というわけで、笑う棺桶討伐戦編もこれにて終結。ようやく終わりが見えてきました…(当初はここまで長くなるとは思ってなかった)
それでは、どうぞ!
「…ハァ、ハァ、ハァ…!(な、なんなんだよ、あいつは…?!)」
第50層アルゲード…様々な建物や商店に隣接する小道がいくつも分岐する、まるで巨大迷路のように入り組んだこの主街区は、『迷った末に帰ってこれなくなったプレイヤーがいる』と噂が流れる程に、その街路は複雑と化していた。
雨が降り、薄い霧も漂う中、この街に逃げ込めばなんとかなると高を括っていた男は、自身の考えが甘かったことを、そして、少し前の自信の判断を悔やんだ。
全貌は把握できていないが、この街のことはある程度把握しており、どこにどう逃げれば、追跡を振り切ることができるかを分かり切っていた筈だった。
…だが、追跡者は男の予想を遥かに上回る程に、この街のことを理解していた。いや、何よりも、
(なんでだ…!鼠の奴が疑われるように、証拠も捏造したし、調査の方向性も鼠に誘導したのに…なんで俺がオレンジの奴らと繋がっていることを知ったんだ…!?)
自分が逃げる先に、回り込むように追跡者は現れていた。この街に逃げ込んでから、もう3度…角を曲がった先に、追跡者が先回りしている光景はちょっとしたホラーに等しかった。
追われている気配はないのに、見られている感じを覚え、男は振り返る勇気もなく、ただ逃げ回っていた。
男はオレンジプレイヤーと…笑う棺桶と繋がっていたのだ。討伐戦により、笑う棺桶が壊滅したことで、男は自身の行いがバレることを恐れ、討伐戦によって攻略組が痛手を負ったことをいい機会に、調査の目をアルゴに押し付けようとしたのだ。
…男の策は途中までは上手くいっていた。実際に、聖竜連合はミスリードによってアルゴを疑い、その身柄を拘束しようと強硬策に出た。だが、そこでイレギュラーが介入したことで、策が失敗に終わったことを男はまだ知らない。
そして、その失敗を知ることになるのは…
「…っ…?!」
足元の水たまりに何かが映ったように見えた時には、手遅れだった。影が被り、思わず振り返ろうとした瞬間、男の左ほほに拳が叩きつけられた!
圏外なのでアンチクリミナルコードが働くこともあり、男にダメージは発生しない。だが、あくまでダメージが入らないだけであり、衝撃によるノックバックは発生するのだ。
「…ぶべぇ?!ぎゃあぁ?!」
屋根を伝って移動していたため、そこから飛び降りながら放った拳の一撃は重かった。地面の水を弾き飛ばし、地面に叩きつけられた男は二度バウンドしたところで、ようやく地面に不時着した。
「…そろそろ鬼ごっこは終わりにしようか」
「な、なにを、ぎゃぁ?!」
静かに、音を立てずに地面に下りた追跡者は、ズレそうになった眼鏡の位置を少し直しながら、拳の調子を確認するように触りながら、男に近づく。追跡者の言葉の意味が分からないでいた男の言葉は、胸倉を掴んだ勢いで、そのまま拳を放った追跡者の凶行により紡がれることはなかった。
「悪いね…僕の仲間の大事な人の一大事なんだ。証拠は揃ってる…このままおとなしく自首してくれないかい?自首してくれないというのなら…」
二度目の叩きつけにより、今度は地面にキスするかのように叩きつけられた男の心は折れかかっていた。それに止めを刺すかのように追跡者…フードを被り、光る眼鏡の奥に見せる鋭い目つきをしたアジアは言葉を口にした。
「君が素直になるまで、何度でも地に伏せてもらうことになる。暴力は好きじゃないんだが…僕もかなり機嫌が悪いんだ。憂さ晴らしのサンドバックになるのと、おとなしく罪を認めるか…好きな方を選ぶがいい」
その言葉と共に、男の顔の横を通り過ぎるように地面を殴りつけたアジア…その言動に、男はただ頷くことしかできなかったのだった。
…パチ……パチ…
「…っ……ううぅ…」
「目が覚めたか…?」
「…シグ……?ここは…」
落ちていた意識が覚醒し、アルゴは目を覚ました。温かいと感じたのは、小さな焚火によるものだった。まだ半覚醒な意識で回りを見渡すと、火の番をしていたシグの声が聞こえてきた。
「…57層の雪原フィールドの洞窟だ。あまり人に知られてない洞窟でな。ダンジョンでもない、小さな横穴だから、オレンジプレイヤーが隠れることが多いんだ」
「……………」
「まぁ、なんで知ってんだという疑問は当然だと思うが、狩人の活動をしていた時に知ったんだ。あの時は、オレンジプレイヤーの隠れ家とかを調べていたからな」
シグの説明を聞き、アルゴは疑問を口にしようとしたが、憚られた。狩人だった頃に知ったのかと聞こうとしたが、それがシグを傷つけることになるのでは思ってのことだったが、シグの方は気にするなと言わんばかりに、アルゴの疑問を察して答えた。
「…オイラ、どれくらい眠ってたんダ?」
「1時間くらいだ。まぁ、灯台下暗しってやつで、聖竜連合も俺らがまだ57層にいるとは思ってないだろうしな」
「そうか……それで、これから、どうするんダ?」
「どうするって…どういうことだ?」
最低限の確認を終え、アルゴはこれからの方針をシグに尋ねた。その問い掛けに、シグはまるではぐらかすかのように尋ね返した。
「…助けれてくれたのは、本当に助かった…でも、オイラはまだ聖竜連合に追われてるんダゾ。このままずっと逃げ続けたら、お前も…」
「まぁ、このまま逃げたらそうだろうな。でも、ようはお前が、討伐戦に関する情報漏えいをした犯人じゃないと証明できたらいいわけだろう?」
「それは……そうだが、そんな簡単な話じゃないだろう…」
「…なぁ、アルゴ。俺が狩人と活動していた時、どうやって情報を収集していたと思う?」
「…?」
このままでは逃避行にシグを突き合わせることになる…それを懸念したアルゴの言葉に、シグは冷静なまま解決策を提示する。それが簡単なことではないと反論するアルゴだったが、突然の話題転換をしたシグの言葉に眉を顰めた。
「俺も裏に精通している情報屋とかを使ってたんだけど、やっぱり直接調査とか問いただしたりしないといけなかったんだけどさ…実は俺1人でやっていたわけじゃないんだ。そういうことも教えながら、主に情報整理とかをやってくれていたのが、アジアさんなんだ」
「……って、もしかして…」
「多分、もう犯人に目星をつけて追跡してると思う。今日の夜までには攻略組に突き出してるじゃないかな」
「…なるほどな。狩人は2人組で行動してたわけか。あの人も何か関わっているとは思ったけど、そういうことだったわけか」
シグの説明に納得したアルゴは、安堵したこともあり、そのまま脱力した。一方のシグは、頼んだわけではないが、飛び出す前に一瞬目があったことで、アジアの真意を把握していたのだ。
だから、シグは安心してアルゴを助けに来れたのだ。まぁ、シグの予想よりも早く、犯人はアジアによってとんでもない追い詰められ方をしているのだが。
「「…………‥」」
一安心したことで、アルゴはそのまま黙ってしまった。そのため、沈黙が2人の間に漂ってしまった。
「…流石のお前も、いつもの騒がしさを出す元気はない感じか?」
「お前、オイラのことを何だと思ってるんダ…流石のオイラも、攻略組にここまで追いかけ回されたのは初めてだからナ…」
「まぁ、そうか…攻略組が追い回すなんていうこと自体が珍しいか」
「……………」
「……………」
「……………」
「…アルゴ、聞きたいことがあるのなら、聞いていいぞ?」
「…!いや、その……だって…」
話が続かない…いや、アルゴが迷っているのが原因だった。珍しく動揺の反応を、目を右往左往する形で見せるアルゴに、シグは(ちょっと面白いと思うのを表情には出さずに)遠慮なく聞いていいと告げるも、アルゴはまだ迷っていた。
「さっきの俺の戦い方について、聞きたいんだろう?」
「…それはまぁ……さっきの戦い方…あれ、なんだったんダ?狩人の時とも少し違っていたヨナ?」
「…まぁ、分かりやすく言うのなら、オリジナルの技だ。俺は、攻式、護式、そして…交式って書く交式って3つの剣式に分けてけどな」
「3つの…剣式…」
「お前の前でもよく使っていた抜刀術とかが攻式…交わるほうじゃなく、攻撃の式のほうな…まぁ、文字通り攻撃の剣式だよ。といっても、正確には先手必勝で、相手の武器を持つ手を斬ったり、急所を叩いて戦闘不能にすることを目的とした技を作ろうとしたのがきっかけなんだけどな。
一方で護式…護りの式って字だと書くんだが…こっちは反撃技をメインとした剣式だな。さっき雪を纏って回転斬りを放ったのが、護式の一つだ。こっちは反撃だけでなく、守護の剣式でもあるから、他の技につなげやすいという特徴もある感じだ。
それで、最後の交式…これは、攻式と護式を織り交ぜた剣式だ。さっき最後に見せたのがその技だ。まぁ、消耗が酷いから乱発できないだけどな…」
「……………」
「…?どうした、何か分からない点があったか?」
簡単にだが、シグは自身が使う剣式の特徴を説明していった。そして、ある程度説明し切ったところで、相対するアルゴが唖然とした表情を浮かべていたため、どうしたのかと首を傾げたのだが、
「…いや、もうどっからツッコめばいいのか分からん…」
「…はい?」
「まず、オリジナルの技ってなんダヨ?自らシステム外スキル…いや、システム外擬似ソードスキルって言えばいいのカ…なんでそんなもんを開発してんダヨ…というか、そんなにベラベラと話していいのカヨ…」
「別に抜刀術以外はそんなに使う機会はなし、知られたところで、そう簡単に対策できるものじゃないしな。それと…俺は剣式の特徴は言ったが、技があれだけとは言ってないし、全部を見せてないからな」
「…!も、もしかして…まだ見せてないのがあるって言うのカ…!」
「まぁ、その辺りは企業秘密ってことで」
久々にしてやったりと、アルゴの驚く様に、シグは少しだけ満足したように笑いながら言葉にしつつ、少し真面目な表情に戻り、
「あと…お前には話してもいいって思ったんだよ。まぁ、ボディガードだし…お前なら、秘密を守ってくれるだろうからな」
「…!そ、その言葉は反則だろう…」
弱っているせいもあるが、ここまで言われてしまうと、アルゴもそれ以上何も言えなくなってしまう。一方で、もう一つ気になったことがあり、それを尋ねることにした。
「そうダ…戦い方といえば、あの蹴り…キックの仕方は何なんダ…?もの凄いえげつない威力というか、勢いというか…あれ、ちょっとした殺人技だろう…」
「…あー、あれか……あれな」
刀の技に納得したところで、話題は蹴りの話になった。落ち着いて振り返ると、シグが繰り出した蹴り技のえげつなさを思い出して尋ねたアルゴだったが、それに対するシグは遠い目をしつつ、語り始めた。
「…アジアさんだよ。俺たちがまだ未熟だったころ、サブウェポンとして、格闘術を叩き込まれたんだよ。それで、俺はほら…抜刀術が以外にも才能があったみたいで、その脚力を活かした蹴り術を嫌という程に叩き込まれたんだよ……一体、何回…いや、何百回、地面に叩きつけられたっけな……アハハハ…」
自身の蹴り技はアジア仕込みだと語るシグは乾いた笑みを浮かべて、ますます遠い目をしていた。
今では蹴りの威力だけで言うのなら、アジアを超えるようになったシグだが、それに至るまでの経緯は……まさしく地獄の特訓と言える日々の賜物だった。
『立て!立たんか、この軟弱者が!その程度で、この老兵一人を倒せると思うな!?』
『腰に力を入れて、這いつくばろうとする身体を無理矢理起こさんか!?』
『気合が足りない!?意識を失うまで足に力を入れ、気合で相手を射殺せ!最後の最後まで、魂を燃やして喰らいつけ!?』
『『『ぎゃああああああああ?!』』』
『アジアさん、止めてくれぇ?!』
『…お、鬼……鬼が…い、ガクッ…』
「…ハハッ、本当によく生き抜いたよなぁ…」
後に『地獄のハードキャンプ』と呼ばれた、リョナスたちと語った地獄の特訓の日々の甲斐もあり、シグたちは、自身の武器を最大限に生かした戦い方ができるように、その実力を一気に伸ばしたのである。
そして、ギルド半壊後も、アジアの手ほどきを受け、シグは狩人として、オレンジプレイヤーを狩れる実力を身につけることができたのだ。だから、シグにとってアジアは仲間であり、そして、師匠にあたるわけだ。
…もっとも、訓練になると人が変わったように鬼軍曹になるアジアに、ちょっとしたトラウマを覚える形になったのだが。
「…とりあえず、お前がキー防たちと同じレベルの化け物だって分かったヨ」
「いや、攻略組に比べられてもな…俺は対人戦は得意としてるが、モンスターとの戦いはちょっと強いくらいだからな。さっきの聖竜連合との戦いだって、初見殺しが上手く嵌ったようなもんだよ」
「いや、普通、人の死角に入り込むような移動するなんて、簡単にできるものじゃないだろう…」
いつもより饒舌なシグが語っていく話を聞いていたアルゴは、少し引いていた。だが、そのような態度を見せる程に、アルゴにも余裕が戻ってきていた。
「コツがあるんだよ。入り込むだけじゃない…人の意識を向けさせることも加えての技術なんだ」
「…意識の、誘導ってやつカ?」
「それだな。まぁ、攻撃誘導とか色々あるが、隙だとワザと見せかけて相手の攻撃をミスリードする、刀の動きや踏み込みでこちらの動きを敢えて予想させるとか…人の意識を誘導させる手段は結構あるのさ。例えば、これとかな」
その言葉と共に、シグは懐から銅貨を取り出した。何をするのかと、アルゴが目で追っていると、シグは銅貨を親指で上に弾いた。
これが意識誘導なのか、そう思ったアルゴは銅貨の軌道を気にしつつ、シグの動きを見ていた。そのまま空に上がった銅貨は重力に引かれて、再びシグの手元に…
…カァン!
「…うぉ?!」
だが、手元に戻ろうとしたところで、金属音が響いた。それは、シグが人差し指で銅貨を弾丸のように弾いたせいだった。突然のことに流石のアルゴも驚き、自身の顔の左横を掠めそうになった銅貨へと気を取られてしまった。
当たりはしなかったものの、壁にぶつかった銅貨がそのまま地面に落ちそうになったところで、アルゴはしまったと思ったが、遅かった…
「まぁ、こういうことだ」
「…!」
頬を突かれた感覚がして、その正体を辿るアルゴの目線の先には、音を立てずに自身の真横に移動していたシグの顔が間近にあった。
「なぁ?人の意識を誘導させるなんて、そう難しいことじゃないんだよ」
「……………」
「…?…アルゴ?」
「…!い、いや…なんでもない…(…?な、なんだ、今の…シグの顔を見て、何か…)」
呆然としたまま反応が見えないアルゴに、シグが首を傾げていたが、声を掛けられたことで、ようやく再起動したアルゴは、自身が感じた謎の感覚に首を傾げていた。
もっとも、対するシグはアルゴのそんな態度に気付かずにいたのだが…おおよその話が終わったため、元の場所に戻ったシグが今後の方針を話すことにした。
「とりあえず、あと1時間くらいしたら、ここを離れるぞ。そこから、俺が街に言って、アジアさんに状況を確認してくる。お前は、それが終わるまで待機していてくれ。多分、アジアさんが真犯人を捕まえていると思うから…まぁ、その後は、お前のイエローカーソルを戻して、街に戻る感じだな」
「…そう、ダナ。まぁ、また攻略組が荒れそうだけどナ」
「しょうがないだろう。そこはお前や攻略組が頑張るところだろう」
「何を他人事みたいに言ってるんダ?お前も渦中に巻き込まれるダゾ…あの聖竜連合をボコボコにしたんだから」
「…別に俺は前線に出てないからな。どうとでも隠れられるさ」
(…それだけで済めばいいんだけどナ)
どこか他人事のように語るシグに対して、アルゴはこの一件が大騒動になることをどこか予感していた。
情報屋として、そして、最前線の攻略に貢献している者としての勘だった。そして、それは当たることになる。
ここからは事件の顛末を語る。
シグの予想通り、アジアが捕らえた男こそが、攻略組の情報を流していた裏切り者であった。アジアが匿名で血盟騎士団へと突き出されたそうだが、その時の男は消耗しきっており、素直に罪を認めたらしい。
それにより、アルゴを始めとした情報屋の信頼は回復し、アルゴも無事無罪放免となった。
だが、問題はここからだった。この騒動の裏で、聖竜連合のタカ派が黒鉄宮へと放り込まれ、習慣されたという情報が、アインクラッド全体を揺るがせたのだ。
最初は手口が似ていることから、狩人の仕業かという話になったが、捕らえられた聖竜連合の面々は口を揃えて、次のように証言した。
『鼠のボディガードにやられた…!?』
その証言と、聖竜連合の面々を簡単に撃退してみせた人物…鼠のボディガードなる人物は誰かという話になり、情報屋が血眼になって正体を探り始めたのだった。
まぁ、もっとも…聖竜連合の信頼低下の嫌な情報を打ち消すための、ゴシップ記事のネタとしての扱いでもあったのだろうが…
そして、情報屋の矛先が向いたのは、もちろんアルゴだった。知り合いを始めとした情報屋に連日迫られたことで、限界を迎えたことで口を滑らせてしまうのだった。
「アイツは…おいらの専門ボディガードだよ!?」
情報屋であるアルゴ…鼠の専門ボディガード。そのパワーワードは、アインクラッド中へと瞬く間に浸透していった。あの鼠に手を出せば、鼠のボディガードが黙っていない…そんな話まで出てくるほどにだった。
「『鼠のボディガード、アインクラッドの新たな猛者現る!』…正体は知られてないのに、一躍有名人だね、シグ君?」
「そうですね、まぁ、こうなることは覚悟の上でしたから。でも……誰が二つ名をつけていいなんて言ったよ?」
「痛い痛い痛い?!だって、情報屋の連中がしつかったから、ああ言うしかなかっただよ?!」
事件が終息し、ようやく日常が帰ってきたところで、店のカウンダーにて新聞を手にするアジアがその内容を読み上げていた。
どこか面白そうに呟くアジアに対し、シグは後悔はないとばかりに言葉を返していた。が、その一方で、『鼠のボディガード』なんて言う、予想外の二つ名が自身につけられたことに納得がいかず、二つを広めた主犯であるアルゴの両こめかみを、拳骨で挟み込むようにグリグリしていた!
…いつのまにか、アルゴの専属ボディガード=鼠のボディガードという二つ名が知れ渡ったことを知ったシグが、一体誰がそんなことを言い出したのかと調べたところ、フォンから、アルゴが二つ名として認めてしまったのではないか?と指摘を受けたのだ。
…過去に、夢幻の戦鬼なる二つ名を付けられたこともあり、今回もアルゴがやってしまったのだと推測したフォンの助言は当たりで、そんなわけでアルゴは綺麗にシグにお仕置きされてしまったわけである。
こうして、笑う棺桶討伐戦にかかる事件はようやく終結したのだった。
▼オリジナル要素解説
●攻式
シグが使う剣術の剣式の1つ。シグから仕掛ける攻撃的な剣術が該当する剣式。抜刀術などといった高速技なども主に攻式に該当する。高速技であることが主であるためか、足を使う剣術が多い。アジアから教えられた抜刀術や縮地といった技術を、シグ独自に昇華させた剣式でもあり、アジアも劣化版ではあるが使うことができる(一方で、フォンはこの剣式を真似ることは、そう簡単にはできないと考えている)。
・攻式〈奪命〉
抜刀から納刀までの動作が全く見えず、ソードスキルを発動させると見せかけて、普通の抜刀術を喰らわせるなどフェイントと織り交ぜることも容易い剣技。
一方で、太刀筋は変わらない・単純すぎるという弱点もあるため、一度喰らった相手には警戒されてしまう。また、キリト・ユウキにはギリギリ見切られてしまうため、反射神経が優れた相手には分が悪い。
SAO時代は対人戦ではあまり使用していないが、仲間を喪った直後の暴走戦でオレンジプレイヤーたちへと繰り出したのがこの技である(逆にいえば、首などの急所を一発で狙いにいく技であるため、HPゼロ=死亡という背景があるアインクラッドにおいては、暴走戦以降、プレイヤー相手には使用していなかった)
新生ALOでOSSが導入されてからはOSS化もしている(SAOと違って、むしろプレイヤーキルが推奨されているALOではバンバン使用していた)。
・攻式〈刹那五月雨〉
右、左、右と斜めに切り上げ、高速の3連突きを放った後に、空中から強力な斬撃を食らわせる。広範囲と重攻撃を見事に組み合わせた技(言うなれば、無双ゲーに出てくるような技)。
物語での登場はマザーズ・ロザリオ編だが、既出の技として一応記載。
・功式〈鳶爪〉(わしづめ)
その場で素早く小ジャンプ、前宙しながら繰り出す回転斬り。ほぼノーモーションで繰り出すため、奇襲や状況打破にて使用される技。これの横に回転する派生技として〈横鳶爪〉が存在する
・攻式〈猫叉〉(ねこまた)
刀を振り被り、そのまま目にも留まらぬ3連撃を頭、右・左首(または両肩)目掛けて放つ剣術。あまりの速さに、3連撃の斬撃が1回で繰り出されているように見える。足ではなく、上半身にて繰り出す高速剣戟という少し珍しい技である。
●護式
シグが使う剣術の剣式の1つ。攻撃の回避や防御崩し、カウンターワザといった剣術が該当する剣式。攻式が足を使った剣式であるのに対し、護式は腕や体の柔軟性を活かした型であることが多い。元々シグは護りの戦い方の方が得意であり、シグ自身の柔軟性の高さもあっての剣式である(護り寄りの戦い方を得意としていたところに、相手の戦力を削ぐ・無力化するといった目的でアジアが抜刀術を教え、そこから攻式の剣式を確立させ、更に反する形で発展するように護式が生まれた)。
・護式〈昇龍舞〉(しょうりゅうぶ)
その場で素早く身体を捻じ曲げ、その反動と共に回転斬りを放ちながら、飛び上がる剣式。剣術を放つスピードもあって、斬撃の風圧だけでもかなりの威力を誇る。
そして、この剣術は地の利を生かす技でもあり、足元に水や泥、雪があれば、それを巻き上げるように周囲に吹き飛ばしぶつけるといった妙技ができる。
・護式〈錯霧〉
自身の身体を軸とさせ、前後に迫ってきた攻撃を刀によって逸らし誘導することで、相手を同士討ちさせる剣術。最小限・最低限の動きで放つため、隙だと思って仕掛けたら、とんでもない仕返しを喰らうという性格の悪い剣術である。
狩人時代、キリトとアスナに対して繰り出したのがこの技である。アスナは見事に引っ掛かったが、反射神経が化け物クラスのキリトがギリギリで回避し、アスナと咄嗟に連携してこの技を破った。
●交式
シグが使う剣術の剣式の1つで、攻式・護式それぞれの特性を組み合わせ剣式。高速の抜刀・移動術に加え、シグの柔軟性や身体の使い方の上手さを組み合わせているため、2つの剣式の長所が合体=相応に強力な剣式だが、逆に言えばシグへの負担も倍以上であるため、乱発ができない。
・交式〈白蛇 逆鱗舞踏〉(はくだ げきりんぶとう)
変速での移動式抜刀術を繰り出す剣術。敵に接敵するまでの速度を「中」として、肉薄した直後、一気に最高速にまでスピードを上げて死角へと移動し、一撃を叩き込む…これを無数のパターン・移動方法で行うため、対多数戦では無類の強さを誇る。
しかし、シグの足への負担の大きさや集中力をかなり要する技であるため、連発することができず、短時間では3回連続での使用が限界(しかも、3回目は練度が下がる)。
というわけで、冒頭でアジアさんの怖い一面(怒らせたら、怖い人キャラなので)が見え、シグからアルゴに対して剣術の解説があったところで、シグの戦い方について改めて振り返りです。
当初は抜刀術をメインとした高速剣戟を得意とするキャラ設定でしたが、裏話である外伝を書くにあたって、設定を見直した上での追加でした。護式や交式は追加要素としての面が強いですが、強烈な蹴り技は抜刀術から来た設定でした。
逆に、シグが脚技を得意とする設定が固まったところで、逆に徒手空拳での戦いをメインとするのがアジアという設定になりました(今回の回想の話で、誰をモチーフにしているのか、分かった人は分かったかと(苦笑)。アジアの解説はまた後の話でやる予定です)。
鼠のボディガードの二つ名が生まれた経緯も分かったところで、ようやく『笑う棺桶』討伐戦編も終わり、次回は日常回です。それが終われば、アインクラッド編ラストに迫る後半戦に入っていきます。
それでは、また!