それでは、どうぞ!
ソードアート・オンラインが攻略されてから1ヵ月半と少しが経った1月上旬。
英雄は都内のある喫茶店に来ていた。時刻は午前10時55分…待ち合わせの時間である11時まであと5分だった。
しかし、相手を待つ英雄はかなり緊張…いや、警戒をしていた。その理由は、2日前に送られてきた手紙が原因だった。
その夜、自宅に英雄を宛名として送られてきた手紙が届き、てっきりSAO絡みで総務省の対策課から送られてきたものかと思い、一旦中身を確認しようとした英雄はその内容を見て、目を見開いた。そこには次のような一文が書かれていた。
『鋼鉄の城における死神の使徒のことを知っている』
その1文と共に、待ち合わせ場所と思われっしき喫茶店の店名と日時が記載されていたのだ。暗に指定した日時にその店に来いということであることを知った英雄は、迷いつつも喫茶店に来ていたのだ。
(死神の使徒であることを知っている人間は限られている…しかも送り主は俺の家の住所を知っている……まさかとは思うが…)
死神の使徒の存在とその正体を知る人物…頭の中に浮かんだのはあの最恐PKとして恐れられたPoHのことだった。このままでは父親にも迷惑がかかるかもしれないと思い、手紙の主の正体を確かめるべく、英雄は今日この店に来たのだ。
そうこうするうちに午前11時まであと1分となっていた。店内には数人客がいたが、怪しい人物は見つけられない。あまり周囲を見渡していると逆に怪しまれることから、目線だけでの確認だが、目視の範囲内では見つからない。
腕時計の秒針が12の盤数に近づくことに英雄の緊張は高まっていく。そして、時刻が午前11時を迎えようとした時、
「動くな」
「っ…!?」
背後に座っていた客が自分に何かを突き付けながら、その言葉を告げた。突然のことに英雄も動けず、その言葉に従うしかなかった。
「…鼠のボディガードのシグだな?」
「っ…(やっぱり、俺のアバターネームを知ってる……いや、待てよ…この声ってどこかで…)」
「あの公務員に感謝だな。本当に正しい情報を教えてくれたようだな…なぁ、シグ坊?」
「…!…その呼び方…もしかして…!?」
相手の問い掛けに英雄は身体が一瞬硬直するも、その声色に聞き覚えがあり…そして、懐かしい呼び方をされたことで、その正体に気付いた英雄は振り返ると、
「…よぉ、シグ。久しぶりダナ」
「………あ、るご…だよな?」
ニット帽を被った少女がマスクを外したことでその素顔が露わになった。その顔はSAOで何度も目にした『鼠』と呼ばれた彼女そっくりだった。
悪戯が成功したと言わんばかりの笑みを浮かべる少女に対し、英雄は確かめるように言葉を紡ぐ。その言葉に少女…アルゴは頷くことで答えたが、ここで彼女が予期していなかったことが起こる。
「なんダヨ、おねーさんの顔をわすれ、にゃああああァァァ?!」
SAOの時のように揶揄いの言葉を発している最中、アルゴの口から可愛い悲鳴が上がる。その理由は、感極まった英雄がアルゴに抱き着いたのが原因だった。そして…
「…その…悪かった」
「…ふん!(むすぅ)」
そこが喫茶店だったのもマズかった。アルゴが悲鳴を上げたことで一気に注目を集めてしまったのだ。さらには、英雄がアルゴに抱き着いていたのもあり、勘違いした店員が警察に通報しようとしてしまった程にだった。
それに気付き、冷静になった英雄が説明と謝罪をし、更にアルゴも犯罪めいたものではないと誤解を解いたことで、最悪のケースは回避されたわけだが…当の本人の機嫌は悪くなってしまったのだった。
「人前で大胆に抱き着きやがって…スケベ、変態、ド変態…」
「いや、後半同じことを繰り返してないか?」
「あぁ?」
「…すみませんでした!」
顔と耳が真っ赤な状態で罵倒するアルゴの言葉に、思わず突っ込んだ英雄だったが、ドスの効いた言葉がアルゴから出たため、周りに迷惑のかからない声量で英雄も謝るしかなかった。
「…まぁ、いいか。久々の再会に感極まったのと、お姉さんの美貌に魅了されたということにしておいてやるよ」
(…いや、誰がどう見ても…いや、止めておこう。嫌な予感がする)
ようやく機嫌を直したアルゴの言葉に、再度ツッコミの言葉が出そうになったが…嫌な予感がした英雄は出そうになった言葉を飲み込んだ…ちなみに、その対応は大正解である。
「…でも、正直嬉しいよ。こんなに早く再会できるとは…思ってなかったからさ」
「フフッ、正直な感想を言ってくれるなら、お姉さんは嬉しいぞ。えっと…」
「あー、そうか…アバター名はあんまり呼ばない方がいいよな。俺の本名は、速水英雄だ」
「はやみ、ひでお…へー、カッコいい名前だな。どんな字を書くんだ」
「英雄って書いてひでおって読むんだ。そういうアルゴ、じゃなかった…名前を教えてくれよ」
「あー、オイラは…帆坂・カリーナ・朋って言うんだ。まぁ、長いから、ミドルネームは大体略すけどな。好きな呼び方で呼んでいいぞ、英雄」
「いきなり名前呼びかよ…」
互いの本名の紹介を終えたところで、早速ファーストネームで呼ばれた英雄は苦笑いしつつ、ここで反撃に出ることにした。
「朋、いい名前だよな。恋人の名前だから、何度も呼びたくなるよ…なぁ、朋」
「な、何度も連呼するなよ…むず痒いだろうが」
「恋人のところは否定しないんだな」
「にゃ!?…それは…その‥‥‥じ、事実だし…そうでなきゃ、こんなことしなかったし…」
いつものノリを取り戻した英雄の責めに、アルゴ…朋は見事に撃沈した。それは、SAOでも見えていた光景の1つだった。
「でも、本当にどうやったんだ?俺の家の住所…っていうか、個人情報なんてどうやって入手したんだ?」
「フフフ、オイラを舐めてもらっちゃ困るな。それはもちろんちょいちょいとな」
「いや、普通に怖いから、ちゃんと理由を教えろ」
「…ちぇ、その堅物さはあの頃と変わらないな…取引したんだよ、総務省のSAO事件対策チームの奴とな」
「総務省…ってことは、あの菊岡さんと取引にしたのか?」
英雄の問い掛けに、朋は情報屋としての表情を浮かべるが、焦らすなと言わんばかりの英雄のツッコミに朋は素直に白状するのだった。
「そうそう、あの胡散臭い眼鏡役員な」
「胡散臭いって…まぁ、距離感が近いと思ったけど」
朋の評価に呆れつつも、どこか納得してしまった英雄は苦笑いしてしまった。まだ英雄が入院していた頃、事情聴取ということで、菊岡誠二郎…総務省総合通信基盤局高度通信網振興課第二別室に所属する彼に、英雄も会っていたのだ。
まぁ、その時ののらりくらいとした態度が、英雄もあまりいい印象をもっていなかったのと…それと、狩人としての経験から、菊岡の態度に何か違和感を覚えたのだ。
「…まぁ、あいつ、多分ただの公務員じゃないみたいだしな」
「えっ、そうなのか…もしかして、怪しい人とかそういうことなのか」
「…悪い、まだきちんと裏が取れてないんだ。裏の取れてない情報は「原則話さない…それがお前の心情だもんな」…まぁ、そういうことだ」
朋の言葉に、菊岡がタダ者ではないことに驚く英雄だったが、まだ確実な裏取りができていないことを理由に朋は答えを保留にしようとしたことを察した英雄も納得して、それ以上の確認は控えた。
SAO時代、情報屋として活躍していた朋は、確実ではない情報を公には流さないようにしていた(フォンやキリトたちに個別に問われた場合は、検証目的のこともありまた別)。その心情を理解していたからの行動だった。
「それで、取引の話だったな…ほら、オイラはあの城の中でも、随一の情報屋だったろう?」
「確かに…それはそうだな」
「…あっさり認められるのもちょっと恥ずいな。まぁ、そういうことで、あの菊岡からも、SAO時代の色々なことを教えてほしいと依頼があったんだよ。それで…」
「情報を出し惜しむことなく教える代わりに、俺の個人情報を聞き出したってことか」
「性格には、シグっていうプレイヤーの情報を調べてもらった、というのが正しいけどな。あとは、お前に手紙を出して、ここに呼び寄せたってことだ」
朋がどうやって自分を探し出したのかを理解した英雄は、色々と複雑な感情を抱いていた。
目の前の彼女の行動力と大胆さに驚きと呆れを、予想よりも数倍早い再会に喜びを、そして…
「そこまでして俺に会いたかったのは、予想外だったな。本当は俺がお前のことを捜し出したかったんだが…」
「へへっ、今回はオイラの勝ちだな」
「ああ、完敗だよ」
「…なぁ、シグ、じゃなかった…英雄、なんかSAOと少し雰囲気違うか?素直過ぎて、お姉さん、ちょっと怖いんだけど…」
「…あー、なんというか、シグの時は…というか、いや、狩人になった時から…どこか壁を作ることを意識していたところはあるからな。今の俺の方が素に近いから、そう感じるのかもな」
「わ、悪い…そんなつもりで言ったんじゃ…」
「分かってるって。気にするな…むしろ、そう言われる方が普通だって、俺も自覚してるし…わざとロールとして演じていたところもあるから」
再会してから何度か言葉を交わしたこともあり、朋は英雄に対し感じていた違和感を口にしたところ、どこか気まずそうに英雄はその訳を答える。
シグとして…いや、狩人として活動し始めた頃から、英雄は自身の感情を殺すようにしていた。朋…アルゴと出会い、そして、依頼人から相棒兼恋人になったことで、その態度もかなり軟化はしたのだが、それでも以前の英雄の性格とはズレが生じていたのだ。
「それに…こっちに戻ってきてからも色々とあったからさ」
「……シグ、それはオイラが聞いてもいいことなのか?」
英雄は答えを濁したが、態度に出てしまったために、朋にはお見通しであった。それが…英雄にとって辛い現実と向き合ったことであることを悟り、敢えてアバターネーム呼びと共に問い掛けた。
「…悪い、今のはズルい言い方だった。むしろ、お前には聞いてほしいんだと思う。正直、甘えたいというか…素直な感想を言ってほしいと思う」
「………分かった。教えてくれ」
大きく息を吸い、覚悟を決めた朋は英雄の話を聞くことにした。
そこから英雄はSAOから帰ってきて…退院した後に、ミスフィッターズの遺族の元へと行ったことを告げた。その時に、責めの言葉ではなく、お礼を言われたことも告げた。
「……………」
話し終えたことで2人の間に沈黙が訪れる…かと思いきや、意外にも朋は早くも言葉を切り出した。
「なぁ、シグ…それは傲慢だと思うぞ」
「…えっ」
意外な答えが返ってきたことに、英雄は目を丸くして朋の顔を見た。そこには半分悲しそうに、そして、もう半分は泣きそうな表情が浮かんでいた。
「お前がどれだけ傷ついたかは…オイラなりにも理解しているつもりだ。それだけ、お前が仲間たちの死に責任を感じているのもな…けど、遺族の人たちからすれば…もちろん責める気持ちを持つ人もいたかもしれないけど、それでも、お前が話す姿からして、きっとお前が全力でなんとかしようとしたけど、できなかったことを分かってくれていたんじゃないのか…だから、責める言葉を言わなかったんだと思う。
お前は…もう充分に背負ってるんだ。それ以上何かを求めるのは…却って傲慢だって、オイラは思った」
「………傲慢、か。確かに、そうだな…」
朋の評価に…英雄はどこか感じていた何かが取れたような気がした。
そう、英雄は…遺族に責められることを望み、覚悟をどこか心の中でしていたのだ。だから、責められなかったことにまた罪悪感を覚えてしまっていたのだ。そして、それを朋は傲慢だと評価したのだ。
「英雄…オイラじゃ全部は背負いないと思うけど、でも、正直に話してくれたのは…その、嬉しかった。だから、これからも素直にオイラにだけは正直なことを言ってほしいかな。ほら、オイラはお姉さんだからな?年下の少年の悩みを聞くのは慣れっこだからな」
「…分かったよ」
最後にいつものお決まりのフレーズで茶化したのは、朋なりの気遣いだったのだろう。それを理解している英雄も敢えて反論することなく笑うのだった。
「…さてと、無事にお前とは再会できたけど…なぁ、英雄。あの話はお前も聞いてるのか?」
「あの話…?」
「ほら、SAOで生存していたプレイヤーの中で、まだ意識が戻ってない人がいるって話だよ」
そこから互いの身の回りの話を一通りし終えたところで、朋がまだSAO生還者の一部の意識が戻っていないことを話題に出した。
「…ああ。菊岡さんから聞いたし、ニュースでも取り上げられてるよな」
「…約300人のプレイヤーの意識が戻ってないって話は聞いてのとおり…ニュースによっては茅場明彦の陰謀だっていう話も出ている…ここまでは一般でもよく知られている話だ」
「その言い方だと…続きがあるみたいだな」
英雄もその話は知っていた…未だにSAO事件が終わっていないと世間を騒がせており、ニュースでその報道を聞かない日はない程にだった。
朋の告げた言葉に、どうやら彼女が掴んでいる情報があることを察した英雄の問い掛けに、朋はスマホを取り出し、ある画面を見せた。
「なぁ、英雄…これ、アーちゃんに見えないか?」
「…解像度が粗いが…確かに、閃光のアスナかと言われたら、そう見えない気もしないな。これがどうしたんだ?」
「…これはALO…今、大人気のVRMMO『アルブヘイム・オンライン』の中でスクショされた画像なんだ」
「アルブヘイム・オンライン…SAO事件があったのに、その後も新しいVRMMOが出てたのか」
「…知らなかったのか?」
「俺はそこまで積極的にゲームはしないんだよ。SAOも偶然父さんがβテストに当選して、それで代わりばんこにプレイしていて…サービス開始日に俺が先にログインしたから、SAOに俺が閉じこめられたんだ」
画像に移っていたのは大きな樹と、それに場違いな大きな鳥籠…その鳥籠の中に1人の女性がいるものだった。
朋の問い掛けに英雄も同意しつつ、画像の出所がアルブヘイム・オンライン…ALOであることを告げた朋だったが、英雄がALOを知らないことに驚いていた。一方で、英雄は父親の影響でSAOはプレイしていたものの、あまりゲーマーではなかったこともあり、SAO以外のVRMMOがあることを知らなかったのだ。
「でも、このALOが一体どうしたんだ…VRMMOといっても、SAOとは違うゲームなんだろう?」
「…と思うだろう?ところがどっこい、このALO…実はSAOと関連がある企業なんだ」
英雄の疑問に、予想していたとばかりに朋はスマホの画面を切り替え、説明を続けていく。
「このALOってゲーム…運営しているのは、レクトって会社なんだが…」
「レクト…確か、電機機器を取り扱っている大手メーカーだよな?」
「この会社、あのSAOを提供していて、解散されたアーガスが保有していたSAOのサーバの管理を引き継いて行っていた企業なんだ」
「…!なるほどな、無関係の企業じゃないってことなんだな」
「それと、このALOってゲーム…SAOと作りが似ているんだ。実際にちょっと情報を探ってみたら、デザインやシステムが似通っているんだ…まぁ、SAOと違って、ソードスキルが実装されておらず、更に飛べるという機能があるらしいが…まぁ、今はそれは置いておくか」
朋が独自に調べた情報と資料を元に、レクトのことやALOがSAOと似ているかを説明していく。少し作りは粗いが、急ぎ作成した影響で、それでも何の知識もない英雄がすぐに呑み込めるほどの精度の資料だった。
「そして、最大の繋がりが…レクトの代表の名前は結城彰三…未だに意識が戻っていない、SAOプレイヤーの1人であるアーちゃんの本名は結城明日奈…」
「…はぁ?それって…」
「…レクトはアーちゃんの親父さんが社長の会社だ。ここまで繋がりがあったら、逆に疑うなって言う方が無理だろう」
「……………」
レクトがアスナの父親が運営する会社であり、そして、その企業がALOを提供している。その事実は…先程の画像に映っていた女性がアスナかもしれないという話に説得力を持たせることになった。
ここまで朋が話した内容から、英雄は朋の真意を悟り…そして、その表情が、シグのものへと変わっていた。
「…キリト君たちとは連絡取れるのか?」
「メールで連絡を取れないかと試みてる。けど、もう少し時間が掛かりそうだ」
「アルゴ…俺は何をすればいい?お前がこんな話をするなんて、俺に何かを依頼したいからなんだろう?」
「…察しが早くて助かるぞ。シグ、お前に頼みたいのは、この写真に写っているのがアーちゃんなのかどうか確かめてほしい…ALOにアーちゃんがいる可能性を、他のSAOプレイヤーの意識が戻っていない理由を探るために、ALOに潜ってほしいんだ」
「分かった。その依頼、引き受けたよ」
朋からの…アルゴからの依頼を断る理由は英雄には一切なかった。SAOの事件が終わってない今、そして、アルゴにとって旧知の友であるアスナのための依頼を、彼が断わる理由はなかった。
「SAOとは違うVRMMOか…機器も対応しているものを買わないといけないか」
「ナーブギアで起動できるらしいぞ。アミュスフィアはナーブギアの下位互換気…安全性を求めた代わりに、解像度等の機能を下げたものだからな。そして、ソフトはこれな」
「…準備がいいな。助かるよ」
「ゲームシステムやどこに向かってほしいかなどといった情報は、メールで後から送る。ただまだ情報が精査し切れてないところがあるから、明日の朝まで待ってくれないか」
「分かった。俺もちょっと準備があるから、助かるよ(…問題は…どうしたものかな)」
「オイラは現実世界で情報収集を続ける。何か分かったら、すぐに連絡する」
「その間に、俺がALO…VRMMO側で探るってことだな。久々の連係プレイだな」
方向性が固まったところで、英雄も明日のログインに向けて準備しなければならないことを頭の中で整理しながら…一番の障害をどうしようかと思いつつ、なんとかするしかないと考えている時だった。
「……………」
「…?アルゴ、どうした…まだ何かあるのか?」
家に戻り準備を進めるべきかと考えていたが、朋の表情が優れないことに気付いた英雄が問い掛けた。対する朋は言うまいかどうか迷っていたが…覚悟を決めて、もう1つの事実を口にすることにした。
「これは…未確定にも程がある情報なんだが…このサイトを見てくれ」
「これは…書き込みサイトか。タイトルは…『SAO帰還者の集い』って…もしかして…」
「ああ、SAO生還者の有志が立ち上げた書き込みサイトだ。っていっても、生還者でないと分からないパスワードが設定されているんだけどな」
「パスワード…『SAO最強のプレイヤーの名前は?』…これって…」
「キー坊か…フォン坊、のプレイヤーネームのどちらかを入力すれば入れるだけど‥‥‥そのサイトで…実はフォン坊のことが書かれているんだが…」
あの朋が、自身の心情に反してまでも口にする情報は…言い淀む程に重く、そして、受け入れがたい事実であったが、アルゴはなんとか言葉を続けた。
「…オイラもシグも、75層の階層ボス戦に参加しなかっただろう?だから、知る術がなかったというか…そこで何があったのか、このサイトに書き込みがあったんだ……見てもらった方が早いと思うが…ここの書き込みだ」
「………っ!?アルゴ、これって…!?」
「悪い、まだ裏取りができてないんだ…でも…」
書き込みサイトのその記載を見せられた英雄が目を通し、驚きと共に感情を口にするが…朋も信じたくなくとも、それが真実であるかデマであるか、否定する情報がなく、はっきりと答えることができなかった。
そこには、夢幻の戦鬼がヒースクリフの正体が茅場明彦だと追求したこと、黒の剣士がヒースクリフと決闘し、そして、打ち倒したこと…75層のボス戦で起こった真実が全て書かれていた。
…そう、全ての真実が。
そこには、夢幻の戦鬼がヒースクリフに挑み…そして、敗れたこと…HPがゼロとなって消滅したことも書かれていたのだ。
夢幻の戦鬼が…フォンが死んだという事実を…英雄も朋も現実として受け入れることができなかった。あのフォンが…キリトと同じユニークスキルホルダーであるフォンが…負けて死んだという事実が…そこには書かれていたのだ。
「…悪いニュースがもう1個あるんだ」
そして、朋は…もう1つの事実を口にしながら、その画像を英雄に見せた。
「さっき…アーちゃんらしき人物が映った画像…あれは、ALOの中心にある世界樹っていう場所なんだが…その世界樹にあるって言われるグランド・クエストが最近アップデートされたらしいんだ…そこで新しく追加されたボスの画像が‥‥‥これなんだ」
「…おい、アルゴ…これは、何の冗談なんだ?」
そこに映っていたのは…先程の画像とは異なり、鮮明に映るモンスターの画像があった。だが、英雄が思わず問い掛ける程に…これが真実かと疑いたくなる画像が映っていた。
…そこには、真っ白な姿と鎧をまとった、無表情で虚ろな瞳をしたフォンの姿が映っていたのだ。
ということで、シグとアルゴ…英雄と朋の再会のお話…そして、外伝の『フェアリィ・ダンス』編の導入部分のお話でした。
原作ですとエギルが和人に情報を教えていたことから、まぁ、アルゴが情報を掴んでないわけがなく…彼女からの依頼という形で、シグも旧ALOへとログインすることになりました。そして、フォンが死んだ(死んでないですが)こと、そして、グランド・クエストのラスボスになっていることを知ったわけですが…このことを、キリトも知ることに…
ということで、次回から外伝でのフェアリィ・ダンス編スタートです!
シグは当面お休みで…初回の視点はキリトこと桐ケ谷和人の視点になります。大筋は原作通りですが、フォンを喪った(だから、死んでないのですが)ことがかなり影を落とす形になっており…
ある意味で、本編のフェアリィ・ダンスとアリシゼーションのお話を保管する形となる、本章の更新をお楽しみに。
それでは、また!