ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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新章後半『リユニオン・ビヨンド』スタートです!
サブタイは完全に狙ってやってます(苦笑)オープニングとなる序章は、前章ラストからの続きとなります。

…また、あの人らが関わっているようですが、その詳細はまた後程に。
オールメンバー集合の相談会と、幻想剣の更なる秘密が明かされる意外と重要なお話です。

それでは、どうぞ!


第一話 「序章O:もう一人の幻想剣使い」

「菊さん…これはマズいっすよ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

東京都港区六本木…オフィス外の隅のビルを拠点とする海洋機構施設ラースの中でも、重要人物しか立ち入れない機密エリアにて、二人の人物がそんな会話をしていた。

 

「比嘉君、これが発覚したのはいつのことだい」

 

「一昨日っス。ですが、あくまで発覚したのがです。発生したのはもっと後…キリト君たちが、アンダーワールドへの別のログインルートを見つけた数日後です」

 

「カーディナル嬢の一件があったすぐ後か…そして、僕たちが七色博士の一件で対処に追われていた時にやられたってことか。狙ってのことか、あるいは偶然か。比嘉君、犯人の特定は?」

 

「…すみません。全く証拠が残っていない状態で…いつもなら、多少の痕跡は残っている筈なんですが、こんなことは久しぶりです」

 

「…そうか。いや、無理を言った。ともかく、君はこの件に関して、早急に調査を開始してくれ。何が何でも行き先を突き止めるんだ」

 

「…了解っす!なんとしても、汚名挽回してみせるっス!」

 

「挽回するのは名誉、汚名の場合は返上だよ。ともかく頼むよ。僕はVRを監視している各知り合いに連絡を取って、異常が起こってないかを確認し、そちらから足取りを追えないか試してみる」

 

「菊さん…桐ケ谷君たちにはどうしますか。アリスたち経由で状況を伝えておいた方がいいじゃないっスか」

 

「………いいや。アリシゼーション計画の一件で、僕らは彼らを大きく巻き込んだ。できることなら、彼らが関係するまで巻きたくはない」

 

「…そうっスね。すみません、安直なことを言いました。彼らのしてきたことが凄すぎて思わず…彼ら、まだ学生なんすよね」

 

「…ともかく、できることをやっていこう。こっそりやるのは、僕たちの十八番だからね」

 

そう言って、菊岡は急ぎ部屋を出て行き、比嘉は自身のノートパソコンにて高速でタイピングしていき、作業を始めていた。そこには、何かのデータが移動したという記録と報告書が記載されていた。

 

 

 

「えっ、キリトが…?」

 

三連休の中日…フィリアと駆け巡ったホロウ・エリアの回顧録を語った翌日のことだった。せっかくの三連休、ゲームばかりしているのもどうか、受験勉強も一旦休みにし、三人でどこか出かけようかと、木綿季やカーディナルと朝食を食べながら、そんな話をしている時のことだった。

 

カーディナルが、俺のスマホにメッセージが届いたと知らせてくれ、届いたのはメールで、開くと差出人はキリト…和人からだった。内容は『急いで確認したいことがあるから、できるなら午前中にALOで会えないか?』というものだった。

 

いきなりの相談に、内容も簡素なものであることから眉を顰めていると、どうしたのかと首を傾げる木綿季に内容を伝えると、冒頭の台詞を返されたのだった。

 

「急いで…何かあったのかな」

 

「あいつがこんなメッセージを送ってくるのも珍しいしな。よっぽどの急ぎだったら、ユイちゃんが直接伝えにくるだろうし…」

 

『確か昨日は……キリトは、アスナとリーファと共にクエストに行くとユイが前におったな。そこで何かあったということじゃろうか』

 

「…ともかく、今日は予定を変更してALOに行こう。二人とも大丈夫か?」

 

「うん!」『問題ない』

 

キリトの相談が無視できるものではないと判断し、連日になってしまうが、今日もALOに朝からログインすることを決め、木綿季とカナデにも同意を取った上で、俺はフレンチトーストを食べながら、キリトにログインする時間を告げるべくメールを打ち始めた。

 

 

 

「いらっしゃいです、フォンさん、ユウキさん、カナデさん」

 

「こんにちわ、ユイちゃん。邪魔するぞ、キリト…って、アスナに、リーファ…それにミトまで。三人も来てたのか」

 

朝食後、すぐにALOとログインして、お隣さんと言っても距離にあるキリトのログハウスへと向かった俺たち。ノックをすると、扉を開いたキリトと、その肩に止まっていたユイちゃんが出迎えてくれたのだが、その奥に三人の女性がいた。

 

水色のロングヘア―に、室内着の上にエプロンを着けていた女性…アスナと、それを手伝っているのか、同じく台所にいた金色のポニーテルを揺らすリーファ、そして、もう一人、先日、俺たちの仲間となった、SAO生還者で、室内だというのにコートを身に纏っている土妖精のミトがソファーに座っていて、俺の言葉に反応した。

 

「なによ、私までいちゃ悪いの?」

 

「そんなことないよ。ただ、アスナはまだ分かるけど、リーファとミトまでいるとは思ってなかったからさ」

 

「ああ、そういうこと…私もアスナに呼ばれたのよ。それで、飛んできただけよ」

 

「呼ばれた…?キリト、俺たち以外にも声を掛けているのか?」

 

少し不機嫌となったミトのジト目を躱し、俺は正直に先程の言葉の真意を伝えた。すると、意外な事実がミトの口から飛び出し、俺は思わず横にいたキリトに問い掛けた。

 

「ああ、他のメンバーにもフォンと似たようなメッセージを送ってる。もう少ししたら、来ると思うぞ」

 

「ボクたち以外…ということは、シノンやリズたちも?」

 

「ということは、ユージオたちもということか…ミトまでということは、オールメンバーに声を掛けておると…よっぽどのことのようじゃな」

 

「そうそう。なんてったって、オイラたちにまで声を掛けてるぐらいだもんナ、キー坊?」

 

仲間になってから日が浅いミトにまで(アスナを通してではあるが)呼びかけていることから、後ろにいたユウキとカナデからそんな感嘆が籠った声が出ていた。と思いきや、聞き覚えのある声が混じってきて、振り返ると…

 

「アルゴさん!それに…シグさんまで…!」

 

「やぁ、フォン君にユウキさん。それと、初めまして…じゃないか。アンダーワールド以来ですかね、カナデさん。話はアルゴから聞いてます。火妖精で、この情報屋アルゴの相棒のシグです、よろしく」

 

「ど、どうも…」

 

「さて、入口で立ち話もなんだから、そろそろ入らせてくれないカ?」

 

猫妖精特有の猫耳をフードが隠した、顔に特有の模様を描いた女性と、刀を二本腰に差した長身の火妖精の男性プレイヤー…情報屋とそのボディガードであるアルゴさんとシグさんの登場に、俺も少しばかり驚いた。

 

まさか、この二人にまで声を掛けているとは思ってもなかったのもあるが、そもそもとして、情報屋として活動している二人を呼ぶというのは、どうやら俺が予想していたよりも、結構な大事らしい。

 

唖然としている間に、ALOでは初対面らしいシグさんの(ものの見事に皮を被った初対面用の)挨拶を受け、戸惑いながらも応えるカナデ。そんなやりとりの後に、苦笑交じりのアルゴさんの言葉に、そういえばと思い出した俺たちは、ログハウスの中へと移動した。

 

「さてと…まだ全員が来てないが、フォンが来てくれたからな。先に、確認しておきたいことだけ、聞いておくか」

 

「おい、キー坊。いきなり人を呼び出しておいて、本題はフォン坊だったかのヨ。オネーサンを呼んでおいて、それはどうなんダヨ…あいたっ。シグ!?」

 

「アルゴはちょっと黙っとこうか。こっちは気にしないで、話を進めてくれ」

 

どうやらキリトが用事があったのは俺らしい。ユウキやカナデではなく、俺単体と言われ、心当たりが無さ過ぎて、ますます困惑する。

一方で、俺だけに用事があったということで、不満をもたらずアルゴさんに、軽く拳骨を落とすシグさんの夫婦漫才を横に、俺は席に着いて、キリトの質問に耳を傾けることにした。

 

「…なぁ、フォン。昨日、お前はどこにいた?」

 

「昨日…?昨日は、一日ずっと俺たちのログハウスにいたぞ。受験勉強と、あと大半は昔の話をユウキとカナデにしてたな。というか、むしろ一歩も家から出てないと言っても、過言じゃないくらいな」

 

「うんうん、昨日はフォンはALOでも現実世界でも一歩も家から出てなかったよ」

 

「わしら二人が証人じゃ、断言しよう」

 

「そうか……まぁ、そうだよな」

 

(キリト…?一体どうしたんだ?)

 

真面目な口調の問い掛けに、俺も真剣に答え、一緒にいたユウキとカナデが補足してくれた。それを聞いたキリトはホッとして…だが、どこか困ったような表情を浮かべていた。

 

言い淀むような珍しい表情に、俺たち三人は顔を見合わせていた。話の先が見えないのもあって、キリトの真意を測りかねていると、紅茶と茶菓子を持ってきてくれたリーファと、アスナが合流してきて、

 

「ねぇ、フォン君。幻想剣ソードスキルを誰かに譲渡したりした、なんてことないよね?」

 

「…?何を言ってるんだ、アスナ。幻想剣はエクストラ…あのマッドサイエンティストの須郷が勝手に改造したせいで、このALOには本来存在するがなかった筈の、ユニークスキルだぞ。OSSと違って譲渡もできないし…そもそも、このスキルの正体は皆以外には伝えてないぞ」

 

「そ、そうよね…その筈だよね」

 

「どうしたの、アスナ…なんか変だよ?」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

古くからの付き合いであるアスナに当たり前のことを聞かれ。俺はますます困惑してしまう。アスナの異変に、ユウキも少し不安を覚えていた。二人して顔を少し青くするキリトとアスナに、一体何が起こったのかと思ってしまう。

 

「えっとですね、フォンさん…私もちょっと信じられないことに遭遇しまして。というか、あってほしくないことがあったといいますか…」

 

「リーファ、構わないから、はっきり言ってくれないか。どうにも、話が理解できなくて、ちょっと困ってるから」

 

「…驚かないで聞いて…いや、覚悟して聞いてくださいね」

 

あまりに念を押した言葉に、言われたとおりに俺は覚悟を決めて、リーファの次の言葉を待った。

 

 

 

「昨日、幻想剣ソードスキルを使うプレイヤーに襲撃されました」

 

 

 

「…は…?」

 

 

 

リーファの言葉を聞いた瞬間、俺は時間が止まったかのような感覚を覚えた。リーファの言ったことが理解できないというか、今、何と言ったと聞き返したくなったが、上手く言葉が紡げない…衝撃で頭が真っ白になっていた。

 

覚悟を決めていた筈なのに、予想だを超えた事実を告げられたことに、事実を理解するのに時間が掛かっていた。

 

「ちょ、ちょっと待て?!ユニークスキルの所有者がまた出てきたっていうのカ?!いつ、誰に、どこで!?」

 

「おちつけ、アルゴ…今はそれどころじゃない」

 

「…襲われた!?アスナ、大丈夫だったの!フォン、あんた…!」

 

「…はっ!ミト、さっきの話聞いてなかったのか!?俺、アリバイあっただろうが!?って、そうじゃない!幻想剣?!襲われた?!どういうことだ、キリト!?」

 

フリーズしている間に、情報屋の血が騒いだアルゴさんを諫めるシグさんと、襲われたというアスナをいち早く心配し、ものの見事に殺気を飛ばしてきたミトのそれに、漸く正気に戻った俺は身の潔白を証明しようと…して、趣旨を尋ねるべくキリトを問い正す。

 

「…その辺りの話は皆が揃ってからでいいか?ひとまず…ふぅぅぅ。良かったよ。お前が犯人じゃないって信じてたけど、それでも、もしかしたらという可能性があったからな」

 

「そ、そうだな…それにしても、幻想剣を使うプレイヤーって…それは確かに緊急で、しかも、アルゴさんたちも含めオールメンバーを招集するわけだな」

 

ようやく事情が理解できたことで、詳細を尋ねようとして…キリトの言葉に納得し、そして、どうして皆を呼び集めたのかがよく分かった。気になることが多すぎるが、まずは皆が集まるのを待つとしよう。

 

 

 

「ゴメン、アスナ。もう一回言って…いや、やっぱり聞きたくない!?」

 

と聞かなかったことにしようとしたのは、桃色のカスタマイズカラーリングをした髪の工匠妖精のリズベットの談、

 

「…せ、世界の終わりか、悪夢ですか…?」

 

そんな信じられないといった恐怖が入り混じった目を向けてきたのは、猫妖精のシリカの感想だ。パートナーのピナも震えてるように見えるのは、きっと気のせいだと信じたい。

 

「…フォン。あんた、今度は分身でもしたの?」

 

呆れと疑いの目を向けてきたのは、水色の髪の間に猫耳を揺らす、弓使いで猫妖精のシノンだ…この時点で、ちょっとキレて殺気を出してしまい、慌てて謝られた。

 

「フォンがそんなことするわけねぇだろう……ねぇよな?」

「まぁ、やらないだろう……やってないよな?」

 

流石は大人勢…はっきりと否定してくれた火妖精のクラインと、土妖精のエギルさんの言葉に、俺の心は少しばかり救われた。最後に、断言さえしてくれれば、本当によかったのに…!俺って、そんなにやらかしキャラに見えますかね、お二人さん!?

 

「…ふ、フォン。何か嫌なことがあったら、相談に乗るよ」

「だから、私たちまでに手を出すのは止めなさいよ…!」

 

引き攣った笑みを浮かべながら怯えるのは、そろいの猫耳を揺らす猫妖精のユージオとアリスのコンビだ。そうか、お前らまでそういうことを言うのか…言ったことを現実にしてやろうかと思った矢先に、ユウキとカナデに抱き着かれることで制止された。

…もちろん、冗談に決まってる。ちょっと両手剣をオブジェクト化して、柄に手を掛けただけだよ、アハハ。

 

決して、ユイちゃんが毎回毎回訂正してくれていることで、心にダメージをくらっているわけではない、俺は結構大人の方だ、そうだ、こういうのは耐えるところだ、そう、できる人間はそうするもんだ、うん。

 

「…(ムスゥゥゥ…!)」

 

「わ、悪かったわよ、フォン…!だから……そろそろ機嫌を直しなさいよ!」

 

うん、駄目でした。

 

キリトたちが幻想剣ソードスキルを使う何者かに襲われたと聞き、全員のそれぞれの反応を見せたところで、流石の俺もちょっと…いや、かなり怒りを覚えた。

 

窓際に佇み、遠慮容赦なく片足のつま先で地団駄を踏み、両手腕を組む俺の姿は「不機嫌です!」という態度をこれでもかと表現していた。

 

流石にちょっとこれはマズいと、リズが代表して声を掛けてきたが、思わず睨んでしまった程だ。

 

アンダーワールドでの映現世の剣の際にも、リズやシリカらに「人間を止めたのでは?」という疑惑を持たれかかって、とんでもない精神ダメージを受けたのは記憶に新しい…そこに、今回の一件…流石に、ちょっと怒りを覚えても仕方ないだろう!?

 

「まぁまぁ、フォン…みんな、お前がやってないと信じてくれてるからこその反応なんだよ。じゃなきゃ、もっと違った反応をしてたって」

 

「……分かったよ」

 

怒りはまだ収まっていないが、確かにこのままただいじけていても仕方ない。キリトの言葉に、無理矢理怒りを抑え込み、俺は話を聞く体制になった。そんな俺を見て、他の皆もホッとしていた。

 

…さっきの八つ当たりは流石にやりすぎだったか。いや、シノンに関しては、三分の一ぐらい本気なところもあった気がするが…まぁ、冗談も混じっていただろうけど…話に入る前に、まずは謝ってからだな。

 

「すまん、みんな。ちょっと感情的になった」

 

素直に一礼…俺の謝罪に、みんなもやりすぎだったとそれぞれに謝り返してくれたところで、ようやく本題に入ることになった。

 

「で、キリト。幻想剣を使うプレイヤーに襲われたってことだけど…一体何があったんだ?」

 

全員がログハウスに設置しているソファに腰掛けられるわけではなく、話を主にする俺とキリト、キリトとその時一緒にいたアスナとリーファ、子供の姿に戻った一番年下のユイちゃんと、アドバイザーということでシステム関連に詳しいカナデが腰掛け、残りのメンバーは壁にもたれ掛かったり、俺たちの周囲に立つという形で、話を進めることになった。

 

「昨日、俺とアスナ、リーファの三人で行ったクエストの帰りの話なんだ。帰り道に…デイリーダンジョンを見かけて、興味本位で立ち寄ったんだ」

 

「デイリーダンジョンに…まさか、また何か異変が…」

 

「いや、サチたちの時のようなことは起こらなかった。でも、その最奥であるプレイヤーに遭遇した。MMOのマナーに則って、先約が用を終えるまで待とうとしてたんだが…」

 

「そしたら、そのプレイヤーが私たちに気付いた途端、いきなり両手剣を抜いて襲い掛かってきたんです」

 

「私とリーファちゃんは反応が遅れたんだけど、キリト君が咄嗟に前に出て…そこから、そのプレイヤーと戦うことになったの」

 

「序盤はお兄ちゃんが押してました…二刀流なしでも押せるぐらい、そのプレイヤーの実力は高くはなかったんです…でも、いきなり動きが変わったんです」

 

「それって…幻想剣スキルの固有効果が発動…いや、発動させたという方が正しいのかもな。時間経過か体力の低下か…何かの条件を満たしたことによるものか…?」

 

「あるいは、武器の効果かもしれません。私もママの胸ポケットに入っていて、戦いを見てましたが、あのプレイヤーが使っていた武器はALOではあまり見たことがなかったものでした…一点を除いて」

 

「…?えっ、ボク…?」

 

各々と説明していく中、リーファの言葉に気になるものがあり、反芻していると、その場に小妖精といたユイちゃんが補足してくれた…のだが、何故かその視線がユウキへと向いていた。ユウキが持ってる武器は確か…

 

「そうです、フォンさん。フォンさんがSAO攻略直前に作ったあの片手剣と同じ感じが…あの武器からしたんです」

 

「…オニキス・トルゥース、か。でも、それって…」

 

「ええ…幻想剣だけでなく、既に失われた筈のSAOの武器までもが…何故かそのプレイヤーが所持していたことになります」

 

オニキス・トルゥース…俺が幻想剣関連のダンジョンで入手して、最後の切り札として用意していた、SAOにて最後に作った片手剣だ。俺が茅場…ヒースクリフに倒された後、相続スキルによって所有権がキリトに移り、ALOの事件が解決した後に俺へと戻され、今はユウキが愛用している片手剣の材料となった。

 

ユイちゃんはキリトの他に唯一、オニキス・トルゥースの詳細を目にしている子だ。リーファやシグさんも目にした機会はあるそうだが、状況が状況だったので見たことがあるだけだったらしい。実際に詳細画面を確認したのは、キリトが旧ALOへと初ログイン(というか、落下か?)した時に、一緒にいたユイちゃんだったわけだ。(と、後から聞いた話だが)

 

幻想剣にSAOの雰囲気を持つ武器…あまりにキナ臭い。というか、また厄介なにおいがしてきたというべきだろう。

 

「そろそろ本題に戻るぞ。プレイヤーの動きが変わって以降も、別に対応できてはいたんだ。なんというか…確かに強くはなったんだが、その力を有り余らせている感じというか…違和感を覚えたんだ」

 

「違和感…?」

 

「ああ。チグハグと言うか、力と技術が見合ってないと言うか、戦い慣れてない…うん、全部だな」

 

「それはまた…確かに変だな」

 

あのキリトがそこまで言うのだから、よっぽどなのだろう。というか、あの温厚なキリトがここまで言うって、結構なレベルだぞ。

 

「なんか、話に聞いてると、幻想剣を使い切れてないフォンみたいな感じだね」

 

「戦い下手なフォンさん…なんか逆に想像しにくいですね」

 

キリトの評価を聞いたユウキの感想に、近くにいたシリカがなんと言えない苦笑で応えていた。

 

「ところがた…俺を倒し切れないことに苛立ったみたいでさ。いきなり距離を取ったらと思ったら……あの技を放ったんだ」

 

「…その技っていうのが」

 

「お前が両手剣でよく使う、最上位ソードスキルによく似てたんだ。あの、エンド・オブ・フォーチュンに」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

キリトが告げたその事実に、また沈黙が場に漂った。ある者は驚き、ある者は信じられないといった感じの反応を見せる中、俺はキリトに向けて問い掛ける。

 

「エンド・オブ・フォーチュン…あの超大技を使ってきたってことなのか」

 

「ああ…いや、正確にはとても似ていたという方が適切かもな」

 

「似ていた…?エンド・オブ・フォーチュンそのものじゃなかったってことなのか?」

 

「発動させるまでのモーション、ライトエフェクト発動後のオーラによる刀身の巨大化までは全部一緒だったわ。でも、フォン君の使っていたのとは異なってるところもあって…」

 

「フォンさんの技と違って、その技は刀身が三又に分かれませんでした。それに、属性配分も異なっていたみたいです。刀身から漏れる属性の光が闇属性一式でしたので…でも、攻撃範囲が洒落にならないレベルになってたんです。咄嗟にお兄ちゃんが二刀流で庇ってくれたなかったら、私もアスナさんもやられていたと思います」

 

「なるほどな…」

 

おおまかな話は理解した…そして、これは非常にマズい問題であることも理解してしまった。

 

「ユニークスキルが…導入されたってこと?」

 

俺が真っ先に思ったことをリズが代弁してくれた。最悪の可能性…いきなりユニークスキルが導入された可能性にSAO帰還者メンバーがまさかの可能性を考えたが、

 

「それはないじゃろう」「それはないと思います」

 

そんな懸念を否定したのは、カナデとユイちゃんの揃った声だった。

 

「ユニークスキルがもしも導入されたのなら、他のスキルも導入されていなければおかしいじゃろう。特に…ここには二刀流の条件を満たす最高速度の反応を持つ二人のプレイヤーがおるのじゃからな」

 

「それに、ユニークスキルのデータはSAOが攻略されたことにより、データ破壊によって失われました。バックアップとしてデータが残されていた旧サーバーからデータを引っ張ってくるという手もありますが…それは今、厳重な管理がされている筈ですので、ALOを管理しているユーミルが手を出せるとも考えにくいかと」

 

「…今のところ、ボクのスキル欄に二刀流はないね」

 

「…旧サーバー…ああ、オーディナル・スケールの時のあれみたいな感じね。私がGGOのデータを上書きしてもらった奴」

 

流石はカナデとユイちゃんというか…二人の知識と専門的な見方に、俺は納得させられてしまう程だ。二刀流の習得候補書として暗に名指されたユウキがスキルを確認する一方で、似た感じでオーディナル・スケールの最終決戦時にデータを上書きされたシノンが納得していた。

 

「それじゃあ…フォンのスキルがコピーされて導入されたっていうのは?実際に、フォンの幻想剣スキルは今のALOにはあるわけだし」

 

「それもあり得ません。というよりも、あったら、まずフォンさんの幻想剣スキルは削除されているかと思います」

 

『えっ!?』

 

次にユージオが可能性を提示したが、これもバッサリとユイちゃんが切り捨てた。というか、とんでもない事実が告げられ、カナデを除く一同が驚きの声を上げた。削除って…

 

「まず大前提に、フォンさんの幻想剣スキルは管理側からは認識できない設定になっています」

 

「えっ、そうなの!?」

 

「…フォンさん、知らなかったんですか?!」

 

「い、いや…知る方法なんてなかったし…というか、なんでユイちゃんは知ってるんだ?」

 

とんでもない事実を初めて聞いたことに、俺は驚きの声しか出ない。物凄い勢いで、首をぐるりと向けてきたリーファの問いに、慌てて首を横に振って否定する。どうして、ユイちゃんがそんなことを知っているのかと思い尋ねると。

 

「パパに以前聞かれて、フォンさんのスキルについて調べた際に知りました。あれ…でも、パパには調査結果を伝えた筈ですけど…」

 

「キ~リ~ト?」「キ~リ~ト君?」

 

「…わ、悪い。忘れてた…」

 

元凶はユイちゃんのパパでした。思わず低い声が出たが、同様に夫のやらかしに、妻のアスナも同意見だったらしく、低い声が横から出ていた。当の本人は見事なまでに忘れていたらしい…こ、この野郎。

 

「キリト君、当面辛い物禁止」

 

「…そ、そんなぁ!?」

 

「コホン…話を戻そうか。ユイちゃん、幻想剣スキルが認識されないようになってるって、どういうことなのかな?」

 

キリトへのおしおきはアスナに一任するとして、幻想剣が管理側から認識されていないという話をもう少し詳しく聞いてみようと、俺はユイちゃんに問い掛ける。

 

「ユニークスキルの幻想剣スキルがALOとして使えるように改造されている…ここまでは、フォンさんもご存じかと思います」

 

「ああ、あの須郷が俺をグランド・クエスト最強の騎士として配置しようとして、設定するべく改造したんだよな」

 

 

「そうです。でも、逆に言えば、幻想剣スキルをシステムに異常として感知されてはいけなかったわけです」

 

「ALOも旧式とはいえ、カーディナルシステムによって管理されておるからのう。そのままスキルを導入すれば、存在してはならないスキルとして自動削除されてしまうじゃろうな」

 

「はい。なので、今のフォンさんの幻想剣スキルは「フレキシブルスキル」という形で登録がされてます。ようは、VRMMOの適正に応じて変化する不定形型スキルと言えば、分かりやすいでしょうか。場合によって、スキルの変化が変わる…そういう設定のスキルとして登録することで、管理側から見た場合、既存スキルのどれかに置き換わって見える仕様になってましたので、エラー検出されることがなかったんです」

 

「へ、へぇ~…なんか、SAOの時よりも凄いことになってたんだな。うん……ちょっと待って、VRMMOによって変化する…それって」

 

「あー!?GGOの時の、あの盾スキル!?なんで幻想剣が、あんな意味不明なスキルになったのかと疑問だったけど…幻想剣のその特性によって変わったものだったのね!?」

 

カナデの受け答えを交えながら、語られたユイちゃんの説明に納得したところで、聞き捨てならない説明があり、俺とシノンの思考が一致した。

 

GGOにて役だった盾派生スキル 『幻影の盾』…長い間、謎になっていたスキルが変化した理由の真実が意外な形で明らかになったわけだ。まぁ、キリトが早く言ってくれていれば、もっと前に分かっていたんだろうけど…

 

「話を戻しますね。なので、管理側がフォンさんの幻想剣スキルを把握できていない以上、それをコピーすることはまず現実的ではないかと思います」

 

「逆に言えば、もしもコピーを疑うのなら、フォンの幻想剣スキルを知っている人物でなければ、できないということじゃ」

 

(幻想剣スキルを使ってて、VRMMOの高度なプログラミングができる人……限られすぎてて、逆にないか。茅場はまずそんなことをしないし、当の改造した本人である須郷は牢の中…いないと言っても過言じゃないのか、これ…)

 

色々と幻想剣の知らないことが分かったはいいが、結局何が原因で幻想剣のもう一人の使い手…いや、幻想剣モドキかが出てきたのかが分からずじまいだった。だが、

 

「放っておくわけには…いかねぇよな」

 

「ダナ…もしもそいつしか幻想剣に近いスキルが使えないとなると…そして、そいつが何か荒事を立てれば、フォン坊が疑われる可能性が高い。なんせ、フォン坊は嫌なほどに知名度もその技も有名だからナ」

 

「最悪、フォンが責められることになるか」

 

クラインの言葉に、アルゴさんとエギルさんが最悪の結果を口にした。俺としては、そこは俺が耐えれば済むだけに聞こえるが…それでみんなに…ユウキやカナデに迷惑が掛けるのは絶対に嫌だ。

 

「なら、やることは一つね」

 

「…アリス?」

 

「偽物を捕まえて話を聞く…そうしたいんだよね、フォン?」

 

「ユージオまで…」

 

「みんな、考えていることは同じってことだよ」

 

「こういう時のお主は本当に分かりやすい顔をしようからのう。どうせ、一人でその偽物を追い掛けようとしておったのじゃろう?」

 

「…うっ」

 

アリスとユージオの言葉に、思わず首を傾げていると、ユウキとカナデに見透かされたかのようにそんなことを言われ、思わず言葉が詰まる。周囲を見渡すと、全員がうんうんと頷いていた。

 

「どうやら、あんたのことは皆、理解し切ってるみたいね?」

 

「ア、アハハ…ったく。悪い、皆。力を貸してくれ!」

 

『もちろん(です)!』

 

揶揄うように笑みを浮かべてそう告げてきたミトに、俺は乾いた笑みを浮かべて応え…そして、仕切り直して皆にそう告げると頼もしい答えが返ってきた。

 

そういうことで、俺たちは幻想剣モドキを探す作戦を立て始めた。

 

 

 

その頃と同一時刻

 

「うーん…何か面白そうなクエストは…」

 

『なぁ、君…』

 

「えっ、私…?」

 

ALOの央都アルンのクエスト掲示板の前にて、クエストを探す影妖精の少女がいた。何かクエストに挑もうとしていた最中、いきなり声を掛けられたことに驚いていた。

 

『君、罠を見分けるのが得意なんだって?』

 

「…そうだけど、あんた、何者?」

 

『実はトレジャーハンタ―向けのダンジョンがあってね』

 

「トレジャーハンター向け…!」

 

『そう…僕はその奥に用事があるんだが、良かったら力を貸してくれないか。きっとトレジャーハンターの君のお眼鏡に適うお宝があると思うんだが、どうだい?』

 

「…分かったわ、あなたの依頼を受けるわ」

 

そんなやりとりを受け、フードを被ったプレイヤーと影妖精の少女の契約はなされ…そして、プレイヤーの口は歪な笑みを浮かべていたのだった。

 

 




ユイちゃんがここまで長く話したのって、本作だと結構珍しいかも…(組み合わせ的に、お兄さん的立ち位置であるフォンともうちょっと絡ませたいのですが…その辺りはキャラエピやロスト・ソングの個別エピソードでお届けできればと)

これまで過去編でしたので、久々のオールメンバー集合回…全員均等に喋らせるのがむず過ぎる(苦笑)あと、さりげなく一番乗りしてるミトさん…アスナからのコールに最速で応えるあたり流石というか…

そして、とんでもない風評被害を受けたフォン…半分ぐらい自業自得なところもあるかと思いますが、まぁ、それぐらい幻想剣=フォンというイメージが皆の中であったわけです。
(ガールズ・オプスの話も混ぜようかと思ったのですが、長くなりそうでしたので、その辺りは次回のお話で入れるかもです…ちょっと未定です)

そんなわけで、次回から本格的には話が進んでいきます。
『再会P:罠を超えた先で』にご期待頂ければと思います。

それでは!

もしも見るならどっち?

  • GRAND QUEST FANTASY
  • 修羅場

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