ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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ホロウ・レトロスペクト最終話です。
(時間があれば、書けるんです…時間があれば…!)

前回の決着からの続き…前半はフィリアの視点にて、後半はフォン視点での顛末のお話になります。
果たして、フィリアとフォンの恋のお話はどういう形になるのか…そして…

それでは、また後書きにてお会いしましょう。
本編をどうぞ!


第28話 「            」

「この程度であいつを真似られると思うな…あいつの剣はもっと重く、もっと力強かった。あいつを模倣しようなんて…百年早いんだよ、この偽物野郎…」

 

…そう言って、フォンは黒い恰好をした剣士のホロウ・プレイヤーを斬り捨てた。それによって、ホロウ・プレイヤーの身体はポリゴンに変わり…

 

『…これにて、ホロウ・エリアの実装にかかる最終シークエンスを終了します。検証結果は…実装は見送り、アインクラッドの運営に関してはこれまで通りとします』

 

「終わった…んだよな…?」

 

『最終シークエンスが終了したことで、高位プレイヤー以外のロックを解除します』

 

システムアナウンスの声が聞こえ、私はようやく我へと返った。そして、自身の身体へと目を落とす。さっき感じたような不快感…ダメージを受けた時のような感じはしていなかった。

 

続けてHPバーを見るも…やはり異常はなく、緑ゲージのまま減衰していなかった。そこで、ようやく思考が追いついた…フォンが、私の命を救ってくれたのだと…

 

『お前の命を俺に預けてくれ、フィリア…!!』

 

狙っていたのか…いや、狙っていたに決まっている。彼はそういう人間だ…最後の最後まで、僅かな可能性に活路を見出したに決まってる。

 

そして、ゆっくりと彼が私の方へと振り返り…

 

「…フォン……私、生きてる……生きてるよ…!」

 

ほっとしてか、それとも、死ぬかもしれないと思っていたところに助かったからか、あるいは、フォンが無事に勝利したからか、または、嬉しくてか…きっと全部だ。

 

私は笑いながら涙を流していた。そして…何故か金色の目になっていたフォンも穏やかに笑ったかと思いきや、

 

「…よ…った……フィ……」

 

糸が切れたように、言葉を紡がずにフォンはその場に崩れ落ちた!

 

「フォン…?!」

 

突然のことに、慌ててフォンの元に駆け寄る…さっきのように、全く微動だにしないフォンを抱き抱えて様子を見ると…

 

「…すぅ……すぅ…」

 

(よかった…気を失ってるだけみたい。あんなヤバいホロウ・プレイヤーと戦ってたんだよね。無理もないか…)

 

緊張の糸が切れてしまったのだろう…穏やかな寝息を立てる姿のフォンを見て、少しばかり安堵した。それと同時に無理もないことだと思った…まさしく無理ゲーに等しい相手にフォンは勝ってみせたのだ。

 

これで疲弊していないという方が逆におかしい…ともかく、まずはフォンが目覚めるのを待たないといけない。

 

「…ありがとう、フォン」

 

気を失っていることで、その重みを直に感じている彼へと、私はそう告げた。

 

 

 

「…っ…?!……こ、こは…」

 

それから十数分…なかなか目が覚めないフォンが心配になってきた頃、瞼が動いたと思うと、そんな声が聞こえてきた。

 

「…目が覚めた?」

 

「…フィ、リア……………フィリア?!」

 

「へぁ…!?」

 

パチパチと目を何度か開け閉じした後、数秒たっぷりとぼーっとしていたかと思えば、矢の如く起き上がり、そのまま私の肩を掴んできた…おかげで変な声が出た!?

 

「大丈夫なのか!?何ともないのか!?あいつは…ホロウキリトは!?」

 

「だ、だ、だ…大丈夫だから?!近いから、離れてぇ!?」

 

「…えっ?…っ~~~~~?!わ、悪い…!?」

 

意識を失っていたせいか、フォンの思考が混濁しているようで、心配と疑問が発言の中で混濁しまくっていた。あ、あまりにも顔が近すぎることにまずは距離を取ることを優先すべきだと叫ぶと…遅れて気づいたフォンが慌てて離れてくれた。

 

(し、心臓に悪いよぉ~…)

 

不意打ちかつ私を心配してくれるその姿に、顔が赤くなるのと同時に心臓の鼓動が加速していた。まぁ、それはフォンも同じだろうけど…痛み分けってことにしとこう。

 

「コホン…あのホロウ・プレイヤーはフォンがちゃんと倒したよ。私もなんともなし…フォンがあの片手剣を破壊してくれたからね」

 

「…そうか、そうだった…思い出した。そうか……よかった」

 

私の言葉に、フォンも意識を失う前のことを思い出したようで、ほっとした姿を見せていた。そういえば…

 

(フォンの目…元の黒い目に戻ってる。さっきの金色に変わっていたのはなんだったんだろう…幻想剣の効果?それとも、スキルコネクトの影響…?)

 

ふと気になり、フォンの目を見ると…意識を失う直前に見た金色ではなく、元の色へと戻っていた。幻想剣の効果のせいだったのか…しかし、この前説明してもらった時に目の色が変わるみたいな効果は聞いたことがなかったんだけど…あるいは、別の何かの要因のせいだろうか…あの時のフォンの気迫はこれまでにない程に凄まじいものだったし…

 

「…?どうした、フィリア。何か顔についてるか?」

 

「ううん、なんでもないの。気にしないで(…まぁ、全部が終わった今、気にしなくてもいいか)」

 

ジロジロと見過ぎたようで、フォンに気付かれてしまったものの、私はなんでもないと言って、誤魔化した。終わったことをこれ以上気にしてもしょうがない。

 

「でも、本当によかった…流石は夢幻の戦鬼だね。あの黒い剣士のホロウも本当に強かった…戦いの途中で何度もヤバいって思ったし…」

 

「俺も何度もヤバいと思ったよ…あいつと本気で闘ったことなんて一度もなかったし…これまで勝てるなんて思ったことなかったからさ。でも、本物のあいつなら、もっと強かったと思うぜ」

 

「…そうかな。だって、あのホロウは私を人質にしてたんだよ。それに勝ったのなら、やっぱりフォンの方が強いってことじゃないの?」

 

「いや…俺があのホロウに勝てたのは、フィリアがいてくれたからだよ」

 

「えっ…」

 

そして、話はホロウ・プレイヤーとの激闘になった。見ている側からも何度もヒヤヒヤしたが、それはフォンも同じだったらしい。

 

でも、それでもまだ本物の黒い剣士のプレイヤーの方が強いというフォンに、反論をすると、またとんでもない答えが返ってきて、思わず声が出た。

 

「あのホロウは俺が知ってるキリトより遥かにステータスも高く、そして、これまで見たことのないスキルを持ってた。でも、ただそれだけだ…フィリアがいてくれたから、フィリアを守りたいと思えたから、俺は最後の最後まで諦めずに剣を振るえた…感情論だけど、そういうのって、絶対に無駄じゃないと思うからさ」

 

「…そ、そっか。エヘヘ…(な、なんでそういうことを平然と言えるのかなぁ…!?)」

 

素でそんな殺し文句に等しい解説をしてくるフォンに、私は照れるのをなんとか隠そうと、顔を俯かせる。今、鏡を見たら確実に真っ赤になっていることだろう。

 

「そ、そうだ…フォン、カーソルが…」

 

「えっ…あっ、そうか。ホロウのキリトは本物と同じくグリーンだから…それを倒した俺もオレンジに変わってしまったのか」

 

この話題を続けるのは(私にとって)マズいと思い、慌てて方向転換を図り、私はフォンの頭上のそれへと視線を向けて事実を告げた。

 

そう…フォンも私と同じオレンジカーソルになってしまっていたのだ。

 

理由は簡単…あのホロウ・プレイヤーとの闘いで、先にダメージを与えたのはフォンの方だったからだ。それにより、グリーンカーソルプレイヤーを攻撃したことで、カルマ低下により、オレンジカーソルに色が変わってしまったのだ。さっきの闘いがデュエル形式でなかったのも大きい。

 

「相棒を倒して、オレンジになったのは…ちょっと気が引けるな。なんか、落ち着かない…」

 

「そうかもね…でもね、フォン。ちょっと不謹慎かもしれないけど……私は少しでもフォンと一緒で嬉しいかなって…うん」

 

自身のカーソルを見ながら苦笑交じりに溜息を吐くフォンを見て、私も釣られて苦笑いしてしまう。それと同時に、心の奥が温かくなっていた…フォンと同じ状態だというのが、良くないことだと分かりつつ、嬉しさを覚えていた。もっとも、

 

「えっ…ゴメン、フィリア。一緒が何だって?」

 

「…!う、ううん!何でもないから!?」

 

「…そうか?なら、いいけど…」

 

恥ずかしさが途中で勝って小声になってしまい、お陰でフォンには聞かれずに済んだ。それを良かったと少し安堵する一方で、心の中でチクリとした感じが大きく覚えた私は…もうどれだけフォンに心を奪われてしまっているのかを自覚できてしまっていた。

 

「よし、それじゃ最後の仕上げだな。奥に進もう。あの転移門から…多分、コンソールがある場所に行けるはずだ」

 

「…だね」

 

ホロウ・プレイヤーを倒したことで出現した転移門…それを使えば、この先に進むことができるだろうというフォンの発言に同意し、私たちは先へと進むことにした。

 

 

 

「…これが、中央管理コンソールか」

 

転移門を使って転移した先…光景はこれまで踏破してきた管理エリアと同じものだったが、その奥の部屋…そこにはただコンソールだけが置かれている場所へと私たちは転移してきた。

 

コンソールへと手を掛けたフォンはそう呟き、慣れた手つきでコンソールを起動し、操作を始めた。予めおおよその検討はつけていたのか…迷うことなく、操作をしていくフォン。そして、

 

『エラーが解除されました。エラーの種類はデータの重複。原因は……サブシステムでの最低稼働中におけるアインクラッドプレイヤーとホロウ・データの同時存在及びその際の戦闘によるホロウ・データの削除に伴うもの…確認完了』

 

「あっ…」

 

「よし…これでフィリアのオレンジカーソルのエラーは解消だ。次は俺の分だな…えっと…」

 

システムアナウンスが聞こえたのと同時に、私のカーソルの色がオレンジからグリーンへと変わった…いや、戻ったという方が合っているのだろう。久方ぶりに戻ったカーソルの色に、私は…複雑な感情を抱いていた。

 

(もう少しだけ…あのままでも良かったと思うのは我が儘だよね)

 

自身のカーソルを修正するためにコンソールを操作しているフォンに罪悪感を抱きつつ、私はそんな悪いことを考えてしまっていた。そういう意味では、私は悪い子なのだろう。

 

「よっと…これで俺もグリーンに元通りと。これで…やっと帰れるな」

 

「帰る…それって、管理区に?」

 

「違う違う…アインクラッドにだよ。これで管理区の転移門からフィリアも帰れる筈だろう?」

 

「そ、そっか…そうだよね。こっちにずっといたから、完全に忘れてた」

 

「…おいおい。って言いたいところだけど、無理もないか…フィリアにとってはホロウ・エリアでの出来事はあまりにも濃厚すぎたからな」

 

「…そうだね。本当に…色々と記憶に残ることばかりだったからね」

 

すると、フォンの方もカーソルを元に戻せたらしく。色がグリーンに戻っていた。そして、帰るというフォンの言葉に、私は思わず管理区の名前を出すと、フォンに苦笑いと共に突っ込まれた。

 

アインクラッドに帰る、帰れる…そう聞いて、私はようやく実感が湧いてきた。そんな私の反応にジト目となりつつも、仕方ないといった表情を浮かべるフォンの言葉に思うところがあった。

 

それと同時に気付いた…フォンとの別れが近づいているのだと…

 

(言わないと…私の気持ちを……ちゃんと…)

 

このチャンスを逃せば、次は多分ない…ダメであっても、それでも、告げなければ後悔だけが残るくらいなら…そう思い、私は口を開いた。

 

「あ、あのね、フォン…!」

 

「うん?どうした、フィリア?」

 

「えっと…管理区に戻ったら、話したいことがあるの…アインクラッドに戻る前に、ちょっとだけ時間をくれないかな?」

 

「いいぞ。でも、ここじゃダメなのか?」

 

「私にも心の準備をする時間が必要だから!」

 

「お、おう…分かった…?」

 

勇気を出して言葉を口にした自分を褒めてあげたかった…ここまで言えば、もう後戻りはできない、あとは覚悟を決めるだけだ。

 

私の気迫に気圧されたフォンが首を捻っていたが…この後に、困らせるようなことを告げると思うと、ちょっと申し訳ないと思った。

 

そういうことで、私たちは管理区へと戻るべく来た道を戻り、転移門を起動させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで誤算が生じた…フォンどころか、私でさえ予想ができないことが。

 

「…えっ…?」

 

転移した先は見慣れた管理区ではなかった…そこは、私がホロウ・エリアへと飛ばされる前にいた層の転移門…私はアインクラッドに戻ってきてしまっていた。

 

「…そうだ、フォン…!…いない…っていうことは、フォンも飛ばされた時にいた層の転移門に飛ばされたのかな」

 

今から様々な層の転移門へと飛べば、フォンを見つけられるかもしれない…そう思い、転移門を使おうとして…私の足は止まった。

 

(…ちょ、ちょっと待って…今から告白しようと思ったら、ちょっと恥ずかしくなってきた。それに…フォンの方も戻ってきたばかりで、色々な人に報告とかあるだろうし…また今度に…攻略組だから、最前線の街にいれば、多分見つけるのも難しくない筈だし…)

 

言い訳だと分かっていたが、機会を逃してしまったが故に私はそう自分に言い聞かせていた。もっと…もっと気持ちを整理してから、告げようと…私はそう思ったのだった。

 

その時だった…今までホロウ・エリアにいたせいで通知が止まっていたメッセージが一気に飛んできて、その中に気になる一文が目に映った。

 

『73層攻略完了!』

 

 

 

「73層…攻略完了?!」

 

フィリアと一緒にホロウ・エリアの管理エリアより管理区へと戻ろうとして…俺は何故かアインクラッドの73層迷宮区前の転移門に飛ばされていた。

 

フィリアの話というのが気になったが…フレンド登録をしていなかったことが仇となり、連絡を取ることができない。何かしらの方法でフィリアに連絡を取って、できなかった話とやらを聞くべきだと思っていた矢先だった。

 

ホロウ・エリアにいたせいで受信できていなかったメッセージが大量に流れ込んできた中で、とんでもない文字が目に入り、思わず叫んだ。

 

「73層攻略完了って…いつのことだ!……三日前!?どんだけのスピードで攻略してんだよ!マズい…74層の攻略が始まっているとしたら…急いで確認しないと!?」

 

74層…それはこのゲーム『ソードアート・オンライン』がクリアされるきっかけとなる出来事の前哨戦となる大事なイベントが起こる層だ!

 

もしも…俺がホロウ・エリアに行っている間にあのイベント起こっていたら…とんでもないことになる!

 

フィリアのことは一旦後回しにして、俺は山のようにきていたメッセージもあとで返すと心の中で謝りながら、急いで状況を確認しに駆け出したのだった。

 

…そこから、キリトの心配のメッセージに返送した返しにレベリングに誘われ、その帰りにラグー・ラビットをハントしたのは2日後のことだった。

 

 

 

「…というのが、ホロウ・エリアにおける俺たちの顛末だ」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

長い…とてつもなく長い過去の語りが終わった。昼過ぎに話し始め、ところどころお説教やら解説やらお説教やら反省やらを挟んでいたのもあり、結構な時間が経過していた…うん、お説教がちょいちょいの頻度で挟んだのが長くなった原因だな。

 

もう何杯目になるかを数えるのを諦めた、話の途中で淹れた紅茶を口につける俺に対し、聞き手である二人…ユウキとカナデは少しばかり放心しているように見えた。いや、正確には違う…正確には、

 

「つまり、フォンはフィリアさんが告白しようとしていることに気付かずスルーしたんだ」

 

「…そういうことです、すいませんでした!?」

 

呆けているのではなく、呆れているというのが適切だった。開口一番に、容赦なく事実を突き付けてきたユウキの指摘に、俺は取り繕っていたポーカーフェイスの仮面を外し、正直に謝罪した。

 

「まぁ、百歩譲って、あの時のお主の事情を考慮して仕方ないと思う部分はあるが…それでもそれはないぞ、フォン」

 

「うぐぅぅ…俺だって、思い出した今となってはどんだけ酷いことをしたかっていう自覚はあるよ…でも、ホロウ・エリアに戻ってきたら、もう74層の攻略が始まっていたら、流石に焦るだろう」

 

「先を知っているが故にそれに振り回されちゃったんだね…しかも、SAOがクリアされた後、フォンはアスナと同じように前のALOに続けて囚われていたし…」

 

カナデがフォローと批判が入り混じった言葉を告げてきたのに、もう俺はたじたじとなっていた。流石のユウキも致し方ない部分がありすぎたと感じているらしく、フォローしてくれていた。

 

「でも、そのフィリアさんって人…それから、フォンに会いに来ようとしなかったのかな?」

 

「そこが俺も不思議でさ…ALOから帰ってきて、特に反応がなかったんだよな。まぁ、俺も一時期忘れ…ちょっと意識してなかったところがあったから、何とも言えない所なんだが…」

 

「帰還者学校にはおらんかったのか?年齢的にはアスナやリズに近いのじゃろう?」

 

「いや、どうだろう…基本的に、帰還者学校の付き合いってクラス内で解決してるからな。特に、SAOの話やハンドルネームを持ち出すのはタブーなってるから、詮索しないようにしてる暗黙のルールがあったりするし…」

 

ユウキとカナデの疑問に答える一方で、俺もそれは感じていた疑問だった。もっとも、SAOにダイブしていた全ての未成年が帰還者学校に通っているとは限らないからな…シグさんとかは大検を取って、大学受験をしているし、アルゴさん(はぐらかされそうになったが、シグさんが代わりに答えてくれた)やミトなんか別の学校に通っていたからな。

 

「まぁ、休み明けにちょっと探してみるよ。これまで他のクラスとかあまり意識してなかったし」

 

それでも帰還者学校にいないということなら…一旦、フィリアの話は保留にしよう。それまでに、俺の気持ちの整理もできる筈だし…カナデと違って、フィリアのことを振らないといけないのは、ちょっと…いや、大分思うところがあるのだが…

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

決して、二人の「分かってる?」」という目線に屈したわけではない。

 

「コホン…まぁ、そのフィリアという女子のことは置いておいて…それにしても、お主とキリト…いや、ホロウのキリトか。まさか、幻想剣と二刀流が闘ったことがあったとはな」

 

「戦ったといっても、あくまでホロウという名の虚像だけどな。多分、本物相手だと勝てたかどうか…ALOのデュエルトーナメントで戦った時も、キリトはOSSで再現した二刀流ソードスキルだけで勝負して、俺の辛勝だったからな。もしもSAO時代のキリトだったら、未だに勝てる気がしないからな」

 

「なんと…お主とキリトはALOでも戦ったことがあったのか」

 

「そういえば、ボクとフォンがデュエルしたことは話したことはあったけど、キリトと闘った話はしたことなかったっけ?」

 

「…まぁ、さっきも言った通り、自慢できる話ではないからな」

 

「というか、お主…キリトといい、ユージオといい…友に剣を向ける機会が多くないか?」

 

「…成り行きでそうなっただけだよ。別にバトルジャンキーで喧嘩を吹っ掛けてるわけじゃないからな」

 

ホロウキリトの激闘から、キリトとのデュエルの経歴の話になり、これまで語り切れていなかった話を知ったカナデが驚き、そして、アンダーワールドの件から恐ろしいものを見る目を向けられた。

 

いや、キリトの件もユージオの件も不可抗力で…って、思ったら、アスナとも剣を交えたことがあったな。というか、それを挙げるなら、時折手合わせをしているユウキなんてどうなる。

 

週に何度かガチバトルをしてるんだぞ…幻想剣なしで勝率8割、幻想剣ありでなんとか5分…戦歴としてはそんなところだったりする、もちろん、ユウキの方が勝率が上だ。というか、幻想剣ありでも5分とか…やっぱりうちの嫁さん、最強というか、どっかおかしいと思う。

…そう考えると、それに準ずる反射神経を持つキリトのレベルがどれだけおかしいかがよく分かるだろう。あれで二刀流スキルが本来の能力を発揮できる状態のキリトに勝てるなんて思えるわけがない。

 

「…はぁ。何を思ってるか分かる顔しておるが、お主も立派な化け物クラスの実力者じゃからのう、フォン」

 

「…えっ?!」

 

「アハハ、フォンってそういうところ自覚ないよね「お主もじゃぞ、ユウキ」…えっ!?」

 

心を読まれたかのような発言に俺が驚き、それを面白がったユウキも突っ込まれて驚きの声を上げていた。

 

…うん、ALO入りたてのカナデが言うのだ。きっと、その指摘は間違っていないのだろう。本当に自重と言うか…目立たないように気を付けよう、うん。

 

「でも、まさか幻想剣スキルにそんな秘密があったなんてね…フォンがSAOから使っていたっていうのは知っていたけど、そんな事情があるとは思ってもなかったなぁ」

 

「…ふむ、過去のことといえど、これはこれで面白い話じゃったのう。残念なことに、ALOではユニークスキルが幻想剣を除きなくなっておるから、あまり縁のない話というところじゃろうが…話はそれで終わりではないのじゃろう?」

 

「…えっ?」

 

俺が勝手に反省している一方で、満足したというユウキに続けて感想を述べていたカナデの声が途中から真剣味を帯びた。そんなカナデの指摘に、ユウキはどういうことかと首を傾げていたが、俺はこれから言おうとしていたことを先に読まれていたことに、やれやれと思った。

 

「本当に…カナデの鋭さには参るよ。ああ、俺がこの話をしたのにはもう一つ理由がある。二人には教えておくかどうか迷ってたんだが…この話をした以上、教えないわけにはいかないからな」

 

「…今の話に、まだ何かあるっていうの?」

 

苦笑から一転…俺が真面目な表情をしたことで、ユウキもあまり宜しくない話だと察してくれたようだ。

 

「先日の月夜の黒猫団の二人がデイリーダンジョンに閉じ込められて、キリトたちと一緒に救援に行った話はしただろう。その後に、キリトとユイちゃんにはホロウ・エリアの話の一部をしていたんだが…

フィリアのカーソル異常を直した際、中央管理コンソールを使った際にちょっと調べたことがあったんだ」

 

「調べたこと?…それは…」

 

「ホロウPoHが設定し直した各エリアボスの設定についてだ。あれほど凶悪な能力を持つボスがどういったものか…俺のカーソルを直す際に、ちょっと気になって調べたんだ。その時、大空洞エリアボスのネームドに次のような冠文字が付いていたんだ…『HNM』の文字が」

 

「NNM…?後ろの二文字はいつものネームドモンスターの略称だよね。残るHは…」

 

「察するにホロウ…ホロウ・ネームド・モンスターといったところかのう」

 

「多分な。ホロウ・データやホロウ・プレイヤーのことから考えて、その通りだろうな。そして、先日、俺とキリトたちが対峙したボスが持っていた特殊スキルの名称が『ホロウボディ』だ」

 

「っ…!?それって…」

 

俺の言いたいことを理解できたユウキが驚きのあまり手で口を覆い、その続きを引き取るようにカナデが口を開いた。

 

「偶然の一致…という安易な判断はできぬか」

 

「ああ…その特性自体もかなり珍しいものだったからな。あまりにもホロウ・エリアの各ボスモンスターと似ている感じがしてな。何も関係ないことを祈りたいところだけど…こればっかりは良くも悪くも確証がないからな」

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

先日のあのイレギュラーに等しいボス…月夜の黒猫団の二人が巻き込まれた事件の内容といい、どうにもホロウ・エリアを連想させてしまう内容だったこともあり、それが俺に嫌な想像をさせてしまっていた。

 

「まぁ、ないことを祈りたいんだけどな…二人には知っておいてもらった方がいいと思ってな。これで話は本当に終わりだ」

 

最後の余談までを話し終えたことで、ホロウ・エリアにかかる思い出話や関連した内容は全て話し切った。

 

さて、長時間話していたこともあり、もういい時間だ。一旦ログアウトしてから、現実世界で夕食を取ってから、また戻ってくる方がいいだろう。そう思い、席を立とうと…

 

「終わったなら、そろそろ決めようか。フォンへのお仕置き」

 

「…えっ」

 

今しようとしたことが吹っ飛ぶ程の衝撃発言がユウキから飛び出し、俺の頭の中が真っ白になった。

 

 

 

「…ほ、本当にやるのか、ユウキ」

 

「もう…ここまできて怖気吐くのはなしだよ、カナデ。というか、これぐらいやらないと、フォンのことだから、手を出すのがもっと先になるよ、絶対!」

 

「し、しかしのう…こういうのはわしにはまだ早いというか、もう少し時間を掛けたいというか…」

 

「そんなこと言って、ボクに気を遣い過ぎて遠慮し過ぎなの、カナデの悪いところだからね。ボクと一緒なら多少は罪悪感が薄れるでしょ?」

 

「別の意味で恥ずかしいのじゃ!?というか、お主はなぜ平気なのじゃ!?」

 

「そ、それは…アスナがこういうのもあるって教えてくれて…ボ、ボクだって全く恥ずかしくないとかそういうわけじゃないから!?」

 

 

「…えーっとお二人さん。そこまで恥ずかしいのなら、やっぱり止めないか?寝づらくなったら、本末転「ダメ!?」「だ、ダメじゃ…!」…さいですか」

 

そんな会話を耳にしながら、説得のタイミングを見計らっていた俺だったが、言葉の途中でものの見事に反対を受け(ユウキはともかく、まさかのカナデもまでも)、俺は今度こそ諦めた。

 

…ユウキの発言。フィリアの一件から、早速お仕置きを…というか、俺に灸を据える目的で今、二人が俺に密着しているわけだ。

 

お仕置き発言から、夕食を作りに行かされ、強制的にログアウトさせられた後、ユウキとカナデの二人で話し合った結果、決まったのは…

 

「ほら、カナデ。もっとくっついて、手をこっちに回して」

 

「こ、こうか…」

 

(…これ、ちょっとした拷問じゃね?)

 

前から聞こえてきたユウキの要望に、後ろから聞こえてきたカナデの声に遅れて、彼女の手が動いたのを感じた。

 

そう、お仕置きは添い寝だった。しかし、ただの添い寝ではない…ユウキが前、そして、カナデが後ろから俺を抱き挟むように抱えた形での添い寝だった。

 

…もう一回言おう、ちょっとした拷問だ、これ!?

 

ユウキとはよく一緒に寝ていることもあり、今は耐性ができているが…そこにカナデが加われば、そんな耐性など紙切れと化してしまう程だ。

 

ナイトキャップにちょっと薄めの寝巻のカナデに、ノーマルタイプのパジャマを着たユウキのコンビは破壊力がえげつない。これを耐えて眠りに就けなど…ちょっとした拷問だろう!?

 

(ユウキの匂いだけでなく、カナデの匂いも…というか、当たってるよな、これ…いやいやいやいやいやいやいや!?感じるな、記憶するな、息するな…は無理か。ともかく、五感をシャットアウトしろ!?やれ、俺!できるだろ、俺!?これまで、ユウキと何度も添い寝してきただろう!?ここまで鉄の精神を作り上げてきた成果を応用して発揮するところだぞ、俺ぇ!?やってみせろよ、俺?!)

 

心から沸々と沸き上がる欲を懸命に堪え忘れ、シャットアウトしようと思考を超加速させる…若干バグってる気もするが、それだけ必死ということだ。

 

「フォン、今日はボクたちよりも先に寝かせないから」

 

「そ、そうじゃ…!これはわしらからお主へのお仕置きなのじゃからな」

 

「…さいですか」

 

抵抗は不可、あとはひたすら耐えるだけだと…この地獄に等しい耐久戦に挑む覚悟を決めた俺は、二人が眠くなるまで色々な話をすることにした。

 

 

…だけど、この時の俺は予想もしていなかったんだ。

 

 

彼女との再会が、自分が予想していたよりもすぐ近くにまで迫っていたことを。

 

俺が覚悟していたことなど、まだまだ甘く、そして、それが原因で彼女を傷つけることになることを。

 

俺の感じていた懸念が、最悪の形で的中することを。

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…っ…?!」

 

「キリト君!?」「お兄ちゃん!?」

 

「大丈夫だ…二人とも無事でよかった。けど…」

 

あるダンジョンの最奥…そこにはキリトとアスナ、リーファの姿があった。しかし、三人は今、とんでもない事態を目にして、遭遇していた。

 

二人を庇い、咄嗟に二刀流へと装備を切り替え、防御をしたことで難を逃れたキリト。肩を揺らし息をするキリトを心配する二人に問題ないと告げながら、キリトは前方の人物へと目を向けていた。

 

自身のHPを二刀流の防御越しに半分近く削ったプレイヤーの一撃…その威力にも驚いたが、もっと驚いたのは、その技にあった。

 

「なんで…どういうことなんだ…」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

自然と口から出たキリトの問い掛けに、その人物は何も応えない。そして、持っていた複数の紫色にて構成された禍々しい色合いの両手剣をだらりとおろし、そのまま…

 

『…「   」』

 

キリトたちには聞こえない声で転移結晶を発動させ、そのまま姿を消してしまった。残されたキリトたちは我を忘れ、呆然とするしかなかった。

 

「なんで……どうしてあのプレイヤーがフォンの幻想剣のソードスキルを使っていたんだ…!?」

 

そう…キリトたちを襲ったのは、姿を消したプレイヤーが使ったソードスキルで、そして、それは、キリトたちがよく知る……フォンの十八番の技である幻想剣≪両手剣≫超重単発最上位ソードスキル〈エンド・オブ・フォーチュン〉に酷似していたのだ。

 

 

 

 

そして、俺は後に知ることになる。

ホロウとのつながりは未だ途切れず、その影が確実に迫っていることを。

 

 

第28話 「そして、過去(ホロウ)と今がつながる」

 

 

 




まさかの衝撃のラスト…フィリアの告白失敗とか、フォンへのお仕置きなど吹っ飛ぶオチでした。

ということで、本章後半となる『リユニオン・ビヨンド』へと繋がる布石でした!リユニオン(再集結)したビヨンド(先へ)となるお話となります。
後半のお話はまた別の機会にするとして、最後に登場した『もう一人の幻想剣スキル使い」の謎を追うのが主軸になります。
…ただ先に言っておきます、後半はそこまで長くはならないです。

フィリアさん、告白しようとした矢先のまさかの転移事故…しかも、タイミングが悪すぎた…74層攻略後、フォンは一時期失踪に近い状態になってましたので、仕方ないといえばないのですが…
(ちゃ、ちゃんと後半でフォローしますので、お許しを…!)

そして、前々から話に出ていたフォンへのお仕置き…ヒロインズによる添い寝サンドでした。見た目はご褒美ですが、やられる側からすると、手を出せないという制約ありだと地獄と化すかと(黒笑)

ということで、次回から後半編スタートです!
まずはオールメンバー集合からの話し合い回です(そして、フォンがとんでもない疑いやら風評被害を受ける回です(黒笑))

それでは、また!

キャラエピ第2段!どのキャラから見たいですか?(時系列の問題で多少前後することがあります)

  • リーファ
  • シノン
  • リズ
  • シリカ
  • ミト
  • ユイ
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