ホロウ・レトロスペクト最終章前半戦です。
最終ダンジョンの踏破をメインとしたお話…そして、深淵の最奥にて待つラスボスはもちろん…
それでは、どうぞ!
(さてと…どうしたものかな)
異界エリアのボスを討伐し、ようやく管理区の地下…管理区最奥エリア(地下、地下と呼び続けるのもなんか違和感があったので、俺たちの間でそう呼称しようと決めた)へと進むことができるようになった。
管理区に出現していた専用転移門も使用可能になっていることを確認し、すぐに挑みたいところだったのだが…その準備をしようと、俺はアイテムボックスの前で云々と唸っていた。
少し懸念点があり、装備やアイテムを選別していたところなのだが…後者は大方セットが決まっているので、異界エリアのボス戦で減ったものを補充するくらいなんだが、問題が前者だった。
武具やアイテムを収容するストレージには許容量がある。拡張などのスキルによる強化はあるが、それでも無尽蔵でない。(キリト曰く、まだこれでも優しいタイプらしい。もっと厳しいものだと、アイテムの大きさ等まで反映されるゲームがあるとか…)
話が少しズレたが…武器・防具ストレージの選別に俺は迷っていた。幻想剣の弱点というか、全部の武器をスキル上は強化できる幻想剣スキルだが、逆に言えば、装備できる武器しか戦闘時には幻想剣の効果を載せられないのだ。
メインで使う両手剣や片手剣の他に、複数の武器がSAOにはあるが、それら全てを戦闘で使い分けることができるかと言われると…ここで、ストレージの容量問題が関わってくる。
武器はともかく、防具の方が部位ごとに個数があるため、全ての実戦仕様の装備を持っていくことができないのだ。武器だけならと言うが、武器は武器で防具との相性もあるため、汎用型装備である『蒼炎の烈火』だけだと、状況に対応しきれない場合が出てくる。
そのため、防具はひとしきり持っていきたいところだ。そうなると、武器を選別する必要があるわけで…それが俺を少し悩ませていた。
メイン装備である両手剣は外せない、汎用性が高く小回りも利きやすい片手剣もマストだろう。次点で…片手棍も入れておきたいところだ、軽装備と重装備それぞれにおいて、利点を得やすいのは強みだ。予備武器のことも考えると、メインで持てるのはあと二つか。
刀は…今回は除外だ。確かに、幻想剣の刀スキルは強力だが、デメリットも相応にでかい。最奥エリアの懸念点を考えると、足枷になる可能性が高い。
武装を頻繁に変える可能性を考えれば、槍も今回は止めておこう。持続強化の固定スキルはともかく、武器自身を犠牲にするソードスキル〈ニクスプロード〉やバフを犠牲に超絶強化するソードスキル〈コンセント・レイベット〉がやはり厄介だ。
そうなってくると、使いやすさなどを考えると、残りは曲刀と両手斧が選択肢としては最適な気がする。
前者は対モンスターへのダメージ倍化とAGI強化はフィリアとの連携時に組み合わせがしやすい。後者は、武器自体が重く大きいため、両手剣と同じく武器と盾を両立させることができる。(まぁ、両手剣にも言えることだが、その分耐久値の消耗も激しいという弱点もあるが…)
「…まぁ、こんなところか」
今回の懸念点…それは、一度地下に進むと、管理区に戻ってこれないかもしれないというものだった。これから進むのは、ある意味で普通のプレイヤーが立ち入れる場所ではない。ここに戻ってこれなくなるという最悪の可能性も考慮して武具を選ぶ必要があった。そういうわけで、それなりの長考の後、武具・アイテムの選別を終え、管理区のアイテムボックスを閉じると、
「…終わった?」
待たせていたせいもあって、ちょっと機嫌を悪くさせたかと思っていたが、そんなことを思わせない明るい声が彼女…先に準備を終えていたフィリアより聞こえてきた。
「悪い、待たせたな」
「全然。この前の武器が壊れた時に落ち込んでいた時の方が長かったし」
「うっ…その話を持ち出すなよ。俺だって、あれはかなりショックだったんだから」
「フフッ、ゴメンゴメン」
記憶に新しい出来事を持ち出されて、俺は思わずたじろぐ。あんなに武具がぶっ壊れたのは初だったので、ショックが大きすぎたのだ。情けない姿を見せたと思い、なんとか抵抗するも、フィリアの方も本気で言ったわけじゃなかったらしく、笑みを浮かべていた。
「でも…やっとだね。やっと…」
「そう、だな…長かったようで、短かったもんな」
笑みから一転…しんみりした表情でそう告げるフィリアに、俺もどこか感慨深くなり、そう応えた。
これから、俺たちは最奥エリアへと足を踏み入れる。その奥にある中央管理コンソールへと辿り着くことさえできれば、ホロウPoHが仕掛けたアップデートの準備も、間違って自身のホロウを攻撃し倒してしまったフィリアのエラーも直すことができる筈だ。
本来であれば、俺一人で行こうと思っていたのだが、どうやらエラー自体はフィリア自身が中央管理コンソールにアクセスする必要があるらしく、ならば、俺一人が攻略した後にフィリアを連れて行こうかと提案したのだが、
『私一人安全な場所で待ってろなんて…そんなこと、本気で言ってるのなら、私、怒るよ…!』
と怒りと悲しみを秘めた目で睨まれながら言われれば、もう説得なんてできるわけもなかった。
…そういうことで、俺たちは二人一緒に最奥エリアの攻略に挑むことになったわけだが、ホロウ・エリア最後の攻略となると、やはり思うところはあるわけで。
「ねぇ、フォン…ありがとうね」
「…?どうしたんだよ、急に」
「ううん、なんか言いたくなっちゃって…こうやってフォンとゆっくり話すのも最後かなと思ってさ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
フィリアのその言葉に俺は思わず同意してしまった。
中央管理コンソールに辿り着けば、俺たちは元の世界…アインクラッドに戻る。そこから先は…そう思い、俺は思い出した。俺がいるのはSAOの世界であって、自分が元いた世界ではない。そして、このアインクラッドの攻略も既に73層まで到達した。
…もしも小説の通りなら、このSAOは間もなく攻略されることになる。その時、俺もこの世界を去る可能性が高い…無事に戻れるかどうかという点はまだ分からないが、少なくとも、フィリアやキリトたちとはいられる時間はそう長くないだろう。
(この世界にいるリミット、か…あまり意識しないようにしていたけど、アインクラッドに戻れるとなって、変に意識してしまうな。こんなことになるとは思ってもなかったからな)
それでも…今はまだこの世界に俺はいるのだ。そして、彼女たちもまたこの世界で生きているのだ。ならば、その最後の時が来るまで、俺にできることを全力でやるだけだろう。
「だから、お礼をちゃんと言っておきたかったんだ。フォンがこの世界に来てくれたから、私はここまで来れた。フォンが居てくれたから、今は私も前に進めてる。フォンが私に光を見せてくれたから…自分の弱い気持ちとも向き合えた、フォンと同じ人間なんだって、思えたんだ」
「…フィリア」
「フォンが凄くて、でも、どこか変に抜けてて…それでも、やっぱり頼りにしちゃうくらい、憧れちゃうくらい素敵だって思ったんだ。最初に出会った時も気を遣ってくれて、私がオレンジカーソルのエラーのことを諦めていた時も一緒に解決する方法を探し続けてくれたり、それに…あのサイコ野郎に騙されて、フォンを裏切った時も…私を受け入れてくれた。そんなフォンのことが凄いって、憧れちゃったんだ。
だからかな…フォンと一緒にいたら、もっと安心というか、勇気をもらえるじゃないかって思って…ここから出られたら、フォンと色々な場所に行きたいとか、色々な思い出を作れたらないいなって…思えてきたんだ」
「…!フィリア、俺は…」
その先を聞けば、俺は断ることしかできなくなる…俺は本来、この世界にはいない人間なのだから…それを叶えることは、おそらくできない。それはフィリアを傷つけることにしかならない。
だから、その言葉を切らせようと俺が口を開いたのだが、フィリアの口から出たのは意外な言葉だった。
「分かってる…ゴメン、無理なことは言ってる自覚はあるんだ。フォンは攻略組で、やらないといけないことも沢山あることも…ユニークスキルを持ってる、本当に強い人で、私以外の色々な人に必要とされていることも…だから、これは私の我が儘だから。最後だから、ちょっとだけ…」
「最後なんかじゃない!?」
「…っ?!」
言ってはいけないことだって分かっていた、彼女の言葉に甘えるべきだって、黙って受け入れるべきだって頭では理解していたが、それでも…俺の心がそれを否定した。
それが仮初であっても、今のひと時の誤魔化しであっても…それでも、今、彼女の涙は見たくないと、俺の心がその言葉を口に出させてしまった。
「その…確約はできないけど、あんまり時間もないかもしれないけど、それでも…最後なんかじゃない。だから……えっと……」
口にしたのはよかったが、そこから先が続けられなかった。
どうやって彼女の願いに応えればいい?
どうすれば彼女の頼みを受け入れられるか?
本当に…そんなことができるのか?
できないことを言えるわけがなく、言葉が口から上手く出ない。なんとか打開策を考えるも、しどろもどろにしかならなかった。そんな俺を見ていてか…
「…プッ…!」
「ふ、フィリア…?」
「そこは、嘘でももっと男らしい台詞を言うところじゃないの?絶対に叶えてやるとか、何度だって付き合ってやるとか…フォンって変なところで正直だよね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
噴き出したように笑い出したフィリアの言葉に、俺は返す言葉が見つからなかった、。突然のことに、驚きと理解が追いつかず唖然としてしまう。
「ゴメン、困らせちゃって。でも、フォンがそう言ってくれるだけで私は十分だから。それに…こういうのはちょっと卑怯かと思ったしね」
「…卑怯?それはどういう…」
「それは…そうだね、今度会う時までの宿題ってことで。それまでに、考えておくこと」
「なんだよ、それ…」
「うん、約束…ちゃんと生きて帰って、今度会えるまでの約束、ね?」
「…分かったよ」
釈然としないところはないが、そう言われてしまうと俺からそれ以上この話題に踏み込むことはできないわけで…今はフィリアのその言葉に甘えるしかなかった。
(まぁ、秘密を共有する立場として、信頼してくれているからの甘えという奴か…俺の方なんかまだ隠していることがあるっていうのに…)
上手く笑えている自信がなかった…それは色々な意味で後ろめたいものがあったからだろう。フィリアの親愛から信頼を裏切ってるという自覚があったからだろう。そういう意味では、俺がキリトを始め、あらゆるプレイヤーたちを裏切ってきたと言ってもいいだろう…まったく、どこぞのGMのことを責められない気がする。
「さて…準備もできたなら、行こうか」
「あ、ああ…」
そんなことを考えていたのもあって、フィリアが先に行こうとするのに反応が遅れた。これから、ホロウ・エリアの最奥に挑もうというのだ、意識を切り替えるべきだ。
だから、俺はフィリアの本当の気持ちに気付く機会をまた失っていた。
(…こんな形で、フォンを縛るのは…卑怯だよね。好きだっていう気持ちは、ちゃんとした形で伝えないと…)
…それが後々、俺たちの関係を複雑なものにするとは、二人とも知らずに…
管理区地下…転移門から転移してきたことで、包んでいた光が視界を解放した際に飛び込んできた光景は…
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
二人して言葉を失う絶景だった。
絶景は絶景でも、感動の類ではなく、驚きと理解不能な意味での絶景だった。なんというか、これまで見てきたどの景色とも違うものがそこには広がっていた。
周囲は見渡す限り宇宙のような星々をアクセントとした黒い空間が広がっており、フィールドを構成する壁…いや、空間とフィールドを識別する境界と表現する方が適切か…仕切りには、枝分かれのような模様が走っており、時折それらに光が通じていた。
床も正方形の透明なもので、下の光景がそのまま見えるようになっていた…まぁ、下も宇宙のようで、真っ暗に近いのだが。
背後にはこれまで何度も見てきたホロウ・エリア特有の逆三角錐の転移石…唯一見慣れたものがある一方で、大空洞エリアのコンソールなどがあったエリアとはまた違う雰囲気のエリアに、俺もフィリアもしばらく圧倒されていた。
「これが…ホロウ・エリアのラストダンジョンか」
「うん…あのサイコ野郎がどうやってこんな場所を攻略したんだろう」
「ホロウPoHも高位のテストプレイヤーだったみたいだからな…もっとも、あいつの場合は犯罪者としてのだけど。強化設定前とはいえ、あの各エリアのボスを一度は倒しているんだ。それ相応の実力はあったんだろうな」
「でも、あいつの実力で突破できたってことなら…私たちだって…!」
「ああ、むしろ余裕で突破できるはずだ。でも、油断せずに行こう」
「もちろん!あんな奴の野望なんて絶対阻止、だね!!フォン!」
「よし、行こう!」
これまでにないほどに意気込むフィリアの声に応え、俺たちは先へと進み始めた。
管理区地下を超えた先…秘匿領域と呼ばれるエリアはある意味で迷宮区ダンジョンと言っても差し支えないものだった。
これまで踏破してきた五つのエリアのモンスターが散在しており、時にはエリアを超えたモンスターたちとの集団戦を覚悟しなければならないことが多かった。
しかも厄介なことにマッピングの妨害機能まで働いてるらしく、正しく道を覚えながら攻略していく必要があった…だが、こちらにはトレジャーハンターとしての経験を持つフィリアがいた。
「…フォン、多分こういう形で進めば、遠回りになるけど戦闘を避けられるよ」
探索のスペシャリストとしての彼女の勘と実力はこれ以上ない程に発揮された。敵の探索範囲から、迂回ルートの確保…おまけに、次の階層に繋がる転移石がある広場もおおよそのあたりをつけてくれていた。
このダンジョン…これまでと異なり、下に進んでいくには各フロアにランダムで配置されている転移石を見つける必要があるのだが、まずダンジョンの構成が不規則であり、さらに転移石が配置されているのが、管理者権限の紋様が刻まれた封印が施された広場であり、複数あるそれらをいちいち封印を解除して確認しないといけない中々に面倒くさい仕様となっていた。
しかし、こういったランダム生成のダンジョンはフィリアにとっては苦ではないらしく、逆に大まかな推測を立て、少ない回数で最適解…転移石がある広場を当ててしまうのだから、これは本当に凄いことだった。
ということで、そんな調子で予想していた苦戦も懸念も起こらず、いつまで続くか分からない同じ光景のフロアを降り続けていると…
「…っと。どうやら、ここが終点のようだな」
10階層を超え、次は11階層かと思った矢先、最初に転移した管理区地下とほぼ同じ光景のフロアへと辿り着いた。最初と違い、眼前には封印の施された結解が幾重にも通路を塞いでいることから、この先が目的地であることはほぼ間違いないだろう。
「この先に、中央管理コンソールが…」
「ああ。けど、この封印…今までものと系統が違うみたいだ。解除できるか…」
これまでは黄色のラインで刻まれていた紋様だったが、幾重にも張り巡らされた結解の紋様は赤いラインで刻まれたものだった。系統が違うことや、厳重といっても過言ではない守りに、左手に刻まれた紋章で解除できるかと思っていたが…
「…!」「…フォン、手の紋章が…!」
手に刻まれていた高位権限者の中でも最上位クラスを示す三つの鍵を模した紋章が光り輝き、手の甲から具現化するように出現したかと思いきや、そのまま物凄いスピードで全ての結解を貫いていった!
結解が割れるような派手な演出はなかったが、近いところから結解が静かに消えていった…どうやら、これで先に進めるようだ。結解の先へと進むと、大空洞エリアでも見た光柱上の転移石が鎮座していた。
「…いかにもって感じだな。フィリア」
「…?どうしたの、フォン」
「多分、この先に待っているのはこれまで戦ってきたどの相手よりも強い相手だと思う。幻想剣があっても、フィリアをちゃんと守れるかが分からない…だから、やっぱりここから先は俺一人で…」
「…心配してくれるっていうのは分かるよ。でも…平気だよ。これは私が自分を取り戻すための戦いでもあるの。それを…フォンに全部任せて、一人でただ待っていることなんて、私にはできないよ。だから、足手まといであっても、フォンと一緒に戦わせて。それに…もう見てるだけは嫌だから」
「…ゴメン。それとありがとう…フィリアの覚悟はよく分かった。それじゃ…行こう!」
「…うん!」
ここまで来て、フィリアの覚悟を聞いたところで、俺がこれ以上何かを言うのは、彼女の覚悟を無下にすることになる。
最後まで二人で戦いたいというフィリアの言葉に強く頷き、俺たちは転移石に手を触れた。
…転移した先…それは何もない空間だった。
何もないというのは語弊があった。足場は透明な円状のものがあり、これまでと同様に外部に広がる宇宙の光景が眼下にも広がっていた。しかし、それ以外は何もない…音すらも静寂で何も聞こえない環境に、俺たちは異様さを覚えていた。
「…コンソールがない。ここが最奥じゃないのか?」
「…!フォン、気を付けて!?何か来る…!」
あまりの異様さに呆気に取られていると、何かに気付いたフィリアが声を上げ、二人同時に両手剣と短剣を抜き、背中越しに周囲を警戒する!その時、姿を現わしたのは…
「…っ!あれは、樹海エリアのホロウボス!?まさか、こいつと…」
「待って!様子が変だよ!」
突如として、エリアの奥からに何かがポップしたと思いきや、その身体がいきなり巨大化し、その姿を露わにした。
樹海エリアのボス…『The Abyss Phantasma』の登場に思わず驚きの声が出たが、フィリアの次の言葉にその異変に俺も遅れて気づいた。
樹海エリアのボスの全身に黄色と黒が入り混じったノイズが走っていたのだ。しかも、俺たちのことなど視界に捉えていないかのように雄たけびを上げている…ようなのだが、その音さえもノイズが入り混じったものを発していた。
そして、再び変化が起こった。
「…!今度は浮遊遺跡の飛竜ボス…どうなってるんだ…?!」
樹海エリアボスの巨体をシステムエフェクトの光が包んだと思いきや、今度は突如として空中に浮遊遺跡エリアボスの『Zordiath The Ancient Caliber Dragon』が出現したのだ。だが、こいつも樹海エリアボスと同じく全身にノイズを走らせていた。
「次は…入り江エリアの武器ボスと、大空洞エリアのボス…!」
そして、三度目となる変化…フィリアの言ったように、入り江エリアの最後に倒した五つの武器と、宙に浮くそれらを従えるかのように佇む大空洞エリアのボスが、ノイズ混じりだが姿を現わしていた。そうなると…
「そして、異界エリアのボス…一体何が起こってるんだ…?」
予想していたように、四度目の変化は昨日倒した女王蠍を模した異界エリアのボス…こいつもノイズが混じった姿をしており、眼前で何が起こっているのか分からず、俺たちは困惑するしかなかった。
そして、これまでの総復習だと言わんばかりに現れ続けたボスたちが消えたと思いきや、
『Error!!』
「「…!?」」
眼前に現れたゲームらしく…いや、表現が適切ではない。SAOではまず見ることのない、でも、ゲームらしいエラーを露わすゲームエフェクトに、俺とフィリアが息を呑む。
『Error!Error!! Error!!Error!!Error!!Error!?Error!?Error!?Error!?Error!?』
真っ赤なシステム通知がこれでもかと…真っ黒な空を覆いつくかのように、次々と通知が出現し続けていた。同時に甲高い音が鳴り響く中、次から次へと起こる異変に警戒を続けていると…
『イレギュラーの侵入を確認…データを照合……完了。該当者、ユニークスキル「幻想剣」ホルダープレイヤー…イレギュラー2022110610001…テスト確認、これより、ホロウ・エリア実装の最終シークエンスを開始します!』
「最終、シークエンス…?」
これまで何度か聞いたことのあるシステムアナウンスが聞こえ、最後に聞こえた不安なワードが耳に残った。そして、突如としてエリアの中心から光は波状に広がり、
「きゃぁあ!?」
「…!フィリア!?…っ!」
咄嗟に身構えたものの、俺には何も起こらず、代わりに隣に立っていたフィリアが遥か後方に弾き飛ばされた!どういうことかと見ていると、波状に広がった光はそのまま周囲を囲う結解のように壁を形成した。
そして、振り返っていることで背中を見せていた前方から殺気を感じ振り返った…そこで、俺が目にしたのは…
「…キリ、ト…?」
いつの間にそこにいたのか…二つの件を既に抜いていた真っ黒一色の防具に身を包んだ、俺のよく知る相棒で、俺が知る中で最強と呼ぶに等しいプレイヤーがそこに立っていた。
だが、真っ黒なコート『ブラックウィルム・コート』に、50層クオーターボスのLABであるキリトの愛剣の一振り『エリュシデータ』とリズが作成したもう一振りの愛剣『ダークリパルサー』…それらを身に着けた奴は、俺が知る黒の剣士であるキリトそのものだった。
しかし、はっきりとあいつではないことを俺は一瞥しただけで分かった…それでも、驚きは隠せず、一瞬呆けてしまった時だった。
「…かはぁ…!」
鈍い音と共に背後から誰かの悲鳴が聞こえた。誰かなど分かり切っていた…ここにいるプレイヤーは二人しかいない。俺でないなら…最悪の予感と想像を信じたく、思わず振り返った視線が捉えたのは…
「…え……?」
背後から胸にかけて剣を突き刺さられたフィリアの姿だった。
「…フィリアァァァァ!?」
何かが起こったか分からずに震えるフィリアを見て、俺は彼女の名を呼ぶことしかできなかった。
…まさかのフィリア、刺される…!?(なんとなく、呪術っぽくなったのはきっと気のせい)というか、刺されるのってどっちかというフォンの役目のような…
ということで、ラスボスはホロウキリトと皆さんの予想通りですが、その中身がえげつないです。そんなラスボスとの激闘は、本日12時更新の次回にてお届けします!(そして、本日は3話更新です!!)
ラスボス前哨戦の大型ボスはちょっとカットしました…いや、あんなフィールドを駆け巡る敵はちょっと戦い辛いなと思ったので。
…ある意味で、ユニークスキル同士であり、アインクラッド最強のプレイヤー同士の激突…別世界からの転入者と原作主人公の虚像と戦いの結末を見届けて頂ければと思います。
それでは!
キャラエピ第2段!どのキャラから見たいですか?(時系列の問題で多少前後することがあります)
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リーファ
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シノン
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リズ
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シリカ
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ミト
-
ユイ