…なので、このタイミングで奴(?)が登場するわけです。
そして、後半に繋がる大事なフラグ立て回でもあるわけで(女性関係ではありませんので)
それでは、どうぞ!
(さてと、どうしたもんか…)
ひとまず、『竜王の証』となるものを探して、浮遊遺跡を散策していた俺たち。
そんな中、索敵をフィリアに任せ、そんな彼女の後ろを追従しながら俺は思考に耽っていた。理由は簡単…さっき目撃したこのエリアボスらしき飛竜への対抗策だ。
(まさか常時飛行状態というわけじゃないよな…ワイバーン系統とかも基本低空飛行のアルゴリズムであることが多いし…いや、あれはそんな生易しいモンスターじゃない感じだったな。
ってことは、狙うとすればこっちを攻撃してくる降下時を狙ってのカウンターが基本的な戦闘になると前提しておいた方が良さそうだな…両手剣は当たり前として、両手斧と…曲刀と片手棍は持っていくべきか。防具は……あれを持っていくべきか。まだ完成してないが、出し惜しみできるような相手じゃないだろうし…最悪、幻想剣を全て使うことになるだろうし…)
天空を支配する者…あの塔の頂上で戦うとなる、戦場自体もボスに有利な場所となりかねない。すると、軽装装備で短剣がメインのフィリアはとてつもない不利を強いることになるわけで…本音を言えば、俺一人でなんとかできないかと思わないこともないが、そうなると、確実に彼女に心配を掛けるわけで…幻想剣の全てをバラすことも覚悟しておくべきかもしれない。
「…?どうかした…?」
「いや、なんでもないよ…おっ、あれじゃないか?」
そんな思考を含んだ視線に気づいたのか、いきなり振り返ってきたフィリアが首を傾げていたが、俺は考えを悟られる前に誤魔化すのと同時に思考を振り払う。
まずは塔に入る為の手掛かりを探すことに集中するとしよう…そう頭を切り替えようとして、前方に見えてきた建物を指さした。
『竜の巣』…竜王の証に関連した何かがあるのは、やはり竜の名がつく場所なのでは?…そんな安直ながらも、まずは分かりやすい場所から探していこうと、俺とフィリアは相談した結果、マップを見ながら来たのがこの場所だった。
もっとも、『竜の巣』という名前からして、幼竜が住んでいたり、卵がたくさんあるような、まさしく巣のようなイメージを勝手に持っていたのだが…
「…まんま建物だね」
同じ想像をしていたらしいフィリアからも困惑しているようだ…そんな感情が入り混じった同意を求める声が飛んできた。
といっても、遺跡らしい場所ではあるのでエリア名に違わない雰囲気ではあるのだ。ただ巣っぽくないだけだ。
「と、ともかく…入るか?」
入り口を前にしてただ突っ立っているわけもいかず…苦笑しながらも、俺はフィリアへとそう告げて、『竜の巣』へと二人で入っていくのだった。
『竜の巣』の構造は、建物(中身もそのまま遺跡だったが)の見た目に反して、意外なことに中央を基点とした渦巻状のマップとなっていた。一番外の通路から内側に入っていくのだが、一部が行き止まりとなっていたりなど多少入り組んだものだった。
そして、そのエリア名通り、ポップしているモンスターもワイバーン系だけであり、そこまで広くない通路では避けて通ることはできなかったため、倒しながら進んでいく。まぁ、レベル差ではこっちが上なので、二人掛かりでなら苦戦することもなかったが。
「もうすぐ中央の筈だけど…この扉がそうか?」
片手剣『アサルト・サヴァイブ』を背負い、マップの場所表記からそろそろ中央付近かと思い、周囲へと視線を向けると…閉じられた扉が目についた。そして、開こうとして手を掛けたのだが…
「えっ…開かない?」
「あっ、見て…またメッセージが表示されたよ」
丸状の取っ手を押すも引くも扉は開かず、ここも入れないのかと思っている矢先、フィリアの声に顔を上げると、文字だけのシステムメッセージが表示されていた。
『竜の秘宝持ちよれば 道は開かれん』
「竜の秘宝……宝玉系のアイテムを持ってこいってことなのか」
「宝玉…竜が関連するお宝ってことだよね?そうなると、怪しいのは……ここじゃないかな?『隠れ潜んだ宝物庫』」
「宝物庫…確かに何かありそうな雰囲気だな。少し戻ることになるが…そっちに行ってみるか。それにしても、行く先々でアイテムを求められるなんて…ちょっとしたおつかいクエストみたいだな」
「あー…言われてみれば、確かにそうだね。次の宝物庫でも何かを探してこいって言われるのかな…例えば、宝物庫の鍵とか」
「もしそうだったら、人によっては怒り狂いそうだな」
リズあたりはちょっと怒りそうだなという想像があった(パッと思いついたのだ、ゴメン)…そんなことを思いつつ、またしてもアイテムを求められたこともあり、流石にため息が苦笑と共に零れる。
対して、フィリアはそこまで苦に思っていなかったらしく…むしろ宝物庫という(トレジャーハンターとしては大変心そそられる)キーワードにちょっとテンションが上がっていた。
…だって、目が燃えてるんだもの…俺の勝手なイメージだが、なんとなく火が灯っているような気がしたのだ、彼女の目に。
「そうと決まれば、早く行こう、フォン!」
「お、おい…置いて行かないでくれよ」
いつも以上にやる気を見せた彼女は元気よく元来た道を歩いていき…慌てて、俺はそのあとを追うのだった。
そんなわけで、元来た道…『竜の巣』を出て、一度通り過ぎた『守護者の観戦場』というエリアに戻ってきた。目的地である『隠れ潜んだ宝物庫』へ行くにはここを経由していく必要があるのだ。
そのエリア名通り、中央は浮遊大陸間同士を繋ぐ橋が、闘技場を連想させるかのような形で設置されている。橋の部分は手すりと壁があるからいいが、その中心となる連結点となる広場には手すりも壁もなくモンスターまでいるので、通る際には注意しないといけない…一歩間違えれば、落下死だ。
…だが、先程来た時と今とでは状況が異なることが一つあり…
「…うん?誰かが、戦ってる…?」
「…!」
橋を渡っている最中、金属音が響くのが聞こえてきた。音の発生源は中心の広場…ミノタウロス系(正確にはPunsih Wrath Bull…『憤怒の罰を与えし牛人』といったところか)のモンスターと…なんと、レッドプレイヤーではない恰好のプレイヤーが、斧と曲刀をぶつけ合っていた。
フィリア以外の、そして、レッドプレイヤーでもない普通のプレイヤーに驚き、しかし、戦っているのを悠長に眺めている場合ではなさそうだ…プレイヤーの方が劣勢だからだ。
「ちょっと行ってくる!」
「ちょ…フォン!?」
フィリアに合図している暇はない…短く告げて、先行するべく片手剣を抜きながら駆ける。橋を駆け抜けるのは多少時間が掛かる。その懸念が頭を過り、次の瞬間、俺は橋の欄干を踏み台にし…そのまま中央広場へと跳んだ!
一歩間違えれば落下死の危険もあるが、この距離なら問題なく届く…戸惑うことなく跳んだことで、ショートカットの要領で広場へと辿り着き、そのままボスの背後に肉薄する。
攻撃を弾かれ、尻もちをついたプレイヤーに追撃を繰り出そうとしていたミノタウロスは俺に反応どころか気づく様子すらなく、ソードスキルの燐光を宿した連撃を解放する!
「はああああああああああああああぁぁぁ!!」
片手剣4連撃ソードスキル〈バーチカル・スクエア〉の青い剣檄が全てミノタウロスの背中へと吸い込まれる!背中に三連撃、ラストの一撃は首元へと叩き込んだのもあり、クリーンヒットしたことでミノタウロスのHPは全て消し飛んだ。
やっぱりモンスターのレベルはあまり高くない(といっても、一部は高レベルのものもいるけど)ようだ…そんなことを頭の片隅で考えつつ、俺はプレイヤーの安否を確かめようとしたのだが、
「おい、あんた…大丈、うおっ…!?」
声を掛けようとした途中で、慌てて一歩後退ることになった!?文字通り、本当に後ろにさがることになったのは、なんと助けた筈のプレイヤーが俺に向かって片手剣での水平斬りを繰り出してきたからだ!
どういうことかと思う矢先、相手がぶつけてきたのは憎悪と怒りのこもった視線だった。
「邪魔をするな!あれは俺の獲物だったのに…!」
「邪魔って…酷い言い草だな。まぁいい…君はソロなのか?仲間はいないのか?」
「仲間なんか必要ない!俺は一人で十分強い!」
「強いって…(ボソッ)さっきモンスターにやられかけてだろうに……ソロなのは分かった。けど、さっきの戦いもそうだが、レベルが安全マージンにまで達してないじゃないのか?君もアインクラッドからこのエリアに飛ばされてきたのなら、一時的に俺たちとパーティを組まないか?」
どうやら獲物を横取りされたのが気に食わなかったらしい…まぁ、こればっかりは俺の方にも非がある。助けたとはいえ、獲物の横取りは確かにMMOではマナー違反になることがあるからな(と、キリトが初期の頃に教えてくれた)
言いたいことを(相手には聞こえない程度の声で)呟きながらも、俺はプレイヤー…男性へと声を掛ける。灰色の短髪にツリ目が特徴な彼は、強気な態度で接してきていた。
色々と言動やら態度は気になるが、さっきの戦いぶりも含めて一応勧誘を試みるのと同時に、情報共有を図れないかと思っての誘いだったが、次に彼から返ってきた答えは予想外のものだった。
「はぁ…?飛ばされてきた?何を言ってるんだ、ここはアインクラッドだろう?」
「えっ…?」
大丈夫かと言わんばかりの目と共に返された答えに、俺は絶句する他なかった。嘘を言っているような雰囲気はなく、俺の聞き方が悪かっただろうかと思い、質問の内容を変えることにした。
「えっと…確かに見方によってはここもアインクラッドという捉え方はできるけど…ホロウ・エリアにいきなり来て、拠点とかに困ったりしていないのか?君だって、安全圏とかで野宿するのには限界があったりするだろう?」
「拠点なんてない…強い奴を求めて色々なところを行ったり来たりしてるからな」
「それはまたなんというか…それじゃ、君は強いモンスターと戦ってレベリングすることを目的として探索し続けているのか?」
「そうだよ。モンスター共をぶっ潰して続けて、俺はその先に……先、に……?」
「…?おい、大丈夫か?」
最強を求めて、ってなんかどっかで聞いたことがあるような目的に苦笑しつつ、彼から情報を得ようとしていると、何故か途中で彼の言葉が詰まった。
「そうだ…俺は最強を目指さないといけないんだ…最強になることこそが俺の目標…そうだ、そうしないといけないんだ…!」
「おい、こっちの話を聞けって!そんな状態で行くのは無茶だ!安全に休める場所が「煩い、僕の邪魔をするなぁ!?」…っ…!?……行っちまった…」
彼は何かを思い出したかのようにブツブツと呟き出した後、危うい目をしたままどこかへ行こうとしていた。流石にそのまま行かせるのはマズいと思い、引き留めようとしたのだが…物凄い剣幕と合わせた怒号で遮られ、俺は先を行く彼を見送ることしかできなかった。
(なんか…雰囲気が急に変わらなかったか、あいつ…?)
違和感というのか、何かおかしな感じがしてならない…さっきの会話もそうだが、今見せた態度の豹変…人らしくないというか、人が変わったというか。
「あれが、君の言っていたプレイヤーの違和感か…フィリア?」
橋を渡り終え、遅れて合流した彼女…フィリアへと振り返りながら問い掛けると、バツの悪そうな表情で答えた。
「…うん。フォンはどう思った?」
「確かに…はっきり言って変だな。会話が成立しているようで、成立してないというか…変だとしか言いようがないな」
「私が会った何人かのプレイヤーもそうだった…さっきのプレイヤーはまだまともな方だよ。人によってはデュエルを挑んでくるような人もいて…」
「それはまた…というか、さっきの奴がまともなのか。これから出会うプレイヤーに協力を求めるのは難しいか…」
飛竜なるエリアボスを相手に戦力の増加となればと思ったのだが、どうやら他のプレイヤーと協力するという手段は取れないようだ。
(まぁ、選択肢が減ったのなら、別の手段に候補を絞ることができるようになったと…前向きに捉えよう。それにしても、さっき感じた違和感……気のせいだろうか、知っているような気がする)
さっきのプレイヤーとのやり取り…感じた違和感の答えを俺は知っているような気がしていた。だが、それが何かが分からない。
「…大丈夫、フォン?考え事してたみたいだけど…」
「…!ああ、大丈夫だ。先を急ごう」
答えとなる手がかりを思い出そうとしていると、フィリアに声を掛けられ我に返る。今はすぐに思い出す必要はないだろうと割り切り、思考の末に顎に当てていた右手を放し、目的地へと再び向かい始めた。
「宝物庫は…この洞窟の先にあるのか」
橋を経由して、『隠れ潜んだ宝物庫』の方へと向かっていたのだが…その眼前にあったのは洞窟の入り口だった。
宝物庫へと繋がるエリアなのだが、『思い出の手を引いた隧道』と名前の通り、どうやら洞窟内に宝物庫はあるようだ。
ちなみに、隧道という言葉の意味を以前は知らなかったが、アインクラッドの方でも時折出てきたことでようやく知ることとなった…意外なことに、キリトが知っていて教えてくれたのだ。なんでも、ゲームだとそう珍しくない言葉らしい。
…まぁ、そんな与太話はさておき…
早速、洞窟の内部へと足を踏み入れる…光源がないにも関わらず、洞窟内はほんのり明るく、暗視スキルを用いずとも視界の確保は可能だった。モンスターも洞窟内ということで虫系統のものがメインとなっているらしく、先へ進もうかと思った時だった。
「…!フォン、あれ…!」
横にいたフィリアが小声で何かに気づいたことを告げ、彼女が見ている方へ視線を向けると…角を曲がる黒ポンチョの後ろ姿が見えた。
「…っ!間違いない、この間見かけた、レッドプレイヤーの奴らがしていた格好にそっくりだ」
「…追いかける?」
「……危険だが、奴らの拠点かアジトを知れるかもしれない。最新の注意を払って後をつけよう」
こういう時、隠蔽能力を上げる装備が欲しいのだが、残念ながら、今は倉庫ストレージでお留守番中だ。隠蔽スキルは索敵スキルが高いプレイヤーには見破られてしまう上、姿そのものを隠すスキルではない。
転移結晶が使えないこの状況では、危険に遭遇した場合に即時撤退をすることはできない…しかし、ここで奴らの情報を掴めないのも痛い話で…少し迷ったが、何かあればすぐに逃げることを念頭に、俺たちはそのポンチョ野郎の後を追い始めた。
そのまま見失わないような距離で男を追いかけて数分…ふと男が立ち止まった。こっちに気づかれたのかと思い警戒するも、どうやら誰かと待ち合わせしていたらしい。
「…(フォン、ここに人が入れる隙間があるよ)」
「…(よし、そこに身を隠して様子を見よう)」
フィリアが壁に人が隠れられそうな隙間を見つけてくれたので、彼女を奥にして、俺は男を監視できるような立ち位置にいようと…
「お疲れ様です、ボス。ちゃんとターゲットを片付けてきましたぜぇ」
「お遅ぇじゃねぇか…何手間取ってやがったんだぁ?」
(ボス…っていうことは、今来た奴があのPK連中のボスってことか。一体どんな奴……っ!?)
身を隠した直後、誰かが男の元へとやってきたらしく…ボスと呼ばれる者がどんな人物か確認するべく視線を向けると…心の中で思わず息を呑んだ。
男が被っているポンチョよりも濁く濃い色のものを身に纏っており、フードを被っているせいで顔の全貌は見えないが…それでも、右目から口にかけて彫られた特徴的なタトゥーだけは忘れるわけがなかった。
討伐戦の作戦会議の際、参加メンバーに公表された『笑う棺桶』幹部の写真…その中で、赤目のザザと共に、特徴として紹介されたその顔のタトゥーは…
「…(奴だ、間違いない…)」
「…(奴…?)」
「…(あいつは…あの濁緑のポンチョを纏った男は…『笑う棺桶』のリーダー、レッドプレイヤーの中でも最悪と謳われたPoHだ…!)」
「…っ?!」
写真で見たそれと同じ顔…俺は、こうして直接見ることは初めてだが、あの特徴的なタトゥーを見間違うわけがない。
やはり『笑う棺桶』の残党も、何かの要因で…それこそ、フィリアと同じ理由か何かでこのホロウ・エリアへとやってきていたのだろう。
俺が告げた事実に、隣で息を潜めていたフィリアも驚きを隠せないでいるようだった。
「いやー、案外手強い上に、最期の最期までしぶとかったんスよ。おまけに、邪魔者まで乱入し掛けてきて…そいつらに後をつけられないように時間を掛けて回り道してきたもんで…」
「言い訳はいいんだよぉ!邪魔者だとぉ…ドジ踏みやがって、ちゃんと巻いたんだろうな?」
「こっちを追跡してくる気配はなかったです…問題ないかと」
「…チッ、まぁいい。次はちゃんとやれよぉ?そんで、NEXT TARGETは……………んん?」
「どうかしましたか、ボス?」
報告と指令のやりとりをしていた最中、急にPoHが言葉を止めた。部下の方はどうしたのかと首を傾げていたのだが…何かに気づいたらしく、なんとPoHが俺たちが隠れている壁の方へと近づいてきたのだ!
(っ…!?まさか、気づかれたのか…!)
こちらの気配に気づいたのか…警戒しながら近づいてくるPoHに、俺は背中の片手剣に手を掛けながら、身構える。相手は二人だが、奴らが『笑う棺桶』ならば、対人戦の経験はかなり豊富だと言えるだろう…フィリアだけを集中して狙われると、こちらは不利になる可能性がある。
なんとか逃げる隙を作れればいいが、あのPoHを前にそんな手段が取れるかも怪しい…どうするべきかと思考していると…
「……ふぅん?」
「なんかあったんスか、ボス?」
「…いいや、何でもねぇ。俺の思い過ごしだったようだ…少し場所を変えるぞ。お前が遭遇した邪魔者がここに来ないとも限らないしな」
「ういっス」
何か納得した様子で、PoHは部下を連れてそのままどこかに行ってしまった。しばらく戻ってこないかと様子を見ていたが…5分経っても戻ってくる気配がないため、どうやら別エリアへと完全に移動したようだ。
「…ふぅ~……なんとかやり過ごすことはできたか」
「そう、だね…フォンはあいつ…あのボスって呼ばれてた奴のことを知ってたみたいだけど…誰なの?」
隙間から出て安堵の息を大きく吐く…一悶着あるかと覚悟はしていたが、まさかトップと遭遇しかけるとは思ってみなかった。
俺が安堵する姿を見て、フィリアも気になったことを尋ねてきたので、今朝話したことの続きという形で説明していく。
「討伐戦のことを話したと思うが、顔に青いタトゥーがあった男…あいつは『笑う棺桶』を作ったとされるPoHっていう奴だ」
「『笑う棺桶』の…創始者…?!」
「それだけじゃない、レッドプレイヤーがPKの手口として常用する手段のほとんどを、奴が考案し広めたと言われてるくらい…レッドプレイヤーの中でも最恐最悪のプレイヤーだって言われてるくらいだ」
「…フォン、今朝みたいに凄い怖い顔をしてるよ」
「…!悪い、最悪の予想が当たったもんでな。できることなら、この予想だけは外れていてほしかったんだが…PoHだけじゃない、『笑う棺桶』自体があってはならない存在だったんだ。奴らが手に掛けてきたプレイヤーの数は数えきれないほどだ…自分の楽しみだけに、ありとあらゆる手段を用いてプレイヤーを殺してきた奴らが……あんな奴らがまだ…!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
頭のどこかでは外れていてほしいと思っていたのだが…こうして現実として突き付けられたこともあり、奴らに対する怒りが思わず言葉と共に殺気となって出てしまっていた。
…俺の隣にフィリアがいることも忘れて、その言葉と殺気を放ってしまい、彼女が息を呑む音が聞こえ、そのことを思い出した俺は慌てて怒りを鎮める。
「…すまない。どうしても、PKを楽しむような奴らのことを許せなくて…この世界での死は本当の死に繋がる…だから、みんな生きて帰るために必死で戦っているんだ。最前線で攻略を続けているプレイヤーも、それを支えようとしている生産系プレイヤーも…そして、攻略される時を待っている下層にいる人たちも…
だけど、奴らはそんな人たちの思いを、自分がただ楽しみたいというくだらない考えだけで壊そうとしているんだ…俺はそれがどうしても許せない…!」
「……フォンは…えらいね」
「…フィリア?」
またしても感情が籠ってしまい、一人で話す形になってしまったが、それを静かに聞いていたフィリアがぽつりとそんな言葉を零した。どうしたのかと思っていると、
「まっすぐで…ちゃんと自分の行いに責任を持てている感じがして…それが少し羨ましいって……そう思ったの」
「えっと……どうもありがとう?ともかく、フィリアの実力なら真正面から襲われても負けることはないと思うが、奴らにとって不意打ちは当たり前、待ち伏せやら集団戦やらとPKするにあたって手段を選ぶことも厭わない。一番は遭遇しないことだが、もしも対峙することになったら、最新の注意を払ってくれ」
「…うん、分かった」
何故か悲しそうに眉を顰める彼女のその言葉に、俺は曖昧な返事をすることしかできず…とりあえず、奴らへの警戒を厳にすることにして、本来の目的へと頭を切り替える。
「このまま目的地の宝物庫へと向かおう…また奴らと鉢合わせになる前に。できることなら、ホロウ・エリアからも早く脱出した方が良さそうだ」
「そうだね……行こうか」
フィリアの元気がないことが引っかかるが、あまり詮索しすぎるのもどうかと思い、俺は敢えて触れることはせずに、先に歩き出した。
(ゴメン、フォン……私は…)
もしもこの時に…いや、もっとフィリアに気を遣っておけば……あんなことにはならなかったのかもしれないと、この時の俺は想像していなかったのだった。
PoHさん登場です(まぁ、みなさん知ってたかと思いますが…)
そして、フォンたち以外のプレイヤーも登場です!ゲーム原作とは会話が大分違うのですが、まぁ、分かりやすさ重視で行こうかなと。
この時のフォンだと、こういうことを言ってもおかしくないかと思ってのラストでした。UW以降のフォンが思い返すと、多分自分の未熟さに頭を抱えることになるかと…(苦笑)
次回はちょっと趣向を変えた話を交えて回で、次の次で早くもフィールドボス戦ですね。内容的には、四つ目のエリアがどうしても長くなる関係上、このエリアと次のエリアは短くなりがちなんですよね…まぁ、インターバルのオリジナルエピソード(というか、フィリアとのヒロインエピソードみたいな感じになりそうですが)はやろうかなと考えていたりもするのですが…
それでは、また!