ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

254 / 292
インターバルを挟み、物語は第二のエリア『浮遊遺跡』へと突入していきます!内容的にそんな長くなることはないかと…どっちかといえば、ボス戦の内容がとんでもなく濃いことになりそうな恐怖が(苦笑)

少しお久しぶりのヒロインズも登場する現在からまずはどうぞ!


第7話 「空浮かぶルーインズ」

「…ホロウ・エリアに人殺しがいたってことなの?」

 

樹海エリアまでの部分を話し終えたところで、その顛末を聞いたユウキは驚きを隠せないでいた。

 

約30分ほどホロウ・エリアのことを話してきた…フィリアとの出会いから、俺がやらかしたこと(ユウキとカナデからしたら、「やっぱりか」みたいな顔をされた)とか、エリアボスとの激闘を語ってきたわけだが…

 

最初はワクワクしながら聞いていたユウキも、色々と関心がある態度を見せていたカナデも、ホロウ・エリアにてPK行為が行われていたという話になった際には、その表情が真剣なものになっていた。

 

「レッドプレイヤー…カーソルがオレンジであるプレイヤーの中でも、積極的に人殺しなどの行為を行うプレイヤーを指す呼称だけど、デスゲームと化したSAOでは、PKは人を殺すことと同義だ。

あいつらからすれば、自分たちはゲームの中でプレイヤーのHPをゼロにしただけで、その人を死に至らしめたのはあくまでもナーブギアの電磁パルスによる脳破壊に過ぎない…そう考える連中もいたくらいだからな。

そもそもの話、当時はその辺りの法関連の整備なんてできてすらいなかったからな。ログデータからある程度推測することはできても、確定的な証拠としては使えないって菊岡さんから聞いたことがある…できて、メンタルケアの強化といったぐらいだって。そいつらも、一応はSAO事件に巻き込まれた被害者という立場も大きかったって」

 

「ふむ…その話を聞くと、かつてのアンダーワールドを思い出すのう。あの世界でも、法を歪んだ認識で悪用する者もおったから…どの世界においても、自身の欲望を優先する者は絶えぬというわけか」

 

「…そうなのかな。なんで、そんな酷いことができるんだろう…?」

 

「ほとんどが、カナデが言った通り欲望に従ってというのが理由だったんだろうな。何かしらの思想があるわけじゃない…現実ではまず味わえない体験がしたい、責任を背負う必要がないからこそやる…レッドプレイヤーの思考を理解しようとするのは、まず無理な話だって俺も割り切ったからな。

しかも、性質の悪いことに一部の連中はSAOでのことを忘れらずにいた…かつて、シノンを始めとしたGGOプレイヤーがターゲットとなったあの死銃事件がそうだし、…アンダーワールド大戦で対峙したPoHなんかはその象徴とも言っていいだろうな」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

どこか納得したカナデも、理解できないといったユウキも、俺の出した例に何も言えなくなっていた。

 

前者の死銃事件に関して二人は話に聞いた程度だが、後者は自分の目で見たこともあり、よく分かったのだろう…それだけ、PoHが見せた狂気は強烈だったということだ。

 

「じゃあ、あの大戦でフォンが最後に闘った人がホロウ・エリアにもいたってことなの?」

 

「そうなんだ…と言いたいところなんだけどな…」

 

「…?なんじゃ、その言い淀みは。そうではないのか?あの時、対峙しておった時も、お主とあの男は初対面ではないような感じだったではないか?」

 

「まぁ、真相を言うなら、俺とPoHが直接対峙したのはアンダーワールドが初めてだったんだよ。キリトは何度か対峙したことがあったらしいけどな…俺は討伐戦の作戦会議の時に、奴の写真を見たことがあった程度だよ…といっても、奴の方はキリトを含めて、俺のことも色々と見ていたみたいだけどな」

 

「…?…?えっと、どういうことなの?それじゃあ、結局ホロウ・エリアにいたのはPoHって人とは無関係のプレイヤーだけだったってことなの?」

 

アンダーワールドでの俺とPoHの会話を思い出してか首を傾げる二人…特にユウキは、話がこんがらがってきたこともあり、頭を抱えてしまっていた。その姿に苦笑しつつ、俺は口を開いた。

 

「それがホロウ・エリアの根幹に繋がる話になるんだ。虚構の庭とも言えるあのエリアは、俺の予想を凌駕する現象が起こっていたんだよ…そして、それがフィリアが隠していた事実にも関連していたんだ」

 

「…もったいぶるような話し方をするでない。そういうのは関心せぬぞ」

 

「悪い、悪い…でも、話には順序ってもんがあるからさ。それじゃあ、続きを話していこうか…樹海エリアを超え、空の支配者と対峙することになった次のエリアの話を…」

 

正解を告げぬまま、匂わせるような話をしたせいで、カナデにジト目と共に軽く怒られてしまった。これ以上もったいぶると後が怖そうだと思い、そんな彼女に謝ってから、俺は答えを保留としつつ、その先を話し始めた。

 

…樹海を超えた先…様々な浮島が点在していた、浮遊遺跡エリアのことを…

 

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

樹海エリアのボスを倒し、一段落…といきたかったが、残念ながら俺たちはそんな気分になれずにいた。

 

ボスとの激闘から一夜が明けたが、朝食を取る中、俺は缶パンを片手に昨日のことを思い出していた。

 

(集団によるPKに、レイスを思わせるような濁緑のポンチョ…もしもあれが、本当に『笑う棺桶』の残党だとしたら…)

 

『笑う棺桶』討伐戦…71層の攻略を前に、これまで暗躍してきたレッドプレイヤーが集う殺人ギルドを相手に、攻略組や有志プレイヤーによって結成された討伐隊が文字通り死闘を…いや、あれはそんな言葉できるような綺麗なものではなかった。

 

…あれは、命を懸けた殺し合いだった。

 

俺もキリトも…生き残る為に、仲間を守るために、相手の命を奪った…何も得ることがない戦いだった。

 

(あれで、壊滅したと思っていたのに……まさか、こんなところで遭遇することになるなんてな)

 

驚きもあったが…何よりも、塞いでいた筈の心の傷が…自分が明確な殺意を持って、人を殺したという記憶が蘇ってしまっていた。

 

そして、またしても助けることができなかったことが更に追い打ちを掛ける。昨日のPKのことが…リンチにあっていたプレイヤーがポリゴンへと変わった光景が何度も思い出されてしまう…そのせいで、昨夜はほとんど眠れなかった。

 

「…大丈夫…?」

 

「えっ…?」

 

先程から言葉を交わしていなかったフィリアから、そんな問いが…心配そうな声で尋ねられ、俺は視線を彼女へと向けるように顔を上げた。

 

そこには、本当に俺を心配そうに見つめるフィリアの姿があった。

 

「フォン、昨日からずっと怖い…ううん、酷い顔をしてるよ?」

 

「酷いって……別に普通「誤魔化さないで」…」

 

「昨日のこと…気にしてるの?」

 

心配を掛けまいと話を逸らそうと…する前に、フィリアは凛とした声で詰問される。そんな真っ直ぐな目をして言われては、誤魔化すことはできなさそうだった。

 

「…気にするな、という方が無理だろう」

 

「でも…あの状況じゃどんなに急いでも間に合わなかったよ。だから、あれはフォンのせいじゃないよ…」

 

「そうだとしても…あのプレイヤーが死んだのをただ見ていることしかできなかったのもまた事実だ。あの討伐戦で全てのレッドプレイヤーを捕えていることができれば、こんなことには……」

 

「…討伐戦?」

 

フィリアが気を掛けてくるのは分かる…だが、それでも、あのプレイヤーを助けられなかった事実は変わらないのだ。

 

あの討伐戦で全てのレッドプレイヤーを捕らえることができていれば…あのプレイヤーがあんな目に逢うこともなかったかもしれない…そんな思いが、俺の口を滑らせてしまった。

 

放ってしまった言葉は飲み込めず、聞き取ってしまったフィリアに忘れてくれというのも無理な話だ。俺は観念して簡単に説明することにした。

 

「先月の半ば…71層が攻略される少し前に、新聞でも報道があっただろう?『笑う棺桶』の討伐戦があったことを…それに俺も参加してんたんだ」

 

「っ…!?……ゴメン」

 

「フィリアが悪いんじゃない、俺が口を滑らせたのが悪いんだ…で、その時にほとんどのレッドプレイヤーを無力化したんだが、何人かは捕え切れなかったんだ」

 

「…じゃあ、さっきの連中は…?」

 

「俺がよく知る連中…『笑う棺桶』がしていた格好と装備が似ていた。だから、もしかしたらと思ってな…」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

聞いた内容は最悪の部類…予想を超えた答えに、流石のフィリアも言葉を失っていたようだった。まぁ、無理もないか…そう思いつつ、俺は話を打ち切ろうと…

 

「…でも!」

 

「っ…!」

 

ふり絞るかのように叫んだ彼女のその言葉に、俺は口を開いたまま声を出すことができなかった。

 

「フォンが私を助けてくれたのもまた事実だよ。あんな無粋な態度を何度も向けていたのに、それでも、私に手を差し伸べてくれたじゃない」

 

「それは…」

 

「私はフォンのことをまだよくは知らないよ…変なスキルを習得してるわ、人の武器を勝手に強化したりとか、色々な武器やスキルの熟練度をカンストしてたりとか、ちょっと常識を疑うとこばっかりしか見てきてないけど…」

 

「…おい…」

 

「それでも…フォンが良い人だってことは…分かってるつもりだから」

 

「…!」

 

「だから、その、何ていうか……そこまで自分を責めないでよ。あれはフォンじゃなくっても、きっと間に合わなかった…例え、あの人たちが例のレッドプレイヤーたちだったとしても、絶対にフォンの責任なんかじゃないよ」

 

途中愚痴になっていたような気もしないでないが、それでも、フィリアの言おうとすることはよく分かった。必死に俺のことを気遣ってくるその言葉の真意を理解し、少しだけ心が軽くなった。

 

…だが、それと同時にどうしても頭の中で、もっとできることがあったのではという後悔の言葉が響いて…

 

「…そう言ってくれるだけで、ありがたいよ」

 

…ありがとうとは言えず、俺は曖昧な言葉でそう返すことしかできなかった。

 

 

「なぁ、フィリア…前に君は言ってたよな。このホロウ・エリアには俺たち以外にプレイヤーがいる。そして、そのプレイヤーたちはどこかおかしなところがあるって…それは、あいつらみたいにPKを行うことを当然としているから、という意味だったのか?」

 

フィリアのお陰もあり、多少は振り切れた俺は朝食の缶パン(文字通り、缶詰に入っていたパンだ。意外に味もいい)とベーコンとコーンスープ(前者はドロップアイテム、後者は倉庫ストレージにあったもの)を食べ終えたところで、気になっていたことを尋ねていた。

 

出会ってから少しして、そんな話を彼女から聞いていたのを思い出し、あの時は言い淀んでいたのもあり、今度ははっきりと答えを聞こうと思ってのことだった。

 

フィリアの方もどこか迷ったような態度を見せていたが、しかし、最終的には答えてくれた。

 

「あの連中はまた別だよ…私も見かけたことがあるのは一度だけ。その時も手慣れた手段でPKをしていたわ…安全圏で休んでいるプレイヤーに投げナイフを仕掛けて……だから、安全圏であってもPKされる可能性があると思って、放浪していた一週間はほとんど気が休まる場所がなかったの……今は、フォンがここへと入れるようにしてくれたから、かなり楽になったけどね」

 

「そうか…彷徨っていた一週間の間に君も……それで、昨日遭遇した時に『また』って言ってたんだな」

 

「うん…でも、私が見かけたプレイヤーたちはあいつらとはまた違う意味で変というか…なんて言えばいいのかな……人らしさがどこか欠けているみたいな感じがして…」

 

「人らしさが欠けてる…それって、人殺しを当然としてるレッドプレイヤーみたいに、感性がどこかおかしくなっているってことなのか?」

 

「そうじゃないんだけど……ゴメン、やっぱり私の口から説明するのは難しいかな。フォン自身で見て判断してもらった方がいいと思う」

 

レッドプレイヤーとはまた違うというプレイヤーの異常性…フィリアが言葉で表現し辛いということはよっぽどなのだろう。

 

『笑う棺桶』の残党がこのエリアにいるかもしれないという懸念と同時に、不安要素があることに思うところはあるが…だからといって、ホロウ・エリアの探索をしなければ、ここを出ることも叶わないわけで…

 

色々と考えたいことはあるが、まずは今できることへと頭を切り替えよう。片づけを終え、装備の点検をしたところで、俺たちは次なるエリアの場所を確認するべく、コンソールでエリアマップを見ていた。

 

「昨日、樹海エリアのボスを倒したことでペンダントに光が灯った…これで、橋の先にある新エリアへと進めるようになったと思うんだが…」

 

「次のエリアは…『バステアゲート浮遊遺跡エリア』だね。それにしても、空に浮かぶ遺跡か…!」

 

「もしかして、トレジャーハンターの血が騒いでいたりするのか?」

 

「そんなことない…って言いたいところだけど、正直に言うと物凄く。第5層を始め、遺跡みたいなエリアはけっこう探索してきたけど、空に浮かぶ遺跡って流石になかったし…なんかお宝がたくさんありそうだって思ったらね」

 

「まぁ、ちょっと気持ちは分かる気がするよ。色々な層がアインクラッドにあったが、空に浮かぶなんていうものは確かに初めて聞くな」

 

次なる冒険の地『バステアゲート浮遊遺跡エリア』…浮遊と聞けば、確かに空に浮かぶ遺跡が連想されるのは当然か。特に遺跡と聞いて、トレジャーハンターであるフィリアのやる気が俄然と上がるのは仕方のないことだろう。

 

…俺も、どんな素材やアイテムが手に入るんだろうという好奇心が沸き上がっているので、本当に人のことをどうこう言えたわけじゃないのだ。

 

「さてと…なら、早速行くか」

 

「うん!」

 

ともかく、ここで話したり想像したりで盛り上がってもしょうがないので…準備を整えたところで、新エリアへと繋がるであろう『バステアゲートへと続く橋梁』へと転移するのだった。

 

 

 

俺たちの予想通り、樹海エリアのボスを倒したことで光が灯った『虚光の燈る首飾り』を使う(正確には、柱にあった窪みに嵌めたわけだが)と、橋を封鎖していた障壁が消えた。

 

そして、黒青の大理石らしき素材で建造された橋を渡り、新エリアへと脚を踏み入れた俺たちの第一声は…

 

「「…おおぉ~……」」

 

そんな感嘆を隠すことなく声にした驚きのものだった。

 

浮遊遺跡というエリア名だが、それは遺跡というよりも、浮遊するいくつもの大陸が大小いくつも点在する…言うならば、空中都市と表現するのが適切な光景が広がっていた。

 

橋を渡って上下へと行き来できそうな浮遊大陸、その大陸の中でも小さな浮島がいくつも点在していて、大陸内の浮島のほとんどは今渡ってきている橋と同じ人工調の通路によって連結されていた。

さらに極めつけが、エリアの中央にある大きな塔…マップを見ると、あれは『パステアゲート遺跡塔』と言うらしい。そんな古代遺跡…というよりは、古の大地に近未来的な遺跡がパッチワークのように混ざり合っている、というのがこのエリアの特徴らしい。

 

「…これはなんていうか、凄いね」

 

「ああ…浮遊遺跡というよりは浮遊大陸に近いな。下は……アインクラッドの外壁のように何も見えないな」

 

未だに感動に浸っているフィリアに同意しつつ、俺は橋から落ちないように気を付けながら、浮遊する大陸の下を覗き込む。

 

そこには何も見えない…いや、正確には真っ青な空だけが広がる空間だけが存在していた。おそらく、この下はアインクラッドの外壁…つまりは浮遊城の外と同じ扱いで、落ちればHPの量に関係なく即デス…即死扱いになるのだろう。

 

つまりは、このエリアで外にて戦う時には足場にも最新の注意を払う必要があるわけだ。樹海エリアが視界の悪さから奇襲に気を付ける必要があったが、あれの方がまだ楽だったと感じるほどだ。

 

「落ちたら一巻の終わりだなんて…全く笑えない話だね」

 

「フィリアは軽装装備だから猶更気を付けないといけないよな。俺も重量のある武器を使う時は気を付けないとな」

 

「落ちると言えば…今見えてるあの塔、随分高いね…頂上は遥か上空にあるみたい」

 

「100層あるアインクラッドに比べればマシだろうが…あの高さの頂上にボスがいるとなるとちょっと億劫になりそうだな」

 

先を行きながらエリアについて話していたが、やはりフィリアも中央にある一番高いあの『パステアゲート遺跡塔』が気になったらしい。

 

「ボスの住処か、それとも、何か他の理由があって建っているのか…なんにしろ、まずはあの塔を目的地として目指すのはありだな。樹海エリアのことを考えれば、紋章が表示されてるホログラムを見つければ、次の目的地を決めるヒントを得られるだろうからな」

 

「そうね。それに、十字架を象った塔だなんて…これは確実にお宝のにおいがするわ」

 

「トレジャーハンターとして見過ごせないのは分かるが、目的を忘れないようにしてくれよ。ともかく、まずは塔に向かってみるか」

 

エリアの散策をするにあたってとりあえずの目的地を定めたところで…俺たちは浮遊大陸を進んでいくのだった。

 

 

 

「…今度は装備品。どうかな、フォン?」

 

「……それなりにはいい小手だが、60層クラスのものだな。強化したりすれば最前線でも使えるとは思うが、まだ俺たちの装備の方がグレードは高いよ」

 

「そっか…遺跡というせいか、色々なところに宝箱が設置されているから期待してたけど…中身は結構普通だね」

 

散策を始めて分かったことがいくつかある。

 

この浮遊遺跡エリアは大地そのものもかなり起伏が激しく、坂を行ったり来たり、崖のような場所もちらほらみたいな感じの構造となっているようだ。

 

そして、3メートルぐらいの盛土の上には宝箱が設置されていることがあり、20分ほど探索して、今は5個目となる宝箱を、フィリアが崖にクライミングして中身を取ってきたのを鑑定スキルで視ているところだった。

 

これまで全快結晶二つ、指輪が一つ、ハイポーション一つという結果だったわけで、中身がありふれているものでフィリアはどこか落胆していた。

 

「それにしても、浮遊大陸ということもあってか、飛んでいるモンスターが多いな」

 

「…うん。でも、どのモンスターも大陸の外には出ないみたいだね。そういうアルゴリズムが設定されているのかな?」

 

「もしくは、本能なのかもな…この下に落ちたらただでは済まないって分かっているとか…」

 

「現実ならそうかもしれないけど、相手はモンスターだよ?そこまで考えていたりするかな」

 

「…考えすぎか。最前線で戦っていると、今までとは全く違うパターンの敵と遭遇することも珍しくなかったから」

 

合わせて、モンスターの種族やドロップを検証したりしていたが、この浮遊大陸の環境にあわせたように、ワイバーン系やフライングマンティス系(常に飛んでるカマキリもどきみたいなモンスター)、スコーピオン系を主としているようだ。

一方で、大陸を繋ぐ橋の方を見ると、武装したミノタウロス系やゴートヒューマン系(羊を擬人化したようなモンスター)もいたため、場所によってモンスターのポップする性質が違うようだ。

 

だが、モンスターのレベルは樹海エリアとほとんど変わりないようで、俺たち単体であっても余裕で討伐することができた。宝箱の中身もそうだが、基本的にホロウ・エリアの安全マージンは60層クラスだと考えてよさそうだ。

それと同時に懸念していたのは、70層以降から見え始めていた、アルゴリズムにはないモンスターのイレギュラーな行動パターンだった。

樹海エリアのボスは俺が対峙してきたボスにはないモーションを数多く見せてきた…ボス限定のパターンであればいいが、これが普通のモンスターにはないと判断するのは早計だろう。

 

フィリアの気にし過ぎだという言葉に返答しつつ、そのことを頭に置いた上で、俺たちは更に先へと歩み続けた…のだが、

 

「…あっ、あの障壁があるよ」

 

塔まであと少し…塔が立っている大地へと連なる橋を渡っていると、前方に例の紋章が表示されている障壁があった…ご丁寧に道を塞ぐかのようにだ。

 

「ペンダントを嵌める場所は……どこにもない?」

 

「ということは、別の手段でないとこの障壁は解除できないってことなのかな?」

 

「…とりあえず、紋章がある右手で触ってみてもダメか試してみるか」

 

周囲を見渡すも、橋の欄干や柱に窪みのようなものは見つからなかった…同じ紋章の障壁であっても、解除の仕方が違うのかもしれないというフィリアの言葉に、俺は紋章を宿す右手での解除を試みた。すると、

 

『竜王の許可を持たぬ者は直ちにここから立ち去るがよい』

 

「竜王の許可…竜王って人の許可を貰って来いってことなのか?」

 

「もしかしたら、そういう名前のアイテムを持ってこいっていう可能性もあるよね」

 

「そうだな…とりあえずは、樹海エリアの時と同じように、色々と行ける場所へ赴いて探してみるしかなさそうだな」

 

やはり一筋縄ではいかないようで…ここから先に行くためには、他の場所の散策をする必要があるらしい。次なる目標が見えたところで、ここから移動しようと思った時だった。

 

『…GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

「っ!?」「きゃぁ…!?」

 

その場が揺れたかと錯覚するほど…大気に響き渡った叫びが耳を直撃し、俺とフィリアは思わず耳を塞いでしまった。

 

一体なんの声だと、探るように咆哮が聞こえた方へと視線を向けると…

 

「なぁ……嘘、だろう…!」

 

「ド、ドラゴン…!?」

 

浮遊大陸を見下ろすかのように、上空にいたのは大きな翼を羽ばたかせ滞空していた巨大なドラゴンだった。

 

全長10メートル…いや、もう少し大きいか?…一見してボスクラスだと判別できる黒の鱗が特徴的なドラゴンを目にし、俺とフィリアは驚きを隠せないでいた。

 

だが、そんな俺たちのことなど気にすることなく、ドラゴンはそのまま飛び去っていった…俺たちが向かおうとしていた塔の方に。

 

「…塔の頂上に飛んで行ったみたいだな」

 

「頂上に住処でもあるのかな…それにしてもびっくりしたね…」

 

「俺も驚いた…迷宮区ボスで地を這うドラゴンと戦ったことはあったけど、あんな上空を飛んでいるような…飛竜っていうのか、あんなタイプの奴は初めて見たよ」

 

「…あれがこのエリアのボス…っぽいよね」

 

「……まぁ、どんなボスか知れたってことで…前向きに考えようぜ?」

 

あんな巨大な飛竜を二人で相手にしなければならない…このエリアの攻略も簡単にはいかなそうだという本音を喉元でなんとか呑み込み、冷や汗を流すフィリアに、俺はできるだけポジティブな答えを返すのだった。

 

 




あっ、ボスの顔出しはゲーム原作通りですので(笑)

原作だと一応当たり判定はあったのですが、小説だとそうもいかず…飛べないフォンたちが大変苦労することになるかと…まぁ、その話はボス戦でやるとして…

時系列的に討伐戦と74層の間の話に、本章が当たりますのでちょっとシリアスのお話…フィリア、本当にいい子!お宝絡まなかったら、フォンヒロインの中で一番ヒロインっぽいかと(色んな人に怒られる…)

次回はおつかいクエストの道中をお届けするわけですが…お待たせしました、ついにあの人(?)が姿を現します(この章の性質上仕方ないのですが、この書き方が合ってない感が凄い(苦笑))

それでは、また!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。