とりあえず、年末まで連日更新…外伝のアインクラッド編完結まで更新していきます!
(更新が遅れた理由はあとで言い訳するとして…)それでは、どうぞ!
PoHの姦計による事件から3日後。
あれから毎日顔を出すようになったアルゴに対し、『羽休めの宿』の店じまいをしていた店員姿のシグが声を掛けた。
「アルゴ、明日オフか?」
「うん?…オフだけど、どうした?」
カップを片付けながら自然と問い掛けたシグに、カウンターでシフォンケーキをたしなんでいたアルゴもまた考えなしに返答した。そんな二人のやりとりを珈琲豆の調子を確かめているアジアが見守っていたのだが…
「明日、1日付き合ってくれないか?」
「おう……………えっ?」
流れるように告げられたシグの言葉に、アルゴはまた何気なく答えて…そして、そのまま驚きの声を上げて、シグの顔へと視線を向けた。だが、シグの表情に変化はない。
「…なんダ?デートの誘いカ?」
「ああ、そうだ」
「………え」
なんとか平静を装うとして誤魔化すように冗談を言ったつもりだったが、返ってきたシグの内容に、今度こそアルゴの表情が崩れた。信じられないといった様子のアルゴが目を丸くして、シグを見ていたが…
「…デートしてほしい、って言ってるんだよ」
「…あっ、うん……いい、ゾ…うん」
真っ直ぐ、自身の目を見返すシグの態度が真剣なものだったので、シグが本気だと悟り、アルゴは珍しく顔を赤くして素直に頷くしかなかった。
ちなみに、その一部始終を見ていたアジアは
「…(ポカーン)」
愛弟子の突然かつ予想外の行動に、これまた驚きのあまり口が開きっぱなしになっていた。手から豆が零れ落ちるのも知らず、店内に豆が落ちる音だけが響いていた。
そして、迎えた翌日。
いつもの恰好で待ち合わせ場所へと向かったシグだったが、
「……………」
「…なんダヨ」
「…いや、待ち合わせ時間の30分前だろ。なんでもういんだよ?」
「…うるせー。女性を待たせるなんてダメだろうが…」
第47層の主街区の転移石近くにあるオブジェクト…時計がついた柱の前に既にアルゴがいたのだ。既に彼女がいることに驚きつつ、シグが声を掛けると、アルゴから返ってきたのは悪態だった。
だが、いつもの明るさは控えめで、目線もどこか泳いでいるようだった。緊張しているのかと思い、シグはアルゴに言葉をかける。
「もしかして…気持ちが落ち着かないで、早めに来ちまった、とかか?」
「…(ゴスッ)」
「ぐぉ…無言で腹にブローをかますな…」
「さ、さっさとエスコートしやがれ、この野郎…!」
「分かった、分かった…ほら、行くぞ」
いつもの彼女の調子にもどそうとして、敢えて少し怒らせるつもりでの言葉だったのだが、逆に核心を突いてしまったため、アルゴから無言の反撃ブローが返ってきてしまった。
このままじゃいつもの調子に戻れないと悟ったアルゴはさっさと案内するようにとシグに促し、調子が狂いながらもシグもアルゴを連れ、デートを始めるのだった。
「…意外といいもんダナ、こういうのも」
そんな言葉がアルゴから出たのは。小さな不規則の揺れに揺られるものだった。第47層の一角…花に囲まれた水路を辿るように進むボートに乗っている中、アルゴの雰囲気がいつものものへと戻りつつあった。
「47層はデートスポットとして有名だが、この水路は結構穴場だからな。まぁ、ボートが操作できることが前提だから、当然といえば当然だけどな」
「…ボートか。第4層の攻略を思い出すナ」
「あー、水路の街『ロービア』か。あそこもデートスポットとしては有名だよな」
「というか、こういった穴場を知ってるなんて…お前も意外と隅に置けないヨナ?」
「まぁ、一応は色々と情報を集めていたことがあった時に、ついでにな」
「ふーん……それで、なんでいきなりデートになんか誘ったんダヨ?」
「…まぁ、色々とな。お楽しみを先に知るのはご法度ってことで、今は波に揺られていてくれ」
(…この感じ、なんか用意してるナ。ったく、デートだって素直に認められて、こっちは変に気を遣っちまうナ。こういう時、シグのポーカーフェイスは厄介だよナ…)
シグの真意を探ろうと問い掛けるも、飄々とした態度で答えを躱されてしまい、アルゴは何とも言えない表情で川の水面へと視線を落とす。そこには頬が少し赤い自分の顔が映っていた。
眠れなかったというのは本当、だから、気持ちが焦って、今日は待ち合わせ場所に早く来すぎてしまったのだ。アルゴは自身の感情を既に理解してしまっていた。先日の一件…PoHの姦計でシグを喪うかもしれないという危機感は、アルゴの恋心を自覚させることにも繋がっていた。
だからこそ、今日のシグのお誘いはそういうことだと考えてしまうのは無理もなかった。ところが、当のシグはそういった態度を一切見せない。自分だけが振り回されているような気がして、どこか面白くなかったが…
(…まぁ、今日はシグのお手並み拝見といくカ)
シグのエスコートに期待している自分がいるのもまた事実で…難しく考えるのを止め、アルゴは揺れる船のデートを楽しむことにしたのだった。
「…フリーマーケット?」
「あれ、この手の座の市にくるのは初めてか?」
舟の長旅を楽しんだ後、次にやってきたのは第30層の市街地…十単位目の階層ということで、かなり大きな街だが、そこで不定期に行われている市に2人は来ていた。
それなりに名と共に顔も知られているため、フードで顔を隠したアルゴが少し驚いていたので、予想外の彼女の反応にシグもまた少し驚いていた。
「うーん…チラッと覗いたことはあるけど、そこまではナ。こういうのって娯楽品とかが中心だろう?攻略中心の情報収集の方にリソースを割くと、どうしてもこっちの情報収集については限度があるからナ」
「まぁ、開催も不定期だからな。でも、掘り出し物があったりすれば、プレイヤーメイドの面白いアイテムも売られていたりするから、ウインドウショッピングには結構最適だぞ」
「へぇ…なら、早速行こうゼ!」
ということで、ぶらり巡る形でのショッピングが始まった。
「服か…まぁ、定番だよナ」
「アルゴ、一応聞いておくが、私服とか持ってるんだよな?」
「…お前、オイラのことを何だと思ってるんだ」
「いや、動きやすい服さえあればいいと思ってそうだなと」
「…よし、次にいくカ」
(図星だったな)
服を作成したプレイヤーの露店にて、珍しいものを見るようなアルゴのコメントに、失礼な感想を投げるシグだが、返す言葉が見つからなかったアルゴは逃げるようにその場を離れていったり、
「的当て…こんなミニゲーム見たいなのもあるんダナ」
「結構子供のプレイヤーも来るからな…(商品はまぁ一般的に手に入りやすいものだけどな)」
「(あー、なるほど。どっちかというと、遊戯目的ってことなんダナ)…なぁ、シグ。ちょっと勝負してみないカ?負けた方が罰ゲームナ?」
「いいけど…初めてやるのに、そんな強気なことを……いや、いいや。なら、アルゴの先攻でいいぞ」
5つのボールで、いくつかの大小サイズの的を当てるゲーム屋に興味を持ったアルゴの提案で勝負をすることになったり…結果は、
「…っ~~~~~~~~~!?卑怯だぞ、シグ…」
「いや、初見のゲームで勝負を挑んだお前が悪い」
景品でもらった猫耳のカチューシャを身に着けることになったアルゴが奇麗に負けたというオチだった(2発ほど外してしまったアルゴに対し、高得点全ての的を当て切ったシグの圧勝だった(暗器を獲物としていることもあり、シグが投擲を得意としているのも大きかった))。
「………………」
「それ、欲しいのか?」
「…!い、いや、別に?!ちょっと綺麗とは思ってたけど…」
「指輪とセットだと猶更いいよな…」
「ゆ、指輪?!」
アクセサリーショップの前で、トパーズの首飾りに目を奪われていたアルゴ。それに対して、シグが買おうかという意味も込めて問い掛けたのが、素直になれないアルゴが口ごもる。あと、爆弾発言をしたシグに、アルゴはもう何も言えなくなってしまっていた。そんなやりとりを経て、
「~♬」
(…そこまで気に入ってくれたのなら、良かったか)
(…アーちゃんの気持ちがちょっと分かったナ)
結局首飾りを買ってもらったアルゴのご機嫌な様子を横目に、どこか満足気なシグ。一方のアルゴも、知人から偶に聞かされる惚気話を思い出し、シグに赤くなった顔を見られないように、フードを深くかぶり直したのだった。
そういうことで、デートの時間はあっという間に過ぎていき…
「お、おい…ここって……」
夕食時になり、シグの案内であるレストランに来たアルゴだったが、店名を見て絶句していた。店員に案内されるがままに席に着いたが、内装・雰囲気共に空気が違った。周りに聞こえないように、ヒソヒソと話しかけるアルゴに対し、シグは自然体のままだった。
「プレイヤーが経営している店でも、予約が取れない店で有名じゃないカ?!というか、予約する方法すら謎だって言われているのに…なんで予約取れたんダヨ…!」
「…ここの店主、ミスフィターズで活動していた時に、依頼を受けたことがあったんだよ。その縁での知り合いだったって話だけだよ。といっても、有名になってから、俺も店に来たのは初めてだけどな」
蝋燭の火に照らされた店内では、お客さんがそれぞれ食事を楽しんでいる中、驚きまくりのアルゴに、シグが種明かしをしていた。人脈を活かした方法にアルゴは目を丸くしつつ、情報屋としての血が騒いでしまい、
「…な、なら…この店の予約の仕方も知ってるのカ?」
「知ってるけど、情報屋の商材として売るのは無しだぞ。そんなしたら出禁だからな…予約方法はここの店主とフレンドになることだよ。といっても、店主のフレンドを通して、謎解きを解いたら、店主にフレンド申請できるIDが分かるって仕組みなんだよ」
「へぇ~…でも、なんで謎解きなんダ?」
「店主がクイズとか作るのが趣味なんだってさ」
謎解きと聞き、どういったものだろうと興味を持ったアルゴに、シグが最新の問題として出されている謎解きが書かれた紙を見せたが、
「………えっ、かなり難しくないカ?」
一見では解けないと判断したアルゴの感想に、シグも苦笑いするしかなかったのだった。
「美味かった…予約困難、はまた違う意味だけど…料理の味は見事だったナ。スパイシーの効いたシュラスコの食べ放題って、反則だろう」
「だな…前に作ってもらった時よりも腕が上がっていたみたいだし」
様々な(モンスターだが)部位の肉を使ったシュラスコに、付け合わせの料理…それら全てが絶品だったこともあり、アルゴもシグも満腹からくる幸福感を覚えていた。
該当に照らされた夜道、2人は転移石へと向かいながら、料理の感想を告げ合っていた。
「ああいうのを食べると、料理スキルを上げまくっているの奴の凄さが分かるナ…アーちゃんももうちょっとでマスターするって言ってたし…そういえば、マスターは料理スキルマスターしてるんだっけ?」
「美味しいコーヒーを淹れるために、っていう理由で一目散に上げていたからな。俺も手伝いとかで料理スキル上げてるけど、あれ結構大変だから、その苦労が本当によく分かる……(っ…?!)」
「料理スキルを上げてると自営する時にも便利だけど、一定程度上げればいいだけで、マスターする必要性はないからナ」
「……………」
「料理スキルだけでなく、装飾系とかの生産系スキルもそうだよナ。あと上げ辛いっていうと…シグ?どう「アルゴ、振り返るな」…?」
「そのまま歩きながら驚かずに聞け…誰かに尾けられてる」
「…!?」
穏やかな雰囲気から一転、シグの真剣な口調により告げられた事実に、アルゴは思わず息を呑む。思わず歩みを止めそうになったが、尾行者に気取られてはいけないと思い、なんとか足を動かすアルゴ。
「(…一体いつからダ?)」
「(正確なタイミングは分からないが…少なくとも、店を出た時からは尾けられていたと考えるべきだろな)」
「(…笑う棺桶の残党カ…?)」
「(可能性としては否定しきれないな。PoHのこともあったし…それに気配を消すのが上手い。多分隠蔽スキルもかなり上げているんだろう。索敵スキルの範囲外ギリギリから俺たちを見ているようだ)」
追跡者に聞こえないような声量で話す2人…真っ先に追跡者に気付いたシグの分析に、アルゴも緊張が走る。こんな時にオレンジプレイヤ―に尾けられているかもしれないという事実に、アルゴが身構えてしまうのも無理はなかった。
「(このまま転移石にまで駆け込むカ?)」
「(…いや、転移石近くに仲間がいた場合、挟み撃ちにされる危険がある………アルゴ、ちょっと強硬策で突破するがいいか?答えは聞かないが…)」
「なぁ、何をする…きゃぁ?!」
今日はオフだったこともあり、2人とも転移結晶は持っていなかったことも痛かった。このままやり過ごすよりも、強行突破をした方がいいというシグは、アルゴの返答を待たずに素早く動き出した。
…ということで、アルゴをお姫様抱っこにて抱きかかえため、アルゴの口から可愛い悲鳴が飛び出た。
そんなアルゴのことなどお構いなしに、シグは駆け出し…その勢いのまま、建物の窓の縁へと足を掛けるべく跳躍した!そのまま2階、4階の縁を足場に屋上に移動し、そして、屋上から更に助走をかけ、離れた建物へと大ジャンプをする!
「っ~~~~~~~~~~~~~~!?!?」
「…っ!(…あー、そういうことか)」
空を切ることで空気に吹かれ、そして、上空にてかなりのスピードで移動していることもあり、アルゴが言葉にならない悲鳴を上げる中、シグは少しだけ顔を後ろの地上へと向けていた。
追跡者の正体を知るべく起こした行動だったが…シグの大跳躍という予想外の移動に驚き、動揺していた追跡者たち…その2人と目が合い、シグは納得の声を心の中で呟いていた。
…とりあえず追跡者たちは振り切れるだろうと察し、シグはそのまま建物の屋根を伝いながら、走り去っていくのだった。
「…とりあえず、追跡者たちは撒けたな。それで、その…」
「……………」
「大丈夫か、アルゴ?」
「…悪い、もう少しだけ、落ち着かせてくれ…」
屋根を走り続け、追跡者たちを撒き切ったことを確信したシグは、建物の屋上で一息を吐いていた。そして、胸に手をやりながら、呼吸を整えているアルゴへと声を掛けるも、未だにアルゴは心臓がバクバクしているようで、息で肩を揺らしていた。
「…ふぅぅ。ようやく落ち着いてきた…それで、このぉ!」
「危なぁ!」
「しょうがなかったとしても、あんなとんでもないことをするのなら、言ってからやれよ!こっちは心臓が止まるかと思ったわ!?」
やっと落ち着いたこともあり、アルゴの右ストレートが、シグの腹部へと目掛けて放たれた。が、本日2度目ということもあり、咄嗟にシグがアルゴの拳を受け止める。拳を受け止められつつ、アルゴからの罵倒を受け止めるシグ…やむを得ない事情があったとはいえ、こればっかりはしょうがないと思い、とりあえずアルゴがまた落ち着くまでその罵倒を受け止めていく。
「ぜぇ…ぜぇ…」
「言いたいことは言い切ったか?」
「ふぅぅぅぅ…ったく、とんでもないデートになったナ」
「…悪い、本当はこんな予定じゃなかっただけどな」
「…!いや、オイラもそんなつもりじゃなかっただけど…ゴメン」
「「……………」」
どこか気まずい雰囲気になってしまい、言葉に詰まってしまう2人。この空気をどうしようかとシグが考えていると、
「…うん?なんダ、あれ…?」
「…あれは…まさかこんな形で見ることになるなんてな…」
「シグ、知ってるのカ?」
「……まぁ、な。あれをデートの締めにしようかと思ってたからな」
地上から空に上がる光に気付いたアルゴの声に、シグもその存在を思い出し、その日初めて、罰の悪い表情を浮かべていた。これもシグのプランの内だったと聞き、アルゴが驚きの表情のまま視線を彼に向ける。
「…今日は商業ギルドが創立された日なんだよ。あの座市も商業ギルド創立で開かれていた奴でな…まぁ、創立1周年ということで、ミニ気球を上げてるんだよ」
「……花火とは違う意味で綺麗ダナ。もしかして、このことを知って、デートのプランを考えたのカ」
「…急ぎプランを考えていた中、商業ギルドの創立記念があるって覚えてたから、これを活かす手はないと思ってさ。さっきの店を予約できるかどうかは賭けだったけど、店主の人が調整してくれたんだ…(まぁ、実は彼にも相談したんだけどな)」
「そ、そうカ……ふーん…」
空に次々に上げられるミニ気球は、そらに昇る星のようで、どこか幻想的な美しさを夜空に映していた。そんな光景に目を奪われていたアルゴに、シグが話しかける。
「実は、もっといい場所でこの光景をお前に見せようと思ってたんだけどな…計画通りにいかないもんだな」
「まぁ、それはそれで面白いとも思うけどナ」
「…いや、完全に計画からズレちまったよ……だって、この夜空の下でお前に告ろうって思ってたんだから」
「…へぇー…………えっ?」
夜空に意識を集中していたのと、さらっと告げられた事実にアルゴの反応が完全に遅れた。告げられた事実を脳が理解し、思わずシグの方へと顔を向けた時には遅かった。
…タン!
「…し、シグ…?」
「……………」
近くの壁を背に壁ドンしたシグに、アルゴは更なる驚きに襲われていた。だが、対するシグもさっきまで余裕が完全になくなり、顔を赤くしつつその言葉を紡ぐ。
「アルゴ…お前のことが好きだ」
「……………」
シンプルに、そして、ストレートの告白に、アルゴは時が止まったかのように感じた。周りの音も聞こえなくなったように感じたのは、自分の心臓の音が痛い程に大きく聞こえていたからだった。
「………その…理由を聞いても、いいか…」
「…最初は噂に聞いていた人物像以上に、面倒くさい上にお人好しな奴だなと思ってた」
「おい…」
「最初の話だ…でも、俺は…正直お前のことを尊敬してたんだ」
「……………」
それは、アルゴが初めて聞く、シグの自身に対する本音だった。意外な話が出てきたことで、アルゴはシグの言葉を待つことにした。
「攻略組だけじゃなく、この世界を生きる人たちの助けとして、情報を提供する…ミスフィッターズとして活動していた俺たちも、中・下層のプレイヤーたちのためにって動いていたけど、アルゴ…お前はそれを1人でやってただろう。だから、お前のことはある意味で尊敬してたんだ。
…あの時、57層でお前と出会ったのは本当に偶然だった。そして、お前から依頼を受けて、ボディガードになるなんて…全然想像してなかった。
…出会った時の俺は…まぁ、恥ずかしい話、どうなってもいいってどこか自暴自棄になっていたこともあったし、お前のことを正直鬱陶しいとも思ってたからな。
でも、お前は俺に…また闘う意味をくれた。生きる目的も、忘れていた約束も…そのお陰で、俺はまだ何でも屋として動けてる。お前がいてくれなかったら…多分、誤ったことをし続けていたと思う。そんなお前を…俺の手で護りたいと思ったんだ。
…だから、お前の言葉を借りるなら…お前の人生をこれからも護り続けさせてくれないか」
「……………」
告げるべきことは告げた…シグはアルゴの反応を待つも、シグもまた緊張のあまり、今にも心臓が喉から出そうな程に緊張していた。
どれくらい時間が経ったのか分からなくなる程の緊張に襲われていたシグに、アルゴの反応は、
「…いや、告白の言葉としては重いだろう」
という、とんでもない辛辣な言葉だった。まさかの返しに、シグの目が丸くなる。
「何が人生を護らせてくれ、だよ…もっとロマンチックな言葉があるだろうが。そんなで女性の1人や2人落とせるわけがないだろうが。告白という言葉を辞書で調べ直してこい、この野郎」
「……………」
「…でも、そんな重いことを言うほどに…お前がオイラのことを大事に思っていることも伝わった」
「…!」
「…ったく、しょうがないな。そんな重たいことを言う坊やのことを受け止めてやれるおねーさんに感謝しろよ?」
「…それって…」
辛辣な言葉の並び立ては照れ隠しの裏返し…アルゴなりに恥ずかしさを隠そうとして空回ってしまった結果だった。そして、アルゴが告げた言葉の真意を確かめようとしたシグに…
「オイラも……ずっと前からだろうな、お前のことが好きだぞ、シグ」
「…そ、そうか…その、ありがとう…」
「おう…あー、駄目だな。なんか…顔が、ニヤついちまう…そっか、これが恋するってことなのか…ニシシ」
「「……………」」
「な、なんか言えよ…」
「な、何かって………そうだな」
互いの気持ちが通じ合ったことで、思わず笑みが零れるも…そのまままた気まずくなってしまい、言葉が詰まってしまう。アルゴに急かされてしまったことで、咄嗟にシグが言葉にしたのが、
「…今日は…帰したくない…」
という、テンパった挙句に出たのは、ある意味では定番のとんでもない言葉だった。言ってからやってしまったと気づいたシグだったが、
「…いいぞ」
アルゴから返ってきたのは、まさかの肯定の言葉だった。そう返されてしまった以上、シグとしても言ってしまったことを撤回するのは男が廃ると覚えたのもあり…そのまま、アルゴを『羽休めの宿』へと連れていき、一夜を共にしたのだった。
さて、少しだけ後日談を語るとしよう。
「…で、2人とも、言い訳はあるかい?」
「「その…すみませんでした」」
シグとアルゴが付き合いだした2日後…シグに呼び出された2人のプレイヤーは、笑顔だが少しばかり怒りの表情であるシグの問い掛けに、素直に謝罪の言葉を口にしていた。
その2人とは、あの夜、シグたちを追跡していた者たちだ。そして、どうしてシグが2人を呼び出せたのかというと、それは2人がシグの知人だったからだ。特に片方の人物は、今回のデートの相談した人物でもあったから猶更だ。
そう、実は追跡者の正体は、黒の剣士ことキリトと、そして、デートのことをある程度知っていた、夢幻の戦鬼であるフォンだったのだ。
事の経緯は次の通りだった。
キリトに誘われ、クエストに挑んでいたフォン。その報告が、偶然にもシグが予約していた店がある階層の主街区だったのだ。街も広いため、出会うことはまずないだろうと考えていたフォンだったが、その考えが甘かったのだ。
これまた偶然に、シグとアルゴが店に向かっているところをキリトが見かけてしまったのだ。
『あのアルゴが、知人となんか良い雰囲気っぽい』…そのまさかの光景に、キリトの好奇心が尾行のきっかけだった。フォンもキリトを止めようとしたが、デートが上手くいっているか気になってしまったのもあり、キリトからの尾行の提案を断り切れず、そのままシグたちを尾けることになってしまったのだ。
…まぁ、その結果は屋上に逃げるというトンデモ逃走術を見せつけられ、その拍子に空から正体がバレるというオチになったわけだ。
「それで、シグさん…その感じだと上手くいったみたいですね」
「まぁね…フォン君のアドバイスのお陰でね」
尾行していたことの謝罪を終えたところで、シグの雰囲気から推察していた結果を確かめるように問い掛けたフォンの言葉に、お礼を告げながら肯定するシグ。
…実は、今回のデートプランについて、フォンは次のようにアドバイスしていたのだ。
『アルゴさんのことですから、調子を崩されると弱いと思います。素直に問い掛けにも答え、アルゴさんのペースを崩す形でリードするのがいいかと…調子に乗ると、のらりくらりと躱すと思いますので』
という助言を基に、シグはデートプランを組み立てたのだった。
「…えっ……もしかして、そういう、ことなのか…?」
なんとなく事実を理解したキリトがそんなことを呟いたところで、ようやく2人が恋人として一歩進んだ形となったのだった。
やっとくっつけられた…(毎回言ってる気がする(笑))
ちなみに、覗き魔2人組から逃げるシーンは結構前から考えてました(そこから足技の発想が出たのは余談)。
さてと、アインクラッド編も残り3話ですが、残りのお話はそれぞれそこまで長くないです。外伝は一旦途中で〆る予定ですが、また最終話のところで外伝の今後の話ができればと思ってます。
さて、話は変わりまして、更新が大幅に遅れた理由についてですが、
まぁ、前から言っているように仕事に忙殺されてました…いや、人員の数に対して、業務量が間に合ってないという(苦笑)
更に、小説を保管していたUSBを紛失するというトラブルもありまして…1話まるまる書き直したりしないといけないトラブルもあったわけで…ちょっと心が折れていた時期もあったのが理由でした。
とりあえず定期更新ができるように、色々と整えられればと思ってます。
それでは、また!