ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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外伝のアインクラッド編最終話…エピローグ的なお話であり、そして、外伝の続章へと続くお話です。

エピローグということもあり短めですが、今後のお話についてはまたあとがきでお知らせしようと思います。
それでは、どうぞ!


第二十五話 「防人と世界の終焉」

それは突然のことだった。

 

『ただいまより、プレイヤーの皆様に緊急のお知らせを行います……アインクラッド標準時 11月7日14時55分、ゲームはクリアされました。繰り返します、ゲームはクリアされました』

 

…一瞬誤報かと思われるゲームアナウンスが放送された。新手のイベントか、それとも、ゲームが突如バクったのか…アインクラッドに閉じこめられたプレイヤーの多くが望んだ、そして、まだまだ先であると思っていた事実の周知に、誰もがすぐに現実を理解できないでいた。

 

「…これって、何かの冗談、なんですかね…」

 

「…まだドッキリだと言われた方が信じられるけど…どうやら事実のようだよ」

 

それは『羽休めの宿』にいたシグとアジアにもその放送は聞こえていた。

 

今日は第75層のボス攻略戦…第74層でも久しぶりの犠牲者が出た上に、第75層のボスの偵察に出たプレイヤーたちが全滅したという話は、シグたちの耳にもアルゴを通して届いていた。

 

だが、聞こえてきたアナウンスは第75層攻略ではなく、まさかのゲームクリアという事実に、シグは信じられないと言葉を口にしていた。一方のアジアはすぐに冷静さを取り戻し、右手でメニューを開いていた。そこには、強制ログアウトまで残り50秒というカウントタイマーが表示されていた。

 

「…帰れる…?」

 

その表示を見たことで、ようやくシグも現実に意識が戻ってきた。そして、我に返ってきたことで、シグの頭に浮かんだのは、

 

「…アルゴ君のところに行かなくていいのかい?」

 

「…あと30秒ちょっとで行くのは無理ですよ。それに行き違いになる可能性もありますし…メッセージを送るのも間に合わないか」

 

突然のことに何も用意も準備もできていなかった。いや、用意等をしろというのが無理があった。アルゴと最後に何かを話したいと思っていたが…最前線の街にいると聞いていたこともあり、今から数十秒で来ることは難しいことは分かっていた。

 

「まぁ、あっちに帰ってから何とかします…可能性は低いですけど、ゼロではありませんから。それに…あいつがこのまま逃がしてくれるとも思えませんから」

 

「ハハッ、そうだね…」

 

シグの困ったような微笑に、アジアもそれはそうだと言わんばかりに笑みを浮かべた。強制ログアウトまで残り10秒…このままログアウトを待つだけだとシグもアジアも覚悟を決めた時だった。

 

…ピコン!

 

メッセージが届いた通知音が聞こえ、シグはこんなタイミングで誰からかと思って開くと…そのメッセージを目にしたシグは驚いていた。だが、次の瞬間には笑みを浮かべていた。

 

そして、シグたちの意識はアインクラッドからログアウトし…切り離されたのだった。

 

意識がどこに引っ張られるような感覚の中、シグは最後に目を通したメッセージを思い返していた。

 

『必ず見つけ出してやるから、待ってろヨ! Argo』

 

 

 

…ピ…ピ…ピ…

 

無機質な機械の音が響く部屋の中、消毒薬の独特な匂いを感じた少年は目を開いた。

 

知らない白い天井…カーテンが閉じられているせいで薄暗い部屋の中、自分がどこにいるのかと考えていた…だが、頭が上手く回らず、少しばかり記憶を辿っている時だった。

 

…ポスゥ…!

 

何かが落ちたような気配がして、少年は寝たまま視線を横に向けた。視線の先には開いた扉と誰かがそこに立っていて…

 

「…ひで、お…?」

 

「……と、お…さん…」

 

2年以上姿を見ていなかった父の姿に少年はようやく思い出す。

 

自分はあの鋼鉄の城から現実世界に帰ってきたのだと。

 

そして、鼠のボディガードであった少年…シグこと速水英雄はSAOから現実世界に帰還したのだった。

 

 

 

「…懐かしいナ」

 

「何が懐かしいんだ?」

 

ふと零れた一言を拾った少年の言葉に、アルゴ…いや、帆坂朋は振り返って声を掛けてきた少年へと視線を向ける。

 

そこにはキッチンから淹れた珈琲が入った2つのカップを手にしたシグ…速水英雄の姿があった。1人暮らしをしている彼の自宅のマンションに泊まりに来ていた朋はログアウト直前までユウキたちとシグとアルゴの出会いの話をしていたこと、そして、昔話をしたことで思い出していたことで懐かしんでいたことを英雄に告げる。

 

「…SAO時代のことか。確かに、懐かしい話だな」

 

「あん時のお前、今では考えられないくらいピリピリしてたからナ。本当に…オイラにもとっても色々とあった2年間だったヨ」

 

「まぁ、お前がいてくれたから…今の俺があるからな。といっても、押し掛け女房になられるとは思ってなかったけどな」

 

「何言ってんダヨ。オイラなんか、フォン坊なんかに比べれば遥かにマシだろう。あっちはユウキと同棲してんダゾ?」

 

「同棲と比べるとダメだろう。というか、週に5日は来ているのにどこがマシなんだよ」

 

リビングに備え付けられたテーブルとそのセットである椅子に腰を下ろし、当時のことを懐かしむ2人。そのまま朋の泊まりに来ている回数が異常だという指摘を英雄がするも、朋はどこか知らんふりをするかのように話を変えるのだった。

 

「にしても、ユー坊(ユージオに対するアルゴの呼び方)とアリスの結婚式、成功させてやりたいナ」

 

「話を露骨に変えるな…まぁ、そうだな………」

 

「…?どうした、シグ?」

 

今抱えている依頼のことを話しながら、ふと英雄が黙り込んだことで、アルゴがどうしたのかと首を傾げた。

 

「…いや、お前と再会してもう1年以上経ったんだなと思ってな」

 

「まぁ、戻ってきてからも大変だったからナ…キー坊もフォン坊もアーちゃんも…それに、お前も」

 

昔話ということで、色々な記憶が蘇ってきた英雄の反応に、朋も困ったような笑みを浮かべつつ応える。

 

SAOクリア後、英雄に起こったこと、そして、「旧ALO事件」として彼らが呼んでいる一連の事件の出来事が英雄の脳裏に蘇るのだった。

 




SAOクリア時のお話でした。
これ、フィリアやリズ、シリカにも言えることなのですが、75層ボス戦参加者以外はクリアが唐突だったというのもあったので、こんな描写になりました。最後のメッセージがある意味、アルゴらしいというお話でした。

そして、時系列はリアルタイム…この外伝のお話を始めた頃(アリシゼーション終了後)に戻り、更に話を振り返る形で続いていきます。
ちなみに余談ですが、アルゴがユウキたちに話したのは一部分だけで狩人絡みの話はしてません。

…ということで、外伝はまた少しお休みしますが、次回は旧ALO編…本編では(フォンがほとんど出番がないとか、さっさとユウキを出したいという欲にかられた結果)大幅カットとなった「フェアリィ・ダンス」編となります!
主人公は引き続き外伝オリ主のシグ、そして…原作主人公キリトの2人体制となります。シグは現実世界での話を中心に、キリトは原則に沿ったALO中心の話となります(といっても、原作と変わらない話はやらない予定です)。
WoU編が完結したのもあり、改めてフォン不在でのフェアリィ・ダンス編を書くのもありかなと思ってのお話になります。先に言っておきますが、キリト側が結構重い話になります。

それでは、また!
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