1月から頑張ると言っておきながら、この体たらく…予想の3倍以上に忙しすぎて、帰ったら速攻で死ぬ勢いで倒れ寝ていた作者です(苦笑)
そんなわけで、久々の更新で、外伝を少し深堀していく予定です!本編再開は3月からですので、もう少しお待ちを!(一気に3月で更新していけれればと思ってます)
ということで、外伝もアインクラッド編は折り返しです!
前回・前々回にてシグの正体と過去が判明したところで、お話はその後の続きとなります。事態のおおまかな部分を知ったアルゴがどう動くのか…そして、まさかのバトル回となります!その中身は…
それでは、どうぞ!
『謎の通り魔、再び現る!』
「…くそっ」
マスターからシグの真実を聞いて1週間…新聞の二面を目にしたアルゴは、思わずそんな悪態を吐いていた。
彼女の予想に反し、シグの探索は難航を極めていた…だが、彼女が悪態を吐いたのは、それが理由ではなかった。原因は、彼女が目にしている新聞の記事の見出しだ。
アルゴ誘拐事件と仮面の狩人暗殺未遂事件の翌日から、オレンジプレイヤーやその協力者と思われるプレイヤーが次々と襲われるという事件が頻発し始めたのだ。
レイス系を思わせるような真っ黒なローブに、刀を使う襲撃者…その正体は、仮面の狩人に酷似していることもあり、同一人物ではないかと当初は見られていた。
しかし、三日前から事態は急転換することとなった。なんと、謎の襲撃者は一般プレイヤーまで襲うようになったのだ。
…もっとも、襲われたのはアインクラッド軍を始めとした横暴が目立つプレイヤーばかりなのだが。それでも、一般プレイヤーを襲ったという事実は、襲撃者を楽観視していた攻略組の考えを一転させるものだった。
しまいには強硬派が、仮面の狩人と併せて捕縛対象とすべきだという意見が出ている…とアスナから聞き、嫌な予感を…いや、ほとんど確証を得ている推測に、アルゴは焦りを覚えていた。
(間違いない…これはシグの仕業だ。こんなことができるプレイヤーなんて限られてる。でも、なんでこんなことを…)
マスターですら、既にシグと連絡が取れなくなっているだけでなく、その真意さえも分からなくなっているというのだから、今のシグの行動原理を理解できている者は一人もいないのだ。
いわば一つの暴走状態と言っても過言ではなかった…その矛先がオレンジプレイヤーだけに向いている内はまだよかったかもしれないが、一般プレイヤーにまで及び出したとすれば、話は変わってくる。それこそ、血盟騎士団や青龍連合などといった攻略組を担う面々が出てくるほどにだ。
(…でも、あいつの居場所が分かったところで…どうやって止めたらいいんだ)
新聞が表示されているウィンドウを閉じ、アルゴは大きなため息を吐いた。最初はなんとかできるのではと意気込んでいたが、シグの暴走はアルゴの想像を超える程のレベルになっていた…シグの真意さえも分からないだけに、なおさら心に重い影が差していた。
「お待たせしました、アルゴさん」
「…!おう、フォン坊。悪いナ、いきなり呼び出して」
暗いメンタルに引っ張られるように、表情までも暗くなりそうになっていたところ、待ち人がやってきて声をかけられたアルゴが顔を上げる。そこには、軽装姿のフォンがいた。アルゴの向かい側の席へと座り、そのまま紅茶をNPCへと注文する。
「えっと…例の襲撃事件の情報についてですよね?」
「ああ…悪いナ、こんなことを頼んじまって」
「いえいえ、アルゴさんには何個か借りがありますから。その一つをチャラにしてもらえるってことで。それで、情報ですよね…正直言うと、かなり殺伐としてます」
NPCが持ってきた紅茶を一口含み、フォンが重い口を開いた。アスナと親交があり、攻略組でもフォンは、アルゴに頼まれて、直近の襲撃事件に関する攻略組の動向について調べていたのだ。
「攻略組も件の襲撃者を捉えようという感じですね。相手がオレンジということもあって、武力行使に出るべきだと意見もあるぐらいです。特に襲撃を受けた軍の連中は頑なに主張していて…ディアベルが抑えるのに苦労してます」
「…軍の連中としては、プライドが許さないってやつカ」
「まぁ、あいつらにとってはこれ以上の失態は許せないところでしょうね。解放団との分離で、評判が落ちまくりですから」
「ダナ…どこぞの戦鬼が軍のトップであるキバオウを、圧倒的なハンディ差があったにも関わらず、見事に返り討ちにしたのもあったしナ」
「………」
攻略組の意向について報告している中、その中でも強硬策に出ようとする軍の話が出たこともあり、少しばかり笑みを浮かべたアルゴの指摘に、フォンは思わず目を逸らした。
実はアインクラッド解放軍とアインクラッド解放団とが分離したのが、ここ最近の話なのだ。その際、分離前の当時の軍の強硬派であったキバオウを、フォンが一泡吹かせたことがあったのだ。もっとも、大人げない対応をしたこともあって、フォンとしても、あまりいい思い出ではなかった。
ともかく、そんな話は置いておき、話は再び例の襲撃者の話へと戻る。
「このままだと、軍が勝手に動き出すのは時間の問題ですね。それに、治安の問題もあります…アルゴさんが笑う棺桶に誘拐された一件で、アインクラッド全体の雰囲気もあまりよろしくないものになってます。そこに今回の襲撃者の件…攻略組の中には、中下層の治安部隊を結成するべきじゃないかっていう話まで出てます」
「治安部隊…?」
「その名の通り、中下層のプレイヤーを保護する部隊のことですよ。笑う棺桶だけじゃなく、全体の治安維持を目的としたプレイヤー部隊といった感じですね。もっとも、それを主張しているのは軍で、その思考はどうせ治安維持を理由としたリソースの独占でしょうけどね」
「………」
「アルゴさん?」
「…っ!いや、ちょっとナ…」
何か引っかかったことがあったのか…フォンの話を聞いていたアルゴが一瞬思考の海へと意識を移した。呼びかけによって我へと返ったアルゴに向け、フォンは話を続ける。
「ただ攻略に影響が出る話なので…意見が二つに分かれてるっていう感じですね。前から中下層のプレイヤーの保護については何度か議題に上がっていたけど、そこにリソースを割くことは、攻略スピードの影響に出ますから」
「アーちゃんが一番辛い立場だろうナ…完全に板挟みになってるんだろう?」
「ええ…いつもの如く、団長であるヒースクリフはアスナに任せっきりですから。ディアベルとかがサポートしてくれてるんですが…このままじゃ決壊するのは目に見えてます。このまま、襲撃者が更に事件を起こせば…それこそ攻略組にまで手を出し始めれば、当然…」
「…笑う棺桶と同様の危険人物として、ターゲットとされる、か…」
フォンから告げられた情勢に、アルゴはポツリと呟いた。やはりアルゴの想定していた以上に、襲撃者に向けられた物差しはよろしくないものになっていた。このままでは、攻略組の討伐対象とされかねないと、アルゴは頭を抱えたくなっていた。
「…アルゴさん、一つ聞いてもいいですか…どうして、襲撃者の一件にそこまで関与するんですか?アルゴさんらしくないですよ」
「………」
「…今回の一件…シグさんが絡んでるじゃないですか?」
「………」
「……ここからは俺の推測です。仮面の狩人の正体をあなたは知ってる…そして、それがシグさんに関連してる…そういうことじゃないですか?」
「………」
「アルゴさん…はっきり言います、この一件から手を引いてください」
「っ…?!」
冷たく、しかし、真剣な声で告げたフォンの警告に、アルゴは黙っていた口から驚きの声を零した。
「アルゴさん、今のアルゴさんはいつものあなたじゃない。冷静に思考ができてないじゃないですか?少なくとも、アルゴさんが説得できる状態を既に超えてます…それこそ、無理矢理にでも止めないならないレベルに…襲撃者のやっていることは常軌を逸してます」
「………」
「…ともかく、情報はこれからも共有します。けど、今、アルゴさんがしようとしていることを、俺は諸手を挙げて賛成はできません。だから、あとのことは俺たちに「…あの時…」…えっ?」
「…笑う棺桶に攫われて、狩人が助けに来て…そして、狩人が一人のプレイヤーを殺した時、オイラはアイツの素顔を偶然目にしたんダ。その時のアイツの顔は…
…酷く悲しそうだったんだ…」
「…!」
そう告げるアルゴの顔もまた…その悲しみを知っているかのように暗くなっていた。アルゴの滅多に見せない姿に、フォンは目を丸くしていた。
「アイツと…あの一件を起こした笑う棺桶の首領には…あまりにも重く、暗い因縁があった。あの時はその全容を知らなかったけど、会話を聞いていただけでも、それが分かった。アイツはそのプレイヤーを恨んでいた…いや、恨むことを糧に生きようとしていたんダ。だから、全てを終えたあいつの表情が、悲しいものだったことに…違和感を覚えたんダ」
「違和感…?復讐を終えたんだから、別にそんな表情をしてもおかしくはないんじゃ…」
「復讐を終えた虚しさとかそんなじゃない…なんて言うか…いや、上手く言えないんだが…アイツはきっと… じゃないか、って思ったんダ…」
「…っ?!」
その言葉を聞いたフォンは…何も言えなかった。そして、それと同時に、アルゴの真意も理解できてしまった。
「アイツのことが…今、ようやく理解できた気がする。アイツは…アイツはきっと……」
「………」
アルゴの推測はある意味であたりだった…そして、それと同時に、だからこそ、アルゴでなければ、この事態を収束させることはできないとフォンは悟った。
「……分かりました、アルゴさん。なら、これ以上は止めません。いや、とことん手伝いますよ」
「…いいのカ?おいらの言ってることは、オイラの勝手な想像ダゾ?」
「今回の一件、おそらく一番裏側を理解できているのはアルゴさんです。もしも一番理想的な解決方法を図ろうとするのなら、アルゴさんにお願いするしかないかと思います」
「……ありがとナ、フォン坊」
「言ったじゃないですか、借りを返してるだけです」
穏やかな笑みを浮かべ、そう告げたフォンに釣られて、少しばかりアルゴも笑みを浮かべる。そして、どうやって襲撃者と接触すべきかという話になったところで、
「問題は、襲撃者にどうやって接触するかだよナ。アイツの居場所さえ掴めれば、なんとかなるんだが、それの手がかりが一切ないんダ」
「……なら、接触せざるを得ない状況を作りましょう」
「状況を…作る?」
アルゴが首を傾げる中、とてつもなく悪い笑みを浮かべたフォンがその策を告げる。
「丁度いいことに、今の状況的としては乗せやすいところがありますから。それに、あいつにも手伝ってもらえれば、なんとかなるかと思いますから」
『……来たか』
「…も、もういいだろう!?」
アインクラッドのどこか…圏外エリアの一つで、生い茂った森の中、仮面を被ったプレイヤーが、プレイヤーへと刀を突き付けていた。その頭上に表示されていたのはグリーンのカーソルだったが、
『お前を見逃してやっていたんだ。さっさと情報を吐け』
「っ…もういい加減にしてくれよ。俺がいたオレンジギルドもあんたが壊滅させ『ギルドが壊滅しようが、お前がしてきたことが消えるわけじゃない…それとも、本当にあの世に送ってやろうか?』…っ…!わ、分かったから?!話すから!?」
直近の襲撃事件により壊滅させられた生き残り…いや、敢えて見逃されたオレンジギルドのメンバーが、このプレイヤーの正体だった。
狩人が見逃したのは、囮であり、そして、情報収集の駒として利用するためであった。だから、脅すことに何のためらいも、そして、遠慮もなかったために、突き付けていた刃を首に喰い込ませ、プレイヤーのHPを減らす!
狩人が本気だと悟り、慌ててプレイヤーは街で収集してきた情報を口にする。
「あ、明後日!?軍の奴らが、あんたを探すために、以前に襲われた36層で大規模な索敵活動をするって、噂になってた!しかも、血盟騎士団とかは直接的な協力はしないけど、アイテムとかのサポートはするって…!」
『そうか…(どうやら、予想よりも早く、思い通りの展開になってきたな)』
報告を聞きながら、どこか他人事のような感じにそんな思考を思い浮かべていた狩人は、ようやく男から刃を離した。同時に拘束から解放されたことで、男が尻もちを着くも、それを気にすることもなく、狩人はその場から離れようとした。そんな狩人の後ろ姿に男が…
「…死んじまえ、この死神が…!」
『‥‥‥‥』
呪詛を放ち、忌々しく狩人を睨んでいた。その言葉が耳に届いていながらも、狩人は反応を示すことなく、姿を消したのだった。
そして、その二日後…
『…(情報通りか)』
第36層のフィールド…『針山の暗森』という、同じ種類の針森という種類の木々がこれでもかと並び立つエリアにて、細い小道を行軍する鎧の一行…それを、隠蔽スキルと装備アイテムの効果にて、完全に姿を消した狩人が観察していた。
人数としては30人ほど…歩くたびに金属音が鳴り響き、周囲を厳に警戒しながら行軍する一向だが、少し離れた場所で隠れている狩人の姿は見つけられずにいた。
『…(標的は軍…これなら、望む結果になるのも時間の問題だな)』
腰に身に着けた刀の状態を確認しながら、狩人は呼吸を整える。覚悟は…いや、後悔は既に置いてきていた。このまま進むだけだと…狩人は気配を殺したまま、一同へと近づいていく。
やることは簡単…奇襲をしかけ、5~6人を戦闘不能に一気に陥れ、その混乱のまま乱戦に持ち込み、打ち倒すだけ…これまでと同様のやりかたをするだけだと、呼吸を自然に溶け込ますように、近づいていく。
そして、森に紛れ、射程距離にまで近づいたところで…
『…(始めるか)』
脱力状態からの抜刀術…居合による一閃が行軍の真ん中にいたプレイヤーを斬り裂こうと…
ガァン…!
『…っ?!』
「悪いな、あんたの相手は俺だ」
決まったと思った斬撃が食い止めら、狩人が息を呑む。対象を庇うように介入したプレイヤーが、飛び込んだ勢いで外れたフードを気にすることなく、その一言を呟いた。
黒い魔剣である片手剣に、黒髪と黒一色の装備…その反射神経を持って、居合術を見切った少年の姿に、狩人は驚くしかなかった。
「っ!アスナ!」
「うん!」
『…ちぃ?!』
狩人が動揺している間に、少年が刀を止めていた片手剣を振り払い、狩人を弾き飛ばす。そして、少年の呼びかけに応じ、騒ぎに反応して駆け付けたもう一人のプレイヤーが追撃を掛ける!
高速の突進突き…まさしく閃光の一撃に、狩人も防御に回るしかなく、刀によってその一撃を逸らす!
反撃をなんとか狩人だったが、体勢を大きく崩してしまった…その隙に、少年と少女は被っていた黒いローブを剝ぎ取るように投げ捨てた。その行動に合わせ、他のプレイヤーたちもローブを投げ捨て、その姿を露わにした。
「…どうやら、フォンの奴の作戦通りみたいだな」
得意げにそんなことを呟いたのは、行軍の一部を構成していたギルド「風林火山」のリーダーであるクラインだった。そして、それに並び立つのは、アインクラッド解放団のメンバーと行動隊長であるディアベルであった。
『…(どういうことだ…罠に嵌められたってことか?)』
軍の姿はなく、攻略組の強ギルドがいることに、体勢を整えた狩人は驚きつつ、思考を纏めていた。そして、何よりの予想外は…
「キリト君、油断しないで…この人、できる!」
「ああ、アスナこそ…作戦とはいえ、気を抜くなよ」
黒の剣士と閃光…攻略組の中でも、トッププレイヤー候補として名前が挙がるキリトとアスナが、自分に立ちはだかるという事態に、狩人は驚くしかなかった。
『…なるほどな。軍が俺を探しているという噂自体が、罠だったわけか』
「「………」」
ようやく理解ができたところで、狩人はどこか嬉しそうなそんな言葉を呟いていた。対するキリトとアスナは沈黙のまま、否定はせず、事実であることを半ば肯定していた。狩人の次の行動を警戒していると…
『フフッ…アハハハハハハハ!!』
「「「「…!」」」」
罠に嵌められた筈なのに、何故か高笑いし始めた狩人…その姿に、キリトたちは身構える。
『やってくれるじゃないか…そうか、そこまで俺が脅威に感じたか、攻略組!いいな、いいぜ!だったら、俺を止めてみせろよ!!』
「「っ!?」」
まるで悪役かのように高らかに宣言した狩人…その言葉と共に、狩人はキリトとアスナに襲い掛かり、二人も遅れながら迎撃に出る!
前に出たのはキリトだった。速すぎる一撃も、キリトの目には捉えられていた。鋭い一撃を片手剣で弾き、連撃を防いでいく。その最中に、回り込んだアスナが直撃を与えようとしたのだが、
『…!』
「…なぁ!?」「くっ…!」
アスナの一撃をその場でバック宙することにより躱し、そのままキリトの片手剣を足場にすることで、蹴り飛ばすのと同時に踏み台にして、アスナへと斬り掛かった。
予想外の反撃にアスナもなんとか反応し、細剣にて刀の一撃を防ぐ。あまりの蹴りの重さにキリトが肩肘を着いている間に、狩人はアスナへと猛攻を駆けていく…だが、アスナもやられてばかりではいなかった!
『…!!』「はああああああぁぁ!!」
居合術でもないにも関わらず、こちらもまた神速といっても過言ではない刀の乱撃を放つ狩人に対し、それらを全て受けながら、閃光の二つ名の通りに、細剣の刺突を繰り出すアスナ。
斬撃と刺突の雨が撃ち合いに、クラインたちはその猛攻を見守っていることしかできなかった。互いにHPを削っていく中、次第にアスナが押され始めた。
(こ、この人…私と同じ速度でこんな連撃を放ち続けているのに、息が全然乱れてない!)
ほぼ同じ速度での攻防にも関わらず、アスナは自身の息が乱れ始めてきたことを自覚しつつ、狩人の技量を冷静に分析していた。だが、狩人の敵は一人ではなかった。
「このぉ!」
『っ!?』
神速と閃光の攻防…それを唯一見切れるキリトが無理矢理に割り込み、アスナの刺突を避けながら、狩人の斬撃の雨の隙間を拭い、片手剣を振るった!まさか、斬撃の雨の中を潜り抜けて、攻撃してくるとは思わず、狩人が直撃を受ける。
HPが削られ、残り7割にまで低下した狩人が体勢を整える中、キリトとアスナも陣形を組み直していた。
「アスナ、挟み込もう………いいか?」
「…分かった、それで行こう」
最短の言葉で作戦を告げたキリトに、アスナも理解したことを返し、二人がそれぞれの獲物を構える。対する狩人はこれまでと違い、刀を背中に隠すような形で受け身の姿勢を取っていた。
そして、先に仕掛けたのはキリトとアスナだった。二人同時の攻撃に、狩人は慌てることなく応じる!トッププレイヤー二人の猛攻を前に、反撃はできずとも…なんとか無傷で防いでいたのだ。
(うそ…私とキリト君の連撃を防げるなんて…!こんなプレイヤーがいたっていうの…!)
「…アスナ!」
「…!うん!」
狩人の技量に驚きつつも、キリトの掛け声に応え、アスナが動く…キリトがわざと狩人に肉薄し、鍔競り合いに持ち込むことで狩人の動きを封じる。その瞬間、アスナがキリトの右肩を踏み台にして、狩人の頭上を取る!
『…ちっ!』
飛んだ勢いをも加えた空中回転斬りに、咄嗟にしゃがみこんで躱す狩人だが、防御がおざなりとなり、キリトが咄嗟に放った突きを刀で受け止めるも…体勢を崩された。その隙に反対側に着地したアスナが、キリトと共に再び挟み込む形で狩人に迫る!
『‥‥‥‥』
膝を着いたまま、迫る二人をゆっくりと観察し…キリトとアスナがそれぞれの剣で突きを放ったにも関わらず静止していたのだが、
…カァンカァン…!
「「っ?!」」
まさしく刹那の瞬間…キリトでさえ見切るのがやっとの速さで狩人が動いたのだ。自身に迫る二つの剣の軌道を、刀を最小限かつ高速の動きだけで操り、キリトとアスナを同士討ちするように誘導したのだ。
(っ…キリト君…!)
気付いた時には既に遅かった…このままでは互いの剣が直撃するとアスナの身体が硬直するも、止めることはできなかった。だが、唯一狩人の動きを見切れていたキリトが動く。ギリギリのところで身体を逸らし、自身の剣も逸らしてみせたのだ。
そして、そのままアスナの身体を受け止め、彼女の身体を振り回すように回転する。キリトに受け止められた直後は何が起こったのか困惑したものの、キリトの真意に気付き、その勢いに任せて、蹴りを放つ!
自身の策を躱されたことに少しばかり動揺していたところに、二人の見事な連携による反撃を受けたことで、狩人も反応するのが遅れた。ここにきて、初めてまともな一撃を受けた狩人が大きく下がる。
『フフッ…ククッ、ハハハハハハッ!!』
「「…!」」
追い詰められての笑いか、それとも凶器ゆえの高笑いか…仮面で隠れているせいで、口元以外の表情が読み取れないが、いきなりの狩人の姿にキリトとアスナが一層警戒を強める。
『いいさぁ、これを望んでいたんだ!この状況を…お前たちが揃い始めたこの状況を、俺は望んでいたんだ!狩人を討つことができるお前たちを!』
「「「「………」」」」
『…また会おう、攻略組!』
その言葉と共に、狩人は懐から何かを取り出し、自身の正面近くの地面へと投げおろした!このまま逃がすものかとキリトが突っ込むも、放たれたのは煙玉だった。視界を塞がれるだけでなく、その煙玉には仕掛けがあり、
「ぐぅ…うああぁ?!」
「…!キリト君…!」
煙を払おうとした直後、キリトの苦悶の声が響き、気づいたアスナが助けに飛び込む。細剣を振り払くことで煙を吹き飛ばすと、そこには片手剣を取り落とし、蹲るキリトの姿があった。
「キリト君!どこをやられたの?!」
「あ、アスナ…目が…あの煙に何かを仕込まれていたらしい…」
苦痛で涙を流すキリト…なんとか痛みを堪えようと手で目を抑えるも、その激痛は続いており、動くことすらもままならなくなっていた。煙の中に、香辛料が含まれていたのだ…これを目に浴びたキリトにとっては、大ダメージでしかなかった。
「…逃げられた、か。これ以上の追撃は無理ね…クラインさん、水をお願いします!キリト君、少しだけ我慢して」
煙に乗じて、既に狩人は姿を消していた。キリトがこの状態であることも加え、これ以上の追撃は不可能と判断して、アスナは控えていたクラインに援護を求める。そして、消えた狩人がいた場所を見ながら、
(こっちはやれることはやったよ…あとはお願いね、フォン君、アルゴさん)
ここにはいない…この一計を謀った二人へとそんなことを心の中で告げるのだった。
『はぁ…はぁ……打ち倒せるとは思ってなかったけど、やっぱり手ごわかったな。だが、これでいい……これで、いいんだ…』
キリトたちから少し離れた場所にまで撤退した狩人…疲労とダメージによる違和感による負担で、その身を針木へと身を預けていた。
先程の戦闘で負ったダメージを回復せず、どこか呆れたように笑う狩人を労うかのように、雨が降り始めた。そして、それに釣られて霧が森を包み始めていた…このまま姿を消すには十分かと思い、身を隠そうと考えていたところだった。
…ザッ…!
『……!…そうか、そういうことか…お前がこの件に一枚嚙んでいたんだな』
狩人対策としては完璧すぎる対応…攻略組だけならまだしも、キリトとアスナという、トッププレイヤーの中でも指折りの二人があの場にいたことに…狩人は彼女に気付いたことで、ようやく悟った。
雨に降られたのは労いではなく、この悲しい劇に終わりの幕を下ろすためだったのかもしれない。
彼女の他にもう一人…姿は見えないが、視線を感じる。気配を上手く消しているせいか、どこにいるかまでは分からないが、キリトとアスナがいたのだ…おのずとその人物の正体にも見当にもがつく。
『…アルゴ』
「………お前と話をしに来た…シグ」
降る雨に取り囲まれるように…依頼人とボディガードだった二人が、今、再び対面した。
一人は仮面に真意を隠し、もう一人はその真意を確かめるべく…二人の会話が始まろうとしていた。
ここまで(外伝では)影が薄かったキリト・アスナコンビと、まさかの狩人との激突でした。まぁ、これを仕組んだのはどこぞの腹黒オリ主なんですが(笑)
少しだけ狩人の本気が垣間見えたわけですが…実はこれが全力じゃないという(本気では戦ってますが、実はまだ手の内を全部見せてないという)。
様子がおかしい狩人の真の目的とは…そして、姿を再び消そうとした狩人の前に、ようやくアルゴが立ちはだかります。
次回は説得回…というかできるのかという感じもするお話です。ここで説得できないと、まぁ、後ほど大変なことになるのですが…
それでは、また!
キャラエピソード第2弾 どのキャラのお話が見たいでしょうか?
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