ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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タイトルは7つの大罪の方を指すのであり、決してどごぞの機関名ではありませんので、ご注意を(苦笑)

さぁ、ある意味で本章の重要回にもなる奴との激闘回です!

それでは、どうぞ!


第20話 「ラースを纏いし幻鬼」

「どういうこと!?話が違うじゃない!」

 

ある一室にて響く声…怒りを露わにした罵倒を前に、それを受ける男はいかにも悪かったという態度を出すも、そこに謝罪の意を感じさせるものはなかった。

 

「…あ~、言ってなかったかぁ?俺はてっきりお前さんもあの穴の下に何があるのかを知ってて、協力したもんかと思っていたがぁ…」

 

「っ…!約束したじゃない!私があんたに協力する条件として、フォンが死ぬようなことはしないって!それが協力する条件だって……だから、私は…!」

 

中層の一画…男に連れられ、戻ってくるまでここにいることを命じられた彼女…フィリアは戻ってきた男に協力関係の清算を迫っていた。自分がしたことがどれだけ酷いことかを…自分のことを信じ、とても心配してくれていた相棒を裏切ったことに対する罪悪感から、すぐに彼の元へと向かいたいと思っていたのだが、その心をこの男…悪魔の名を持つこの人物は、一言によって踏みにじったのだ。

 

「ああぁ、言い忘れたなら悪いなぁ!あの奈落に何人ものプレイヤーを落としてきたがぁ、そういや誰も帰ってこなかったことを言ってなかったか…まぁ、例にも漏れず、あの正義の味方気取りもとっくにくだばっているだろうよぉ。本当にお前さんはいい仕事をしてくれたよぉ…!」

 

「っ…この嘘つきやろう!」

 

「嘘つき呼ばわりは酷えぇな…だから、伝え忘れたのを悪いと思ったから、今伝えてんだろう?そういうお前さんだって、あの野郎に隠し事をしている癖に…自分のことを棚に上げて人のことを責めるのはお門違いじゃないのかぁ?」

 

「…そ、それは…」

 

「…いいね…いいねぇいいねぇいいよ!!その泣きそうな顔、最高にそそるぜぇ!」

 

「(っ…?!ダメ、今はこいつに構ってる場合じゃない…!)…フォン、今行くから…!」

 

 

「あ~~~~~~~~、ちょっと待てって、焦るなよぉ」

 

自分が完全に騙されたのだとようやく知ったフィリアは慌てて、フォンが落ちた奈落があるエリアへと向かおうとするも…その様子に全く慌てることなく、男は行く手を塞ぎながら、フィリアの行動を阻害する。

 

「あの正義の味方様はお前さんよりも強いんだろう?だったら、きっと大丈夫さぁ…まぁ、そんな面倒な奴を始末することを手伝ってくれたお前さんに、ほん~とうに感謝してるんだぜぇ……ありがとうよぉ!!」

 

「っ!?お前ぇぇぇ!?」

 

歪な笑み…自身の狂気と喜びをこれでもかと体現するかの笑みを浮かべた男の言動に、ついにフィリアの怒りも限界を迎えた。怒気を爆発させながら、短剣を抜くも…

 

「おっと!そんな怒り任せの攻撃が…当たるかよぉ!」

 

「…!がぁ…?!」

 

大振りの一撃を避け、カウンターと見舞った膝蹴りがフィリアの腹部へと吸い込まれるように入る。急所への一撃にフィリアは短剣を取り落とし、そのまま僅かばかりだが後方へと蹴り飛ばされた。

 

「いやいや、お前さんに感謝しているのは本当なんだぜぇ?だから、こうして、お前さんだけは助けてやろうとしてるんだからよぉ…これで、最高のPartyを開くのに、余計な心配をしなくて済むんだからな」

 

「…パー、ティ…?あんたの…目的は、何なの…?」

 

気になるワードが出たことに、痛みに堪えながらなんとか言葉を発するフィリア…それに対し、本当に上機嫌になっているせいか、口が軽くなった男はその問いに答え始めた。

 

「SAOをクリアされたら『ホロウ』は消える…今や表の世界として成り立っている世界が消えるのなら、実験場であるこの裏の世界が消えるのも事実だろう?

でもでもでも~、お前ぇのおかげで、俺は永遠に殺しを愉しめるようになったんだよぉ!」

 

「永遠に…殺しを愉しむ…?言っている意味が分からない…!」

 

「まだ分からねぇのか?全部お前ぇと俺で選んだんた…愛しの正義の味方様を罠に嵌めて殺したのも、人殺しを永遠に楽しめる世界にするのも!あの正義の味方様だけが、Partyを止めることができたかもしれないのになぁ!!

そうだ…全部!全部!ぜぇぇぇぇんぶ!!俺と!…お前ぇで選んで決めたことなんだよぉ!!」

 

「違う!違う違う違う違う……」

 

その言葉が真実だと…全てがフィリアの選択の結果のせいだと言わんばかりの言葉に、フィリアは拒絶しようと頭を振るう。だが、男はそれすらも予想通りだと言わんばかりに、フィリアへと甘言を囁く。

 

「歓迎するぜ、ラフィン・コフィンはお前ぇのような性根の腐った腐った…殺人者をよぉ…さぁ!オレンジ同士、仲良く人殺しを続けようじゃねぇか!!」

 

「お前とは違う!…違う、よ……私は……わたし、は……」

 

「あぁ?…ど~~~~~した?殺すの愉しくないのか?なんで、楽しそうじゃないんだよ………はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 

だが、フィリアはその言葉すらも拒絶し…当てが外れたと言わんばかりに、男は大きなため息を吐き、

 

「愛しの男を殺しておいて、違うとはよく言いやがる!お前と俺は同種!!同じ穴のムジナ!!人を殺すことこそが、生業なんだよぉ!!」

 

「ぐぁ……がはぁ?!」

 

フィリアの頬を叩き、そのまま倒れ込んだ彼女へと追撃の蹴りを見舞う男の態度は荒れ狂っていた。さきほどまで冷静と狂気を振りまいていた様子は消え、まるで自分が否定されたことに対する怒りをぶつけているかの行動だった。

 

「…ち、がう……わたし、は……そんなこと…して、ない……」

 

「まだ言いやがるか…殺しが愉しくない?そんなわけねぇだろうがぁ!?ここはSAOだぞ!よくねぇよ、そういうのはよくねぇよ…てめぇで始めたことを途中で放り出して、自分は何も関係ないと言い張るが一番よくねぇ…そういうのは駄目だって、親や学校に習っただろう?習ったよなぁ!?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

言葉だけでなく、倒れ伏したフィリアの頭を何度も叩きつけながら、男は彼女の心を責め立てていく。抵抗することも…遂には言葉すらも発する気力がなくなってしまったフィリアのHPがどんどんと減っていき…蹴り飛ばしても反応が薄いことに、男は呆れ切ったらしく、

 

「…あぁ~…つまらねぇなお前。もっと女の子らしく可愛く泣き喚くとか、リアクションを期待したのになぁ…残念残念。お前ぇは使い物にならなさそうだから、もういいわ」

 

そう言って、フィリアの服を掴み持ちあげた男は…巨大な包丁を模した短剣を抜き、フィリアの首元へと近づけ、その刃を押し当てる。

 

(わたしは……ただ、フォンと一緒に…いたかっただけなのに……一緒に生きていたかっただけなのに……やっぱり私が間違ってたの…あの時、私を殺した時から…あの時、フォンを裏切ったから……私が、罪を犯したから……)

 

少しずつ首に押し当てられていく刃を前に…フィリアは自信が抱えていた願いと罪悪感を心の中で呟いていた。自分の願いを…理想を叶えたいと思っていた相手の顔が浮かび、イエローからレッドへとHPが減少したことで、自身の最期を悟ったフィリアは最後に心の中で呟く。

 

(……ゴメンね、フォン……)

 

その言葉を合図にしたかのように、包丁がフィリアの首を斬り落とそうと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はあああああああああああぁぁぁ!!」

…ガキィン!!

 

その刃が押し込まれかける直前、部屋を闘気と殺気が支配した瞬間、声と共に金属音が響き割った。

 

それと同時に掴まれていた自身が突如として開放され、宙へといたフィリアの身体が地面へと落下した。何が起こったのか…落下した衝撃から復帰し、目を開けたフィリアの視線に映っていたのは…

 

「…て、てめぇ…!」

 

響き渡った金属音は、フィリアの首元へと迫っていた包丁を片手剣によって弾き飛ばした音、男が悪態を吐いたのは乱入した邪魔者の正体を捉えたから…そして、フィリアの眼前に立つその人物の姿は…フィリアが最期を覚悟し、顔を思い浮かべ、想像していた人物その人で…

 

「……フォ、ン…?」

 

「よぉ、フィリア…どうやら、なんとか間に合ったようんだな」

 

蒼鱗の鎧である『蒼炎の烈火』に、赤の宝珠が柄と柄頭に装着された片手剣『ログ・マルコス』を抜刀し、男からフィリアを守るよう立ちはだかる…何度も見てきた筈なのに、今ここにいることが信じられないでいるフィリアの呼びかけに…

 

フォンは纏っていた殺気と闘気を一旦収め、笑みを浮かべてフィリアの方へと振り返り、そう応えるのだった。

 

 

 

 

(急いで下層から直行してきたが…どうやら、最悪の一歩手前だったらしいな)

 

中層へと転移できるようになって、すぐに探索を始めたのだが…少しして、右手の紋章と同じものが刻まれた壁を見つけた。そして、権限を使い、開いた壁の先に見えたのは…あいつがフィリアの首元へと武器を押し付けているという最悪の光景だった。

 

すぐさま片手剣を抜き、フィリアを奴の魔の手から救ったが…到着があと少し遅れていたらと思うと、ゾッとした。

 

「フォン…どう、して…?」

 

まるでお化けを見るかのような目線を向けるフィリアに、俺は苦笑しながらも目を合わせる。

 

「ちゃんと足も2本あるから幽霊じゃないぞ。言っただろう、フィリアがちゃんと帰れる方法を見つけてやるって」

 

「でも……私は、フォンを裏切って……殺そうとしたんだよ…?」

 

「『何も知らないのに、信じるなんて言わないで』」

 

「っ…!?」

 

「それを聞いて、俺が君にちゃんと向き合ってなかったことを痛感した…だから、君があんなことをしたのにも、何か理由があるじゃないかって思ってた。だから…言いたいことも、聞きたいことも双方にあると思うし…フィリアが苦しんでいる理由もそれを解決する方法も分かったから……もう一人で何もかも抱えなくていいんだ」

 

「…ごめん、なさい……ごめんなさい、フォン!私…」

 

「もういいんだ。俺はこうして生きてるし…さっさとこんなところから出て、二人で帰ろう」

 

限界だったのだろう…信じていたように、フィリアも裏切りたくて裏切ったわけではなかったのだろう。俺の言葉に、フィリアは涙をこぼし、嗚咽を零していた。その姿に安堵していると、拍手の音が聞こえてきて…

 

「美しいことだなぁ……あ~~~~~~~~、吐き気がする。正義の味方様はどうしてそういう心の広いことができるのかなぁ、理解に苦しむぜぇ」

 

「理解に苦しむのはこっちもだよ。フィリアが抱えている苦しみを利用しやがって…この屑野郎…!」

 

あたかも面白くないというリアクションを言動にて表す奴に、俺も引っ込めていた怒気を放ち、けん制する。腸が煮えくり返るというのはこのことを言うのだろう…なんとか怒りに呑まされそうになる思考を保つ。

 

「はっ!なかなか言うじゃねぇか…もうすぐ死んじまうとはとてもとても思えない」

 

「なに既に勝った気でいやがる…俺は今にでもお前を叩き斬ってやりたいぐらいに殺意を抱えているんだぞ。それが分からないのか?」

 

「おおぉ、怖い怖い…まぁ、何も知らない奴は幸せというやつかなぁ?」

 

「偽物の分際でよく言う…たかが本物と同じ恰好・武器を使っているだけの虚像が、いくら本物の姿や言動をしようと別人だ…そうだろう、PoH…いや、ホロウのPoHと呼んだ方が正しいか?」

 

「…えっ……偽物…?」

 

いまいち会話が成り立っていないが、どうやらまだ何か仕掛けているらしい。そんな奴の…PoHの態度に違和感を覚えつつ、まるでそうだと振る舞う奴の正体を告げると、背後にいたフィリアから驚きの声が上がった。

 

「……偽物、ね。おいおいおいおい、お前さんとは初対面だろう、あっちでも出会ったことがなかったのに、俺が偽物か本物かの区別がつくのか?」

 

「確かに外見もそっくりだし、お前の言う通り、俺たちはアインクラッドじゃ一回も遭遇したことがない。それでも、お前がホロウ・プレイヤーであることは分かってる…もしも、俺が知ってるPoHならば、赤眼のザザやジョニー・ブラックのことを放置しているわけがないからな」

 

「…ザザ?ジョニー・ブラック?……俺がそんな仲間思いの善人に見えるのかよぉ?」

 

「まさか…だが、あいつらはお前の指示がなくとも、好き勝手にやる連中だろう?いいのか…このホロウ・エリアであいつらの思うがままにやらせていたら、お前の楽しみとやらが減るんじゃないのか?」

 

「…ふん、俺の把握してねぇ連中の行動なんざどうでもいいさ。あいつらがこの実験場で何をしようが、知ったことじゃ「かかったな」…!」

 

「ザザもジョニー・ブラックも確かに『笑う棺桶』の幹部で、お前とよく行動を共にしていた連中だが、あいつらがこのホロウ・エリアにいると本物のPoHが言うはずがない…だって、その二人は少し前に行われた討伐戦で第1層の黒鉄宮に牢獄送りにしたんだからな」

 

「…あっ!」「…っ?!」

 

挑発に乗る形で仕掛けてみたのが…どうやらまんまと引っ掛かってくれたようだ。そう…ジョニー・ブラックは俺が、赤眼のザザも他のプレイヤーによって捕縛されたのだ。

 

『笑う棺桶』討伐戦実施から既に結構な月日が経過している…あの場にはいなかったPoHだが、その情報を得ていないのはおかしい。そして、今、目の前にいるPoHはそれを知らないということは、

 

「お前はこのエリアから出たことがない…PoHのプレイヤーIDとデータを基に作られた、もう一人のPoH…ホロウ・プレイヤー…それが、お前の正体だ…!」

 

「ホロウ……プレイヤー…?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

看破されたことで、ホロウのPoHから表情が一気に抜け落ちる…今まで発していた感情が嘘のようになくなり沈黙する一方、情報の多さにフィリアが若干追いつけてないようだった。

 

「…ククッ……アハッハッハッハッハッ!やっぱりお前は面倒な存在だったようだなぁ!消すことを考えて正解だったよぉ!そこまで自信満々に策を仕掛けてきたってことは…お前もあのコンソールを使ったんだな!」

 

「…なるほどな。どおりでホロウ・プレイヤーにしては行動の方向性がしっかりしていると疑問だったが、お前もただのホロウ・プレイヤーじゃないみたいだな」

 

「それが分かったところでどうする?もうPartyの準備は完了した…誰も止めることなんてできない、お前さんでもな」

 

「パーティって…抽象的なことばかり言ってないで、さっさと話せよ。そんな風に言うってことは、お前がやろうとしていることが大がかりなもので、一人でも多く知ってもらいたいんだろう…悪趣味な奴め」

 

「…まぁな。お前さんが、俺のい~っちばん気に食わないタイプであっても、やっぱPartyにはお客様がいないとつまんねぇだろ?」

 

こんな狂人となんて必要最低限ですら話してなどいたくないが…奴の会話に気になるものがあり、俺はその詳細を語るように誘ってみた。すると、奴は喉に装着していた何かを外したかと思うと…

 

「…オホン…やっぱりこっちの声の方が俺らしいな」

 

(…!声を変える装備品…そんなものがホロウ・エリアにはあったのか)

 

PoHの声を聞いたことはなかったが、年相応の低重音のある声へと変わったことで、これこそが本物のPoHと同じ声なのだと思った。アインクラッドでは姿や声を同時に変えるエクストラアイテム(作り方も条件も素材もかなり高度なものが求められるアイテム)があるが…声だけというのは今まで見たことがなかったので、少し驚いた。

 

「ある日、突然のことだった…いつものようにこの虚ろな地を彷徨っていた時、俺の頭の中に何かが響き渡ったのさ。俺は、それを天啓だと理解し…そして、ビビっときたんだ。な~~~~~~~~~~~~なんもなく殺してたホロウの俺様の心にビビッとなぁ…それからは、そりゃ~そりゃ~楽しかったぜぇ…!」

 

(ホロウ・プレイヤーであっても、殺しを楽しんでいるとか…本当に狂人だな。いや、本物の行動を模倣するように設定をされていたのか…月夜の黒猫団の彼らもそういった感じだったからな)

 

本物と変わらない狂い具合に心の中で舌打ちしつつ、どこか納得もしてしまった自分がいた。ホロウ・プレイヤーの設定は、本物の行動に準拠しているのではという予想が浮かんだのだ。

 

「でも、それと同時に自分の本当の欲望を理解しちまったのさぁ…!俺が殺したいのはモンスターでもNPCでもない、プレイヤー…人間だってなぁ!人を殺すのって快感だよなぁ…ホロウだって死ぬ間際はちゃんとイイ表情するんだぜぇ…しかもよ、あいつらを狩りまくってたら、Surpriseなプレゼントがきたんだよぉ」

 

「…!(俺の右手にあったのと同じ紋章…あいつも高位者テストプレイヤー権限を持っていたのか)」

 

狂った思考を耐えながら聞き続けていると、奴が右手の甲を見せてきて…それを見た俺は驚いた。奴の右手には、転移石と同じ…俺の右手にも少し前まで刻まれていた紋章があったからだ。

 

「それでだ…管理システムへと繋がるあのコンソールを調べてたらよぉ、この世界がなんなのか知っちまったわけ…ついでに、そこのフィリアちゃんのこともなぁ~…まぁ、俺が誰で、誰がホロウとか、正直誰かを殺せればどうでも良かったんだけどよぉ…お前がこの世界に来やがったのさ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「ゲームクリアなんかされたら、この世界の消滅共に俺が消えちまうじゃねかぁ?だからさぁ…永遠の楽園を作ることにしたんだよぉ。この権限を使ってよぉ、ホロウ・データでお前らの世界をアップデートしちまえばいいってなぁ!」

 

「…ホロウ・データのアップデートだと…?」

 

「フォン、あいつ…何を言ってるの…?」

 

語っていく内に饒舌になるPoHの口から出た言葉に、俺とフィリアは困惑する…だが、それが禄でもないことであることは直感で理解していた。

 

「ホロウだけの世界になれば、俺は永遠に人殺しを楽しめる…何回でも、どんな手段でも、思うがままになぁ!!最高にCoolじゃねぇ?」

 

「…!貴様…そんなことをしたら、アインクラッドにいるプレイヤーたちがどうなるか、分かって言ってるのか?!」

 

「分かってるさぁ…だが、お前は分かってねぇなぁ~。本当の俺って、俺のことだろぉ?」

 

「…はぁ?お前はホロウだ「そういう話じゃねぇんだよぉ!?」…っ?!」

 

「なんでアインクラッドの俺を生かして、この俺が消えなきゃいけねぇんだよ…おかしいじゃねぇか…俺が、俺こそが楽園を作ろうとしているのに…どうして、オリジナルから作られたからといって、あいつを生かすために消えなきゃいけないんだよ…そうだろ?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

PoHの主張は…少しだけ理解も同情もできた。

 

確かに…ホロウ・プレイヤーだからといって…アインクラッドにいるプレイヤーを基に作られたとはいえ、生きていくかどうかを決めるのは彼らにあるべきだと…俺も思うところがある。

 

…だが、それはあくまでも本物のPoHと、ホロウのこいつとの間における話に関して、理解ができるというだけだ。

 

「…多分、アインクラッドのお前も同じことを言うんだろうな。自分の欲望や狂気のために平然と他人の命や権利を踏みにじる…お前には同情する。けど、お前のそんなくだらない計画のために、他の全プレイヤーを巻き込むのは…あの世界で贖い続けている人たちの全てを無下に帰す行為だ!悪いが…思い通りにはさせない!」

 

「……あぁ~…やっぱり、こうなるかぁ…お前が最大の障害となる気がしたから、早々に始末したかったんだが…やっぱりさぁ。重要なことは自分でやるもんだよなぁ、うん…他人に任せずに俺がちゃんと殺さないとダメだったよなぁ~」

 

俺の反応に、PoHは嫌気を一切隠すことなく…話は終わりだとばかりに、右手に持っていた包丁によく似た魔剣…『友切包丁』を構えた。

 

対する俺も片手剣を何時も繰り出せるよう、戦闘態勢へと意識と共に身体を身構える。

 

「…さぁ、大事なPartyの前哨戦だぁ!愉しい叫び声を聞かせてくれよ!正義の味方様よぉ!」

 

「お前を楽しませる声なんてあげるどころか、楽しませるつもりもない…!悪いが、俺も結構頭にきてるんだ…フィリアの心を揺さぶって利用したお前を……俺は絶対に許さない!」

 

「ククッ……いいねいいね!さぁ、It’s Show Time!!」

 

その言葉と共に、俺とPoHが駆け出したのはほぼ同時だった!

 

駆け出した勢いのままに振るった互いの獲物がぶつかり、鈍い金属音が響き、俺たちはすれ違う。そして、振り返りざまにすぐさま獲物をぶつけ合う!

 

「っ…!」「アハッハッ!」

 

言葉を発することなく片手剣を振るう俺と、狂気の笑みを零しながら魔剣を振るうPoH…相対的な態度のぶつかり合いと共に剣檄によって金属音が鳴り響く!

 

だが、ぶつかり合いが拮抗していたのは序盤だけだった。

 

「ちぃ…こいつ…!?」

 

「…遅い!」

 

振るった片手剣に押され、またしても後退ったPoHの悪態が零れるように口から出て、俺は追撃の手を緩めずに剣を振るう!

 

確かに魔剣『友切包丁』の対プレイヤー特化能力は脅威だ…しかし、どうやらホロウのPoHと俺とではかなりレベルの差があるらしく、何度か撃ち合っただけで、それが顕著になりつつあった。

 

俺の一撃を、魔剣によってなんとか防ぐPoHだが…一撃が重く感じるらしく、なかなか反撃に出れずにいた。ステータス差を自身の技量でカバーしているといったところだが、全てをカバーできるわけがなく…

 

「…っ!はああぁ!」

 

「ぐぅ…ちょこざいなことを…!」

 

「…だから、遅いって言ってるだろう!」

 

「……ぐおおぉ!?」

 

乱撃の中で突如と放たれた突き技に反応が遅れたPoHは魔剣を盾にして防ぐ…だが、視界を塞ぐ形になったのは悪手だ。後退ったPoHに肉薄し、魔剣をあらぬ方向へと弾き飛ばし、そのまま連撃を胴体へと叩き込む。

 

数分における攻防だが、既に結果は見えていた。

 

ホロウ・プレイヤーをPKしまくってきたと豪語するだけの技量はあっただろう。剣の動き、身構えからして、それなりといってもいい…但し、それなりにだ。

 

「どうした、さっきまでの強気な姿勢はどこにいった?それとも、これまで獲物として狩ってきたプレイヤーに、ここまで手強い相手はいなかったか?」

 

「…っ!言ってくれるじゃないかぁ…いいぜぇ、最高に面白くなってきやがったぁ!?」

 

(…あくまで強気な態度を見せたままか、そういう勝負の流れをコントロールする面は流石か。このまま長引かせてもしょうがない…一気に幻想剣ソードスキルで勝負を決める!)

 

 

精神的な揺さぶりをかける意味を込めて、皮肉を吹っ掛けるも…PoHは動じることなく、狂気の笑みを浮かべていた。そういった精神力の高さにどこか呆れに近い尊敬を覚えつつ、俺は勝負を決めに掛かろうとしていた。

 

奴のHPはまだ7割ほど残っているが、最上位の幻想剣ソードスキルならステータス差を考慮すれば、余裕で削り切ることができる…そう考え、再度隙を生み出そうと…

 

「(ニヤリ)…正義の味方様も大変だよなぁ、守るものが多いと」

 

「…?何を…っ?!」

 

PoHの視線が一瞬別の物を…俺ではない方向へと向けられ、意味深なことを言い放ったことに気を取られ、一瞬反応が遅れた!

 

奴が突如として放ってきた何か…それがナイフだと気づいたのは片手剣で咄嗟に弾いた時だった。そして、同時に奴の思惑が分かった。

 

「っ…!?(あいつ、フィリアの方に…!どこまで屑なんだよ!?)」

 

俺の注意を逸らした瞬間、戦闘が始まったのと同時に部屋の入り口近くにまで退避していたフィリアへと向かっていたのだ!人質か、それとも、HPがレッドの域に到達している彼女に止めを刺すつもりなのか…どちらにしても、このまま奴の好きにさせるわけにはいかず、俺は反射的に右手でメニューを開き、高速換装スキルを発動させる。

 

「さぁ、守ってみせろよぉ!正義の味方気取りがよぉ!」

 

「っ…?!」

 

フィリアも狙いが自分だと気づき、身構えるも…手元に武器がない状態では防ぐしか手段がなく…高らかにそう告げたPoHはフィリアへと魔剣を振り落とそうと…

 

「…!なぁ…!?」

 

「っ…うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!」

 

装備し直したそれですぐさまソードスキルを発動させ…直後、俺の身体は瞬間移動したように、PoHとフィリアの間に挟まるように移動したのだ!

 

驚愕したPoHに構うことなく、俺は鞘かに納まっていた刀『真猛丸』を振り払う。幻想剣≪刀≫最上位単発ソードスキル〈俊過瞬刀〉の高速移動の応用だ…だが、本来の仕様とは大きく異なる運用方法に無理が生じ、振るった刀は振り下ろそうとしていた魔剣を弾くに留まった。

 

「…フォン…!」

 

「っ…!」

 

突如として現れた俺にフィリアが驚くも、それに応える余裕が…時間が俺にはなかった。〈俊過瞬刀〉の付属効果により、全ステータスが2倍になっている間に決着を着けるべく、急ぎPoHへと斬り掛かるが…!

 

「おいおい、さっきの言葉を返すぜぇ!余裕はどこにいったんだよぉ」

 

「っ…お前とこうしているのに嫌気が差しただけだよ!」

 

「そんなつれないことを言わず、この殺し合いをもっと愉しもうぜぇ…まぁ、そうも言ってられない事情があるようだけどなぁ!」

 

「ぐぅ…?!」

 

焦りが出てしまい、PoHに見当を付けられてしまった。俺の剣檄を魔剣で受けることで敢えて時間稼ぎをされてしまった。その間に30秒はすぐさま経ってしまい…

 

「…っ?!(この感じ…くそ、〈俊過瞬刀〉のデメリットが…!)」

 

「…!フォンのHPがどうして…!?」

 

さっきまで漲っていた筈の力が失われ…それどこかそれを上回る虚脱感が全身を襲い、更に満タンに近かったHPが一気にレッドゾーンにまで落ち込んだことで、フィリアが驚く。

 

「ほう…どうやら、さっきの高速ソードスキルの反動のようだなぁ!こいつは予定外のラッキーパンチだぜぇ!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

形勢逆転…まさしくそのような状況に、PoHは完全に持ち直していた。それに対し、俺は何も答えず、頭を働かせていた。そんな俺の態度に業を煮やし、PoHは挑発を仕掛けてきた。

 

「そんな裏切者を庇うから、自分を窮地に追い込むんだよ…お前が何をしようと、その女がしたことは変わらない!また裏切られるかもしれない女を庇うなんて、どこまでお人好しなのか…見てるだけで吐き気がするぜ…!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「それとも、自分の正義感を満たしたいだけなのかな?だったら、お前はもう十分に正義の味方としてやったさぁ?あとは俺の愉しみのために「・・れ」…はぁ…?」

 

「…黙れと言ったんだ…」

 

「っ…!?(…なんだ…?雰囲気がまた変わった…?)」

 

挑発の言葉を黙って無視しようとしていたが、思考を纏め終わったのと同時に、俺の中で何かがブチ切れた。

 

堪える必要がないと判断した怒りを解き放ち、そして、静かにPoHに黙れと告げる。俺の雰囲気が変わったことに、PoHも警戒心を引き上げたようだ。

 

「正義とか、裏切りとか…そんなのどうだっていいだんよ。俺が守るって…必ずアインクラッドにフィリアを返すって約束したんだ!剣を振るう理由なんて…誰かのために戦うのに、理由なんてそんなものがあれば十分なんだよ!何度裏切られようとも…俺はフィリアを信じる。だからこそ、お前はここで必ず倒す!」

 

再び右手でメニューを開き、高速換装スキルをまた発動させる…今度は武器だけでなく、スロットに登録していた装備一式へとフル換装を行う。

 

紺色を中心に白と黒の二色のアクセントが所々に配色され、肩から下を防護するかのような茶色のマントを纏った、胸の骸骨マークが特徴的な軽装装備『骸骨織りの祈海装』と短剣『ゲイル・ザンバー』が装備され、その刀を抜く。

 

「…だったら、その綺麗事を打ち砕いて、お前の前であの女が死ぬところを存分に見せつけてやるよぉ!」

 

「そんなこと…絶対にさせるものかぁ!?」

 

上等だと言わんばかりに、PoHの猛攻が始まる!

 

魔剣の乱撃を避け、捌き、防ぎ…押されていく中、俺はチャンスを見計らっていた。

 

(チャンスは一度…その一度っきりのチャンスに全てを賭ける!)

 

短剣と魔剣の刃が何度も交わり、その度にステータスが減少した俺が押されていく…僅かにHPも減っていき、それでも、俺は焦ることなく、チャンスを見計らっていた。

 

「…そらそら、どうしたぁ!もっと抵抗してみせろよぉ!」

 

「っ…うぐぅぅ…!」

 

なんとか連撃を捌いていたが、剣筋をぶらされた隙を狙われ、奴の回し蹴りが俺の左肩を捉えた。それにより体制を崩した俺に、魔剣の薙ぎ払いが繰り出される!それは短剣にて直撃を防ぐも、俺は後方へと大きく吹き飛び…

 

「これで…The Endだぁ!」「…フォン!?」

 

俺に止めを刺そうと追撃を仕掛けてきたPoHの勝利宣言とフィリアの悲鳴が重なる…その両者の声を耳にしながら、俺は…

 

(…!ここだ…!)

 

勝負を決めにきたPoHの慢心を狙い、併せて勝負に出た!持てる全力を出し、トップスピードで掛け、その勢いにて迫っていたPoHへと飛び掛かった。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

「…!そんなもんでぇぇ!?」

 

短剣2連撃ソードスキル〈サイド・バイト〉を発動させ、ジャンプ斬りの要領でPoHへと斬り掛かった!だが、PoHもすぐさま反応してみせて、血のように真っ赤なライトエフェクトを魔剣の刃に纏わせ迎撃してきた!

 

激突するソードスキル…だが、その結果は分かり切っていた。

 

ガァン!?

 

「っ…!?」「…!フォン…?!」

 

完全にステータスが逆転している今、ソードスキルの撃ち合いにて分が悪いのは俺の方だった。一連撃目で相殺された俺のソードスキルは止まり、反撃を受けた余波でそのまま上空へと打ち上げられてしまった。

 

「さぁ…愉しいお手玉の時間だぁ!一体どこまで耐えられるかなぁ?!」

 

空中にて少しだけ滞空していたが、重力に引っ張られて落下し始めた俺の着地点を予想し、PoHは先回りして魔剣を構えていた。

 

このまま半永久的に打ち上げ続け、一方的に攻撃を仕掛ける魂胆なのだろう。そして、もう間もなく奴の魔剣の射程範囲になるところまで俺は落下しており…

 

「おらああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

俺の身体を下から真っ二つ、もしくは打ち上げようとするべく、PoHが魔剣を斬り上げようとしたのが見えた瞬間、俺は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…その瞬間を…待っていたんだ!!」

 

落下しながら体勢を整えていた俺は背中に隠すことで見えないようにしていた…ソードスキルの発動待ちとなっていた短剣のライトエフェクトを解放する!

 

その次の瞬間、俺を捉えようとしていたPoHの魔剣が宙を斬っていた。

 

「なぁ…?!」

 

避けた…というのは正確な表現ではないだろう。確かに俺を斬り裂こうとしていた魔剣はそのままであれば、俺に直撃していた。だが、俺の身体はそこから移動し…いや、二人に左右へと分裂し、回避と同時にPoHの意識を完全に逸らした。

 

だが、これはあくまで幻想剣≪短剣≫の幻想剣ソードスキル発動時における特殊効果の減少に過ぎない。本題はこれからだった。

 

「「アザー・ワンズ・ストライク!」」

 

左右からの二つの4連撃…挟み撃ちによる計8連撃が本体と残像により、PoHの身体に刻まれる!幻想剣≪短剣≫多重4連撃ソードスキルによる回避と反撃の初劇は見事にPoHの虚を突いた。

 

「がぁ……(ぶ、分身しただと……だが、ソードスキルである以上、奴も硬直に襲われる筈…今なら殺れる!!)」

 

背中越しにPoHが反撃を仕掛けようとしているのが分かった…分身が俺の身体に収まる直前、俺は意識を全集中し、次の行動へと移る。そして、起こったのは…

 

「…ば、馬鹿な…どうして…?!」

 

PoHの困惑の声が聞こえる…振り返った直後だったため、それが表情にまで出ているのがよく分かった。だが、それはある意味で当然だと少しだけ同情した。

 

なぜなら…本来であれば、硬直で襲われている筈の俺が、硬直なしで…更に別のソードスキルを立て続けに発動させようとしていたのだから。

 

システム外スキル『技術連携』…ソードスキル発動終了直前の僅かなタイミングで、意識を別のソードスキルへと連想させ切り替えることで、硬直無しで立て続けにソードスキルを発動させることができる、システム外スキルだ。

 

幻想剣の検証中にて偶然にも発見したシステム外スキルは…キリトにさえも見せたことのなかったある意味で、俺の切り札の技だった。

 

「…!うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!」

 

それを成功させ、俺は初撃でPoHの魔剣を大きく弾き、そのままソードスキルの軌道に合わせて短剣を振るう!

 

幻想剣≪短剣≫最上位多重6連撃ソードスキル〈ファントム・ボーン・ダスト〉による、分身と共に残像を発生させるほどの超高速連撃をPoHへと叩き込む!だが、俺の連撃はまだ終わらない!

 

「ミラージュ・ラビリア!」

 

ファントム・ボーン・ダストによる分身が収まった直後、そのまま次の幻想剣ソードスキルを発動させたことで、すぐさま分身が三度発生し、PoHをすれ違い様に同時に斬りつける!そして、本体と分身…そこから別の分身がそれぞれ出現し、計4体となった俺たちは、蛇行の軌道でPoHと近づき、すれ違い様に4つの斬撃を同時に浴びせた。

 

これまでとは異なる4人に分裂するという、幻想剣≪短剣≫多重2連撃〈ミラー・ラビリア〉により、PoHのHPが半分を切る。

 

「こ、このぉ…「クロノ・エデンズ!!」があああぁぁ?!」

 

反撃させる間など与えてなるものかと、4つ目となる幻想剣≪短剣≫多重8連撃ソードスキル〈クロノ・エデンズ〉による剣舞を叩き込み、そして、最後のソードスキルを技術連携によって連続発動させる。

 

これまでどおりソードスキル発動と同時に分身し、PoHへと超スピードで肉薄したかと思えば、分身と共にその胸元へと交差斬りを繰り出す!そして、分身だけが一人でに動き出し、PoHへと斬り掛かろうと…

 

「種が分かれば、こんなもの…がぁ!?……な、なに…?」

 

迫ってきた分身を、これ以上好き勝手させるものかと迎撃しようとしたPoHだったが、その言葉が自身の悲鳴によって途切れた。

 

その理由は分身ごと…いや、正確にはPoHによって視界を塞がれていたことで、分身ごと突き刺そうというかの勢いで飛んできた短剣が胸元に刺さったからだった!短剣をすり抜けた分身はそのまま消えたが、消えたことで視界が確保された視線の先にいたのは、掛けていた俺の姿だった。

 

「これで…最後だぁァァァァァァァァァァ!!!」

 

ダッシュの勢いを加え、飛び上がった俺は空中で左回し蹴りを放ち、PoHの胸元に刺さっていた短剣をそのまま更に押し込む!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!」

「ぐぅ…おおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!?!」

 

咆哮と共に、今出せる全力をもって短剣ごとPoHを遥か後方へと蹴り飛ばす…幻想剣≪短剣≫体術兼多重3重連撃ソードスキル〈ヴァイタル・ブレイク〉による最後の一撃は、クリティカルヒットしたこともあり、残っていたPoHの一気に削り、そのまま部屋の壁へと突き刺さり、奴を張り付ける形で拘束することとなった。

 

「はぁ…!はぁ…!これでお前は終わりだ…お前が仕掛けたアップデートも今の俺には解除できる…お前の思う通りなんて、一つもさせはしない」

 

「ごほぉ…!……あ~~~~あ、これでゲームオーバーか……まぁ、いいか…愉しめるだけは、たの…」

 

…俺の宣言に、奴は最後の言葉を言い切ることもなく、完全にHPがゼロになったことでその身体をポリゴンへと変えた。代わりに、奴の胸元に深く突き刺さっていた短剣が地面へと落ち、静かに音を鳴らせていた。

 

「なんとかなったか……まさかこのホロウ・エリアでもPoHに振り回されることになるとはな」

 

PoHが消滅したことで、ようやく闘気を収めることができると安堵した俺は深いため息を吐いていた。アインクラッドでも散々引っ掻き回されてきたのに、まさかこっちでもそうなると思ってもみなかったので、当然といえば当然の感想だった。

 

(残るはPoHが残したアップデートに関してだな…奴がここの下層に設置されていたコンソールを通して何かをしたのなら、その痕跡を見つけられるかも…もう一度、あのコンソールを調べてみる必要がありそうだな)

 

気になるのはPoHが仕掛けたというアップデートの件だ…こればっかりはコンソールの精査が必要なので、また後でするとして…俺はそれよりも次にしなければならないことをすべく、彼女へと視線を向けた。

 

「さぁ、フィリア…これで君を惑わそうとしていた奴はもういない。だから…君のことを聞かせてほしい。俺も…色々と察してはいるつもりだけど、もしかしたら、何か食い違いがあるかもしれないからな」

 

「…うん。もう…フォンにも言っちゃったもんね」

 

そう…それは、フィリアとの話し合いだった。どうしてPoHに協力していたのか、そして、自身を殺したという発言のこと…それらの情報共有や俺が掴んだホロウ・エリアの真相を伝える必要があった。

 

そういうことで、俺たちは話し合いをするべく、一旦管理区へと戻るのだった。

 

 




オリジナルソードスキル・防具解説
●幻想剣≪短剣≫多重2連撃〈ミラー・ラビリア〉
 薄紫色のライトエフェクトが特徴の幻想剣ソードスキルの1種。
 初撃と同時に分身し、すれ違いざまに同時に相手を斬りつけ、その直後、本体と分身から更にそれぞれ分身が発生し、相手を中心として蛇行の軌道にて肉薄し斬撃を喰らわせる技。
 2連撃でありながら、分身の数の影響で実際の連撃数とは数が異なるだけでなく、分身は1体までしかないと思っている相手の虚を突くことに特化した初見殺しのソードスキル。

●幻想剣≪短剣≫体術兼多重3重連撃ソードスキル〈ヴァイタル・ブレイク〉
 青緑色のライトエフェクトが特徴の幻想剣ソードスキルの1種。
 初撃と同時に分身し、肉薄すりのと同時に相手の胸元交差に斬りつけ、その直後、分身だけが飛び出すが、これは囮であり、本体が持っている短剣を交差斬りした箇所の交差点へと投げつける。(この時、分身に短剣は当たらず、通過と同時に消滅する)その後、追撃の空中左廻し蹴りを放つ技。
 特殊効果として、対象の急所に交差斬りがヒットし、その交差点に短剣が刺さった場合、廻し蹴りによる押し込みダメージが3倍と化す。(誰が言ったか、対プレイヤー用確殺ソードスキル)
 デメリットとして、装備している短剣を手放すという、幻想剣ソードスキルにはよく見られる弱点があるが、最後の一撃が廻し蹴りである上に、高速換装スキルの存在も考慮すると、デメリットがデメリットになっていなかったりする。
 余談だが、ギーツⅨ初回時の活躍を見て、作者が悔しがったのはこれのせい。

さて、PoH戦も無事に終わり、大空洞エリアのお話もあと2話(予定)となりました。
次回は色々な解説…という名の裏付け回です(笑)
過去と現在…二つの時間軸にて、フォンが説明をしてくれます。

…ということは、あれもやってくるわけで(黒笑)

ご期待頂ければ幸いです!(短剣の幻想剣ソードスキルについても次回補足説明をします。ちょっと時間がなくて、あとがきギリギリになってますので)

それでは!

キャラエピ第2段!どのキャラから見たいですか?(時系列の問題で多少前後することがあります)

  • リーファ
  • シノン
  • リズ
  • シリカ
  • ミト
  • ユイ
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