そういうわけで、外伝中盤の一番の盛りあがりどころである、シグ対聖竜連合のお話です。それでは、どうぞ!
「…貴様、何者だ!?」
「別に名乗るほどでもないさ。強いて言うなら、こいつの用心棒だよ」
聖竜連合のタカ派プレイヤーたちに追われていたアルゴの窮地に駆け付けたシグ…そんな彼の登場に、聖竜連合の面々は動揺を隠せず足を止めていた。
一足早く我に返ったリーダー格の男がシグに正体を問い掛けるも、正直に応える道理もないシグは、挑発するかのような答えを返す。もっとも、嘘も言っていないので、一応の答えにはなっているのだが。
(…全員で20人か。タカ派のプレイヤーが動いているとは聞いていたが、予想よりは少し多いくらいか。といっても、別に脅威に感じる数じゃないか)
未だに動けずにいる聖竜連合とは対照的に、シグは状況を冷静に分析していた。攻略組の一角を担う聖竜連合…全員が精鋭というわけではないだろうが、それでも攻略組であることには変わりない。
アインクラッドでも高位に入ってくる面々を前に、シグは戦いがどう動いていくかを想像し、どう立ち回るかを頭の中で組み立てていた。
「…し、シグ…駄目だ、こいつらは…」
「…アルゴ」
「…!」
「言っただろう、俺はお前のボディガードだって。大丈夫だ、お前にあいつらの魔の手は届かせないさ」
そんな思考の中、同じくシグの登場に驚いていたアルゴが彼へと制止の言葉を掛ける。相手の実力はアルゴもまた痛い程に分かっていた。このままでは、シグもただでは済まないと思っての言葉だったのだが…シグはそれを見透かしたように、少しだけ笑みを浮かべて、アルゴへと少しだけ目線を向けて、言葉を返した。
シグの自信に満ちた言葉にアルゴもそれ以上何も言えなくなり、黙ってシグの動向を見守るしかなかった。
「勧告だ…鼠を引渡せ。でなければ、ただではすまんぞ」
「はい、そうですかって引渡すと思うのか?というか、もうちょっとマシな台詞は言えないのか?三流以下の台詞だぞ、それ」
「さ、三流…?」
「自分たちが攻略組だからって、その権力に胡坐をかいたような台詞を言ってるんだから、三流って評するのは当然だろう?あと、アルゴが本当に情報漏えいしたのかどうかの証拠もないのに、こんな強硬策を取る時点で馬鹿丸出しだろう」
「…貴様…!?」
「図星を言われてキレてる時点で、そうだって自分で認めるもんだろうが」
いつの間にか舌戦の主流をシグが握っていた…圧を掛けていた筈が、シグの指摘と挑発に聖竜連合の面々は完全にペースを乱され、数で包囲しているにも関わらず、シグの余裕が更に増しているように見えた。
「…それとも、今さらになってビビりだしたのか?情報屋一人なら簡単に捕まえられると思っていたのに、用心棒が出てきたところで、この様かよ…攻略組様もたいしたことないな?」
「…各員、フォーメーションΔ!奴に我らDDAの力を見せてやれ!」
言葉を告げたシグの嘲笑をきっかけに、これ以上の交渉は不可能だと悟ったリーダー格の男が、他19人のプレイヤーへと指示を出し、それに従った面々がシグをターゲットに動き出す。
対するシグも、アルゴとの距離を取るべく、前へと出る。そんな彼を取り囲むように、聖竜連合の面々も展開していく。
足を取られる程の積雪にも関わらず、シグはかなりのスピードで前進していく。だが、流石は聖竜連合…攻略組を担う面々のこともあり、シグに負けずと包囲網を構築していく。そして、先に仕掛けたのは聖竜連合…ショートランスを手にしたプレイヤーだった。
「くらえぇ!」
シグを一突きにしようとした一撃が迫る。それに対し、シグは槍の軌道を静かに見定め、刀を…
「…!」
手にした刀を振るうことなく、そのまま身体を僅かに逸らして攻撃を回避しようとした。だが、態度は最底辺でも、実力は攻略組のこともあってか、槍の一撃がシグの左脇腹をほんの僅かに掠めた。
(…シグ…?!)
いきなり、しかもあのシグが被弾したことも、アルゴも思わず心の中で驚く。だが、彼女の心配を余所に戦況は動いていく。ショートランスのプレイヤーを迎撃しようと、シグが刀を振るうも…その隙を狙って、今度は4人のプレイヤーが片手剣と片手棍を獲物に、シグへと攻め寄る!
時間差による乱撃を最小限の動きと刀によって捌いていくシグ…だが、3本の片手剣とその中に混ざる片手混の乱舞に、またしても一撃ずつ攻撃が掠める!
だが、聖竜連合の攻撃はさらに過激になっていく。
「フォーメーションα4!」
押し切れる…そう判断した指揮官の声に、聖竜連合の陣形が変わる。シグを二重の環の形に取り囲み、内側の輪は時計回りに、外側は逆時計回りに回り始めた。
「…アタック!!」
「っ…!?」
その声により、次々と環の中からプレイヤーたちが飛び出してくる。それに反応し、刀で軌道を逸らすシグだが、それがこの包囲網の罠だった。
防御したことで隙ができたシグの背中を狙い、今度は別のプレイヤーが飛び出し、両手剣を横なぎで振るった!それをしゃがみ込んで躱すシグだが、今度は曲刀のプレイヤーが…完全に隙を突いたとばかりに単発ソードスキル〈フォル・クレセント〉を放ちながら突撃してきた!
なんとか反応し、刀で逸らすシグだが、ソードスキルを防ぐのは容易い話ではなく、押し切られたことで斬撃が掠め、更にシグのHPが減る。
…そう、これがフォーメーションα4。聖竜連合が編み出した、対人戦用フォーメーションの一つだった。二つの円環によって、攻撃するメンバーを入れ替えながら、次々と攻撃を繰り出していく…相手を疲弊させながら、集中砲火にて無力化する一つの必殺の型であった。
抜け出すにはソードスキルなどの強力な一撃で環を崩すしかないのだが…それを防ぐために、次々と攻撃を仕掛けていくのが、このフォーメーションのもう一つの利でもあった。
勝負あったと指揮官が余裕の笑みを浮かべるように、シグを次々と聖竜連合の面々が猛攻を仕掛けていく。時には単独で、時には4人掛かりで…止むことのない嵐の如く突撃陣に、シグのHPがどんどんと削られていく。
…だが、減っていくHPとは裏腹にシグの態度は戦闘開始から一切変わらずにいた。そして、
「…さて、そろそろ勝負も見えてきたようだな」
「……………」
陣での包囲網を開始して5分…指揮官の一声で突撃陣が一旦止む。余裕の笑みをこれでもかと浮かべる指揮官の言葉に、シグは言葉を発さない。
そんなシグの言動を見て、指揮官は勝ちを確信した。そう思うのは当然だった。シグの全身は19カ所に及ぶダメージの跡があり、そのHPもレッドゾーン寸前のイエローだった。しかも、この円環の攻撃に、シグは一切反撃を仕掛けてこなかったのだ。
…相手は抵抗する術を持っていない。人数差に残りHP、相手の言動からして、そう思ってしまうのも無理はなかっただろう。ここまできて負ける要素なんてほぼないに等しかっただろう。
(…やっと、か)
そう、相手が普通の相手ならきっとそうだっただろう。だが、彼らは知らなかった…自分たちが何を相手にしているのか…そして、彼が何を狙っていたのかを。
(これで……ようやく全部整った)
狩人の名を背負い、オレンジプレイヤ―と死闘を嫌という程に繰り広げていたのだ。対人戦の経験など…いや、人との殺し合いを嫌という程に味わっていた彼にとって、この程度のことなど容易い話だった。
「…ふぅぅ…」
「覚悟を決めたか?それとも、諦めて投降する気になったか?」
「…覚悟なんてここに来る前からできてるさ。できたのは……」
静かに息を吐くシグの姿に、指揮官が嫌な笑みを浮かべて問い掛ける。だが、返ってきたのは意外な言葉で…そのことを口にしたシグはなんと、
…ズバァ!?
「…全部の準備がだ」
「なぁ…!」「…!?」
なんと自身の左手首を刀で傷つけたのだ!まさかの自傷行為に、指揮官だけでなく、アルゴや他のプレイヤーたちも息を呑む。
自傷行為によりシグのHPがレッドゾーンに突入するも…シグは一切動揺を見せない。いや、それどころかおかしなことがまだあった。それに気付いていたアルゴはシグの戦い方に違和感を覚えていた。
(なんでダ、シグ…なんで抜刀術を使わない!いくら雪に足を取られるとはいえ、お前なら、このくらいの積雪関係なく、その包囲網から逃げることくらい難しくないだろう!?)
そう、シグはこの戦いが始まってから一度も抜刀術を…いや、得意の高速移動による攻撃を一切行っていないのだ。この包囲網、強引に突破しようとすれば、シグも突破できる要素はあった。
…だが、シグはまるでワザと包囲されたかのように逃げないでいたのだ。そして、シグの異変は…いや、おかしなところはまだあった。シグの自傷行為に動揺していた指揮官だったが…HPがレッドにも関わらず、シグが冷静なことに驚きを隠せないでいたが、それによってもう一つの違和感に気付いた。
(…?こいつ、あの猛攻をなんとか防いでいたにも関わらず、息が…全然乱れていない…?)
もう一つの違和感…そう、それはシグの姿そのものだった。このフォーメーションは次々と攻撃を仕掛けながら、円を描くようにずっと動き続けるため、部隊の面々にも大きな負担を強いる。
指揮官が一度攻撃を止めたのも、部隊の負担を懸念しての小休止も兼ねてだった。だからこそ気付いた…部隊の全員が肩を揺らすほどに息を乱しているにも関わらず、一方で19人の乱撃を防いでいたシグは、一切息を乱していなかったのだ。
…その姿に指揮官は嫌な予感を覚えた。何か重大なことを見落としているような…とんでもない落とし穴に陥っているような気がして堪らなかった。そして、その感覚は正解だったと思い知ることになる。
「っ…?!奴に止めを刺せ!!」
このままではマズいことになる…その直感に従い、指揮官の声に再び二つの円環が動き出す!それに対し、シグは静かに声を発する。
「悪いが手加減はしてやれない…痛い目を見たくない奴は、今すぐここから消えろ」
言葉を発するのと同時に、シグの雰囲気が変わる。狩人の時に少し似た雰囲気だが、殺意は全くない。鋭く、静かな闘気を纏うかのように、集中力が増しているように見えた。アルゴも初めて見るシグの…ある意味で彼の本気の仕草に、目を奪われるように戦いを見ていた。
静かな忠告は聖竜連合の面々にも届いたが…この状況で退くことなありえなかった。シグを無力化しようと、3人のプレイヤーたちが攻撃を仕掛けた!真正面に、4時・8時の3方向同時攻撃が迫る中、シグは素早く腰を落とした。
その時、技を繰り出そうとして、シグの脳裏に過ったのは…懐かしい記憶だった。
『反式だって!』
『いや、守式の方がバランスがいいだろう!』
『やれやれ…』『…なんか、ゴメンね、シグ君』
『…アハハ』
力説するガデムに対し、こちらも全力で反論するリョナス。2人の熱のこもった対応に、どこか呆れたように溜息を吐くサマスに対し、苦笑いと同時に2人を止められなかったことを謝罪するロッドに、少年はなんとも言えないまま同じく苦笑いしていた。その余所で、アジアが椅子に腰かけたまま、何かを考えていた。
『抜刀術をメインとした攻式に対して、反撃の型を中心とする刀技!攻に対して、反する方で反式だろうが!』
『いやいや!攻撃に対して守りの型!これこそが王道だろうが!』
『なぁ、分かってねぇなぁ、リョナス!?反式の方が名前強そうだろうが!?最強を名乗る男が使っている技の一つじゃねぇか!』
『お前、完全に呪術〇戦の五〇悟に引っ張られただろう!?それ言うなら、やっぱり攻式に対しての守式だろうが!同じジャンプで、刀使うキャラで言う最強の剣術での時雨〇燕流に則るべきだろうが!?』
『…いや、別に俺はどっちでもいいんですけど…というか、そんな大層な技名もいらないと思うんですけど』
『『名前は大事だろう!?』』
『…!そ、そうなんですね…』
『『そして、そっちの方がかっこいいだろう!?』』
『…そ、そうなんですかね…?』
『シグ君、男の浪漫が勝手に暴走しているだけだ。放っておけ』
一層熱が入っていく2人の討論に少年が制止の声を掛けるも、逆に燃料を投下したかのように熱が強まってしまった。その熱に呑まれそうになった少年を引き戻すべく、サマスが冷静にツッコミを入れる。
『はぁ~…これ、型の剣式名を決めないと収まらなさうですね、アジアさん。って、何してるんですか、アジアさん』
ガデムとリョナスの言い合いに終わりが見えないと思ったロッドが、さっきからずっと沈黙しているアジアに助けを求めようとしたが…アジアは机の上に何かを広げていた。
『筆と羊皮紙…どこから出した、というか、いつの間に持ってきたですか…』
『何を書いているんですか、アジアさん?』
『うん…?まぁ、シグ君の剣式の名前を候補をね』
『えっ、アジアさんまで必要だって思ってるんですか?』
知らぬ間に筆片手に、羊皮紙に何かを書いていくアジア。その内容を問い掛けた少年だったが、アジアから返ってきた答えが意外なもので驚いていた。
「攻式」と書き終えたところで、アジアは一旦筆を止め、皆に自身の考えを告げる。
『名前というのは結構大事なものだよ。技名を認識して、技を放つ前に頭の中で想像して集中力を高める…一種のルーティンとしては結構有効だからね。それに、技名をわざと口にして、こちらの手の内を知っている相手に、その技を繰り出すと錯覚させるという搦手にも使えるしね。君たちも、ソードスキルを放つ時に叫んだり、技名を口にすると、なんとなく強さが増すようなことがあるだろう?まぁ、そこまで大きな効果が出るわけではないがね』
『…アジアさん、なんでそんなのに詳しいんですか?』
『まぁ、昔ちょっとね。それで、シグ君が編み出したもう一つの剣式だけど…』
『反式だろう!?』『守式ですよね!?』
『どっちも悪くはないけど、却下かな』
アジアの解説に、確かにと思いつつ、どこでそんな知識を身に着けたんだと尋ねる少年に、いつもの誤魔化しが炸裂した。
そして、いつの間にか耳を傾けていたガデムとリョナスが、自分たちの希望する剣式名を採用してもらおうと告げるも、バッサリとアジアは切り捨てた。そして、羊皮紙に書いた文字は…
『『『『『…「 」?』』』』』
目にした文字を口にする一同(アジアを除く)…その意味がイマイチ図りかねている皆が説明を求めるように目線を向けてきたので、筆を置いたアジアが口を開く。
『人を護る剣…そもそもシグ君はそういった剣戟の方が得意だったからね。そこから、誰かを護るために、相手を速攻で無効化するために抜刀術を中心とする攻式を身に着けたわけだからね。
誰かを守るために相手を無力化する攻式に対して…人を、そして、自分自身を護る剣…だから、この名前にしたんだ。シグ君…誰かを守るために、自分も護れるようになってほしい。それが、この名前にした僕のお願いだ』
『誰かを守るために…自分も護れる剣…』
『…やられたな、流石はアジアさんだな。いいじゃん、シグ君!』
『……そう、ですね。分かりました、なら、その名前…使わせもらいます』
真剣な声色で告げられたアジアの言葉を、飲み込むように少年は繰り返して呟いた。その説明を聞いた一同から反対の声は一切なかった。さっきまで熱弁していたリョナスやガデムまでもが納得してしまう程の内容に、少年もその剣式名を使うことを決めたのだった。
抜刀術を中心とした攻撃に特化した「攻式」…そして、
…ほぼ同時に、聖竜連合のプレイヤー3人の獲物が振り下ろされようとしたその時だった。
…ガキィィィン!?
「「「…?!」」」
龍が聖竜を吹き飛ばしたかのように、暴風が巻き起こった!
いや、正確には、金属音と共に迫っていた3人のプレイヤーが大きく後退ったのだ。だが、起こったのはそれだけではなかった。まるで天に昇る龍の如く、巻き上げられた雪が物凄い勢いで、周囲のプレイヤーたちにも叩きつけられたのだ!
「…!や、奴はどこに…!?」
ほぼ全てのプレイヤーが巻き上げられ、飛ばされてきた雪により視界が封じられた。その中で、真っ先に視界を確保できたのは、シグに迫ってきていたプレイヤーの一人だった。だが、目を開けた先に…立っていた場所にシグがいなくなっていたのだ。
…抜刀術を中心とした攻撃に特化した「攻式」に対し、人を護るための剣術「護式」…攻式がその名の如く、攻めることを中心に繰り出す剣術であるのに対し、護式は相手の攻撃を逆利用したり、反撃のための隙を作るための剣術である。
そして、シグが放ったのは護式〈昇龍舞〉…その場で高速回転し、跳びながら回転斬りを放つ技だが、そのスピードが異常なのだ。シグの脚力により繰り出される回転は風を巻き起こす程の速度だが、この技にはもう一つ特徴がある。
足元の環境を生かした投射攻撃をおまけで繰り出すのだ。水場であれば水を、ぬかるんだ土であれば泥を…そして、今の環境であれば、雪を…まさしく、天に昇る龍が暴れる如くの勢いで相手にぶつけるのだ。
さらに護式は相手の隙を生むための技である。その真骨頂として、どの型も、次の技へと繋げることができるようになっているのだ。
シグは姿を消したわけではない。吹雪により視界が悪いこともあり、昇龍舞によって空へと跳び上がったシグを視認できないでいたのだ。自身に迫る影にプレイヤーが気付いた時には既に手遅れだった。
「…堕ちろ」
迫りながら回転していたシグがその言葉と共に、刀を一気に振り抜く!鈍い音共に、プレイヤーの側頭部が撃ち抜かれる!現実世界であれば、下手すれば致命傷になりかねない一撃だが、これはデスゲームではあるが、VRMMO…HPが大きく減るだけで死にはしないが、人体の急所は変わらないため、脳を強打されたことで、撃ち抜かれたままの勢いで意識を刈り取られたプレイヤーが雪の地面に倒れ込む。
功式〈横鳶爪〉…本来はその場で勢いよく前宙しながら繰り出す回転斬り〈鳶爪〉のアレンジ技である。勢いよく爪で抉るかのような重い一撃に自由落下の勢いが加わったのだ…それを側頭部に喰らえば、意識を刈り取ることなど造作もないことだった。
咄嗟のことに全員が現実を飲み込めなかった。だが、シグの前でそんな隙を見せることは命取りでしかなかった。地に着地した瞬間、シグは動く…それは、さっきまでとは全く異なる程に早く、そして、一切の容赦がなかった。
「こ、こい…がはぁ…?!」
迫っていた生き残りの一人が迫ってきていたシグに気付き、反応しようとしたが…その時には、シグの姿が消えた。その時には、居合によりみぞうちに一撃を喰らい、またしても一人、雪に倒れ込んだ。
そして、シグの動きは止まらない。そのまま3人目の前にも抜刀術の応用で、駿脚によって現れる。なんとか抵抗しようと片手剣を振るおうとするも、焦った剣戟がシグに通じる筈もなく…弾かると共に刀が振り下ろされた。目にも留まらぬ3連撃…頭、右・左首筋にほぼ同時に放たれたかのように見えるその技は、攻式〈猫叉〉だった。
HPはそこまで減っていないが、またしても急所を叩かれ、プレイヤーが雪の中に沈む。20秒も経たずに3人のプレイヤーが戦闘不能にされた現実に…聖竜連合の面々は何が起こったのか理解できずにいた。
そんな彼らが我に返るのを待つかのように、シグは静かにその場で立ち尽くしていた。吹雪の音だけが響きわたる中、聖竜連合の面々が思わず後退ろうとした時だった。
「怯むなぁぁ!?」
『『『っ…!?』』』
真っ先に我に返った指揮官の怒声が響き渡った。その声に全員が我に返り、視線を指揮官に向ける。
「やつがどんな技を使おうが、奴がこちらのフォーメーションに対応はできない!陣を崩すな!?奴を再び翻弄するのだ!」
『『『了解!!』』』
指揮官の言葉に混乱は収まり、三度二つの環が動き出す。3人減ってしまった分、環が小さくなるが、それでも人数差は圧倒的だった。まだ勝機はあるはずだと聖竜連合は思っていたが…それが単なる慢心であることを彼らは知る由はない。
先程と同じようにシグに次々と攻撃を仕掛けていくが…その結果はさっきとは全く異なるものになった。
まず両手斧のプレイヤーが横振りの一撃を繰り出すが…シグはその場でバック転して、その一撃を躱す。空中では身動きが取れないと隙を突いて、ショートランスのプレイヤーが宙にいるシグを狙い突く。だが、その突きの勢いを刀で逸らし、その勢いを回転に変えたシグがショートランスの柄をバラバラに斬り裂いた!
手元の獲物をバラバラにされたことで防ぐ手段を失ったプレイヤーはそのまま真正面から頭を打ち抜かれて倒れる。だが、さっき防いだ両手斧のプレイヤーがシグの背中を狙って再度攻撃を仕掛けるが、
「…なぁ、消えた…!?」
「後ろだ!?」
斧を振るおうとしたが、音を立てずにシグが目の前から消えたことで、両手斧を振るう手が止まった。その隙に死角へと回り込んでいたシグに気付き、仲間が叫ぶも遅かった。声を上げることもなく、後ろから首を叩かれ、意識を狩られていた。
「嘘だろう…さっきとは全然動きが違うじゃない?!」
「い、一斉攻撃だ!全員で突撃して、奴の動きを封じろ!」
まさしく別人…狩人の時の動きを連想させるようで、それともまた異なるシグの動きに、聖竜連合の思考は混乱のあまり限界を迎えた。フォーメーションを維持する余裕はもはやなく、動揺のあまりバラバラに突撃し始めてしまった。
両手剣を持ったタンクを担うプレイヤーが仕掛けるも、それよりも早くシグは跳躍して剣を躱す。遅れて振られた斬撃は宙を切り、頭上を通り越すシグの動きを追っていたプレイヤーは、目線を動かすことしかできなかった。
「このぉ…なぁ、動けない…!?」
背後を取ったシグに追撃を掛けようとしたが、背中を引っ張られるような感覚に襲われ、そのまま雪の中に倒れ込んだ。
跳躍して飛び越えた後に、シグがタンクのプレイヤーの装備であるマント目掛けて刀を投擲していたのだ。勢いよく、そして、深々と地面に刺さった刀は簡単に抜けず、それに引っ張られる形となったのだ。
しかし、シグが獲物を手放したのもまた事実で…それを好機と、片手棍を手にしたプレイヤーがソードスキルを発動させながら迫っていた!
「もらっ…ガァ!?」
渾身の一撃を叫びと共に放とうとしたが、それは最後まで発せられなかった。着地の反動で縮めていた足の反動を活かし、シグは風に等しいスピードで加速し…懐に飛び込むと共に、右膝を叩き込んだのだ!
シグが刀を手放したのはワザとだった。確かにこの世界では、武器を使わない徒手空拳での攻撃は、体術スキルを使ったとしても、そこまで大きなダメージは与えられない。だが、それはHPをあまり削れないというだけであって、痛覚という意味では全く話が異なるのだ。
アジアに嫌という程に鍛えられたこともそうだが、拳での戦闘を得意とするアジアに対し、シグは脚力や瞬発性を活かした蹴撃をまた十八番としていた。あの高速の抜刀術を繰り出す脚で、その速度をも加えた蹴撃は…ちょっとした殺人技の領域に達する程の威力を持つ。
聖竜連合の面々にとっては幸福は、この世界が体術によるダメージが大きくないこと、そして、HPがゼロにならない限り、どんな殺人技級の攻撃を急所に喰らっても死なないということだった。
…ミシリ、とまるで骨が折れたかのような音が響き、プレイヤーの身体が空に浮かぶ。だが、シグの攻撃はまだ止まらない。
二撃、三撃と超高速で右膝蹴りを腹部へと叩き込み、そのまま空に浮いているプレイヤーへと止めの右回し蹴りを叩き込む!立ててはいけないといってもいい程の鈍い音と同時に、プレイヤーの身体が吹っ飛ぶ。
弾丸とまではいかないが、大砲の弾のように吹っ飛んだプレイヤーは、後続として迫っていた2人のプレイヤーを巻き込み、意識を失った。
「こ、この野郎…!」
「背後から攻撃するのなら、叫ぶなよ」
ようやく姿勢を立て直した両手剣のプレイヤーだが、既に次の動きに移っていたシグへと追いつくには一手遅かった。
両手剣を振り被った時には、シグはプレイヤーの左膝を土台にして飛び上がっていた。そのまま、こめかみに向けての右膝を叩き込む…シャイニング・ウィザードと呼ばれる一つの技なのだが、知らずに近い技を放ったシグにより、また1人戦闘不能へと追い込まれる。
それと同時に刀を回収したシグだが、その瞬間、またしてもシグの姿が消えた。と思ったら、居合術によって呆然としていた2人のプレイヤーのみぞうちに刀を叩き込んでいた。
シグが本気を垣間見せて2分…たった2分で、既に10人のプレイヤーが戦闘不能へと追い込まれていた。まさしく半壊の状態に、聖竜連合は撤退するべきだった。だが、彼らのプライドが…いや、頭では分かっていても、攻略組の意地が彼らをこの場に残らさせてしまっていた。
対するシグは、あれだけの動きを見せたというのに、さっきと同じように一切息を乱していなかった。それどころか顔を隠すフードさえも一切崩外れないようにしているところからして、まだ余裕があることは明確だった。
「…さてと。どうする?このまま続けて無様な結末を迎えるか、それとも、仲間を連れて逃げ帰るか…?」
半分のプレイヤーを戦闘不能にしたところで、シグは再度の…そして、最後の忠告を口にした。ここで退いてくれればと僅かの希望を抱くが、聖竜連合からすれば、屈辱的な言葉でしかなく、
「ふ…ふざけるなぁ!?貴様の首を取るまで、我らは一歩も退かん?!」
「…だろうな。だったら……一気に終わらせるぞ」
指揮官の返答は後者だった…そして、それをまた予想していたシグは、一段と冷たい声を出し、その目が鋭くなる。
そのまま、シグは刀を抜刀したまま、ゆっくりと歩き出した。
一歩一歩、まるで処刑人かのようにプレイヤーたちの元へと歩いていく様は、かつてオレンジプレイヤーたちに呼ばれていた死神のようにも見えた。
ゆっくりと…脱力し切ったその姿は隙だらけに見えるが、その隙が罠ではないかと疑ってしまう聖竜連合の面々は動けない。だが、シグは着実に迫ってくる。迫りくる恐怖に耐えきれる者はそう多くないだろう。その通り、1人のプレイヤーが限界を超え、シグに飛び掛かった。
…距離にして、数メートルの距離だったが、片手剣の間合いとしては飛び込めば、剣が届く距離だった。だが、その剣はシグを捉えることはなかった。
「…えっ」
剣が届く直前、シグが消えたのだ。驚きのあまり声が出たプレイヤーだったが、その直後に、背中に衝撃を覚え、そのまま意識を手放した。もちろんその正体は、シグが背後に回り込んで刀を叩き込んだからだ。
だが、それだけでは終わらなかった。いや、ここからがまさしく本番だった。刀を叩き込んだ直後、シグの動きが一気に変わったのだ。
先程までのゆっくりの動きとは異なり、雪土を一気に駆け抜け出したのだ!さっきの5倍、いや、それ以上か…目で追うのがやっとの速度に、見失わないようにとプレイヤーたちの目がシグを追う。
ジグザグに駆け抜けるシグの動きを追い、肉薄したプレイヤーが獲物である両手槍で反撃しようとしたが、またしてもシグが目の前から消えた!その直後、地へと叩きつけられる…今度は、頭上に飛び上がったシグが半月を描くように頭部に斬撃を叩きつけたのだ。
そして、着地と共にシグはまたしても加速した。今度は、場所を転々とするかのように、高速移動を行い、三度同じようにプレイヤーへと肉薄し、意識を刈り取っていく。
…動きはギリギリまで追えているにも関わらず、直前で反撃しようとしたところで、プレイヤーたちはシグを見失い、そのまま意識を刈り取られる…その繰り返しだった。
それはある意味でシグの切り札の一つであり、シグの剣式の合わせ技の一つだった。
功式と護式…二つの剣式の特徴を組み合わせた『交式』として分類させているのが、今、シグが使っている技の正体だった。交式〈白蛇 逆鱗舞踏〉…敵に接敵するまでの速度を「中」として、肉薄した直後、一気に最高速にまでスピードを上げて死角へと移動し、一撃を叩き込む…移動のスピードを瞬時に切り替えるのと、わざと移動速度を遅くしたり、敢えて正面に飛び込むことで攻撃を誘発しようとして、隙を生み出す…高速移動の目で追えたとしても、それ以上の速度で死角へと移動することで、まる消えたかのように見えるわけだ。もちろん消えたように見えるのは相手だけで、周りから見れば、シグが物凄いスピードで移動しているだけなのだが、それを実際に目の前で喰らったとしたら、対処するのは簡単な話ではなかった。
…もちろん、そのような移動スピードの連続しての切り替えは、シグへの負担も大きいのだが、9人を斬り倒すぐらいはわけなかった。
「…あ、あり、えない…」
そんな絶望の言葉を絞りだしたのは、唯一残った指揮官だった。3分も経たずに、19人のプレイヤーが全滅。さっきまで優勢と思い込んでいたのに、蓋を開けてみれば、1人の守護者により、攻略組プレイヤーたちが無力化されてしまったのだ。
現実を認めたくないとばかりに言葉を口にしたが、残念ながら事実は非情だった。逆に、シグが告げた通告が現実となってしまったのだった。
「……………」
…ザッ、ザッ…
「く、くるなぁ…」
無言のまま、シグはゆっくりと指揮官へと歩み出した。今度は自分の番と悟った指揮官は逃げるように叫ぶが、恐怖が勝り、足が上手く動かせないでいた。だが、そんな指揮官の狂乱ぶりなど知ったことではないといったように、シグはゆっくりと近づいていく。
…ザッ、ザッ、ザッ、ザッ…
ゆっくりと、確実に迫ってくる足音が嫌に耳に届く指揮官は、少しでもシグの到着を遅らせようと、片手剣を乱暴に振り回す。しかし、シグは全く気にすることのなく、もう間もなく、肉薄しようとしていた。
「くるなぁぁぁぁぁ!?」
眼を瞑ったまま振られる剣は予測不能に近かった。そのうちの一撃がシグの顔に迫ったが、シグは僅かに頭を動かして直撃を避ける。だが、右頬を斬撃が掠めた…が、何故かシグは不敵な笑みを浮かべた。
そして、そのまま刀を振るい、なんと指揮官の両腕を斬り飛ばした!
「ぐあぁ…ああぁ?!」
「ようやく、オレンジになってくれたな。これで心置きなく、叩き伏せられる」
「っ…(…そ、そうか…こいつ、最初からそれが狙いで…?!)」
腕を斬り飛ばされたことで不快感を味わいつつ、シグが口にした言葉によって、指揮官はようやく全てを悟った。
…そう、やろうと思えば、シグは最初から自分たちを無力化できたのだ。それにも関わらず、何故最初は苦戦したかのように見せかけたのか。いや、見せかけたわけでもない、これはシグが仕掛けた罠だったのだ。
…グリーンカーソルのプレイヤーに攻撃を仕掛けた場合、決闘以外でのダメージを与える行為は、カルマ値を落とし、カーソルをオレンジへと変える。そして、グリーンカーソルのプレイヤーは、オレンジカーソルのプレイヤーを攻撃しても、カルマ値の変動は発生しない。
…そう、シグはわざと攻撃を誘発し、自身に掠めさせることで、聖竜連合の面々をオレンジカーソルへと全員変更させたのだ。そして、カーソルが変わったことで、一切の容赦なく、本気の攻撃ができる環境を作りだしたのだ。
「…堕ちろ」
全てを悟った時には遅すぎた。急な突風にてフードが外れたことで見えたシグの素顔を前に、彼が放った冷たい一言共に刀が頭部に振り落とされ、指揮官が雪の中へと叩き込まれた。
「…なん、なんだ……お、まえ…は…」
「…最初に言ったはずだ。ただのボディガードだよ」
指揮官が口にしたのは単なる疑問だったが、シグは敢えてそれに答えた。そして、指揮官の意識もなくなったことを確認し、周囲のプレイヤーたちもまだ意識を取り戻していないことを確認してから、ようやく大きなため息を吐いた。
(さてと、次は後片付けだな)
一息点き、刀を払ってから鞘に納める…だが、まだ終わりではないとばかりに、シグは右手でメニューを開く。そこからアイテムをオブジェクト化して、発動するための言葉を口にする。
「コリドー、オープン」
その言葉と共に発動するのは回廊結晶…登録している場所との簡易的ワープゲートを開くアイテムを使用したことで、システムエフェクトと共にゲートが開く。登録先は、狩人時代と同じ第1層の黒鉄宮…そんなところにオレンジカーソルのプレイヤーを放り込んだりしたら、あっという間に牢獄行きは確定だった。
…もっとも、アルゴを襲おうとした時点で、シグはこうすることを最初から決めており、だから、あんな無茶な戦いをしたわけだが。一切の迷いなく、次々とプレイヤーをゲートへと放り込んでいくその様は、ある意味で狩人ぽかった。
そして、最後の1人を放り込んだところで、ゲートを閉じたシグが向かうのは…シグの戦いを見て、呆然としていたアルゴの元だった。
「…よっと」
「うわぁ…!?シ、シグ…!?」
呆然としているのをいいことに、シグはそのままアルゴを肩に担ぎあげた。予告もなく、米俵のように担がれたアルゴが慌てるも、シグは一切気にせずに移動していく。
「とりあえず移動するぞ。あんまり長居できる場所でもないからな」
「だ、だからって…こんな雑に扱うことないだろう!」
「いや、だっことかおんぶさせるような間柄でもないだろう。じたばたするな、運びずらい」
抗議の声が肩から聞こえてくるが、それを無視してシグはアルゴと共に雪の中に姿を消したのだった。
キャラ解説
シグ/速水英雄
刀をメインウェポン、徒手空拳(主に脚撃)・暗器・投擲物をサブとして戦うプレイヤー。
βテスターだが、本人はSAOがMMOは初めてプレイしたゲームである。父親の影響でSAOのβテストを代わりばんこにプレイすることになり、仕事で不在としていた父に譲られる形で、正式リリース時に先にプレイしたことで、デスゲームに巻き込まれることになった。
βテスターとはいえ、知識はあっても、MMOどころかゲームが初めてということもあり、序盤はそこそこ動けるレベルのプレイヤーだったが、仲間の一人であるアジアに扱かれたことで攻略組と同等以上の実力を身に着けた(特に対人戦においては、キリトやアスナたちとも互角以上にやり合える)。
父親のゲーム仲間であるメンバーと共に、ギルド「ミスフィッターズ」を結成するも、笑う棺桶のメンバーであったアバウの策略によって、アジア以外のメンバーが自死したことでギルドは半壊、シグ本人も精神的なダメージによって外壁への投身自殺を図る寸前にまで追いつめられるも、アジアが(それが悪手だと理解しつつも)生きる目的を復讐へと傾けさせることで、負の感情に推されるがままに生き続けるようになった。
狩人という名を背負い、アバウへの復讐を果たすも、本人は必要悪として、アインクラッドの負の側面を背負うとして暴走するも、アルゴの説得と仲間たちが残した本当の遺志を思い出せられたことで、本当の意味で立ち直ることができた。また、このことがきっかけで無自覚にアルゴに好意を抱くようになった。
性格は昔は落ち着きがありつつも、気さくな性格だったが、ギルド半壊後は後述する後遺症の影響もあり、酷く冷静で、ぶっきらぼうなものになってしまったが、立ち直り後は親しい人物の前では昔の性格を少しだけ見せるようになった。
精神的ダメージの影響(PTSD)で、味覚をほぼ感じなくなっており(アジアが入れてくれる珈琲だけは味を感じる)、視覚も色覚障害を負っているが、立ち直った後はアルゴやアジアのことは色を感じられるようになったなど、少しずつ回復している。
戦闘スタイルは刀によるオリジナルの剣式を使い、状況によって攻式・護式・交式の剣式を使い分ける。
ある意味で、この人が本当の鬼なのでは?
対人戦ではシグがほぼトップクラスの強さです。これとやりあえるのが、ユウキやキリト、アスナくらいという設定でした(まぁ、このクラスのキャラが攻略組にいると大変なことになるので、裏方というキャラ設定な形でしたが)。
舐めプというか、一番相手にとって屈辱的な負け方をさせるという…ある意味で狩人としての経験も生かした戦い方でした。まぁ、アルゴからしてみれば、マジで激怒案件の戦い方ですが(この時点で恋人になっていたら、マジギレされていたでしょうね(笑))
居合術を使うという設定から、それを活かした足技も強力というのが、シグの裏設定でした。といっても、護式や足技は結構な後付け設定なのですが。
というわけで次回は後日譚…シグの解説と、事件の終結を描く形です。
それでは、また。