ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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真相編の幕開けです。

ということで、ちょっとしたバトル回です。(というよりは、ヒロイン回と言うべきか…?)

まぁ、そういうわけで、ちょっと短めかもですが(いや、逆に普通の文量か?)、どうぞ!


第五話 「真相F-①:洞海の魔手」

「えっと…よろしくね」

 

「お、おう…(どうしてこうなった…)」

 

三連休最終日…再びリセットされたデイリーダンジョンにて、フェイカーを探すべく簡易ミーティングを終えた俺は、どこか無理して笑っているフィリアとそんな挨拶を交わしながら、頭を抱えたくなっていた。

 

原因?会議を仕切っていたアスナ、そして、同じチームであるミトと会話をしているユウキのある発言が理由だった。

 

『フィリアさんは、フォンと組んだら?他の人は初対面だから合わせるのが難しいけど、フォンはホロウ・エリアでフィリアさんと組んでたから、合わせやすいでしょ?』

 

昨日と同様に、アルゴさんがデイリーダンジョンの情報を仕入れてきたところで、各ダンジョンに手分けして突入するという話になったところで、ユウキがそんな爆弾を落としたのだ。

 

その発言に俺は思考がぶっ飛ばす程の衝撃を受け呆然とし、同じく会議に参加していたフィリアが信じられないといった表情で目を丸くしていた。

 

しかし、それが命取りになった。いきなりのことに反応するのが遅れたせいで、他のメンバーも賛同してしまったことで、そのままの流れで俺とフィリアがコンビを組むことになってしまったわけだ。

 

(頑張って…!)

 

(アハハ…あとでお説教な、ユウキ)

 

誰にも見られないように、口パクでそんな応援をしてきたユウキに、俺は青筋を浮かべるの同時に笑いながら、あとでお説教だと心に強く誓った。

 

ちなみに、カナデもどこか呆れたように笑いを浮かべてこっちを気にしながら、同じくチームを組んだキリトやシノンと打ち合わせをしていた。(ちなみに、他のチームの組み合わせは、リーファ・クライン・リズ、シリカ・エギルさん・シグさん、ユージオとアリスはコンビを組む形で、アルゴさんは引き続き連絡役になった)

 

 

(ねぇ、カナデ。あの二人、昨日あれから何かあったの?)

 

(まぁ、少しな。じゃから、ユウキが気を遣って、荒療治を施すためにパーティを組ませたわけじゃ。まぁ、あやつのことじゃから、なんとかするじゃろう)

 

(貴女がそう言うのなら、まぁ、いいけど…というか、やっぱり貴女たち、そういう関係なの?)

 

(ふむ…フォンから感づかれておるとは聞いておったが…まぁ、そういうことじゃ。できることなら…)

 

(分かってるわよ。私も似たような立場だし、野暮なことはしないわよ。というか、フォンを怒らせると、どうなるか分からないから怖いのもあるし)

 

「…?シノンにカナデ、さっきから二人でコソコソ話して、どうしたんだ?」

 

「女同士の秘密の会話よ、気にしないで」

 

距離があったのと、二人が小声で話しているせいもあって聞き取れなかったが、多分、俺とフィリアのことを話していたのだろう。まぁ、傍から見れば、気づく人はいるか…教のフィリアはちょっと無理してるところがある。

 

原因はもちろん俺にあるわけで…まだ気持ちを整理し切れていないのだろう。だが、それは無理もない話だった。というか、できる人間の方が珍しいくらいだ。

 

(サポートしたいところだが、俺もフィリアに…本当の意味で気持ちに応えてやらないといけないからな…やることはそこまでないのに、内容が濃すぎるんだよな)

 

フェイカーの野望も止めないといけないわ、フィリアとの関係もきちんとしないといけないわ…量は少ないのに、それぞれの難易度が高すぎるのだ。頭が重たく感じるのはきっと気のせいじゃないだろう。

 

どこか嫌な予感を覚えつつ、俺はフィリアと共に担当のデイリーダンジョンへと向かった。

 

 

 

「どうだ、フィリア?この先も問題なさそうか」

 

「………あっ、うん。この先もトラップはないみたい」

 

「…そうか」

 

「…うん」

 

(なんかデジャブを感じるな…まぁ、ホロウ・エリアのあの時…ホロウPoHに唆されて、俺を罠に嵌めた時だよな)

 

ただ通路が続くデイリーダンジョン…央都アルンに最も近い、一番難易度が低いデイリーダンジョンに来ていたわけだが…どこか上の空のフィリアをサポートしながら、俺は細剣を片手に前衛を務めていた。

 

このデイリーダンジョンはモンスター特化型らしく、種類を問わず様々なモンスターがポップし、一本道であるために戦闘は不可避という構成になっていた。しかも、おまけに罠がちょいちょいの頻度で仕掛けられているのだから、移動や戦闘地にも注意を払う必要がある。

 

戦闘に関しては特に問題ないのだが…罠の方が問題だった。やはりフィリアが不調で、俺がなんとかサポートしていることで、以前の…ホロウ・エリアで一緒に探索していた時と比較すると、見落としが目立つほどに、今のフィリアは攻略に集中できていなかった。

 

それが大空洞エリアの時とどこかデジャブを感じたのは気のせいだと信じたい、うん…

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

(それにしても、どうやって切り出すかな)

 

今のフィリアの状態は大変よろしくない…できることなら、フェイカーに遭遇する前に解決したいが…昨日のことから、どうすればいいかが全然思いつかないでいた。

 

フィリアの性格からすれば、生半可な言葉ではきっとフィリアはまた遠慮してしまう…ホロウ・エリアの時であれば、なんとかできただろうが…今の状態では厳しいと言わざるを得なかった。

 

(昨夜からずっと考えていたけど…駄目だ、全然いい方法が浮かばない。こういう時、ユウキなら迷わず直球勝負とかで行くんだろうけど…その切っ掛けさえもないのは厳しいな…)

 

黙々とモンスターを倒していく傍らでそんなことを考えていたが…ごちゃごちゃと考え過ぎてしまう自分の悪癖を呪いたくなっていた。

 

そうこうする内にダンジョンの最奥へと辿り着いてしまったわけで…

 

「扉式…このダンジョンはボスが配置されているのか」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「…フィリア、もしキツいのなら、ここで待っていてくれ」

 

「…!えっ…あっ、いや…大丈夫だよ。早くクリアしちゃおう」

 

「…分かった。なら、行こう」

 

一本道の最奥は扉となっており、この先にはボスがいることが予想された。

 

一方で、やはり本調子でないフィリアは同行させるべきではないかもしれないと思った俺は、フィリアに待つか尋ねたのだが…大丈夫だと言われてしまうと、俺もそれ以上は何も言うことができず、彼女の言葉に従い、そのままボスに挑むことになった。

 

「…うん?結構重いな、この扉…ぐうぅぅ…!」

 

押して開く式の扉らしく、かなりの重量を覚えた。それを持てる力にて全力で押すと、少しずつ扉が開こうと…

 

「(…?何、今の…風の流れが急に変わった……重たい扉………っ?!)待って、フォン!?」

 

「えっ…?」

 

フィリアの制止を願う叫びが聞こえた時には遅かった…その声に振り返った直後、押していた扉がいきなり開き…

 

…ビュォォォォォォォオオオオオオオ!?

 

「「っ?!」」

 

風の流れがいきなり変わったと思った時には、既に身体が宙に浮いていた。何が起こったのか理解したのは、部屋へと吸い込まれた瞬間…そして、部屋には地面が存在せず、真っ暗な空間が広がっていた。

 

「(っ…嘘だろう!?)…フィリア!!」

 

昨日のデイリーダンジョンといい、大空洞エリアといい…嫌な予感はこれだったのかと舌打ちをしたくなったのと同時に、俺は同じく部屋に吸い込まれたフィリアへと手を伸ばすのがやっとで…

 

なんとか掴んだ彼女の腕を引っ張り、そのまま抱き寄せた俺は…重力に引っ張られるまま、二日連続で穴に落ちていくのだった。

 

 

 

(っ…?!どこまで落ちるんだ!?)

 

フィリアを抱き抱えたまま、ずっと落下が続いていた。

 

途中で翅を展開しようと試みたが、案の定、飛行不可エリアらしく、翅の具現化はできなかった。そのため、重力加速度に従い、落下速度が増しながら、俺たちは現在進行形で落ちていた。

 

底さえ見えれば、細剣でソードスキルを繰り出して、なんとか落下の衝撃を相殺できるのだが…これ以上加速すると、不時着に合わせて放つのが難しくなってくる。

 

だが、俺の希望が叶ったのか、何か光が見え…そして、またしても予想外の事態が発生した。

 

「…っ?!(水!…くそっ!?相殺できるか…!)」

 

落下のゴールは見えたが、なんと一面が水になっていたのだ!これまで水場に対して、対落下の衝撃相殺は試したことがなかったので、確証はなかったが…落下スピードによっては、水場であろうとかなりの衝撃になると、どこかで聞いたことがあったので、このまま落下ダメージでHPが0になるのなら、駄目もとで試してみるしかない!?

 

「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

細剣単発ソードスキル〈リニア―〉による突きを咆哮と共に放つ!水面を穿ったことで、幾ばくか衝撃を殺し切れたが、やはり落下速度を落とせただけで…フィリアを庇うように抱き抱え、俺は頭から水面に落下した!

 

(…ゴホォ…!っ…しょっぱい…これは、海水なのか…?)

 

落下の衝撃で胃の中の空気が出たかのような錯覚と共に空気を吐いてしまい、その代わりに水を飲み込んでしまった。その味に塩辛さを覚え、俺はこの水面が海水で形成されていると思った。

 

そのまま思考も落ち着き、水中で上下も理解したところで。フィリアを抱えて、水面を目指して浮上し始めた。

 

「…プハァ!ゴホゴホ…!?ふ、フィリア…大丈夫か…?!」

 

「ゲホ、ゴホ…!な、なんとか…」

 

「良かった…ひとまず、装備を解除しないとキツイな。ちょっと待ってくれ…」

 

浮上して新鮮な空気を肺に補給するように大きく吸い込んだところで、フィリアの安否を確かめる。フィリアの方も少し咳き込んでいたが、どうやら無事らしい。

 

なら、次にやることは装備の解除だった。今、装備している蒼炎の烈火では、水の重みによって重量がとんでもないことになっている。このまま水上を移動することは無理なので、メニューを開き、防具を解除して、下地であるアンダーアーマーだけの恰好になる。

 

おかけで水の温度をそのまま感じて肌寒さを覚えるが…溺れるよりは遥かにマシだ。

 

「…フォン、あっち。あっちに陸地があるみたい」

 

「よし、ならそっちを目指して泳いでいこう。フィリア、泳ぎの方は?」

 

「大丈夫。リアルでも泳げるし、SAOでもあったでしょう?」

 

元々が軽装備ということもあり、俺と違ってそのままの状態でも浮けていたフィリアが指さす方向…10メートルぐらい先に、砂浜だろうか、白い陸地が見えていた。

 

フィリアの言うようにSAOの第4層でも泳ぎを求められるエリアがあり、少し前に海辺で泳いだこともあって、俺とフィリアは陸地を求めて泳ぎ出した。

 

「ふぅぅ…なんとか辿り着いたな、クシュン!」

 

「…ゴメン、私が扉の罠に気づくのに遅れたから」

 

「フィリアのせいじゃない。俺ももっと警戒すべきだったし、あんな罠、気づいたところで対応する方が難しいだろう」

 

なんとか陸地に辿り着き、濡れたことで一気に重みを増したアンダーアーマーから垂れる水が砂浜を濡らす中、同じくびしょ濡れになったフィリアからそんな謝罪が飛んできた。

 

水を含んだ髪に隠れ、下を向いた目線を浮かべる表情からして、彼女がとても責任を覚えているのは間違いなかった。フィリアのせいではないと伝えるも(どっちかと言えば、俺のミスだ)、その表情が晴れることはなかった。

 

ともかく、まずは濡れた身体を温めるのと、装備を乾かすことを優先すべきだと、俺はストレージから火を起こすための道具を取り出そうと、メニューを…

 

…ザパァン!

 

「っ!?」「…え?!」

 

俺がメニューを開き、アイテム系のストレージを見ようとした直後だった。何かが水面から飛び出したような音が聞こえ、そちらを振り返った時には既に遅かった。

 

触手のようなものがフィリアの左足に巻き付いており…それを視認したのと同時に、彼女の身体が水面へと思いっきり引っ張られたのだ!?

 

「フィリアァァァ!?」

 

咄嗟に彼女の腕を掴もうと手を伸ばすも、一手遅かった。宙を切った俺の手は何も掴めず、フィリアは無残にも水中へと引き摺り込まれた!

 

(クソッ、完全に油断してた!水槽系のモンスター…触手ってことは、タコかイカみたいな奴が、ここには潜んでいたのか!水場のモンスターは水妖精がいないと、まともに戦えない!?だけど、このままじゃ、フィリアの息がもたない…どうする、どうする!?)

 

急ぎ水面へと視線を向けると、何か大きなモンスターがいることは視認できた。だが、問題はそこからだった。

 

ALOの水槽系モンスターは、水中に生息していることが多い。そして、ALOの水中では現実と同じく、空気がない…つまり、普通の状態ではまず勝ち目がない。息ができないだけでなく、浮力までが働き、まともに武器を振るえないからだ。

 

そのため、水への抵抗力を気にせずに戦える水妖精か、水妖精の保護魔法によるバフを受けてからでなければ、水中戦は不可能に近いのだ。

 

もちろん、俺はそんな魔法を覚えていないし(工匠妖精はそこまで高度な魔法を覚えられないというのもあるが)、水中戦用の装備も持っていない。

 

だが、このままではフィリアが持たないことも確実だった…ALOもSAOと同じで、息がもたなくなると、HPが減る仕様になっているのだが…HPがゼロになるまで溺れ続けるという、拷問に等しいとんでもない仕様になっているのだ。

 

(どうする、どうするどうするどうする…!?っ…こうなったら、一か八かだ…!)

 

焦燥感に駆られながらも、思考をこれでもかと加速させていた俺は、咄嗟に思いついた策…いや、賭けに出るべく、メニューを高速操作していった。

 

 

 

「っ…(引き摺り込まれた!?…まさか、こんなモンスターがいたなんて…!)」

 

物凄い勢いで身体が引っ張られたと思った矢先、水面に叩きつけられるように水中へと引き摺り込まれたフィリアが目にしたのは、頭部に複数の触手が生えている巨大なイソギンチャクのようなモンスターだった。

 

巨大な寸胴のような胴体…その真ん中に位置する紫の目がフィリアを捉えているかのように。彼女へと視線を向けていた。

 

「ゴホォ…!(マズい…いきなりのことだったから、息が…!早く脱出しないと…!?)」

 

奇襲を喰らったせいで、ほとんど酸素を溜め込めずに水中に引き摺りこまれたことで、フィリアは既に息苦しくなっていた。早く拘束から脱出して、浮上しなければ危険だと悟り、短剣を抜くも…

 

(っ…?!剣が刺さらない…!水中だから、威力もこれ以上は…!)

 

だが、相性が悪すぎた。

 

フィリアのステータスはどちらかと言えば、AGI寄りであり、パワー型ではない。しかし、相手は軟体で、更に水中では浮力によって、剣の威力が減衰していると言ってもおかしくない環境だった。

 

自身の左足に絡みつく触手を攻撃するも、弾力を表すかのようにしなった触手に短剣は刺さらず、最悪自分の足を切り落とそうとするも、水中では思うように力を込められず、できないでいた。

 

「ガハァ…!?(息が……もう……!)」

 

更に、抵抗したことで貴重な酸素を消費してしまい…短剣を手放してしまい、なんとか空気が漏れるのを防ごうと両手で口と鼻を塞ぐも…焼け石に水だった。

 

「ゴボ…!(苦しい……水が…喉に…!?)」

 

身体が酸素を求めて、思わず口を開いてしまう…だが、空気がほとんどない水中では、肺に入ってくるのは水だけで…それが更にフィリアを苦しめる。

 

呼吸困難によりHPが減少していくも、そんなことを気にしている余裕はフィリアにはなかった。

 

(いや……苦しい………たす、けて……)

 

少しずつ身体に入ってくる水に、思考までもぼんやりとしてきたフィリアは…脱力していく身体を…まだ少しだけ動かせる手を遠い水面へと伸ばし…

 

(…助けて…)

 

そう呟くことしかできずにいたフィリアの…朧げになりつつあった彼女の思考に映ったのは…

 

(……助けて……フォン…)

 

求めてはいけないと分かりつつも、彼女が最もその手を求めた彼の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ザバァァァァン!!

 

「っ?!」

 

その願いに応えたかのように、彼女とモンスターがいた付近の水がいきなりなくなった!突然、求めていた空気が周囲を満たし、息苦しさから解放された彼女の目に映ったのは、

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉ!」

 

ソードスキルを放ち終えた右手の両手剣から、左手に持った片手剣へとライトエフェクトが移動したように発動させながら、咆哮を上げるフォンの姿だった。

 

 

 

「エンド・オブ・フォーチュン!!」

 

水を吸ってしまったことで重りとして邪魔になったアンダーアーマーの上半身を乱暴に脱ぎ捨てた俺は、すぐさま両手剣『エンプレス・ジェイル』と片手剣『アサルト・サヴァイブ』をオブジェクト化し、鞘も砂浜へと投げ捨て、全速力で海面とは逆へと走り、助走の距離を取った。

 

そして、反復する形でそのまま駆け出し、持てる力を持って海面へと向かって跳躍した!水の入射角によるもので揺らいで見えるが、モンスターとフィリアがいる場所の検討はついていた。

 

あとは一か八かの賭けに出るだけだった。右手の両手剣で幻想剣≪両手剣≫超重単発最上位ソードスキル〈エンド・オブ・フォーチュン〉を放つ…エンド・オブ・フォーチュンはその威力も絶大だが、刀身を巨大化させて放つ広範囲攻撃でもある。そして、幻想剣最上位ソードスキルの一種ということで、その威力は常識外である。

 

…だからこそ、賭けた。最上位ソードスキルならば、海面を割る事ができるのではないかと。

 

そして、その賭けは目論見通り上手くいった。潜んでいたモンスターの姿を現わし、そして、水中に囚われていたフィリアを解放するかのように、エンド・オブ・フォーチュンによって、海面が割れた!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉ!」

 

そして、敵の姿が見えたことで、考えることなく直感のままに身体が動いていた。剣技連携によって、右手の両手剣から左手の片手剣へと意識を切り替え、硬直無しでのソードスキルを連続発動させる!

 

海面が割れている時間などあと数秒もない…だからこそ、こういう時に使うのは、使い慣れている技になるわけで…咆哮と同時に、俺は片手剣の燐光を解き放った!

 

片手剣重単発ソードスキル〈ヴォーパル・ストライク〉…真っ赤なライトエフェクトに炎属性の燐光までもが宿った刃による突進突きで俺の身体が引っ張られる。その一撃がモンスターの目へと突き刺さり、急所にヒットしたことで、モンスターの巨体が大きく震えた。

 

突き刺さった片手剣を抜く時間も惜しく、左手から剣を手放すのと同時に、両手剣で幻想剣≪両手剣≫単発ソードスキル〈フォール・ルイン〉を発動させ、フィリアを拘束していた触手の一本を斬り落とした!

 

「…!(間に合うか…!?)」

 

拘束から解放されたフィリアの身体が宙から海底へと落ちるのが見え、硬直から解けた俺は海底を蹴って、彼女の落下地点へと向かう!それと同時に斬撃によって割れていた海水がその姿を元に戻そうと崩れ落ちようとしていた。

 

フォール・ルインを選んだのは、硬直時間が0.2秒とほとんどないに等しいものであったからだ。そのお陰で、なんとか海水が崩れ落ち切る前にフィリアを受け止めるのに間に合ったが、陸地に戻るには時間が無さ過ぎた。

 

「くぅ…!?」

 

少しでも距離を稼ごうとフィリアを抱えて跳躍するも、崩れ落ちた海水に飲み込まれ、俺は水中に包まれた。それでも、跳んでいたこともあり、海面まではそこまで距離はなかったようで…俺は全力でバタ足をして、浮上を急いだ。

 

「プハァ…!?フィリア、しっかりしろ!フィリア!?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

数秒で浮上したところで、肩に担いだフィリアの安否を確かめる。意識を失くしたかのようにぐったりとしたフィリアに声を掛けるも、何の反応も返ってこなかった。

 

このままではマズいと、フィリアを引っ張りながら、俺は陸地を目指して、再び泳ぎ出した。

 

「フィリア…!頼むから、返事をしてくれ、フィリア?!」

 

そのまま数分かけて、なんとか陸地へと戻ってきて…砂浜へと倒れ込むような形で、そのままフィリアを地面へと寝かせて、再び呼びかける。

 

青ざめた顔に、呼吸が浅い彼女の様子に不安が胸中を占めようと…こうなったら、奥の手を取るべきかと思った時だった。

 

「…!ゴホォ!?ゴホォ、ゴホォ…!」

 

「…っ!」

 

海水を吐き出すのと同時に、大きく咳き込んだフィリアが反応を見せたことで、俺は思わず安堵の息を吐いた。どうやら、最悪は回避できたようだと一安心した…その矢先だった。

 

…ザパァン!

 

再び海面から飛び出す音が聞こえた。だが、今度は違った。先程の奇襲から、警戒していたこともあり、俺は再び飛び出してきた触手を捉えることができていた。そして、その矛先を見て、思わず…

 

「ぐぅぅ…?!」

 

その進行方向を邪魔するように右手を突き出した!さっきのように、触手が今度は俺の右腕を拘束した。だが、それに関わらず、俺の思考は…遂に限界を迎えた。

 

「おい、このクソゲソ野郎…」

 

引き摺り込もうとする触手に抵抗するように、全力で踏み止まる俺だったが、その口から出たのは酷く冷たい声だった。

 

相手はモンスターで、何を言っても通じるわけがないと分かりつつも、それでも、口に出さずにはいられなかった。

 

「お前、またフィリアを狙ったな…!また、彼女をあんな目に合わせようとしたな…!上等だぁ!?覚悟しろよ、このクソ野郎!!」

 

触手が狙ったのはまたしてもフィリアだった。それを遮る…いや、庇う形で俺が邪魔したわけだが、その行動が俺の逆鱗に触れた。

 

モンスターの習慣なのか、アルゴリズムに則った行動なのか、あるいはそういう仕様なのか…理由なんて、どうでもよかった。

 

問題なのは、フィリアにまたあんな酷いことを…苦しい思いをさせようとしたことに、俺は怒りを覚え、そのまま爆発させた。一切の容赦などしてやるものかと、怒りを原動力に思考を加速させた!

 

そして、策を立て終えたことで、左手でメニューを開き、二つの武器をオブジェクト化して、装備する。そして、俺は抵抗する力を緩め、わざと触手に引っ張られた。

 

だが、わざと引っ張られた際に、少しばかり跳躍した。それにより、水中に引き摺り込もうとした軌道がズレた…引っ張られた俺は大回りするかのように、水面と並行するかのように、モンスターがいる付近の水面へと飛び…

 

「一方的に攻撃できるのがお前だけだと思うなよ!こっちにだって、水中へと一方的に攻撃する手段はあるんだ!?」

 

引っ張られた勢いまでもを活かし、触手に拘束されていない方の手…左手に持っていた片手棍『フェイタル・アウト』を振りかぶり、ソードスキルを発動させる。幻想剣ソードスキルは最上位(鞭を除く)系だけに、属性が割り振られている。

 

両手剣の最上位幻想剣ソードスキルのエンド・オブ・フォーチュンは火・水・風・土の4属性混合ソードスキルだ。一方で、今から放つ最上位幻想剣ソードスキルは、単色属性のみのものであり…ライトエフェクトとオーラにより巨大化した棍棒にはその属性を体現するかのような青い稲妻が走っていて、

 

「これでも喰らって、マル焦げになっちまえぇ!?」

 

怒りのままに乱暴な言葉を振り下ろすのは雷撃の一撃…幻想剣≪片手棍≫超重単発最上位ソードスキル〈アブスターディ・ターミネイター〉を水面を叩いた瞬間、海水全てに稲妻が走った。

 

アブスターディ・ターミネイターは雷属性10割の属性付きソードスキルだ。そして、モンスターの全身は水中にある中、ちょっとした知識があれば、どうなるかなど分かることだった。

 

凶悪な威力を誇る最上位幻想剣ソードスキルの威力そのままが、余すことなく感電と共にモンスターを貫いた!余波で触手で掴まれていた俺にもダメージがフィードバックするも、大ダメージを受けたことで、怯んだ触手が俺の右手を離した。

 

そして、解放されたことで、アブスターディ・ターミネイターを放った余波で少しだけ空中に浮遊することになった俺は、背中に腰にそのまま身に着けていたもう一つの武器を右手に取り、そのまま大きく振りかぶった。

 

「これで終わりだぁぁ!!」

 

予想外の攻撃に動けなくなっているモンスター目掛け、投げ放ったのは量産型の槍…そして、消失してしまっても問題ないショートランス『マスプロダクト』だ。それが水面に着弾すると同時に、硬直が解けた俺は腕を交差して衝撃に備えた。

 

水中では爆発などの衝撃は、地上と比較して破壊力が段違いになると聞いたことがある。つまり、直撃しなくとも、強力な爆発はそれだけで凶悪な武器になるわけで…幻想剣≪槍≫重単発投擲ソードスキル〈二クスプロード〉の爆風により吹き飛びながら、俺はそんなことを思っていた。

 

ザパァン…!

 

水面に何度か跳ねながら、水中へと叩きつけられた俺は、自分のHPが大きく減ったことを、モンスターを討伐したことの証であるリザルト画面と共に確認して、ようやく怒りが収まるのを感じた。

 

そして、上下の感覚が戻ったところで、水面へと向かって浮上し、そのまま陸地へと戻るのだった。

 

(…索敵スキルに反応はないか。もういないとは思うが、リポップすることも想定して、移動した方がいいだろうな)

 

したり落ちる水を気にせず、索敵スキルを使い、他にモンスターがいないかを探るが…反応はないが、それでも、ここに長居するべきではないと思い、俺はぐったりとしたフィリアを抱える。

 

すると、いつの間にか壁に出現していた扉が見えた。あのモンスターを倒したことで、出現したのだろうか…ともかく、エリアを移動することにしたのだった。

 

 




●ショートランス『マスプロダクト』
 ショートランスの武器の一種で、フォンが作ったプレイヤーメイドの武器。
『簡単、早い、手軽』の三拍子が揃えられる程に楽に作れる武器で、こだわり屋であるフォンとしては珍しい量産を目的とした武器。
もっとも、用途は爆発することで焼失することが前提の、幻想剣≪槍≫重単発投擲ソードスキル〈二クスプロード〉を使うための使い捨て用の武器なので、当然といえば当然なのだが…


それは、フォンもキレるわ…
フィリアに対して罪悪感と迷いを抱いてる中、そこに彼女に危険が迫れば、ブチ切れるわけでした。(まぁ、ある意味で、フィリアに対して、フォンもちゃんと好意を持っていたというわけなんですが…)

エクストラ・エディションの話には、フォンは絡んでいなかった設定なので、ある意味で水中戦(とは言えない気もしますが)を初めて描いたお話でした。
属性付きソードスキルということで、アブスターディ・ターミネイターのまた別の意味での恐ろしさが垣間見えたお話でした(片手剣のライトニング・フォールと違って、打撃なので水中へと叩きつけるような形で一方的に攻撃できるんですよね…)
あと、水中爆発という攻撃手段も持ってる幻想剣…やっぱり反則だな、うん。
(余談ですが、触手ネタはロスト・ソングのあのエピソードからきた発想でした…あと、内容が内容なのでちょっと描写できなかったのですが、珍しいフォンが薄着だったり、上半身半裸だったりしてました(苦笑))

ということで、次回は休息回…本当の意味で、腹を割って二人が話す回となります。そういうわけで、フォンとフィリアのそれぞれの気持ちがようやく…

お楽しみに!

キャラエピ第2段!どのキャラから見たいですか?(時系列の問題で多少前後することがあります)

  • リーファ
  • シノン
  • リズ
  • シリカ
  • ミト
  • ユイ
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