奈落に落とされたフォンに意外な出会いが…?
案外、予想されていた方も多かったのではないでしょうか。
それでは、どうぞ!
P.S.ガンゲイル・オンライン2期来ましたねー。
10周年ファイナルPVも公開され、劇場版も楽しみですね。
それはそうとして、魔法科高校も来年新章スタートですが、とあるの新約はまだなのか…
(…フィリア、どうして…?!)
フィリアとあの男の姿が完全に見えなくなったところで、ようやく現実を理解できた俺は、心の中でそう問い掛けるしかなかった。
しかし、今や絶賛落下中であり、重力加速度によってぐんぐんスピードが上がっている。このまま落下すればただではすまないことは確定であり、地面が見えるのを待つように体勢を変える。
いつでも抜刀できるよう、背中の両手剣の鞘へと手を掛け、張り付く空気に負けることなく目を見開いていると、ようやく地面が見えて…!
「…!はあぁぁ!!」
両手剣単発ソードスキル〈サイクロン〉の軌道を描いた緑光の刀身が地面に激突し、遅れてやってきた衝撃が両腕を襲う。しかし、その甲斐もあって落下によって増していた加速は止まり、宙を一回転してから俺は地面へと不時着した。
「…ってて。樹海エリアのボス戦もだけど、まさかキリトが考えたトンデモ技に命を救われることになるとはな」
着地にまで気を遣う余裕はなく、左肩から落ちたせいもあり、ダメージによって違和感を覚える身体をなんとか起こしながら、思ったことを言葉にしていた。
『なぁ、フォン…高いところから落ちた時、地面にぶつかりそうになる直前、ソードスキルを放ったら相殺できると思わないか?』
ある日、突然そんなことを言われた俺は『何言ってんだ、こいつ?』という顔をしていたらしい…まぁ、同じことを思っていたが、少し興味もあって実験に付き合ったのだ。訳を聞いてみると、リズと素材を取りに行った際に、縦洞窟に閉じ込められた時の失敗から思いついたらしいが…
「両手剣の耐久値は…あんまりよくないか。当面は片手剣でいくか。落ちてきたところを登るのは…まぁ、無理だよな。そうしたら…」
大空洞エリアを探索していたのと落下時に相殺した影響で、両手剣の耐久値は半分を切っていた。装備を変えるついでに、ハイポーションをオブジェクト化し、一気に飲み干す…こうなると分かっていたのなら、回復アイテムをあのプレイヤーに半分与えたのは悪手だったかもしれない。
過ぎたことを後悔しても仕方なく、落ちてきた穴を見上げる…天井には届くわけがなく、登って戻るということはできそうになかった。そうなれば、取れる手段は一つだ。
(このエリアを突破して、転移石を探すしかない…早く戻って、フィリアを…!)
『…私のことを何も知らなかったのに……私のことを信じるなんて、簡単に言わないでよぉ!?』
「…っ!………」
すぐに戻り、フィリアを探さなければ…そう思った直後に、脳裏に蘇ったのは突き落とされる直前に突き付けられた言葉だった。
あの言葉が…俺の足を鈍らせる。
【今から追い掛けてどうする?また同じことを繰り返すのか?まだ分からないのか?お前が何かをすること自体があの子を傷つけることにしかならないと分かっているだろう?】
まるで自分の声ではない何かが頭の中に響いている…それが自分のものだと受け入れたくないのは、あの時のことを…忘れることのできない過去の過ちを思い起こさせるからだろうか。
…確かに、その言葉は正しいのだろう。間違ってすらいないだろう…だが、
…パン!
「っ…!よし…!」
ここで逃げるわけにはいかない…何も分かっていなくても、フィリアにあそこまで言わせるほどに苦しめたのは、俺に理由があるのもまた事実だ。
それから逃げることは…あの時、過ちを犯した時と同じように逃げるわけにはいかないのだ。今度こそ…間違ってはいけないんだ。間違いを犯したのなら、正すべく、取り返そうとするべく動かなければならない。
迷いと恐れを打ち払うように、頬を両手で叩くことで気合を入れ、俺はこのエリアからの脱出を図るのだった。
「…参ったな」
覚悟を決め、脱出を図ったのは良かったが…その意に決して結果がついてくるとは限らない。そんなことを実感しながら、俺は15分ほどエリアを彷徨っていた。
このエリア…正方形長の構造をした部屋が連続して繋がっているようで、部屋間を移動するとほぼ同じ風景が広がっているという、マッピングなしで攻略しようとすると確実に迷子になりかねない仕様になっていたのだ。
幸いなことに部屋ごとにポップする(というよりは、その部屋にいる)モンスターの種類がバラバラなこともあり、目印として利用することである程度の識別はできるのだが…問題はもう一つあり、出口が分からないことだった。
今回、このエリアにやってきたのはイレギュラー…あいつに突き落とされたことにより、エリアのどこかへと落ちてきたせいだ。そのため、そもそも出口…入口がどこにあるのか…いや、このエリア自体の広さの検討がついていないのだ。
マッピングしながら進んでいるが、現状は闇雲に答えを探しているようなものだから、時間が掛かるのもしょうがないが…そもそも出口があるのかという疑念もあったりする。こういう時に転移結晶が使えればいいのだが、ホロウ・エリアでは使えないというのもあって、倉庫ストレージに置いてきてしまったのだ。
焦りは危険だと分かりつつも、早く脱出しないといけない…しかし、先の見えない現状に同じことが頭の中を何度も巡る。10を超えた辺りから数えるのを止めた部屋巡りの最中、タゲってきたゴブリンナイトを返り討ちにして、次の部屋へと移動しようと…
「…!(戦闘音…?プレイヤーだよな…もしかしたら、エリアの出入り口を知ってるかも…)」
どこか流れ作業になっていたせいもあり、思考半ばで次の部屋に移動したため、武器がぶつかることで発する金属音で異変を認識した。戦闘音…モンスター同士が戦うことはほぼほぼないため、相手はプレイヤーだろう。
このホロウ・エリアで出会ってきたプレイヤー(フィリアを除く…現在、半信半疑のところだが)が碌な人物がいないので、期待しすぎるのはどうかと思うが…ひとまず、様子を見るべきかと思い、戦闘音のする方へと目を向けて…
「…なぁ…!……?!」
ピンチであったら助けに入るべきかと思い、視線を向けたのだが…戦っているプレイヤーたちを視認し、俺は思わず目を見開いた。絶句する光景というのはこういうことを言うのだろうか…そう表現してもおかしくない景色がそこにはあった…いや、いたと言う方が適切だろう。
(…ありえない……こんなことが、在り得る筈がない…!)
見ている物が信じられず…まだ何かに化かされていると言われた方が信じられるぐらいの衝撃を受けていた。どうして信じられないか…俺自身が、それはあり得ないことを知っているからだ。
数秒…思考が完全に停止し、その光景を見ていることしかできずにいた。だが、そんな間に、
「…きゃぁ!?」
「っ…!(…考えるのは後だ!まずは、助けないと…!)」
槍を装備していた彼女の悲鳴によって、ようやく俺は正気に戻り、頭を振るいながら思考を切り替える。考えたいことは山ほどあるが、まずは助けに入るべきだと、剣を抜き一気にトップスピードで駆け出す!
「突然で悪いが、加勢するぞ!」
「…!だ、誰だ、あんた…!」
スケルトン・ガードナー(スケルトン系統の重装備とモーニングスターが特徴のモンスターだ)の猛攻の前に、押されていたプレイヤーたちの合間を掻い潜り、一応一言を掛ける。MMOで横入りするのは基本的にマナー違反なので、助けるつもりでも声を掛けるべき(というキリトの教えだ)だが、返事を待たずに俺はモンスターへと接敵する。
リーダー各の彼の声を背中に受け、横薙ぎに振るってきた相手の一撃をスライディングで躱し、その勢いのままにソードスキルを発動させる!
「はあああぁぁぁ!!」
両足を斬り落とすように水平斬り、そこから重装備の隙間を狙い、残り3連撃を叩き込む!片手剣4連撃ソードスキル〈ホリゾンタル・スクエア〉…水色のライトエフェクトを宿した剣檄がモンスターのHPを大きく減らし、初撃によって足元を崩されたことで無防備となったので、
「今だ、止めを!」
「…!一斉攻撃だ!」
「「「おう!」」」「うん…!」
モンスターの背後に回る形で移動していたので、奴は俺へとヘイトを向け、反撃するべく振り返ったのだが…それは逆に彼らへと背を向けることになるわけで。硬直が解け、動けるようになったのと同時に、合図を出す!
俺の号令にチャンスだと察したリーダーの指示により、4人がそれぞれの武器でソードスキルを発動させ、一気に繰り出す。
俺のソードスキルで半分以上HPが減っていたのと、バックアタックによるダメージ増加によって、スケルトン・ガードナーはその身体をポリゴンへと変えた。
「…ふぅ(…さてと)」
戦闘を終え、振り払った片手剣を背中の鞘に納める…そこで一息を吐き、先程後回しにした思考へと頭を戻した。
ひとまず…助けたことで会話の切り出しはできたと思うが、ここまで近くに来ても、俺は未だに見ているものが信じられずにいた。
「…助けてくれてありがとう。えっと…」
「いや、気にしないでくれ。どっちかといえば、勝手なことをしたようなもんだしな…俺はフォン。君たちは……」
予想していたように、助けてもらったことで、彼らも俺に対しての警戒心を少し緩めていたようだ。そんな中、代表してリーダー各の彼が声を掛けてきたので、自己紹介と併せて返す。
逆に彼らの名前を知りたく、その意図を示す…もしかしたらと思っていることもあれば、予想が外れていることをどこか期待している自分がいた。それを確かめることにどこか落ち着きを覚えず、心音が酷く強くなっているような気がした。
そして、彼は自分たちのことを…
「俺はケイタ…俺たちは月夜の黒猫団っていうギルドだ。危ないところを助けてくれて、本当にありがとう!」
「っ…!?」
…ああ、やっぱりそうだ。
俺が彼を…彼らを忘れるわけがなかった。
その名を…そのギルド名を聞いた時、心中で受けたとんでもない衝撃を表情に出さなかった自分を褒めたいぐらいだ。
槍を装備した彼こそが、かつてキリトが一時期所属していたギルド『月夜の黒猫団』のリーダーであるケイタとそっくり人物だった。そこで、自らそうだと告げられたのだ…これで驚くなという方が無理がある。
そして、衝撃の次に襲ったのは…違和感だった。だが、そんな俺の混乱など露とも知らず、ケイタは他の4人を紹介していく。
「あんたもこのダンジョンにレべリングに来たのか?実は、俺もこの子…サチのレベリングでここに潜っていたんだ。ほら、みんな…挨拶しようぜ」
「テツオだ、あんた強いだな!」
「俺はダッカ―!よろしくな!」
「ササマルです。すごい戦い慣れてる感じでしたが…」
「サチです…さっきは危ないところをありがとうございました」
「…あ、ああ。気に、しないでくれ…(ヤバい、眩暈がしてきた…)」
あり得ない、あり得る筈がない…!そう頭の中では分かっているのに、現実としてこうも突き付けられてはどうすればいいのかが分からない。酷い頭痛と耳鳴りまでもがしてきたような気がしてならず、性質眩みそうになったほどだ。
そう、あり得る筈がないことを俺は知っている…この眼で見たからこそ確実に言える。
『月夜の黒猫団』は半壊し、ケイタとサチ以外のメンバーはモンスターに殺されたのだ。テツオとダッカ―に関してはキリトから聞いたが、ササマルがモンスターに殺された場面に俺は出くわし、そして、その瞬間をこの眼で見たのだ。
フィリアに裏切られたかもしれないという事実をぶっ飛ばすほどの衝撃だ…もしかしたら、自分は落ちた時に死んでしまった、もしくは気を失って夢でも見ている…などと考えてしまうくらいにだ。
そして、もう一つ…先程から感じていた違和感の答えだ。これについても、最初から答えは分かっていた。それは、ケイタとサチの態度だ。
『月夜の黒猫団』半壊後、ケイタはある意味で半壊の遠因となったキリトに半ば八つ当たりに近い言動をしたのだ。それも、俺が同席している際にだ。そんなキリトの知り合いであり、その場にいた俺に何の反応も示さないのがおかしいのだ。
いや、俺だって認識した時点で、憎悪や嫌悪感を示すものかと思っていた。だから、助けに入るのに迷いがあったのも事実だった。しかし、
「大丈夫か、あまり顔色がよくないみたいだが…」
「だ、大丈夫だ…長時間潜っていたから、少し疲れているだけだから」
悪勘定どころか、好意的な態度を向けられ、さっきまで感じていたものとは別の精神ダメージを受ける!もういつ膝を突いてもおかしくないような気がしてきた…!
「それは大変だ!良かったら、一緒に行動しないか?助けてもらってなんだが、俺たちもそろそろ切り上げようかと考えていたんだ。出口まで俺たちと一緒に行かないか?」
「流石、ケイタ!こんなに強い人が一緒なら確かに安心だな!」
「で、でも…さっき疲れてるって言ってたのに、そこまで甘えるのは…」
「だったら、恩返しとして俺たちがカバーしようぜ!5人よりも6人の方が絶対にいいって。どうかな、フォンさん?」
「え、えっと…俺は大丈夫だ。むしろ出口まで連れて…同行させてくれるというのは有難い話だ。こっちからお願いしたいくらいだよ」
ケイタとダッカ―が一方的に話を進めるものの、俺を気遣ってかサチが遠慮して制止しようとするも、ササマルも二人の意見に賛成らしく、テツオも反対する気はないらしく…多勢に無勢ということと、俺も問題ないという意思を表示したことで、サチの方も折れたらしく、
「…すみません。宜しくお願い致します」
そういうことで、俺は月夜の黒猫団メンバーと共に、このエリアの出口へと向かうことになった。
「やっぱり前衛のバランスを見直すべきだな。帰ったら、話し合いだな」
「でも、サチにそれをやらせるのは…ササマルどうよ?」
「武器によるかな…でも、軽い武器だといいんだけど」
「もしくは俺が重装備へと装備を切り替えて、タンクになろうか?片手棍スキルとしても相性いいだろうし」
(…今まで会ってきたプレイヤーたちとは全然違うな。会話の内容も普通だし…だからこそ、どういうことなのか意味不明なんだが…)
ケイタたちが通ってきた部屋部屋を戻る形で辿る最中、彼らの談笑を聞きながら、俺はそんなことを思いながら、ぐちゃぐちゃにこんがらがった思考に困っていた。
理解が追いつかないことはこれまでいくつかあったが(幻想剣とかホロウ・エリアのこととか)、これは歴代トップ2に入る事項だ。ちなみに、ナンバー1はもちろんこのSAO世界への転移だ、これを超える衝撃は絶対にないだろうと言い切れる、うん。
「その…ごめんなさい、フォンさん」
「…気にしないでいいよ、サチさん。俺としても、帰り道を探していた途中だから、有難い提案だったから」
そんな彼らを先頭に、疲れている(正確には大混乱していたせいなのだが)だろうという俺と、同じく疲労が大きいだろうということでサチさん(こうして話すのは初めてなので、なんとなく敬称付けになった)が最後尾にいたのだが、まだ気にしているらしく、小声で謝罪をされたので、苦笑と共に気にするなと返した。
「…(ジー)」
「えっと…どうかしましたか?」
「いや…ちょっと気になることがあってね(やっぱり、あの時の彼女と瓜二つ、だよな…)」
右目の下にある泣きほくろ…あの時、トラップに嵌り、窮地に陥っていた彼女とキリトを助けた時と同じ姿に、俺はまた頭を悩ませる。ジッと見ていたことにサチさんが首を傾げる横で、俺は確認してみようと思い、いくつか質問をしてみた。
「なぁ、サチさんたちは…月夜の黒猫団のみんなはいつからこっちに…ホロウ・エリアにいるんだ?」
「いつから…?えっと、いつからかっていうのは分からないですけど、そんなに短くはないかと。みんなともずっと一緒にいますし…」
「ずっと、か…なら、アインクラッドにはどうやって戻っているんだ?」
「えっ…どういうことですか。戻っている…?いえ、私たちはずっとここで活動してますよ?」
「(…?なんだ、今の違和感は…)えっと…なら、戻れずにいるのなら、帰還方法を探そうとは思わなかったのか?」
「帰還…?どこに帰るっていうんですか?」
「…!?」
その言葉を聞いた俺は思わず息を呑んだ。
俺の質問の意図が図りかねないとばかりに、そして、俺の反応を待たずにサチさんはとんでもないことを言い出したのだった。
「私たちはずっとここに…みんなと一緒にここにいるんです。ずっと…ずっとね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『あの人も……ここからは出られない。私もずっと…ずっとこうして…ずっと…』
その言葉と、フィリアの言葉がダブって聞こえた。それが当たり前だと…真実だと言わんばかりの言葉に、俺は何も言うことができずにいた。
(サチさんもフィリアも…何かの暗示に掛かっているのか。それにしては、断言しているというか…なんなんだ、この違和感は…)
これまで会ってきたプレイヤーにも感じてきた違和感…答えが出かかっているような気はするのだが、何か大事な1ピースが欠けているせいか、それに辿り着けないでいた。
こうなれば、とことん確認してみるべきだろう。そう思い、俺はサチさんにあることを尋ねることにした。
「…なぁ、サチさん。キリトって奴のことを知っているか?」
「…キリト?」
これまで明言を避けてきた…ある意味で彼女たちにとって、最も爆弾ワードであるあいつの名前を告げた。これで何かしらの反応があれば、彼女たちは俺が知る人物である可能性が残ることになる…死人である3人がどうしているのかという謎も残るわけだが。
そして、首を傾げて思い出すような動作のサチさんの口から出たのは、
「誰のことですか?全然知らない人だと思うですけど」
今、眼前にいる彼女は…月夜の黒猫団メンバーは、俺が知っている彼らとは違う可能性が高い…そう証明するに等しい答えだった。
「…いや、知らないのならいいんだ。そいつは俺の知り合いで、月夜の黒猫団の話をしていたことがあったから、もしかしたら、知り合いかもと思って聞いてみたんだ。変なことを聞いてすまない」
「…はぁ…?」
勘違いだったという俺の答えに、サチさんは頭上に大量のはてなマークを浮かべているかのように困惑していたが、俺は少しだけ事態を呑み込み始めていた。
『そのまま森の中を彷徨っていたら、突然誰かが目の前に現れたの……その人は………私だったの…』
(フィリアの言っていたことはおそらく本当のことだったんだ。彼女は、この月夜の黒猫団のような、もう一人の自分と遭遇した…でも、そうなると、次に問題となるのは、どうしてそんなことが起こっているのか、っていうことだよな)
彼女の言うことをきちんと信じるべきだったと恥じる一方で、次に問題となるのはそんな現象が起こっている理由だった。
それが分からなければ、フィリアと再会したとしても何も解決できないだろう。だが、残念なことに手がかりはないわけで…こういう時にキリトがいてくれればと思うが、残念ながらいないわけで。
ひとまずは管理区へと戻ってから、内容を精査すべきかと思い、俺は思考を一旦辞め、彼らの後を歩いていくのだった。
「出口まで同行してくれてありがとう。ここまででいいよ」
「そうか…危ないところを助けてもらった恩返しとしては安いものさ」
ケイタたちの案内のおかげで、30分も掛からずにエリアの出入り口へと辿り着けた。入口には転移石が設置されており、ここからすぐに管理区へと移動できる。
改めて礼を告げたところで、お安い御用といった形でケイタの方も返してくれた。ここでお別れということで、短いながらも同行したことで、一同は寂しそうにしていた。
「また近くに来ることがあったら、声を掛けてくれよな。その時は一緒に探索してくれると心強いからさ」
「…ああ、機会があったからな」
「それじゃ…俺たちもそろそろここから去るよ。またな」
その可能性は多分ないが…常套文句を返し、今度こそ彼らを別れようとした。ひとまず、彼らがいなくなってから、転移石を使って管理区へと戻ろうと…
「よーし、それじゃ、みんな!このダンジョンの攻略へ向かうぞ!」
「…はぁ…!?」
耳に飛び込んできた情報に、今、考えていた思考の全てが吹っ飛ばされ、俺は思わず素っ頓狂な声を上げる。
別れたことで、背を向けていた彼らの方へと視線を向けると、さっきここから去ると言った発言をしていたケイタが、一転して別のことを言い出したのだ。その発言に、他の4人もまるで違和感を覚えていない…普通だと言わんばかりに、ケイタの指示に乗っていた。
「ちょ、ちょっと待て!?もう帰るじゃなかったのか?」
流石にこれはどういうことかと思い、思わず口を出してしまった。そんな俺の言葉に、ケイタは…
「…?えっと、すみません…どちらさまでしょうか?」
「…はぁ!?誰って……何を…」
眉を顰め、首を傾げるその反応は…その言葉の通り、俺のことなど知らない…いや、忘れてしまったかのような反応だった。
予想していなかった返しに俺は思わずたじろぐ。数か月・数年単位で会ったことがなかったりすれば分かるが…まだ別れてから1分も経っていない中、これは明らかに以上だ。これじゃ、まるで…
「…っ!?(…そんな…まさか、そんなことが……いや、でも、そう考えれば…)」
頭に浮かんだ感想が…ある可能性を連想させた。それが、これまで足りないと感じていた疑念に対する1ピースなのではと思い、まさかと思いつつも、そう考えると納得がいくことが多いことに…俺は今度こそ開いたまま閉じられない口を隠すように手を当てていた。
「…ケイタ、その人、知り合いなの?」
俺の考えを裏付けるように…さっき一番話していたサチも同じ反応をしていた。
そう…まるで、クエストを終えたことで、関係をリセットされたNPCのように…プレイヤーではなく、そうだと言われた方が納得のいく反応を…彼ら彼女は俺へと向けていたのだ。
はい、まさかの月夜の黒猫団(?)登場でした。
キャラエピ キリト編でサチたちを出したのはこのための布石でした。
というのも、本作ではゲームと異なりユイがお話に絡めないので、フォンが真相に気づくための代用が必要だったわけです。
ゲーム自体にもサチはある理由でホロウ・エリアで存在してましたので、ある意味ではその流用でもありました、意外と予想していた方も多かったのではないでしょうか?
さて、彼らとの遭遇である可能性に思い至ったフォン(驚き過ぎて、最後の方とかサチへの敬称付け忘れてるぐらい)。
本話がきっかけ返信であるのなら、次回の探索回は解明編になります(まぁ、全部が解明されるわけではないのですが…)つまり、その次は遂に……
是非ともご期待頂ければと思います。
それでは、また。
黒蛇二等兵さん
ご評価ありがとうございました!