)』、25層で大規模被害を出して以降、下降の一途を辿りながらも未だに知名度は高い『アインクラッド解放軍』(…もっとも、今は攻略して以前の盛栄を取り戻そうとする強硬派と、以前のようにプレイヤーの為の活動をしようとする改革独立派に分かれ、分裂するのは時間の問題だと言われているのだが)…それらと比べると、知名度は圧倒的に劣るものの、彼ら『ミスフィターズ』は低・中層のプレイヤーにはかなり浸透しているレベルのものではあった。
彼ら『ミスフィターズ』の方針はシンプル…「困っていることに対処する万事屋」といったものだった。
素材集めの護衛だろうと、アイテム売買の仲介だろうと、パーティメンバーの代役だろうと、レベリングのお付き合いだろうと…低・中層をメインに活動するプレイヤーたちの手助けになろう…それが6人で相談して決めた方針だった。
もちろん、彼らだって最初からそのつもりでギルドを立ち上げたわけではない。どちらかといえば、最初はいつもMMOをプレイするにあたってギルドを作成していたので、その習慣に則ったものだった。
だが、βテスターである少年の教示と、各自が持つMMOの経験を活かし、徐々に実力をつけていった彼らはある時考え話し合うことになった。
『これから俺たちはどうすべきか?』
プレイヤーとしての実力が身に付き、レベルだけでなく技量も攻略組に引けをとらなくなった彼らだが、その力をどう使っていくかと思ったのが大きな理由だった。
アインクラッド解放隊(アインクラッド解放軍の初期の名称)や『ドラゴンナイツ・ブリゲード(聖龍連合の前身ギルド)』のように攻略組として参戦していくべきか…そういう意見も出たが、リョナスから出たのは意外な意見だった。
『下の層で生活しているプレイヤーたちの手助けをしないか?』
いきなりの提案に、アジアを除いた面々はその時目を丸くした。だが、リョナスが語った理由に全員が納得した。
自分たち5人は幸運にもβテスターである少年と一緒にいたことで、ここまで強くなれた…だが、他のプレイヤーはどうだろうか?確かに、他のβテスター…『鼠』の二つ名を持つプレイヤーが定期的に情報を発信してくれてはいるが、それを全員が活用できるかと言われるとまた話は別だった。
そして、攻略組の面々がそれに当たれるかと言われるとまた話は別だった。彼らは彼らで手が回らない部分が出てきてしまっていたのもまた事実だった。
だからこそ、万事屋ならぬ『なんでも屋』といった形で、彼らは動き出したのだ。少年から様々なことを教わった自分たちが、今度は誰かに手を貸していく番なのだと。『究極のお節介集団』…そう言われつつも、彼らの行動は比較的好意的に受け取られ、そのギルド名は徐々に有名となりつつあった。
「…何言ってんだよ、リーダー代理よぉ」
「…ガデム?」
「俺たちはまだまだこれからだろうが…そういう台詞を言うのは、現実世界に帰ってからにしやがれ。まぁ、帰ったら帰ったで奥さんやらリーダーにあれこれ話を聞かれそうだけどな」
「…確かに。ファインもだろうが、奥さんはもっと心配しているだろうしな」
「攻略を始めたばかりの時は、あんなに奥さんやら息子さんたちのことを懐かしんでいたのに、今はほとんど口にしてませんもんね」
「…お、お前ら!?ここぞとばかりに家族のことを持ってくるなよ…!」
ガデムの言葉に続き、サマスとロッドにまで揶揄われたリョナスの顔が軽く赤くなり、ヤケクソ気味にジョッキを被り、中を空にする。
「でも、確かに色々ありましたもんね…今はかなり落ち着いてますが、デスゲーム開始直後はとてもそんな感じではなかったですし…」
「余裕が出てきたとも言えるんだろうね…良くも悪くも、ね」
「…あー、あのクソッたれ集団のことですか…」
そんなリーダー代理の不貞腐れた態度を余所に、今のアインクラッドのことを語るロッドだが、それに応えたアジアの言葉に、ガデムは苦虫を噛み砕いたような顔をしていた。
「…また奴らと遭遇したんですか?」
「二日前にね。幸い、依頼人にも被害はなかったよ。シグ君が同行してくれたから、撃退した上に一人は牢獄送りにできたからね」
「それでも、6人で攻めてこられた時にはヒヤッとしましたけどね…対人慣れしている反面、レベル差があったのが不幸中の幸いでした」
先程までの明るい雰囲気とは打って変わり、『ミスフィッターズ』が最近接触する機会が増えてきた件の連中に、アジアと少年がまた遭遇したことを語る。
「オレンジギルド『笑う棺桶』…狙うのは攻略組だけでなく、遂には中・下層のプレイヤーにまで手をつけだしたか…」
「今月に入って三度目ですよね、護衛やらレベリングの同行依頼で圏外に出て遭遇するのは…」
「私たちが同行していないプレイヤーたちのことも考慮すると、襲われている件数はもっと多いかもしれないがな」
目下の敵…いや、ゲームクリアを目指す全プレイヤーにとってはある意味最大の脅威であり、最悪の敵でもあるオレンジプレイヤー…その中でも、ギルドという形で集まったPK集団『笑う棺桶』の話題にリョナス、ロッド、サマスは嫌な感じを覚えていた。
「少し前に、攻略組の中にオレンジプレイヤーの仲間がいるって話題になってましたよね?」
「ああ、アインクラッド解放軍の中にね。それが発覚し、代わりに台頭し出したのが『笑う棺桶』とは…むしろ狙っていたかのようなタイミングな気もするけどね…」
「ゲームに慣れ出したタイミングを狙ってきた…そういうことですか?」
「…私の推測だけどね。それは『笑う棺桶』だけじゃない。このゲームに慣れてきたことによる心の余裕というのは、そういう悪い方向にも働くことがあるってことさ」
少年の言葉に、色々なプレイヤーとやりとりしているアジアが事のいきさつを簡単に証明する。その含みのある説明にロッドが疑問を口にすると、アジアが推測を交えた解説を告げると、一同に軽くはない空気が漂っていた。
「…止めましょう、折角の宴なのに酒がマズくなりますぜ」
「そうだね…今は置いておいて、またミーティングの時にでも話すとしよう」
「よーし、もう一度乾杯だぁ!かんぱーい!!」
「リョナスさん、完全に酔ってますね…アルコール効果ないのに、場に影響されやすいというか…」
暗い話を察し、ぶっきらぼうに告げたガデムに乗っかり、アジアも自ら切り出した話をそれ以上語るのを止めた。一方で、意識していないにも関わらず空気を戻そうと音頭を再び取るリョナス…が、中身が空っぽのジョッキを掲げるその姿に、懐から水を用意しながらロッドはどこか呆れていた。
…念を押すようだが、SAOの酒にアルコール成分はないので、完全なる場酔いである。
「…でも、ここまで来れたのはやっぱりシグ坊のおかげだよなぁ」
「えっ…?」
話題の切り替えを狙ったのか、ふとガデムから自分のことを話に出された少年は思わず硬直した。
「ですねぇ~…βテスターとはいえ、MMO初心者とは思えない強さですもんね。むしろ、これまでよくファインさんが誘わなかったと思うぐらいですよ」
「…暦年の私たちが脱帽レベルのものだからな」
「そ、そんなことはないですよ!?ちょっと刀が上手くハマっただけで、皆さんが褒めてくださるようなものは何も…」
「謙遜することはないよ。私を真似てとはいえ、密偵から情報収集までこなしてくれているのだから、君は本当によくやってくれていると思うよ」
「あ、アジアさんまで…勘弁してくださいよぉ…!」
ガデムに続き、ロッドやサマスからも称賛され、一人称が崩れるほどに動揺していた少年に、アジアまでものお褒めが重なり、困り果ててしまっていた。
「だけど、居合術は本当に凄いと思うよ。あの速度だと、中距離とかも関係なくなるし…遠距離をメインとしていた身としては、本当に相手にしたくないぐらいだからね」
「別にそういう運動もしてきたことなかったんだろう?そうなると、眠っていた才能が目覚めたって奴じゃないのか?」
「才能だなんて…そういうのじゃないですよ。僕みたいなのなんてきっとゴロゴロしてますって」
「そういう謙虚さは誰に似たんだろうな…少なくとも、ファインでないことは確かだなぁ、うん」
まだまだ止まないロッドとガデムの賞賛に、ようやく落ち着きを取り戻した少年はなんとか受け止めることができるようになっていた。その様を見て、ガデムがそんな評価を零していたが。
「…まぁ、父さんとは結構違うって言われますね。βテスト時代も一日置きに交代してプレイしていたんですが、偶にプレイの仕方が違い過ぎるって言われたことありましたし」
「ファインさんは両手剣での防御寄りのカウンタータイプだったからな。それは言われてもしょうがないか…」
「シグ君は隙を見出しての一撃必殺型だからね…隙を見せることができない相手からすると、プレッシャーを与えられるのはまたキツイだろうけどね」
父親の話題からβテストの時を思い出し、その話をする少年に、以前一緒にプレイしていたMMOでのことを思い出したサマスが納得し、対する評価をアジアが述べるのだが、
「そこに暗器の使いを直伝してくれたおかげで、さらに脅威度が増しましたけどね…この前の模擬デュエル、それで俺負けましたし…」
「さぁさぁ、リョナス君…まだお酒が足りないじゃないかい?」
一方で、少し酔いが冷めた(というか、落ち着いた)リョナスが恨めし気に少年…ではなく、アジアのことを睨みながらそんな恨み言を呟いていた。
時折、実力の確認と対人戦への特訓ということで、ギルドメンバー内で交流戦ならぬ模擬デュエルを行うことがあるのだが、直近でやった模擬戦で少年と対峙したリョナスは見事にパーフェクト負けを決したのだ。
その理由が、居合術を警戒して少年の動きから目を離さないようにしていたのだが、デュエル開始と同時に腰に差していた刀を…なんと鞘ごと突き出すように抜き、その勢いで刀を打ち放つという妙技を繰り出してきたわけで…
なんとか突き放たれた刀には反応できたものの、居合術を得意とする少年の接近を許してしまい、そのまま手首に仕込んでいた暗器を首元に突き付けられ、降伏するしかなかったのだ。
…そして、弟子の成長ぶりを見たその技を教えた当の本人は、大変嬉しそうにその流れを見ていたわけで…
その犯人たるアジアは誤魔化すようにリョナスのジョッキに酒を注ぎ、またしても酔わせようとしていた。
「あれを見た時は正直驚いた…まるで漫画のような技だったからな」
「理論は分かってもできないですからね、あれ…多分、シグ君くらいに刀の使い方に長けないとまず無理なんじゃないんですかね」
「俺はシグ坊だったら、斬撃をほぼ同時に九つ放てても驚きはしない気がしてるぜ!」
「ガデムさん!人を抜刀斎みたいに言わないでください!?」
当時、その一連を静観していたサマスとロッドがその時のことを思い出し、前者は驚きを、後者は苦笑い交じりのコメントを返していた。一方で、少年ならもっと凄いことができるのではと期待するガデムに、父親に勧められて読んだ漫画の主人公を思い出した少年は抗議の声を上げるのだった。
「…なぁ、シグ君」
「…?はい、どうかしましたか、リョナスさん?」
「やっぱり攻略組に参加する気はないのか?」
「…えっ…」
突然の問い掛けにまた少年は硬直せざるを得なかった。
尋ねたリョナスだけでなく、他のメンバーも真剣な目で少年のことを見ており、その問いがリョナス個人ではなく、ギルドメンバー全員のものであることを遅れながら理解したところで、リョナスが理由を告げる。
「こうしてギルドハウスを買えるぐらいに俺たちも強くなった。それも、君のお陰だと思ってる…けど、逆に君のことを俺たちが縛っているんじゃないかって思ってたんだ。
君の実力は…はっきり言えば、俺たちとは一線を画していると思う。それはアジアさんと相談して判断した…もしも俺たちのことを気にして、足並みを合わせようとしてくれているのなら、それは君にとっても俺たちにとってもプラスにならないと思ってさ。
…ここまで一緒にやってきてくれたからこそ…いや、遅すぎたくらいか。もしも、君がその気があるのなら……俺たちはシグ君の気持ちを尊重したい」
「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」
いきなりのことに少年はすぐに答えることができない…だが、五人は焦ることなく、少年が答えるのを待っていた。
ようやくリョナスの…仲間の気遣いを受け止め終えたことで、落ち着いた少年は…本心を言葉にした。
「…ありがとうございます。そう言って頂けるのは…すごい、有難いことなんだと思います。でも……俺は攻略組に入りたいとか、そういうのはとくになくって…なんていうか、みなさんと一緒に……いえ、誰かの助けになりたいっていうみなさんの考えから動いているこのギルドにいたいんです」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
「俺…実は分からなかったんです。βテスターの自分に何ができるか…っていうか、本当に俺なんかがデスゲームを生き残れるかなって。でも、みなさんを見てて…命が懸かっているのに、誰かの為に動けるみなさんを見てて…俺のできることをしていく内に、なんとなく分かった気がしたんです…俺がやりたいこと、できることをすればいいんだって…
そりゃ、攻略組も凄いとは思います。このゲームをクリアすることでしか現実世界には戻れない…その為に、最も危険な最前線で戦ってるんですから。でも…それでも、手を伸ばせないところがある、全部を助けることなんてできない…
だったら、俺がそのできないところをすればいいんだって…そういうことを自発的にしようって言ってくださったこのギルドが、俺は好きです、大好きなんです!
…だから、むしろこっちからお願いさせてください……俺はこのギルドにいたい。みなさんと…一緒に誰かの役に立ちたいんです」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
包み隠すことない本心…述べていく内に口上も少しずつ強くなっていき、言い終えたところで、自分が思ってるよりも勢いよく発言していたことに気づいた少年は恥ずかしくなり、
「え、えっとですね…!今のはつい思ったことをそのままに言っただけで、特に他意があったわけじゃ「「「「…はぁ~~~~~~」」」」…み、みなさん…?」
その最中、疲れたような溜息を吐き突っ伏した面々を見て、少年は首を傾げることになる。どういうことかと思っていると、唯一普通にしていたアジアがその訳を語りだす。
「みんな、君が無理をしているじゃないかと心配していたんだよ。けど、返ってきた答えに安堵…というか、それ以上に物凄い答えが返ってきたことに安堵しながら恥ずかしさで顔を上げられないんだよ」
「…す、すみません。でも、それが僕の本心なので…」
「気にすることはないよ…まぁ、おじさんである我々には結構くるものがあっただけだからね」
「「「「誰がおじさんだぁ(ですか)!?」」」」
余計な一言を付け加えたアジアに、なんとか復活した四人が抗議の声を上げる。そんな中、頭を掻きながらリョナスが口を開く。
「…だけど、シグ君の気持ちはよく分かった。そこまで言ってくれるのなら、これ以上、俺たちがどうこう言うのはお門違いだよな…これからも…まぁ、年上ばっかりだが、一緒に頑張ろう」
「まぁ、俺はシグ坊は絶対に残ってくれると信じてたけどな。リョナスが心配しすぎなんだよ」
「…そういうガデムが一番心配していたがな」
「サマスさんは冷静ですねぇ~…まぁ、僕もシグ君の口から聞くまでちょっと心配だったんですけど…」
「まぁまぁ…私としては、シグ君にはまだまだ教えたいこともあったし、別に攻略組に参加することになっても、今生の別れになるわけじゃないだろう?みなが過敏になりすぎいるんだよ」
「そういうことを言えるのは、年の功があるアジアさんだけですって」
リョナス、ガデム、サマス、ロッド、アジアの順に少年の本心を聞けたことに関する安堵おの言葉を述べ、そして、最後にまたリョナスへと戻ってきたことで、全員の視線が彼に集まる。
「ともかくだ…ひとまずギルドの一目標としていたホームを買えたことだし、これからはここを拠点にもっと精力的に活動していこうと思う!
みんなも無理のない範囲で、そして、各個人がやりたいと思うことを我慢せずに頑張ってほしい!
今日は無礼講だ!俺たちの戦いはまだまだ始まったばかりなんだし「長いので、省略。カンパーイ」「「「「乾杯!!」」」」…ちくしょー、なんとなく読めてたよ!?」
二度目の音頭までもが長くなりそうだったので、今度はサマスが遮り、今度は少年までもが加担した裏切りに合い、なんとなく自覚はあったリョナスが悔しがる…そんなお約束のパターンで宴会を再開しようと…
「おっと、そうだった。やばいやばい、忘れるところだった…シグ君、ほらよ」
「えっ…わっとと…!これは……?」
その前に、忘れそうになっていたことを思いだしたリョナスが末席にいる少年へと何かを投げた。緩い放物線を描き飛来したそれを受け止めた少年が中身を尋ねると…
「攻略組にもし行くって言ってたら、選別として渡そうと思っていたんだが…どっちかって言うと、これからも一緒に活動してくれるっていうことに対しての品かな。この前、偶然ドロップしたんだよ」
「…首飾りの装飾アイテムですか。って、これ…結構破格な性能じゃないですか?!」
「レアドロップって奴なんだろうな。まぁ、遊撃を主に担当してもらうシグ君に持っていてもらうのが一番かなと思ってな」
「……分かりました。では、お言葉に甘えて頂きます」
箱を開くと、そこには首飾りが収められており、その性能を確認した少年が驚きの目を向けるも、一同は気にするなと言わんばかりの反応をしていた。
さっきのやりとりかして、これも既に自分を除くメンバーの中で話し合いが終わっていたのだろう。ならば、その好意を有難く受け取ろうと思い、少年は首飾りをそのまま受け取ることにした。
「さぁ~て!今度こそ真面目な話は終わりだ!今日は朝まで飲むぞぉ!」
「「「「「おおぉ!!」」」」」
そんなリョナスの言葉を皮切りに、一同は宴会を再開するのだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
人気のない『羽休めの宿』の1階喫茶店スペース…まだ閉店時間でもないのに限らず、既に『閉店中』の看板が下げられたそこには、明かりを点けることなく、写真立てに入ったそれを見つめるマスターの姿があった。
いつぞやシグが見ていたのと同じ『ミスフィッターズ』の集合写真…このギルドホームであった場所を購入した日に撮った写真データだが、かつての仲間たちを見る目は懐かしみと…そして、後悔が少し混じった色を映していた。
…カラカラン…
「…いらっしゃい、というのは少し違うかな。君からメッセージが来た時には少し驚いたが、もしかしたらこれは必然だったのかもしれないね」
声色を変えず、更には閉店中にも関わらず来訪してきた人物へと振り返ることもせず、カウンター越しにそう告げたのは、マスターが訪れてきた人物の正体と目的を知っていたからだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
マスターの言葉に反応を示すことはなく、しかし、その目で彼女の真意を理解するには十分だった。
現状を表すかのような大雨の中、碌に傘や雨具などを身につけずに来たせいか、いつも被っているローブは水をこれもかと吸い、零れだしたそれが店のフローリングを濡らすようにしたり落ちていた。
「…シグの全てを知りたい。あいつに何があったのか…どうして、あいつがああなっちまったのか……全部を…」
「それを聞いたところで、君はどうするつもりなんだい……鼠のアルゴさん」
「…オイラは 」
そこで、ようやく来訪者…いつもの口調を捨てた彼女の真剣な問い掛けを聞いたマスターが、彼女の目を見た。そして、問い掛ける…まる彼女の意思を確かめるように…
それに対し、彼女が答えた言葉は……マスターがどこか期待していたものだった。
「………そうかい。なら、君には話すことにしよう。どうして、『仮面の狩人』なるものが生まれることになったのかを…」
雨音や雷が鳴り響く中、マスターは過去の更に先の話をし始めるのだった。
時系列的にはギリギリ辻褄あってる筈…!
50層攻略前なので、キリトより(25層の一件で)フォンの二つ名の方が浸透している感じです。
そんな与太話はともかく、ラストのマスターとアルゴの話は、少し未来の時系列に位置するものであり、後にお届けすることになる過去編③に繋がるものとなります。
ということで、次回は前々よりお知らせしていたように転換点となる大真面目なお話をお届けすることになります。
一話で終わればいいのですが、内容的に終わらなそうというか、二話に分けた方がスッキリしそうな気もしてならないわけで…とりあえず書いてみてから判断しようと思っております。
それでは、また!
キャラエピソード第2弾 どのキャラのお話が見たいでしょうか?
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某トレジャーハンターF
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リーファ
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シリカ
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リズベット
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ユイ
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クライン
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エギル