ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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遅くなりました…暑さにやられて、執筆が思うようにすすまず…というよりは、外伝書くのに時間割き過ぎて、こっちを執筆し始めるのが遅くなりまして。

フォン視点に語り部は戻り、前回のお話を踏まえてのインターバル回です。といっても、前々よりフラグは立てていたお話です。(つまりはフォンのやらかし回です…フィリアのツッコミも板についてきたなぁ)

それでは、どうぞ!


第24話 「骨抜きのバスタイム」

「明日から攻略を再開するわけだけど…纏まった休みを取れたということで、こんなものを作ってみました」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

大空洞エリアのボス戦より三日…ボス戦後に一気に全ての武具を修復しようとしたところ、フィリアに泣かれるまでにこっぴどく怒られてしまった。

 

それが純粋に俺を心配しての行為だと分かり、流石に逆らうわけにもいかず。おとなしくこの三日間は武具の修復を少しずつ行いながら、フィリアと一緒に大空洞エリアを見て回ったり(PoHの一件で、それぞれ単独行動していたことが多かったので)、コンソールにて機能について再度洗い出しを行ったり、管理区で互いのことを話し合ったり(といっても、その内容はどっちかというとSAOの攻略や思い出話が中心だったけど…流石に現実世界のことを話すわけにはいかない(俺が別世界から来てしまっているかもしれないのが大きな理由だが…)わけで…何故かフィリアに少し不満げにされてしまったのだが…)

 

『…えっ?!フォンって、私より年上なの!?』

 

ちなみに…年齢くらいなら別に問題ないかと思い、今年で高校3年(18歳…あっちの世界だと高校1年だったし、そこから2年経過したことを踏まえての純粋換算での計算だ)だと告げると、フィリアに滅茶苦茶驚かれた。

 

…まぁ、どっちかという同い年くらいに思われていたのだろう。すぐに納得された反面、

 

『…それでも、私とあんまり変わらないのに、精神年齢的と見た目が全然一致してないとか…年上か…』

 

なんかよく分からん反応をも同時にされてしまった。確かに妙に大人びているとは昔から嫌という程に…いや、あまり思い出しくない記憶まで蘇ってしまったので、再び蓋をした。

 

まぁ、そんな感じで三日間を過ごし…しかし、いつまでも攻略を先送りにするわけにもいかないので、明日から攻略を再開する予定なのだが…最終日ということで、前々より考えていたものがようやく完成したので、それを管理区にてフィリアへとお披露目したのだが…

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

物凄く険しい顔をされてしまった…まるで頭痛を堪えるかのようにこめかみに右手を添える姿に嫌な予感を覚えて…

 

「…フォン。まるで私が何か言いたいのを堪えるんじゃないかって思ってるんでしょう?」

 

「…!い、いや…そんなことは…」

 

心を読んだかのように…ゆらりとした動きがまるでアストラル系モンスターとして偶に見かける怨霊を連想させるかのように、笑顔の筈なのに恐怖を感じるフィリアを前に、俺は嫌な予感に従い逃げようとしたのだが、既に手遅れだった。

 

「私、休めって言ったよね?お願いとも言ったよね?なのに、何を作り出したのかなぁ~?」

 

「痛い痛い!フィリア、肩を掴む力がヤバい!?」

 

「何か文句があるの?」

 

「…せめて、言い訳ぐらいは聞いてほしいかなと……頼むから、事情を聞いてから判断してくれないか!?」

 

まさしく『がっしり』という擬音が聞こえてきそうな勢いで両肩を掴まれてしまい逃げられず…笑みから真顔に変わり、軽く目を見開いた彼女の追及に後手に回るしかなかった。

 

このままではマズいと思い、最後の抵抗を試みる!というか、フィリアの奴、過敏に反応し過ぎじゃないか?!そんな反応されるようなこと……うん、散々やらかしてる心当たりしかなかったわ。

 

なんというか、俺の周りのメンバーってどっかズレてるところがあるからな…いや、変人とかそういう評価じゃなく、俺含めてちょっと価値観が攻略寄りになってるところがあるからな。フィリアの反応が多分普通なんだろうな…だからって、怒られるのを許容できるわけじゃないけどな!?

 

「ほ、ほら!前にフィリアが言ってたじゃないか!?これがあったらいいなって!流石に部屋に備え付けレベルのものは無理だけど、こういった原始的なものであったスキルで作れそうだったから!?」

 

「ぐぅぅ…た、確かに言ったような気がする。で、でも…また短時間で一気に作り上げたりしたんじゃ…」

 

「いや、そのことを聞いた時から構造自体は考えていたし、入り江エリアの構造を分かった時点で海浜にそれらしいものが流れ着きそうだと思って、素材が回収でき次第、ちょっとずつ作っていたからその点も問題なしだ」

 

「…ぬぬぬ」

 

「それに、俺もいい加減に我慢の限界なところもあったからな。つまり、これは俺の願望も理由になっているわけだ!俺が必要と判断して作ったから、怒られる通りは「理由は分かったけど、せめて私に一言言ってもよかったんじゃない?」…ほ、ほら。サプライズとして、フィリアを驚かせたかったのもあって…それに、もしもできなかった場合にぬか喜びさせることになるのは嫌だったしな」

 

「……むぅ…むうううぅぅぅ」

 

フィリアの追及に俺は冷静に悉く返していく…申し訳ないが、今回の件に関して負けるつもりはない。なんとか追及していくフィリアだが、最後の方には完全に言葉を詰まらせていた。

 

そして、十数秒ほど言葉を迷った末に…

 

「…はぁ~~~~~~…もう諦めた。フォンがこういう人だっていうことをちゃんと理解できてなかった私がバカだったわ」

 

「こ、こういう人って…そんなにか?」

 

「普通の人はまず作ろうとか発想にならないから!なんで、そう人の為にだったら自分の労力や負担を考えずにやっちゃうのかなぁ…そこがフォンの一番ダメなところで、いいところなんだけど」

 

「えっと…貶してるのか、それとも、褒めてるのか、その評価…?」

 

「前者7割後者3割よ」

 

「…さいですか」

 

大きなため息と共に、オブジェクト化してそこに安置されたそれを指さしながら、どこか疲れた様子のフィリアに呆れた視線を向けられてしまった。こ、これは…キリトたちに色々と染められすぎたのだろうか、マジで反省しよう。

 

なんてことを心の中で反省しているのが苦笑いとして出ているのをよそに、フィリアがこれまで堪えていたそれを叫んだ。

 

「なんで…なんで人が言ったことを真に受けてお風呂を作っちゃうのよ!?」

 

その叫びと共に崩れ落ちるのではないかと思う程の音量に、思わず俺が後ずってしまう程に…結構な音量が管理区へと響き渡った。

 

「いや、前にテレビか何かで見たことがあって、原理とか必要なものがどうこうは覚えてたから…そんなに手間も掛かってないぞ。浜辺に流れ着いたそれらを少し綺麗にしてからの再利用だったり、木材からクラフトしただけだったりだし」

 

「そこじゃないよ!?知ってたからって、まず作ろうという発想にならないから!」

 

「いや、温泉を探すよりは現実的かつ手っ取り早いかなって。なんなら、同じ材料で水の濾過機も作ることも「ストップ、フォン。また私の頭をパンクさせたいの?」…わ、悪い」

 

できるかつ負担としても許容できるものであり、女の子であるフィリアにとってある意味で欲しいものの一つかと思い作ったのだが…どうにもこういったところがズレてるらしい。

 

…できることをやって何が悪いのだろうか。それで誰かのために喜ぶのなら、俺の力や知識など使って損はないと思うのだ。それが…できる者がすべきことだと思うのは、間違っているのだろうか。

 

「…フォン?」

 

「…!いや、なんでもない。まぁ、作っちまったし、とりあえず俺的には使ってくれると有難いんだけど」

 

「ううぅ…と、とっても魅力的な提案だけど…物凄くそうしたいんだけど…」

 

「…?どうした、そんなに遠慮して…」

 

考え事をしていたことで少しぼうっとしてしまっていた。フィリアの呼びかけに我に返り、ひとまず使ってみてくれと話すと…何故か盛大な態度で遠慮されてしまった。何がどうしたのかと思っていると…

 

「…こういうのって作った人が先に使った方がいいじゃない。私のために作ってくれたのは嬉しいけど、フォンだって汗とか流したいんじゃ…」

 

「いや、俺はそこまで…なんなら製作者特権で逆にフィリアに使ってほしいくらいなんだが…」

 

「っ~~~~~~!?そ、そうじゃなくって……えっとね……っ~///!?」

 

…本当にどうしたんだろうか。もしかして、フィリアは風呂が苦手とか?でも、水浴びの時はそんな発言してなかったし…それとも、俺が同席していることを懸念しているのだろうか。そこは水浴びの時のように少しの間、外にいようと考えていたのだが…なんにせよ、フィリアが躊躇する理由が分からず、俺は困惑しまくっていた。

 

…すると、観念したのか、フィリアが顔を真っ赤にさせ、

 

「…(ボソッ)」

 

「えっと…ゴメン、フィリア。聞き取れなかったからもう一回言ってほしいんだが…」

 

「っ~……だ、だから…わ、私が入った後に、フォンが入るんでしょ。だから、その…私の汗とかが一緒のお湯を使ってもらうのは……」

 

「あ、あぁ~………すまん、そこまで気が回ってなかった」

 

その言葉を聞き、俺は配慮が欠けていたことにようやく気付き、赤面するフィリアに向かい合うようにして右手で顔を覆った。

 

これが部屋に備え付けのお風呂であれば水を変えるのは訳ないので問題はすぐに解決しただろうし、銭湯や温泉のような広いものならまた話は違っただろう。しかし、今回作ったのは、ドラム缶をベースにしたいわゆる五右衛門風呂だった。

 

まぁ、女の子からかなり気を遣うところだろう…そこまで考えが至っていなかったこともあり、ストレージに入っている大量の水(以前、水浴びをした湖から汲んできたもの)はドラム缶や五右衛門風呂に入るの必要な量より少し多めにはあるものの、二杯分まではないわけだ。

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

俺もフィリアも上手い解決方法が思いつかず、沈黙が場を支配する…俺も結構楽しみにしていたところはあったのだが、フィリアのことを思えば、ここは我慢するところだろう。

 

「…なら、俺は遠慮しとくよ。それなら、「…いいよ」…えっ…?」

 

「…フォンが先に入るのなら、私は…大丈夫だから」

 

「…はい?」

 

断りの言葉を遮り、これでもかという程に顔を真っ赤にさせたフィリアの提案に、俺は思わず呆けた声が出たのだった。

 

 

 

「五右衛門風呂の注意点として、常に火に当て続けているから、お湯の温度が常に上がり続けるんだよ。底に関しては木蓋を敷くから大丈夫だけど、お湯自体がどんどん熱くなっていくんだ…そのままじゃ名前にもある石川五右衛門が処刑された方法と同じように茹で上がっちまうから、温度を下げるような水がこの木樽だ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「木樽の水は割り水としてだけでなく、飲み水用でもある。短時間だったらいいが、長風呂だと脱水症状になることもあるから、それ用だな。側面はお湯の方に温度を奪われる関係上、触っても大丈夫だけど過失は禁物かな」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「水の足し過ぎで溢れて火が消えてもすぐには影響はないと思う。まぁ、管理区を水浸しにしたくはないから、逆に水の補充には要注意といったところだけど……えっと、フィリア、聞いてるか?」

 

「き、き、聞いてるよ!?大丈夫!」

 

フィリアの提案に思うところはあったものの、俺自身もお風呂に入りたいという欲はあったため、言いたいことを呑み込み、その提案を受け入れたのだが…

 

鍛冶場から持ってきた火を火種として、沸かしようの焚火を作り、その上に作成したドラム缶を置き、その中にオブジェクト化した水の入ったボトルを次々と投下していった。そして、ドラム缶の7割ほどにまで水が入ったところで、沸き立つ間に今度はストレージからまたオブジェクト化した木樽に同じく水を入れる作業を行う。それが完了し、大小の柄杓(神社とかでよく見かけるあれだ)を3本ずつ取りやすい場所に設置し終えると、いい感じの温度にドラム缶の水…五右衛門風呂が仕上がっていた。

 

というわけで、温度調整も兼ねてフィリアに説明をしていたのだが…全く返事が返ってこなかった彼女に確認の問い掛けをすると、かなり上擦った返事が返ってきた。まぁ、無理もないと思う。

 

俺も表面に出していないだけで、内心は結構動揺していた。こういうのに免疫がないというか…想定していなかった事態にパニックになるという方が無理というか…どこぞのバカップル(もちろん、キリトとアスナのことだが)ならまだしも、付き合ってもいない男女がこういうのをするのは、流石に憚られるところがあるわけで…

 

(…そういえば、SAOに…ソードアート・オンラインの世界に来てから、こういうのって全然機会がなかったんだよな。大体はキリトと一緒か、ソロだったし…女性との密接な付き合いって、俺、全然なかったんだよな。リズもシリカもそういった関係じゃないし、アスナは言わずもがなか)

 

現実世界でもそうだが、こういう経験は皆無だったことを思い出し、俺は心の中で溜息を吐いていた。基本的に、人とどこか接する機会を限定したこともあって、女性と付き合ったことなどあるわけがなく…高校入学後、しばらくしてラブレターを受け取ったこともあったが、いきなりのこともあって断ったしな。

 

「…そ、それじゃ…お先にどうぞ」

 

「お、おう…」

 

説明をし終えたことで、先に入浴を促したフィリアは少し離れた場所へと移動した。気まずいのもあって、当初は互いの入浴中は席を外すことを提案したのだが、

 

『あのサイコ野郎みたいに、管理区に侵入してくるホロウ・プレイヤーがいないとも限らないでしょ。見張りは必要じゃないかな!』

 

と、物凄く強気な発言がフィリアより飛び出し、反論できる材料もなかったので、入ってない方が見張りをする…依然の湖での水浴びと同じことをすることになったわけだ。何故か恥ずかしい筈のフィリアからそんな積極的な発言が出たのかが疑問だったが…まぁ、ここは素直に言葉に甘えさせてもらおう。

 

「…よっと」

 

一緒に作成していた簡易式のカーテン(鋼のワイヤーに布を吊った円状のものだ。よく服屋にある試着室の円状バージョンだと想像してもらえればいいだろう)をオブジェクト化して、外からの視線をシャットアウトする。

 

「…あっ」

 

…なんか変な声が外から聞こえたような…ここまで準備をしているとは思ってなかったフィリアが驚いたのだろうか?甘いな、そういう気遣いはしていたのだ。まぁ、お湯の方には気が回ってなかったので相殺されてしまっているが。

 

そして、五右衛門風呂に入るための小さな踏み台もオブジェクト化したところで、俺は装備を(昨日、修理が完了した)『蒼炎の烈火』を外し、代わりに水着を装備し、念のために腰にタオルを身に着けた。

 

第4層で購入・使用して以降、全く出番のなかった水着がまさかこんな形で再び使うことになるとは思ってもみなかったな…そんなことを思いつつ、自作の五右衛門風呂に足を着けてみると…

 

「…っとと。結構熱めだな。まぁ、俺的にはこのぐらいがちょうどいいかもな。さてと…それじゃあ、早速」

 

足から伝わる温度を感じられるようになったところで、予想していたのよりも結構熱くなっていることを悟る。といっても、許容できないものではなく、むしろ、俺的にはちょうどいいぐらいで、そのままドラム缶の端を掴みながら、浮いていた木蓋を沈めるように足場とする。

 

「…っ~~~~~~…!」

 

「ふぉ、フォン…どんな感じ?」

 

「…こ、これは……いいものだぁ~~…」

 

肩まで浸かったところで、思わず変な息が漏れた…そんな俺の反応が気になったのか、フィリアが恐る恐るそんな問い掛けをしてきたので、俺は上機嫌の声のまま返答していた。

 

SAOにも温泉はあるが、部屋の備え付け風呂とも、それらとは異なる湯の感触に俺は感動していた。五右衛門風呂に入るのは初めてだが、なんというか…ぐつぐつ煮込まれるというのはこういうことというか、直火で温められる感覚に快感を覚えていた。

 

「(ゴクッ…!)そ、そんなにいいの…?」

 

「ああぁ~…今まで結構なものを作って来たけど、いいものを作ったと言い切れる程の出来栄えだなぁ。これを作った自分を褒めたいくらいぃ…」

 

「そ、そうなんだ…(あ、あのフォンがあんなに脱力した声を上げるなんて…そんなにいいんだ…!)」

 

フィリアの質問に気の抜けた声で返してしまう。これは…五右衛門風呂の魅力というのか、今現在に至るまで文化として承継されてきた意味が分かった気がする。てっきりサバイバル用とかそういう意図のものみたいなイメージが強かったが…普段からでも全然使えるような気がする。

 

…まぁ、水の用意やらいちいち沸かさないといけない手間を考えると、偶に味わうのがちょうどいいぐらいなんだろう。

 

「はぁ~~~~~~…」

 

「フォン、凄い声が出てるよ…?」

 

「…いや、こういうのって結構久々っていうかさ。流石に数日ぶりの風呂だと、こんな声も出るさぁ~…」

 

外からの指摘に、素直な感想にて答える。珍しいと言いたそうなフィリアの声色だが、こればかりはしょうがないと思う。フィリアも入ったら、きっと同じ感想を抱くに違いない、断言できる、うん!

 

「…ねぇ、フォン。もしかしてだけど、フォンってお風呂とか温泉が好きだったりするの?」

 

「えっ…いや、別にそこまでというか…あんまり意識したことはなかったかな。入浴剤とか香料は興味がてら手を出したことはあるけど」

 

「フフッ、なんか想像できる。フォンって、ちょっと興味を持ったらありとあらゆるものに手を出してそうだし」

 

「なんだよ、それ。でも、手を出したのはここ最近…SAOに来てからだよ。それまではあんまり興味を持ってなかったかな」

 

「…あのね、フォン。答え辛かったらいいんだけど…フォンって、あっちだとどういったことをしていることが多かったの?」

 

「えっ…どうしたんだ、いきなり…?」

 

「えっと…フォンの趣味ってなんなんだろうって思って。フォンの好きなものって聞いたことなかったし…なんか私だけ知られているのも不公平かなと思ってさ」

 

俺のあまりにも腑抜けた声に、フィリアからそんな確認が飛んできた。どうだろう…あんまりゆっくり入浴したことはなかったし、あっち…現実世界でもシャワーで済ますことの方が多かったからな。

 

そんなことを思っていると、フィリアから趣味に関する質問が飛んできた。そういえば、フィリアの趣味(トレジャーハンターのこと)を知っているのに対し、俺は話したことはなかったかと思い、答えることにした。

 

「…料理、かな。あとは読書とか…まぁ、趣味というよりは、日常でよくやってるっていう方が適切な気もするけど」

 

「料理…だから、あんなに手際が良かったんだ。お母さんが料理上手だったりして、教えてもらってたの?」

 

「いや、独学だよ。というか、きっかけは両親が仕事で忙しかったのが理由だしな」

 

「…えっ?」

 

気が抜けているせいか、自分でも思っているよりも素直な答えが口から出ていた。俺の手際の良さをこの前(泣かれて休暇を請われた二日前のビーフシチューとカツサンドを一緒に作った時のこと)のことを持ち出されたついでに、その腕前のことを問われたが、少し懐かしい気分になり、当時のことを思い出していた。

 

「俺の両親、二人とも忙しくてさ…子供の頃から一人でいることが多かったんだ。それでも、誕生日とかはちゃんと祝ってくれて…そんな二人のためにできることはしたいと思って、最初に始めたのが料理だったんだ。

それがそのまま趣味として定着したってところかな…まぁ、こっちに来てからは、料理スキルに頼りっぱなしにならないようにしてるけど、あっちに…元の世界に戻ったら、腕が訛ってそうで怖いな」

 

「…そう、なんだ。ゴメン、余計なことを聞いちゃったよね…」

 

「別にいいよ…隠すようなことでもないし。まぁ、そういう感じだよ。そこまで面白くない話だったろ?」

 

「そんなことない!?」

 

「…っ!」

 

気が抜けていたせいで、軽くなっていた口から思わず滑った言葉に、フィリアから否定の言葉が飛んできて、思わず抜けていた気が戻った。

 

「面白くないとか…そんなことないよ!凄いことだと思う…思っていても、できるできないがあると思うし…全然つまらなくなんかないから…!」

 

「…そうだな。ありがとう、フィリア」

 

気を遣わせてしまったのだろう…必死な声にそう言ってくれるフィリアに礼を告げ、俺は少しだけ有難いと思って笑みが零れていた。

 

両親からはよくお礼を言われるが…他人からの評価を聞いたのは初めてということもあり、少しばかり嬉しいと感じた。

 

「…そんなに気持ちいいのなら、入浴も趣味に入れてみたらどうかな?温泉巡りとかも結構趣味としては有りなんじゃない?」

 

「アハハ…どうだろうな。流石に秘湯巡りまでするほどこだわりを持てるかと言われると微妙だし…ちょっと考えとくよ」

 

そんな感じで他愛もない話をしながら、五右衛門風呂でのひと時は過ぎて行った。ちなみに、交代して入ったフィリアの感想は…

 

「これは…いいものだねぇ~…!」

 

と、俺とほぼ同じ感想が漏れたことで、俺は思わずガッツポーズを取ったものだった。

 

 




はい、入浴回と聞いてToLoveる的なことを想像していた人、廊下に立ってなさい。

前回の水浴び回にて思考していたことをフォンが実現した回でした…こいつ、本当に自重というか、遠慮が偶になくなりますからね。
そして、前回に引き続きちょっとフォンの暗い部分が垣間見えたお話でもありました…まぁ、次回から攻略へとお話は戻りますので、暗いお話はこれが終わりですかね。

おそらく想定だとあと5~7話前後で前半は終われるかと…ここからは一気にお話が進みますので。そのあと、すぐさま後半…現在時間でのお話へと続く形になります。後半サブタイも既に決まっておりますが、ご紹介はまた別の機会にといった感じで。

そういうわけで、次回は異界エリアへと突入します。

それでは、また!

もしも見るならどっち?

  • GRAND QUEST FANTASY
  • 修羅場

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