ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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このお話は書くかどうか最後まで迷っていました。
ただ、外伝のアインクラッド全編を通して、最後のお話として記載するのはありかなと思って執筆しました(次回はほぼエピローグに近いので)。

それでは、どうぞ!


第二十四話 「防人と依頼」

「頼むよ、俺の依頼を聞いてくれよ!?」

 

(何が起こってんダ…?)

 

第72層の攻略が完了し、攻略組が第73層の攻略を始めた矢先、アルゴはあることを依頼しにシグを訪ねて『羽休めの宿』へと来たのだが…そこで目にしたのは、シグが1人のプレイヤーに詰め寄られているという光景だった。

 

アルゴの来訪を、シグも、そして、カウンター越しで事の成り行きを見守っていたアジアも気づいたようだったが、今は対峙しているプレイヤーへの対応が優先と判断したようだった。

 

「あんた、何でも屋なんだろう!金なら…いや、アイテムだって、なんだって用意する!?だから、依頼を受けてくれよ!」

 

「…さっきも言った筈だ。何でも屋だから何でもかんでも仕事を引き受けてるわけじゃない」

 

「…だったら!あいつを見つけてくるだけでもいいんだ!?それだけでも「見つけたところで、どうするつもりだ?」…っ!?」

 

「そいつを見つけて、お前はどうするつもりだ?どうせふく「もういい!?」…」

 

「…おっと」

 

「…はぁぁ、ったく」

 

埒が明かないと考えたのか、そのままプレイヤーは飛び出していったしまった。入口の近くに立っていたアルゴは、ぶつかりそうになったため、進路を譲るように身を躱す。一方のシグもどこかやりきれないような様子で溜息を吐いていた。

 

「…何の話か分からないけど、なんで引き受けなかったんダ?そんなに難しい仕事なのカ?」

 

「……………」

 

本題の話は一旦置いておき、アルゴは先程のプレイヤーとの会話が気になり、シグに尋ねる。だが、珍しくシグも返事を言い淀んでいた。

 

「…シグ?」

 

「…はぁ……さっきのプレイヤーの依頼は…復讐の依頼だったんだ」

 

「…えっ…」

 

「…彼の弟と仲間…ギルドメンバーを嵌めたオレンジプレイヤーを捕まえてくれ、それが依頼の内容だったんだ」

 

「……………」

 

言うべきかどうか迷っていたシグだったが、アルゴの再度の問い掛けに、観念したようにその答えを口にした。だが、その答えを聞き、アルゴは失敗したと悟るが、もう遅かった。

 

「…気にするな。お前だから話したんだ。狩人というより、何でも屋としての噂を聞いて、俺のところに来たんだろうな」

 

「……でも、ゴメン」

 

「…ふぅ、さてと。どうするかな…」

 

「…まぁ、捕まえることはそう難しくないだろうね。けど…」

 

アルゴにフォローの言葉をかけつつ、シグはこれからどうするべきかと言葉にしながら迷っていた。一部始終を見ていたアジアも珍しく方針について言い淀んでいた。

 

「…あいつ、尋常じゃない様子だったヨナ?」

 

「ああいう奴が何をするか…なんとなく想像がつくんだよ。それに…もし俺が犯人を捕まえたとしても、な…」

 

「「……………」」

 

シグの言葉の真意を、アジアも、そして、アルゴも理解できてしまった。シグはある意味で、さっきのプレイヤーの痛みを、そして、絶望を理解していた。だからこそ、自分が依頼を遂行した場合と、しなかった場合それぞれの結末が見えてしまっていた。

 

「…………………仕方ない、か。アジアさん、今日から5日ほど店を離れます」

 

「…1人でやるのかい?」

 

「ええ。そこまで時間はかからないと思いますので。アルゴ、悪い…少しの間、ボディガードの仕事は休ませてくれ。決着が着いたら、すぐに連絡するから」

 

「あ、ああ…分かった」

 

「悪いな……って、そうだ。今日はどうして店に来たんだ?緊急の依頼か?」

 

「…っと、そうだった…本題を忘れタ。実は、シグに依頼したいことがあって来たんダ」

 

決意したことで、アジアとアルゴそれぞれに謝罪をし、シグは動くことを決めた。一方で、予定になかったアルゴの来訪の理由が気になり、尋ねたシグに対して、アルゴはここに来た本当の目的を口にした。

 

「…フォン坊がまた失踪して行方が分からないんダ。それで、お前の力を借りたかっただけど…それどころじゃないヨナ」

 

「…待て待て待て、フォン君が失踪…!?」

 

アルゴの口から出てきたとんでもない事実に、流石のシグも驚きを隠せないでいた。アジアも表情には出していないが、手の動きが止まる程には驚いていた。

 

「…一昨日からフレンドリストからの追跡ができないって、キー坊から連絡があってナ。今、キー坊の知り合いたちがフォン坊を探しているんだが…フォン坊もソロに近いから、目撃者がいなくて、直近の行方が辿れなくてナ…」

 

「…それはそれで重大事件じゃないか。それは放っておけないな」

 

「なら、そっちの探索は僕が協力しよう。シグ君、君は依頼の方を優先したまえ」

 

「…アジアさん、いいんですか?」

 

「まぁ、フォン君を喪うのは攻略組にとって痛手だろうからね。それに、これで別のプレイヤーが失踪していったりしたら、大事件になりかねない。不穏な芽は早めに対処しておいた方がいいだろうからね」

 

「分かりました、頼みます。アルゴ、俺も依頼が終わり次第、そっちに合流するから」

 

「…ああ、けど、一つ頼みがある」

 

「…?」

 

フォンの探索はアジアが協力してくれるとのことで、シグは自分がやるべきことをしようと決意を固めるのだが、最後に頼みがあると告げたアルゴの言葉を聞いたシグは…

 

 

 

「……………」

 

5日後…シグに依頼を一度断られたプレイヤーは、31層の主街区から少し離れた渓谷エリア…その安全地帯に呼び出されていた。

 

その姿は5日前とは違っていた…いや、酷くなっていたというのが適切だった。20代前半のようだが、目元に大きな隈が出来ていて、髪もボロボロで倍以上老けたように見えた…その様子から、この5日間どういった生活をしていたか推察ができる程にだった。

 

「…待たせたな」

 

そんな状態だったからか、意識が朦朧としていたせいもあり、その声の持ち主が近くにくることに、言葉を掛けられるまで気付かなかった。そこには、オレンジプレイヤーを引きずるシグの姿があった。

 

引きずられるオレンジプレイヤーは両手を拘束され、無効化されていた。しかし、意識はあるようで、終始シグをにらみつけていた。

 

「確認してくれ…こいつがあんたの仲間を殺したプレイヤーか?」

 

乱暴に…一切の配慮なくオレンジプレイヤーを依頼人の眼前に放り投げ、シグは依頼された人物かどうかを尋ねる。

 

尋ねられた依頼人は、意識が朦朧としていたが、オレンジプレイヤ―の顔をじっと見つめた。そして…

 

「…そう、だ…こいつだ…!お前が……お前が、徹を!?あいつらを…!!」

 

…その時の記憶が怒りとなり蘇ることが、活力を与えた…殺意と怒気を言葉にまで乗せた依頼人が間違いないと答えを口にし、そして…自身の獲物である片手剣を抜いた!

 

「お前だ……お前がみんなを……あの時からお前の顔だけは忘れたことは、なかった!嗤って、無邪気に…みんなをモンスターPKさせた!お前は……お前だけは…!?」

 

「……………」

 

怨嗟までも込められた言葉に、オレンジプレイヤーは恐怖を伴った笑みを浮かべつつ、言葉を出せないでいた。依頼人の言動からして、これから自分がどうなるのかを悟ったのだろう。一方で、シグは何も言わずに事の成り行きを見守っていた。

 

「…殺す……お前だけは殺す!あの時から何度も…何度も、何度も、何度もぉ!?俺はお前に復讐することだけを生きる糧にしてきたんだ!?」

 

その言葉は、過去の自分を投影したかのように見えた。それでも、シグは静かに経緯を見届けていた。だが、一切の油断はしていなかった。

 

「…うううぅぅ……うわぁぁぁぁぁぁああああああ!?!?」

 

そして、依頼人が感情を爆発させ、片手剣を振り被った!そして、その刃をオレンジプレイヤーの頭に振り下ろそうと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はぁ…!…はぁ…!」

 

だが、その刃が振り落とされることはなかった。直前に我に返った依頼人に理性が戻ったせいだった。それが、命を奪う行為に忌避感を覚えてしまったのだ。

 

だが、それはオレンジプレイヤーの前では命取りだった。スキルによって少しずつ解いていた手首の縄を完全に解き、掴んでいた砂を依頼人の目元に投げつけたのだ!

 

「だったら、てめぇもあの世に送ってんやんよ!?

 

そして、隠し持っていた短刀で、目つぶしを喰らって動けないでいた依頼人の首元を斬り裂こうと…

 

「…ぎゃあァァァ!?」

 

だが、その刃が届くことはなく、一瞬の風が吹くのと同時にオレンジプレイヤーの両腕が斬り飛ばされ、遅れて悲鳴が上がった。

 

もちろんそんな凶行を防いだのは、シグの抜刀術によるものだった。一瞬で依頼人とオレンジプレイヤーの間に入り込み、オレンジプレイヤーの腕を斬り飛ばしたのだ。

 

「…こいつを殺すために、お前が手を汚す価値なんて、こいつにはない。こいつに構う時間もな…コリドーオープン」

 

冷たい声色ともに、両腕を斬り飛ばされたことで跪くオレンジプレイヤーを回路結晶で開いたポータルへと…そのまま蹴り飛ばすことで、放り込んでしまった。

 

「…だから、俺は依頼を1度断ったんだ。復讐なんて一時の感情でやるもんでもない。それに、例え復讐を果たしても虚無感しかない…」

 

「…でも、俺1人生き残ったって…」

 

「生き残ったことにも意味がある。何がなんでも生きて…このゲームがクリアされるまで生き残れ。お前の仲間のことを覚えている奴がいれば…お前の仲間が忘れられて死ぬことはない。そして、それが生き残った者の責任じゃないのか…」

 

「……………」

 

「…だから、あいつのことなんか忘れちまえ。覚えておく価値すらないからな。ほら、転移結晶を使ってさっさと街に戻れ」

 

依頼人は何も言葉を返さなかったが、少しして転移結晶を使って自身がホームとしている街へと戻っていった。

 

最悪の結果は回避できたが、それでも、なんとも言えない結末に溜息を吐きたくなる気持ちを抑えていたシグだったが、

 

「…あいつ、あれで大丈夫なのカ?」

 

全ての片が付いたと判断し近づいてきたアルゴが声を掛けてきた。アルゴのお願いとは、事件の結末を見届けたいという我が儘だった。しかし、アルゴの真意を理解していたシグはそれを了承し、隠蔽スキルで身を隠すことを条件に、一部始終を見届けることを許可したのだ。

 

「…さぁな。結局は本人の気持ち次第だからな」

 

「……………」

 

「でも……復讐鬼にはならないと思う。あんな闇を知る者のは…もういらないだろうからな」

 

アルゴの懸念は、シグのことだった。今回の一件はどこかシグが経験したことに似ていたのだ。それが、シグの負の面を刺激しないかと心配だったのだが…それは杞憂だったようだ。

 

「…さてと、次はフォン君の捜索か。一切の情報なしとは、どこに行ったんだろうな」

 

「……………」

 

「…アルゴ?」

 

「シグ…無理をしなくていいんダゾ?」

 

「…!ああ、ありがとうな。まぁ、甘えたい時には甘えさせてくれ」

 

アルゴの思いやりに、シグは恥ずかしさを表情に出さないようにしつつ、そう言葉を返した。そのまま二人は一緒に街へと戻ったのだった。

 

 

…その1週間後、第73層の迷宮区にいたフロアボスが倒された翌日に、行方不明だったフォンが見つかり、そして、運命の第74層の攻略を迎えることになるのだった。

 

 




復讐鬼となり、そして、復讐をしようとする別のプレイヤーに対峙したシグの成長とその心境を中心としたお話でした。

ある意味で、狩人となったことがあるシグだからこそ言えた台詞もあったのかなと…当初のシグとはやはりかなり変わった形ですね(冒頭の反応など、アルゴとの初のやりとりと比べると、かなり棘が抜けてます)。

…まぁ、実質フォンがホロウ・エリアに迷い込んだ時の裏話的な話でもあったのですが(今、思ったら、うちのオリ主失踪しすぎですね…アインクラッドで3回(ユウキとの初会合、ホロウ・エリア、そして、75層攻略前)、旧ALOでの須郷による人体実験(この期間、キリトたちから見ると現実世界では居場所が不明だった)、アリシゼーションでのオーシャン・タートルへの移動(ユウキたちから見ると行方不明))

ということで、次回最終話…アインクラッドの最後におけるシグたちの行動とエピローグです。
それでは、また!
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