ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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先週は失礼しました。
案の定、忙殺されました(笑)

そういうわけで、サブタイ通りインターバル回という名のヒロインエピソードです。どっかで見たような感じもあるお話ですが、完全にオチ狙いです(苦笑)

それでは、どうぞ!


第23話 「休息のインターバル」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

(…何て…声を掛けたらいいのかな…?)

 

大空洞エリアのボス…25層の強化体を倒した後、次のエリアに繋がるルートをアクティベードしてから、管理区に戻ってきたのだけど…フィリアこと私は目の前の光景に眉を顰めるしかなかった。

 

少し離れた場所にて四つん這いになって落ち込んでいる人物…私の相棒(と呼称するのはちょっと気恥ずかしいところがまだあるんだけど)であり、あの攻略組の中でも最強候補として名があがる『夢幻の戦鬼』でもあるフォンの落ち込みようにフォローの言葉が見つからないでいた。

 

(まぁ、そうなるのも仕方ない……のかな?)

 

別に戻ってきてすぐにこうなったわけではない…正確に言うと、我慢していた部分はあったのだろう。けど、現実としていつまでも見て見ないフリをするわけにもいかず…オブジェクト化したそれらを目にした瞬間、フォンが膝から崩れ落ちたのだ。

 

…そう、原因は大空洞エリアのボスにあった。

 

エリアボスのギミックであった大技…それらのほとんどを相殺したことにより、フォンが所有していた武器と防具の多くが破壊されてしまったのだ。特に、フォンの武器のほとんどが自身の手によるオーダーメイドの品だったのだ。

浮遊遺跡エリアの時もいくつかの武器が壊れた時、少しばかりショックを見せていたことを思い出せば、それ以上の(浮遊遺跡エリアの倍以上)被害となれば、流石のフォンも落ち込む…

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

(…お、落ち込み過ぎじゃない?)

 

もう5分ほど経つが…微動だにしないフォンに顔が引き攣るのを感じた。なんか…意外な一面を見たようで、嬉しいような、ちょっと残念な感じもするような…

 

「…よし!」

 

「…!(あっ…立ち直った…?)」

 

声を掛けあぐねていると、ようやくフォンが動き出した。気合の入った声と共に立ち上がり、立ち直ったのかと思い見ていると、

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

(あ、あれ……ふぉ、フォンさん?)

 

立ち上がったは立ち上がったのだが…その場にて腕組みし右手を口元に沿えて再び微動だにしなくなってしまったのだ。どうしたのかと様子を見ていると、

 

「……(ブツブツブツブツブツブツ)」

 

(あっ…これ邪魔しちゃいけない奴だ)

 

物凄く…聞き取れないレベルでの呟きを始めたのを見て悟った…これは口を出してはいけない奴だと。さっきからフォンの意外な一面が見られっぱなしなのだが…それと同時に私のことを忘れてないだろうかとちょっと不安が…いや、イラつきを覚え始めた。

 

一人の世界に入っているのもそうだが、相棒とか言っておきながら、存残な扱いに怒りが込み上げてきたのだ。少しは相棒である私に愚痴を零してくれてもいいのでは、と思うのは私の我が儘なのかな。

 

「…これでいけるか。よし、フィリ「なに?」…お、おう。待たせてゴメン。とりあえず、

フィリアの短剣を貸してくれないか?」

 

突然、思考を纏め終えたらしいフォンは声を掛けてきたこともあり、私は思わず不満の色が籠った声で反応してしまった。少し刺々しい返しになったこともあり、流石のフォンもちょっとたじろいていたが、どうやら放置していたことを悪いとは思ったらしい。

 

謝罪と共に飛んできたのはお願いだった…フォンの頼みにどういうことかと思いつつ、私は…刃が砕け散ってしまい、原型を留めていない私の武器『リノベイド』を鞘ごと腰のホルダーから取り外す。

 

「いいけど…どうするの?」

 

「まずはフィリアの武器を修理しないといけないだろう。俺は他の武器があるからまだなんとかなるけど、フィリアはやっぱり使い慣れてる武器の方がいいだろう。で、修理をどうするか考えてたんだけど、この際、その短剣を使って強化進化した方がいいと思ってさ」

 

「強化、進化…?」

 

「…ああ、そうか。その名称はあまり聞き覚えがないか。聞き慣れてる名称で言うなら、武器のアップグレードだな。ほら、古い武器をインゴットへと戻して、武器の製造に使う手法があるって聞いたことないか?」

 

「…あっ、それならあるかな。確か、プレイヤーメイドの武器に多いんだよね?でも、それって確か費用もかなり高くなるって話が…」

 

「まぁ、正確には元の武器のレベルに生じて高レベルの鍛冶スキルが求められるからなであって、攻略組レベルの武器となると、マスタースミスでないと失敗するほどだから、その希少性のせいだけどな。まぁ、マスタースミスの中でも、これまで何度も同じことをしてきた奴がここにいるんだけどな」

 

「…そういえば、フォンもマスタースミスだったね。なんか夢幻の戦鬼だという事実を聞いたせいでちょっと忘れてた」

 

「おいおい…俺が使ってる武器は全部が古い武器を基に強化進化させてきたものだからな。ここから先…異界エリアにこの管理区地下に進むにあたって、フィリアの武器を強化するのは大事なことだしな」

 

どうやらさっき考え事をしていたのは私の武器を含めて、修理する算段をつけていたためだったらしい。別に私のことを忘れていたというわけではなかったらしく、少しだけ怒りが収まったところで、武器の強化進化の説明をフォンがしてくれた。

 

夢幻の戦鬼という二つ名の衝撃が大きすぎて忘れていたが、彼の鍛冶の腕は『ファントム・クラウド』として知られるマスタースミス級なのだ。説明を聞きながら、そのことを思い出した私は改めてフォンの凄さを実感していた。

 

(戦闘の時もそうだけど…頭の回転も速くて、料理スキルも高いおかけで上手で、分かりやすい説明もできるくらいに頭もよさそうだし……もしかして、フォンってよく言われる天才って奴なんじゃ…?)

 

眼前にいる人の凄さが…自分の予想していたものを超えるものなのではと思い、呆然としていた。けど…

 

「…フィリア、聞いてるか?」

 

「…!う、うん…ちゃんと聞いてるよ。なら、お願いしようかな」

 

「おう」

 

フォンの言葉に我に返り、持っていた短剣を手渡す。それを受け取ったフォンは状態を確認するべく鑑定スキルを発動させていた。その様子を…冷静に見えて、口角が少しだけ上がっていることでやる気になっている彼のそんな姿を見つつ、私はあの時のことを思い出していた。

 

『…私のことを何も知らなかったのに……私のことを信じるなんて、簡単に言わないでよぉ!?』

 

『…っ!?!?』

 

あの時…私がフォンを裏切った最悪の記憶を忘れることができずにいた。その時、フォンが見せた表情は…これまで一度も見せたことがなかった絶望の顔色を映したものだった。

 

あんな顔を…私はこれまでの人生で一度も見たことがなかった。もしかしたら、フォンにホロウ・エリアの真実を教えてもらうまで、自身があんな顔をしていたのかもしれないが…他人のそれを初めて見て…あのイカレサイコ野郎をフォンが倒した後、改めて感じたことがあったのだ。

 

(私は…フォンのことを知らな過ぎるじゃないのかな?)

 

夢幻の戦鬼としての活躍は新聞や人の噂で聞いていたことはあったし、この目でその力量の凄さも見た。ファントム・クラウドとして腕前も知った、料理スキルが高いことも…凄い人だって知っているのに…私は彼のそんな表面のことしか知らないでいた。

 

もちろん、プライベートのことを…現実世界の彼のことを知ろうとするのはマナー違反だ。VRMMOにてそれは許されない。それでも…

 

「それじゃ、俺は鍛冶場に行ってくるから、フィリアはゆっくり休んで「私も…一緒について行っていいかな?」…えっ?」

 

「そ、その…フォンが鍛冶をしているところを見学したいなって…駄目、かな?」

 

「だ、駄目じゃないけど…それなら、一緒に行くか?」

 

「…!…うん!」

 

私のお願いに一瞬戸惑いつつも快諾してくれたフォンに、私は思わず弾んだ声が出た。

 

(もっと…あなたのことを知りたいから)

 

駄目だと分かりつつも、秘めたる思いを胸に抱き、私はフォンの準備が整うのを舞った。

 

 

 

「見るのはいいけど…別に面白いものじゃないぞ?」

 

「それはそうかもしれないけど…フォン、その恰好は?」

 

フォンが見つけて鍛冶場として使っているという『遺棄された武具実験場』…へとやってきた私たち。話には何度か聞いたことはあったけど、こうして足を踏み入れるのは初めてなこともあり、奥に設置された大きな物体を見た時は驚いた…フォン曰く、あれは鍛冶に使う炉らしく、かなりレベルの高いものとのこと…素人目線だけど、雰囲気でだけど凄いことは見て取れた。

 

一方で、火が灯っていた鍛冶炉(フォン曰く、継続的に最低限の火が灯っているとのことで、いちいち点火する必要がないとのこと)の調整をして、それが完了するまでの間にフォンも準備をしていたんだけど…

 

半壊した『蒼炎の烈火』の代わりに、普段着として使っているという『インディゴ・クロセット』(濃淡の異なる藍色…上が薄い藍色、下が濃いスウェット)から、厚めのツナギに近い、でも薄い黒の縦ストライプにこれまた藍色メインの恰好へと着替えたフォンの初めて見る姿に質問が言葉として出た。

 

「まぁ、鍛冶をする時の恰好かな。まぁ、これに何か意味があるのかと言われると特にないんだけどな…まずは恰好からって奴だな」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…フィリア?おーい…」

 

「…っ!そ、そうなんだ…(しまった…ちょっと見惚れてちゃってた)」

 

頭に灰色の頭巾を被ったフォンの…髪を隠したこともあってか、普段とはまた異なる姿に思わず見惚れてしまっていた。声を掛けられるまで見ていたことを反省しつつ、再度フォンを見る。

 

(あー、もう…これまでそういう目でフォンを見てこなかったから、つい意識しちゃうというか…圏外に出ている時はそんなことないのに…でも、フォンって結構イケメンなんだよね。面食いじゃないと思ってたのに、私がそう感じるくらいだし…)

 

少し顔が赤くなるのを覚えながら、今度はまじまじとしない程度にフォンを見る。鍛冶炉の調子を確認するフォンの真剣な姿に…思わず右手を頬にやってしまう。

 

ナーブギアのスキャン機能で現実世界の素顔がアバターに反映していることもあり、あれが(実物という意味で)フォンの素顔というのだから…やっぱりモテていたのだろうか。

 

(…告白とか…やっぱりされてたりしたのか…)

 

「…よし、それじゃ始めるか」

 

先程まで静まっていた筈の怒りがモヤッとした形で再燃してきた…いや、別に私はフォンとそういう…えっと、関係じゃないのに怒りを抱くのはお門違いだと分かっているのだが、それでも抱いてしまうのはやっぱり…

 

鍛冶の準備が整ったフォンがそう言葉を発し、作業を始めた。

 

ストレージから素材と鍛冶槌(というのかな?小ぶりのハンマーのようなもの)をオブジェクト化して、複数の素材を砕いていく。そして、砕いたことで破片となったそれらを容器に入れて、炉にて熱していく。

 

その間に、私の短剣だったものを槌で叩き、インゴットへと戻していく。初めて見る鍛冶の手順に、私は黙って見つめ、そして、それは作業を続けていくフォンも同じだった。

 

一言も発さず、真剣な表情で槌を振り下ろし続ける。振り下ろすたびに呼吸の音が大きくなり、他に一切目を向けない様子から、フォンがどれだけ集中しているかがよく分かった。

 

炉の近くで作業をしていることもあってか、作業を開始してから数分も経っていないのに、既に大量の汗がフォンの額や首を伝っていた。だが、それを拭うことなく、フォンは作業を続けていく。

 

(あー、駄目だ…やっぱり私……フォンのこと、好きになっちゃったんだ)

 

一挙一動から目が離せない…今、フォンが自分の武器のためにあんなに真剣に作業をしてくれていると分かっているのもあるが、それよりも何も…彼の姿をできるだけ目にしておきたい理由を自覚してしまったからだ。

 

フォンのことを知りたいと思ったのも好意から、自分の妄想なのに苛立ちを覚えたのは嫉妬のせいだ。

 

最悪の出会いをした筈なのに…剣を振るってきた相手にも関わらず、必死に私のために動いてくれて、裏切っても助けに来てくれて…あんな助け方をされたら、惚れるなという方が無理があるというか…

 

『フィリアが抱えている苦しみを利用しやがって…この屑野郎…!』

『フィリアの心を揺さぶって利用したお前を……俺は絶対に許さない!』

『何度裏切られようとも…俺はフィリアを信じる』

『信じたい…信じられるって…背中を任せられる相手だって感じたってところで…だからかな』

『フィリアは大事な相棒で…仲間だからな』

 

(っ~~~~!?あんな言動を何度もするなんて…フォンは天然の誑しなのぉ!?)

 

惚れるまでの出来事を思い出して、思わず顔を手で覆ってしまった…きっと私の顔は真っ赤になっているに違いない。

 

まさかと思うが…そういう言動を誰とも構わずにやっているのではないだろうか。いや、誠実そうなフォンに限って…いいや、天然でやっている可能性は大いにありうる。

 

「(カァン!)・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

私の気も知らず、当の本人は物凄く真剣に作業を続けているわけで…やり場のない怒りを胸の内にて堪える。

 

そもそも…フォンは私のことをどう思っているのだろうか。相棒と呼んでくれている以上、信頼してくれているのは間違いないだろう。それじゃ、同じ好意を抱いてくれているかといわれると…

 

(微妙なところだなぁ…友人、と言っていいかは分かんないけど、そういうライク的な意味じゃ好意はあると思うだけど、ラブ的な意味じゃ…なさそうな気がするな…)

 

庇護対象とかそういうのではないんだろうけど…偏見かもしれないけど、何か友人とか仲間の類としか見られてないような気がしてならない。

 

それじゃあ、こっちから意識させるような行動を起こせばいいじゃないかって話だけど…それを改まってやるのはちょっと恥ずかしいし…そんなことを思ってたら、フォンは天然で誑してくるだろうし…何とも厄介な人を好きになってしまったような気がする。

 

「…惚れた弱みって奴なのかな」

 

「何がどうしたって?」

 

「うわぁ…?!」

 

思わず思ったことを呟いた矢先、意識の外から声が聞こえてきて…すぐ近くにまでフォンが来ていたことに気づいていなかった。驚きの声が漏れ、それに遅れてフォンも少し驚く。

 

「わ、悪い…もしかして、何か考え事してたか?」

 

「う、ううん…!…え、えっと…そう!鍛冶ってやっぱり大変そうだなと思ってただけだから!それにしても、もう出来たの、早かったね…!」

 

「まぁ、システムのアシストとかもあるし、実際の鍛冶と比べたら工程は大分簡略されているところはあるからな…リズもそういったところはちょっと気になるって言ってたっけ。そういえば、料理もそういうところあるから、アスナも似たようなこと言ってたな」

 

「…リズ?アスナ?…誰それ…」

 

「フ、フィリアさん…なんか顔が怖いんだけど…」

 

先程のつぶやきは聞き取られていなかったようで、フォンの追及になんとか言い訳を取り繕うと、それを信じたフォンから…いきなり女性の名前らしきものが出てきて、思わず低い声が出た。

 

「前にも話に出たことあったけど…リズはリズベット武具店のマスタースミスであるリズベットの愛称で、アスナはあの血盟騎士団副団長こと閃光の二つ名を持つプレイヤーだよ」

 

「…ゴメン、思わず反応しちゃって。でも、愛称で呼ぶなんて結構親しいんじゃないの?」

 

「鍛冶仲間としてだよ。たまにメッセージでやりとりするぐらいだし、どっちかというアスナと一緒になることの方が多いからな」

 

「…へぇー…」

 

「というか、どこぞのヘタレが土壇場でビビッて、俺をデートの場に何度も呼び寄せるからな。アスナが不機嫌になるのを見て、その度に冷や汗を流してたからな」

 

「…フォ、フォン…?」

 

「キリトもキリトだっつうの…アスナに好意を抱いてるのなんか、コンビを組んでるこっちからしたら知らなくても分かるぐらいなのに…だから、引っ付くのにあんなに時間が掛かるんだっつうの……って、悪い。フィリアに愚痴っても仕方ないことを言った」

 

閃光ことアスナと一緒にいることが多い…そのワードを聞いて、心のもやり具合が一気に加速した…と思っていたら、フォンの方も色々と抱えていたものがあったらしく、どこか疲れた顔でそんな愚痴で口から流れ出ていた。

 

…どうやら、アスナって人には好意を抱いているキリトっていう人がいるらしく、そのキリトっていう人もアスナさんに好意を抱いている…つまり、両想いの状態らしい。そして、その二人のラブコメに巻き込まれて、フォンは毎回とんでもない目に逢っているらしい。

 

「…ドンマイ?」

 

「アハハ」

 

思わず思った感想が口に出て、それを聞いたフォンが乾いた笑いを浮かべていた。あんな長々とした愚痴がすらすらと出るほどだから、よほど苦労しているのだろう。というか、

 

(もしかしてだけど…その二人のやりとりを見ているせいで、自分に対する好意の感受性が麻痺しているじゃ…)

 

ここまで鈍感な理由がもしかしてそれなのではと思ってしまったのだが…なんかありそうでちょっと怖いと感じてしまった。

 

「っとと、本題を忘れてた。ほい、これがフィリアの新しい短剣だ。刃の大きさは少しだけ伸ばした分、柄の部分を削って重みは元のままにしてる。強化進化に伴なって柄元の装飾が変わってるけど、戦闘に支障はないものの筈だ…と説明はこんな感じだけど、試してみて問題ないか確認してくれないか」

 

「うん、やってみる」

 

水色の宝石を中心に翼をモチーフにしたような柄が追加され、ただの鉄の刃だったものが薄いオレンジ色の…夕日を思わせるような淡い色を宿した刃に変わっていた…鞘から抜かれた短剣…それが、フォンから新調してくれた私の新しい武器だった。

 

フォンから手渡された直後、手に感じた重みはこれまで使っていた短剣と同じ重さ…初めて触る筈なのに、手にピッタリくるのは…フォンの腕の凄さを証明しているような気がした。

 

フォンから少し離れ、鞘を腰のホルダーに着け、短剣を構え…思ったままに刃を振るう!思ったように操れる…伸長された刃のリーチに感覚を慣らす必要はあるが、それはあまり問題ない。

 

一定程度振るったところで満足し、一息を吐く…それを見計らって、フォンが声を掛ける。

 

「『リノベイド・ベリッタ』…勝手に銘を着けたけど、ベリッタはイタリア語で真実を意味する言葉から取ったものだ。それで、リノベイドは英語で再生とか革新の意味を持つから…直訳して「真なる再生・改革」といったところかな」

 

「再生…それってやり直しって意味もあるよね」

 

「まぁ、捉え方によるとは思うけどな」

 

「本当のやりなおし……うん、問題ないと思う。前の短剣と同じように使えるし…大事に使わてもらうから」

 

「できることなら、この前みたいな危ないことはしてほしくないんだが…壊れたら言ってくれ。何度でも修理するからさ」

 

「うん!そういえば…この武器のステータスってどんな感じなのかな」

 

「…(あっ)」

 

私の新しい刃…真なる再生の名を持つ『リノベイド・ベリッタ』。フォンが私のために作ってくれた武器というだけで、口角が緩んでしまう…これでまたフォンと一緒に戦えると思うと更に嬉しくなり、その勢いで短剣のステータスを確認してみると…

 

「…うん?……ううん!?…ねぇ、フォン?」

 

「…ど、ど、どうした…何か不都合があったか?」

 

「申し開きがあるのなら、今のうちに言った方がいいよ?私が怒る前に…!」

 

「…申し訳ありませんでした!」

 

最後の最後まで言い逃れようとしたフォンだったけど…以前似たようなことがあったのもあり、圧を込めた私が最終通告を出すと、素直に謝罪してきた。最初からそうすればいいのに…

 

「なによ、このステータス!前の武器の1.5倍はあるじゃない!」

 

「だ、だから言ったろ…刃が延びた分、柄とを削って増えた重み…要求されるSTR値を前と同じぐらいにしたって」

 

「さっきと今とで言ってることの文量が明らかに違うでしょ!って、そうじゃない!?何の素材を使ったら、こんな恐ろしいステータスの武器が出来るのよ!?」

 

「…さっき倒した大空洞エリアのボスがドロップした、ラストアタックボーナスっぽいアイテムかな」

 

「なぁ…ら、ラストアタックボーナスって!?…そんな貴重なものを私の武器に使ったの?!」

 

「あ、ああ…」

 

驚きのあまり大声で問い詰めると、フォンはたじろぎながらも全てを答えてくれて…その内容に更に愕然とする。ラストアタックボーナスはボス一体につき一つしかドロップしないって言われてるほどに貴重なアイテムが多く、その性能の多くは破格級だって聞いたことがある。

 

それを惜しげもなくフォンが使ったと聞き、私は言葉を失うしかなかった。そんな私の反応に、フォンはバツが悪そうに…

 

「そんなもの…フィリアの力になるのなら惜しくないさ。今から修理する武具は…もちろん大事に作ったものだから思い入れはあるけどさ…壊れたとしても何度でも直せる。でも、命は違う…この世界じゃHPがゼロになったら終わりなんだ。ラストアタックボーナスを使って、フィリアを助けられるなら、安いもんさ」

 

「で、でも…」

 

「それに…俺の相棒はまた危ないことをしそうだからな。備えあれば憂いなしっていうからな。あと、付け足して言わせてもらうなら、ラストアタックボーナスの使い道をどう使うかなんて、ゲットした人の自由だろう?」

 

「うっ…そ、そんなことを言われたら……反論できないよ」

 

まるでそれが当然のように…一切の迷いなく告げたフォンの言葉になんとか反論しようとするも、更なる理由を二つも挙げられてしまい、私は並行して心の中で白旗を掲げるしかなかった。

 

(前々から感じてたことだけど…フォンって口喧嘩強過ぎない?)

 

出会ってから何度かこんなやりとりをしたことがあったが、私が勝ててる回数の方が圧倒的に少ないような気がする。性質が悪い(?)のが、相手を一方的に言い負かすような内容ではなく、双方が納得するような着地点に誘導されるのだから、こちらの反論材料がなくなってしまうのだ。

 

「…なんか弁護士みたい」

 

「弁護士か…まぁ、それっぽい話し方になるのは…仕方ないのかもな」

 

(…フォン?なんで、そんな…寂しそうな顔を…)

 

思わず零れた言葉が今度はフォンに聞こえたらしく、しかし、どこか寂しそうに笑うフォンの反応に、私は疑問を抱いた。理由は分からないが、とりあえずフォンの踏み込んではいけない部分に触れてしまったような気がして…私は話を変えることにした。

 

彼のことを知りたいとしても、全てに踏み込んでいいわけではないだろうし…

 

「とりあえず…武器のことは分かったわ。それでも、大事に使わせてもらうから…ありがとう」

 

「おう、どういたしまして。それじゃあ、引き続きやるか」

 

「えっ…」

 

少しだけ笑みを浮かべて、お礼に応えたと思いきや、フォンはそのまま鍛冶炉の方へと戻ろうと…

 

「ちょ、ちょっと、フォン!何する気…?」

 

「何って…壊れた武器と防具を直すんだよ。早く直して、攻略を再開しないといけないからな」

 

「…っ!」

 

その時、私はフォンがどこかおかしいことに気づいた。いや、前々から感じていた部分ではあった。でも、その言動を前に…ううん、こうして彼のことをよく見ようとして、やっとその理由が分かった。

 

「さてと…それじゃ、まずは両手剣か(ガシッ!)……フィリア?」

 

「…ダメ」

 

「駄目って…いや、ただ武器を直すだけ「ダメ!」…ふ、フィリア?」

 

私の行動にフォンは困惑し切っていた。まぁ、突然、手を掴んでその行動を制止したのだ。フォンが困惑するのも無理はないのかもしれない…それでも、自分がしようとしていることに、何の疑問も持ってないフォンを…私は止めるべきだと思った。

 

「フォン…私の武器を作る為にあんなに集中してたのに…汗もいっぱい掻いて…ボス戦が終わってから全然時間が経ってないのに…絶対疲れてる筈でしょ!無理してるじゃないの!」

 

「…そ、そんなことは…それに無理の一つや二つはしないと駄目だろう。多少の余裕はあると言えど、PoHが仕掛けたアップデートを阻止しないといけないんだ。その為なら、俺の疲労や負担ぐらい「だからだよ!?」…っ!」

 

珍しく言い淀むフォンの態度は、私の指摘が間違っていないことを物語っていた。だからこそ…今、フォンを止めることができるのは私しかいないと思い、叫んだ!

 

「あの男が仕掛けたことを止めるのも大事だよ!でも…私にとってはフォンも大事なんだよ!」

 

「…!」

 

「今、ホロウ・エリアには私とフォンしかいないんだよ?その無茶をして、フォンに何かがあったらどうするの!誰があいつの企みを止めるの!失敗できないからこそ…必要じゃない無茶をしちゃいけないんじゃないの!?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「だから……だから…!お願いだから、少しは自分を大切にしてよ…」

 

フォンは自分を犠牲にすることを一切気にしない。

 

もちろんHPをゼロにするような行為はしない…けど、最低限のリスクを回避できると分かれば、戸惑いなく危険なことを実行する。それは、これまで共に戦ってきた中で何度も見てきたフォンの悪癖だった。

 

自分のHPが削れようが対応策があるのならやる、やるべきことがあるのなら自分のことなど後回し…私のこの武器を作ってくれた今さっきがそうだ。それは…自分のことなどどうなってもいいもいいと言わんばかりの姿が…見ているのが嫌だった…止めなければと思った。

 

「…っ~~…ううぅ…」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

言葉を紡いでいく内に自然と涙が出ていた。それでも、フォンが鍛冶場に行かないように捕まえる腕の力は変えずにいた。だから、掴んでいるフォンの腕に力が入っていないことに気づかずにいて…

 

「フィリア、離してくれて」

 

「ダメ、絶対に離さないから!?フォンが無理をしないって言うまで絶対に離せないから!フォンが無理をするって言うのなら、私だって無理を…何度だって危ないことをするんだから!」

 

「…降参…俺の負けだから、離してほしいんだが」

 

「えっ…?」

 

涙が零れるのを堪えようとして下を向いていたのもあり、ようやく気付いた…フォンの声色が諦めのものが混じっていることに。

 

「俺が無理したらフィリアまで無理をするって…そんなことを言われたら、降参するしかないだろう。それに…女性に泣かれてまで頼まれたら…流石に困る」

 

「…本当に…しない?」

 

「しないよ…今日はもうしないって。約束だ…だから、そろそろ手を離してほしいんだが…」

 

「えっ……あっ、ゴメン!?」

 

本当に降参だといった態度のフォンに、いつまでもフォンの左腕を掴んでいたことを思い出し、慌てて離す。その後に、ここまでしてもきっとフォンは普通の反応をしているんだろうなと思って、ふと顔を見ると…

 

「…フィリアにそこまで言わせるとは…もうちょっと配慮すべきだったよな、ゴメン」

 

「う、うん…(あれ…ほんの少し顔が赤いような…?)」

 

意外な反応に驚きつつ、フォンの謝罪を受け入れつつ…もしかしてと思い、ちょっとだけ探ってみたいという思いが出てしまった。

 

「こっちこそゴメンね…力強く腕を握っちゃって」

 

「いや、むしろ止めてくれてありがとう」

 

「相棒だからね…それと、腕は大丈夫。痣になっていたりなんか…」

 

「だ、大丈夫だから……その、勘弁してくれ。こういう女性とのスキンシップは慣れてないからさ…恥ずかしいから勘弁してくれ」

 

悪戯心もあったと思う…さっき論破されたことの趣旨返しとして、再度腕を掴もうとして…フォンは降参といったばかりに両腕を上げていた。その顔は恥ずかしさを隠す用に私から逸らしており、更に赤くなっていた。

 

「ふ~ん…そっか、フォンはそこまで女性とのスキンシップの経験がないんだ。そっか、そっか…えへへ!」

 

「…?なんでそんな嬉しそうなんだ、フィリア…」

 

「さぁて、何ででしょう…フォンにはまだ教えてあげないんだから」

 

「…?…??」

 

フォンがとても不思議そうな顔をしていたが…その理由は当面の間、教えてあげるつもりはない。安心感と、ちょっとした優越感で笑みが堪え切れずにいた。そんな私の様子を見て、フォンは首を傾げぱなっしだったけど。

 

「まぁ、ともかく…せっかく火が使えることだし、凝った料理でも作る…イタタタ!」

 

「なんで人が無茶なことをしないようにって言ったばっかりなのに、そういう疲労が増すようなことをするのよ!?」

 

「み、耳を引っ張るな!それに…フィリアだって食事を取るなら美味しいものがいいだろう!ビーフシチューとカツサンドだぞ!」

 

「うっ…!そ、それは…確かに魅力的だけど…」

 

「それとも…フィリアが夕食を作ってくれるのか?キッチンみたいに設備が整ってない場所での料理は、倍以上の熟練度の料理スキルが求められるぞ?」

 

「…お、お願い致します」

 

さっきまで取っていたマウントをものの見事にひっくり返され、私は本日二度目の口喧嘩敗北を受けることになった…やっぱり、普通の口喧嘩にはフォンに勝てる気がしない。しかも、それで終わらないのが…

 

「ただ…俺一人だと大変だから、フィリアにも手伝ってもらいたいな。それなら、フィリアの気も済まないか?」

 

「…その提案は卑怯だと思う。ここでノーと言ったら、私の主張と矛盾するじゃない」

 

「賢しいと言ってほしいな…さて、それじゃ一緒に作るとしますか」

 

「…うん!」

 

困ったように笑いながら私の言葉を受け流したフォンは装備を『インディゴ・クロセット』へと戻し、(おそらく事前に持ってきていたのだろう)ストレージから食材やら調理器具をオブジェクト化していき、私はフォンの指示に従い手伝いを始めるのだった。

 

 

 

「…といった感じの話がひとつ、異界エリアに行く前にあったわけ…なんだけど、えっと…ユウキさん?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「ど、どうしたのじゃ…ユウキ。何故にそんなに怒っておるのじゃ?」

 

そんなわけで幕間的な話をし終えたのだが、話の途中からユウキの機嫌が一気に悪くなったのだ。何事かと思い敬語で尋ねるも、まさかの返ってきたのは無視という反応だった。

 

原因が分からず、同じく話を聞いていたのに普通の反応であるカナデも困惑していた。目でカナデに何か変なところがあったかと尋ねるも、返ってきたのは首を横に振っての否定だった。

 

「…酷いよ、フォン…」

 

「ひ、酷い…?えっと………ゴメン、マジで何の話だ…?」

 

「だって…ボクに作ってくれた武器となんか流れ一緒じゃん?!」

 

「そこぉ…?!」

 

予想だにしていなかったドストレートな嫉妬に思わず変な声が出た!いや、確かに流れ的に確かに似てるけど、まさかそんな安直な理由とは予想外にもほどがあるわ!?

 

「だ、だって…(自分専用に等しい武器の作成の)そういう初めてはボクが独占してたと思ってたのに、なんか裏切られた気分だもん!フォンのそういう初めてはボクかと思ってたんだもん!」

 

「その言い方は色々と誤解を生むから止めてくれぇ!?あと、ユウキ!絶対分かって…」

 

「…?」

 

「…ああ、うん。今回のは分かってなかったパターンか」

 

「っ~~~~~~///!?」

 

いや、あながち嘘ではないのだが、今回問題となっているのとはまた話が別というか…ちなみにだが、フィリアが(オーダーメイド系統の武器を作った特定の相手)初めてではない。実はシグさんが初めてなんだが…その話はまた別の機会にするとしよう。

 

あまりに意味深な言い方にユウキに確かめようとして…首をこてんと自然に傾けたところで、追及を諦めた…どこぞのバーサクヒーラーの関与を疑ったが、今回は違ったようだ。あと、意味を察したカナデが顔を真っ赤にさせていたのにツッコむのはあまりにも野暮だったのでスルーした。

 

…俺の精神的HPに余力がないという理由もあったが…まだもう一つ話があるというのに、既に胃が限界寸前なのをなんとか堪え、その続きを話していくことにしたのだった。

 

 




あれですね、恋心を自覚したフィリアは結構書きやすい。
ユウキやカナデとは違った意味で百面相しやすいのと、フォンヒロインズの中で一番女の子らしいのもあってですね。

それと同時にまだ歪みを自覚できていない状態のフォンの闇が垣間見え、それを止めるストッパーとしてのフィリアの立場が初めて浮き彫りになったお話でした。基本的にヒロインズはフォンのストッパーとして役割もあるので…逆に言うと、彼女たちに何かあったら、憤怒の化身と化すわけなのですが(そこら辺のお話はキャラエピとかロスト・ソングでやる予定です)

そして、フォンまさかのやらかし『リノベイド・ベリッタ』…こちらに関してはまたどっかで解説します(フラグ)

次回もヒロインエピソード…をお届けして、その次の異界エリアを攻略後、ホロウ・エリアのお話は終盤へと向かって行きます。なんとか後半含めて年内には終わらせたいとは思ってますので、ご期待頂ければと思います。

それでは!

もしも見るならどっち?

  • GRAND QUEST FANTASY
  • 修羅場

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