本話で語る、オリ主のスキルに関しては、後書き・設定で更に詳しく説明します。
それでは、どうぞ!
『お前・・・本物か・・・?』
その言葉に、俺は奴の真意を読み取り、少し冷静になった。
「・・・本物?どういう意味ですか?」
『・・・意味が、分からない、のか?』
「・・・・・いきなりそんなこと言われても、分かりませんよ」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
俺は表情は笑顔のまま、警戒しながら奴の言葉に答えた。俺の反応に奴も少し戸惑っているようだった。
『試合を、見た・・・あの、盾の、使い方・・・どこで、習得した?』
「このゲームに来るまで、他で盾を使うこともありましたから・・・ルール違反ではないですよね?」
『・・・あの長髪の、男は、剣を、使っていた・・・お前は、使わないのか・・・?』
「・・・いやいや、プレイスタイルなんて、人それぞれでしょ・・・それとも、あなたは剣を使わないと、駄目だっていう考えでもあるんですか?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
俺の言葉に、奴は黙りこんだ。だが、俺の挑発で苛ついていることは雰囲気だけで分かった。
『・・・お前も、あいつも・・・もし本物ならば・・・いつか、殺す』
そう言いながら、奴はわざとグローブの隙間を見せてきた。
そこには・・・一番見たくないタトゥー・・・『笑う棺桶』のエンブレムが刻まれていた。
そのまま、ボロマントは音も経てずに消えるようにいなくなってしまった。
俺はそこで大きく息をついた。
(あいつが死銃で間違いない・・・それに、あの言葉とタトゥー・・・間違いない、奴はSAO生還者だ)
どうやら俺の懸念は、一番最悪の方向で当たってしまったようだった。しかも、奴は俺やキリトを知っている・・・ということは、一度会ったことがあるということだが・・・奴が誰なのか、思い出そうとSAO時代の記憶を辿っている時だった・・・
「ねぇ、大丈夫?」
「っ、シ、シノン・・・?」
いきなり声を掛けられ、振り返ると、シノンが心配そうな表情をしていた。
「・・・ああ、大丈夫だ。ちょっと考え事をしていただけだ」
「そう・・・良かったわ、あんたは普通そうで」
「どういう意味だ?」
「それは・・・あいつよ」
シノンが見る方向を見ると、そこには・・・飛んでくる弾丸などお構いなしに、特攻していくキリトの姿がディスプレイに映されていた。
「・・・ねぇ、あいつ、なにがあったの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シノンの言葉に俺は何も返すことができなかった。
そのまま俺は順調に予選を勝ち続けた。俺の弾丸バッシュ戦法は相手の弾丸を全て弾き、得意のショートレンジで相手に弾丸を浴びせ続けた。
決勝で、狙撃型の相手と当たった時には流石に苦戦したが、盾を投げる奇襲によって、相手の動揺を誘い、ハンドガンとマシンガンの両手連射で辛くも勝利を収めた。そして、今、俺はキリトとシノンの決勝を見ていた。ステージは高速道路
・・・一直線での戦いであれば、シノンが有利か・・・
そんなことを考えていると、どうやら試合が始まるようだ。
どうやら、それぞれステージの端っこ転移したようだ。シノンはバスへと身を隠し、狙撃体制に移ったようだ。一方のキリトは・・・
(おいおいおい・・・正気か・・・!?)
キリトはまっすぐと歩いていた。その表情は伺うことができないが・・・
今のキリトには戦う意志が全く見受けられなかった。その瞬間、シノンの狙撃が外れ、近くに転がっていた車が爆発した。立て続けにシノンは連射するも、弾はキリトに当たらず、そして、キリトは微動だにしていなかった。
業を煮やしたのか、シノンがキリトに詰め寄った。
「・・・・・・!・・・・・・・・・・・・!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
モニター越しで、音声は聞こえないが・・・シノンは泣いていた。
その言葉に、どうやらキリトの方も目が覚めたようである。そして、どうやら決闘方式になったようだ。キリトは自身の拳銃から弾を抜き、指で空中へと弾いた。弾丸はゆっくりと落ちていき、キリトは光剣を構え、シノンはスコープをのぞき込んでいた。
そして、弾が落ちた瞬間・・・
「・・・・・おいおい・・・嘘だろう」
シノンが放った銃弾をキリトは光剣で真っ二つにした。いや、銃弾を斬る戦法は見てたけど・・・まさか、対物ライフルの弾丸まで切り裂くなんて・・・あいつの反射神経は化物か。
そんな感想を抱いてると、どうやら決着が着いたようで、シノンは降参していた。
一悶着はあったようだが、無事にキリトも本選へと足を進めたようだ。
俺は人知れず、安堵の息を吐いた。
「お疲れ様」
「・・・ありがとうございました」
「ふぅ・・・」
その後、シノンとも別れ、宿屋でログアウトした俺たちは現実世界に戻って来た。
安岐さんのねぎらいの言葉に俺たちはそう返した。明日の時間を確認してから、病室を後にしたのだが・・・
「・・・・・・・・・・・・・」
和人の様子がおかしかった・・・いや、原因は分かっている・・・
「・・・デス・ガンのことか、和人」
「・・・・・蓮」
「俺も遭遇した・・・奴は間違いなく」
「ああ・・・SAO生還者だ」
俺の言葉に和人は同意した。
「・・・・・あいつと何があった?もしかして、あいつのこと、知ってるのか?」
「・・・違う、違うんだ、フォン・・・俺は・・・!」
和人は首を振りながら、悲しそうに答えた。その姿に俺はこのまま和人を帰すことはできないと思った。
「・・・場所を変えるか」
病院を出て、バス停のベンチに移動した。もう最終のバスも出ており、誰の邪魔をすることもないだろう。
「ほら」
「・・・悪い」
和人にブラックコーヒーを渡し、隣に腰かけ、レモンティーの蓋を開けた。
「俺、忘れてたんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「今日、あいつに、死銃に会った時・・・SAOでのことを思い出したんだ。
俺は、あの世界で4人を殺した・・・2人は『笑う棺桶』討伐戦で・・・それに・・・」
「クラディール、か・・・」
「ああ・・・そして、ヒースクリフ・・・
けど、俺はこの一年間、その4人を殺したことをすっかり忘れてたんだ。
怒りや憎しみ、復讐心で剣を振るって・・・そいつらの本名を俺は知らない、討伐戦で殺した奴はもう顔すら覚えてない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
冷たい風が吹く中、和人は言った。
「・・・フォン・・・お前は、殺した人間のこと、今でも覚えてるか?」
そう聞かれた。その目から和人の・・・キリトの真意はなんとなく汲み取れた。
「・・・・・いや・・・俺は何人殺したかも、覚えてない」
「っ・・・!」
その言葉にキリトの目は大きく開かれた。
「あの時・・・正直言えば、俺もあの討伐戦で途中から無我夢中で剣を振るっていた。目の前で、プレイヤーが殺されそうになって・・・そこから先はどうなったのか、まったく覚えてない。気が付けば、人を斬ったという感覚だけがこの手に残ってた・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺の言葉をキリトは静かに聞いていた。
「だけどな、キリト。俺はそのことを忘れることなんてできないと思うんだ・・・」
「えっ・・・?」
「・・・どんな理由があっても、どんな状況だったとしても、俺が人を殺した事実は変わらない・・・それが正しいことであってもだ。
だけど、それを忘れないって、言うのは後悔とか罪悪感じゃなくて・・・何を守れたのか、その責任を背負った、ってことを忘れないため、じゃないかって、思うんだ」
「・・・・・責任・・・」
「・・・そういう意味じゃ、俺たちとあいつは絶対に違う。
人殺しをただ楽しむことにしか感じられない奴らとは、その考え方も・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「今のお前がそうだろ?そうやって、思い出そうとしてことは、お前はその責任を背負ってるってことじゃないのか?・・・少なくとも、俺が知っているキリトは、大切な何かを守るために剣を振るったはずだ」
「・・・大切な・・・もの」
「・・・・・それに、奴がSAO生還者で、『笑う棺桶』の残党で、・・・奴が本当にゲームから人を殺しているとすれば・・・それは、俺たちが止めないといけない、だろう?」
「・・・そう、だな」
すっかり冷めてしまったレモンティーを飲み干し、和人の顔を見ると、どこかすっきりしていた。
「・・・ありがとうな、蓮」
「・・・ああ」
呼び方も本名に戻ったところをみると、少しは和人の役に立てたようだ。そう思い、席を立とうとした時に、俺はふっと思ったことを聞いてみることにした。
「そういえば、予選の決勝、シノンと何話してたんだ?」
「ああ、蓮も見てたと思うけど、俺があんな姿勢で試合をしてたからさ・・・ゲーム
だからって、手を抜くなって言われてさ・・・終わった後も、どうやったそんなに強くなれるのかって、聞かれてさ・・・本当はこんなに弱いのにな」
「・・・・・いや、和人は強いだろう」
「・・・そうかな・・・まぁ、そんなことを話してたんだ・・・」
「なるほどな・・・それにしても、対物ライフルの弾を斬るなんて・・・普通、考えないぞ」
「えっ・・・だって、予測線があるんだから、あとは斬るくらいなら、蓮でも・・・」
「お前だけだ・・・!」
トンデモ理論を言われ、和人の言葉を遮り、強く反論した。化け物と一緒にしてほしくない。
「それじゃ、蓮はどうやって戦ってたんだ?」
「・・・・・お前、俺の試合見てなかったのかよ」
「あ、アハハ・・・悪い」
そのリアクションに思わず、頭をガクッとさせてしまった。まぁ、途中からバーサーカーになってたからな・・・
「俺はシールドで弾を弾きながら、接近して、銃を叩き込んだ」
「・・・俺と一緒じゃないか・・・?」
「違うぞ・・・俺は盾スキルを使ったんだ・・・SAOの時と似たようなスキルがGGOにもあったんだ」
そう・・・俺がどうしてあんな戦法を取れたのか。
それはコンバートして、ステータスを見た時に、一部のスキルが反映されていたからだ。ほとんどは役に立たないスキルばかりだったが、熟練度MAXにしていた盾スキルだけは違っていた。その中のスキル『オートバッシュ』・・・これは認識しているプレイヤーからの銃弾を予測線に合わせて、盾を構えていれば、自動で弾を弾くようにシステムがアシストしてくれるのだ。
流石にシノンが持っているような対物ライフルには通用しないが、スピードを落とさずに一気に接近できるのであれば、SAOで培った経験が活きてくる・・・ということを和人に説明したのだが、
「お前も化物だろう」
と真顔で言われた・・・解せぬ。
翌日
『悪い、直葉にバレた!』
という、和人からの謝罪メールを受け、今日の大会がアスナたちに見られることが確定したことにちょっと憂欝になりながらも、俺たちは再びGGOにダイブするために病院へと来ていた。
「おっす。いらっしゃい!」
「今日もお世話になります、安岐さん」
「よろしくお願いします」
「・・・どうやら大丈夫そうね」
「「えっ?」」
安岐さんの言葉に思わず、驚きの声が出た。
「いや、昨日戻って来てから、桐ヶ谷君は物凄い暗かったし、音弥君もちょっと怖い顔をしてたから・・・ちょっとカウンセリングでもしてあげようかと思ってたんだけど・・・今日は二人とも元に戻ったみたいだからね」
「・・・そうですね」「・・・すみません」
どうやら、俺も昨日の出来事が、知らず知らずに表情に出ていたらしい。
和人とともに気遣いにお礼を言ってから、昨日と同じ様に電極を張り、準備した。
「多分、10時ぐらいには戻ってきます」
「それじゃ、行ってきます」
「はいな。それじゃ、行ってらっしゃい!英雄キリト君、フォン君」
「「っ!?」」
安岐さんの言葉に思わず動揺した・・・あの腹黒メガネめ・・・覚えてやがれ・・・
そう思いながら、俺たちは目を瞑り、その言葉を発した。
「「リンク・スタート」」
では、前話と本話で登場しました、オリ主が使うスキルについての解説になります。
盾派生スキル 『幻影の盾』※スキル名、ちょっと変更しました
ユニークスキル。GGOに詳しくないフォンは、コンバートしたことで反映されたスキルの一つだと思い、盾スキルだと勝手に解釈してしまっている。SAO・ALOで使用していた『幻想剣』がGGO用に変化したスキル。某泥棒の神(笑)がフォンのアバターをALOにも適応できるように改造した際に、『幻想剣』も使用可能なようにプログラムを設定した結果、GGOでは『鋼鉄の盾』に形を変えることとなった(つまり、コンバートするゲームが違えば、他のスキルへと変化する可能性もあり・・・まさしく、『幻想剣』)。
効果は、予測線に合わせて、盾を構えた際、連続で5発まで弾をオートで弾く。クールタイムが存在し、3秒間時間を置かないといけないため、連続発動は不可。逆に、5発弾くまでに3秒が過ぎれば、カウントがリセットされるため、手動で弾くのか、システムで弾くのかを選択する判断力が問われる。また、バッシュに成功した場合、手動・オートに関わらず、盾の耐久値の減少を無効化する。また、盾での打撃ダメージを1,5倍にし、急所にヒットした場合、気絶のデバフを付与する。シールドの種類は問わない。
システム外スキル クイックドロー
フォンが使う、高速での武器持ち変えスキル。ALOで二つ以上の武器を運用することが多くなったフォンが、無意識のうちに使用するようになったスキル。GGOでは、メイン武装である、ハンドガン、ショットガン、マシンガンを瞬間的に持ち変えることで、反撃する隙を与えずに相手を攻撃することに成功している。
と、オリ主が知らないところで、チートスキル所持の事実が発覚。
ちなみに、BoB終了までオリ主はこの事実に気づいておらず、後日、シノンに指摘されて知るという裏設定があります。
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