ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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デリミターとは、コンピューターのテキストファイルで、複数のデータ要素を区切る文字のことを指します。

ということで、サブタイ通り入り江エリアラストのお話となるため、区切りという感じでの名づけでした。

…その意味はその目で見届けて頂ければと思います。

それでは、どうぞ!


第16話 「拍子抜けのデリミター」

…ガァン…!

 

「…ぐぅ!」

 

鈍い金属音が響くのに遅れ、俺は持っていた武器を思わず落としてしまった。予想していなかった痛みが腕を襲い、そして、同じく予想していなかったフィリアも驚いているのが視界に入り…

 

「…フォン!?」

 

そんな彼女の叫びに応える間もなく、俺は地面に膝を突けることになった。

 

どうしてこうなったのか…話はこの先に進むことになった経緯にまで遡ることになる。

 

 

 

入り江エリアの南部…件のフィールドである『海賊王の砦』へと向かった俺とフィリアだったが、意外な足止めを喰らうことになった。

 

海水や浜風によって削られたことで形成された天然の拠点…南部の海浜洞窟と一体化していると言ってもいい、映画か何かで見そうな岩肌が特徴的な場所が『海賊王の砦』だったのだが、その2階部分にてまさかの仕掛けがあったのだ。

 

…なんと3階へと続く階段の前の鉄格子に鍵がかかっていたのだ。

 

あまりにもベターな仕掛けに肩透かしを喰らい、少し呆然とするも…なら、鍵を探せばいいじゃないかと思うだろうが、まぁ、そう簡単な話でもないわけで。

 

周辺に宝箱はなく、ならばエンカウントするモンスターが持っているのではと1階から2階にいるモンスター全てを倒しつくもドロップしたのは、

 

『今日の鍵当番は忘れないように、宝物庫へと続く鍵を廃坑へと隠しに行くように』

 

という、スケルトン系で短剣を扱うモンスターがドロップしたヒントらしき紙切れだった。なんて面倒なことをと思ったのが半分、当番なんてものがあったのかと同乗したのが半分だった。

 

20体近く討伐したが、曲刀やらカットラス(短剣のような気もするが、サイズ的に片手剣だったので)、棍棒といった武器を持った軽装のスケルトンばっかりだったので、もしかしたら彼らは海賊だったのかもしれない。

 

そんな推測を交えつつ、どうやら鍵はこの砦の中にはないらしく、砦から地続きになっていた坑道へと足を踏み入れたのだが、その途中で出くわしたものがあった。

 

「…これは、岩石か?」

 

俺たちの身長を遥かに超える巨大な岩…体感的に3メートルぐらいそれが坑道を塞ぐように密集していたのだ。通り抜けられそうな隙間もなく、かといって登れそうな感じもしない。となると、やることは一つ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「フィリア、今から岩を壊すからちょっと離れていてくれ」

 

「…えっ。あっ、うん…」

 

(…やっぱり昨日のことがまだ響いてるっぽいな)

 

戦闘中は問題ないのだが、こうして探索している間はどこかぼんやりしているフィリアの姿に、俺は内心でそう呟いていた。

 

まぁ、教会での出来事を鑑みれば無理もない話か…できることなら攻略を休むことも考慮すべきかもしれない。ともかくフィリアの状態には気を付けた方が良さそうだ。そんなことを思いつつ、俺はメニューを開き、両手剣から片手棍『フェイタル・アウト』へと装備を変える。

 

(見たことない岩石だな…鉱石とはまた違ったタイプみたいだし、鑑定スキルだと……ヒットしない。破壊可能なオブジェクトって扱いなのか…まぁ、とりあえず壊してみるか)

 

またしても未知なる岩に遭遇したこともあり、慎重に岩石を探っていく。壊した途端にモンスターがポップする仕掛けだったりすれば目も当てられない。こういうトラップ関連のギミックは本当はフィリアに探ってもらった方がいいんだろうが、本人が本調子でない以上お願いするわけにもいかないだろう。

俺ができる範囲で調査を終え、まずは一個だけ壊してから様子を伺うことにし、触れていた岩から少し距離を取り、片手棍を振りかぶる。ソードスキルを使う必要はないだろう…幻想剣スキルの片手棍の固有効果もあるし、一、二発で壊せるだろうと思っていた予想は、

 

…ガァン…!

 

「…ぐっ!?」

 

腕を走る痛みと共に否定されることになった。

 

振り下ろした棍棒を伝い、振動が腕から俺の前身へと響き渡った。言葉で表すなら、まさしく『ジ~ン』と表現するのがピッタリなほどに…右腕が震え、持っていた片手棍を取り落としてしまうほどにだ。

 

「…フォン!?」

 

まさかの結果に、フィリアも驚いたらしく、背後から心配する声が飛んでくるも応えることができない。

 

「あ、ああぁぁ……し、痺れたぁ……」

 

全く警戒していなかった+何も考えずそれなりに力を込めて振るった+対象の異常な硬さによって生み出された結果は、俺の前身を麻痺させたかと思うかのような反動だった。ずっと正座をしていた後の痺れによく似た感じだ…剣道をやり始めた当初は何度か経験したことがあったなと思い出していたが、今はそれどころじゃない!

 

あまりの反動に立っていることすらままならず、頭と膝を地に着けた俺は最も痺れが酷い右腕を上げることでなんとか緩和しようと試みた…全く効果なかったけどな!?

 

「フォン、大丈夫!?」

 

「…悪い、ちょっと大丈夫そうじゃない…」

 

ようやく我に返ったらしいフィリアが駆け寄ってくるも、もうしばらく腕の痺れは取れそうにない。なんとか応えるぐらいはできるようになったが、これはキツイ…そんな苦しみを感じていると、

 

「…プッ…フフフッ、アハハハハ!」

 

「ふ、フィリアさん…?」

 

「ご、ゴメン…ちょっと、今のフォンが意外過ぎて…あんな余裕そうにしてたのに、こんな結果になるとは…フフフフッ!」

 

「…そりゃどうも…(ちょっとは元気出たっぽいな…その要因がこの有様になるのはどうかと思うけどな)」

 

安堵同時に堪え切れないとばかりに笑い出したフィリアの姿に、俺は力なく笑うことしかできなかった。

 

言いたいことはあったが、俺の姿でちょっとは元気を出してくれたのだ…結果は不様だが、意外な効果があったということで受け入れよう。女の子にカッコ悪いところを見せたに等しいので、滅茶苦茶恥ずかしいがな…!

 

 

「…それにしても、まさか壊させないとは…結構凹むわ」

 

「思い切り振りかぶった一撃加えたのに、綺麗にカウンター喰らったような感じだったもんね…ププッ」

 

「いつまでツボに嵌ってるんだよ…でも、マスタリーしてる片手棍で壊せなかったってことは、両手斧とかでも厳しいか?そうなると、何か他のアイテムが必要なのか…?」

 

数分して、ようやく腕の痺れも治ったことで、俺たちは再び岩石の対処をどうしようかと思考していた。

 

俺的には幻想剣の効果までも付随した一撃で、傷一つつけられなかったことにかなり衝撃を受けていた。部位破壊に特化しているおかげで、これまで何度もモンスターの部位を破壊しまくってきた前科があったので猶更だ。

 

少しは元気を取り戻したフィリア…だが、未だにさっきの光景がツボに嵌っているらしく、思い出し笑いを浮かべていた。俺としては一刻も早く忘れて頂きたいのだが…こういうのって、キリトが大体やらかすことが多いから、あんまり俺が経験することなかったんだよなぁ。

 

そんなことはさておき…問題は眼前の岩石だ。

 

幻想剣というチートスキル効果を持ってしても壊せないとなると、何か別途の方法でないとこれを除去することということなんだろう。少なくとも、破壊不能オブジェクトではない(特徴的なあの紫色のシステムエフェクトが出現しなかったことから)のは確かだ。

 

入り江エリアも大半は探索している今、まだ他のエリアに隠されているものがあるのだろうかと考えていると…

 

「…あっ、そうだ。フォン、昨日ドロップしたあれは?」

 

「あれ…?…ああ、あのマトックか」

 

フィリアの言葉によって、俺も思い出したそれをストレージからオブジェクト化する。ステータスはやはり変わらず低いが、特殊効果が付いていた筈だ……うん、やはり効果欄に『岩石特攻』が記載されている。

 

試してみる価値はありそうだ…そう思い、フィリアへと目配せしてから、俺はマトックへと装備を再び換装する。そして、先程と同じようにマトックを岩石へと振り下ろすと、

 

「っとと…おおぉ!」

 

さっきとは異なり、何の抵抗もなく岩石は砂と破片に変わり砕け散った。あまりにもあっさりとした結果に、思わず前につのりそうになったほどだが、先程の醜態と同じことをすまいと意地で踏ん張った。

 

フィリアの推測通り、効果ありのようだ。これで、この先へも進めそうだ。残る岩石も道の確保のため全て砕き、俺たちは坑道を進んでいった。

 

 

 

「…どうやら、この先に入り江エリアのボスがいるみたいだな」

 

その先は特に苦労するようなこともなく、『騙された者たちの末路を抱く廃坑』というエリアに辿り着き、その最奥にて砦の鍵を入手できた。

 

ということで、砦へと舞い戻り、閉ざされていた階段への道を解放して砦3階へと足を踏み入れた。浮遊遺跡エリアの『バステアゲート遺跡塔 最上階』同様、そのフロアにモンスターはいなかった…理由は簡単、短い通路の先にこれまで二度見てきたエリアボスがいるフロアへと連なる扉があったからだ。

 

「…どうする?このまま挑む?」

 

「そうだな……装備やアイテム的には十分挑める感じだし、フィリアさえ問題なければこのまま挑もうと思うんだが…どうだ?」

 

砦周辺の探索自体は一時間くらい…ほとんど消耗もしてない上に、アイテムも全然使ってない。ボスの特徴が分からないという不安要素は残っているが、どの道ホロウ・エリアのエリアボスでは逃げることができないのだ。

 

ならば、この勢いで挑戦したいところ…ではあるのだが、やはり懸念すべきはフィリアだろう。あまり本調子でないのなら今日はここまでとするのも手だ。

 

『こっちは大丈夫だが、そっちはどうだ?』という問い掛けにフィリアはしばし思巡し…そして、

 

…パン!

 

「…よし!私は大丈夫…行こう、フォン!」

 

「…分かった。なら、行くぞ」

 

自分に気合を入れるよう頬を両手で叩いたフィリアに、それ以上は何も言わず俺は応えた。ということで、フィリアの持つ首飾りを扉に嵌め、ロックが解除されたボス部屋の扉を開き、中へと入るのだった。

 

『深淵が見つめる武器庫』…そのエリア名のとおり、大きな空間である広場の四方に金貨やら装飾が施された武器がこれでもかと乱雑に放置された場所へと足を踏み入れた俺たち。

 

雰囲気が砦とは全く異なるだけでなく、さっきまで感じていたそよ風までもが全く感じられない…圧迫感を覚えるような感じに、警戒心が更に引き上げられる。

 

「…これがボス戦じゃなかったら、周りのお宝に目を奪われるんだけどね」

 

「トレジャーハンターじゃなくとも、そうなるだろうな。まぁ、こういうのって大体トラップが仕掛けられているオチなんだろう?」

 

「そうだね…落とし穴だったり、毒針が飛び出したり…そういう定番系の罠が出てくるだろうけど…」

 

『…緊急クエストが確認されました!当ホロウ・クエストが完了するまで、出入り口を封鎖します!』

『…同時に、=ニーηΛ÷×ル『Йε剣』Ме始ЗЫЬ\ΩС。йΝ〈データに反映させます』

 

「まぁ、そうくるよね…!」

 

周辺の宝などが気になるのはよく分かるが、残念ながらそうはいかないわけで…分かっていたと言わんばかりのフィリアの反応に、俺も僅かに頷き、装備し直していた両手剣の柄へと手を掛ける。

 

これまで以上に鮮明に聞こえたシステムアナウンスだと思いつつ、これから出てくるであろうボスの姿を求め視線を彷徨わせていると…

 

「…!フォン、あれ!」

 

先に見つけたらしく、フィリアが見ている方へと視線を向けると…何かオーラ(妖気といってもいいのか、紫色のエネルギーらしきもの)が乱雑する宝の山の一画に集まっており、次の瞬間、そこから何かが飛び出した!

 

「…剣、だよな…?」

 

思わずそう呟いてしまった…宙に浮遊するその剣は集まっていたオーラを纏うその姿に、心の声が漏れた。フィリアに同意を得たかったのだが、隣の彼女も言葉を失っているようで…

 

そんな俺たちの反応などお構いなしに、巨大な両手剣がそのまま俺たち目掛けて突っ込んできた!

 

「「っ!?」」

 

突然のことではあったが、攻撃を仕掛けられていつまでも呆然としている訳もなく…俺とフィリアはその場から飛びのく形で回避する!

 

地に刃を擦り火花が散らせた直後、両手剣はまたしても浮遊する状態に戻っていた。西洋風の銀で作られたシンプルな刀身は、どこか様式美を感じるものがあるが、今はそんな感想を述べている場合ではない。

 

「フォン!」

 

「俺が仕掛ける!フィリアはフォローを!」

 

これまでのエリアボスの特徴からして、何かしらの能力を持っている可能性が高い…そうなると、まずはそれを探る方が先決だろう。

 

瞬時に思考を纏め終え、フィリアと連携を図りながら俺は背中の両手剣を抜く!そして、そのまま一気に浮遊する剣へと距離を詰めるべく駆け出す!

 

俺の動きを察知してから、浮遊剣も反応して俺へと再び突撃を仕掛けてきた。それなりのスピードだが、俺でも目に追えるレベルであり、その軌道を見切り躱し、そのまま上から両手剣を叩きつけるべくソードスキルを繰り出す!

 

 

幻想剣≪両手剣≫単発ソードスキル〈フォール・ルイン〉…出だしということもあり、全能力アップのバフ掛けをも狙い、様子見の一撃を放った…のだが、

 

…バキッ!

 

「えっ…?」「…う、そ…」

 

手に感じた感触と、遅れて視認した事実に俺とフィリアから思わず驚きの声が漏れていた。予想外といえばそうなのだが…予想の斜め上に至るその結果に、俺は目を丸くするしかなかった。

 

…幻想剣ソードスキルを叩きつけられた浮遊剣の刀身が、そのまま二つに叩き割れたのだ。

 

確かに幻想剣ソードスキルはどれも強力だ…そもそも幻想剣スキルの共有効果自体に与えるダメージの強化補正があり、両手剣固有効果にはバフ強化が存在する。それらを加味した上で、上位既存ソードスキル以上の威力を発揮するのだ。一番威力が低い〈フォール・ルイン〉もそれなりの威力を持つのは事実だ。

 

だが、これまで対峙してきた二体のエリアボスも恐ろしい能力を持っていたのもまた事実だ。影を操る獣に、空を支配する竜…どちらも苦戦を強いられた特異な能力持ちだった。

 

ところがだ…今、眼前で真っ二つに折れた浮遊剣はそれらと比較すると、あまりにもあっさりとした終わりを迎え…いや、もしやこれこそが何かのギミックなのではとすぐさま頭を切り替えようとするも…

 

…パリン!

 

(…嘘だろう。倒し、たのか…?)

 

思考を切り替えた直後に、剣としての形を失ったそれは地へと落ち、そのままポリゴンへと変わってしまったのだ。あまりにも想定外の結末に振り下ろした両手剣をそのままに、俺は呆然とするしかなかった。

 

「…!フォン!」

 

「っ…?!」

 

数秒の間そのままだったが、フィリアの警戒を告げる声に、ようやく意識が現実を受け入れた。そして、周囲へと目を走らせると…さっきの浮遊剣のように、宝の山にオーラが…今度は血のように赤いオーラが集まっていた!

 

そして、起こったのは先程と同じ現象…宝の山から今度は巨大な刀がその姿を露わにした。

 

「今度は刀…これが今回のボス戦なのか…?」

 

次々と出てくる武器と対峙する…モンスターではないボス戦に困惑を覚えるのは仕方ないのだろうか。先が見えないのもそうだが…ホロウ・エリアだけでなく、アインクラッドの迷宮区ボスにもなかったパターンのせいもあり、違和感を感じまくっていた。

 

「フォン、どうするの…また攻撃してみる?」

 

「……少し様子を見たい。回避に徹してくれるか?」

 

「…了解」

 

さっきの浮遊剣と同様にこいつもそこまで強くはないのでは?という考えが頭に浮かぶも、ここはもう少し慎重になるべきだと思い、フィリアの問い掛けに俺はそう指示を伝える。

 

浮遊剣とは異なり、刀は一定タイミングでその場で薙ぎ払い斬りを繰り出すだけで…それ以外のことはしないでいた。

 

あまりにも異質すぎる…いや、単純すぎる攻撃に俺は疑いを捨てきれずにいた。隣で警戒するフィリアもこのまま観察に徹するのかと疑問を映した視線を向けてくる…ひとまず、さっきのように攻撃を仕掛けてみることにした。

 

「フィリア、俺が刀の一撃を相殺するから、ソードスキルを叩き込んでくれるか?」

 

「…分かった。いつでもいいよ」

 

「よし……いくぞ!」

 

短いやりとりでどう動くかを決め、前衛の俺に続くべく、フィリアがその背中を追う位置へとポジションを取る。そして、同時に駆け出し、刀へと肉薄する…周期を見切っていたので、ちょうど迫ってきた刀へとそのまま両手剣をぶつける!

 

ソードスキルなしのただの斬撃にも関わらず、俺は刀の一撃を相殺することに成功し…そして、想定していたように隙を突いたフィリアが短剣でソードスキルを発動させる!

 

「…また!?」

 

2連撃ソードスキル〈ラピッド・バイト〉を繰り出すフィリアだが、二連撃目を受けた刀が罅割れ、またしてもあっさりと撃破できたことに、驚きの声が出ていた。

 

「…さっきと同じ…ってことは…?!」

 

浮遊剣と同じ結末…そうなると次に起こるのは、と思い周囲に目を向けると、三度オーラが別の宝の山に集結していた!

 

そして、三度目となる繰り返しで、今度は金色のオーラを纏った両手斧が飛び出してきた!

 

だが、これまでとは多少パターンが違い…!

 

「ヤバッ…フィリア、跳べ!?」

 

「言われなくても…!?」

 

出現した直後、遥か高く上昇したと思った矢先、両手斧が広場の中央に急降下し始めたのだ!その結果を予想し、俺とフィリアは慌てて動き出す!

 

両手斧が落下する直後、全力でその場で跳躍する…その直後、両手斧が落下した衝撃が地面を伝った!一種の地震に等しい揺れは、直撃すればスタン確実の範囲攻撃だっただろう…俺だけでなく、フィリアも経験があったらしく、それを予期しての回避行動のための跳躍だった。

 

そして遅れてやってきたショックウェーブ(衝撃波)も再び跳躍して躱し、体勢を立て直そうと…する最中、両手斧が次なるアクションを仕掛けてきた。

 

その場で高速回転し出したかと思えば、纏っていたオーラが両手斧の形となり、周囲にバラまかれ始めたのだ!

 

「フィリア、俺がやる!」

 

斬撃の雨…というほどではないが、サイズ自体が巨大な両手斧と同様なので、数は多くなくても広範囲にバラまかれると、面を制圧するには十分すぎた。

 

隙間を掻い潜って一撃を加えるのは簡単な話ではない。軽装なフィリアよりも、自分が担うべきだと思い、メニューを開き武器を変える。曲刀『砂漠鳥の快刀』を装備したことで、固有効果が曲刀のものへと変わり、AGI値が2倍に強化された!

 

そのスピードを活かし、乱れ撃たれる両手斧たちの合間を掻い潜っていく。ヒュドラの時とは異なり、盾を装備していないこともあり、そのスピードはあの時以上だ。掠りそうな斬撃も曲刀で無理矢理逸らし、そのまま懐に入ったところでソードスキルを発動させる!

 

「い、けぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

両手斧の全体を斬り裂くべく、選んだのは曲刀範囲ソードスキル〈デス・クリープ〉…身体を軸に一回転の要領で繰り出した一撃は、両手斧を真っ二つにした!

 

「フォン、次がくるよ!」

 

「攻撃パターンを見て、一気に仕留める!フィリア、いつでも動けるようにしておいてくれ!」

 

これで終わりなわけがない…両手斧がポリゴンへと変わるのを見届けず、ダッシュの勢いを足裏で地を擦ることで殺しながら、メニューを開き操作する!

 

フィリアの言葉に、またしてもオーラが集まっているのを見つけたのだろう…それに応えながら、今度は刀『真猛丸』を装備する!

 

そして、現れたのは青いオーラを纏う巨大な細剣だった…浮遊しているのはこれまで登場してきた武器たちと同じだったが、その剣先は俺へと向かっており…

 

「っ…!?ぐううううぅぅ?!」

 

「フォン?!」

 

引くような動作をした直後、矢を放つかのように突きを繰り出すモーションの後、咄嗟に刀を盾にするよう構えた俺を衝撃が襲った!

 

衝撃を殺し切れず、勢いに押され吹っ飛ばされた俺を見たフィリアから悲鳴が聞こえるも、すぐさま空中で体勢を整え、なんとか着地する。

 

衝撃のわりにはそこまで威力はなかったようで、HPはそこまで大きく減っていなかった。だが、細剣が繰り出してきたその技に、俺は内心驚きを隠せないでいた。

 

(今のは…〈ランバルト・ノイン〉によく似てた…!?まさか、幻想剣ソードスキルによく似た技を使ってくるなんて…!)

 

ライトエフェクトがないことからして同じ技ではないのだろうが…その巨体を生かした衝撃波攻撃に、流石に驚く。原理は違うとはいえ、同じ武器で似たようなことをされれば当然だろう。

 

「フォン、大丈夫なの!」

 

「問題ないよ…フィリア、剣先に注意しろ。細剣が後ろに動いた直後に衝撃波が飛んでくるぞ」

 

「それはまた……同時に仕掛けよう。それなら、どっちかが本体に近づける」

 

「よし、それでいこう!」

 

俺の反応が返ってこなかったことに心配を募らせたフィリアから再度声が飛んできたので、今度は問題と応える。それと同時に技の正体を告げると、苦い顔をされた。

 

モーション自体が短時間で行われるのもあって、狙われたと気づいた直後には回避行動を取れるように動く必要がある。それを理解してか、フィリアが同時に攻めることを提案してくれたので、了承して刀を構える。

 

今度はフィリアを狙った細剣の斬撃飛ばしを回避した直後、俺たちは同時に駆け出した。どうやら距離が近い対象を優先的に狙うらしく、俺よりも素早く近づいていたフィリアへと再度衝撃波を繰り出そうと…

 

「…遅い!」

 

繰り出した直後、カラクリを理解していたフィリアには当然躱され、隙だらけになった細剣の根元を狙い、刀のソードスキルを叩きつける!

 

宙へと浮かぶ刀と平行になるよう身体を飛び込み、そのまま回転した要領で繰り出すは刀範囲ソードスキル〈旋車〉だ…これまでの武器同様、ソードスキル一撃で限界を迎えた細剣の刀身がぽっきりと折れる。

 

「次!」

 

「今度は…片手剣!」

 

これで五度目…慣れた動作で次に備える俺に、宝の山から飛び出してきた巨大な片手剣を発見したフィリアがその正体を伝えてくれる。

 

黒いオーラを纏った片手剣は…天井へと刀身を向けたまま浮遊している。だが、纏っていたオーラが周囲に分散し始め…そこから小型の片手剣が複製され始めたのだ!

 

「今度は分身か!フィリア、一気に叩くぞ!」

 

「うん!」

 

メニューを開き、鏡合わせのように同じ武器である片手剣『アサルト・サヴァイブ』へと換装する。その間にも小型剣は増え続け、そして、ついに俺とフィリア目掛けて飛来してきた!

 

それぞれ片手剣と短剣で迎撃していく…威力はサイズに見合った程度で余裕で払ったり弾き落とせるのだが、いかんせん数が多い。物量に押し切られる前に本体を倒すべきだろう…フィリアにもそう合図したところで、互いに範囲ソードスキルを繰り出す!

 

片手剣範囲ソードスキル〈ホリゾンタル〉と短剣範囲2連撃ソードスキル〈ラウンド・アクセル〉…青と藍色のライトエフェクトが軌道を描き、周囲の小型剣を纏めて撃ち落とす!そして、硬直が解けるのと同時に俺たちは駆けだした。

 

接近する合間にも小型剣たちが飛来してくるも、それを弾き飛ばしながら駆けていく…が、それを予期していたかのように、なんと一部の小型剣を刀身へと集結させた本体が、反撃の一撃を繰り出してきた!

 

「そうは…させるかぁぁぁ!」

 

先に硬直が解けたことで、僅かに先行していた俺はそれに気付き、咄嗟に反撃のソードスキルを発動させる!

 

背中に振りかぶった直後、ライトエフェクトの発生を確認した剣を前方に突き出す…片手剣重単発ソードスキル〈ヴォーパル・ストライク〉に引っ張られるように、俺の身体が飛び出す!

 

大技がぶつかり合ったことで斥力が生まれ、その衝撃がノックバックとして伝わり、俺の身体が後ろへとのぞけるも…俺に焦りはなかった。

 

「…スイッチ!」

 

「もらった!!」

 

俺と同じく反動で動きが鈍くなっていた片手剣に、俺の横を通り過ぎて肉薄したフィリアが決定打を繰り出す!

 

短剣最上位4連撃ソードスキル〈エターナル・サイクロン〉が片手剣を斬り刻み、小型剣ごとバラバラになった剣はそのままポリゴンへと変わった。

 

「次は………あれ?」

 

今度はどんな武器が出てくるのかと周囲へと目を向けるも…ところが、周囲には先ほどまで見えていたオーラはどこにも表れず、予想外の事態に何事かと警戒していたのだが、

 

【Congratulation!!】

 

 

「…終わった、の?」

 

「………みたいだけど…」

 

巨大片手剣で大締めだったのか…ボス撃破のシステムメッセージが表示されたことに、戸惑う反応を示すフィリアだが、俺も似たような反応だった。

 

前二つのエリアボスがあれほどまでに苦戦させられたのに対し、今回はあまりにもあっさりというか…はっきり言って弱すぎた。なんというか、本当にこれがボス戦で良かったのかと疑うレベルのものであり、こうしてシステムメッセージを見ても、まだ何かがあるのではと疑ってしまう程にだ。

 

だが、クリアの証明として、フィリアの首飾りに光は灯っており、入ってきた入口も通れるようになっていることから、確かにクリアしたことには違いないんだろうけど…

 

「…う~~~~~~ん…」

 

「どうしたの、唸ったりして…?」

 

「あまりにも歯ごたえがないというか、本当にクリアできたのかという実感が全然感じられなくてな。現実を上手く受け入られないというか…」

 

「……でも、良かったじゃない。これでまた…向こうに帰れるのに一歩近づいたんだよ」

 

 

「………それもそうだな。むしろ、何事もなくクリアできたことを喜ぶべきだよな。フィリアもお疲れ」

 

「…っ…!……うん、フォンの方もお疲れ」

 

何かを見落としているのではという思考が頭を過る…だが、それを証明する証拠は何もなく、フィリアの言う通り、今はホロウ・エリア攻略にまた一歩前進出来たことを喜ぶべきなのだろう。

 

…こういう時、キリトがいれば何か気づいたのかもしれない。ゲーム経験値が豊富なあいつだったら、俺が感じている違和感の答えを示してくれたかもしれない。

 

(ともかく…こうして何事もなくクリアできたのが幸いか)

 

そう思い、頭を切り替える…そして、ふと周囲の宝や武器の山が気になり、周囲へと目を向ける。ボス戦が終わったこともあり、そっちへと関心を寄せてもいいだろうと思っての行動だったのだが…

 

(…!あれ…宝の山やら武具たちが消えてる……ボス戦が終わったら、消滅する仕掛けだったのか?)

 

戦う前にはこれでもかと散在していたそれらが消えてしまっていたのだ。いつの間に…と思いつつ、消えてしまったものはしょうがないと思いつつ、期待していたであろうフィリアへと声を掛けようとしたのだが…

 

「…早く次に行こうよ、フォン。奥にまだ続く道があるみたいだよ」

 

「えっ……あ、ああ(フィリア…どうしたんだ?)」

 

戦う前とは異なる…どこか寂しそうな感じを覚えるフィリアが、まるで気にすることなく、先へ進むことを進言してきたのだ。

 

彼女らしくないその反応に戸惑いを覚えつつ、俺は置いて行かれないように慌ててついていく…だからか、先を行く彼女の表情を見ることができなかった。

 

…今にも泣きそうな彼女のその表情を知れていれば、あの後、何かが変わっていたのかもしれない。

 

 

 

「…ここが、ジリオギア大空洞か」

 

『深淵が見つめる武器庫』の更に奥…『グレスリーフの洞門』を超えた先に繋がっていたのは、底が見過ごせない程の深さを見せる空洞が特徴の新エリア『ジリオギア大空洞』だった。

 

そして、俺とフィリアと…奴の暗躍が大きく交差する運命の地における冒険が幕を開けようとしていたんだ。

 

 




えっ、まさかのボス戦あっさり終わり?(そして、さりげなくエリア名をオリジナルに変更しているという…まぁ、コボルトロードは序盤で出したので当然の結果なのですが)

ご安心下さい、ネタ切れとかではないです(笑)
そして、本作を長らく読んで頂いている読者の皆様はもう既にご理解しておられるでしょう…そうです、そういうことです(黒笑)
どういうギミックかはまたその時にお伝えしようかと思いますが…流石に今回のお話だけでは分かり辛いと思いますので、少しだけヒントをお伝えすると、
『武器の真価を発揮するために必要となってくるのは?』
といったところです。さてさて、どうなることやら…

さりげなくフォンの珍しい(?)失敗で少しだけ明るさを取り戻したと思いきや、やはりフィリアの心に差す影は大きく…

ということで、次から舞台は運命の大空洞エリア編へと突入していきます。
そして、次回…あのお話に…遂に訪れてしまうわけで…
一気にお話が動いていきますので、是非ともご期待頂ければと思います。

それでは!
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