一回途中まで書いていたのを、展開がちょっと気に入らなかったので、修正したらとても長くなるという…(苦笑)
ということで、フィリア合流からの全員集合再びの回です(本章、そういうの多すぎ!?)。案の定、長くなったので、フィリアとの対話回は次回にお預けです。
それでは、どうぞ!
「えっと…フィリアです。その…宜しくお願いします」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
(まぁ、こうなるよなぁ…)
デイリーダンジョンでのフェイカー(と思われるプレイヤー)と遭遇した後、俺たちはフィリアを連れて、ログハウスへと戻ってきた。
えっ、ユウキとカナデへの説明?
『『(ニッコリ)…あとでゆっくりと、ね?』』
有無を言わさない一言により、後ですることが確定しております、はい…でも、その前にフェイカーとの一件を仲間たちへと説明するのが最優先ということで、4人無言のままログハウスにて帰ってきたわけで…
アルゴさんを通じて、他デイリーダンジョンへと潜っていた面々が戻ってきたのだが、
『フォンが女の子を連れて帰ってきてる!?』
と、戻ってくる度にそんな一言を驚きと共にされた。みんな、物凄く俺が純情(ユウキ一筋)と思ってくれているらしい…おかげで、カナデにまで手を出している事実にて、俺の心に棘が刺さりまくりだよ。
「…っ~~~///」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
言われるたびにどこか気恥ずかしそうにするフィリアと、笑みを浮かべているのに対して纏うオーラがどんどんと冷気と怒りの度合いが増していくユウキとカナデがいた。頼むから、全員早く集まってくれぇ!?と心の底から祈っていたが、全員が揃ったところで、結局紹介しないといけないことには変わらないわけで…
冒頭のフィリアを紹介した場面に戻るわけで…
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
(さてと、どう説明していくべきか…)
フィリアという突然の人物の紹介に、どうしたものかと頭を抱えそうな本心をなんとか心の中にて抑えながら、説明をどうしようかと考えていた。こういう時、誰から質問してくれるのが一番なのだが…
「聞きたいことがあるんだけど」
「な、なにかな…」
そんなことを思っていると、俺の心情を汲み取ったかのようにシノンが手を挙げて、フィリアへと質問していた。よし、いい流れだ…質疑応答に併せて、俺が補足の説明をすれば、
「…フォンの新しい彼女?」
「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉいい!?」
さっきまで考えていた段取りが頭の底から抜け落ちるほどの、トンデモ質問がシノンから飛び出してきて、思わず叫んだ。シノン、この野郎!?
「違うの?てっきり…ねぇ?」
「違うわ!?」「違うよ!?」
「おー、息ピッタリ」
カナデの方を一瞥してから、そんな意味深な一言を放つシノンに、フィリアと揃った反論の声が出ていた。前に海に行った時に、エギルさんからシノンにはバレているかもしれないと告げられていたが、やっぱりバレてるっぽい!
「まぁ、そうよね…キリトと違って、ユウキ一筋のフォンがそんなことするわけ…」
「(グサッ…!)」
「ですよねー…なんか想像できないというか」
「(グサグサ…!)」
「あんだけお兄ちゃんにうるさく言ってるのにないですよー。あれ…でも、最近はそういうお小言も少ないような気が…」
(や、ヤバい…もう自白した方が楽な気がしてきた…)
リズ、シリカ、リーファの俺への評価に、俺のメンタルは瀕死寸前だった。みんな、どんだけ俺への理想値が高いんだよ、おい!?もう眩暈さえも感じてきて、カナデのことも含めて告げた方が楽なんじゃないかと思ってきたところで、
「ちょ、ちょっといいかな…!」
「…!」
意外というか、まさかの助けの声が上がったのは、俺の隣にいたフィリアからだった。
「皆、誤解してるみたいだから言っておくけど…私とフォンはそんな関係じゃないから。SAOの時に一緒に攻略していた時があって…その時にお世話になったというか、助けてもらったというか…ともかく、それだけであって、特に変な関係じゃないから!?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
(…あれ、これ終わった気がする…)
『いや、それは逆に何かあった時の言い訳なのでは?』みたいな雰囲気が全体に流れてしまっていた…フィリアなりに精いっぱい弁解しようとしての発言だったのだろう。それを責めるつもりはないのだが、これはもう俺が何を言ってもしょうがないような気がしてきて…
特に、アスナ、リーファ、シノン、リズ、シリカ、アリスの目線がとんでもないことになっていた。唯一、ユイちゃんが「そんなことがあったんですね…!」と純粋に感動しているようで、逆に心が痛いわ!
ついでに、アルゴさんはどこか面白そうに傍観していて、シグさんはわざと気配消して事の成り行きを見守ってるし、ミトはどこか呆れた視線を向けていた。
そして、一同の視線はもちろん俺のパートナーへと向けられ、その意見を仰ぐべきだという雰囲気の中、ユウキはというと、
「みんな、フィリアさんの言う通り、勘違いし過ぎだって」
『…えっ?』
「実は、昨日偶然フィリアさんとの冒険譚を聞いたばかりだったんだよ。ホロウ・エリアっていうところに、フォンがSAO時代に迷い込んでたことがあって、その時に一緒に行動していたのが、フィリアさんだったんだって。それで、今回の一件で偶然再会した、って話なだけだよ…ねぇ、フォン、フィリアさん?」
「あ、ああ…」「そうだけど…知ってたんだ、えっと…」
「ユウキだよ。ALOだと絶剣で有名って言えば分かりやすいのかな。それと…みんなのリアクションから察してるかもだけど、フォンの彼女です!」
「…!そ、そうだよね…うん、なんとなくそんな気はしてたかな…」
(…誰か、俺の記憶を吹っ飛ばしてくれないかな…)
ユウキの説明に、納得した者、更に驚くか呆然とする者、あるいは唖然とする者などに分かれたが、当事者であるフィリアはユウキの言葉にどこか気圧されていた。
…それに挟まれる形で俺は現実逃避を図っていた…ユウキの説明、表だけを聞けば、誤解を解いているだけのように聞こえるだろう。だが、実際には違う。
…嘘は言ってないが、本当のことも言ってないだけである。一体誰の悪いところを真似たのだろうか…まぁ、言わずもがな俺なんだけど…ちなみにカナデは沈黙を保っており、それが逆に怖かった。
「「…(ジー)」」
あと、シノンとエギルさんの目線が痛い…エギルさんはまぁ、分かるが…これはシノンには確実に見透かされているのは確実なようだ。
それを無視し、どう軌道修正すべきかと考えていると、シノンのせいで脱線した話を元に戻してくれたのは、キリトだった。
「ホロウ・エリア…それって、この前、ユイと一緒に聞かせてくれたあの話か」
「(ナイス、キリト!)ああ…あの時は、時間が無さ過ぎて、簡単に話した程度だったが…こうなったら、みんなにもきちんと説明をしておいた方がいいだろうな」
心の底でサムズアップしながら、キリトの言葉に乗っかかる形で、俺はホロウ・エリアでの冒険譚を要約して、みんなに説明することにした。そのため、もう一人の当事者であるフィリアに問題ないかを尋ね、
「フィリア、ホロウ・エリアのことを話すがいいか?できるだけ、プライバシーにかかる情報とかは伏せるから」
「…うん、大丈夫。足りない部分が補足すればいい?」
「頼む。それじゃ、まずは…ホロウ・エリアに迷い込んだ時の話からしていこうか。昨日、ユウキたちに話した時には気づいたことも補足するから、分からない点があったから、都度質問してくれ」
そこから、俺はホロウ・エリアにかかる話を始めた。
73層攻略時に、いきなりホロウ・エリアへと招かれたこと、
幻想剣(あと、おまけで技術連携も)はホロウ・エリアにて開発され、その原因が俺が本来存在しない筈の10001人目のプレイヤーで、無理矢理に近い形でSAOに参加したことによるものであること、
ホロウ・エリアはアインクラッドのα版を元にしたエリアで、未実装あるいは追加実装のシステムを検討するための試験場の立ち位置に近い場所であったこと、
ホロウ・エリアでは、プレイヤーのデータを基にした姿が瓜二つのプレイヤー…ホロウ・プレイヤーが点在していたこと、
その中には、キリトや俺と因縁深いPoHのホロウ・プレイヤーもいて、シンギュラリティ(カナデ曰く、ある意味でユージオやアリス、そして、カナデ自身のように、独自の思考…いや、自我を持った、あるいはイレギュラーな行動を取るようになったものを指すのだとか。(もとは技術的特異点という意味だった筈…))を起こし、フィリアの弱みにつけ込み騙し、俺を始末しようとしたこと、
ホロウPoHの企み…ホロウ・エリアとアインクラッドの逆転現象を引き起こすアップデートを阻止するため、ホロウ・エリア全攻略し、システム管理区に乗り込み…その最奥にて待ち受けていたキリトのホロウ・プレイヤーとの激闘に勝利した上で、企みを阻止したこと、
…要点だけをできるだけ掻い摘んで話したが、それでも、それなりの時間を要した。時折、質問に答えながらであったが、最後まで話し終えたところで…
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
ほとんどのメンバーが頭を抱え、理解するための処理を必死にこなしていたところだった。あのエギルさんやアルゴさんでさえそうなっていたのだから、よっぽどだったのだろう。
「まさか…ホロウのPoHに俺と戦っていたなんて…そういう大事なことは言っておかないとダメだろう、フォン」
「いや…帰ってきたら、もう73層の攻略が完了してて、74層の攻略が始まってたからさ…帰ってきてから2日後にラグーラビットと遭遇しただろう?」
「…あー、そういうことか。確かにそれは時間なかったな(そうか…フォンはアインクラッドの出来事をある程度、元の世界にいた時に読んだ小説で知ってたんだよな。だから、あの時、いなくなっていた理由を聞いた時、ちょっとはぐらかされた…というか、74層以降のことに意識がいっていて、説明がおざなりになったのか…)」
「でも、これで真相が分かったね。73層攻略時に、フォン君がいなくなったと相談を聞いて、探し回っていたけど…まさか、そんなことに巻き込まれていたのか」
なんとか…というよりも、事前に話を聞いていたのが功を制したキリトと理解が追いついていたシグさんが納得の声を出していた。
キリトは俺の事情…俺が『ソードアート・オンライン』の小説1巻を呼んで、ある程度の時系列を把握していたことを知っているので、俺が告げた言葉の真意を読み取ってくれたような表情をしていた。
シグさんは、当時俺が失踪扱いになっており、捜索してくれていたのもあって、原因と背景が分かったことで納得していたようだ。
「…この前、お話を聞いた時は幻想剣関連をメインにしたものでしたが…そんなことがあったんですね」
「ユイちゃんからすると、驚きの内容だよね。俺も旧ALOとか色々あって、今のALOでも、オリジナルソードスキルが導入されるまでは、幻想剣スキルって半ば封印していたからさ…」
「…いえ、無理もないと思います。それに…まさか、パパの偽物…というよりも、模倣データと戦っていたなんて…」
そして、キリトと同じく事前知識があったユイちゃんも大丈夫だったが、やはり驚きの表情は隠せずにいて、小妖精の姿でキリトの方に乗っかかっている彼女の言葉に、俺は苦笑いするしかなかった。
「だよな…PoHのこともだが、俺のホロウとも戦っていたのは驚きだよな。実質、本当の意味での二刀流と幻想剣の対決だったわけだよな」
「…あの時はマジでやばかった。でも、多分、本物のお前の方が数倍は強かったと思うぞ、うん」
「それは喜べばいいのかどうか迷う感想だな…でも、なんか変な因縁だよな。ホロウ・エリアでは、お前が俺の偽物モドキを倒して、旧ALOでは須郷に操られたお前を俺が倒しているんだからな」
「そう言われればそうか…確かに、変な因縁だな」
自分の知らない所でそんな戦いが起こっていたとは…キリトが驚くのも無理はないと思いつつ、ALOの剣術トーナメントの一件もあり、キリトが感慨深くそんな感想を零していた。
一方で、俺やアスナが旧ALOに囚われていた時、グランドクエストの門番として配置されていた俺を、キリトは打ち倒している。それぞれが本来の姿ではない相手を倒していることに、確かにと思いつつ互いに苦笑いを浮かべてしまっていた。
「…とりあえず、フォン君がSAOの時からばけも…常識知らずを発揮していたという理解でいいのかしら?」
「はっ倒すぞ、アスナ」「その通りだよ、アスナ」
一番に理解困難状態から復帰したアスナの第一声に、俺とユウキの揃った返しが出た…その内容は全く真逆だったが。あと、さり気なく、人を化け物扱いしようとしたな…アイアンクローを喰らわすぞ!
「…いや、化け物どころか、チーターで、いたたたたぁぁ!?痛い痛い!?ゴメン!?悪かったから、離して?!」
次に復帰したのは意外なことにミトで…アスナの言葉で頭に浮かんでいたのもあり、失礼なことをものの見事に口にしたことで、即座にその頭にアイアンクローをお見舞いしていた。
強気なところはいいと思うが、空気を読むのも大事だぞ、お前…なんてことをお説教として告げて、そんなことをしている内に他メンバーも続々と復帰していた。
「…あ、頭痛い…」
「あ、アスナさん…氷を魔法で出してください」
「ほれ、氷嚢じゃ。欲しいものは手を挙げよ」
理解は終わったが、未だに頭を抱えるリズと、目を回しかけているシリカが混乱のあまり変なことを発言していた。他のメンバーもまだ混乱しているところがあるらしく…それを見据えていたカナデが、いつの間にか準備していたのか、氷嚢を作り、必要とする者に配っていた。
ちなみに受け取ったのは、シリカにリーファ、アリスの三人だった。
「というよりも…初耳の情報もあったんだけど…フォン、あんたSAOには途中参加だったの?」
「…あれ、その辺りって言ってなかったっけ?」
「SAO生還者であることは聞いてたし、ユウキとの馴れ初めにあたる話とかは聞いてたけど…本来存在しなかったプレイヤーとは全く聞いたことなかったんだけど…」
「フォン君、フォン君…多分、その辺りのことを知ってるので、75層…団長との決闘に同席していた人しか知らないと思うよ」
再び質問タイム…という感じで、口火を切ったのはまたもシノンだった。そして、出てきたのは、俺が10001人目のプレイヤーであることについてだったが、シノンの質問に、俺は話してなかったかと首を傾げていた。
すると、その記憶を補足してくれたのはアスナだった。言われた通り、思い返してみれば、そこら辺りの話って、ヒースクリフ…茅場が指摘した時に、キリトやクライン、エギルさんは知ったんだったな。
…逆に、SAO生還者でも、その場にいなかったリズやシリカ、アルゴさん、シグさんは知る由がないわけで…もちろん、俺がその辺りのことを言わなければ、リーファやシノンたちが知る術がないのも当然で…
「…そういえば、言ってなかったかも」
「…はぁぁぁ…あんたって奴は…」
「フォンの隠し癖って、結構頻繁的にやってたことなのね…」
「そうなんだよ、フィリアさん。フォンって、言ったつもりで、大事なことを悉く言ってなかったり、意図して隠していたりすること結構あるからね」
「…いや、本当にゴメン。最近は気を付けるようにしてるんだけど…」
シノンが溜息と共に呆れた視線を向けてきて、ホロウ・エリアでもちょいちょい(俺が夢幻の戦鬼と呼ばれていることを告げてなかったりなど)とやらかしていたこともあり、同じく呆れた視線を隣のフィリアに向けられてしまった。その苦労が分かるとばかりにユウキがうんうんと唸っていた。
…別の方向で精神的ダメージが入ったことは言うまでもないだろう。本当に気を付けよう、うん。
「でも、まさか私たちの知らないところで、そんな危機が迫っていたなんて…ちょっと信じられないわよね」
「もしもフォンがホロウ・エリアに飛ばされていなかったら、俺たちはここにいないと思うと、ゾッとする話だよな」
「…私もホロウ・エリアに飛ばされたのは偶然だったんですけど…フォンがいなかったら、ホロウ・エリアに閉じこめられたままだったと思います。しかも、そんなとんでもないことが起こっているとも知らなかったので…だから、フォンには感謝しかないんです」
「…全く。フォンらしいというか、お前さんもまた変なトラブル体質を背負ってるようだな」
リズとクラインが、自ら知らないところで起こっていた出来事に苦い表情を浮かべていた。無理もない…ホロウ・エリアという、まさしく裏の世界で起こっていたことを、どうやって認識しろという話な訳だからな。
一方で、フィリアとエギルさんの評価に少し頬が熱くなった。改めてそう評価されるのは、まぁ…恥ずかしいし、改めて確かにトラブルに愛されるとも自分でも思った。
「一先ず…フィリアさんとフォンの関係はよく分かったかな。で、問題が…」
「フィリアが遭遇したフェイカーのことだな」
「フェイカー…ねぇ、フォン。そのフェイカーって何者なの?どうして、フォンはあのプレイヤーを探していたの」
ようやく前提知識の共有と理解が終わり…というよりは、一段落着いたところで、ユージオが話の本題…今、確認しなければならない議題をあげてくれた。
それに続く形で、俺はフィリアへとフェイカーのことを尋ねた…のだが、逆に俺たちの目的をまだ彼女に伝えるのを忘れていて、彼女からそんな質問が逆に返ってきてしまった。そこで、俺はフェイカーを追っている目的を話すことにした。
「フェイカー…フィリアが接触したあのプレイヤーは、幻想剣とよく似たスキルを持っている可能性があるんだ」
「…えっ!あのトンデモスキルを!?」
「トンデモって…もうちょっと言い方が」
『いや、妥当な評価だろう』
「…さいですか」
フェイカーが幻想剣によく似たスキルを持っているかもしれないと告げると、フィリアは目を丸くしてそんな感想を零した。
その言い方に俺までなんか変な扱いを受けたように覚え、抗議を挙げたのだが、他のメンバーまでもが揃った返しをしてきたので、俺は閉口せざるを得なかった。ユウキやキリトにまで言われてしまうと、どうしようもなかった。
「コホン…で、そいつが急に俺の仲間…そこにいる黒づくめ装備のキリトに襲い掛かったらしくてな。何を目的として動いているのか、そして、なんでそいつが幻想剣に似たスキルを持っているのかを…それを聞き出すために、あいつを探していたんだけど」
「…そこで、あいつから依頼を受けた私に遭遇した、ってことだったのね」
「ああ。だから、フィリアの知る限りでいいから、あいつ…フェイカーのことを教えてほしいんだ」
おおまかではあるが、俺たちがフェイカーを探すことになったきっかけと、その背景を伝えたところで、フィリアも理解を示してくれたようで、右手を顎に当てるポーズで奴について記憶を辿っているようだった。
「といっても…私もそこまであのフェイカーって人のことは知らないんだよね。会ったのも、今朝が初めてだったし…ダンジョンの攻略も私に任せっきりで、戦い方もよく分かってないし…」
「それは困ったのう…キリトと違い、お主はあやつと会話をしておったから、何か手がかりがあればと思ったのじゃが…」
「会話…そういえばなんだけど、あいつ、変なことを言ってたよ?」
「変なこと…?」
残念ながら、フィリアもあいつについてはそこまで情報を持っていなかったらしい。残念そうにそう語る彼女の言葉に、カナデも眉を顰めていた。だが、気になることがあるというフィリアに、俺はどういうことかと首を傾げる。
「コンソールを操作していた時、ダンジョン・コアのデータがどうとか…」
「ダンジョン・コア?えっと…ダンジョンの核って意味で合ってるのか…」
「ダンジョンを構成するデータの核って意味なら、しっくりくるかもな。でも、そんなデータを一体どうしようっていうんだろうな…ユイ、どうした?」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
ダンジョン・コアという聞き慣れない単語に俺は思わずキリトのヘルプの目線を向ける。その視線に気づいたキリトが、もう少し噛み砕いた説明をしてくれたことで、より分かりやすくなった…と思っていた矢先、深刻な表情で何かを考えていたユイちゃんと、そして、カナデも何かに気付いたようで驚いていた。
「……そんな…まさか、いえ…でも、そう考えるなら…」
「じゃが、問題は一体何のデータをじゃ?下手をすれば、カーディナルシステムに検知されてしまうぞ」
「…あるいはカーディナルシステムすらも欺く何か…あっ、幻想剣スキルに適用されているあれをもしも使っているのだとしたら…」
「っ!?もしもそうならば、とんでもないことになるぞ!フェイカーが使ってる幻想剣もどきスキルがその実験台で、ダンジョンコアとしてALOにデータを流用させようとしているのなら…」
「…カナデもユイちゃんも、一体何が分かったって言うんだ」
二人だけが分かるやりとりで、完全に置いてけぼりにされてしまっている俺たち。流石にこれ以上そうされるのも困るため、俺が代表して再び声を掛けると、ようやく二人がこちらへと説明をしてくれた。
「ふむ…ここにおるメンバーでは、前提知識がない者もおるから、少し整理しながら、説明していくとしよう」
「フォンさん、ALOがSAOとよく似た、少しバージョンが古いカーディナルシステムで管理されているのは理解されてますよね」
「ああ…えっと、SAOとほとんど同じだけど、少しだけバージョンが古いんだっけ」
「旧ALOは基幹のプログラムやグラフィックの形式は同じで、バージョンが前のもの…ってことだったけど、今はSAOとほとんど同じ年月が経ったから、そこら辺も違いはもうないんだろうな」
「…ちょっと待って。ALOって、SAOと同じシステムで運営されてるの?!どういうこと…?」
「ミト、その辺りはちょっとややこしい経緯があってね…また、あとでちゃんと説明するから」
カナデの言う通り、ALOを管理するカーディナルシステムの話は知る人ぞ知る話である…そう言われ、ユイちゃんの問い掛けに、少し自信がないままに答えると、キリトが補填する形で答えてくれた。
一方で、SAO帰還者でありながら、加入してから日が浅いミトが一番驚いていた…そして、そんなミトをアスナが苦笑いしながらフォローしていた。
ちなみに、フィリアは困ったように笑っていた…どうやら、ホロウ・エリアの経験もあってから、驚きはしつつも表情に出すほどではなかったらしい(半分くらいは俺のせいだと思ったが、口には出さないでおこう)
「では、カーディナルシステムの特徴は?」
「えっと…キリト、パス」
「人力に頼らない自動制御・統制システムで、エラーチェックとゲームバランサーとしての機構を持ってるだよな。バランサーっていうのは、モンスターのポップ率やNPCのAIコントロール、アイテムや通貨の出現バランスの増減とか、そういうコントロールだよな。あとは…繋がるネットワークから自動で情報を収集して、クエストを自動生成……あ~!?そういうことか!?」
続けて飛んできたカナデの問いには、キリトへとスルーパスを出した。キリトの方も読んでいたというように代答…していると、何かに気付いたようだ。
「ダンジョン・コアっていうのは、外部から流れ込ませたデータのことで、それによってデイリーダンジョンが生成されるようになったってことか!?」
『…!?』
「その通りじゃ」「その通りです」
キリトの一言に、俺たちが思わず息を呑んだ。そして、その言葉が正解と告げるカナデとユイちゃんの答えが返ってきていた。
「ゴメン、キリト…もう少し分かりやすく説明してくれる?」
「あっ、悪い悪い。目的はそのデータの中身を見ないと確実なことは言えないんだけど、フェイカーはALOに何かのデータを流入させたんだ。けど、それをそのまま流入させることはできなかった」
「…そうか。カーディナルシステムの存在か」
「…えっと、そのシステムがずっと見張っているから、安易な方法じゃすぐに見つかってしまう、っていう解釈でいいのかな」
「その通りだ、ユージオ。アンダーワールドでもアドミニストレータが似たようなことをしていただろう。あれのシステム版という感じだな」
ギリギリ話に追いつけていたリズの問い掛けに、キリトはもう少し噛み砕いた説明してくれた。それを聞いた俺とユージオはそれぞれの解釈をしたところで、キリトがそうだと告げて、説明を続けた。
「方法は不明だけど、フェイカーはALOにデータを流入させるにあたって、大型アップデートのためのメンテナンスを利用したんだろう。デイリーダンジョンを出現させるデータという形でALOに紛れ込ませた」
「そして、今度は流入させたデータを今度は回収し始めた…それが、今回の一件ということなのかしら」
「可能性としてはありますよね。そして、その中に幻想剣に似たスキルがあった」
「…まさか…」
「気づいたか、フォン」
アスナとシリカがキリトの説明を受け、他のみんなと同じくようやく話の大筋へと辿り着いたようだ。そして、俺もある可能性に気付き、キリトへと視線を向けると、キリトの方も同じことを考えていたらしい。
「…流入されたのは、ホロウ・エリアのデータなのか?」
『…!?』
「その可能性が高いと俺は思う」
「そう考えると、パパたちが攻略した、あの異常な現象が起こったデイリーダンジョンの説明ができてしまうんです」
「あれは突発的に発生したのではない、元となったデータに従い、発生した最高レベルの難易度のダンジョンじゃったのじゃ」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
キリト、ユイちゃん、カナデの確信をどこかに持った言い方に、俺は…そして、ホロウ・エリアのことを同じくよく知るフィリアは言葉を失っていた。
特に、俺は、月夜の黒猫団を窮地に追いやったデイリーダンジョンボスのことも知っているからこそ、三人の推測が間違っていないと理解してしまった。
確かにあれはALOのボスとしては…教化された新生アインクラッドのボスと比較しても、あまりにもイレギュラーすぎた。だが、あれがもしもホロウ・エリアから派生したものだったとしたら…
「そんな危険なデータを…フェイカーはALOに持ち込んで何をしようっていうの」
「碌なことではないでしょうね…こういう場合、大抵は…」
「ALOにそんなものを持ち込むなんて…!」
リズの問い掛けに、アリスとリーファが怒りと苦悶が籠った言葉を零していた。前者は自身も味わったアンダーワールドの一件から、後者は自身が愛する空の世界を汚されたような気がしたのだろう。
「…下手をすれば、ALOの運営に大きな支障をきたすことになるかもしれません」
「ホロウ・エリアそのものは一種の簡易版カーディナルシステムのようなものじゃ。もしも、干渉し合えば…」
「ラグナロク…ALOにおけるカーディナルシステムの最終プログラムである、自己破壊が始まるかもしれないってこと…?」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
キリトが持つ聖剣エクスキャリバー取得の際にも話に出た、北欧神話でも最も有名な戦争である『ラグナロク』。その勃発は、ALOの最後を意味する話でもあった。
原作でもあったが、SAO…アインクラッドはゲームがクリアされると、崩壊する仕掛けがカーディナルシステムのプログラムとして、茅場が設定していた。そして、それはなんと、その前バージョンをコピーしたALOのカーディナルシステムにも組み込まれているというのは(エクスキャリバーの一件の後、キリトたちから情報を共有された時に驚いたものだ)
つまり、ラグナロクの終焉と共に、ALOは崩壊…リセットされる仕掛けが施されているのだという。その辺りの対応も後々なんとかしなければならないかもしれないと、前にも話したことがあったが、ユイちゃんとカナデの推測のように、まさか直近でそんな危機が迫っているとは…
アスナの問い掛けに、俺もキリトも…ユイちゃんやカナデもはっきりとは答えられなかった。
「ホロウ・エリアのシステムが北欧神話のどっち片方の勢力に干渉したりしたら…ラグナロクが起こるかもしれないってこと?」
「そして、それを管理者のユーミルはただのイベントとして放置するだろうナ。リセットが始まった時には、もう手遅れの段階まで気づかず…」
「目的の部分がまだ見えてないけど…これで、ますますフェイカーを野放しにするわけにはいかなくなったね」
シノンの言葉に、アルゴさんが最悪のシナリオを補足した。それを受け、全員の考えを代弁してくれたのがシグさんだった。
「そう、ですね…奴がどこまでデータを集めきっているかは分かりませんが、次のデータの収集だけは防がないと」
「三連休は明日まで…もしも、明日捕らえることができなかったら…」
「その間にデータを収集されきっちまったら、最悪のシナリオへと進んじまうってことか。本当に、ALOの危機じゃねぇか!?」
「落ち着け、クライン。あくまで、全てが最悪の想定通りだったら…だが、これまでの話からしたら、その可能性が高そうだな」
俺の言葉に、ユウキが最悪の可能性を口にしたことで、クラインがまた大きく驚いていた。オーバーリアクションではないその驚きに、エギルさんが落ち着けというも、その表情はあまり宜しくないものだった。
「…なら、止めようよ」
「…フィリア?」
重い空気が漂い、誰もが何を言えばいいか分からずにいた時、そんな一言を呟いたのはフィリアだった。
「あの時と一緒だよ、フォン…ホロウ・エリアの時と。今はまだ止められる、私たちなら止めることができる。なら、止めようよ。みんなが…この世界を楽しんでいるみんなのためにできることがあるのなら…そうしたいんでしょ、フォンも、ここにいるみんなも」
「…フィリア」
「そうだね、元々偽物ってことでとっちめってやるつもりだっただから…ただ背景が大きくなっただけ、やることは変わらないよ!」
「ユウキの言う通り、結局やること一緒なら、最後までやり切ろうぜ、フォン。俺も、やられっぱなしというのは嫌だからな」
「ユウキにキリトまで……って、みんなもか」
フィリアの言葉を押すかのように、ユウキとキリトも立て続けにそう告げてきて、視線を感じて周りを見れば、他のメンバーも気持ちは同じだと言わんばかりの目をしていたわけで…そんな目をされてしまうと、俺が返す返事など一つしかなかった。
「…ったく。偽物探しの筈が、とんだことになっちまったが…こうなったら、最後の最後までやってやろうぜ、みんな!」
『おう!』『ええ!』
俺の言葉を皮切りに全員が応えてくたことで、三連休の最終日である明日…俺たちはフェイカーを捕らえるために、作戦会議を始めるのだった。
そして、作戦会議は夕方過ぎまで続き、キリトたちも明日に備えて各自のホームへと戻った。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
俺とフィリアは自宅のログハウスのテーブルに向かい合う形で対峙していた。
…真顔のまま無表情なユウキとカナデに監視されたまま、約2年ぶりとなる会話を…好意を持たれている(かつ、俺はそれを知っている)相手との会話を、二人の付き合っている人たちに見られるという、とんでもない地獄が幕を開けようとしていた。
書いてて、「おふらいんシリーズの空気かよ」と思ったのは自分だけではない筈…(苦笑)
あと、シノンがえげつない…まぁ、8割ぐらいバレてますのね(アリスにもバレかかってるのですが…)
あと、みんなのフォンに対する期待がまたエグイ…まぁ、もっと酷い例が身近にいるからですかね(どこぞのブラッキーさん)
あと、ユウキが怖い怖い…一体誰に似たのやろ(間違いなく、彼氏と、姉として慕っているバーサクヒーラーの影響)
ミト、口は災いの元…ちなみにアスナさんはちょいちょいの頻度で喰らってます(苦笑)
さてと…ALOに流れ込んだデータの存在が見えてきたところで、皆さんもフェイカーの正体に見当がつき始めたかもしれませんね。その正体ももうすぐ明らかになります…が、その前にフィリアとの対話が待っております。
そんなわけで、次回はSAOから今に至るまでのフィリアに何があったのかのお話です。フィリアも帰還者学校にいる設定ですが、どうしてフォンとすれ違っていたのかを説明するお話と…フォンの選択にかかるお話です(そして、毎度の如く、ユウキたちに怒られるお話です。もっとも、どっちかというシリアスな理由でなのですが)
それでは、次回再会P‐③:涙と苦悩」でお会いしましょう!
キャラエピ第2段!どのキャラから見たいですか?(時系列の問題で多少前後することがあります)
-
リーファ
-
シノン
-
リズ
-
シリカ
-
ミト
-
ユイ