戦闘描写を挟むと長くなりすぎるので(苦笑)
ということで、引き続きフォンソロ回です。
色々なことが分かる回となります。
それでは、どうぞ。
「…やっぱり戻ってきてないか」
嫌という程に衝撃をくれた月夜の黒猫団…いや、そう呼ぶのも正しいのか怪しい彼らと別れ、転移石を使って管理区へと戻ってきたのだが…残念ながら、そこにフィリアの姿はなかった。
どこか予想していたとはいえ、現実として迎えると溜息を吐きたくなる。もっとも、今、会ったところで何を言えばいいのか分からないのだが…それでも、彼女が何故あんな行動を取ったのか、知る必要はある。
裏切られたと素直に受け取るべきか…それとも、あいつに騙されているのか。あいつなら…あの男ならやりかねないと思うのと同時に、後者であってほしいと願う自分がいたのも事実だった。
「ともかく…今はフィリアを見つけるのが先決か。考えられるとしたら、大空洞エリア…あんな大穴があったくらいだ。他にもあいつら好みの仕掛けがあるに違いない…急がないと…」
俺を罠に掛けた以上、奴にとってフィリアを利用する理由は一つなくなったも同然だ。もしも、他に利用する手がないのだとしたら…そんな嫌な予感を覚えつつ、急ぎアイテムの補充と装備のメンテナンスを終えた俺はコンソールを使って、再び大空洞エリアへと向かった。
「…転移石?でも、このタイプは確か…」
フィリアを探しに大空洞エリア…落ちたエリア『聖剣が誓いをたてた回廊』から『激しい戦いを繰り広げた神の間』というエリアを経由し、『ジリオギア大空洞 中部外縁』、そして、『ジリオギア階段遺跡』の1層へと下る形で探索していると、転移石を見つけた。
管理区やエリア間を移動するものではなく、浮遊遺跡エリアの浮遊塔で使用した砂時計調のものだった。ということは、短距離での移動を目的としたものになるのだろうが…
「ここまで他に道はなかったし、他も行きつくしている…あとはこの転移石の先に何があるか…鬼が出るか蛇が出るか…」
大空洞エリアの行けるところは行った…あと残っているはこの転移石の先のみだ。先が分からないことに冷や汗を搔きつつも、他に選択肢もないわけで…俺は覚悟を決め、転移石を起動させた。すると…
「…!……っ!なんだ、ここ…」
遺跡の風景から一変…視界を覆っていた転移の光が消え、飛び込んできた視界に俺は思わず言葉を失った。
前方には天井に遡る光の奔流、周囲は濃い水光のヴェールが縦横無尽に周囲を覆っている…滝と表現するの近いようで何かが違う気がする。ともかく、幻想的な光景というのが適切な気がする。
後ろにはさっき使ったのと対になる転移石、前方には光の奔流に連なる一本道。こうなれば、前に進むしかないわけだろう。
「…おっと。よく見たら、これ…機械、なのか?いや、少し違うな…メカニカルというか、人工物っぽいが、どこか人の手を感じないような気がする」
光の奔流に近づくと、その地盤が特殊なものであることに気づいた。
大空洞エリアは全般的に荒野というか乾いた大地といったものがほとんどだったのだが…光の奔流が起こっている場所を中心に鉄の地面が形成されていたのだ。それも人工物っぽい…精錬され過ぎれていると言えばいいのか。
そんなことを思いつつ、光の奔流へと近づくと…
『プレイヤーの到達を確認…上層へと転移します』
「っ?!」
どうやら光の奔流は一種の転移装置だったらしく、不用意に近づいたことを後悔する間もなく、システムアナウンスを耳にしながら俺は再び転移の光に包まれ、
「……おいおいおいおい」
突然の転移に少し動揺していたが、目を開けると…またしても驚きの光景が広がっていて、俺はそれしか言葉にすることしかできずにいた。
電子パネルと表現すればいいのか…そんなタイルがさっき俺を転移させた光の奔流…転移システムを中心に三つの通路を介して部屋の一部を侵食していたのだ。洞窟や空洞を人工物が侵食している…その表現が適切だと言わんばかりの光景に、俺は眩暈を覚えそうになっていた。
確かにホロウ・エリアはアインクラッドでは見たことのない光景が多々あったが、これはそれらを遥かに超えるものだった。『大空洞と人工物』という組み合わせなんて、一体誰が想像できたよ!?
(あ、頭痛くなってきた…)
早くも自身の受けた衝撃ランキングが更新されそうになったこともあり、痛みを覚える頭に反応するように、こめかみに手をやる。
『上層部へと転移しました。また、管理区に『情報集積遺跡』が登録されました』
「…!情報集積遺跡…また何かありそうなエリア名だな。上層ってことは、他にも層があるのか?この転移システムを使えば、移動出来たり…」
『現在、中層と下層へのアクセスはロックされています。解除するには、上層にて認証を完了してください』
「…まぁ、そんな上手くはいかないか。ロックの解除のためには認証が必要か。ロックマークが三つ表示されているってことは、認証が三つ必要ってことか。そして、この上層には三つの通路がある…ということは、通路の先に一つずつあるって考えるのが自然だろうな」
システムアナウンスが親切に事情を告げてくれたので、大まかに事情を察することができた。下に移動するには、ここで認証を完了させる必要があるようだ。
ここまで来た以上、とことんやってやると思い、俺は適当に選んだ一つの道を進み始めたのだった。
「…本当になんというか、ここは何なんだろうな」
『人工生命体格納庫』『不定形生物の実験場』と立て続けに認証を終え(各エリアに配置されているクリスタルが先端に付けられたロッドに触れたら、認証が完了した)、そして、最後のエリアである『生体遺伝子研究室』の認証も終わったところで、俺は周囲の光景になんとも言えない感情を胸に抱えていた。
三つのエリアは名前に反して全て同じ構造(あくまで構成がという意味であり、順路などは違った)なのだが、ザ・人工物という見た目が問題だった。
自然を全て排除したものと言っても過言ではない、オールメカニカルデザインのエリアに俺は自分がどこにいるのか分からなくなりかけていた…あくまで、精神的な意味でだが。
アインクラッドは自然豊かなエリアが多く、血盟騎士団がギルドを構えている50層『アルゲード』のような街の方が珍しかったりするぐらいだ。もっとも、この情報集積遺跡はそれを凌駕するものなのだが…近未来的という評価がふさわしいのかもしれない。
認証というのも確かにゲームっぽい気はするのだが、アインクラッドだと必要なアイテムをモンスターからドロップさせたり、NPCからもらったりして道を開くというのが基本的だったから逆に珍しさを覚えた(まぁ、ゲームをほとんどやってこなかったので、そこら辺の基準を知らないので、またなんとも言えないのだが…)。
とにかく、これで認証は全て完了したわけだ。問題がなければ、このまま下の層…中層・下層へと移動できるようになった筈だ。
『…認証を確認しました。中層・下層への転移が可能となりました』
「おおぉ…まさか下層まで一気にロックが解除されるとは」
早速転移システムのところへと戻ってみると、予想通り下へと転移が可能となっていた。それどころか、予想とは違い、中層だけでなく下層にまで行けるようになっていた。てっきり中層にてまた認証が必要と言われるかと思っていたのだが、いい意味で裏切られた。
「…せっかくだし、一気に下層まで行ってみるか」
基本的には順番に攻略していきたいところだが、今はそんなことを言ってる場合でもない。こだわりを捨て、俺はウィンドウに表示されている下層を選択し、そのまま転移の光に包まれる。
「流石に下層というか、完全に隠す気すら感じないか」
そういうわけでやってきた下層…入口から近未来的な壁や地面を見て、そんな感想が零れた。フロアを区切る構造も同じで、四方に連なる小部屋の扉のうちの一つを適当に選ぶと、上層でも同じだったように、自動扉のように壁が周囲へと動いて繋がった。
マッピングをしようとマップを表示するも、なんとエリア名が「???」と表示されていた。これはかなり怪しい…警戒を最大限に引き上げつつ、先へと進んでいく。
「というか、上層もそうだったが、やけにスライムが多いな。そういうフロアなのか?」
このエリアに足を踏み入れてから、モンスターはスライム系統しか遭遇しておらず、ここにもイエロースライムやグリーンスライムが小部屋に配置されていた。
レベルは結構下のようで、そう苦戦することはないのだが…いちいち相手にするのも面倒くさいので、隠蔽スキルを駆使して接敵しないように踏破していく。
「…おっ、ここは他と違って広いな。…!あれは…」
探索していき、最後の一部屋へと入ると…そこは他の部屋と違い、かなり広く、他にも繋がる扉が見当たらなかった。代わりにその中心にあったのは…
「コンソール、だよな。管理区に設置されているものによく似てるけど、あれよりも大きいな」
天然石に刻まれたかのように配置されたキーボード…拠点とする管理区でよく見ていた、しかし、あれよりも一回りサイズが大きいコンソールに、俺は触れてみる。
何の問題もなく、手元に操作しやすいサイズへとなったキーボードが表示された。コンソールが起動したらしく、特にトラップのようなものが発動する気配も感じられない。
とりあえず危険はないと判断し、警戒を解いた俺はコンソールを操作し始めた。こんなエリアにコンソールが置かれているのだ…何かあると考えていいだろう。
「といっても、こういうのってどう弄ればいいのか…管理区のコンソールは機能が制限されていたから、まだなんとかなったが…このコンソールは色々できるみたいだが、逆にどこをどうすればいいのか全然分かんねーな。こういうの、キリトの方が絶対得意だよな」
手元の電子キーボード(なんと表現すればいいのだろうか…三次元キーボード?立体キーボード?…正式名称が分からないので、キーボードと呼称しよう、うん)を少し操作すると、一気に物凄い情報が表示され、その内容がすぐには理解できず…俺は頭を抱えそうになった。
確かに授業などでパソコンを弄ったことはあるが、これはそういうので対応できるレベルじゃない、絶対!あれだ、こういうゲームを作る人が使うような専門的な奴だ、絶対!?
(キリト、助けてくれぇ!?)
ここにはいない相棒に、過去三番目にいてほしかったと心の中で叫ぶほど…しかし、叶わない願望をいつまでもしていても意味はないわけで、覚悟を決めるかのように歯を食いしばり、俺はコンソールの操作に挑戦を…
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「…(シュ~…)」
30分後、俺はコンソールに突っ伏していた。
久々に頭を使い、疲れと共に火照った頭を上げる気力はなく、接したコンソールが石のおかげが物凄く冷たく有難かった。頭と口から湯気が出てそうな気がする。この世界に来る前…勉強していた時でも、ここまで頭を使ったことはそう珍しくなかったと思う。
最初は四苦八苦してコンソールを操作していき、その度に訳の分からない情報が表示され、それを理解しようとしては、また違う情報が表示され…地獄のループを30分間繰り返して、今に至るわけだ。
ようやく顔を上げる気力が戻り、げんなりしつつもコンソールの操作へと戻る。地獄の30分間を経験したおかげで…おおまかにだが、コンソールの操作方法とか仕様を理解できた!英語はそれなりにできるのだ、コンソールの仕組みさえ理解できれば、なんとかできるのではと頑張った…とにかく頑張ったのだ!
(操作に慣れて分かったが、これはどうやら管理システムコンソールらしい。管理区に設置されているシステムコンソールとは違い、このコンソールはホロウ・エリアの管理システムに直接アクセスできるものらしい)
ようは管理システム専用のコンソールであり、管理区で使っていたコンソールは末端のものらしく、ホロウ・エリア各地への転移やマップ表示など最低限の機能しか使えない仕様だったらしい。
分かりやすく言うのなら、全ての機能を備えた完全版と、機能の一部を削って量産性を高めた汎用版といったところか?
(そして、何より驚いたのは…このホロウ・エリアはこのSAOの裏の世界…αVerといった形で以前使われていたものを、そのまま流用する形でSAOが正式サービスを始めた後も、新機能をテストする場所として稼働していた、ってことだよな)
管理システムへとアクセスできるということで、やはり気になったのはこのホロウ・エリアがどういった目的で存在しているのかということだった。エリアの情報に関するものを探していると、それはすぐに見つかった…『アインクラッド αVer』という名と共に。
かなり前…第1層を攻略している中、まだゲーム知識に疎かった俺はキリトにβテスターの意味を聞いたことがあった。小説では、正式サービス前にプレイしていた人のことを指すという認識でしか捉えていなかったこともあり、実際はどういう意味なのかと気になり、尋ねたのだ。
まぁ、キリトは酷く驚き、信じられないものを見ている目を向けられたが、快く教えてくれ、そのついでにゲームにはα版が存在することも教えてくれたのだ。βテストがプレイヤーにテストプレイをしてもらえるほどにゲームが完成している状態であるのに対し、α版はゲームのメイン部分が完成している開発段階を指すらしい。
ようは、多少の不具合やバグはありつつもプレイできるSAOと、戦闘だけはできるSAO…みたいなものと説明を受けたわけだ。
(といっても、このホロウ・エリアはα版の発展型…正式サービス開始後に何か不具合が起こった際に対処用のプログラムを構築したり、新要素を追加するために実験を行う場所みたいだけどな)
まぁ、そういうことを目的としている場所らしいと分かり、どこか納得している自分がいた。実際に笑う棺桶みたいなPK集団が、ゲームのシステムを何度も悪用してきたのだ。そういったことに対し、ゲームを管理する運営が対処する方法があるのは自然な話だろう…もっとも、茅場がゲームの支配権を奪ったせいで、ここの機能は本来の役目を果たせなくなってしまったのだろうが。
それに、新しい要素をいきなり導入することで何か不具合を起こすことを忌避して、こういったエリアで限定的に試しているのだとすれば、それはそれで理解できるものだった。
「浮遊遺跡で遭遇した飛竜も、テストの一環で生み出されたモンスターだったってことか」
今、思えば、浮遊遺跡のエリアボスがほとんど空中戦に等しかったのも、そういう理由だったのかもしれない。そう考えると、樹海エリアのボスや、ホロウ・エリアにやってきてすぐに遭遇したコボルトロードの強化体にも納得がいく。特に後者は、第5層のLAボーナスに酷似したアイテムを持っていたのだ。
もしもあの組み合わせが、第1層にて実装されていたとしたら…考えるだけどゾッとする悪夢に、俺は眉を顰めた。
「さてと、それなら次は……やっぱりここにいるプレイヤーのことだよな」
エリアに関して分かったところで、次に調べるのはこのホロウ・エリアにいるプレイヤーに関してだ。
自分の中でもしかしたらという答えは既に存在しているのだが、それを決定づける証拠がなく、断定することが未だにできずにいた。それと同時に、この管理区システムを使えば、フィリアが今どこにいるのか追跡できるのではと思ったのだ。
エリアに関する情報を閉じ、ホロウ・エリアにいるプレイヤーに関する情報がないか探っていく。あるとすれば、パーソナルと分類された項目の中だと思うのだが…そんなことを思いながら、システムを漁ってくと、
「…もしかして、これか。ホロウID…?」
『Hollow-ID』…そんなタイトル付けをされたデータを見つけ、コンソールを通して表示させる。俺が見ていたシステム画面に新たなものが表示され、リストが一気に列挙される。
「プレイヤーの名前とIDってところか………「Asuna」?これって、アスナのことだよな。えっと…右に記載されているのが、ログイン状況…じゃない、エリア出現の有無?」
適当に上から眺めていると、知り合いの名前…アスナの名前が見つかり、その情報を見ていると、色々と〇やらステータスやらアルファベットが名前の横に表記されていた。どうやらリストだけでなく、表としての管理機能も備えているらしく、上部に項目の題目が付けられていた。
その中でも気になったのは、『エリア出現の有無』という表記だった。
他にも知り合いの名前を探してみると、キリト、クライン、エギルさん、アルゴさん、リズ、シリカ、シグさん…俺が知っているプレイヤーの名前は全て乗っており、そのどれもが『エリア出現の有無』が〇となっていたのだ。
「…あの月夜の黒猫団の5人の名前もある。それに、出現中になってる………もしも、俺が考えているとおりだとすれば、リストの項目にあれがあるはず…」
そして、いるはずがない月夜の黒猫団の面々の名前も見つけ、俺は少し思考を巡らせる。それで、もしもこの推測があっているとすれば、このリストのあれらがある筈だと思い、リストを右に動かしていく。
英語で表記されたそれらを読み取っていき、探していたものの一つを見つけた…それが思っていた通りだったこともあり、俺は口にしていた。
「…2022年11月6日…やっぱりな。そういうことなら、納得がいく。それなら…」
あくまで俺の推測の元に成り立っている考えだが、この日付が全てのプレイヤー…いや、ホロウIDを持つこのエリアにいるプレイヤーに記録されているのなら、おそらく概ね間違っていないだろう。
そして、そのすぐ右横にある項目…ほぼ全てのプレイヤーがそこには何も記入されていないが、ただ一人…リストを下に移動させ、その人物の項目を表示させると、彼女のデータだけ表記がされていた。
それだけではなく、他のプレイヤーと異なり、彼女の項目は赤く色づけされており、ステータスもエラー表示になっていた。
『Philia Status:Eroor』
(………………!そういうことだったのか…)
エラー表示がされている原因を知るべく、フィリアのデータを見ると…内容を読み取り、俺は息を呑む。どうやら、かなりややこしいことが起こったせいで、話が拗れてしまったようだ。
だが、これならば、フィリアの誤解を…彼女が抱えている問題を解決することができるかもしれない。
(…問題はフィリアにどうやって接触するか、だよな。あいつが近くにいるとすれば、こっちの話を信じてもらえるかは…いいところいって半分あるかぐらいだからな)
解決方法も分かったが、次なる問題はそれをどうやってフィリアに信じてもらうかだった。このリストを見せれば、フィリアを納得させることはできるだろうが、問題はそれをどうするかなわけで…
あいつがほぼ偽物だと同時に分かったが、精神的に不安定であったであろうフィリアを誘導したほどだ。下手をすれば、俺の主張を信じてもらえない可能性だってある。
(…それでも…やってみないと分からないか)
こういう出たとこ勝負というのはできることなら避けたいのだが…時間的な余裕を考えれば、そうも言っていられない。
このコンソールの探索に結構時間を要してしまった…時間が経てば経つほど、手遅れになる可能性が高くなる。
「どうやらこのプレイヤーリストには現在所在地も記載されているみたいだな……フィリアはエラーが出ていて表示されないが、もしもあいつと一緒にいるのなら………このエリアの中層…この上か…!」
フィリアと同じ英語の頭文字…すぐに見つけたその名の所在地に、思わず上を見上げる。さっきの転移システムを使えば、すぐに移動することもできるだろうが…念のために、中層に関する情報を調べる。
偽物といえど、もしも奴とよく似た存在だとすれば、何かしらの仕掛けを施していてもおかしくはないのだ。その懸念は当たり、
「…特定のプレイヤー以外、中層への転移ができないようロックしてやがる。おそらく、このコンソールを見つけた時に、そうしたんだろうな。おまけに大空洞エリアのボスへの道までもロックを掛けてやがる。
解除は…こっちも特定のプレイヤーにしかできないようにしてるか。どうすれば……うん?これは…」
中層とエリアボスがいるエリアへの立ち入りを制限するよう設定がなされているのを見つけ、思わず歯噛みする。面倒なことをやってくれると思い、どうすればと思っている矢先だった。
『アクセス権限を確認しました。該当者、ユニークスキル「幻想剣」ホルダープレイヤー…イレギュラー2022110610001に対する緊急対応にて作成したプロトコル…本件エラーへの緊急対応に、該当プレイヤーを対応策として招待…管理システム、該当プレイヤー情報を完全承認。一部のみ権限付与していた機能を完全開放します………解放しました、これより、テストプレイヤー『Phone』を上位テストプレイヤーと認定します』
「これは……紋章が変化した…?」
いつも聞き慣れたシステムが流れたかと思えば、表示されていたシステム画面が一気に動き出した!いくつものウィンドウが消えては表示されてを繰り返し…高速でプログロムのようなものが列挙されていき…そして、全てが終わった時には右手に浮かんでいた紋章が光り、その形を変えていた。
これまでは下を向いた鍵のような紋様だったが、基点となる丸印は同じだが、鍵の数が増え、左右斜め上に二つ…計三つの鍵の紋様が右手に表示されていたのだ。
『上位権限により、ホロウ・プレイヤーが実行した行為を無視し、設定し直すことができます。実行しますか?』
「…ったく、そういう便利機能があるのなら、もっと早く実装してくれよ。もちろん、答えは…」
エラーか何かが原因だったのか、管理システムにアクセスしたことで、できることが色々と広がったのだろう。それを検証をする時間は残念ながらなく…すぐさま、『実行しますか』の問い掛けに、『Yes』の選択肢を選ぶ。
『上位テストプレイヤー権限の行使を確認…中層エリア等の封鎖を解除しました』
(よし…エリアの封印をしたことで、奴は多少油断をしている筈。今から向かえば、おいつけるかもしれない)
システム画面を全てとじ…念のため、コンソールのアクセス権限をロックしておく。奴と入れ違いになったり、もしも他のプレイヤーにもこのコンソールのことを教えていたりすれば、やっかいなことになる。
俺以外はアクセスできないようにし…すぐさま部屋を飛び出し、転移システムへと向かう。
(待ってろよ、フィリア…!)
転移システムで行先を中層へと選択し、俺はフィリアの元へと急ぐのだった。
頑張れば、色々できるんです、うちの子(笑)
アリシゼーション前半で、フォンがコンソールの操作に慣れていたのはこれが理由でした。
さてと、少し解説という名の補足を。
第2話にて、探索権限がフォンに付与された際、システムメッセージがバグっていたことを覚えていますでしょうか?
あれはエラーにより、実際は権限が不十分にしか与えられていなかった状態を暗喩していたのです。
そして、そのエラーの解決方法として呼ばれたフォンが、正式にホロウ・エリアの管理システムへと今回のコンソールを通してアクセスしたことで、本来の形にてアップデートされたわけでした。
まぁ、その辺りのお話は次々回にするとして…
次回は遂に奴との対決回になります!久々の激怒回になることかと…(まぁ、当然といえば当然なのですが…)
是非ともその結末にご期待頂ければ幸いです。
それでは!