フィリアとの対話回です。
どうして、フィリアとの再会が遅くなったのか…その背景を語るお話にもなります(通称:こぎつけ回)
後半は悩むフォンにヒロインたちが対応するお話にもなります。
それでは、どうぞ!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(何を…いや、何から話していくべきか)
キリトたちが帰った後、最後まで残っていたフィリアと話がしたいと呼び止めた俺だったが、リビングのテーブルに彼女と対面する形で接していたのだが、何を話せばよいか困っていた。
話さないといけないことは山ほど、聞かなければならないこともそれに比例した量あるのも理由だが、何よりも、
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
ソファーの方から、穴が空くかと思う程にこちらを見ている二つの視線が俺たちへと向けられていた。言わずもがな、ユウキとカーディナルの視線だが、その表情は真剣なもので、逆に何を考えているのかが読み取れないでいた。
「…えっと、その…久しぶりだな、フィリア」
「なにそれ。別に改めて挨拶しなくとも…」
「あっ、いや…ほら、さっきは俺の方は挨拶できてなかったし…」
「今更でしょう、別にそんな仲でもないし」
「いや、そういうわけでも…」
「また、そんな誤解を生むようなことを言ったりしたら…ユウキさんに凄い目で見られるよ」
「っ…!?ううぅ…」
とりあえず仕切り直そうと思い、フィリアに言葉を掛けたのだが…なんと、彼女の方も無表情で淡々と切り返してきた。取り着く島もないというのはこういうことを言うのか、会話する気はないという感じの返しに、俺は再び閉口するしか…
「…プッ」
「えっ…ふ、フィリア…?」
「アハハ、もう…どうしたのよ、フォン。ホロウ・エリアにいた時はもっと容赦なく反論してたでしょ?もしかして、口論の腕が落ちたの?」
「なぁ…別にそんなじゃねぇよ。というか、そこまで口論は…いや、ちょいちょいはしてたけど、そこまでフィリアを攻めたことはなかっただろう」
「よく言うよ、いっつも私をぐうの音が出ないまでに論破してくたくせに」
「あれはフィリアの事情を知らなかった時のことだし、俺も色々と抱えていたから…ちょっといっぱいいっぱいになってたんだよ」
「…で、ちょっとは緊張はほぐれた?」
「…!そうだな、さっきまでごちゃごちゃと考えていたのは無くなかったかな」
「そっか…なら、もう遠慮もしなくていいよ。フォンが聞きたいことを言っていいし、私も聞いてほしいことをちゃんと言うから」
いきなり噴き出し笑いをしたフィリアの言葉に、気を遣われていたことにようやく気が付いた。フィリアなりのジョークだったらしく、遠慮し過ぎていたことを自覚した俺は気持ちを切り替え、ようやく本題に入ることにした。
「ちゃんと…SAOから帰還できたんだな。良かったよ」
「フォンも……やっぱり生きてたんだね」
「…?まぁ、なんとかな。まぁ、色々とあったんだけどな」
ホロウ・エリアの後…別れを告げることもなく、別々になってしまったこともあり、互いにそんな言葉が自然と出ていた。
フィリアの言い方にどこか引っ掛かりを覚えたところもあったが、SAOクリア後に色々とあったのもあり、俺は思わず苦笑いを浮かべていた。
「フィリアもALOをプレイしていたんだな。ちょっと驚いたよ」
「といっても、ALOをプレイし始めたのは、今年の春からなんだけどね…あんなことがあったから」
「…もしかして、SAOか」
「うん…ちょっとトラウマになっていたところもあったし…他にも理由があったから…」
「…(フィリア…?)」
フィリアがALOをプレイし始めたのは結構最近とのいうのに驚いた。そして、同時に納得したところもあった。俺のALO歴はもう1年以上になるが、これまでフィリアと再会しなかったのは、そういった事情もあったのだろう。
SAO帰還者の中には、VRMMOを引退した者も少なくない…それは無理もない話だった。ログアウト不可能のデスゲームと化したSAOの経験や記憶から、VRMMO自体にトラウマを覚えた人たちもいたのだ。
帰還者学校でもそういった人は何人かいた…だからこそ、帰還者学校では、SAOだけでなく、VRMMOにかかる話を大っぴらにする人は煙たがられる傾向にある。
フィリアもそれでALOをプレイするのは敬遠していたのだろう。だが、またしても意味深な言葉がフィリアの口から出てきたことに違和感を覚えつつ、とりあえず話を進めることにした。
「工匠妖精…ある意味でフォンっぽいね」
「そういうフィリアは影妖精か。確か…トレジャーハントに優れたスキルが多いんだっけ。フィリアが好きそうな種族だよな」
「一方で、あんまり人気のない種族だって後から知った時には笑っちゃったけどね」
「まぁ、ソードスキルがある今のALOじゃ、そこまで意味のあるものじゃないけどな。それに、どこぞの黒好きみたいに、色だけで選ぼうとするよりは遥かにマシだよ」
影妖精…キリトと同じスプリガンを選んだフィリア、影妖精の特徴を思い出しながら、選んだ理由を推測した。
魔法の優位性が高く、プレイヤースキルの他に種族ごとのパラメータがどうしても影響せざるを得なかった旧ALOでは、人気だったのは火妖精や風妖精、水妖精が主流だった。逆に影妖精のように、スキルや魔法構成の癖が強い種族はあまり人気がなかったらしい(リーファ談。特に影妖精はいたら便利だが、いなくでも困ることはない、というとんでもない評価だったらしい)
一方で、幻惑魔法だけでなく、索敵などトレジャーハンター系のスキルを豊富に持つのが影妖精の長所であり、そういった意味ではフィリアにこれ以上なく適切な種族ではないかと思った。
…少なくとも、色で決めたキリトに比べればよっぽどマシである。
「それにしても…こっちでも夢幻の戦鬼って呼ばれているなんてね。ファントム・クラウドのことも結構有名になってるみたいだし」
「工房の方は装飾品をメインに流通を増やしたんだ。ALOだと工匠妖精のプレイヤーメイドは結構需要が高いんだ。それに、SAOだと幻想剣関連で咄嗟に始めたようなものだったから、SAOと違って、特に公開しない理由も特になかったから。まぁ、それでも、紹介制という部分は変えてないから、知名度は上がっても、顧客の数はそう変わってなかったりするけどな」
「それ、逆にますます希少度が上がってない?」
「…夢幻の戦鬼の二つ名だけお腹いっぱいなんだけどな」
フィリアから俺の二つ名…夢幻の戦鬼のことや、運営している工房『ファントム・クラウド』の話を持ち出され、俺は苦笑いするしかなかった。
前者に関しては…俺の戦闘スタイルから徐々にバレかけていたが、ALO統一デュエルトーナメントでの一件で、キリトやユウキと激闘を繰り広げたことで、ほぼほぼバレたからな。(特にOSSだと誤魔化している幻想剣ソードスキルを大衆の前で披露したのも痛かった)
ここにファントム・クラウドの店主が俺であることまでバレれば…フィリアの呆れた笑いに、苦笑いが更に増したのは言うまでもないだろう。
「それで…ユウキさんがフォンの彼女なの?」
「…!…ああ。SAOの時にちょっと特殊な形で知り合っていてさ。今年の頭に再会して…3月から付き合ってる」
「……そっか。やっぱりあれは見間違いじゃなかったんだね」
「見間違い…?それはどういう…」
「ユウキさんと一緒にいる猫妖精の人…あの人、今年の夏にあった事件…アンダーワールドにいたカーディナルって人だよね?」
「っ!?フィリア、なんでそれを…!」
「えっとね…実は私もコンバート軍として、あの戦い…戦争に参加してたんだ。だから…実はフォンがあの場にユウキさんと一緒に突如として降り立ったのも、見てたんだ」
「…!!」
そして、話は俺の交際関係の話になったわけだが…どこか確信を持ったフィリアの言葉に俺は首を傾げていた。そういえば、俺とユウキが付き合ってると聞いた際もショックをあまり受けていないようだった。
てっきりALOを始めた時に知ったのかと思ったが(俺もユウキも二つ名持ちで、ALOでは知らない人はいないレベルで有名かつ、デュエルトーナメント決勝後に公開告白をしたのもあって、付き合っていることも同じレベルで有名なので)、フィリアが告げた、アンダーワールド大戦に参加していたという言葉にようやく合点がいった。
コンバート軍にいたということは、俺がユウキと共に、PoHがノーチラスたちに襲い掛かろうとしていた場面に乗り込んだ場面も…そして、その後、俺たち二人の並みならぬ距離感によるやりとりも見ていたのだろう。
…フィリアにその場面を見られていたと知り、俺は当時の自分を殴りたくなった。いや、やってることが鬼というか、酷すぎるだろうと、罪悪感と共に覚えたからだ。
「そ、そうか…なら、話は早いな。カーディナル…カナデは確かにアンダーワールド出身だよ。今は分け合って、こっちで生活してる。今日、会議の場にいたユージオとアリスもそうだ。フィリアには、フラクトライトといった方が認識しやいか…今は、こっちで一緒に生活してる感じだ」
「…あっちでも思ったけど、本当に私たちと変わらないね。彼女…彼女たちがAIだって言われても、逆に信じられないくらいだよ」
「…まぁな。フィリアの感想がある意味で正しいとは思うけどな」
少し動揺しつつも、俺はカナデ…カーディナルやユージオ、アリスのことを簡単に説明した。フィリアの感想に、何も知らない人からすると、そういった反応が当然かと思いつつ、俺は話を進める。
「まぁ、そういうことで、SAOがクリアされた後にも色々あってさ…ALOだけじゃなく、GGOっていう銃の世界をモチーフとしたVRMMOで『笑う棺桶』の残党が引き起こした事件に遭遇したり、さっきも話に出たアンダーワールドに行くことになったり…俺の方も色々あったんだ」
「アンダーワールド…フォンが戦ってたあいつ…本物のPoHもSAOから生還してたんだね」
「…ああ。まさかホロウだけでなく、本物のあいつと殺し合いをすることになるとは思ってなかったけどな。更に言うなら、アンダーワールドで会敵したのが、本物とは初めてだったからな」
「えっ、そうなの…?てっきり何度も会ったことがあるのかと…」
「SAOの『笑う棺桶』討伐戦であいつの写真とか見たことがあって、顔は知ってたけど、遭遇したことは一回もなかったんだ。いや、あの時の言動からして、俺がいない時にキリト…さっきの会議の時にいた影妖精のプレイヤーのことな…あいつと接触してたのかもな」
「…そういえば、アンダーワールドで戦っていた時、凄いことを言いまくってたよね。聞いてて、本当にホロウ・エリアで遭遇したホロウの本物なのかと疑ったよ…」
フィリアの感想に、俺も同じことを思った。それほどまでに、ホロウPoHと本物のPoHは思考に差があり過ぎた。前者は殺すことだけに快感を覚え突き詰めようとしていたのに対し、後者はキリトの度を過ぎた執着…愛憎とも呼ぶべき感情にて、全てを引っ搔きましたのだから、無理もない。
「ホロウ・エリア、か…なぁ、フィリア」
「うん、どうしたの?」
「…あの時、言ってくれた言葉を覚えてるか」
「…っ!」
大まかに近況を共有できたところで、俺は…覚悟を決めて、その話を持ち出した。フィリアと対話する上で、この話は避けきれないと思い、自ら切り出したのだ。
…はっきり言えば、感情は最悪のものになっていた。
理由は簡単…俺はフィリアの気持ちに気付いている。だが、俺はそれに応えることができない…応えてしまってはいけないのだ。それがフィリアを傷つけることになるとしても、それでも、フィリアを苦しめ続けることになるよりは遥かにマシだと思ったからだ。
そんな考えと共に、俺はフィリアから告げられる次の言葉を…
「(ポタ…ポタ…)・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「…っ!?ふ、フィリア…?」
待とうとしていた俺は、思わずそんな驚きの声が出た。なぜなら、眼前にいたフィリアが涙を流していたからだ。
突然のことに理解が追いつかず、どうしたのかと思っていると、
「っ、ゴメン…ゴメンね、フォン。思わず…」
「…いや、でも…」
フィリアも意識してのものではなかったのだろう…気づいてから、流れ出る涙を抑えようと、手で拭っていた彼女に、俺は何も言えずにいた。
「分かってたんだ…!フォンがユウキさんと付き合ってるのを知ってから、もう全部が手遅れだったってこと…諦めてた私が馬鹿だったって…全部の機会に諦めてなかったらって…そう思ったら、思わず…ゴメン、ゴメンね…」
「諦める…フィリア、一体何を…?」
泣きじゃくるフィリアの言っていることが、俺はますます困惑していく。何を諦めたといいうのか、その真意を尋ねようとした矢先だった。
「…フォンが…フォンが死んだって聞いて、諦めた時に…私の気持ちはそこで終わったんだって、そう思い込んでたから…」
「っ…!?俺が…死んだ…?どういう……」
フィリアの口から出たのはとんでもない事実だった。俺が死んだというパワーワードに、思考が思わず吹っ飛んでしまった。
「フィリア、どういうことだ…なんで、俺が死んだなんて…思ったんだ…?」
「ひっぐ…SAOが攻略された後…私、なんとかフォンと再会できなかって…退院した後に、色々調べたの。その時、あるSAO生還者が作ったWebサイトを見つけて…」
「Webサイト……っ!?アルゴさんが情報収集で使っていたっていう、有志サイトか…!」
思わず立ち上がりながら、どこでそんなデマを知ったのかと思い尋ねると…フィリアが告げたWebサイトという言葉に、俺は過去にアルゴさんから聞いたあるサイトの話を思い出した。
それは、旧ALO…キリトがリーファと一緒に世界樹を目指していた頃、アルゴさんからの依頼で、キリトの援護へと向かっていたシグさんをサポートすべく、アルゴさんが情報収集で使っていたという、あるSAO生還者が作った有志サイトがあったのだ。
その有志サイトは、後にあのオーディナル・スケール事件にも影響を及ぼした『SAO事件記録全集』の著者が作成したものとのことで、俺も存在自体は聞いていたこともあって知っていたが、その中身を見たことはなかったのだ。
「そのサイトで…攻略組と思われる人たちが書いた書き込みがあって……そこに書いてあったの…夢幻の戦鬼が茅場明彦に殺されて、その敵討ちで黒の剣士が茅場を倒したことで、ゲームがクリアされたって…!?」
「っ…?!(そうか…そういうことか…!)」
75層の出来事…それはフィリアが言った通りのことが確かに起こったのだ。75層のクォーターボスであるスカル・リーパーを倒した直後、俺はその正体を最初から知っていたヒースクリフの正体をキリトと共に明かし、奴を倒そうと…茅場を殺そうとして、デュエルを挑んだのだ。
その結果は…茅場に神聖剣の隠しスキルという奥の手を使われてしまい、俺はHPをゼロにされてしまい敗北…その次に挑んだキリトが、俺の心意と共に神聖剣の絶対的な防御を打ち破り、見事に撃破したわけで…そして、SAOはクリアされた。
…だが、その場にいた者からすれば、俺は茅場によって殺されたと思われても仕方がない状況だったわけだ。小説のアスナやキリトのように…俺の身体は一度ポリゴンに変わったのだから、無理もない話だった。
そして、そこに追い打ちをかけたのが、あの須郷によって仕組まれたSAOプレイヤーが旧ALOへと囚われた事件だ。俺やアスナはそれによって、現実世界へと帰還するのが遅れ…特に俺はHPをゼロにされた場面を目撃されていたこともあり、SAOクリア後も音信不通となり過ぎた期間がなりすぎていた。
…その二つが重なり、俺が死んだという誤情報が有志サイトの方にて書き込まれてしまったのだろう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
不運と言えば、それだけかもしれないが…でも、俺はそう思えなかった。いや、思いたくなかった。間接的な原因は俺にもあった…それが、フィリアを苦しめたという事実に、俺は先程までの決心が揺らぎそうになっていたのを感じていた。
「…だから、私…フォンがそこで死んじゃったって…本気で信じて…帰還者学校でも、どこか無気力になってたんだ…」
「き、帰還者学校…?!ちょっと待て、フィリアも帰還者学校に通ってるのか!だったら、なんでそこで俺を……っ?!そうか、帰還者学校の暗黙のルール…」
「…私、フォンがいるクラスとは別で…それに、閃光っていう人の話は私のクラスにもよく聞こえてきてたけど…夢幻の戦鬼の話はそこまで出てきてなかったから……だから、フォンはやっぱり死んだだって……ずっとそう思ってたんだ。
…フォンが…転校生と一緒に登校してきたっていう話が出てくるまで…」
「「っ…!?」」
帰還者学校にフィリアも通っていると聞き、またしても驚きの声が出た。そっちでも出会える機会があったのかと思った矢先、思い出したのは『帰還者学校ではSAOやVRMMOの話を持ち出すのは原則タブー』のルールだった。
更に、俺やキリトは確かに二つ名は有名だが、その素顔は知られていないことが多かった。攻略組プレイヤーは知ってても当然だが、中層や下層のプレイヤーは知らない人の方が多いくらいだ。
逆に血盟騎士団の副長として、広報等で顔を知られているアスナは、本名の「結城明日奈」の名前をそのままアバターネームにしているのもあり、帰還者学校でもほぼ速攻でバレてしまっていた。そして、アスナと付き合っているキリトの方も繋がる形で、黒の剣士だとバレていたが、俺はクラスメイトという立ち位置だったし、一緒にいるとしてもリズとシリカ…里香や珪子と一緒にいることが多かったので、噂に隠れる形でそこまで有名にはならずに済んだわけだ。
だが、俺も夢幻の戦鬼として、その正体を突き止められることになった事象があった。それは…菊岡さんに依頼して、ユウキを帰還者学校に通えるようにしてもらったことだ。
転校生というパワーワードだけでなく、珍しいバイク通学に加え、学校内では美少女に該当するユウキと俺が付き合っているらしいという噂に、ユウキが絶剣だという情報が合わされば、俺が夢幻の戦鬼だと紐づくのは必然といっても過言ではなかった。
「フィリア……それは…」
「分かってる…私が勝手に勘違いして、一人で諦めて…それぐらいにしかフォンのことを想ってなかっただけの話だって…!」
「それは違う!それだけは「違わないよ!?」…っ…?!」
今にも壊れてしまいそうな…もう見ていられないと思い、声を掛けようとしたが…叫びに近いフィリアの言葉に、俺の声は届かず遮られてしまう。
「ホロウ・エリアの件で…フォンのことを勝手に知ったつもりでいただけだった私に…勝手に諦めた私に……こうやってフォンと再会した時に、どうして今さらなんてちょっと思った私に…フォンを好きになる権利なんてないの…」
「…!?」
「だから…あの時に言ったことはもう忘れて…お互いのためにも…ユウキさんのためにも……ゴメンね、フォン」
「っ!待て、フィリア…!」
勢いもあったとはいえ、フィリアから「好き」という言葉が飛び出したが…俺を振り切るように、一方的に会話を切ろうとしたフィリアはそのまま立ち去ろうとした。俺はそんな彼女を制止しようと腕を掴もうとしたが…
「お願いだから…忘れさせて…!明日の探索までに、私も気持ちを整理するから……大事な思い出だけに…させてほしいの…」
「っ…?!」
その言葉を聞いた俺の身体は硬直し、彼女の腕を掴めなかった。そのまま、フィリアは家を飛び出して行ってしまった。俺は呆然として、そんな彼女が去っていった扉の先を見ることしかできなかった。
「フォン、追い掛けて!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
呆然としていた俺へと、ユウキの叫びが聞こえるも…俺はそれに応えることなく、力なく椅子へと座り込んだ。
「フォン?!なんで…なんで、追い掛けないの!早くしないと、フィリアさんが「追い掛けて、どうするんだ?」…フォン?」
これまで静観していたユウキが、動こうとしない俺に詰め寄る形でそう問いかけてくるが、俺は視線を合わせず、力なくそう答える。俺の真意が掴めずに眉を顰めるユウキに、俺はフィリアに対してどういった応えをしようとしていたのかを告げた。
「ユウキ…俺はフィリアの気持ちに応えるつもりはなかったんだ。いや、応えるわけにはいかなかったんだ」
「なん、で……だって、フォンは気付いてたんでしょ、フィリアさんの気持ちを!?また、ボクに遠慮してるの!?ボクとの関係を理由に、フィリアさんの気持ちを無視しようとしてるの!?もしそうだって言うなら、ボクは絶対に許さないよ…!」
怒りと悲しいが半々に入り混じったユウキの問い詰めに、俺は無感情のまま、答え続けていく。ユウキの怒りの理由は当然のものだろう…だが、ユウキの反応は予想していたものだった。
「それはないと言えば嘘になる…けど、それが一番の理由じゃない。むしろ、ユウキたちとの関係を理由にするのはついでに近いよ」
「だったら……ボクたちにちゃんと説明をしてくれるのなら、フィリアさんを受け入れてあげても…」
「それがフィリアを苦しめることになってもか?」
「えっ…?」
俺が告げた言葉が予想外の返しだったらしく、ユウキの問い詰めの勢いが止まった。困惑するユウキに、俺はどうしてフィリアの気持ちに応えないつもりだったのか、その理由を教えた。
「カーディナルの時とフィリアとは状況が違うんだ。カーディナルには…言い方は悪いが、家族がいないだろう。世間の目を気にする必要もない…その点は、俺が気を付けれていれば、なんとかなるからな。
でも、フィリアは違う。フィリアには家族がいる、世間の目だってある。俺がフィリアを受け入れて、家族をなんとか説得して付き合えたとしても…それがフィリアの幸せに本当になると思うか。
家族がどう思うかなんて分からないし、最悪縁切りされたっておかしくない。それに、日本の法律だと、婚姻関係は一人としかなれない…内縁の妻という立ち位置がどれだけ辛辣な評価をされるかなんて…言わなくても想像つくだろう」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「…俺が全ての責任を負って、フィリアを幸せにできるのなら何でもするさ。でも、それが逆にフィリアを苦しめ続けることになるのなら…不幸せにしかできないのなら、俺はフィリアの気持ちに応えるわけにはいかないんだよ…」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そこまで言い切って、俺はようやくユウキと目を合わせることができた。ユウキも…俺が決して、フィリアの気持ちを蔑ろにも、無視しようとしているわけでもなかったことを理解してくれたようで…その表情は暗いものとなっていた。
悩みに悩んで…俺もそうすべきだと心に決めたのだ。フィリアとの会話の中、何度もその決心が鈍りそうになったが…それでも、認めてはならないと、何度も…何度も何度も踏み止まったのだ。
俺の決意が…苦悩の中、決めたことだという俺の主張に、ユウキももうこれ以上の説得することはできないと、
「この馬鹿もん」
「「っ…!?」」
認めんと言わんばかりの否定の言葉が飛び出したのは、これまでずっと沈黙を保っていたカーディナルだった。まさかの言葉に、俺とユウキの視線が彼女へと向いた。
「確かにお主の言ってることは正しいじゃろう。お主もあの女子のことを大事に思い、お主なりに悩んだ決断じゃったのじゃろう。それが最善であることも理解できる」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ソファから立ち上がり、言葉と共に俺の方へと歩み寄ってくるカーディナルの表情は真剣で、そこから何を思っているのかを読み取ることができずに、俺は彼女の次の言葉を待つことしかできなかった。
「お主の言う通りにすれば、あやつが傷つくのは最低限で済むじゃろう。じゃが…そこにあの女子の真意はないのではないか?」
「…っ!?」
「真意って…だって、フィリアは忘れてって言ってたんだよ」
「あやつはあやつでフォンのことだけを考えてそう言っただけじゃろう。わしらの関係性を知った上での発言ではない」
「…あっ」
カーディナルの指摘に、俺はそこでようやく自身の見落としに気が付いた。ユウキの指摘にも、カーディナルは冷静に答え返していた。
「フォン、あのフィリアという女子もじゃが、お主らの悪いところは相手のことを考え過ぎて、相手のことを逆に気を遣えてないところじゃ。お主はフィリアを苦しめたくないと、フィリアはお主を困らせたくないと思っての言動じゃろう。
じゃが、お主はフィリアを苦しめたくないといって、その選択肢を奪っておるだけではないのか?
ちゃんと好意に応えるから、苦しみを一緒に背負ってほしいと言うべきではなかったのか?全ての選択肢を開示して、そこからフィリアに選択肢を委ねるべきではなかったのか?そこで初めて…フィリアの気持ちに応えたという言えるのではないか」
「…!?」
その指摘に、俺は自分の過ちに…気持ちに応えているつもりで、逃げているだけではないかと言われているような気がして、息を呑んだ。
「逃げるでない。きちんとフィリアに全てを説明して、それでも、フィリアが忘れてくれと言うのなら…それはそれでフラれたということで、きちんと清算できたと言えるじゃろう。
ちゃんとあやつにも選ばさせてやれ…話はそこからじゃ」
「カーディナル…」
「カナデの時にも言ったでしょ?ちゃんとボクたちまとめて責任を…愛してくれるって言うのならいいよって。フォンならできるでしょ?」
「ユウキまで…なんて無責任な期待をしてくれるのやら…」
「フォンが言える立場じゃないでしょ」
「お主が言える立場ではないじゃろう」
「…さいですか」
カーディナルとユウキの言葉を受け…俺の決意が完全に崩れてしまった。思いっきり溜息を吐いたところで、俺は後頭部を搔きながら、覚悟を再度決め直した。
「カーディナルの時もそうだったもんな…理由があるからって、フィリアにこのことを告げないで…あいつの言葉に甘えるっていうのは…確かに卑怯だよな」
「なら、ちゃんと責任を取らないとね」
「駄目なら駄目で帰ってくるがよい。その時は、わしらが慰めてやるわい」
「……分かったよ。明日、フィリアに全部を話してみる。強引には無理だけど…ちゃんとあいつの気持ちに応えてみせるよ」
愛する人たちにここまで言われ、そして、背を押され…いや、蹴られてしまっては、俺も男を見せなければならないだろう。
…どうやら、フェイカーの一件だけでなく、決着をつけなければならないことがもう一つできてしまったらしい。
そのことに覚悟を決め、俺は三連休の最終日を迎えるのだった。
無茶ぶりが過ぎる(苦笑)
まぁ、ホロウ・エリア関連のお話が後出しだったので、こういう設定でないと難しいもので…
まぁ、誤解するのも無理はないというか、フィリアって、運の良さの良し悪しの差が激しい気がするんですよね(ナーブギアを偶然で購入できる幸運もあれば、ホロウ・エリアに巻き込まれた直後に自身のホロウと遭遇して脱出不能になるなどの不運など)
そして、ヒロインズの中では一番感性がまとも…ゴホン…常識人ベースなので、自ら身を引こうとするわけで…
フォンはフォンでフィリアのことを気遣って気持ちに応えられないという姿勢だったわけです。
ある意味で正しい姿勢だとは思いますが、ユウキや…特に二人目として受け入れてもらったカーディナルからすれば、その姿勢は許容できるものではなく、その背中を蹴り飛ばす役になってもらいました
(ようは責任を取るというのなら、相手に甘えずにちゃんとフラれてこいという感じです(黒笑))
なので、ちゃんとフィリアのことも口説き落とし…ゴホン…責任を取る形で、フォンは動きます。
まぁ、その辺りのお話は次回からということで。
次回はサブタイも新しいものに変わります。『真相F-①:洞海の魔手』にご期待ください!
キャラエピ第2段!どのキャラから見たいですか?(時系列の問題で多少前後することがあります)
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リーファ
-
シノン
-
リズ
-
シリカ
-
ミト
-
ユイ